JP3791580B2 - 電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ - Google Patents

電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ピアノ、エレクトーン等の電子鍵盤楽器のためのタッチコントロール用の圧力センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
タッチコントロール機能を備えた電子楽器は、押鍵時や押鍵持続状態で鍵に加える力を変化させることにより、音の立ち上がり時や持続状態における音の強弱を変化させたり、ビブラート効果、トレモロ効果等を発生させたり変化させたりする。そのためには、押鍵圧を感知するタッチコントロール用圧力センサ(プレッシャーコントロールセンサ、PCセンサともいう)が、鍵盤装置に備えられる。
【0003】
圧力センサは、鍵のフルストローク時又は後において押鍵圧を受ける緩衝部材(ストッパ部材)の表面又は裏面に設けられることが多く、この場合は、圧力センサと緩衝部材とが接合されて圧力センサを構成する。図9は、鍵盤装置における圧力センサ(圧力センサS及び緩衝部材A)の配置の一例を示している。この例では、鍵Kが押鍵されると鍵の前部(演奏者側)に設けられた突部k1がレバーHを押し下げ、レバーHの後部が上昇し、緩衝部材Sに当接する。
【0004】
圧力センサはまた、図10に示すように、緩衝部材と組み合わされることなく単独で用いられることもある。この場合、ケースs0に感圧部s1を納められて基板等に固定されることもあれば、ケースなしで感圧部及びリード部が直接基板等に固定されることもある。図10のものは、ケースなしで押鍵時に接点部品Cが接触する発音制御用基板Bに圧力センサSが設けられている。この場合は、接点部品Cは、基板の導通をなすための接点c1と圧力センサに圧力を伝達する押圧部c2とを備える。押鍵時には、鍵Kから垂下する突片k1が接点部品Cを押し下げて、押圧部c2を圧力センサAに押し付ける。鍵のフルストロークは、鍵前方の突部k2が緩衝部材Aに当接することにより画定される。
【0005】
従来の圧力センサは、例えば図11に示すような圧力センサSと緩衝部材Aとを備えたものとされている。この圧力センサSは、鍵配列方向に延びる帯状をなし、ケースs0に納められている。圧力センサSの上面(受圧側の面)には、緩衝部材Aが接着されている。圧力センサSは、圧力に応じて抵抗値を変化させる感圧部s1と、リード線を保持したリード部s2とを備えた形態とされる。圧力センサSは、例えば図12に示すように、ポリエチレン製の保持フィルムs3上に感圧部s1とリード部s2とを備えたものとされる。感圧部s1は、保護フィルムs3上にカーボンとバインダからなる感圧導電層s4を細長く2列に設け、2つの列が重なるように保持フィルムs3を図の矢印の方向に折り曲げて接着することにより形成される。保持フィルムs3には、折り曲げを容易にするために長手方向に沿うスリットs7が形成されている。リード部s2は、一対のリード線s5を2列の前記感圧導電層s4に接続し、保持フィルムs3の端部まで延ばし、端子s6に接続して形成されている。ケースs0は、感圧部s1の底面、側面及び上面側縁を囲む形状をなし、鍵盤フレームに取り付けられる。
【0006】
これら圧力センサ及び圧力センサの使用状態においては、以下のような種々の要因で部分的な歪みを生じることがある。
1)鍵盤フレームや基板への固定時の外力により曲がりを生じる。
2)取付面に凹凸がある。
3)異物が圧力センサと緩衝部材又は取付面との間の接着面に介在する。
4)圧力センサ及び緩衝部材の一方の材質又は形状の不均一が他方に歪みを生じさせる。
5)演奏者が加える押鍵力による(機能上必要な歪み)
従来の緩衝部材及び圧力センサは、鍵配列方向に一様の幅及び厚さで延びているので、緩衝部材又は圧力センサの一部に歪み発生要因があると、歪みが緩衝部材又は圧力センサを伝わって広がり、一部分の要因が広い範囲でタッチコントロールに影響することがある。
【0007】
