JP3792493B2 - プラント構造材料の腐食推定方法、および腐食診断システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定、予測、診断する方法および装置と、腐食抑制方法に係り、特に使用済み核燃料再処理施設(以下、再処理施設と略称する)に適する腐食推定方法、および該方法を用いた腐食診断システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
使用済み核燃料からウランとプルトニウムとを回収する再処理方法のひとつとして、使用済み核燃料を希硝酸に溶解して硝酸酸性溶液とし、この溶液から、ウランおよびプルトニウムをリン酸トリブチル−ケロシン溶液で抽出するピューレックス法が知られている。
【0003】
このピューレックス法を用いて再処理を行う場合、構造材料が硝酸水溶液に接触することになるので、構造材料の腐食が問題となる。そこで、従来より、ピューレックス法を用いる再処理施設では、種々の高耐食化技術が採用されている。高耐食化技術としては、例えば、構造材料にジルコニウム、極低炭素ステンレス鋼等の耐食性材料を使用することが知られており、また、減圧沸騰方式の採用などにより環境的にも腐食緩和対策が施されてきている。
【0004】
腐食による構造材料の損傷を正しく把握することは、施設の運転管理上、施重要であることから、通常、何らかの腐食診断が行われる。従来の大型施設における腐食診断は運転中と停止時に実施されるものに大別される。
【0005】
運転中には、対象材料で作成した試験片を媒体中に浸漬しておき、経時的に引き抜いて腐食損傷および腐食減量を調べる方法がよく採られる。また、停止時には、超音波、磁気などを応用して材料の厚みを測定する方法、スコープ等で機器内面を検査して腐食状態を知る方法、機器を分解して検査する方法等が採られている。この方法は、たとえば、腐食防食協会編、「防食技術便覧」、p.841(日刊工業新聞社(1986年発行))に記載されている。
【0006】
さらに、再処理施設においても、超音波を応用して材料の腐食による減肉や損傷状態を測定する方法がある。なお、再処理施設においては、放射性核種が存在し、機器の放射線量が高いため、遠隔操作によるテレビモニタで機器内面の状態を調べる方法が示されている。この方法は、たとえば、Br. Corros. J., Vol.25, No.2, pp.103-104 (1990)に記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、試験片を浸漬する方法では、浸漬した後に浸漬期間内の腐食状態を知ることはできるが、施設の運転状態や媒体である硝酸溶液の組成等の変化により腐食がどのように変化しているかをその場で知ることはできないし、またその後の腐食進展状況を予見することもできない。さらに、測定場所が限られるため、施設全体の状況を把握することは極めて困難である。
【0008】
一方、停止時に実施される各方法は、測定あるいは検査された時点でその材料がどのような腐食状況に置かれているかを知るに留まる。したがって、いずれの方法においても施設全体の腐食状況をその場で診断し、結果をその後の運転方法に反映させることはできない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、酸を含む溶液の処理を行うプラント、特に、使用済み核燃料再処理施設において、酸を含む溶液に接触する構造材料について、その置かれる環境条件の変化をも考慮したうえで、腐食速度、腐食量、および余寿命等の腐食関連情報を推定する腐食推定方法と、構造材料の腐食診断システムとを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定する方法であって、腐食の速度を、大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の腐食加速率と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値と、温度補正値と、運転モードに応じてあらかじめ定められた運転モード補正値とを、掛け合わせて求めることを特徴とするプラント構造材料の腐食速度推定方法が提供される。
【0011】
なお、この腐食速度推定方法は、診断対象のプラントが使用済み核燃料再処理設備であり、酸を含む溶液が使用済み核燃料を溶解した硝酸水溶液である場合に特に適している。
【0012】
また、本発明では、酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備えるシステムが提供される。
【0013】
ここで、上記入力装置は、酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、運転状況のデータを受け付ける手段と、酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有する。
【0014】
また、上記演算処理装置は、酸を含む溶液中の酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段を備え、さらに、上記酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食速度を推定する手段と、この推定した腐食速度、および、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報の少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段とを有する。
【0015】
なお、上記腐食速度を推定する手段は、該手段により求められた大気圧沸騰状態における酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値との積により、上記構造材料の腐食速度を推定する。ここで、あらかじめ定められた化学種とは、硝酸、鉄、ルテニウム、および硝酸イオンであることが望ましい。
【0016】
上記演算処理装置は、あらかじめ定められた時間ごとに、上記腐食の進行の推定を行い、あらかじめ定められた基準を超えた腐食の進行を検出すると、上記出力装置に警報を出力する手段を備えていてもよい。
【0017】
なお、本発明により提供される腐食診断システムは、使用済み核燃料再処理設備の診断であって、酸として硝酸を用いる場合に特に適している。この場合、入力装置は、放射線量の入力を受け付ける手段をさらに有し、演算処理装置は、大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により求められる補正値と、上記運転状況データにより求められる補正値と、上記温度データにより求められる補正値と、上記放射線量により求められる補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段を、さらに有することが望ましい。
【0018】
【作用】
酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食速度は、大気圧沸騰状態における、その酸の水溶液中の腐食速度を基準にし、それに補正を加えることにより、推定することができる。例えば、腐食速度は、上記酸を含む溶液に含まれる酸をAとするとき、下記式(a)により推定される。
【0019】
すなわち、式(a)は、腐食速度算出の基準を大気圧沸騰状態における酸Aの水溶液中の腐食速度として用いた腐食速度の評価式である。なお、大気圧沸騰状態における酸Aの水溶液中の腐食速度は、酸Aの濃度の関数値として求められる。ここで、上記酸Aを硝酸とすれば、式(a)は、つぎの式(a’)のようになる。なお、以下では、酸を含む溶液を処理するプラントの例として、硝酸の水溶液を処理する工程を有する使用済み核燃料再処理施設における硝酸溶液に接触する構造材料の腐食診断を例にとって説明する。
【0020】
