JP3794110B2 - 織機における織布巻き取り装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧接される一対の摩擦クラッチ体からなるトルクリミッタを介して駆動源の回転トルクをクロスロールに伝達する織機における織布巻き取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クロスロールにおける織布引き取り力が適正値よりも高くなると、巻き取り織布の組織崩れ、光沢むらという欠点が発生し、織布引き取り力が適正値よりも低くなると、巻き皺という欠点が発生する。
【0003】
このような欠点を解消するための織布巻き取り装置が特開昭55−163241号公報に開示されている。この従来装置ではクロスロールの巻径の変化がフィーラレバーによって検出されるようになっている。フィーラレバーを支持する回動軸には端面カムが止着されており、カムフォロアを有するカムレバーがクロスロール径の変化に伴うフィーラレバーの回動変位に連動して回動するようになっている。織布を引き取るサーフェスローラは織機駆動源から回転トルクを得ており、サーフェスローラの回転トルクは圧接される一対の摩擦クラッチ体を介してクロスロールに伝達されるようになっている。カムレバーと被動クラッチ体との間には両摩擦クラッチ体を圧接するためのばねが介在されている。クロスロールの巻径の増大に伴うフィーラレバーの回動変位は端面カムを介してカムレバーに伝達される。このカムレバーの回動変位が前記ばねのばね力を増大してゆき、両摩擦クラッチ体間の摩擦力が増大してゆく。両摩擦クラッチ体間の圧接力が常に一定であるとすると、クロスロールの巻径の増大に伴ってクロスロールにおける織布引き取り力が低下してゆく。クロスロールの巻径の増大に応じて前記両摩擦クラッチ体間の圧接力を増大する構成は、クロスロールにおける織布引き取り力を略一定の適正値に維持するための機能を有する。
【0004】
しかし、一対の摩擦クラッチ体間の圧接力が反力としてフィーラレバーに作用する。このような反作用はフィーラレバーをクロスロールの周面に過大な力で押し付けることになる。フィーラレバーの過大な押し付けはクロスロールの周面を凹ませ、正確な巻径を検出することができない。実開平3−45987号公報の装置では、織幅全体にわたる検知ローラがクロスロールの周面に押接されるが、特開昭55−163241号公報の場合と同様の問題がある。
【0005】
前記のような問題を解消するには、一対の摩擦クラッチ体間の圧接力が反力としてフィーラレバーに伝わらないようにすればよい。実開昭59−61286号公報、実開昭59−69976号公報では、摩擦伝達装置における圧接力が反力としてフィーラロールに伝達しない機構が開示されている。実開昭59−61286号公報の装置では機械的な変位伝達機構のみが用いられている。
【0006】
実開昭59−69976号公報の装置では、フィーラロールを支持するフィーラレバーの位置を検出するスイッチ手段が設けられており、この位置検出に応じてソレノイドの励消磁が制御されるようになっている。ソレノイドは、布巻ロールの回転力を送りナットへ伝達するクラッチの切換を行なうものであり、クラッチが繋がると送りナットが回転駆動される。送りナットが回転駆動されると前記摩擦伝達装置における圧接力が増大する。送りナットが回転駆動されると、前記スイッチ手段も前記フィーラレバーの移動方向に移動し、ソレノイドは布巻ロールの巻径の増加に伴って断続的に励消磁する。即ち、実開昭59−69976号公報の装置では、スイッチ手段、ソレノイドを備えた電気的な変位伝達機構が組み込まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの機構はいずれも複雑なレバー機構を用いており、装置全体が複雑になるのみならず専有スペースが大きくなってしまう。又、特に特開昭59−69976号公報の装置では、ソレノイドのオン・オフ制御により摩擦伝達装置の圧接力を増大する構成であるため、織布の種類が変更されたときにはスプリングやレバーを取り替えて織布に合った巻き取り張力に変更しなければならない。又、同じ織布であってもソレノイドのオン・オフ操作のみによる制御であるため、再現性に乏しいという問題がある。さらに、織機運転中に巻皺等が生じていてもこの不具合を取り除くための加圧力調整は不可能である。従って、特開昭59−69976号公報に記載の装置では、巻径の変化に応じた前記圧接力の変更制御の自由度が低く、布巻ロールにおける織布引き取り力を高精度で適正値に維持することは難しい。
