JP3792892B2 - Micrプリンタ用磁性トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バインダー樹脂と、磁性粉とを含有するMICRプリンタ用磁性トナーに関する。より詳しくは、磁性粉の分散性や耐久性に優れ、しかも画像濃度(印字濃度)や読取り性にも優れたMICRプリンタ用磁性トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、小切手、有価証券、請求書、チケット等において、これらの偽造や変造防止を目的として、フォントと呼ばれる識別マークが印刷されている。この識別マークを用いた偽造防止方式を、一般にMICR(Magnetic Ink Character Recognition)システムと呼んでおり、例えば、特開平2−134648号公報、特開平5−80582号公報およびUSP5、034、298号公報等に内容が開示されている。
具体的には、かかるフォントからなる識別マークは、数字と記号とを組み合せて構成されており、偽造防止を図る小切手等の表面に印刷することにより機能を発揮させることができる。すなわち、識別マークは、磁性粉をバインダ中に一定量配合した磁性インクにより構成されており、この磁性粉の有する磁力を利用して、識別マークであるフォントを専用の読取機で読み取り、読み取った情報から、小切手等の真偽を正確に判断することができる。
また、かかるフォントからなる識別マークは、人間の目視によっても、おおまかに認識可能であるため、バーコード等と異なり、専用の読取機で判断する前に、簡易かつ迅速な真偽の判断ができるという利点も有している。
【0003】
ここで、フォントを構成する磁性インクを印刷する場合、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を採ることができるが、近年、迅速かつ簡易な方法としてプリンタを用いて磁性インクを印刷する方法が注目されている。なお、プリンタを用いて磁性インクを印刷する場合、その磁性インクは、MICRトナーあるいはMICRプリンタ用磁性トナーと呼ばれている。そして、MICRトナーは、一般に、熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂、離型剤としてのワックス類、磁性粉、無機粉末等を均一に混練した後、粉砕および分級工程後、シリカ、研磨材等の外添工程を経て製造されており、最終的に平均粒子径を4〜15μm程度に調整したMICRトナーが使用されている。しかしながら、従来のMICRトナーは、残留磁化の値が制限されていなかったために、印字濃度が低く、読み取りエラーが多い等の問題が見られた。
【0004】
そこで、結着樹脂と磁性粉とを含有するMICRトナーにおいて、針状の磁性粉を使用し、残留磁化を高めることにより印字濃度や読み取り精度を高めたMICRトナーが検討されている。しかしながら、MICRトナーにおいて、針状の磁性粉をバインダ樹脂に混合分散することは容易でなく、MICRトナー中に塊状の磁性粉が存在するため、かかる塊状の磁性粉をきっかけとして、MICRトナーが割れやすく、また、塊状の磁性粉が脱落して耐久性に乏しいという問題が見られた。したがって、このようなMICRトナーが、プリンタ内で回収トナーとして長時間滞留する場合、MICRトナーが割れて、塊状の磁性粉が脱落して飛散しやすくなり、印字部以外の背景部に付着する、いわゆるカブリ現象が生じやすいという問題が見られた。
この点、プリンタの連続使用期間が短い場合、例えばA4普通紙に印刷において、3万枚未満程度の使用時間の場合には、プリンタの寿命がプリンタの連続使用における律束段階となるため、かかるMICRトナーの耐久性に起因したカブリ現象は大きな問題となっていなかった。しかしながら、a−Siドラム搭載の高寿命プリンタでは、プリンタ自身の寿命が向上し、現像器を交換することなく10万枚以上の長時間使用が可能となるが、この場合、MICRトナーの寿命がプリンタの連続使用における律束段階となるため、MICRトナーの耐久性に起因したカブリ現象は大きな問題となっていた。
【0005】
そこで、特開平4−358164号公報、特開平4−358165号公報および特開平7−77829号公報には、結着樹脂(ポリオレフィン樹脂)と磁性粉とを含有するMICRトナーにおいて、磁性粉の残留磁化を7.0〜24.0emu/gの範囲内の値とし、しかも残留磁化の値が異なる2種類の磁性粉を結着樹脂中に混合分散し、得られたMICRトナーにおける残留磁化を4.0〜7.0emu/gの範囲内の値に制限したMICRトナーが開示されている。
ここで、磁性粉の残留磁化を7.0〜24.0emu/gの範囲内の値が好ましいとするのは、磁性粉の残留磁化が7.0emu/g未満の値となると、磁化が弱く、記号を正確に認識することができないとの理由あり、一方、24.0emu/gを超えると、磁化が強すぎてやはり記号を正確に認識することができないとの理由による。また、MICRトナーの残留磁化を4.0〜7.0emu/gの範囲内の値とするのは、MICRトナーの残留磁化が4.0emu/g未満の値となると、磁化が弱く、記号を正確に認識することができないとの理由あり、一方、7.0emu/gを超えると、磁化が強すぎてやはり記号を正確に認識することができないとの理由による。
また、残留磁化の値が異なる2種類の磁性粉を配合するにあたり、不定形粒子の磁性粉(熱処理マグネタイト、残留磁化14emu/g,BET値6.0m2 /g)と、八面体の磁性粉(マグネタイト、残留磁化9.2emu/g、BET値6.9m2 /g)との組み合わせが好ましいことが記載されており(実施例1参照)、針状の磁性粉(マグネタイト、残留磁化7.8emu/g,BET値6.7m2 /g)と、八面体の磁性粉(マグネタイト、残留磁化9.2emu/g、BET値6.9m2 /g)との組み合わせは、読み取りエラー率の値が大きいとして、好ましくない例として挙げられている(比較例2参照)。
しかしながら、不定形粒子の磁性粉と、八面体の磁性粉とを組み合わせてもMICRトナーの残留磁化を高めることができず、しかもこのようにMICRトナーの残留磁化を4.0〜7.0emu/gの範囲内の値に制限すると、実際には、画像濃度が低く、読み取りエラーが多い等の問題が見られた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者らは、従来の問題を鋭意検討した結果、磁性粉の残留磁化の値に着目し、それぞれ所定範囲の残留磁化を有する第1の磁性粉と第2の磁性粉とを使用し、かつ、MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、比較的高い値に制限することにより、相反する特性である画像濃度や読み取り精度および分散性や耐久性の問題を解決することを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、第1の磁性粉単独でも、第2の磁性粉単独でも得られない特性を、これらの残留磁化の値が異なる磁性粉を混合することにより、画像濃度や読み取り精度に優れ、かつ分散性や耐久性にも優れたMICRプリンタ用磁性トナーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様は、バインダー樹脂と、磁性粉とを含有するMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、前記磁性粉として、残留磁化の値(磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加した後に、磁界をゼロとしたときの磁気メモリ量)が24〜40emu/gの範囲内の値であり、かつ飽和磁化の値(磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加し飽和させたときの磁気メモリ量)が80〜85emu/gの範囲内の値である第1の磁性粉と、残留磁化の値が1〜24emu/g(但し、24emu/gは含まない。)