再処理施設で用いられる硝酸溶液において、腐食に影響する溶存化学種とは、Fe(鉄)イオン、Ru(ルテニウム)化合物およびNO3 -(硝酸)イオン等である。これらの濃度と腐食加速率(K)との間は特定の式で予め提示されている。この式は、例えば、K=1+Σai・Xiで表される。ここに、aiは溶存化学種(i)の定数、Xiは溶存化学種(i)の濃度である。なお、放射性核種を含むため、放射線の影響も予め定量化して、溶存種と同じ取扱いでこの加速率に盛り込む。ところで、この加速率は工程、部位ごとに異なる。したがって、工程、部位ごとに加速率を予め定められた式を用いる。
【0021】
熱処理、加工、溶接、表面処理の影響は、あらかじめ入力された材料情報1(記憶手段93に保持されている)を基に、分割部位ごとに予め求められている。通常、機器製作の過程で、溶接、冷間加工、熱間加工、再溶体化処理等の施工が種々の組合せで施される。こうした施工は腐食に影響を及ぼすので、部位ごとに影響度を求めておく必要があるからである。
【0022】
ここでは、腐食速度算出の基準を大気圧沸騰状態における硝酸水溶液中の腐食速度とした。そこで、実環境での評価には温度補正が必要となる。
【0023】
非伝熱状態では、腐食速度を、材料がさらされる媒体の温度に換算する。換算は、例えば硝酸水溶液中の腐食速度の温度依存性がアレニウス則に従うことから、予め求めた活性化エネルギより算出する。具体的には、次式で換算する。
【0024】
CRST = CRBP・exp(-Q/R/TST)/exp(-Q/R/TBP)
ここで、CRST:媒体の温度での腐食速度、CRBP:大気圧沸騰温度での腐食速度、TST:媒体の温度(K)、TBP:大気圧沸騰温度(K)、Q:活性化エネルギ、R:気体定数である。
【0025】
また、伝熱状態では、その状態に基づく温度の補正を予め求めておく必要がある。伝熱管表面のような伝熱部では、表面の温度は媒体の温度より高いので、機器表面の温度での腐食速度に変換する必要がある。また、伝熱面での腐食速度は伝熱表面温度相当の腐食速度よりも小さくなるとの知見(たとえば、RECOD'91,Vol.2, pp.558-563 (1991)に記載されている)に基づいて、その補正も必要である。
【0026】
運転モードとは、高レベル廃液濃縮缶内のように液組成が経時的に変化する場合の補正である。この場合、最も濃縮された状態での溶存化学種の濃度を代入して腐食予測すると、腐食の過大評価となる。したがって、予め求められた平均的な値により補正する。
【0027】
具体的には、例えば、材料としてステンレス鋼を対象とした場合の腐食速度は、
により求められる。ここで、大気圧沸騰温度における硝酸中腐食速度は、下記式(a−1)により求められる。
【0028】
また、共存イオン加速率は、例えば、酸回収蒸発缶では下記式(a−2)により求められ、高レベル廃液濃縮缶では下記式(a−3)により求められる。
【0029】
なお、硝酸および硝酸イオンの濃度の単位をmol/lとし、RuおよびFeの濃度の単位をg/lとし、放射線量の単位をrad/時とするとき、各係数の値として、例えば、表1に示す値を用いることができる。
【0030】
【表1】
【0031】
さらに、溶接加工影響補正、粒界腐食補正、および運転モード補正の補正値は、例えば、表2に示す値を用いることができる。
【0032】
【表2】
【0033】
腐食量Aは、診断対象の構造材料の現在の腐食量であり、
(腐食量A)
により求められる。
【0034】
また、設計寿命年時の腐食量Bは、
により求められる。ここで、「腐食量A」は(b)により求めた値である。
【0035】
さらに、余寿命は、
により求められる。
【0036】
なお、上述した評価式の例では、「腐食速度」の単位はmm/年、「腐食量」、および「腐食代」の単位はmm、期間および寿命の単位は「年」である。
【0037】
本発明では、このように定められた評価式を用いて腐食速度等の腐食状況を示す情報を推定するので、本発明の腐食推定方法を用いれば、迅速かつ的確に、構造材料の腐食の状況を知ることができる。
【0038】
また、本発明の腐食診断システムを用いれば、容易に腐食状況を認識できるため、腐食が危険な状態にまで進行する前に、腐食に対処することができるため、プラントの安全操業を確保することができる。
【0039】
なお、ここでは材料としてステンレス鋼を用いる場合について説明したが、溶解槽などの腐食速度を求める場合には、硝酸、鉄、ルテニウムおよび硝酸イオンに加えて、さらにプルトニウムの濃度をも用いる。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0041】
<実施例1>
A.診断対象
本実施例では、核燃料再処理施設における構造材料の診断を行う。本実施例の核燃料再処理施設は、図6に示すように、溶解槽61と、ヨウ素追い出し槽62と、清澄機63と、中間貯槽64と、抽出塔65と、分離施設66と、回収槽68と、高レベル廃液濃縮缶69と、酸回収蒸発缶70と、低レベル廃液蒸発缶71を備える。
【0042】
使用済み核燃料の再処理は、つぎのようにして行われる。まず、使用済み核燃料を、溶解槽61において硝酸に溶解する。これにより、使用済み核燃料の硝酸溶液が得られる。次に、ヨウ素追い出し槽62においてこの溶液からヨウ素を取り除いた後、清澄槽63においてこの溶液を清澄する。清澄した溶液は中間貯槽64を経て、抽出塔65に供給される。ここで、ウランとプルトニウムは有機溶媒により抽出され、分離施設66に移送される。その後、ウラン/プルトニウム精製工程を経て、プルトニウムおよびウランが回収される。一方、硝酸溶液は供給槽67から、高レベル廃液濃縮缶69に導入されて濃縮され、高レベル廃液は貯槽に移送される。一方、硝酸蒸気は酸回収蒸発缶70に送られ、ここで蒸留処理し、回収した硝酸は再利用される。残った溶液は、低レベル廃液蒸発缶71により再度濃縮される。まあ、清澄機63で補集された不溶解残渣は、回収槽68に排出され、高レベル廃液貯槽に移される。
【0043】
これらの各設備のうち、溶解槽61、ヨウ素追い出し槽62、清澄機63、中間貯槽64、抽出塔65、供給槽67、高レベル廃液濃縮缶71、酸回収蒸発缶70、および低レベル廃液蒸発缶71は、その設備が処理する溶液の溶媒(以下、媒体と呼ぶ)に硝酸が含まれているため、該媒体に触れる構造材料が硝酸により腐食することになる。そこで、本実施例では、これらの硝酸に直接接触する設備について、腐食診断を行う。
【0044】
B.腐食診断システムの構成
本実施例の腐食診断システムの機能ブロック構成を、図1に示す。本実施例の腐食診断システムは、材料情報入力装置2と、運転情報入力装置4と、媒体情報入力装置6と、演算処理装置9と、外部記憶装置10と、画像表示装置11と、印字出力装置12とを備える。
【0045】
材料情報入力装置2は、材料情報1の入力を受け付け、演算処理装置9へ通知する入力装置であり、運転情報入力装置4は、運転情報3の入力を受け付け、演算処理装置9へ通知する入力装置であり、媒体情報入力装置6は、媒体情報5の入力を受け付け、演算処理装置9へ通知する入力装置である。
【0046】
本実施例では、材料情報1は、診断対象の構造材料の材種と、該構造材料の組成と、熱処理条件と、加工方法と、溶接の有無およびその方法と、表面処理の履歴と、補修の有無およびその方法とからなる。運転情報3は、診断対象の機器ごとの、稼働、停止、および保管の時間と、現在いずれの状態にあるかを示す情報とからなる。また、媒体情報5は、各機器に接する媒体の温度と、媒体に溶存する化学種(硝酸、Fe、Ru、NO3 -等)の各濃度と、放射線量とを示す情報である。
【0047】