【0008】
本発明は、機構の複雑化、専有スペースの問題を回避しつつクロスロールにおける織布引き取り力を高精度で適正値に維持し得る織布巻き取り装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、一対の摩擦クラッチ体からなるトルクリミッタを介して駆動源の回転トルクをクロスロールに伝達する織機における織布巻き取り装置を対象とし、請求項1の発明では、前記一対の摩擦クラッチ体を圧接力変更可能に圧接する加圧手段と、前記クロスロールの巻径の情報を電気信号として取り出す巻径検出手段と、前記巻径検出手段によって得られた巻径の電気信号情報に基づいて前記加圧手段の圧接力を変更制御する設定圧力変更プログラムを有する圧接力制御手段とを備え、前記加圧手段は、前記摩擦クラッチ体を付勢する圧縮ばねと、同圧縮ばねを介して摩擦クラッチ体を加圧する圧接力変更可能な圧接力付与手段とからなり、前記圧接力付与手段は、前記一対の摩擦クラッチ体をエア圧力で圧接するピストン及び前記ピストンの前進端及び後進端を規定する前壁と後壁とを有するエアシリンダと、前記エアシリンダに供給されるエアの圧力を変更するエア圧力制御手段とを備えており、前記ピストンが前記エアシリンダの後壁に当接したときの圧縮ばねのばね力が前記エア圧力制御手段によって設定される前記エアシリンダの最小設定圧力に基づく押圧力となるように、かつ前記ピストンが前記エアシリンダの前壁に当接したときの圧縮ばねのばね力が前記エア圧力制御手段によって設定される前記エアシリンダの最大設定圧力に基づく押圧力となるように前記圧縮ばねのばね特性を設定した織布巻き取り装置を構成した。
【0010】
圧接力制御手段は、前記巻径検出手段によって得られた巻径の電気信号情報に基づいて前記加圧手段の加圧力を適正値にするように制御する。加圧手段は、圧接力制御手段の適正値制御によって前記一対の摩擦クラッチ体が適正値の圧接力で圧接するように加圧する。一対の摩擦クラッチ体間の圧接力は前記巻径検出手段によって得られる巻径の電気信号情報に影響を与えないため、クロスロールの巻径の検出は正確に行なわれる。また、エアシリンダ及びエア圧力制御手段を備えた圧接力付与手段は、巻径の電気信号情報に基づく圧接力制御に好適である。
【0011】
請求項2の発明では、前記クロスロールに回転トルクを伝達する駆動源をサーフェスローラで構成した。
サーフェスローラは駆動源として好適である。
【0014】
請求項3の発明では、前記一対の摩擦クラッチ体の一方は他方の摩擦クラッチ体に圧接する方向へ移動可能な可動クラッチ体とし、他方は前記可動クラッチ体に圧接する方向へ移動不能な不動クラッチ体とし、前記エアシリンダのエア圧力を、加圧力増大レバーを介して前記可動クラッチ体の前記移動可能な方向へ伝達するようにした。
【0015】
加圧力増大レバーの採用は、小型のエアシリンダによって必要な加圧力を発生させる上で好適である。
請求項4の発明では、前記エアシリンダの一部であって前記加圧力増大レバーに前記エア圧力を伝達する出力伝達体と前記加圧力増大レバーとの間に前記圧縮ばねを介在した。
【0016】
前記圧縮ばねの弾性特性を適正設定しておけば、エア圧力の異常高圧状態あるいは異常低圧状態の発生時においても、一対の摩擦クラッチ体間の圧接力が過大あるいは過小になることはない。
【0017】
請求項5の発明では、製織時の織機の回転回数を検出する回転回数検出手段を含む巻径検出手段を構成した。
このような巻径検出手段は最も簡便である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0019】
