JP3791198B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を照射することにより試料をイオン化し、分析を行なう質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
そのような質量分析装置の一つに、飛行時間型質量分析装置(TOFMS=Time of Flight Mass Spectrometer)がある。TOFMSは、加速したイオンを電場及び磁場を有さない飛行空間内に導入し、検出器に到達する迄の飛行時間に応じて各種イオンを質量数(m/z)毎に分離するものである。図3は、最も単純な構成を有する従来のTOFMSの要部の概略構成図である。質量分離部22を挟んで、左にイオン源21、右に検出部23が配置されている。イオン源21の試料台211と、質量分離部22の引き出し電極221及びエンドプレート223と、検出部23の検出器231はイオン光軸Cに沿って一直線状に配置されている。試料212はマトリクス(加熱補助剤)と混合され、試料台211に設けられた試料皿213に載置される。1つ又は複数の試料212を各試料皿213に載置した試料台211は装置に装入され、分析目的の試料212を載置した試料皿213が所定の位置に置かれる。
【0003】
測定の際は、レーザ光源241において極短時間のパルス状のレーザ光が生成され、レーザ光学系242により上記所定位置に照射される。試料212はマトリクスを介して瞬時に加熱され、イオン化される。試料212から発生した各種イオンは、試料台211と引き出し電極221との間の電位差Vsにより引き出し電極221の方向に引き出され、加速された後に電場及び磁場を有さない飛行空間222に導入される。このとき、質量数の小さなイオンほど高い速度を与えられるため、より早く飛行空間222を通過して検出器231に到達する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
TOFMSにより測定された各イオンの飛行時間からそのイオンの質量数を決定するためには、既知の質量数を有するイオンを同じ条件で飛行させ、その飛行時間を測定して比較する必要がある。また、試料の各成分を精密質量分析するためには、既知の含有量の標準試料を同一条件でイオン化し、飛行させなければならない(内部標準法)。しかし、試料に照射されるレーザ光、特にパルスレーザは一般に照射毎にその強度がばらつくため、未知試料の分析を高精度に行なうためには、未知試料と参照標準試料とを混合して試料台の同じ試料皿に置き、1回のレーザ光照射で同時に加熱・イオン化しなければならない。
【0005】
ところが、それぞれの試料をイオン化するための最適レーザエネルギは一般に異なる。また、適切なマトリクスも各試料毎に異なり、それらを混合すると変質したり分解する場合がある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、レーザ光を照射することにより試料をイオン化し、分析を行なう質量分析装置において、内部標準法による分析を高精度に行なうことのできる装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、所定位置に置かれた試料台上の試料皿内の試料にレーザ光を照射してイオンを生成し、質量分離部に送給する質量分析装置において、
a)レーザ光源と上記所定位置との間に配置され、レーザ光源から発したレーザ光を試料台上の2個の試料皿に同時に照射させる光スプリッタと、
b)光スプリッタと2個の試料皿の間の2つの光路の少なくとも一方に設けられた、各光路のレーザビームのエネルギを調整するためのフィルタと、
c)上記2個の試料皿で生成されたイオンを共に質量分離部に送給するためのイオン光学系と、
を備えることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態及び効果】
レーザ光源から発せられたレーザ光は光スプリッタで2つに分けられ、試料台上の2個の試料皿に同時に照射される。両試料皿に載置された試料はレーザ光によりイオン化され、イオン光学系により質量分離部に送られる。質量分離部では両試料が同一の条件で質量分離される。このように、本発明に係る質量分析装置では、パルスレーザが2つの試料皿に別個に照射されるため、別種の試料を混合することなく独立して各試料皿に載置しておくことができる。このため、各試料に対して最適のマトリクスをそれぞれ用いることができ、各試料を高効率でイオン化することができる。
【0009】
また、各試料には同時にレーザ光が照射されるため、例えばTOFMS等のようにイオン生成の同時性が必要な場合に適した分析装置となる。ただし、イオン生成の同時性が要求されないような質量分析装置であっても、上記のような試料の独立載置による利点を生かした分析装置に本発明は適用することができる。
【0010】
上記構成の質量分析装置において、いずれか一方又は双方のパルスレーザの光路に適宜のフィルタを置き、各試料に照射するパルスレーザのエネルギをそれぞれ最適な値とすることにより、より高精度の分析が可能となる。
【0011】
本発明に係る質量分析装置においては、例えば一方の試料皿に分析しようとする未知試料を、他方の試料皿に参照標準試料を載置するという使い方をすることができる。これにより、それぞれの試料に適したマトリクスを使用し、また、各試料に適したエネルギのレーザ光でイオン化を行なうことができるため、各試料を最も効率よくイオン化することができる。このように、本発明に係る質量分析装置を用いることにより、内部標準法による分析を高精度で行なうことが可能となる。
