JP3794300B2 - スポット溶接方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に薄板の被溶接部材をさらに重ね合わせ、これらを一対の電極で挟み加圧通電することにより、これら被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、重ね合わせられた鋼板同士の溶接には、スポット溶接が用いられている。この溶接方法は、重ね合わせた2枚の鋼板を直接、上下の電極チップで挟み加圧しながら板厚方向に溶接電流を流すことで発生する鋼板の抵抗発熱を利用するもので、点状の溶接部を得ている。即ち、電流を流した際に両鋼板の接触箇所に溶接ナゲット(以下「ナゲット」という。)と呼ばれる両鋼板の溶融した部分ができ、このナゲットによって両鋼板が点状に溶接される。
【0003】
ところで、3枚以上の鋼板を溶接する場合にも、上述したスポット溶接方法を利用する要求がある。例えば、図8(A) に示すように、車両のフロア部を構成するフロアパネル91、メンバー92およびリンフォース93といった鋼板を、フロアパネル91とメンバー92との間にリンフォース93を挟み込んで溶接したい場合等である。
【0004】
しかし、例えば図8(B) に示すように、メンバー92と板厚が厚いリンフォース93とを重ね合わせた場合には、それら鋼板間に隙間が発生し易い。特に、それら鋼板の形状が複雑化している場合には、隙間が大きくなる傾向がある。
【0005】
このような重ね合わせたとき隙間が発生し易い2枚の厚板と、フロアパネル91等の薄板からなる3枚の鋼板をスポット溶接により溶接する場合には、図8(C) に示すように、電極チップ26、27の加圧力を高くして3枚の鋼板を変形させ、厚板間の隙間Sを詰めることによって、鋼板同士が接する部位に電流経路を形成し、鋼板同士を溶接する方法が一般に採られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示すように、フロアパネル91の板厚bに対するフロアパネル91、メンバー92およびリンフォース93の総板厚aの比が、4.5倍以下の場合には、上述した方法であっても所定の強度を得るスポット溶接が可能ではあるが、当該板厚比が4.5倍を超えると、上述した方法では所定の溶接強度を得るスポット溶接ができないという問題がある。
【0007】
そのため、このような場合には、例えば図10に示すように、フロアパネル91とメンバー92との間に挟み込むリンフォース93の両側部93aを拡げて形成し、この拡大された両側部93aを有するリンフォース93と、メンバー92とを溶接した後、この溶接されたリンフォース93の両側部93aとフロアパネル91とを溶接することにより、鋼板同士の溶接箇所を分離して溶接部分Pa、Pbで溶接している。
【0008】
ところが、このような溶接箇所を分離する方法によると、リンフォース93の両側部93aを拡げて形成しなければならないため、重量の増加を招くという新たな問題が生じ、また溶接箇所が増加することから、コスト高になるという問題も生じている。
【0009】
ここで、前述した板厚比が4.5倍を超える場合について本願発明者らが解析したところ、以下に述べる現象を生じていることが判った。
即ち、図8(C) に示すように、加圧により、メンバー(厚板)92とリンフォース(厚板)93の隙間Sを詰めて溶接する場合、高い加圧力によって鋼板(フロアパネル91、メンバー92およびリンフォース93)を変形させると、図11(A) に示すように、上側の電極チップ26とリンフォース(厚板)93に重ね合わされたフロアパネル(薄板)91との接触面積が増大する。そのため、上側の電極チップ26からフロアパネル(薄板)91へ流れる溶接電流の電流経路(同図中楕円内α)が分散してしまうことから、電流密度が低下するので、フロアパネル(薄板)91とこのフロアパネル(薄板)91の内側に位置するリンフォース(厚板)93との間の発熱が小さくなり、ナゲットの形成には至らない。
【0010】
一方、メンバー(厚板)92とリンフォース(厚板)93とは、隙間Sを詰めるためにかけられた高い加圧力に起因する鋼板の変形によって点接触となる。これにより、電流経路が絞られ集中することから(同図中楕円内β)、電流密度が高くなるので、メンバー(厚板)92およびリンフォース(厚板)93間の発熱が大きくなり、ナゲットNが形成される。
【0011】