11は織布Wを引き取るためのサーフェスローラであり、図示しない駆動力伝達経路を介して駆動モータMに作動連結されている。駆動モータMは、織機駆動モータ又は専用の織布巻き取りモータで構成することができる。サーフェスローラ11にはプレスローラ14が押接されており、エキスパンションバー15、サーフェスローラ11を案内された織布Wがサーフェスローラ11とプレスローラ14との協働による引き取り作用によってサーフェスローラ11の下方のクロスロール16側へ引き取られる。サーフェスローラ11のローラ軸111には駆動クラッチ体12がスプライン嵌合等により相対回転不能かつローラ軸111の軸心線方向へのスライド可能に支持されている。又、ローラ軸111には被動クラッチ体13が軸受けを介して相対回動可能かつスライド不能に支持されている。駆動クラッチ体12は可動クラッチ体となり、被動クラッチ体13は不動クラッチ体として一対の摩擦クラッチ体を構成する。被動クラッチ体13の周縁には駆動スプロケット131が一体形成されている。
【0020】
クロスロール16の周面にはクロスガイドバー17が接合されており、織布Wはクロスガイドバー17の巻き皺防止作用を受けつつクロスロール16に巻き取られる。クロスガイドバー17は金属線のバー又は紐18によって回動可能に吊下支持されている。クロスロール16のローラ軸161には被動スプロケット19が止着されている。被動スプロケット19と駆動スプロケット131とにはチェーン20が巻掛けられている。駆動スプロケット131の回転がチェーン20を介して被動スプロケット19に伝達され、クロスロール16はサーフェスローラ11から駆動力を得る。
【0021】
サーフェスローラ11の側方には支軸21がサーフェスローラ11の軸方向と直交するように配設されており、支軸21には加圧力増大レバー22が回動可能に支持されている。加圧力増大レバー22の一端側には一対の回転子221が取り付けられている。加圧力増大レバー22の回動に伴う回転子221の回動軌跡は駆動クラッチ体12の端面と交差する。
【0022】
加圧力増大レバー22の他端の回動軌跡上には圧力付与手段としてのエアシリンダ23が配設されている。エアシリンダ23の出力伝達体となるピストンロッド231は加圧力増大レバー22の他端を指向しており、ピストンロッド231と加圧力増大レバー22の他端との間には駆動クラッチ体12を付勢する弾性体としての圧縮ばね24が介在されている。エアシリンダ23に圧縮エアを供給するエア源(図示略)とエアシリンダ23との間にはモータ駆動式の圧力調整器25が介在されている。圧力調整器25は前記エア源から供給される圧縮エアの圧力を減圧し、圧力調整器25で減圧された圧縮エアがエアシリンダ23に供給される。エアシリンダ23内のピストン232に掛かる加圧力がピストンロッド231及び圧縮ばね24を介して加圧力増大レバー22に伝達される。加圧力増大レバー22に伝達された加圧力は、増大されて回転子221を介して駆動クラッチ体12に伝えられる。この加圧力伝達により駆動クラッチ体12が被動クラッチ体13に圧接される。従って、第1の実施の形態では、エアシリンダ23、圧縮ばね24及び加圧力増大レバー22によって一対の摩擦クラッチ体12,13に対する加圧手段が構成される。
【0023】
圧力調整器25は圧接力制御手段としての圧接力制御装置26の制御を受ける。圧接力制御装置26は、記憶部28と制御回路29と駆動回路30とからなる。圧力調整器25とエアシリンダ23との間のエア供給経路上のエア圧力は圧力検出器27によって検出される。圧力検出器27はエア圧力の検出情報を駆動回路30に送る。駆動モータMの作動を制御する織機制御コンピュータCは、織機回転角度検出用のロータリエンコーダ31から得られる製織時の原点信号の入力に基づいて織機の回転回数を計測する。原点信号は織機1回転毎、即ち緯入れ1回毎に出力される。織機制御コンピュータCは、計測した織機の回転回数情報及び織機の回転速度に基づいて織布Wの織り長さを算出する。従って、ロータリエンコーダ31及び織機制御コンピュータCによってクロスロール16の巻径に関する情報を電気信号として取り出す巻径検出手段が構成される。織機制御コンピュータCは算出した織り長さの電気信号情報を制御回路29に送る。
【0024】