本実施例では、材料情報入力装置2および運転情報入力装置4は、あらかじめ定められたメニュー情報を表示し、該メニュー情報に含まれる情報のいずれかの選択を受け付けることにより、情報の入力を受け付ける手段を備える。また、媒体情報入力装置6は、施設に備えられた各化学種の濃度センサ(図示せず)、放射線センサ(図示せず)、および温度センサ(図示せず)からの情報を受け付ける手段を備える。なお、本実施例では、媒体情報はセンサ(オンライン計測器)を介して直接採取されるが、設備内の溶液をサンプリングし、該サンプルの濃度を測定して、媒体情報入力装置6に入力するようにしてもよい。この場合、濃度の測定には、液体クロマトグラフィ、原子吸光光度法、イオンクロマトグラフィ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析等の分析方法を用いることができる。
【0048】
これらの入力装置2、4、6を介して入力情報1、3、5を受け付けた演算処理装置9は、それらの情報を外部記憶装置10に格納するとともに、演算処理して診断対象の構造材料の腐食速度、腐食量、および余寿命を算出し、結果を表示装置11および/または印字出力装置12に出力する。
【0049】
本実施例では、表示装置11は、画像を表示する画像表示装置を備える。本実施例では、画像表示装置の表示画面は、タッチセンサを備え、表示画面への接触を感知することができる。表示装置11は、表示画面への接触を感知すると、接触された領域にあらかじめ定義された情報が入力されたものとして、該情報の入力を受け付け、該情報を演算処理装置9に通知する。なお、本実施例では表示装置11を入力装置としても用いているが、表示装置11等の出力装置とは別に、キーボード、マウスなどの入力装置を備えていてもよい。本実施例の印字出力装置12は、演算処理装置9からの指示に応じて、演算処理結果を出力情報13として印書出力する装置である。
【0050】
C.演算処理装置9の処理内容
演算処理装置9は、図7に示すように、中央演算処理装置(CPU)111と主記憶装置112とを備える情報処理装置である。機能ブロックで表現すれば、演算処理装置9は、図1に示すように、定常的にプラントの監視を行い、異常を検出すると表示装置11に出力するプラント監視手段91と、表示装置11を介して受け付けられる問い合わせに応答する問い合わせ応答手段92と、記憶手段93とを備える。プラント監視手段91および問い合わせ応答手段92は、主記憶装置112にあらかじめ保持されたインストラクションをCPU111が実行することにより実現される。また、記憶手段93は、主記憶装置112上に確保された記憶領域である。
【0051】
(1)記憶手段93の保持する情報
記憶手段93は、図12に示すように、診断対象のプラントの稼働期間の格納領域123と、該プラントの設計寿命の格納領域124と、プラントを構成する診断対象機器の一覧表である機器構成テーブル120と、機器ごとの機器状況テーブル121および診断結果テーブル122と、履歴保存領域(図示せず)と、計算式記憶領域(図示せず)と、材料情報1および運転情報3の記憶領域とを備える。なお、図12には、例として高レベル廃液濃縮缶に対応する機器状況テーブル121および診断結果テーブル122を図示した。
【0052】
機器構成テーブル120は、機器の名称を保持する機器名称格納領域1201と、該機器の状況を示す機器状況テーブル121のアドレスを保持する機器状況テーブルアドレス格納領域1202と、該機器の診断結果を保持する診断結果テーブル122のアドレスを保持する診断結果テーブルアドレス格納領域1203とを備える。
【0053】
機器状況テーブル121は、対応する機器の、該機器を構成する分割部位ごとに、該分割部位の情報を保持するテーブルである。ここで、分割部位とは、各機器をあらかじめ定められたように分割した領域であり、診断の最小単位である。
【0054】
機器状況テーブル121は、図12に示すように、分割部位ごとに、その分割部位の名称の格納領域1211と、該部位における媒体の、硝酸濃度格納領域1212、鉄濃度格納領域1213、ルテニウム濃度格納領域1214、硝酸イオン濃度格納領域1215、放射線量格納領域1216、表面温度格納領域1217、大気圧沸騰温度格納領域1218、および液温格納領域1219とを備える配列構造を有している。
【0055】
例えば、本実施例では、高レベル廃液濃縮缶には、蒸気非伝熱部、蒸気伝熱部、伝熱管、液相非伝熱部、および底部ジャケットの5つの分割部位が定義されている。そこで、図12に例示したように、高レベル廃液濃縮缶の機器状況テーブル121は、これら5つの分割部位ごとに行を備え、各行のそれぞれに、その分割部位の名称の格納領域1211と、該部位の、硝酸濃度格納領域1212、鉄濃度格納領域1213、ルテニウム濃度格納領域1214、硝酸イオン濃度格納領域1215、放射線量格納領域1216、表面温度格納領域1217、大気圧沸騰温度格納領域1218、液温格納領域1219とを備える9行9列の配列構造を有している。
【0056】
診断結果テーブル122は、対応する機器の、該機器を構成する分割部位ごとに、該分割部位の情報を用い演算して得られた診断情報を保持するテーブルである。診断結果テーブル122は、図12に示すように、分割部位ごとに、その分割部位の名称の格納領域1221と、該部位の、腐食速度の格納領域1222、腐食量の格納領域1223、設計寿命年時における腐食量(外挿値)の格納領域1224、腐食代の厚さの格納領域1225、および余寿命の格納領域1226とを備える配列構造を有している。腐食代の厚さの格納領域1225には、あらかじめ設計により定められた腐食代の厚さが保持されている。
【0057】
設計寿命格納領域124には、診断対象機器のすべての分割部位について、あらかじめ診断対象のプラントの設計寿命が保持されている。なお、入力手段を介して、設計寿命値が入力されれば、演算処理装置9は入力された新たな値を設計寿命格納領域124に格納することにより、設計寿命値を変更する。
【0058】
また、プラント稼働期間格納領域123には、現在までの稼働時間の総計が、機器ごとに保持される。演算処理装置9は、プラントを構成する機器ごとに、運転情報3として、該機器が稼働中か否かを示す情報を入力装置4を介して入手する。そこで、演算処理装置9は、この運転情報3を基に、稼働中の時間のみを機器ごとに計時して、一定時間ごと(本実施例では1時間ごと)にプラント稼働期間格納領域123の内容を更新する。
【0059】
履歴保存領域は、診断対象のプラントの稼働期間の格納領域123と、プラントを構成する診断対象機器の一覧表である機器構成テーブル120と、機器ごとの機器状況テーブル121および診断結果テーブル122との内容の履歴を保持するための記憶領域である。本実施例では、演算処理装置9は、プラント稼働開始から一年ごとに、該時点におけるこれらの領域120〜123を、履歴保存領域に複写する。なお、履歴保存領域は、複写された領域(領域120〜123と同じデータ構成を有する)と、この複写された領域のアドレスの一覧表(該アドレスと複写した時点の稼働時間との対応表)とからなる。
【0060】
また、計算式記憶領域は、腐食状況を推定するための計算式(評価式)を記憶するための領域であり、初期値として、各分割部位ごとにあらかじめ定められた、腐食量、腐食速度、腐食量の外挿値、および余寿命を求めるための評価式が保持されている。
【0061】
(2)プラント監視手段91の処理
プラント監視手段91の処理の流れを図9に示す。
【0062】
a.媒体情報の受け付け
プラント監視手段91は、一定時間ごと(本実施例では1時間ごと)に(ステップ907)、入力装置2、4、6に、材料情報1、運転情報3、および媒体情報5を問い合わせる(ステップ901)。問い合わせを受けた入力装置2、4、6は、それぞれ、材料情報1、運転情報3、媒体情報5をプラント監視手段91に通知する。例えば、問い合わせを受けた媒体情報入力装置6は、各分割部位に備えられた化学種(硝酸、Fe、Ru、NO3 -)の濃度センサ、放射線センサ、および温度(液温および表面絶対温度)センサ(図示せず)の検出した、診断対象のプラントを構成するすべての機器のすべての分割部位における媒体情報5を、プラント監視手段91に通知する。なお、材料情報1については、省略時解釈値が記憶手段93に保持されており、特にこの値からの変更がある場合のみ、材料情報入力装置2は変更する値の通知を行う。
【0063】
