JP3793917B2 - 誘導電動機の制御装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導電動機のベクトル制御に係り、特に、周波数が高い電圧制御不能領域においてもベクトル制御を可能にする誘導電動機の制御装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両用電気車を駆動する誘導電動機をベクトル制御する技術は、特開平5−83976号公報に記載されている。また、鉄道車両用電気車では、一般的に高速運転領域ではインバータのスイッチング損失を減らし、また、直流電源電圧を最大限利用するため、PWMパルスモードが1パルスモードとなる制御を用いている。しかし、この電圧の大きさを制御することができない1パルスモードにおいても、ベクトル制御を行う技術が第33回鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集(1996年11月)p.247−250「ベクトル制御を適用した車両駆動システム」に記載されている。
上記特開平5−83976号公報に記載のベクトル制御では、励磁電流指令値と検出した励磁電流との偏差及びトルク電流指令値と検出したトルク電流との偏差に基づきベクトル制御の2つの電圧指令信号を補正する2つの電流制御手段の他にすべり周波数を補正するための第3の電流制御手段を有しており、制御構成が複雑になるため、マイコンを用いて指令信号を演算する場合に演算時間が大きくなってしまうという課題がある。また、上記「ベクトル制御を適用した車両駆動システム」の文献では、1パルスモードにおいて磁束補正値演算、つまり、弱め界磁を行うフィードバックを付加する必要がある。また、両従来技術とも1パルスモードとそれ以外のモードで制御系を切り替える必要がある。
なお、上記従来技術の他に特開平2−32788号公報がある。同公報記載のベクトル制御の構成は、第16図を見るように、励磁電流及びトルク電流の各成分に応じて電圧指令を演算する点、トルク電流の指令にその実際値がなるように1次周波数を指令する電流制御系を備える点及び得られた1次周波数指令より上記電圧指令を演算する点からなる。しかし、同公報記載のベクトル制御では、PWMパルスモードが1パルスになり、電圧制御が不能になると、ベクトル制御ができないという課題があり、それへの配慮の記載は一切されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、誘導電動機をベクトル制御するに際し、より簡単な制御構成によって低速域からPWMインバータの直流電源電圧を最大限に利用するPWMのパルス数が1パルスとなる高速域まで連続的に制御構成を切り替えることなく、良好なベクトル制御を行いうる誘導電動機の制御装置及び方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、低速域では直流電圧を可変電圧可変周波数及び高速域では定電圧可変周波数(1パルス)の交流に変換するインバータ、該インバータにより駆動される誘導電動機の一次電流における励磁電流成分指令とトルク電流成分指令に基づき演算された前記それぞれの成分に対応する電圧成分指令により求まる変調率(出力電圧指令)によりインバータの出力電圧を制御する制御装置を備えた誘導電動機の制御装置において、誘導電動機一次電流よりトルク電流成分を検出する手段と、該検出したトルク電流成分値とその指令値との偏差を積分要素に入力したその出力からトルク電流成分指令を補正する手段と、該補正されたトルク電流成分指令と励磁電流成分指令との比から誘導電動機のすべり角周波数を演算し、それに基づいてインバータの出力周波数を制御する手段と、可変電圧可変周波数の制御から定電圧可変周波数の制御領域へ移行した後、変調率の大きさを所定値以上又は任意の条件でリミットする手段と、インバータの出力周波数を制御する手段により誘導電動機のすべり角周波数を演算するに当り、変調率の大きさが前記所定値以上又は任意の条件でリミットされている期間、励磁電流成分指令は、該電流成分のフィードバック制御の動作を停止し、予め定められた所定値を保持し、すべり角周波数を前記補正されたトルク電流成分指令のみで演算する手段を備える。