の範囲内の値であり、かつ飽和磁化の値が85〜90emu/g(但し、85emu/gは含まない。)の範囲内の値である第2の磁性粉とを含み、かつ、前記MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、7〜20emu/g(但し、7emu/gは含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とするMICRプリンタ用磁性トナーに関する。磁性粉における残留磁化の値及び飽和磁化の値は、得られるトナーの分散性、耐久性に密接に関係しており、このように残留磁化及び飽和磁化の値が異なる磁性粉を組み合わせて使用することにより、トナーの分散性や残留磁化等の特性を容易に調節することができる。また、トナーの残留磁化の値を制限することで、トナーの耐久性や画像濃度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の第一の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、第1の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を2.0〜100の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を1.0〜2.0(但し、2.0は含まない。)の範囲内の値とすることが好ましい。
【0009】
本発明の第二の態様は、バインダー樹脂と、磁性粉とを含有するMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、前記磁性粉が、アスペクト比(長径/短径)が2.0〜100の範囲内の値を有する第1の磁性粉と、アスペクト比(長径/短径)が1.0〜2.0(但し、2.0は含まない。)の範囲内の値を有する第2の磁性粉とを含み、かつ、前記MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化の値を、7.0〜20emu/g(但し、7.0emu/gは含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とするMICRプリンタ用磁性トナーに関する。アスペクト比が2.0を基準として、それ以上の一定範囲内の磁性粉と、それ未満の一定範囲の磁性粉とを混合使用することにより、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性を飛躍的に向上させることができ、磁性粉の分散性が向上する結果、磁性粉が塊状で存在する傾向が少なくなり、それによって、トナーが割れたり、磁性粉が脱離する傾向が少なくなり、トナーの耐久性も飛躍的に向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第二の態様のトナーを構成するにあたり、第1の磁性粉の残留磁化を24〜40emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉の残留磁化を1〜24emu/g(但し、24m 2 /gは含まない。)の範囲内の値とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、第1の磁性粉のBET値を13〜30m2/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉のBET値を1〜13m2/g(但し、13m2/gは含まない。)とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、第1の磁性粉を針状とし、かつ、第2の磁性粉を粒状とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、磁性粉の添加量を、バインダー樹脂100重量部あたり、1〜60重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、第1の磁性粉を100重量部としたときに、第2の磁性粉を10〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、磁性粉が表面処理されていることが好ましい。
磁性粉の表面処理は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の表面処理剤を用いて施されることが好ましい。
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、フィッシャートロプッシュワックスをさらに含有することが好ましい。
フィッシャートロプッシュワックスとしては、重量平均分子量1000以上であり、かつ100〜120℃の範囲内にDSCによる吸熱ボトムピークを有するものが好ましい。
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、バインダー樹脂の一部が、架橋剤及び/又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。
そして、バインダー樹脂における、ソックスレー抽出器を用いて測定される架橋部分量(ゲル量)が、0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の第一及び第二の態様のMICRプリンタ用磁性トナーを構成するにあたり、磁性粉が、金属をドーピングした磁性粉であることが好ましい。
磁性粉のドーピングに用いる金属は、コバルト及び/又はニッケルであることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナー(以下、単にトナーと称する場合がある。)の実施の形態を、必須構成成分であるバインダー樹脂や磁性粉、任意成分であるワックス類やシリカ粒子等の観点、および得られたトナーの形態や特性の観点から具体的に説明する。
【0016】
[バインダー樹脂]
(1)種類
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用するバインダー樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0017】