記憶部28は、エアシリンダ23へ供給されるエア圧力の設定値を変更するための設定圧力変更プログラムを記憶する。制御回路29は、織機制御コンピュータCから得られる織り長さの電気信号情報及び前記設定圧力変更プログラムに基づいて圧力調整指令を駆動回路30に出力する。駆動回路30は、制御回路29からの圧力調整指令及び圧力検出器27から得られるエア圧力検出情報に基づいて圧力調整器25の圧力調整状態をフィードバック制御する。圧力調整器25によって設定される圧縮エアの設定圧力が高くなってゆくと、加圧力増大レバー22を介して駆動クラッチ体12に加えられる加圧力は増大してゆき、駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力が増大してゆく。
【0025】
前記設定圧力変更プログラムは、予定された生産織り長さに対してクロスロール16の巻始めの張力に対応する初期エア圧力と、巻終わりの張力に対応する最終エア圧力とを予め設定し、この間を前記織り長さの電気信号情報で表される織布Wが所定量増加する毎にエア圧力を一定値ずつ増加する単位圧力を設定したプログラムで構成される。このプログラムは図示しない入力装置によって織布の種類毎に予め設定しておいて選択使用するか、機替え毎に入力設定して使用することができる。
【0026】
又、前記設定圧力変更プログラムは、初期エア圧力と最終エア圧力との間で織り長さの増加、即ちクロスロール16の巻径の増加に伴い、エア圧力を連続的に増加させるようにしたプログラムで構成することもできる。さらに、これらの設定圧力変更プログラムは、織機の稼動前に前記入力装置によって自由に設定変更することができると共に、織機の運転中においても前記入力装置によって自由に変更可能である。これにより、織機の運転中に巻皺が発生したような場合、これを無くすようにエア圧力の変更設定を行なうことができる。なお、前記設定圧力変更プログラムの予定生産織り長さ、初期エア圧力、最終エア圧力、単位圧力や現時点でのエア圧力等を適当な表示装置上に表示する構成を採用することも可能で、これにより使用中の設定圧力変更プログラムや現状の制御状態を自由に把握することができる。
【0027】
上記構成による実施の形態の作用を次に説明する。
織機の運転が開始されると、織成の進行に伴いロータリエンコーダ31からの信号が順次織機制御コンピュータCに入力される。織機制御コンピュータCでは入力信号に基づいて織布Wの織り長さが計算され、クロスロール16の巻径に関する電気信号情報として制御回路29に入力される。制御回路29では、入力された巻径に関する電気信号情報と記憶部28に記憶された設定圧力変更プログラムとに基づき駆動回路30を駆動して圧力調整器25を作動し、圧力検出器27からエア圧力の検出情報を受けながらエアシリンダ23へ供給するエア圧力を所定値に増大してゆく。従って、エアシリンダ23はクロスロール16の巻径の変化に伴い増加された押圧力をピストンロッド231、圧縮ばね24、加圧力増大レバー22及び回転子221を介して駆動クラッチ体12に加える。このため、駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との圧接力はクロスロール16の巻径の増加に伴い順次増加され、駆動スプロケット131、チェーン20及び被動スプロケット19を介してクロスロール16のローラ軸161の回転トルクが増大し、織布引き取り力が適正状態に維持される。
【0028】
第1の実施の形態では以下の効果が得られる。
(1-1)圧接力制御手段である圧接力制御装置26は、巻径検出手段を構成するロータリエンコーダ31及び織機制御コンピュータCによって得られた織り長さの電気信号情報に基づいて設定圧力を適正値にするように制御する。駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力は前記巻径検出手段によって得られる織り長さの電気信号情報に影響を与えないため、クロスロール16の巻径の検出は正確に行なわれる。従って、駆動クラッチ体12及び被動クラッチ体13は適正値の圧接力で圧接し、クロスロール16における織布引き取り力が巻径変化に関係なく適正値に維持される。又、クロスロール16の巻径変化をレバー機構で伝達しないため、装置構成が簡素、かつコンパクトになる。
