JP3793477B2 - 分注装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば臨床検査自動分析装置に用いられ、吸排ポンプの作動により管路および分注ノズル内の液を介して所定液体を分注する分注装置、特に分注吸引量および吐出量の分注異常を検知するようにした分注装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査用検体検査分析装置では、分析工程のなかで、それぞれの工程、例えば検液や試薬の吸引・吐出動作、が正常に終了したか否かを逐次モニタすることが求められている。
【0003】
このようなことから、例えば検液や試薬等の液体を分注する分注装置として、分注ノズルまたは配管経路に圧力センサを配置し、分注時の測定圧力と閾値とを比較することにより分注異常を検知するようにしたもの(特開平11−258244号公報)や、配管経路に圧力センサを配置し、その測定圧力を積分して閾値と比較することにより分注異常を検知するようにしたもの(特表2000−513108号公報、特表2000−513109号公報)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の分注装置にあっては、測定値と比較するための閾値を、検液の粘性や、配管経路内の摩擦などの影響によるバラツキを考慮して、幅を持たせて設定する必要があるため、分注異常の検知精度が低下することが懸念されると共に、経時変化による配管経路内の汚れによって圧力が変化すると誤検知が生じる恐れがある。
【0005】
また、分注ノズルや配管チューブには機差があるため、メンテナンスのためにこれらを交換した場合には、閾値の再設定を要し、手間がかかることも懸念される。なお、閾値の幅をより大きくすることで、分注ノズルや配管チューブの交換時における閾値の再設定操作を省略することも考えられるが、このようにすると分注異常の検知精度がさらに低下することになる。
【0006】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、分注すべき液体の粘性、配管経路内の液体の摩擦、配管経路の経時変化や機差などの影響を受けること無く、常に安定した状態で分注吸引量および吐出量の分注異常を検知できるよう適切に構成した分注装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に係る発明は、吸排ポンプの作動により管路および分注ノズル内の液を介して所定液体を分注する分注装置において、上記管路に配置された断面積の異なる流路を有する継ぎ手と、該継ぎ手の断面積の大きい流路側および小さい流路側にそれぞれ配置した2個の圧力センサと、これら2個の圧力センサによる測定圧力の差の平方根を時間で積分し、その積分した値に基づいて上記管路内を流れる液体の流量を演算し、その演算した流量に基づいて分注異常を検知する異常検知回路と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
このように、本発明では、管路内を流れる流量に基づいて分注異常を検知するので、分注すべき液体の粘性、配管経路内の液体の摩擦、配管経路の経時変化や機差などに影響されること無く、安定した状態で分注吸引量および吐出量の分注異常を検知することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による分注装置の一実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態における分注装置の要部の概略構成を示すものである。この分注装置は、臨床検査用自動分析装置に用いられるもので、分注ノズル1は、配管チューブ2を介して継ぎ手3の一端に連結し、継ぎ手3の他端は配管チューブ4を介してシリンジポンプ5に連結する。また、シリンジポンプ5は、配管チューブ6、電磁弁7、配管チューブ8、ポンプ9および配管チューブ10を介して洗剤液11を収容する洗剤容器12に連結する。
【0011】
分注ノズル1は、制御回路15の制御のもとに分注ノズル駆動手段16により水平方向に駆動して、洗浄位置、試薬吸引位置、検液吸引位置、および吐出位置に選択的に位置決めすると共に、各位置において上下方向に駆動する。また、シリンジポンプ5は、制御回路15の制御のもとにポンプ駆動手段17により吸排動作させ、電磁弁7およびポンプ9は、ポンプ駆動手段17によるシリンジポンプ5の駆動に同期して制御回路15により駆動する。なお、分注ノズル1から洗剤容器12に至る配管経路は、試薬や検液の吸引前において、全体を洗剤液11で満たすようにする。
【0012】
継ぎ手3は、図2に詳細断面図を示すように、一端側の流路21と他端側の流路22とを連続させ、かつ流路21と流路22とで断面積が異なるように、この実施の形態では流路21の直径を流路22の直径よりも小さく形成する。また、流路21,22には、それぞれ鉛直方向に流路21a,22aを形成し、これら流路21a,22aを塞ぐようにそれぞれ圧力センサ25,26を配置する。圧力センサ25,26は、例えば水頭をセンサ面で検知する歪みゲージ式のものを用いる。なお、圧力センサ25,26の上部は、キャップ28,29で覆っておく。