但し、ソックスレー抽出器を用いて測定される架橋部分量(ゲル量)が10重量%以下の値、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲内の値であれば、バインダー樹脂中に、トナーの保存安定性や形態保持性、あるいは耐久性が向上する観点から、一部架橋構造が導入されていることも好ましい。すなわち、トナーのバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂を100重量%使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、あるいは、熱硬化性樹脂を一部使用することも可能である。
【0018】
(2)バインダー樹脂における官能基
また、このようなバインダー樹脂において、磁性粉の分散性を向上させるために、ヒドキロキシ(水酸)基、カルボキシル基、アミノ基およびグリシドキシ(エポキシ)基から選択される少なくとも一つの官能基を分子内に有する樹脂を使用することが好ましい。なお、これらの官能基を有しているか否かは、FT−IR装置を用いて確認することができ、さらに滴定法を用いて定量することができる。
【0019】
(3)バインダー樹脂の分子量
また、バインダー樹脂において、二つの重量分子量ピーク(低分子量ピークと、高分子量ピークと称する。)を有することが好ましい。具体的に、低分子量ピークが3、000〜20、000の範囲内であり、もう一つの高分子量ピークが300、000〜1500、000の範囲内であることが好ましい。重量分子量ピークがこのような範囲内にあれば、トナーを容易に定着させることができ、また、耐オフセット性を向上させることもできる。なお、バインダー樹脂の重量分子量は、分子量測定装置(GPC)を用いて、カラムからの溶出時間を測定し、標準ポリスチレン樹脂を用いて予め作成しておいた検量線と照らし合わせることにより、求めることができる。
【0020】
(4)バインダー樹脂のガラス転移点
また、バインダー樹脂において、ガラス転移点(Tg)を55〜70℃の範囲内の値とするのが好ましい。バインダー樹脂のガラス転移点が、55℃未満では、得られたトナー同士が融着し、保存安定性が低下する傾向がある。一方、バインダー樹脂のガラス転移点が、70℃を超えると、トナーの定着性が乏しくなる傾向がある。なお、バインダー樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。
【0021】
[磁性粉]
(1)種類
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉は、後述するように、アスペクト比の異なる2種類以上の磁性粉を用いるのであれば、特にその値は制限されるものではないが、酸化鉄(マグネタイト)、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉およびフェライト類をそれぞれ主成分とした磁性粉や、酸化鉄にコバルトやニッケル等の金属をドーピングした磁性粉を使用することが好ましい。特に、コバルトやニッケル等の金属をドーピングした磁性粉は、残留磁化の値が高い観点で、本発明への使用に好適である。
【0022】
(2)残留磁化
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉において、第1の磁性粉における残留磁化の値を24〜40emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における残留磁化の値を1〜24emu/g(但し、24m2 /gは含まない。)とすることが必要である。
このように残留磁化の値が異なる、少なくとも2種類の磁性粉を混合使用することにより、得られるトナーの残留磁化の値を容易に調節することができ、トナーにおける画像濃度や読み取り精度を著しく向上させることができる。また、このような範囲に残留磁化の値を調節することにより、磁性粉のアスペクト比、BET値、嵩密度等の調節も容易になるため、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性や耐久性を飛躍的に向上させることもできる。
【0023】
したがって、トナーの分散性や画像濃度等の特性のバランスがより向上することから、第1の磁性粉における残留磁化を25〜38emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における残留磁化を5〜23emu/gの範囲内の値とすることがより好ましく、さらに、第1の磁性粉における残留磁化を26〜35emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における残留磁化を10〜20emu/gの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0024】
なお、残留磁化の値は、磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加した後に、磁界をゼロとしたときの、磁気メモリ量と定義することができる。より具体的には、磁性粉のヒステリシス曲線を測定することにより、磁性粉の残留磁化を算出することができる。
【0025】
(3)飽和磁化
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉において、第1の磁性粉における飽和磁化の値を80〜85emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における飽和磁化の値を85〜90emu/g(但し、85emu/gは含まない。)とすることが好ましい。
飽和磁化の値は、残留磁化の値に密接に関係しており、このように飽和磁化の値が異なる、少なくとも2種類の磁性粉を混合使用することにより、残留磁化の値を微妙に調整することができ、結果として、得られるトナーにおける画像濃度や読み取り精度を向上させることができる。また、このような範囲に飽和磁化の値を調節することにより、磁性粉のアスペクト比、BET値、嵩密度等の調節も容易になるため、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性や耐久性を向上させることもできる。
【0026】
したがって、トナーの分散性や画像濃度等の特性のバランスがより向上することから、第1の磁性粉における飽和磁化を81〜84emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における飽和磁化を86〜89emu/gの範囲内の値とすることがより好ましく、さらに、第1の磁性粉における飽和磁化を82〜83emu/gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における飽和磁化を87〜88emu/gの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0027】