高感度の圧力センサにおいては、特に不要な歪みが影響を与えやすい。圧力センサに影響する歪みは前述の通り、多種多様であり、これを皆無にすることが極めて困難である。したがって、不可避的に存在する歪み発生要因に対して、影響を受けにくい圧力センサが望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような要請に応えようとするものであり、緩衝部材又は圧力センサの一部に歪み発生要因があっても、歪み又はその影響が不要な部分に広がるのを防止し得る圧力センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受けるように取り付け面に取り付けられ鍵のフルストローク時又は後における押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材を備え、該センサ部材は、鍵配列方向に帯状に延び、該方向に間隔をおいて切欠部が設けられており、該切欠部は、タッチコントロール機能を付与すべき範囲における隣り合う前記動作部分の当接位置の中間領域に設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサにより達成される。
【0010】
本発明の前記目的はまた、鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受ける緩衝部材と、該緩衝部材を経た押圧力を受けるように取り付け面に取り付けられ鍵のフルストローク時又は後における押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材とを備え、前記緩衝部材及びセンサ部材は鍵配列方向に帯状に延び、該緩衝部材及びセンサ部材の少なくとも一方には、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられており、該切欠部は、タッチコントロール機能を付与すべき範囲における隣り合う前記動作部分の当接位置の中間領域に設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサにより達成される。
【0011】
前記切欠部は、前記センサ部材の両側部から中央側へ延びる切り込み状とし、或いは、前記センサ部材の幅方向に延びる孔状とすることができる。
【0012】
本発明の前記目的はまた、鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受けるセンサ部材と、該センサ部材を保護するように覆うケースとを備え前記センサ部材は、圧力に応じて出力値を変化させる感圧部材が設けられた感圧部と、該感圧部を覆う保持部材とを備えており、該保持部材は、前記感圧部を鍵配列方向に越えて延びた延在部を有し、前記センサ部材は、該延在部が前記ケースに固着され、前記感圧部は前記ケースに固着されないか又はケース中での位置保持に必要な一部の個所においてのみ固着されており、前記延在部は、該延在部の固着部分と感圧部との間に切欠部が形成されていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサによって達成される。
【0013】
本発明の前記目的はまた、鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受け押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材と、該センサ部材を保護するように該センサ部材の上面及び底面の各々の少なくとも一部を覆うケースとを備え、前記ケースは、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサによって達成される。
【0014】
本発明の前記目的はまた、鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受け押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材と、該センサ部材を保護するように該センサ部材の上面及び底面の各々の少なくとも一部を覆うケースとを備え、前記ケースは、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサによって達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は、圧力センサのセンサ部材1を示している。図では、押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分により打撃される方向を、上方からとして示す。この方向は、図に示したものに拘束されるものではなく、例えば、図9に示したように、レバーHが緩衝部材を打撃する場合は、下方からの打撃となる。