【0013】
圧力センサ25,26による測定圧力は、図1に示すように異常検知回路31に供給する。異常検知回路31は、A/D変換器32および演算回路33を有し、圧力センサ25,26での測定圧力をA/D変換器32でデジタル値に変換して演算回路33に供給し、演算回路33において両測定圧力に基づいて流量を演算して分注吸引量および吐出量の分注異常の有無を検知し、その検知結果を制御回路15に供給する。
【0014】
ここで、シリンジポンプ5の吸引動作あるいは吐出動作により、継ぎ手3を流れる洗剤液11の単位時間の流量qは、流路21の直径をD1、流路21側の圧力センサ25による測定圧力をP1、流路22の直径をD2(>D1)、流路22側の圧力センサ26による測定圧力をP2、流量係数をC、洗剤液11の比重をρ、重力加速度をgとすると、ベルヌーイの定理および連続に式から、継ぎ手3を平行に配置した場合には、下記の(1)から得ることができる。
【0015】
【数1】
【0016】
また、上記(1)式は固定値を含んでいるので、定数をαとすると、下記の(2)式のように表わすことができる。
【0017】
【数2】
【0018】
したがって、実際の流量Qは、下記(3)式に示すように、単位時間の流量qを分注時間tで積分することにより得ることができる。
【0019】
【数3】
【0020】
演算回路33では、上記(2)式および(3)式の演算を行なって実際の流量(吸引量および吐出量)Qを求め、その流量Qに基づいて分注異常の有無を検知して、その検知結果を制御回路15に供給する。
【0021】
以下、本実施の形態の分注装置の概略動作について説明する。
【0022】
先ず、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により水平移動させて洗浄位置に位置決めし、その位置で、電磁弁7およびポンプ9を連動して駆動すると共に、その駆動と同期してポンプ駆動手段17によりシリンジポンプ5を吸排動作させて、洗剤容器12に収容されている洗剤液11を分注ノズル1から洗浄槽35に吐出させることにより、配管経路内の全てに洗剤液11を充填させる。
【0023】
その後、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により水平移動させて検液吸引位置に位置決めし、その位置で下降させて分注ノズル1の先端をサンプルチューブ36に収容された検液37に侵入させ、その状態でポンプ駆動手段17によりシリンジポンプ5を吸引動作させて検液37を吸引する。
【0024】
次に、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により上昇させてから、水平移動させて吐出位置に位置決めした後に下降させて、ポンプ駆動手段17によりシリンジポンプ5を吐出動作させて反応容器38内に検液を吐出する。
【0025】
その後、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により上昇させてから、水平移動させて洗浄位置に位置決めし、その位置で下降させて、洗浄槽35内で図示しない給液手段からの洗剤液により分注ノズル1の外壁を洗浄すると同時に、洗剤液11を分注ノズル1から吐出して、分注ノズル1の内壁を洗浄する。
【0026】
次に、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により上昇させてから、水平移動させて試薬吸引位置に位置決めした後に下降させて、分注ノズル1の先端を試薬ボトル39に収容された試薬40に侵入させ、その状態でポンプ駆動手段17によりシリンジポンプ5を吸引動作させて試薬40を吸引する。
【0027】
その後、分注ノズル1を分注ノズル駆動手段3により上昇させてから、水平移動させて吐出位置に位置決めし、その位置で下降させて、ポンプ駆動手段17によりシリンジポンプ5を吐出動作させて反応容器38内に試薬を吐出し、これにより反応容器38内に検液および試薬を有する反応液41を作成する。
【0028】
臨床検査用自動分析装置では、以上の動作を検液吸引位置に順次位置決めされるサンプルチューブに対して繰り返すことにより、順次の反応容器に反応液を作成して自動分析する。
【0029】
上記の検液37の吸引動作および吐出動作時、ならびに試薬40の吸引動作および吐出動作時には、配管経路内は洗剤液11で満たされているので、配管経路内に配置された継ぎ手3内では、分注ノズル1からの吸引流量および吐出流量と同じ量の洗剤液11が流れ、それらの各流量が圧力センサ25,26による測定圧力に基づいて異常検知回路31で演算される。
【0030】
ここで、検液37あるいは試薬40の吐出時に、圧力センサ25,26で測定される圧力P1,P2は、例えば図3に示すようになる。図3において、吐出開始時と吐出終了時とにピークがあるが、これは配管の管壁と流体との静止摩擦の影響や、配管チューブの弾性変形の影響に起因するものである。圧力センサ25,26によるそれぞれの測定圧力のグラフは、ほぼ相似形を示すが、管路の断面積の小さい圧力センサ25の測定圧力P1の方が高値を示す。