なお、飽和磁化の値は、磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加し飽和させた時の、磁気メモリ量と定義することができる。より具体的には、磁性粉のヒステリシス曲線を測定することにより、磁性粉の残留磁化を算出することができる。
【0028】
(4)アスペクト比
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉のアスペクト比(長径/短径)に関して、残留磁化の値が異なる磁性粉を第1および第2の磁性粉としたときに、第1の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を2.0〜100の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を1.0〜2.0(但し、2.0は含まない。)の範囲内の値とすることが好ましい。
【0029】
このようにアスペクト比が2.0を基準として、それ以上の一定範囲内の磁性粉と、それ未満の一定範囲内の磁性粉とを混合使用することにより、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性を飛躍的に向上させることができる。また、磁性粉の分散性が向上する結果、磁性粉が塊状で存在する傾向が少なくなる。よって、トナーが割れたり、磁性粉が脱離する傾向が少なくなり、トナーの耐久性も飛躍的に向上させることもできる。さらに、アスペクト比が大きな磁性粉は、残留磁化の値が大きいために、かかる磁性粉を配合したトナーを使用した場合、画像濃度や読み取り精度を著しく向上させることができる。
【0030】
したがって、トナーの分散性や印字濃度等の特性のバランスがより向上することから、第1の磁性粉におけるアスペクト比を2.5〜10.0の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉におけるアスペクト比を1.2〜1.7の範囲内の値とすることがより好ましく、さらに、第1の磁性粉におけるアスペクト比を3.0〜5.0の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉におけるアスペクト比を1.3〜1.6の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0031】
(5)BET値
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉のBET値に関して、特に制限されるものではないが、残留磁化の値が異なる磁性粉を第1および第2の磁性粉としたときに、第1の磁性粉のBET値を10〜30m2 /gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉のBET値を1〜10m2 /g(但し、10m2 /gは含まない。)とすることが好ましい。
このようにBET値の値が異なる、少なくとも2種類の磁性粉を混合使用することにより、得られるトナーの残留磁化の値や分散性を容易に調節することができる。また、このように構成すると、トナーにおける画像濃度や読み取り精度を著しく向上させることができるとともに、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性や耐久性を向上させることもできる。なお、BET値は、BET吸着法により、比表面積として求めることができる。
【0032】
したがって、トナーの分散性や画像濃度等の特性のバランスがより向上することから、第1の磁性粉におけるBET値を11〜25m2 /gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉におけるBET値を2〜9m2 /gの範囲内の値とすることがより好ましく、さらに、第1の磁性粉におけるBET値を12〜20m2 /gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉におけるBET値を4〜8m2 /gの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0033】
(6)嵩密度
本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉の嵩密度に関して特に制限されるものではないが、残留磁化の値が異なる磁性粉を第1および第2の磁性粉としたときに、第1の磁性粉の嵩密度を1〜1.2g/cm3 の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉の嵩密度を1.2〜2.0g/cm3 (但し、1.2g/cm3 は含まない。)とすることが好ましい。
このように嵩密度の値が異なる、少なくとも2種類の磁性粉を混合使用することにより、得られるトナーの残留磁化の値や分散性を容易に調節することができる。また、このように構成すると、トナーにおける画像濃度や読み取り精度を著しく向上させることができるとともに、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性や耐久性を向上させることもできる。
【0034】
したがって、トナーの分散性や画像濃度等の特性のバランスがより向上することから、第1の磁性粉における嵩密度を1.05〜1.2g/cm3 の範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における嵩密度を1.3〜1.6g/cm3 の範囲内の値とすることがより好ましく、さらに、第1の磁性粉における嵩密度を1.1〜1.2m2 /gの範囲内の値とし、かつ、第2の磁性粉における嵩密度を1.3〜1.5m2/gの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0035】
(6)形態
また、本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉の形態に関して特に制限されるものではなく、針状、粒状、あるいは球状、さらには不定形の磁性粉を使用することができる。
ここで、針状の磁性粉は、一般に残留磁化の値、保持力の値あるいはBET値が大きい一方、アスペクト比(長径/短径)、嵩密度および飽和磁化の値が小さく、バインダー樹脂に対する分散性が乏しいという特徴がある。
また、粒状の磁性粉は、一般に残留磁化の値、飽和磁化の値、保持力の値あるいはBET値が比較的大きい一方、アスペクト比(長径/短径)や嵩密度の値が比較的小さく、バインダー樹脂に対する分散性は良好であるという特徴がある。
さらに、球状の磁性粉は、一般に残留磁化の値、保持力の値あるいはBET値は小さいものの、アスペクト比(長径/短径)、嵩密度および飽和磁化の値が比較的大きく、バインダー樹脂に対する分散性は良好であるという特徴がある。
【0036】
また、本発明において、残留磁化の値が異なる磁性粉を第1および第2の磁性粉としたときに、第1の磁性粉の形態を針状とし、かつ、第2の磁性粉の形態を粒状とすることが好ましい。