また、直流電圧を可変電圧可変周波及び定電圧可変周波(1パルス)の交流に変換するインバータにより誘導電動機を制御し、該誘導電動機の一次電流における励磁電流成分指令とトルク電流成分指令に基づき演算された前記それぞれの成分に対応する電圧成分指令により求まる変調率(出力電圧指令)によりインバータの出力電圧を制御し、励磁電流成分指令とトルク電流成分指令との比から誘導電動機のすべり角周波数を演算し、それに基づいてインバータの出力周波数を制御する誘導電動機の制御方法であって、可変電圧可変周波の制御から定電圧可変周波の制御領域へ移行した後、変調率を所定値に制限すると共に、励磁電流成分指令は、該電流成分のフィードバック制御の動作を停止し、予め定められた所定値を保持し、トルク電流成分指令のみを検出したトルク電流成分で補正する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
本発明の一実施形態を図1を用いて説明する。同図において、直流電源11から供給される直流は、フィルタコンデンサ13によって平滑され、電力変換器であるパルス幅変調(以下、PWMと称する)インバータ1に与えられる。
PWMインバータ1は、電源となる直流電圧を3相の交流電圧に変換してその交流電圧を誘導電動機2に供給する。電気車ではこの誘導電動機2を駆動源として走行する。
電流指令発生器3は、励磁電流指令値Id*及びトルク電流指令値Iq*を発生する。
電流制御器4は、トルク電流指令値Iq**及び後述する座標変換器5の出力であるトルク電流検出値Iqの偏差に基づき補正されたトルク電流指令値Iq**を生成し、その指令値Iq**は電圧指令演算器6及びすべり角周波数演算器7に入力される。
すべり角周波数演算器7は、励磁電流指令値Id*及び補正されたトルク電流指令値Iq**よりすべり角周波数指令値ωs*を出力する。
電圧指令演算器6は、励磁電流指令値Id*、補正されたトルク電流指令値Iq**、及び後述する1次角周波数指令値ω1*に基づき誘導電動機2に供給される回転磁界座標系の2つの電圧成分の指令であるVd*,Vq*を演算し極座標変換器8に出力する。
極座標変換器8は、Vd*,Vq*で表される電圧ベクトルを電圧ベクトルの大きさV0及び位相δに変換する。
一方、速度検出器16によって検出された誘導電動機速度ωrは、加算器17ですべり角周波数演算器7の出力であるすべり角周波数指令値ωs*と加算され、1次角周波数指令値ω1*を生成する。この1次角周波数指令値ω1*は積分器18,電圧指令演算器6に与えられる。
積分器18は、1次角周波数指令値ω1*を積分して座標基準信号θを演算する。
座標変換器5は、PWMインバータ1の出力電流を検出する電流検出器15u,15v,15wにより検出されたインバータ出力電流iu,iv,iwを入力して座標基準信号θに基づいて回転磁界座標系の励磁電流成分Id、トルク電流成分Iqに変換し、Iqは電流制御器4に出力される。
加算器19は、積分器18の出力である座標基準信号θと極座標変換器8の出力である電圧ベクトルの位相δを加算してθ’を出力する。
変調率演算器10は、電力変換器の電源となる直流電圧VFCを検出する電圧検出器14からの信号に基づいて電力変換器が出力しうる最大電圧を越えないように極座標変換器8の出力である電圧ベクトルの大きさV0を制限し変調率Vcを出力する。
PWM信号演算器9では、変調率演算器10の出力Vc及び加算器19の出力θ’よりオン,オフパルスSu,Sv,Swを発生し、PWMインバータ1に与える。
【0006】
次に、上記各部の詳細を説明する。
座標変換器5では、例えば座標基準信号θ及びインバータ出力電流iu,iv,iwから(1)式により励磁電流成分Id、トルク電流成分Iqを演算する。
【数1】
電流制御器4としては例えば比例,積分制御を用いる。(2)式はその一例である。これによりトルク電流指令値Iq*とトルク電流検出値Iqの偏差に基づいて補正されたトルク電流指令値Iq**が出力される。
【数2】
ここに、K1,K2はそれぞれ比例係数,積分係数、sはラプラス演算子である。
(3)式は、電圧指令演算器6の一例である。
【数3】
ここに、r1は誘導電動機2の1次抵抗、Lsσは漏れインダクタンス、L1は1次インダクタンスを示す。
(4)式は、すべり角周波数演算器7の一例である。
【数4】
ここに、r2は誘導電動機2の2次抵抗、Mは相互インダクタンスである。
極座標変換器8は、(5),(6)式で表される。
【数5】
【数6】
【0007】
図2は、変調率演算器10の一例を示す。除算器201により極座標変換器8の出力V0はフィルタコンデンサ電圧VFCで除算し、その出力は係数器202を経て変調率Vc’として正規化され、その値はリミッタ203に入力される。リミッタ203は入力された変調率Vc’に対し出力する変調率(電圧指令)Vcが所定の値を超えないようにするものである。図2の構成を演算式で表すと(7)式のようになる。
【数7】