つまり、まずメンバー(厚板)92とリンフォース(厚板)93との間からナゲットNが形成される。そしてこのナゲットNは、通電時間が経過するとともに拡大していくが、ある程度の大きさまで成長すると、図11(B) に示すように、溶融金属がスパッタDとなって鋼板(メンバー92、リンフォース93)間の隙間Sから飛び出してしまう。このため、ナゲットNの成長が妨げられることから、ナゲットNがフロアパネル(薄板)91まで広がらず、フロアパネル(薄板)91とリンフォース(厚板)93とを溶接することができないことが判明した。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に薄板の被溶接部材をさらに重ね合わせ、これら被溶接部材をスポット溶接する場合に、薄板の板厚に対する総板厚の比が大きくても所定の溶接強度が得られるスポット溶接方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段、および発明の作用・効果】
上記した目的を達成するため、請求項1のスポット溶接方法では、重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に薄板の被溶接部材をさらに重ね合わせ、これらを一対の電極で挟み加圧通電することにより、これら被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接方法であって、
前記薄板の被溶接部材には、溶接すべき部位に部分的に一般部より一段高い座面を前記厚板の方向とは反対の方向に突出するように形成するとともに、前記一対の電極のうち、薄板の被溶接部材に対向する電極は、先端を球面に形成し、
溶接初期は低加圧力で薄板の被溶接部材の座面を前記先端が球面の電極によって球面状に押しつぶすよう変形させて、薄板の被溶接部材とこれと隣り合う厚板の被溶接部材とを溶接し、その後、高加圧力で2枚の厚板の被溶接部材同士を溶接することを技術的特徴とする。
【0014】
請求項1の発明では、2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に重ね合わせた薄板の被溶接部材には、溶接すべき部位に部分的に一般部より一段高い座面を厚板の方向とは反対の方向に突出するように形成するとともに、一対の電極のうち、薄板の被溶接部材に対向する電極は、先端を球面に形成する。そして、溶接初期は低加圧力で薄板の被溶接部材の座面を先端が球面の電極によって球面状に押しつぶすよう変形させて、薄板の被溶接部材とこれと隣り合う厚板の被溶接部材とを溶接し、その後、高加圧力で2枚の厚板の被溶接部材同士を溶接する。これにより、溶接初期においては、薄板の座面を低加圧で押しつぶすことで、一般部より一段高く形成された座面を球面状に変形させるので、この球面状に変形した座面を厚板の被溶接部材に対して点当たりに接触させることができる。そのため、薄板の被溶接部材とこれと隣り合う厚板の被溶接部材との間には、球面状に変形した座面により点状に絞られた電流経路が形成されるので、この通電経路を流れる溶接電流の電流密度を高めることができ、このような通電経路を流れる溶接電流によって、薄板の被溶接部材とこれと隣り合う厚板の被溶接部材との間に溶け込み、つまりナゲットを形成させることができる。その後においては、座面を押しつぶした加圧力よりも高い加圧力(高加圧力)をかけることで、2枚の厚板の被溶接部材同士の隙間が詰まり、2枚の厚板の被溶接部材同士の間に通電経路を形成することができる。これにより、このような通電経路を流れる溶接電流によって、2枚の厚板の被溶接部材同士の間にナゲットを形成させることができる。したがって、重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に薄板の被溶接部材をさらに重ね合わせ、これら被溶接部材をスポット溶接する場合に、薄板の厚板に対する総板厚の比が大きくても所定の溶接強度を確保できる。
【0015】
請求項2のスポット溶接方法では、請求項1に記載のスポット溶接方法において、前記座面は、円形であり、その径は前記電極の径の1〜3倍であることを技術的特徴とする。
【0016】
請求項2の発明では、部分的に一般部より一段高く形成する座面は、円形であり、その径は電極の径の1〜3倍である。これにより、座面は円形であることから、電極の先端球面による球面状の変形を容易に形成することができる。また、最小でも座面の径を電極の径の1倍に設定しているので、電極と座面の位置が多少ばらついても電極の先端球面により座面を球面状に変形させることができ、また最大でも座面の径を電極の径の3倍に設定しているので、座面全体が緩やかに撓むことなく座面を部分的に球面状に変形させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスポット溶接方法の一実施形態について図を参照して説明する。