このように形状が異なる、少なくとも2種類の磁性粉を混合使用することにより、得られるトナーの残留磁化の値や分散性を容易に調節することができる。すなわち、針状の磁性粉は、一般に、残留磁化の値やBET表面積の値が大きいが、分散性が乏しく、飽和磁化の値が小さいという問題がある。一方、粒状の磁性粉は、一般に、分散性が良好で、飽和磁化の値が大きいが、残留磁化の値やBET表面積の値が比較的小さいという問題がある。
したがって、針状および粒状の磁性粉のいずれか一方のみを使用しても、残留磁化や分散性等の相反する特性において、バランスの採れたトナーを得ることが困難である。よって、このように構成することにより、トナーにおける画像濃度や読み取り精度を著しく向上させることができるとともに、バインダー樹脂に対するこれらの磁性粉の分散性や耐久性を容易に向上させることができる。
【0037】
(7)添加量
また、本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーに使用する磁性粉の添加量に関して特に制限されるものではないが、磁性粉の添加量をバインダー樹脂100重量部あたり、1〜60重量部の範囲内の値とするのが好ましい。磁性粉の添加量が1重量部未満となると、いわゆるカブリ現象が発生しやすく、また、読み取り性が低下する傾向があり、一方、磁性粉の添加量が60重量部を超えると、分散性や撹拌性が低下し、さらには画像濃度等が低下する傾向がある。
したがって、トナーの画像濃度等と、分散性等とのバランスがより良好な観点から、磁性粉の添加量をバインダー樹脂100重量部あたり、20〜55重量部の範囲内の値とするのがより好ましく、30〜50重量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0038】
次に、残留磁化の値が異なる磁性粉を第1および第2の磁性粉とした場合の、これらの磁性粉における添加比率について説明する。すなわち、第1および第2の磁性粉における添加量の比率については特に制限されるものではないが、第1の磁性粉を100重量部としたときに、第2の磁性粉を10〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
第2の磁性粉の添加量が10重量部未満となると、磁性粉の分散性や耐久性が低下する傾向があり、一方、第2の磁性粉の添加量が1000重量部を超えると、トナーの画像濃度等が低下する傾向がある。
したがって、第1の磁性粉を100重量部としたときに、第2の磁性粉を20〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、さらに好ましくは、第2の磁性粉を50〜300重量部の範囲内の値とすることである。
【0039】
(8)表面処理
次に、磁性粉の表面処理について説明する。本発明のMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、分散性や耐久性を向上させる観点から、磁性粉の表面を表面処理することが好ましい。その場合の表面処理剤として、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂、ウレタン系樹脂等を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0040】
また、表面処理剤の使用量を、磁性粉100重量部あたり、0.1〜100重量部の範囲内の値とするのが好ましい。表面処理剤の使用量が0.1重量部未満となると、表面処理効果が発揮されない傾向があり、一方、100重量部を超えると、トナーの画像濃度等が低下する傾向がある。
したがって、表面処理効果およびトナーの画像濃度等とのバランスがより良好な観点から、表面処理剤の使用量を、磁性粉100重量部あたり、0.5〜20重量部の範囲内の値とするのがより好ましく、1.0〜10重量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0041】
[添加剤]
(1)ワックス類
本発明のMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、画像濃度を高め、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリングを有効に防止することができる観点から、ワックス類を添加することが好ましい。
ここで、添加するワックス類の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロン系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス等を使用することが好ましい。かかるワックスを添加することにより、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリングをより効率的に防止することができる。
【0042】
また、フィッシャートロプッシュワックスを使用することが特に好ましい。かかるワックスを添加することにより、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリングをより効率的に防止することができる。なお、フィッシャートロプッシュワックスとは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプッシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
さらに、フィッシャートロプッシュワックスの中でも、重量平均分子量が1000以上の値であり、かつ100〜120℃の範囲内にDSCによる吸熱ボトムピークを有するものがより好ましい。このようなフィッシャートロプッシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(H1の結晶化による高分子量グレード、吸熱ボトムピーク:106.5℃)、サゾールワックスC105(C1の分留法による精製品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)、サゾールワックスSPRAY(C105の微粒子品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)等が挙げられる。
【0043】
また、ワックス類の添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、トナー全体量を100重量%としたときに、ワックス類の添加量を1〜5重量%の範囲内の値とするのが好ましい。ワックス類の添加量が1重量%未満となると、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、ワックス類の添加量が5重量%を超えると、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する傾向がある。
【0044】
(2)電荷制御剤