(1-2)エア圧力制御手段となる圧力調整器25及びエアシリンダ23を備えた加圧手段では、エアの設定圧力の高精度の制御が可能である。このような高精度の制御は駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力の高精度制御に適切である。従って、圧力調整器25及びエアシリンダ23を備えた加圧手段は、織り長さの電気信号情報、即ち巻径の電気信号情報に基づく圧接力制御に好適である。
(1-3)クロスロール16の巻径に関する電気信号情報及び設定圧力変更プログラムに基づく圧接力制御の自由度は高く、織物種類に応じて設定圧力変更プログラムを適正選択あるいは変更することによって織物種類毎に織布引き取り力を適正値に維持することができる。又、設定圧力変更プログラムは、織機の稼動前あるいは織機の運転中に前記入力装置の操作により自由に設定変更が可能であり、織布に応じた適正な織布巻き取り力を得ることができる。
(1-4)加圧力増大レバー22は、エアシリンダ23によって加圧力増大レバー22に加えられる加圧力を増大して可動クラッチ体である駆動クラッチ体12に伝達する。加圧力増大レバー22の採用は、小型のエアシリンダ23によって必要な圧接力を発生させる上で好適である。
(1-5)エアシリンダ23のエア圧力は、出力伝達体となるピストンロッド231及び弾性体である圧縮ばね24を介して加圧力増大レバー22に伝達される。図1においてピストン232がエアシリンダ23の後壁233に当接した状態では、圧縮ばね24の最小のばね力が加圧力増大レバー22に作用する。ピストン232がエアシリンダ23の前壁234に当接した状態では、圧縮ばね24の最大のばね力が加圧力増大レバー22に作用する。ピストン232が後壁233に当接したときの圧縮ばね24のばね力が圧力調整器25によって設定される最小設定圧力に基づく押圧力となるように、かつピストン232が前壁234に当接したときの圧縮ばね24のばね力が圧力調整器25によって設定される最大設定圧力に基づく押圧力となるように圧縮ばね24のばね特性を適正設定しておけば、エア圧力の異常高圧状態の発生時においても、駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力は圧縮ばね24の最大ばね力を越えることはない。又、エア圧力の異常低圧状態の発生時においても、駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力は圧縮ばね24の最小ばね力を下回ることはない。従って、エア圧力の異常高圧状態あるいは異常低圧状態の発生時においても、一対の摩擦クラッチ体12,13間の圧接力が過大あるいは過小になることはない。
(1-6)ロータリエンコーダ31及び織機制御コンピュータCは、製織時の織機の回転回数を検出する回転回数検出手段を構成し、この回転回数検出手段は巻径検出手段を構成する。織機を制御するのに必要な織機回転角度検出用のロータリエンコーダ31を利用した巻径検出手段は最も簡便である。
【0029】
次に、図3の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
この実施の形態では、シリンダ32が固定配置されており、シリンダ32には駆動クラッチ体12が嵌め込まれている。シリンダ32内には圧縮エアが供給され、シリンダ32内のエア圧力が駆動クラッチ体12に直接作用する。クロスロール16の巻径はポテンショメータ34によって検出される。ポテンショメータ34はクロスロール16の巻径の電気信号情報を圧接力制御装置37の制御回路35に送る。記憶部36は、シリンダ32へ供給されるエア圧力の設定値を変更するための設定圧力変更プログラムを記憶する。制御回路35は、巻径検出手段であるポテンショメータ34から得られる巻径の電気信号情報及び前記設定圧力変更プログラムに基づいて圧力調整指令を駆動回路30に出力する。
【0030】
この実施の形態においても第1の実施の形態における(1-1)項〜(1-3)項と同じ効果が得られる。