図1には、本発明に係るスポット溶接方法を適用した溶接装置20および被溶接部材である薄板Wa、厚板Wb、Wcが図示されている。
先ず、溶接装置20の構成を図1を参照して説明する。
【0018】
溶接装置20には、一対の電極である電極チップ26、27と、この一方の電極チップ26を支持するとともに電極チップ26、27で被溶接部材を加圧可能なシリンダ24と、このシンダ24に供給するエアの圧力を調整して加圧力を切替え可能な加圧力切替装置25と、電極チップ26、27に溶接電流を供給可能な溶接トランスTと、電極チップ26、27に供給される溶接電流を任意に制御可能な溶接電流制御装置CONTから構成されている。
【0019】
一対の電極チップ26、27は、所定の間隔を隔てて対向するようにそれぞれ位置しており、一方の電極チップ26がシリンダ24によって移動可能に支持され、他方の電極チップ27は固定されている。電極チップ26、27は、その先端部26a、27aがそれぞれ球面に形成されている(図2(A) 参照)。
【0020】
シリンダ24は、加圧エアにより他方の電極チップ27の方向に可動し得る可動部を有し、この可動部に一方の電極チップ26を支持可能に構成されている。これにより、エア源から供給される加圧エアにより可動部が可動すると、電極チップ26を電極チップ27方向に動かすことができる。本実施形態では、エア源から加圧力切替装置25を介して例えば3500N程度の加圧エアがシリンダ24に供給されるので電極チップ26、27により、両者間に位置する薄板Wa、厚板Wb、Wcを加圧することができる。
【0021】
加圧力切替装置25は、エア源とシリンダ24との間に介在しており、エア源から供給される加圧エアを例えば2段階の所定圧に切替え得るように構成されている。本実施形態では、溶接初期には低加圧力の加圧エアをシリンダ24に加えるように制御し、その後、高加圧力の加圧エアを加えるように制御する。これにより、シリンダ24は、溶接初期には低加圧力で薄板Wa、厚板Wb、Wcを加圧でき、その後は高加圧力で薄板Wa、厚板Wb、Wcを加圧することができる。
【0022】
溶接電流制御装置CONTは、溶接電源と溶接トランスTとの間に介在しており、例えば、加圧力切替装置25の加圧力の変化に同期して、一対の電極チップ26、27に供給される溶接電流の値を制御し得るように構成されている。本実施形態では、溶接初期には、例えば9kAの低溶接電流を電極チップ26、27に供給し、その後の高加圧時には、例えば、12kAの高溶接電流を電極チップ26、27に供給するように制御している。
【0023】
このように溶接装置20を構成することにより、一対の電極チップ26、27間に鋼板(薄板Wa、厚板Wb、Wc)を挟み加圧通電することができるので、両電極チップ26、27間に溶接電流を流すことができる。
【0024】
次に、重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の一方にさらに重ね合わせられる薄板Waの構成を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、電極チップ26によって加圧される薄板Waには、部分的に一般部35よりも一段高い座面30aを有する凸部30が形成されており、この凸部30の構成が図2(B) および図2(C) に図示されている。
図2(B) および図2(C) に示すように、薄板Waに形成されている凸部30は中空円錐台形状に形成されており、その頂部には、円形状の座面30aを有する。
【0025】
即ち、凸部30は、薄板Waの一般部35から縮径しながら盛り上がるように形成されるテーパ部30bを介して、頂部に円形状の平坦面に形成される座面30aを有するように構成されている。このように頂部に位置する座面30aは、円形に形成されているため、後述するように、電極チップ26の先端部26aにより、座面30aを球面状に容易に変形させることができる。
【0026】
具体的には、凸部30は、薄板Waにプレス加工を施すことにより形成され、例えば、座面30aの直径である座面径D1を22mmに設定した場合、凸部30の直径である凸部径D2は28mmに設定され、また一般部35から座面30aまでの高さである座面高Hは1mmに設定される。
【0027】
また、このような座面30aの座面径D1は、前述した電極チップ26(電極チップ27)の先端径D0の1倍以上3倍以下の範囲で設定される。
【0028】