【0016】
センサ部材1は、鍵盤装置の全鍵に対応する範囲に亘って、或いはタッチコントロール機能を付与すべき鍵に対応する範囲に亘って、1本又は複数本を連ねて帯状に延びており、相互の接触面は接着剤により接着されている。センサ部材1は、例えば、図11と共に説明した形態のもの等、通常の帯状のものが使用される。センサ部材1には、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられている。該切欠部は、第1図に示す切欠部10aのように両側部から中央側へ延びる切り込み状のもの、切欠部10bのように中央部で幅方向に延びた孔状のもの、切欠部10cのように上面で幅方向に延びる溝状のもの等、種々の形状のものとすることができる。切欠部は、隣合う動作部分のセンサ部材上の当接位置Lの中間領域に設けられるのが望ましい。この例では2鍵に1箇所の間隔で切欠部が設けられているが、その間隔は動作部分の形状や寸法、センサ部材の構造、幅、高さ、材質等に応じて適切に決められる。但し、押鍵時の動作部分による押鍵圧を受けるに必要な部分を残して設ける必要がある。特に、センサ部材の感圧部及び導電部の機能への影響を無くし又は問題を生じない程度に小さくするように、位置、形状、寸法等を選択する必要がある。また、後述する歪みの伝達防止に有効な形状、寸法で設けられる。切欠部の間隔、位置、形状、寸法等に関するこれらの条件は、以下の実施形態においても同様である。
【0017】
図2は、図1に示した圧力センサの使用時の状況を示している。鍵盤フレームへの取付の際の位置決め不良等により緩衝部材2の一部11が僅かにゆがんで取り付けられた場合、部分11の歪みは切欠部10aにより伝達を遮断され、部分12及び13には伝わらない。したがって、歪みの影響は部分11の位置にある圧力センサにのみ生じ、部分12及び13の位置にある圧力センサには生じない。また、部分11自体も歪みのほとんどが切欠部10aで伝達を遮断されるので、歪みに伴う部分21の内部応力は小さく、取付位置不良の影響はかなり小さくなる。このような歪みの伝達防止効果は、他の形状の切欠部10b、10cによっても同様に得られる。図中、Pは押鍵圧が作用する部分を示している。また、pは押鍵圧Pが作用する部分の横断面,cは切欠部10cがある部分の縦断面を示している。
【0018】
なお、圧力センサには、帯状のセンサ部材の上に緩衝部材を重ねたものもある。この場合は、図1に示したような切欠部を、センサ部材及び緩衝部材の一方又は双方に設けることができる。緩衝部材は、単一の緩衝材で構成されたもの、或いは異なる材質の緩衝材を層状に重ねて構成されたものとされ得る。該緩衝部材としては、フェルト、ABS樹脂、発泡樹脂等の弾性部材を使用することができる。
【0019】
図3は図1と異なる本発明に係る圧力センサの例を示している。図1の例及び以下の説明における例において同種の部分には同一の番号を付し、その説明を省略する。この例では、圧力センサはセンサ部材1とその上に重ねられた緩衝部材2とを備えている。切欠部は、隣合う各動作部分の緩衝部材2上の当接位置Lの中間領域に設けられている。図中の円は、動作部分から押鍵圧を受ける範囲、すなわちセンシング領域Pを示し、Nは、動作部分から押鍵圧を受けない範囲である中間領域を示している。
【0020】
動作部分の寸法や形状、及び緩衝部材2の寸法、材質等によっては、鍵又はその連動部分の動作部分が押鍵圧を及ぼす際、緩衝部材2における動作部分の幅又はそれより僅かに広い幅に対応する部分のみが押鍵圧を受け、他の部分は押鍵圧を受けない。この場合は、押鍵圧を受けない領域を中間区間Nとし、歪みの伝達防止効果を得るのに必要な箇所及び寸法を該区間N中で選択し、切欠部20をそこに設けるのが望ましい。これにより、切欠部20で区画された部分の一部に歪みがあっても、その歪みは切欠部20で実質上遮断される。歪みを生じた部分自体も歪みが切欠部で吸収されるので、歪みによる内部応力も小さくなる。
【0021】
一方、動作部分の寸法や形状、及び緩衝部材2の寸法、材質等によっては、緩衝部材において押鍵圧を受ける範囲が広がる場合がある。その広がりが大きい場合は、押鍵圧を受けない接触面の幅が小さくなるか、或いは接触面の全てがいずれかの鍵の動作部分の押鍵圧を受けることとなる。この場合においても、隣合う動作部分の緩衝部材上の当接位置の中間領域である中間区間Nは、動作部分の打撃位置から離れる結果、押鍵圧を受けないか小さい押鍵圧しか受けない。したがって、歪みの伝達防止効果を得るのに必要な箇所及び寸法を該区間N中で選択し、切欠部20をそこに設けることにより、前述と同様に、一部に歪みが生じても、その歪みは切欠部20で実質上遮断され、歪みを生じた部分自体も歪みが切欠部で吸収されるので、歪みによる内部応力も小さくなる。