この通知を受けたプラント監視手段91は、材料情報1の変更値の通知があった場合は、それに基づいて、記憶手段93に保持された材料情報1のデータを変更する。また、プラント監視手段91は、運転情報3を記憶手段93に保存する。さらに、プラント監視手段91は、通知された媒体情報5を、その種別に応じて、各々の機器の機器状況テーブル121の各領域1212〜1216、1219に格納する。さらに、硝酸濃度から大気圧沸騰温度を求め、沸騰温度格納領域1218に格納する(ステップ902)。ここで、大気圧沸騰温度は、硝酸濃度に応じて定められる値である。
【0064】
b.腐食状況の計算
つぎに、プラント監視手段91は、個々の分割部位について、機器状況テーブル121に保持された情報を基に、腐食状況に関する情報(腐食量、腐食速度、設計寿命時の腐食量の外挿値、余寿命)を、計算式記憶領域に保持された評価式の計算により求め(ステップ903)、得られた結果を、機器に応じた診断結果テーブル122の、分割部位に応じた行の格納領域1222〜1226に格納する(ステップ904)。
【0065】
ここで、これら腐食状況に関する情報の評価式について説明する。腐食状況に関するこれらの情報は、該分割部位を構成する材料ごとにあらかじめ設定されている評価式に基づいて求められる。ここでは、その例を示す。
【0066】
まず、腐食速度の求め方について説明する。腐食速度は、例えば、下記式(a”)により推定される。
【0067】
により求められる。ここで、大気圧沸騰温度における硝酸中腐食速度は、下記式(a−1)により求められる。
【0068】
また、共存イオン加速率は、例えば、酸回収蒸発缶では下記式(a−2)により求められ、高レベル廃液濃縮缶では下記式(a−3)により求められる。
【0069】
なお、硝酸および硝酸イオンの濃度の単位をmol/lとし、RuおよびFeの濃度の単位をg/lとし、放射線量の単位をrad/時とするとき、各係数の値として、例えば、表1に示す値を用いることができる。
【0070】
【表1】
【0071】
さらに、溶接加工影響補正、粒界腐食補正、および運転モード補正の補正値は、例えば、表2に示す値を用いることができる。
【0072】
【表2】
【0073】
腐食量は、診断対象の構造材料の現在の腐食量であり、
により求められる。なお、「直前の腐食量」とは、この腐食量の演算の実行時に腐食量格納領域1223に保持されていた値である。なお、本実施例では、直前の腐食量を求めてからの施設の稼働期間は、この演算が1時間おきに行われることから、通常1時間であるが、プラント稼働中のみに経時を行う時計により、常時計測されている。
【0074】
また、設計寿命時の腐食量は、
により求められる。ここで、「現在の腐食量」は(b)により求めた値である。また、「設計寿命までの余命」は、設計寿命格納領域124の保持する値から、プラント稼働期間格納領域123の保持する値を引くことにより求められる。
【0075】
さらに、余寿命は、
により求められる。ここで、「設計腐食代」は、腐食代格納領域1225に保持されている値であり、「現在の腐食量」は(b)により求めた値であり、「腐食速度」は(a)により求めた値である。
【0076】
なお、上述した評価式の例では、「腐食速度」の単位はmm/年、「腐食量」、「設計寿命時の腐食量」および「腐食代」の単位はmm、期間および寿命の単位は「年」である。
【0077】
c.警告処理
つぎに、プラント監視手段91は、このようにして求めた腐食状況をもとに、危険を検出すると、警報を発する。
【0078】
すなわち、プラント監視手段91は、記憶手段93の保持するすべての診断結果テーブル122のすべての行について、設計寿命時の腐食量が腐食代を上回っていないかどうか判断する(ステップ905)。上回っていなければ、腐食速度は設計の範囲内であるから、プラント監視手段91は、警告を行うことなくステップ907に処理を進めて、1時間待ち、処理をステップ901に戻す。設計寿命時の腐食量が腐食代を上回っていれば、腐食速度が速すぎるということなので、表示装置11に警報メッセージを表示して、処理を上述のステップ907に進める。
【0079】
この警告メッセージは、表示装置11の表示画面に、ウインド形式で表示される。すなわち、ステップ905において腐食速度が速すぎると判断したプラント監視手段91は、表示装置11の表示画面に、すでに表示されている画像の上に重ねて、矩形領域を表示し、該矩形領域内に、腐食速度の速すぎると判断したすべての機器および分割部位の名称と、その腐食速度、腐食量、設計寿命時の腐食量、腐食代、および余寿命を表示する。これにより、早期に危険を察知し、それを使用者に知らせることができる。
【0080】
なお、このステップ906において表示される警告メッセージは、表示装置11を介して表示解除の指示が受け付けられるまで表示される。表示解除の指示を受け付けると、演算処理装置9は、表示画面上からこの警告メッセージのウインドを消去する。
【0081】
(3)問い合わせ応答手段92の処理
a.処理の流れ
問い合わせ応答手段92の処理の流れを、図10に示す。問い合わせ応答手段92は、まず、表示装置11の表示画面20に、図2に示すような施設全体の処理プロセスを示す図を表示して(ステップ101)、表示装置11を介して診断対象機器(設備)の入力を受け付ける(ステップ102)。なお、診断対象機器の入力は、該機器の表示されている領域への接触を検出することにより受け付けられる。以下、この処理プロセスの図を表示した画面を、プロセス表示画面と呼ぶ。
【0082】
診断対象機器の入力を受け付けると、問い合わせ応答手段92は、表示装置11の表示画面20に、入力された診断対象機器の詳細を示す図を表示し(ステップ103)、つぎに実行する処理の選択を受け付けて(ステップ104)、指示されたないように応じた表示を行う(ステップ105)。この診断対象機器の詳細を示す図の表示された画面を、機器詳細表示画面と呼ぶ。
【0083】
なお、この機器詳細表示画面は、表示する情報の種別の選択領域203と、表示形式の選択領域204と、評価式の表示を指示する選択領域205と、表示する分割部位の選択領域207と、プロセス表示画面の表示指示の選択領域206と、腐食計算指示の選択領域208の6種類の選択領域を備える。
【0084】
図3に示すように、表示する情報の種別の選択領域203には、「腐食速度」の表示の指示領域203aおよび「腐食量」の表示の指示領域203bとがある。また、表示形式の選択領域204には、マップ表示指示領域204a、グラフ表示指示領域204b、第1の数値表示指示領域204c、および第2の数値表示指示領域204dとがある。分割部位の選択領域207は、表示画面20上の機器の図が表示されている領域(図3では領域201として図示)の、分割部位名の表示される矩形領域である。
【0085】
これらの各選択領域は、それぞれ該領域に表示される内容に対応付けて定義されている。表示装置11は、これら選択領域への接触を検出すると、該領域に定義された内容が選択されたものと判断し、該内容を演算処理装置9の問い合わせ応答手段92に通知する。
【0086】
つぎに実行する処理の選択を受け付けた問い合わせ応答手段92は、受け付けた選択がプロセス表示画面の表示指示であれば、処理をステップ101へ戻す(ステップ105)。また、問い合わせ応答手段92は、これ以外の選択を受け付けると、表示装置11に選択に応じた処理を行って(ステップ106)、処理をステップ103へ戻す。
【0087】
b.ステップ106の処理
ステップ104において受け付けられた選択のうち、ステップ106において処理されるのは、表示する情報の種別(選択領域203)と、表示形式(選択領域204)と、評価式の表示の指示(選択領域205)と、表示する分割部位(選択領域207)と、腐食計算指示(選択領域208)の5種類である。ステップ106において、問い合わせ応答手段92は、これらの選択を受け付けると、受け付けた選択の組み合わせに応じた処理を行う。このステップ106の情報表示処理の流れを、図8に示す。