次に、図4の第3の実施の形態を説明する。加圧手段は第1の実施の形態の場合と同じであり、第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
【0031】
この実施の形態では、クロスロール16の回転量が回転量検出器38によって検出される。回転量検出器38はクロスロール16の回転量の電気信号情報を圧接力制御装置39の制御回路40に送る。クロスロール16の回転量はクロスロール16の巻径を反映し、クロスロール16の回転量の電気信号情報は巻径の電気信号情報と見なせる。記憶部41は、エアシリンダ23へ供給されるエア圧力の設定値を変更するための設定圧力変更プログラムを記憶する。制御回路40は、巻径検出手段である回転量検出器38から得られる回転量の電気信号情報及び前記設定圧力変更プログラムに基づいて圧力調整指令を駆動回路30に出力する。
【0032】
この実施の形態においても第1の実施の形態における(1-1)項〜(1-3)項と同じ効果が得られる。
次に、図5の第4の実施の形態を説明する。加圧手段は第1の実施の形態の場合と同じであり、第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
【0033】
この実施の形態では、クロスガイドバー17が吊下バー42によって吊下されており、吊下バー42は支軸43に止着されている。支軸43の回転角は回転角検出器44によって検出される。回転角検出器44は支軸43の回転角の電気信号情報を圧接力制御装置45の制御回路46に送る。支軸43の回転角はクロスロール16の巻径を反映し、支軸43の回転角の電気信号情報は巻径の電気信号情報と見なせる。記憶部47は、エアシリンダ23へ供給されるエア圧力の設定値を変更するための設定圧力変更プログラムを記憶する。制御回路46は、巻径検出手段である回転角検出器44から得られる回転角の電気信号情報及び前記設定圧力変更プログラムに基づいて圧力調整指令を駆動回路30に出力する。
【0034】
この実施の形態においても第1の実施の形態における(1-1)項〜(1-3)項と同じ効果が得られる。
次に、図6の第5の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
【0035】
この実施の形態では、加圧板48が駆動クラッチ体12と対向してサーフェスローラ11の軸線方向へ移動可能かつ回転不能に配設されており、加圧板48と駆動クラッチ体12との間には圧縮ばね49が介在されている。加圧板48にはねじ軸50が螺合されており、ねじ軸48はモータ51によって回転駆動される。モータ51が正転すると加圧板48が駆動クラッチ板12側に移動し、圧縮ばね49が縮小する。圧縮ばね49の縮小により駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力が増加する。
【0036】
圧接力制御装置52の記憶部53は、モータ51の回転位置を変更するための回転位置変更プログラムを記憶する。モータ51の回転位置が正転方向に変わってゆくと駆動クラッチ体12と被動クラッチ体13との間の圧接力が増加する。従って、回転位置変更プログラムは設定圧力変更プログラムの一種である。制御回路54は、織機制御コンピュータCから得られる織り長さの電気信号情報及び前記回転位置変更プログラムに基づいて回転位置調整指令を駆動回路55に出力する。駆動回路55は、制御回路54からの回転位置調整指令及びモータ51に組み込まれた回転位置検出用のロータリエンコーダ511から得られる回転位置検出情報に基づいてモータ51の回転位置をフィードバック制御する。
【0037】
この実施の形態においても第1の実施の形態における(1-1)項〜(1-3)項と同じ効果が得られる。
なお、第5の実施の形態において、加圧板48の移動位置を検出してフィードバックすることにより加圧力のプログラム制御を行なうようにしてもよい。
【0038】
本発明では、トルクリミッタとして電磁クラッチを用いてもよい。この電磁クラッチにおける圧接力は、供給電流値を変更することによって変更できる。供給電流値は巻径の電気信号情報に応じて変更される。