【0022】
図3のような切欠部、すなわち、中間区間Nに切欠部を設けるという構成はセンサ部材に採用することもでき、その場合には前述同様の効果が得られる。
【0023】
図4は、図3に示した緩衝部材及び従来の緩衝部材に各々押鍵圧が作用した場合の歪みの伝達状態を示している。図4(a)は、本発明の緩衝部材の例の縦断面であり、押鍵圧Lは、切欠部20で区切られた領域24にのみ歪みを生じさせている。したがって、隣り合う他の領域には歪みが生じていない。一方、図4(b) は、従来の緩衝部材の縦断面を示しており、同様の位置に押鍵圧L(図では省略している)を受けた場合、歪みは緩衝部材の深部へ行くほど周囲へ広がり最下位置では隣り合う他の動作部分の打撃領域P’にまで及んでいる。
【0024】
図1及び図3に示したいずれの例においても、緩衝部材の一部に生じた歪みは切欠部により遮断されるので、他の部分への伝達が防止され、歪みを生じた部分での応力も緩和される。また、図3のように、切欠部が、各隣り合う動作部分の中間領域に設けられている場合は、1つの動作部分の押鍵圧が他の動作部分の受圧領域にまで及ぶのが防止される。したがって、タッチコントロールが鍵毎に独立して行なわれるイーチキータッチコントロール機能付きの鍵盤装置において、タッチコントロールしようとする鍵以外の鍵に押鍵力が影響する、いわゆるクロストークを防止するのに特に有効である。
【0025】
図5は、本発明に係る圧力センサの一実施形態を示している。この圧力センサの基本的な構造は、図12と共に従来技術の説明で挙げた圧力センサと同じである。すなわち、センサ部材1は、鍵配列方向に帯状に延び、受ける圧力に応じて出力値を変化させる感圧部11と、該感圧部の端部に接続されたリード線14を保持したリード部12と、これら感圧部及びリード部を覆う保持フィルム(保持部材)16とを備えている。
【0026】
感圧部11は、保持フィルム16上に感圧導電層13を細長く2列に設け、2つの列が重なるように保持フィルム16を折り曲げて接着することにより形成される。保持フィルム16には、折り曲げを容易にするためのスリット18が形成されている。保護フィルム16におけるリード部に該当する部分は、該折り曲げ部分の一方の側において感圧部の半分の幅で延びている。
【0027】
リード部12は、一対のリード線14を2列の前記感圧導電層13に接続し、保持フィルム16の端部まで延ばし、端子15に接続して形成されている。この実施形態においては、保持フィルム16は、リード部12を覆う部分における感圧部11に近い部分に切欠部17が設けられている。この切欠部17は、展開状態の保護フィルム16の両側部から中央部へ対称に延びている。この切欠部との干渉を避けるため、リード線14は、感圧導電層13の端部から一旦中央部へ延びた後、切欠部17を迂回するように側部側へ延び、さらにリード部へと延びている。スリット18は、このリード線14及び感圧導電層13を両側に位置させるようT字形をなしている。
【0028】
この圧力センサは、押鍵時に接点部品が接触する発音制御用基板に設けられる場合等には、このまま鍵盤フレームに取り付けられる。また、緩衝部材の表面又は裏面に設けられる場合等には、緩衝部材取付部を開口させたケースに納められることが多い。
【0029】
図6は、ケースに収められた圧力センサの例の使用状態を示している。センサ部材1は、上部に緩衝部材2が接着され、一端部においてコードCOが端子に接続されている。コードCOは、比較的曲げ剛性が高いため、圧力センサに取り付けた状態での移動やコードの引き回しにより、リード部に外力を与え、その形状を歪ませることがある。図6(c)は、従来の圧力センサのリード部s2が、コードからの外力により歪んだ状態を示している。この歪みは、感圧部にまで達することがあり、それによって、感圧特性が影響される畏れがある。これに対し、図5に示した切欠部17を有した圧力センサは、図6(b)に示すように、歪みの伝搬が切欠部17で防止される。したがって、コードからの外力が作用してもリード部の歪みが感圧部まで伝搬せず、感圧特性が適正に維持される。
【0030】