【0088】
b−1.評価式の表示および修正
ステップ106において、問い合わせ応答手段92は、まず、ステップ104において受け付けた選択が、評価式の表示指示であれば(ステップ801)、分割部位の選択を受け付けて(ステップ802)、処理をステップ803に進める。
【0089】
ステップ803において、問い合わせ応答手段92は、指示された評価式を表示画面20に表示する。このときの表示画像例を図11に示す。なお、図11に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104またはステップ802において、分割部位として酸回収施設98が選択された場合に表示される評価式表示画面である。
【0090】
図11に示すように、評価式表示画面は、腐食速度の推定のための評価式を表示する領域211と、評価式内で用いられている各変数の算出方法を表示する領域212と、評価式内で用いられている各補正項定数の表を表示する領域213と、評価式内で用いられている各係数の一覧表表示する領域214とを備える。
【0091】
つぎに、問い合わせ応答手段92は、表示した評価式の変更の有無、変更箇所、および変更内容の入力を表示装置11および入力装置2を介して受け付ける(ステップ804)。具体的には、表示装置11の表示画面20への接触位置を感知することにより、変更箇所を認識し、入力装置2の備えるキーボードを介して、変更内容を受け付ける。また、評価式表示画面には、機器詳細表示画面の表示を指示する選択領域215が備えられており、この選択領域に対する接触が検知されると、ステップ804においては、この表示画面をもとに戻す指示も受け付けられる。
【0092】
ステップ804において受け付けられた指示が、機器詳細表示画面の表示であれば、問い合わせ応答手段92は、そのままステップ106の処理を終了して、ステップ103に処理を戻し(ステップ805)、それ以外の指示、すなわち、評価式の変更の指示であれば、指示されたように記憶手段93の評価式記憶領域に保持された評価式を変更したうえ、該変更後の評価式を用いて、選択された分割部位についての腐食速度、腐食量、設計寿命年時の腐食量、および余寿命の演算を再実行し、結果を診断結果テーブル122の各領域1222〜1224、1226に格納して(ステップ806)、処理をステップ803に戻す。
【0093】
b−2.分割部位の特定
ステップ104において受け付けた選択が、評価式の表示指示および分割部位のいずれの選択でもなければ(ステップ807)、問い合わせ応答手段92は、処理をステップ811に進める。また、ステップ104において受け付けた選択が、分割部位の表示指示であれば(ステップ807)、問い合わせ応答手段92は、再度、表示する内容の選択を受け付けて(ステップ808)、評価式の表示指示が選択されれば、処理を上述のステップ803に進め、評価式表示指示の選択でなければ、処理をステップ811に進める(ステップ809)。
【0094】
なお、診断対象の分割部位として、あらかじめ定められた部位(特殊部位)が指定されると、演算処理装置9は、該特殊部位についてあらかじめ記憶装置10に保持されたテキスト情報を表示画面20内にウインド(表示画面にすでに表示されている画像の上に重ねて表示される矩形領域)として表示するようにしてもよい。
【0095】
b−3.腐食量の計算
また、問い合わせ応答手段92は、ステップ104またはステップ808において受け付けた選択が、腐食計算の指示であれば(ステップ811)、腐食速度、腐食量、設計寿命年時の腐食量、および余寿命の演算を再実行し、結果を診断結果テーブル122の各領域1222〜1224、1226に格納して(ステップ812)、ステップ106の処理を終了し、処理をステップ103に戻す。
【0096】
なお、ここで腐食計算は、ステップ104において分割部位が指定されていれば、指定された分割部位に係るもののみについて行われ、分割部位が指定されていなければ、ステップ102において選択された機器を構成するすべての分割部位について行われる。また、ステップ812における腐食計算の処理は、プラント監視手段91の処理におけるステップ903の評価式の計算処理と同様の処理である。
【0097】
b−4.数値表示
また、問い合わせ応答手段92は、ステップ104またはステップ808において受け付けた選択が、数値表示の指示であれば(ステップ813)、選択された機器に関する情報を表示画面20に表示する(ステップ814)。このときの表示形式は、表示形式1(選択領域204c)、表示形式2(選択領域204d)に応じて、あらかじめ定められている。また、ステップ104において分割部位が選択されている場合は、問い合わせ応答手段92は、その選択された部位の数値のみを表示する。ステップ814において表示される画像の例を図13および図14に示す。
【0098】
なお、図13に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104において数値表示の指示が選択された場合(すなわち、分割部位が選択されていない場合)に表示される数値表示画面の一例である。図13に示すように、分割部位が選択されていないときの数値表示画面は、本実施例では、選択された機器を構成する各分割部位ごとに、診断結果テーブル122に保持された腐食速度等のデータを、表形式で表示する画面である。
【0099】
また、図14に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104において分割部位が選択され、ステップ808において数値表示の指示が選択され場合に表示される数値表示画面の一例である。図14に示すように、分割部位が選択されたときの数値表示画面は、本実施例では、選択された分割部位についての、診断結果テーブル122に保持された腐食速度等のデータや、該データを求めるための補正値等を、表形式で表示する画面である。
【0100】
これらの数値表示画面は、いずれも、機器詳細表示画面の表示を指示する選択領域215を備えている。問い合わせ応答手段92は、数値表示画面を、この選択領域215に対する接触が検知されるまで表示し、この領域への接触を検出すると、ステップ106の処理を終了して、処理をステップ103に戻す。
【0101】
b−5.表示するデータ種別の特定
問い合わせ応答手段92は、ステップ104において受け付けた指示が、表示するデータの種別であれば(ステップ815)、表示形式(選択領域204)の選択を受け付けて(ステップ816)、処理をステップ818に進め、データの種別の指示でなければ(ステップ815)、データの種別(選択領域203)の選択を受け付けて(ステップ817)、処理をステップ818に進める。
【0102】
b−6.マップ表示
ステップ818において、問い合わせ応答手段92は、ステップ104、ステップ808、またはステップ816において受け付けた選択が、マップ表示の指示かどうか検査し、マップ表示の指示であれば、選択された機器(分割部位が選択されていれば、該分割部位)に関する情報を、表示画面20の領域201に表示された機器の図の色分け等により図示する(ステップ819)。ステップ819において表示される画像の例を図4および図5に示す。
【0103】
図4に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104または816においてマップ表示が選択され、ステップ104またはステップ817においてデータ種別が選択された場合(すなわち、分割部位が選択されていない場合)であって、データ種別として腐食速度が選択された場合に表示される表示画面の一例である。図4に示すように、分割部位が選択されていないときの、腐食速度のマップ表示画面は、本実施例では、選択された機器の図201における各分割部位の領域が、それぞれ、診断結果テーブル122の腐食速度格納領域1222に保持された値の大きさに応じた色で表示され、該色と、腐食速度との関係を示す凡例41が表示される。
【0104】