ここで、変調率VcはPWMインバータの出力電圧が最大となる1パルスモードのときの電圧が1となるようにスケール変換している。min( )は最小値を取る関数で、計算した結果が1を越えた場合にはVcを1にリミットする。(7)式よりV0の最大値V0maxは(8)式のように書ける。
【数8】
以上説明した図1及び(1)〜(7)式による制御構成により、低速域からPWMインバータ1の直流電圧を最大限に利用するPWMのパルスモードが1パルスとなる高速域まで良好な制御ができる。
【0008】
以下に、上記構成における動作について説明する。
まず、電圧指令値が電源の直流電圧で決まる電力変換器の出力可能な最大電圧より小さい低速域の場合を説明する。
極座標変換器の出力VOは、変調率演算器10で制限する電圧V0maxより小さいので、Vc<1となる。このときPWMインバータ1が出力する電圧に誤差がなく、誘導電動機2のパラメータが電圧指令演算器6、すべり角周波数演算器7で用いたパラメータと一致している理想的な条件のもとでは、PWMインバータ1は電圧指令値どおりの電圧を出力する。その結果、電流指令発生器3の出力Id*,Iq*と座標変換器の出力Id,Iqは完全に一致し、ベクトル制御が行われる。実際には、PWMインバータ1の出力電圧誤差や誘導電動機2のパラメータの変動などによりId*,Iq*とId,Iqの間に不一致が生じるが、その場合には電流制御器4によりIq*にIqが一致するように制御される。例えば誘導電動機の2次抵抗r2がすべり角周波数演算器7の演算で使われているr2よりも大きくなった場合を考えると、すべり角周波数演算器7が出力するすべり角周波数指令値ωs*は本来出すべき値より小さくなるため、誘導電動機電流が小さくなり、Iq*とIqが不一致となる。このとき電流制御器4はこの不一致をなくすように働き出力Iq**を大きくする。その結果、すべり角周波数指令値ωs*が大きくなり、パラメータが変動したことによる誤差を補正するため、若干のパラメータ誤差があっても、電流制御器4の働きにより安定にベクトル制御を行うことができる。
【0009】
つぎに、誘導電動機に出力する電圧が電力変換器の出力可能な最大電圧以上となる(PWMのパルスモードが1パルスになる)高速域の場合について説明する。
誘導電動機のパラメータ誤差のない理想的な条件のもとでも、極座標変換器8が出力する電圧ベクトル指令値の大きさV0は、PWMインバータ1から出力されうる最大電圧V0maxより大きくなり、電圧指令値と出力電圧に不一致が生じる。その結果として電流指令発生器3の出力Id*,Iq*と座標変換器5の出力Id,Iqは不一致となる。
この条件における課題を解決するために付加したものが変調率演算器9である。
同演算器9は、図2に示すように、演算された電圧指令Vc’が出力されうる最大電圧V0maxより大きくなると、その値でリミットし、そのリミットした値をインバータの変調率(出力電圧指令)Vcとして出力する。
これまでのベクトル制御ではVc’とV0maxとの差分に相当する量をフィードバックする必要があった。例えば上述した「ベクトル制御を適用した車両駆動システム」の文献では、電流指令発生器3の出力である励磁電流指令値Id*を減らすよう調整している。(なお、本発明の動作を説明する上で、このようにId*が調整されてベクトル制御が行われているとしたときの励磁電流指令値をI d **とする。)
【0010】
しかし、本実施形態では、上記のようなフィードバックを行うことを必要とせず、ベクトル制御を行うという点に大きな特徴を有している。そのことについて以下制御原理について詳細に説明する。
図1の電流制御器4は、上記したように低速域においてはパラメータ変動による補償が主たる働きであったが、高速域ではさらに同制御器は上述した電圧の不一致によるIq*とIqの誤差を一致させるように動作するのである。
例えば、Vc’がV0maxより大きくなると、その差に応じて電流制御器4の出力Iq**はIq*より増加する。その結果、制御の平衡状態においては、電流制御器4の出力Iq**と電流指令発生器3の出力Id*の比であるIq**/Id*は本来ベクトル制御が行われているときの比であるIq/Idに等しくなる。このときすべり角周波数演算器7の出力であるすべり角周波数指令値ωs*は、(4)式より明らかなように、ベクトル制御が行われている場合と等しくなり、ωs*より加算器17、積分器18で演算される座標基準信号θも等しい。同様に制御が平衡状態になるまでの時間内に誘導電動機2の速度ωrが変化しないとみなせるように電流制御器4の応答時間をきめることで、電圧指令演算器6の出力Vd*,Vq*の比Vq*/Vd*も(3)式より変化しない。