本発明のMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、帯電レベルや帯電立ち上がり性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)の向上および優れた流動性が得られる観点から、電荷制御剤を添加することが好ましい。
ここで、電荷制御剤には、電荷(帯電量)を一定範囲内に調整する機能を有する電荷調整剤(CCA)と、電荷(帯電量)を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)とがある。したがって、本発明のMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、電荷調整剤および電荷増強樹脂あるいはいずれか一方を添加することが好ましい。
【0045】
また、電荷調整剤(CCA)としては、具体的に、
アジン化合物としてのピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1、2、3−トリアジン、1、2、4−トリアジン、1、3、5−トリアジン、1、2、4−オキサジアジン、1、3、4−オキサジアジン、1、2、6−オキサジアジン、1、3、4−チアジアジン、1、3、5−チアジアジン、1、2、3、4−テトラジン、1、2、4、5−テトラジン、1、2、3、5−テトラジン、1、2、4、6−オキサトリアジン、1、3、4、5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、
アジン化合物からなる直接染料としての、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEWおよびアジンディープブラック3RL、
ニグロシン化合物としてのニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体、
ニグロシン化合物からなる酸性染料としての、ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ、
ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類、
アルコキシル化アミン、アルキルアミド、
4級アンモニウム塩としてのベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の1種または2種以上が挙げられる。
特に、ニグロシン化合物およびニグロシン化合物からなる酸性染料を含むニグロシン系化合物の使用は、帯電量についての瞬時の立ち上げが可能であり、また、飽和帯電量の制御が容易な観点から、本発明において最適である。
【0046】
また、電荷増強樹脂(CCR)としては、4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマー、カルボン酸塩を有する樹脂またはオリゴマー、カルボキシル基を有する樹脂またはオリゴマー等が挙げられ、より具体的には、4級アンモニウム塩を有するポリスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系共重合体、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系共重合体、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
特に、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩あるいはカルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の使用は、帯電量の立ち上がりをより助長することができる観点から、本発明において最適である。
【0047】
次に、電荷調整剤および電荷増強樹脂を合計した電荷制御剤の添加量について説明する。すなわち、電荷制御剤の添加量は所望の電荷量から決定することが好ましいが、具体的に、MICRプリンタ用磁性トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷制御剤の添加量を、0.1〜10重量%の範囲内の値とするのが好ましい。電荷制御剤の添加量が0.1重量%未満となると、電荷を制御する機能が有効に発揮されない傾向があり、一方、電荷制御剤の添加量が10重量%を超えると、トナーの分散性や耐久性が低下する傾向がある。したがって、電荷制御機能と、トナーの耐久性等とのバランスがより良好な観点から、電荷制御剤の添加量を、0.5〜8重量%の範囲内の値とするのがより好ましく、1.0〜5重量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0048】
(3)その他
本発明のMICRプリンタ用磁性トナーには、着色剤、染料、顔料、カップリング剤、シリカ粒子等を添加配合することも可能である。
なお、シリカ粒子については、トナーの流動性をより制御できる観点から、トナーに対して、外添することも好ましい。その場合、シリカ粒子として、シランカップリング剤を用いて正帯電極性基(アミノ基等)を導入し、シリコーンオイルにより疎水化処理した乾式シリカ微粉末を使用することが好ましい。
【0049】
[MICRプリンタ用磁性トナー]
(1)残留磁化
本発明において、MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、7.0〜20emu/g(但し、7.0emu/gは含まない。)の範囲内の値とする必要がある。トナーにおける残留磁化の値が、7.0emu/g以下となると、トナーの画像濃度や読み取り精度が著しく低下するためであり、一方、トナーにおける残留磁化の値が、20emu/gを超えると、逆にトナーの読み取り精度が低下したり、分散性や耐久性が低下する傾向があるためである。
したがって、より優れたトナーの読み取り精度等を得るために、MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、8〜18emu/gの範囲内の値とするのがより好ましく、10〜15emu/gの範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0050】
(2)飽和磁化
本発明において、MICRプリンタ用磁性トナーの飽和磁化を、20〜45emu/gの範囲内の値とすることが好ましい。トナーにおける飽和磁化の値が、20emu/g未満となると、トナーの画像濃度や読み取り精度が著しく低下するためであり、一方、トナーにおける残留磁化の値が、45emu/gを超えると、逆にトナーの読み取り精度が低下するためである。
したがって、より優れたトナーの読み取り精度等を得るために、MICRプリンタ用磁性トナーの飽和磁化を、25〜40emu/gの範囲内の値とするのがより好ましく、30〜32.5emu/gの範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0051】
(3)形態