【0039】
又、本発明では、カムあるいは偏心輪を回転して駆動クラッチ体に直接あるいはばね等の弾性体を介して加圧力を付与する加圧手段の採用も可能である。この場合、カムあるいは偏心輪の回転位置制御はモータ制御が好適である。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、巻径の電気信号情報に基づいて一対の摩擦クラッチ体間の圧接力を制御するようにしたので、機構の複雑化、専有スペースの問題を回避しつつクロスロールの巻径変化に関係なくクロスロールにおける織布引き取り力を適正値に維持し得るという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す一部破断正面図。
【図2】側面図。
【図3】第2の実施の形態を示す一部破断正面図。
【図4】第3の実施の形態を示す要部正面図。
【図5】第4の実施の形態を示す要部側面図。
【図6】第5の実施の形態を示す一部破断正面図。
【符号の説明】
12…可動クラッチ体となる駆動クラッチ体、13…不動クラッチ体となる被動クラッチ体、16…クロスロール、22…加圧力増大レバー、23…エアシリンダ、231…出力体となるピストンロッド、24…弾性体となる圧縮ばね、25…エア圧力制御手段となる圧力調整器、26…圧接力制御手段となる圧接力制御装置、31…巻径検出手段を構成する回転回数検出手段となるロータリエンコーダ、C…巻径検出手段を構成する織機制御コンピュータ。
Claims (5)
- 圧接される一対の摩擦クラッチ体を備えたトルクリミッタを介して駆動源の回転トルクをクロスロールに伝達する織布巻き取り装置において、
前記一対の摩擦クラッチ体を圧接力変更可能に圧接する加圧手段と、
前記クロスロールの巻径の情報を電気信号として取り出す巻径検出手段と、
前記巻径検出手段によって得られた巻径の電気信号情報に基づいて前記加圧手段の圧接力を変更制御する設定圧力変更プログラムを有する圧接力制御手段とを備え、
前記加圧手段は、前記摩擦クラッチ体を付勢する圧縮ばねと、同圧縮ばねを介して摩擦クラッチ体を加圧する圧接力変更可能な圧接力付与手段とからなり、
前記圧接力付与手段は、前記一対の摩擦クラッチ体をエア圧力で圧接するピストン及び前記ピストンの前進端及び後進端を規定する前壁と後壁とを有するエアシリンダと、前記エアシリンダに供給されるエアの圧力を変更するエア圧力制御手段とを備えており、
前記ピストンが前記エアシリンダの後壁に当接したときの圧縮ばねのばね力が前記エア圧力制御手段によって設定される前記エアシリンダの最小設定圧力に基づく押圧力となるように、かつ前記ピストンが前記エアシリンダの前壁に当接したときの圧縮ばねのばね力が前記エア圧力制御手段によって設定される前記エアシリンダの最大設定圧力に基づく押圧力となるように前記圧縮ばねのばね特性を設定した織機における織布巻き取り装置。 - 前記クロスロールに回転トルクを伝達する駆動源をサーフェスローラで構成した請求項1に記載の織機における織布巻き取り装置。
- 前記一対の摩擦クラッチ体の一方は他方の摩擦クラッチ体に圧接する方向へ移動可能な可動クラッチ体であり、他方は前記可動クラッチ体に圧接する方向へ移動不能な不動クラッチ体であり、前記エアシリンダのエア圧力は、加圧力増大レバーを介して前記可動クラッチ体の前記移動可能な方向へ伝達される請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の織機における織布巻き取り装置。
- 前記エアシリンダの一部であって前記加圧力増大レバーに前記エア圧力を伝達する出力伝達体と前記加圧力増大レバーとの間に前記圧縮ばねを介在した請求項3に記載の織機における織布巻き取り装置。
- 前記巻径検出手段は、製織時の織機の回転回数を検出する回転回数検出手段を含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の織機における織布巻き取り装置。
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