なお、データ種別として腐食量が選択された場合には、問い合わせ応答手段92は、表示画面20に問い合わせ領域161(図5に図示)を設け、該領域161へのいつの時点の腐食量を表示するか(稼働開始からの年数)の指示の入力(入力装置2による)を受け付けて、指示された時点での腐食量を計算して、その量を用いてマップ表示を行う。
【0105】
図5に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104または816においてマップ表示が選択され、ステップ104またはステップ817においてデータ種別が選択された場合(すなわち、分割部位が選択されていない場合)であって、データ種別として腐食量が選択され、問い合わせ領域161に「7」が入力された場合に表示される表示画面の一例である。
【0106】
図5に示したマップ表示画面は、選択された機器の図201における各分割部位の領域が、それぞれ、稼働開始から7年経過後の推定される(または履歴テーブルに記憶された)腐食量の、腐食代に対する割合に応じて、あらかじめ定められた色で表示され、該色と、腐食速度との関係を示す凡例162が表示される。
【0107】
これらのマップ表示画面は、いずれも、機器詳細表示画面の表示を指示する選択領域215を備えている。問い合わせ応答手段92は、マップ表示画面を、この選択領域215に対する接触が検知されるまで表示し、この領域への接触を検出すると、ステップ106の処理を終了して、処理をステップ103に戻す。
【0108】
b−7.グラフ表示
ステップ104、ステップ808、またはステップ816において受け付けた選択が、グラフ表示の指示であれば(ステップ820)、問い合わせ応答手段92は、選択された機器に関する情報(分割部位が選択されていれば、該分割部位)を、表示画面20にグラフで表示する(ステップ821)。ステップ821において表示される画像の例を図15に示す。
【0109】
なお、データ種別として腐食量が選択された場合には、問い合わせ応答手段92は、表示画面20に問い合わせ領域161(図5に図示)を設け、該領域161へのいつの時点の腐食量を表示するか(稼働開始からの年数)の指示の入力(入力装置2による)を受け付けて、指示された時点での腐食量を計算して、その量を用いてマップ表示を行う。
【0110】
図15に示したのは、ステップ102において高レベル廃液濃縮缶97が選択され、ステップ104または816においてグラフ表示が選択され、ステップ104またはステップ817においてデータ種別が選択された場合(すなわち、分割部位が選択されていない場合)であって、データ種別として腐食量が選択され、問い合わせ領域161に「7」が入力された場合に表示される表示画面の一例である。
【0111】
図15に示したグラフ表示画面は、選択された機器の各分割部位における、腐食量の計時変化のグラフ151と、稼働開始から7年経過後の推定される(または履歴テーブルに記憶された)腐食量のグラフ152とを備え、さらに、選択部位の識別のための凡例153を備える。
【0112】
グラフ表示画面は、機器詳細表示画面の表示を指示する選択領域215を備えている。問い合わせ応答手段92は、数値表示画面を、この選択領域215に対する接触が検知されるまで表示し、この領域への接触を検出すると、ステップ106の処理を終了して、処理をステップ103に戻す。
【0113】
D.診断例
高レベル廃液濃縮缶を対象に、本実施例の診断システムを用いて材料診断を行った例をつぎに示す。なお、缶内の液は8mol/lの硝酸で、Feイオンが5g/l、NO3 -イオンが5mol/l、放射線は1Mrad/時である。材料は、304Lステンレス鋼で、熱処理・加工・溶接・表面処理の影響度は1.0、温度は液温が340Kの場合である。なお、運転モードの補正値は1.0である。
【0114】
システムを起動すると、表示画面20に、まず、初期画面として図2に示すプロセス表示画面が表示される。ここで、高レベル廃液濃縮缶の選択領域209に接触すると、図3に示す機器詳細表示画面が表示される。
【0115】
つぎに、この機器詳細表示画面の、腐食速度選択領域203aとマップ表示選択領域204aに接触すると、図4に示す腐食速度のマップ表示が、表示画面20に表示される。ここで示した例では伝熱管上部が最も濃い色で図示されているので、ユーザは、この伝熱管が最も速く腐食されていることを、容易に認識することができる。
【0116】
このマップ表示画面の、選択領域215に接触すると、画面は機器詳細表示画面に戻るので、ここで、腐食量選択領域203bとマップ表示選択領域204aに接触すると、表示画面に問い合わせ領域161が表示されるので、ここに「7」と入力すれば、図5に示す腐食量のマップ表示が、表示画面20に表示される。図5のマップ表示は、プラント運転開始後、7年経過時の腐食量が設計した材料の腐食代の何%まで進んでいるかを色別に図示した表示である。これにより、ユーザは、腐食代の侵食の程度を容易に認識することができる。
【0117】
このマップ表示画面も、選択領域215に接触すれば、画面を機器詳細表示画面に戻すことができる。画面を機器詳細表示画面に戻した後、腐食量選択領域203bとグラフ表示選択領域204aに接触すると、表示画面に問い合わせ領域161が表示されるので、ここに「7」と入力すれば、図15に示す腐食量のグラフ表示が、表示画面20に表示される。これにより、ユーザは、腐食量が、経年時にどのような推移をしたか、および、分割部位毎に腐食量がどのように異なるかを、容易に認識することができる。
【0118】
また、機器詳細表示画面において、数値表示選択領域203cに接触すると、図13に示す数値表示画面が、表示画面20に表示される。この数値表示画面には、分割部位ごとに、腐食状況と材料の全寿命とが表示されるので、マップ表示において腐食速度が速いことがわかった伝熱管も、この運転状態を維持すれば、設計寿命を十分まっとうできることがわかる。
【0119】
また、機器詳細表示画面において、伝熱管の分割部位選択領域207に接触した後、数値表示選択領域203cに接触すると、図14に示すように、伝熱管の腐食状況、全寿命、および計算に用いられた数値を含む数値表示画面が表示され、全体の状況が把握できる。
【0120】
E.診断結果の利用例
本実施例の診断システムを用いれば、運転監理者は出力された材料診断結果に基づいて、施設の運転方法を決定することができる。例えば、腐食速度が運転基準値(機器の設計寿命を達成するに必要な腐食速度の最大許容値)を上回る場合、運転方法の変更等により腐食速度を抑える手段を講じる。この場合、どのような手段が最も適切かを本診断システムを用いて決定することもできる。すなわち、腐食に影響する因子のなかでどの因子を制御すれば最適であるかを判定させる。例えば、特定の溶存化学種の濃度をどの程度下げれば腐食を抑えうるかなどを検討する。その結果、特定化学種の濃度を下げると運転基準値を下回る場合には、その化学種濃度を下げる処置を別途講じる。また、腐食量が今後、設計腐食代を越えることが想定された場合にも、同様な処置を行うことにより、腐食を抑制することができる。
【0121】
F.その他
本実施例の診断システムでは、プロセス全体から機器を指定し、個々の機器の腐食状態を診断するが、プロセス全体を一括して診断するようにしてもよい。この場合、診断結果の表示は機器ごとに、上述の場合と同様に表示するようにしてもよい。
【0122】
また、本実施例では、情報の出力は表示装置11の表示画面に行う場合を例にとって説明したが、本実施例の診断システムは、入力装置を介して印書出力が指示されれば、これらの情報を出力装置12から印書出力する。
【0123】
<実施例2>
本実施例2の機能ブロックは、実施例1と同様であり、本実施例2の診断システムは、実施例1と診断システムとほぼ同様の構成を有するが、演算処理装置9がプラント監視手段91および問い合わせ応答手段92の行う処理の内容が異なっている。ここでは、実施例1との相違点のみを説明する。
【0124】