即ち、本実施形態の場合、先端径D0が16mmであるため、その1倍である16mmからその3倍である48mmまでの間で座面径D1が設定される。これにより、最小でも座面径D1を電極チップ26の先端径D0と1倍、つまり同等に設定しているので、電極チップ26と座面30aの位置が多少ばらついても電極チップ26の先端部26aの球面により座面30aを球面状に変形させることができる。また、最大でも座面径D1を電極チップ26の先端径D0の3倍に設定しているので、座面30a全体が緩やかに撓むことなく座面30aを部分的に球面状に変形させることができる。
【0029】
続いて、本スポット溶接方法により行われるスポット溶接の各工程を図3〜図7に基づいて説明する。
ここで、図3は薄板Waと厚板Wbとの溶接を示し、図4は溶接初期の薄板Wa、厚板Wb、Wcの状態を示し、図5は溶接初期の後の薄板Wa、厚板Wb、Wcの状態を示している。また、図6は溶接装置20による加圧パターンおよび通電パターンを示し、図7は本スポット溶接方法により溶接された車両のフロア部の例を示している。先ず、図3を参照して、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとの溶接について説明する。
【0030】
図3(A) に示すように、薄板Waの凸部30の上方に位置するように電極チップ26、27の移動および位置決めを行う。次に、図6(A) に示すように、通電開始から5サイクルの間、加圧力切替装置25によって、490N程度の低加圧力となる加圧エアをシリンダ24に供給する。これにより、電極チップ26が凸部30の座面30a方向に押し下げられ、電極チップ26により、座面30aは厚板Wb方向に向かって押しつぶされる(図3(B) 参照)。その後、座面30aが厚板Wbに当接すると同時に、図6(B) に示すように、9kAの溶接電流が電極チップ26、27間に供給される。ここで、1サイクルとは、商用交流電力の周波数の逆数をいい、具体的には、1/60秒または1/50秒のことである。
【0031】
即ち、図3(B) に示すように、凸部30が存在することにより、薄板Waと厚板Wbとの間に形成される空間部Kを狭くするように、シリンダ24により加圧された電極チップ26が凸部30の座面30aを押しつぶす。このとき、電極チップ26の先端部26aは、前述の如く、球面に形成されているため、座面30aは、先端部26aと同様の球面形状に変形しながら、厚板Wb側に向かって押しつぶされる。これにより、座面30aには球面状の窪みを有する凹部が形成されるため、座面30aの裏側には厚板Wbに向かって球面状に突出する接触面30cが形成されることになる。
【0032】
そして、さらにシリンダ24による加圧が進められることによって、図3(C) に示すように、座面30aの裏側に形成される球面状の接触面30cの頂部が、厚板Wbに接触する。つまり、接触面30cのうちの最も突出した部分が他の部分よりもいち早く厚板Wbに点状に接触する。
【0033】
このような状態になると、図4(A) に示すように、薄板Wa、厚板Wb、Wc間に加えられる溶接電流は、電極チップ26から薄板Waと厚板Wbとの間にある点接触部30dを通り厚板Wbへ流れる。ところが、厚板Wbと厚板Wcとの間には隙間Sがあるため、このような溶接電流は、図4(A) 中の矢印の示すように、厚板Wbおよび厚板Wcのそれぞれの面方向に大きく迂回して厚板Wbから厚板Wcへ流れて電極チップ27へ至る。
【0034】
このように、厚板Wb、Wc同士の間には隙間Sが存在することから、厚板Wb、Wcの板厚方向最短距離で電流密度を高めるような通電経路を形成できないため、これら厚板Wb、Wcの間にナゲットを形成することができない。
一方、図4(B) に示すように、薄板Waと厚板Wbとの間には、点接触部30dに点状に絞られた通電経路、つまり接触抵抗の大きい通電経路が形成される。そのため、このような絞られた通電経路により、電流密度を高めることができるので、当該通電経路を流れる溶接電流によって抵抗発熱量を増大させ、薄板Waと厚板Wbとの間にナゲットNaを形成することができる。
【0035】
上述したように、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとを溶接した後(図6(A) に示す、通電開始から5サイクル経過後)、図5(A) に示すように、シリンダ24による加圧力をさらに高めて3430N程度の高加圧力で薄板Waと厚板Wb、Wcを加圧するとともに、溶接電流を加圧力の増大に同期して、12kAの電流を加える(図6(B) 参照)。これにより、厚板Wb、Wc同士の間にある隙間Sが電極チップ26、27により詰められるため、厚板Wbと厚板Wcとが点状に接触する。なお、図5(A) に示す矢印は、電極チップ26、27による加圧方向を示すものである。
【0036】