【0012】
【実施例】
本発明をTOFMSに適用した実施例を図1及び図2により説明する。図1に示すとおり、TOFMSには分析管11、光学システム部12、高圧電源部13、制御・データ処理部14等が備えられている。分析管11内にはイオンが飛行するための空間111が設けられており、その一方の端部には外部から装入される試料台112を固定するための固定台が、他方の端部には飛行してくるイオンを検出する検出器113が設けられている。試料台112の前方には試料台112で生成されたイオンを引き出して加速させる引き出しグリッド電極114及びイオンを検出器113に向けて収束させるフォーカスレンズ115が設けられている。
【0013】
光学システム部12と分析管11の部分を図2により詳しく説明する。光学システム部12にはレーザ発振器121とビームスプリッタ122が備えられ、レーザ発振器121から発したレーザビームはまずビームスプリッタ122で2本のレーザビームLa、Lbに分割される。ビームスプリッタ122は半透過ミラーから成り、そこで反射されたレーザビームは全反射ミラー123に向かう。レーザ発振器121は、ビームスプリッタ122を通過したレーザビームLaが固定台上に固定された試料台112上の第1の所定位置の試料皿を照射するように設定されており、また、全反射ミラー123は、他方のレーザビームLbが試料台112上の第2の所定位置の試料皿を照射するように設定されている。両レーザビームLa、Lbの光路には、フィルタ124a、124b及び集光レンズ125a、125bがそれぞれ設けられている。フィルタ124a、124bは、各レーザビームLa、Lbの透過率、すなわち、各試料に照射されるレーザビームのエネルギを調整するためのものである。
【0014】
本実施例のTOFMSで未知試料を分析する場合の手順は次の通りである。まず、試料台112の1つの試料皿に未知試料Saを、隣接する試料皿に参照標準試料Sbを載置する。このとき、各試料Sa、Sbにはそれぞれに最適なマトリクスを用いることができる。両試料Sa、Sbを載置した試料台112を分析管11に装入し、試料装入部の蓋を閉める。操作者が制御・データ処理部14の操作部(キーボード、マウス等)を操作することにより分析の手順(プログラム)を制御・データ処理部14に指示し、測定開始ボタンを押すと、制御・データ処理部14は指示されたプログラムに沿った一連の分析を開始する。まず、各部の開閉弁及び真空ポンプを操作し、飛行空間111が所定の真空度となるようにする。
【0015】
未知試料の分析の際は、未知試料Saの試料皿が上記第1の所定位置、標準試料Sbの試料皿が第2の所定位置(逆でもよい)に来るように試料台112を移動させる。そして、レーザ発振器121に信号を送り、極短時間のパルスレーザを発生させる。パルスレーザはビームスプリッタにより2つに分割され、各試料皿上の未知試料Sa及び標準試料Sbに照射されて各試料を加熱、イオン化させる。ここで、各光路のフィルタ124a、124bは選択式となっており、制御・データ処理部14は、各試料Sa、Sbのイオン化に最適なエネルギのレーザビームLa、Lbが照射されるように、適切な透過率のフィルタ124a、124bを各光路毎に選択しておく。
【0016】
生成された各試料のイオンは引き出し電極114により引き出され、加速される。各イオンはどちらの試料皿で生成されたに拘らず、その質量数(m/z)に応じて同一の条件で加速され、フォーカスレンズ115により検出器113に送られる。このため、未知試料Saのイオンと標準試料Sbのイオンとで構成されるマススペクトルにおいて、標準試料Sbを参照した未知試料Saの定性・精密質量分析が高精度に行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるTOFMSの全体構成図。
【図2】 実施例のTOFMSの光学システム部と分析管の詳細構成図。
【図3】 従来のTOFMSのレーザ及びイオン光路図。
【符号の説明】
11…分析管
111…飛行空間
112…試料台
113…検出器
114…引き出しグリッド電極
115…フォーカスレンズ
12…光学システム部
121…レーザ発振器
122…ビームスプリッタ
123…全反射ミラー
124a、124b…フィルタ
125a、125b…集光レンズ
13…高圧電源部
14…制御・データ処理部
La、Lb…レーザビーム
Sa、Sb…試料

Claims (1)

  1. 所定位置に置かれた試料台上の試料皿内の試料にレーザ光を照射してイオンを生成し、質量分離部に送給する質量分析装置において、
    a)レーザ光源と上記所定位置との間に配置され、レーザ光源から発したレーザ光を試料台上の2個の試料皿に同時に照射させる光スプリッタと、
    b)光スプリッタと2個の試料皿の間の2つの光路の少なくとも一方に設けられた、各光路のレーザビームのエネルギを調整するためのフィルタと、
    c)上記2個の試料皿で生成されたイオンを共に質量分離部に送給するためのイオン光学系と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
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