したがって、(6)式より極座標変換器8の出力δも本来ベクトル制御が行われているときと等しくなる。その結果、加算器19で演算されるθ’も等しいことから誘導電動機2には通常のベクトル制御が行われた場合と全く同じ電圧が印加され、座標変換器5は理想的には出力Id,Iqとして通常のベクトル制御が行われたときの値に等しいId*及びIq*を出力する。電流制御器4は、積分要素を含んでいるので、入力Iq*とIqが等しくなっても、Iq**はIq*より大きい値で平衡状態となる。
つまり、極座標変換器8の出力V0がPWMインバータ1から出力される電圧の最大値V0maxより大きい場合でも、本実施形態によれば電流制御器4の働きにより、電流指令発生器3を調整しなくても自動的に励磁電流指令値を下げたベクトル制御が行われた場合と全く等価になる。別の言い方をすると、PWMインバータの出力電圧が出力しうる最大電圧に固定されると、自動的に弱め界磁制御が行われる。また、この制御は、電源の直流電圧が変動した場合にも上述した制御系の働きにより自動的にその影響が補正され、定常状態では常にトルク電流Iqがトルク電流指令値Iq*に一致するように制御される。
【0011】
図3は、図1の制御系の動作を誘導電動機の静止状態からインバータ出力電圧が最大値に達し、電圧一定となる領域に至るまでをシミュレーションしたものである。
同図(a)は、時間tに対する誘導電動機の速度ωrを示したもので、誘導電動機が時間とともに加速していることを表している。同図(b)は、極座標変換器8の出力V0をスケール変換して変調率Vcと同じスケールにしたVc’及び変調率演算器10の出力Vcの時間変化を示している。18秒付近でVc’がリミッタ203に引っかかり、それ以降Vcが1(PWMインバータの出力可能最大電圧)に固定されている。同図(c)は、座標変換器5の出力Id,Iq及び電流指令発生器3の出力Id*、電流制御器4の出力Iq**の時間変化を示している。ここで電流指令発生器3からの出力Id*,Iq*は常に一定としている。電圧がリミットされるまではIdとId*及びIqとIq**は一致しているが、電圧が一定となった時点以降ではIq**は電流制御器4の働きにより誘導電動機の速度が大きくなるにつれて大きくなることがわかる。一方、電圧一定時点以降のIdはId*に対して徐々に小さくなっている。つまり、弱め界磁制御が行われている。なお、図示していないが、Iq*は電流制御器4の働きによりIqに一致した値で一定値を指令しており、Id*の指令値も一定として与えている。
同図(d)は、誘導電動機のトルクの時間変化を示しており、電圧リミットの時点まではトルク電流指令値Iq*、励磁電流指令値Id*が一定であるので、トルクも一定となる。電圧リミット時点以降では、指令値が一定としても誘導電動機に与えられる電圧がリミットされているため、弱め界磁が行われている分だけ自動的にトルクが低下している。
このように、上述した制御原理の基づく制御動作がシミュレーション上でも確認され、低速から高速域まで連続してベクトル制御が実現できていることがわかる。
【0012】
次に、本実施形態でのベクトル制御を違った観点から実証する。図4は、電圧一定領域(第3図の25秒付近)におけるトルク応答シミュレーションの一例を示す。
同図では、トルク指令値Trefの変化に対する誘導電動機のトルクTの応答に若干の過渡的振動が発生しているが、それを除けばTrefに対してTが速やかに応答しており、このことから本実施形態によりベクトル制御が可能なことが分かる。なお、上記で発生している過渡的振動は電流制御器4の制御定数を制御対象となる誘導電動機の定数に合わせた最適値で設定することで低減することができる。
【0013】
以上、本実施形態によれば、トルク電流を制御する1つの電流制御器と変調率演算器だけで、低速域から電圧指令の大きさが直流電圧で定まるインバータの出力可能な最大電圧を上回る(PWMパルスモードが1パルス領域)高速域に至るまで連続的に制御構成を変えることなく、誘導電動機をベクトル制御可能となり、特に電圧パルスが1パルスの高速域においてもトルク応答を早くすることができる。
また、図2で示されるように、変調率Vcには、直流電源電圧VFCの変動に伴う補正が自動的に行われるので、直流電源電圧変動の影響を受けることなく指令値通りのインバータの出力を制御できる。
さらに、上記実施形態では、電圧リミッタの制限値を電力変換器の出力可能な最大電圧とした場合について述べたが、電圧リミッタの制限値は弱め界磁制御を始めたい任意の電圧にセットしてもよく、その任意の点から弱め界磁制御が実行される。したがって、このセット値を変更するだけで弱め界磁制御ができるので、従来のような励磁電流指令Id*の弱め界磁パターンを特別に用意する必要が無くなり、制御構成の簡単化が図れる。