即ち、図5(B) に示すように、高加圧力によって薄板Waと厚板Wb、Wcを加圧することにより、厚板Wb、Wc同士の間に生じた隙間Sを十分に詰めることができ、加圧部に接触抵抗の大きい通電経路が形成されることになる。したがって、この通電経路を流れる溶接電流によって、厚板Wb、Wc同士の間にもナゲットNbを形成することができる。
【0037】
このように、薄板Waと厚板Wbとの間にナゲットNaを形成し、続いて厚板Wb、Wc同士の間にもナゲットNbを形成することにより、重ね合わせた2枚の厚板Wb、Wcの一方にさらに薄板Waを重ね合わせた3枚の鋼板のスポット溶接が完了する。
【0038】
上述したように、本発明のスポット溶接方法を用いて溶接を行うことにより、例えば、図7に示すように、車両のフロア部を構成するフロアパネル71、メンバー72およびリンフォース73といった3枚の鋼板をスポット溶接する場合であっても、溶接部分Pに所定の溶接強度を確保することができる。これにより、図10に示すような従来のスポット溶接方法のように、リンフォース93の両側部93aを拡げて、溶接箇所を溶接部分Pa、Pbの2箇所に分離する必要がなく、溶接部分Pの1箇所で溶接することができる。したがって、リンフォース73の両側部73aを拡大する必要がなくなるので、重量の増加を抑制し、また、溶接箇所の増加によるコスト高をも防止する効果がある。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るスポット溶接方法によると、2枚の厚板Wb、Wcの一方に重ね合わせた薄板Waには、溶接すべき部位に部分的に一般部より一段高い座面30aを形成するとともに、一対の電極チップ26、27のうち、薄板Waに対向する電極チップ26は、先端26aを球面に形成する。そして、溶接初期は低加圧力で薄板Waの座面30aを押しつぶすようにして、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとを溶接し、その後、高加圧力で2枚の厚板Wb、Wc同士を溶接する。
【0040】
これにより、溶接初期においては、薄板Waの座面30aを低加圧で押しつぶすことで、一般部35より一段高く形成された座面30aを球面状に変形させるので、この球面状に変形した座面30aを薄板Waと隣り合う厚板Wbに対して点当たりに接触させることができる。そのため、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとの間には、球面状に変形した座面30aにより点状に絞られた電流経路が形成されるので、この通電経路を流れる溶接電流の電流密度を高めることができ、このような通電経路を流れる溶接電流によって、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとの間に溶け込み、つまりナゲットNaを形成させることができる。
その後においては、座面30aを押しつぶした加圧力よりも高い加圧力(高加圧力)をかけることで、2枚の厚板Wb、Wc同士の隙間Sを詰めることができるため、2枚の厚板Wb、Wc同士の間に通電経路を形成することができる。これにより、このような通電経路を流れる溶接電流によって、2枚の厚板Wb、Wc同士の間にナゲットNbを形成させることができる。したがって、重ね合わせた2枚の厚板Wb、Wcの一方にさらに薄板Waを重ね合わせた3枚の鋼板をスポット溶接することができる。
【0041】
具体的には例えば、薄板Waの板厚bに対する3枚の鋼板の総板厚aの比が、4.5倍を超える場合には、通電時間が通電開始から5サイクルが経過するまで、薄板Waの座面30aを490Nの低加圧で押しつぶすとともに、9kAの溶接電流を流すことで、薄板Waとこれと隣り合う厚板Wbとの間にナゲットNaを形成することができる。通電時間が通電開始から5サイクルを経過した後は、3430Nの高加圧力をかけるとともに、この加圧力に同期して12kAの溶接電流を流すことで、2枚の厚板Wb、Wc同士の間にナゲットNbを形成することができる。したがって、当該板厚比が4.5倍を超える場合であっても、重ね合わせた2枚の厚板Wb、Wcの一方にさらに薄板Waを重ね合わせた3枚の鋼板をスポット溶接することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るスポット溶接方法によると、座面30aは、円形であり、その座面径D1は電極チップ26の先端径D0の1〜3倍である。これにより、座面30aは円形であることから、電極チップ26の先端部26aの球面による球面状の変形を容易に形成することができる。