本実施例2のプラント監視手段91は、実施例1のようにプラントの腐食状況を監視して、危険を検出すると警報を発することは行わず、単に、周期的に情報を受け取り、記憶手段93に格納する手段である。本実施例2のプラント監視手段91の処理の流れを図16に示す。
【0125】
本実施例2のプラント監視手段91は、一定時間ごと(本実施例では1時間ごと)に(ステップ183)、入力装置2、4、6に、材料情報1、運転情報3、および媒体情報5を問い合わせる(ステップ181)。なお、ステップ181は、実施例1のステップ901と同様の処理である。
【0126】
この通知を受けたプラント監視手段91は、材料情報1の変更値の通知があった場合は、それに基づいて、記憶手段93に保持された材料情報1のデータを変更する。また、プラント監視手段91は、運転情報3を記憶手段93に保存する。さらに、プラント監視手段91は、通知された媒体情報5を、その種別に応じて、各々の機器の機器状況テーブル121の各領域1212〜1217、1219に格納する。さらに、硝酸濃度から大気圧沸騰温度を求め、沸騰温度格納領域1218に格納する(ステップ182)。なお、ステップ182は、実施例1のステップ902と同様の処理である。
【0127】
最後に、プラント監視手段91は、1時間経過するのを待って、処理をステップ181に戻す(ステップ183)。なお、ステップ183は、実施例1のステップ907と同様の処理である。
【0128】
本実施例2の当合わせ応答手段92も、実施例1と同様に、ステップ101〜106の処理を行う。ただし、ステップ106の処理において、実施例1においてプラント監視手段91が行っていた腐食速度等の推定処理を、自ら行う。本実施例2におけるステップ106の処理の流れを、図17に示す。
【0129】
ステップ106において、本実施例2の問い合わせ応答手段92は、まず、実施例1のステップ801〜806と同様の処理を行う(ステップ1901〜1906)。
【0130】
ステップ1901において、ステップ104受け付けた選択が評価式の表示指示ではなかった場合、問い合わせ応答手段92は、該選択が分割部位の選択かどうか判断する(ステップ1907)。ここで、該選択が、評価式の表示指示および分割部位のいずれの選択でもなければ、問い合わせ応答手段92は、処理をステップ1912に進める。また、ステップ104において受け付けた選択が、分割部位の表示指示であれば、問い合わせ応答手段92は、再度、表示する内容の選択を受け付けて(ステップ1909)、評価式の表示指示が選択されれば、処理を上述のステップ1903に進め、評価式表示指示の選択でなければ、処理をステップ1910に進める(ステップ1909)。
【0131】
ステップ1910において、問い合わせ応答手段92は、選択された分割部位についての腐食速度、腐食量、設計寿命年時の腐食量、および余寿命の演算を再実行し(ステップ1910)、結果を診断結果テーブル122の各領域1222〜1224、1226に格納して(ステップ1911)、処理をステップ1914に進める。
【0132】
また、ステップ1912では、問い合わせ応答手段92は、ステップ102で選択された機器を構成するすべての分割部位について、腐食速度、腐食量、設計寿命年時の腐食量、および余寿命の演算を再実行し(ステップ1912)、結果を診断結果テーブル122の各領域1222〜1224、1226に格納して(ステップ1913)、処理をステップ1914に進める。なお、ステップ1910および1912における計算の処理は、実施例1におけるステップ903で行われる評価式の計算と同様の処理である。
【0133】
ステップ1914以降では、問い合わせ応答手段92は、実施例1と同様に、指示された形式で指示されたデータを表示画面20に表示する処理を行う。なお、ステップ1914〜1922は、実施例1のステップ813〜821と同様の処理である。
【0134】
本実施例2では、各入力手段2、4、6からの情報の入力を受け付け、該情報を記憶領域に記憶する手段としてプラント監視手段91を備えているが、このような入力受け付けのための手段を設けずに、問い合わせ応答手段92が、腐食速度等の計算を行う際に、必要な情報を各入力手段2、3、6に問い合わせ、通知された情報を記憶手段93の記憶領域に格納するようにしてもよい。
【0135】
【発明の効果】
本発明の腐食診断方法および腐食診断システムによれば、酸等に腐食されるプラントの腐食状況を認識、予測することができるので、利用者は腐食状況に応じた対処を行うことができる。従って、本発明の腐食診断方法および腐食診断システムを用いれば、プラントの安全操業を確保できる。本発明は、特に安全性の要求される使用済み核燃料再処理施設への適用に適している。また、本発明の腐食抑制方法によれば、使用済み核燃料再処理施設における硝酸水溶液に接触する構造材料の腐食を、効果的に抑制できるので、再処理施設の安全操業を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の腐食診断システムの機能ブロック図である。
【図2】 プロセス表示画面の例を示す説明図である。
【図3】 機器詳細表示画面の例を示す説明図である。
【図4】 マップ表示画面の例を示す説明図である。
【図5】 マップ表示画面の例を示す説明図である。
【図6】 診断対象の使用済み核燃料再処理施設の構成図である。
【図7】 演算処理装置のハードウエア構成図である。
【図8】 実施例1における問い合わせ応答手段の処理のステップ106の詳細な流れを示す流れ図である。
【図9】 実施例1のプラント監視手段の処理の流れを示す流れ図である。
【図10】 実施例1の問い合わせ応答手段の処理の流れを示す流れ図である。
【図11】 評価式表示画面の例を示す説明図である。
【図12】 記憶手段93の備える記憶領域を示す説明図である。
【図13】 数値表示画面の例を示す説明図である。
【図14】 分割部位指定の数値表示画面の例を示す説明図である。
【図15】 グラフ表示画面の例を示す説明図である。
【図16】 実施例2のプロセス監視手段の処理の流れを示す流れ図である。
【図17】 実施例2における問い合わせ応答手段の処理のステップ106の詳細な流れを示す流れ図である。
【符号の説明】
1…材料情報、2…入力装置、3…運転情報、4…入力装置、5…媒体情報、6…入力装置、9…演算処理装置、10…記憶装置、11…表示装置、12…出力装置、13…出力情報、20…表示画面91…プラント監視手段、61…溶解槽、62…ヨウ素追い出し槽、63…清澄機、64…中間貯槽、65…抽出塔、66…分離施設、67…供給槽、68…回収槽、69…高レベル廃液濃縮缶、70…酸回収濃縮缶、71…低レベル廃液濃縮缶、92…問い合わせ応答手段、93…記憶手段、111…中央演算処理装置、112…主記憶装置、120…機器構成テーブル、121…機器状況テーブル、122…診断結果テーブル、123…プラント稼働期間格納領域、124…設計寿命格納領域。
Claims (8)
- 酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定する方法であって、
上記腐食の速度を、
大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、
上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の腐食加速率と、
あらかじめ定められた溶接加工影響補正値と、
温度補正値と、
運転モードに応じてあらかじめ定められた運転モード補正値とを、掛け合わせて求めることを特徴とするプラント構造材料の腐食速度推定方法。 - 請求項1において、
上記プラントは、使用済み核燃料再処理設備であり、
上記酸を含む溶液は、使用済み核燃料を溶解した硝酸水溶液であることを特徴とするプラント構造材料の腐食速度推定方法。 - 硝酸を含む溶液の処理を行う使用済み核燃料再処理設備であるプラントの、該硝酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、