【0014】
なお、本実施形態では、電流制御器をトルク電流においてのみ設けたが、電圧指令値が電源の直流電圧で決まる電力変換器の出力可能な最大電圧より小さい低速域においては、励磁電流とトルク電流の両方に電流制御器を設けても構わない。
ただし、極座標演算器8の出力V0が出力可能最大電圧V0maxより大きくなった場合には、励磁電流の電流制御器が動作しないように制御を切り替える必要がある。なぜならこの場合には、図3からもわかるように、電流指令発生器3の出力である励磁電流指令値Id*と座標変換器5の出力である励磁電流検出値Idは一致するとは限らないので、Id*とIdの偏差に基づいて定常偏差を0にする積分要素を持った電流制御器を入れると、本実施形態の制御は成り立たなくなるからである。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、誘導電動機を低速域から電圧指令(変調率)の大きさが直流電圧で定まるインバータの出力可能な最大電圧を上回る(PWMパルスモードが1パルス領域)高速域まで連続的に制御構成を切り替えることなく、良好なベクトル制御を行いうることができる。
したがって、本発明は、トルク応答特性が要求される鉄道の電気車の制御への利用はもちろんのこと、道路を走行する電気自動車への利用に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す誘導電動機の制御装置のブロック図である。
【図2】図1における変調率演算器の詳細構成図である。
【図3】本発明の制御のシミュレーション例である。
【図4】本発明の制御のトルク応答シミュレーション例である。
【符号の説明】
1…パルス幅変調インバータ、2…誘導電動機、3…電流指令発生器、4…電流制御器、5…座標変換器、6…電圧指令演算器、7…すべり角周波数演算器、8…極座標変換器、9…PWM信号演算器、10…変調率演算器、11…直流電源、13…フィルタコンデンサ、14…電圧検出器、15…電流検出器、16…速度検出器、17…加算器、18…積分器、19…加算器
Claims (2)
- 低速域では直流電圧を可変電圧可変周波数及び高速域では定電圧可変周波数(1パルス)の交流に変換するインバータ、該インバータにより駆動される誘導電動機の一次電流における励磁電流成分指令とトルク電流成分指令に基づき演算された前記それぞれの成分に対応する電圧成分指令により求まる変調率(出力電圧指令)により前記インバータの出力電圧を制御する制御装置を備えた誘導電動機の制御装置において、
前記誘導電動機一次電流よりトルク電流成分を検出する手段と、該検出したトルク電流成分値とその指令値との偏差を積分要素に入力したその出力から前記トルク電流成分指令を補正する手段と、該補正されたトルク電流成分指令と前記励磁電流成分指令との比から前記誘導電動機のすべり角周波数を演算し、それに基づいて前記インバータの出力周波数を制御する手段と、前記可変電圧可変周波数の制御から前記定電圧可変周波数の制御領域へ移行した後、前記変調率の大きさを所定値以上又は任意の条件でリミットする手段と、前記インバータの出力周波数を制御する手段により前記誘導電動機のすべり角周波数を演算するに当り、前記変調率の大きさが前記所定値以上又は任意の条件でリミットされている期間、前記励磁電流成分指令は、該電流成分のフィードバック制御の動作を停止し、予め定められた所定値を保持し、前記すべり角周波数を前記補正されたトルク電流成分指令のみで演算する手段を備えたことを特徴とする誘導電動機の制御装置。 - 直流電圧を可変電圧可変周波及び定電圧可変周波(1パルス)の交流に変換するインバータにより誘導電動機を制御し、該誘導電動機の一次電流における励磁電流成分指令とトルク電流成分指令に基づき演算された前記それぞれの成分に対応する電圧成分指令により求まる変調率(出力電圧指令)により前記インバータの出力電圧を制御し、前記励磁電流成分指令と前記トルク電流成分指令との比から前記誘導電動機のすべり角周波数を演算し、それに基づいて前記インバータの出力周波数を制御する誘導電動機の制御方法であって、
前記可変電圧可変周波の制御から前記定電圧可変周波の制御領域へ移行した後、前記変調率を所定値に制限すると共に、前記励磁電流成分指令は、該電流成分のフィードバック制御の動作を停止し、予め定められた所定値を保持し、前記トルク電流成分指令のみを検出したトルク電流成分で補正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。
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