次に、MICRプリンタ用磁性トナーの形態について説明する。かかる形態は特に制限されるものでないが、トナーの読み取り精度や画像濃度が向上し、しかも容易に製造できる観点から、球状または楕円状であることが好ましい。
また、平均粒子径についても、特に制限されるものではないが、1〜20μmの範囲内の値が好ましい。平均粒子径がかかる範囲外となると、トナーの読み取り精度や画像濃度が低下する傾向にあり、また、製造上の制御も困難となる傾向がある。したがって、トナーの平均粒子径を、4〜15μmの範囲内の値とするのがより好ましく、5〜13μmの範囲内の値とするのが最も好ましい。
【0052】
(4)製造方法
次に、本発明におけるMICRプリンタ用磁性トナーの製造方法について説明する。かかる製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、プロペラミキサ、ニーダ、Vブレンダ、ヘンシェルミキサ等を用いて、バインダー樹脂と磁性粉とを均一に混練し、次いで、粉砕、分級することにより、所望の平均粒子径を有するトナーを得ることができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、特に理由なく、以下の説明に本発明の範囲は限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(1)MICRプリンタ用磁性トナーの製造
混合容器内に、磁性粉として残留磁化の値が異なる、第1の酸化鉄20重量部と第2の酸化鉄20重量部とをそれぞれ収容した。
さらに、スチレン−アクリル共重合体(軟化点123℃、Tg:65℃)100重量部と、フィシャートロプッシュワックス(サゾールワックスC2、重量平均分子量:1262)2.5重量部とを混合容器内に収容し、均一に混合分散して混合物とした。なお、第1および第2の磁性粉については、それぞれ100重量部あたり、1gのγ−アミノプロピルトリエトキシシランを添加混合し、これらの磁性粉表面を予め表面処理を施しておいた。
【0055】
次いで、得られた混合物を、粉砕機を用いて粗粒子に粉砕し、さらに分級して、平均粒子径が10μmのトナー粒子を作製した。なお、かかるトナー粒子の粒度分布において、7〜13μmの範囲内に、粒子重量の80重量%が分布していることが確認されている。
次いで、得られたトナー粒子100重量部あたり、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いてアミノ基を導入し、シリコーンオイルにより疎水化処理した乾式シリカ微粉末を0.5重量部添加し、本発明のMICRプリンタ用磁性トナーとして、以下の評価に供した。
【0056】
【0057】
(2)MICRプリンタ用磁性トナーの評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナー自体の評価を行い、また、かかるトナーを京セラ(株)製プリンタ(エコシス、FS−3700)に収容し、小切手上にフォント(E−13Bタイプ)の連続印刷を行い、画像濃度等の評価を行った。
【0058】
(2−1、2)残留磁化評価および飽和磁化評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化および飽和磁化を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0059】
(2−3)分散性評価
ミクロトームMT6000−XL(RMC社製)を用いて、MICRプリンタ用磁性トナーを切断した。次いで、電子顕微鏡を用いてトナー断面を観察し、以下の基準で、MICRプリンタ用磁性トナーにおける磁性粉の分散性を評価した。結果を表1に示す。なお、△の評価であれば許容範囲であり、〇であれば好ましい分散性を有すると経験的に言える。
〇:磁性粉の塊は全く観察されない。
△:磁性粉の小さい塊が観察される。
×:磁性粉の塊が観察される。
【0060】
(2−4)耐久性評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナーを京セラ(株)製プリンタ−(エコシス、FS−3700)における現像器に収容し、18PPM(Page parMinututes)相当の回転速度で10日間の静電連続運転を行い、試験後のトナーの割れ具合から、以下の基準でMICRプリンタ用磁性トナーの耐久性を評価した。ここで、プリンタ−の静電連続運転とは、トナーを撹拌しつつ、現像バイアスを印加して、通状の印刷(但し、非通紙状態である。)と同様の条件で、トナーを撹拌流動させるものである。得られた結果を表1に示す。なお、△の評価であれば許容範囲であり、〇であれば好ましい耐久性を有すると経験的に言える。
〇:トナー表面から磁性粉の離脱は観察されない。
△:トナー表面から塊状の磁性粉の離脱が観察されない。
×:トナー表面から顕著な磁性粉の離脱が観察されない。
【0061】
(2−5)画像濃度評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナーを、京セラ(株)製プリンタ(エコシス、FS−3700)に収容し、小切手上にソリッドブラウンパターンの印刷を行い、画像濃度評価を行った。具体的には、印刷された画像濃度を、マクベス濃度計(マクベス社製反射型濃度計、RD914)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(2−6)カブリ性評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナーのカブリ性を評価した。結果を表1に示す。なお、評価に際して、印刷枚数に対応するカブリ限度見本を作成し、1〜5段階にランク付けした。このランク付けにおいて、段階4の評価であれば許容範囲であり、段階3以下であれば経験的にカブリが発生したと言える。
段階5:背景部にカブリが全く観察されない。
段階4:ルーペを用いることにより、背景部にわずかにカブリが観察される。
段階3:目視により、背景部にカブリがわずかに観察される。
段階2:目視により、背景部にカブリが観察される。
段階1:背景部に、縦スジ等が表われ、顕著なカブリが観察された。
【0063】
(2−7)読取り性評価
得られたMICRプリンタ用磁性トナーの読み取り性評価を、MICR用読取機マイカクオリファイヤ(RDM社製)を用いて行った。また、読取り性(%)が80〜200%の範囲内であれば、適性にフォントが読み取れたということができる。結果を表1および図1に示す。
なお、図1は、横軸にMICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化の値(eum/g)を採って示してあり、縦軸に読取り性(%)の値を採って示してある。図1に示す、実施例1のデータを含む曲線から理解されるように、トナーの残留磁化の値が7.0(eum/g)以下であると、読取り性(%)の値が急に低下する傾向が見られる。したがって、トナーの残留磁化の値を、7.0(eum/g)を超える所定範囲に制限することにより、優れた読取り性(%)の値を得ることができる。