また、最小でも座面径D1を電極チップ26の先端径D0の1倍に設定しているので、電極チップ26と座面30aの位置が多少ばらついても電極チップ26の先端部26aの球面により座面30aを球面状に変形させることができ、また最大でも座面径D1を電極チップ26の先端径D0の3倍に設定しているので、座面30a全体が緩やかに撓むことなく座面30aを部分的に球面状に変形させることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、重ね合わせた2枚の厚板Wb、Wcの一方にさらに薄板Waを重ね合わせた3枚の鋼板のスポット溶接について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、重ね合わせた2枚の厚板の両方にさらに薄板を重ね合わせたような4枚の鋼板のスポット溶接であっても、適用することができ、上述した同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るスポット溶接方法を適用した溶接装置の構成を示す説明図である。
【図2】図2(A) は、本実施形態のスポット溶接方法に用いられる電極チップ先端の側面図、図2(B) は、同スポット溶接方法に用いられる鋼板に形成される座面の平面図、図2(C) は、図2(B) に示す座面の側面図である。
【図3】本実施形態のスポット溶接方法による溶接工程を示す説明図で、図3(A) は、電極チップの加圧による変形前の座面、図3(B) は、電極チップの加圧による変形途中の座面、図3(C) は、溶接電流の通電によるナゲット形成の初期段階、をそれぞれ示すものである。
【図4】図4(A) は、本実施形態のスポット溶接方法による溶接工程(溶接初期)を示す説明図で、図4(B) は、図4(A) の拡大図である。
【図5】図5(A) は、本実施形態のスポット溶接方法による溶接工程を示す説明図で、図5(B) は、図5(A) の拡大図である。
【図6】図6(A) は、本実施形態のスポット溶接方法における加圧パターンを示す説明図で、図6(B) は、本実施形態のスポット溶接方法における溶接電流の通電パターンを示す説明図である。
【図7】本実施形態のスポット溶接方法により溶接される車両のフロア部の断面図である。
【図8】図8(A) は、スポット溶接前の3枚の鋼板の斜視図で、図8(B) は、図8(A) の断面図で、図8(C) は、従来のスポット溶接方法による3枚の鋼板の溶接方法を示す説明図である。
【図9】フロアパネル(薄板)の板厚に対するフロアパネル(薄板)、メンバー(厚板)およびリンフォース(厚板)の総板厚の比を示す説明図である。
【図10】従来のスポット溶接方法により溶接される車両のフロア部の断面図である。
【図11】図11(A) は、従来のスポット溶接方法により3枚の鋼板を溶接する場合に、鋼板に流れる電流経路を示す説明図であり、図11(B) は、図11(A) における溶接の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
20 溶接装置
24 シリンダ
25 加圧力切替装置
26、27 電極チップ(一対の電極)
26a、27a 先端部 (先端)
30 凸部
30a 座面
35 一般部
71、91 フロアパネル
72、92 メンバー
73、93 リンフォース
Wa 薄板
Wb、Wc 厚板
D0 先端径 (電極の径)
D1 座面径 (座面の径)
D2 凸部径
H 座面高
N、Na、Nb ナゲット
S 隙間
P 溶接箇所 (溶接すべき部位)
Pa、Pb 溶接箇所

Claims (2)

  1. 重ね合わせた2枚の厚板の被溶接部材の少なくとも一方に薄板の被溶接部材をさらに重ね合わせ、これらを一対の電極で挟み加圧通電することにより、これら被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接方法であって、
    前記薄板の被溶接部材には、溶接すべき部位に部分的に一般部より一段高い座面を前記厚板の方向とは反対の方向に突出するように形成するとともに、前記一対の電極のうち、薄板の被溶接部材に対向する電極は、先端を球面に形成し、
    溶接初期は低加圧力で薄板の被溶接部材の座面を前記先端が球面の電極によって球面状に押しつぶすよう変形させて、薄板の被溶接部材とこれと隣り合う厚板の被溶接部材とを溶接し、その後、高加圧力で2枚の厚板の被溶接部材同士を溶接することを特徴とするスポット溶接方法。
  2. 前記座面は、円形であり、その径は前記電極の径の1〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接方法。
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