入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備え、
上記入力装置は、
上記硝酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、
運転状況のデータを受け付ける手段と、
上記硝酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、
上記構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有し、
上記演算処理装置は、
上記硝酸を含む溶液中の硝酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該硝酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段と、
上記大気圧沸騰状態における上記硝酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記硝酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段と、
上記推定した腐食速度と、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報との少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段とを有することを特徴とするプラント構造材料の腐食診断システム。 - 酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、
入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備え、
上記入力装置は、
上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、
運転状況のデータを受け付ける手段と、
上記酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、
上記構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有し、
上記演算処理装置は、
上記酸を含む溶液中の酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段と、
上記大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段と、
上記推定した腐食速度と、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報との少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段と、
あらかじめ定められた時間ごとに、上記腐食の進行の推定を行い、あらかじめ定められた基準を超えた腐食の進行を検出すると、上記出力装置に警報を出力する手段とを備えることを特徴とするプラント構造材料の腐食診断システム。 - 酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、
入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備え、
上記入力装置は、
上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、
運転状況のデータを受け付ける手段と、
上記酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、
上記構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有し、
上記演算処理装置は、
上記酸を含む溶液中の酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段と、
上記大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段と、
上記推定した腐食速度と、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報との少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段とを有し、
上記構造材料に関する情報は、
該構造材料の熱処理、加工、溶接、表面処理の履歴および補修の履歴を含むことを特徴とするプラント構造材料の腐食診断システム。 - 上記構造材料に関する情報は、
上記構造材料の材質に関する情報を、さらに含むことを特徴とする請求項5記載のプラント構造材料の腐食診断システム。 - 酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、
入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備え、
上記入力装置は、
上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、
運転状況のデータを受け付ける手段と、
上記酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、
上記構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有し、
上記演算処理装置は、
上記酸を含む溶液中の酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段と、
上記大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段と、
上記推定した腐食速度と、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報との少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段とを有し、
上記あらかじめ定められた化学種は、
硝酸、鉄、ルテニウム、硝酸イオンおよびプルトニウムのうちの少なくともいずれかであることを特徴とするプラント構造材料の腐食診断システム。 - 酸を含む溶液の処理を行うプラントの、該酸を含む溶液に接触する構造材料の腐食の進行を推定するプラント構造材料の腐食診断システムであって、
入力装置と、出力装置と、演算処理装置とを備え、
上記入力装置は、
上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度の入力を受け付ける手段と、
運転状況のデータを受け付ける手段と、
上記酸を含む溶液の温度データの入力を受け付ける手段と、
上記構造材料に関する情報の入力を受け付ける手段とを有し、
上記演算処理装置は、
上記酸を含む溶液中の酸の濃度から、大気圧沸騰状態における該酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度を求める手段と、
上記大気圧沸騰状態における上記酸の水溶液に接触する構造材料の腐食速度と、上記酸を含む溶液中に存在するあらかじめ定められた化学種の濃度により定められる補正値と、上記運転状況データにより定められる補正値と、上記温度データにより定められる補正値と、あらかじめ定められた溶接加工影響補正値との積を、上記構造材料の腐食速度として推定する手段と、
上記推定した腐食速度と、該腐食速度により求められる腐食の進行についての情報との少なくともいずれかを、上記出力装置に出力する手段とを有し、
上記推定された腐食速度および該腐食速度により求められる腐食の進行の情報のうちの少なくともいずれかの履歴情報を保持するための記憶手段をさらに備えることを特徴とする腐食診断システム。
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