但し、トナーの残留磁化の値をさらに増加させると、逆に読取り性(%)の値が低下したり、分散性等の特性も低下することも判明しており、かかる観点から、トナーの残留磁化の値を、20(eum/g)以下と制限する必要がある。
【0064】
【表1】
【0065】
[実施例2〜3]
第1の酸化鉄の添加量と、第2の酸化鉄との添加量との配合比率を変えたほかは、実施例1と同様に、MICRプリンタ用磁性トナーを作製し、評価した。具体的に、実施例2では、バインダー樹脂100重量部に対して、第1の酸化鉄を30重量部添加し、第2の酸化鉄を10重量部添加した。また、実施例3では、第1の酸化鉄を10重量部添加し、第2の酸化鉄を30重量部添加した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4〜5]
第1の酸化鉄の添加量と、第2の酸化鉄との添加量との配合比率は50:50のままで、バインダー樹脂100重量部に対して、磁性粉(第1および第2)の添加量を30重量部(実施例4)および50重量部(実施例5)にそれぞれ変えたほかは、実施例1と同様に、MICRプリンタ用磁性トナーを作製し、トナーにおける残留磁化評価および定着性等を評価した。
なお、定着性は、次のようにして評価した。まず、定着温度を190℃に設定し、電源を切った状態で10分間冷却した後、電源を入れ(ON)、画像評価パターン(ソリッドパターン)を連続5枚印字して、測定用画像を得た。次いで、得られた画像上に、綿布で包んだ黄銅製分銅(1kg荷重)を10往復させた。この操作の前後の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、その濃度の定着率(操作前濃度/操作後濃度)を求めて定着性を評価した。また、評価紙は、クラシック・クレスト紙を用いた。結果を表2に示す。
○:定着率が95以上である。
△:定着率が90%以上〜95%未満である。
×:定着率が90%未満である。
【0067】
【表2】
【0068】
[比較例1〜3]
比較例1〜2においては、バインダー樹脂100重量部に対して、第1の酸化鉄および第2の酸化鉄のいずれか一方を40重量部用いたほかは、実施例1と同様に、MICRプリンタ用磁性トナーを作製し、トナーにおける残留磁化等を評価した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
結果から理解されるように、比較例1においては針状の磁性粉のみを使用しており、高い残留磁化の値が得られているものの、分散性や耐久性が乏しいという結果が得られた。また、比較例2においては粒状の磁性粉のみを使用しており、分散性や耐久性は優れているものの、読み取り性に乏しいという結果が得られた。
【0069】
また、比較例3においては、第1の酸化鉄の添加量と、第2の酸化鉄との添加量との配合比率は50:50のままで、バインダー樹脂100重量部に対する、磁性粉(第1および第2)の添加量を20重量部としたほかは、実施例1と同様に、MICRプリンタ用磁性トナーを作製し、トナーにおける残留磁化評価および定着性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
結果から理解されるように、比較例3においてはアスペクト比の異なる針状の磁性粉と粒状の磁性粉とを使用しているが、残留磁化の値が7.0emu/g未満であるため、読み取り性に乏しいという結果が得られた。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、バインダー樹脂と、磁性粉とを含有するMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、磁性粉として、残留磁化の値が異なる第1の磁性粉と第2の磁性粉とを使用し、かつ、MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、7.0〜20emu/g(但し、7.0emu/gは含まない。)の範囲内の値とすることにより、画像濃度や読み取り精度に優れ、かつ分散性や耐久性に優れたMICRプリンタ用磁性トナーを提供することができるようになった。
また、磁性粉の残留磁化の値、飽和磁化の値、アスペクト比の値、BET値、嵩密度の値、形態および添加量や、第1の磁性粉と第2の磁性粉との配合比率を制御することにより、画像濃度や読み取り精度にさらに優れ、かつ分散性や耐久性に優れたMICRプリンタ用磁性トナーを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】MICRプリンタ用磁性トナーにおける残留磁化の値と、読取り性の値との関係を示す図である。
Claims (6)
- バインダー樹脂と、磁性粉とを含有するMICRプリンタ用磁性トナーにおいて、前記磁性粉として、残留磁化の値(磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加した後に、磁界をゼロとしたときの磁気メモリ量)が24〜40emu/gの範囲内の値であり、かつ飽和磁化の値(磁性粉に対して、10キロエルステッドの磁界を印加し飽和させたときの磁気メモリ量)が80〜85emu/gの範囲内の値である第1の磁性粉と、残留磁化の値が1〜24emu/g(但し、24emu/gは含まない。)の範囲内の値であり、かつ飽和磁化の値が85〜90emu/g(但し、85emu/gは含まない。)の範囲内の値である第2の磁性粉とを含み、かつ、
前記MICRプリンタ用磁性トナーの残留磁化を、7〜20emu/g(但し、7emu/gは含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とするMICRプリンタ用磁性トナー。 - 前記第1の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を2.0〜100の範囲内の値とし、かつ、前記第2の磁性粉のアスペクト比(長径/短径)を1.0〜2.0(但し、2.0は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のMICRプリンタ用磁性トナー。
- 前記第1の磁性粉を針状とし、かつ、前記第2の磁性粉を粒状とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のMICRプリンタ用磁性トナー。
- 前記磁性粉の添加量を、前記バインダー樹脂100重量部あたり、1〜60重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のMICRプリンタ用磁性トナー。
- 前記磁性粉における第1の磁性粉の配合量を100重量部としたときに、前記第2の磁性粉の配合量を10〜1000重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のMICRプリンタ用磁性トナー。
- フィッシャートロプッシュワックスをさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のMICRプリンタ用磁性トナー。
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