【0031】
図4は、図3に示す測定圧力P1,P2のデータを元に(Pl−P2)1/2を求めたものである。図4から、縦軸の値を分注時間で積分した結果(面積)にα(定数)を積算したものが実際の流量になる。ここで、定数αは、継ぎ手3を通過する流体の特性値と、継ぎ手3の形状により決定されるもので、流量すなわち分注量とは関係なく固定値となる。
【0032】
したがって、分注ノズル1での吸引、吐出動作時に継ぎ手3内を流れる流体の圧力を測定することにより、所定の分注量を分注できたか否かを判定することができ、分注異常の検知を行なうことができる。
【0033】
また、通常、分注時の検液37や試薬40の薄まりを防止するため、分注吸引量=分注吐出量+余剰量、の関係があるが、余剰量は予め設定されて既知であるので、吸引時と吐出時との流量の差を演算により求めれば、その分注動作が正常に終了したか否かを判定することができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、検液や試薬の粘性の影響を受けることなく、管路内を流れる液体の流量を単純な演算で正確に得ることができ、分注装置の分注異常を長期間に亘って安定して検知することができると共に、継ぎ手3の機械加工精度、圧力センサ25,26のバラツキを抑えるだけで、分注装置の長い配管経路の機差バラツキを抑える必要がないので、分注装置も簡単かつ安価にできる。また、継ぎ手3は、一方の流路と他方の流路とで断面積を異ならせ、これら両流路側に圧力センサ25,26の取り付け部を形成すればよいので、小型安価にできる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、図1において、継ぎ手3は、流量係数の影響を比較的受け難いベンチユリ管や、製作の容易な管オリフィスで構成することもできる。また、圧力センサ25,26は、水頭を検知する歪ゲージ方式のものに限らず、マノメータ方式のものや、ブルドン管式のものを用いることもできる。さらに、継ぎ手3内に充填される流体は、洗剤液に限らず、イオン交換水などの液体でも良く、また吸排ポンプもシリンジ式のものである必要はない。また、上記実施の形態では、継ぎ手3の断面積の小さい側を分注ノズル側とし、断面積の大きい側をシリンジポンプ側としたが、それらを逆にしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、管路に断面積の異なる流路を有する継ぎ手を配置して、その継ぎ手の断面積の大きい側の流路および小さい側の流路における圧力をそれぞれ圧力センサで測定し、これら圧力センサによる測定圧力の差の平方根を時間で積分し、その積分した値に基づいて管路内を流れる液体の流量を演算して分注異常を検知するようにしたので、分注すべき液体の粘性、配管経路内の液体の摩擦、配管経路の経時変化や機差などの影響を受けること無く、常に安定した状態で分注異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における分注装置の要部の概略構成を示す図である。
【図2】 図1に示す継ぎ手の詳細断面図である。
【図3】 図1に示す2個の圧力センサによる吐出動作時の測定圧力の時間変化を示す図である。
【図4】 2個の圧力センサによる測定圧力に基づく単位時間流量の演算結果を示す図である。
【符号の説明】
1 分注ノズル
2,4,6,8,10 配管チューブ
3 継ぎ手
5 シリンジポンプ
7 電磁弁
9 ポンプ
11 洗剤液
12 洗剤容器
15 制御回路
16 分注ノズル駆動手段
17 ポンプ駆動手段
21,21a,22,22a 流路
25,26 圧力センサ
28,29 キャップ
31 異常検知回路
32 A/D変換器
33 演算回路
35 洗浄槽
36 サンプルチューブ
37 検液
38 反応容器
39 試薬ボトル
40 試薬
41 反応液
Claims (3)
- 吸排ポンプの作動により管路および分注ノズル内の液を介して所定液体を分注する分注装置において、
上記管路に配置された断面積の異なる流路を有する継ぎ手と、
該継ぎ手の断面積の大きい流路側および小さい流路側にそれぞれ配置した2個の圧力センサと、
これら2個の圧力センサによる測定圧力の差の平方根を時間で積分し、その積分した値に基づいて上記管路内を流れる液体の流量を演算し、その演算した流量に基づいて分注異常を検知する異常検知回路と、
を有することを特徴とする分注装置。 - 上記継ぎ手は、ベンチュリ管または管オリフィスで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
- 上記異常検知回路は、分注吸引動作時に演算した流量と分注吐出動作時に演算した流量との差分に基づいて分注異常を検知することを特徴とする請求項1または2に記載の分注装置。
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