圧力センサがケースに収められずに鍵盤フレームに直接固定される場合も、図5に示したように切欠部を、保持フィルムにおけるリード部を覆う部分に設けた圧力センサであれば、コードからの外力の伝搬を該切欠部で遮断することができる。したがって、コードからの外力により鍵盤フレームからの固定が損なわれるとしても、リード部において生じるに留まり、感圧部に広がるのが防止される。また、コードからの外力が感圧部に伝搬されないので、感圧部の感度が適正に維持される。
【0031】
図7は、本発明に係る圧力センサのさらに他の実施形態を示している。この圧力センサは、図5に示したものと同様に、保持フィルム16上に感圧導電層13を細長く2列に設け、保持フィルム16を折り曲げて接着することにより形成されたセンサ部材を用い、これをケース10に納めたものである。この保持フィルム16は、感圧部11を鍵配列方向に越えて延びた延在部19を有している。センサ部材1は、該延在部19が前記ケースに固着され、前記感圧部は前記ケースに固着されていない。感圧部11の出力用の接続は、感圧導電膜の下面から行なわれるようになっている。或いは、感圧部11における延在部19とは反対側に導線を接続してもよい。この圧力センサの特徴は、センサ部材における延在部19のみをケース10に固着した点である。図7における×印の箇所は、センサ部材の保護フィルム16とケース10とが連続的に又は断続的に固着されていることを示す。センサ部材における感圧部11は、この例ではケース10に固着されていないが、感圧部11は、ケース10中での位置保持に必要な一部の個所においてのみ固着してもよい。その固着は、感圧部の長手方向における一端部、両端部、中央部又はこれらを組み合わせた箇所等とされる。固着は、接着、ケースによる保護フィルムの挟着等により行なわれる。
【0032】
図7の圧力センサは、このように構成されているので、鍵盤アッセンブリと共に楽器本体に実装した際に鍵盤アッセンブリのフレームに残留する撓み、曲がり、ねじれ等により、ケース10に外力が作用しても、その外力のほとんどは、ケース10から延在部19に伝わるのみである。感圧部11は、ケースに固着されないか必要最低限の固着のみをされているので、ケースからの外力の伝搬はないか、あっても極く僅かである。さらに、この実施形態においては、保持フィルム16における感圧部11に近い部分において、保護フィルム16に切欠部17が設けられている。その結果、延在部19における歪み及び外力の伝搬は、切欠部17で遮断され、この点からも防止されている。また、センサ部材はケースと異なる材質で構成されている。したがって両者を全長に亘って接合していると、季節の変化等による温度変化で熱膨張率の相違に起因して、センサ部材がケース内で曲がり、歪み等を生じ、出力特性に影響を及ぼす。しかし、図7の圧力センサでは、ケース10に延在部19が固定され、感圧部11は、ケースに固着されないか必要最低限の固着のみをされているので、そのような曲がりや歪みを生じるのが防止される。
【0033】
図8は、センサ部材1に外力が作用した場合の状況を示している。図8(a)は、図7に示した圧力センサのケース10に外力Gが作用した場合の状態である。図示のように曲げモーメントGがケース10に作用すると、ケース10は湾曲変形するが、センサ部材1は、延在部19のみがケースに固着されているので、ケース10に沿う湾曲変形は該延在部のみに生じる。感圧部11は、ケース10に固着されていないので、図の左右に延びる矢印で示すようにケースに対して相対的に動くことができ、これによりケース10の変形から自由になり、ケース10に沿った変形をしない。また、延在部19の変形は切欠部17で、感圧部への伝搬が遮断されている。したがって、感圧部11は前記外力によって影響を受けることがなく、感圧導電層13による適正の感度が維持される。
【0034】
一方、図8(b)は、従来の圧力センサSのケース10’に前記同様の曲げモーメントが作用した状態を示している。この場合、センサ部材は、保護フィルム16’の側部全体がケース10’に固着されているので、ケース10’の湾曲変形に伴って保持フィルム16’が全長に亘って湾曲変形することになる。したがって、感圧部11’の感圧導電層13’には、押鍵圧以外の応力が発生し、押鍵圧に対する適正な感度が発揮されなくなる。
【0035】
このように、図7に示したセンサ部材1は、ケースに外力が作用してもその影響を受け難く、適正な感度を維持することができるのである。
【0036】
なお、図5及び図7に示したケース付き圧力センサにおけるセンサ部材として、図1及び図3に示したものを用いることができるのは勿論である。
【0037】
図13は、本発明に係る圧力センサを構成するのに使用し得るケースの例を示している。このケース30は、帯状のセンサ部材の上面及び底面を覆うように各々センサ部材長手方向に延びる底壁31、該底壁の長手方向両側縁から起立した1対の側壁32、及び該1対の側壁から各々内側に向かって突出し、間に開口部を形成する上壁33を備えている。センサ部材は、ケース30の端面の開口から挿入され必要に応じて接着剤等によりケース内に固定される。ケース30には、側壁32及び上壁33の先端部から側壁32に及ぶ切欠部34が形成されている。切欠部34は、鍵配列方向、すなわちケース長手方向に間隔をおいて設けられている。
【0038】
切欠部34の形状、寸法、間隔は、ケースの幅、高さ、材質等、及び収容するセンサ部材の材質や特性等に応じて適切に決められる。例えば、図示のものは、ABS樹脂製のケースにポリエステル製のセンサ部材を収容する場合であり、幅20mm、高さ3mm、厚さ0.8mmのケースに、幅2mmのスリット状切欠部34を165mm間隔で設けている。
【0039】
このように、ケースの上壁33から側壁32に及ぶ切欠部を設けることにより、ケースは上下方向への柔軟性を増す。したがって、製造時の内部応力や保管時の負荷等に起因するケース自身の歪みが発生し難く、発生しても容易に取り付け面になじんで平面性を回復し、収容されるセンサ部材に歪みや負荷を与え難い。
【0040】
また、ケースの平面性がよくても、取り付け面が曲面状に歪んでいると、切欠部がなく連続的に長く延びているケースは、取り付け面に応じて曲面へと変形する際に、1枚の底壁と自由端を有する1対の上壁との間で変形の曲率が異なり、相互の間隙が狭くなる傾向を示す。この底壁及び上壁間の間隔の減少に伴って、収容されたセンサ部材に上下方向(図中矢印V)の押圧力が作用し、センサ出力に影響を与えることがある。本発明に係る圧力センサでは、前述の通り、ケースに切欠部が適切な間隔で設けてあるので、このような取り付け面に起因する変形があっても、切欠部により変形が容易となっており、したがってセンサ部材に与える押圧力が軽減される。
【0041】
図14は、図13と同様のケースに対し、上壁33から側壁32及び底壁側部に至る切欠部35が形成されたケースを示している。このケースは、底壁31にまで至る切欠部35により、上下方向のみならず水平方向(図中矢印H)へも柔軟性を増している。したがって、図13の例に比して、より取り付け面になじみやすく、歪みに起因するセンサ部材への影響が低減される。
【0042】
ケースは、センサ部材の上面及び底面の各々の少なくとも一部を覆う種々の形態とすることができ、切欠部はケースの底壁、側壁及び上壁の各々の一部又はこれらに跨って設けることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、センサ部材、緩衝部材又はケースでの切欠部の形成、或いはセンサ部材とケースの特定箇所での固着という形態を採用したので、センサ部材、緩衝部材又はケースの一部に歪み発生要因があっても、歪み又はその影響が他の部分に不要に広がるのを防止し得る圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る圧力センサの斜視図である。
【図2】図1に示した圧力センサの使用状態の説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る圧力センサの斜視図である。
【図4】図3に示した圧力センサの使用状態の説明図である。
【図5】本発明の1実施形態に係る圧力センサの製造途上の平面図である。
【図6】図5に示した圧力センサの使用状態の説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る圧力センサの平面図である。
【図8】図7に示した圧力センサの使用状態の説明図である。
【図9】圧力センサの取付箇所の1例を示す鍵盤装置の一部の斜視図である。
【図10】圧力センサの取付箇所の1例を示す鍵盤装置の一部の縦断面図である。
【図11】従来の圧力センサの一例を示す斜視図である。
【図12】従来の圧力センサの製造途上の平面図である。
【図13】本発明に係る圧力センサを構成するのに使用し得るケースの1例を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る圧力センサを構成するのに使用し得るケースの他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…センサ部材、2…緩衝部材、10…ケース、10,10a,10b,10c…切欠部、11…感圧部、12…リード部、14…リード線、16…保持フィルム(保持部材)、17…切欠部、19…延在部、20…切欠部、34,35…切欠部、L…押鍵圧、N…中間領域、K…鍵、S…圧力センサ、A…緩衝部材

Claims (7)

  1. 鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受けるように取り付け面に取り付けられ鍵のフルストローク時又は後における押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材を備え、該センサ部材は、鍵配列方向に帯状に延び、該方向に間隔をおいて切欠部が設けられており、該切欠部は、タッチコントロール機能を付与すべき範囲における隣り合う前記動作部分の当接位置の中間領域に設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  2. 鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受ける緩衝部材と、該緩衝部材を経た押圧力を受けるように取り付け面に取り付けられ鍵のフルストローク時又は後における押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材とを備え、前記緩衝部材及びセンサ部材は鍵配列方向に帯状に延び、該緩衝部材及びセンサ部材の少なくとも一方には、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられており、該切欠部は、タッチコントロール機能を付与すべき範囲における隣り合う前記動作部分の当接位置の中間領域に設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  3. 前記切欠部が、前記センサ部材の両側部から中央側へ延びる切り込み状とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  4. 前記切欠部が、前記センサ部材の幅方向に延びる孔状とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  5. 鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受けるセンサ部材を備え、該センサ部材は、圧力に応じて出力値を変化させる感圧部と、該感圧部の端部に接続されたリード線と、前記感圧部及びリード線を保持するシート状の保持部材とを備えており、該保持部材は、前記リード線を保持する部分に該部分から前記感圧部へ外力が伝搬するのを遮断するための切欠部が形成されていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  6. 鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受けるセンサ部材と、該センサ部材を保護するように覆うケースとを備え前記センサ部材は、圧力に応じて出力値を変化させる感圧部材が設けられた感圧部と、該感圧部を覆う保持部材とを備えており、該保持部材は、前記感圧部を鍵配列方向に越えて延びた延在部を有し、前記センサ部材は、該延在部が前記ケースに固着され、前記感圧部は前記ケースに固着されないか又はケース中での位置保持に必要な一部の個所においてのみ固着されており、前記延在部は、該延在部の固着部分と感圧部との間に切欠部が形成されていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
  7. 鍵配列方向に延び押鍵時に鍵の一部又は鍵と連動する部材の一部である動作部分から押圧力を受け押圧力に応じて出力値を変化させるセンサ部材と、該センサ部材を保護するように該センサ部材の上面及び底面の各々の少なくとも一部を覆うケースとを備え、前記ケースは、鍵配列方向に間隔をおいて切欠部が設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器のタッチコントロール用圧力センサ。
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