JP3790092B2 - 優れた加工性とめっき性を備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板、その製造方法およびその鋼板を用いて製造された自動車用部材 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は引張強度が440〜780N/mm2 程度の高強度の溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む。)であって、優れた加工性とめっき性を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の骨格部材として衝突時のエネルギーを吸収する役割を担うメンバーなどの構造部材用鋼板は、近年、安全性向上の観点から、また環境問題対策として燃費向上を目的とする車体の軽量化の観点から、急速に高強度鋼板が用いられつつある。一方、強度の上昇は加工性の劣化を招き、部品のプレス加工そのものを困難にするため、強度と加工性を両立させた鋼板が強く望まれている。
【0003】
このような要求に対して、特開平4−26744号公報、特開平5−331537号公報、特開平4−128320号公報、特開平4−128321号公報、特開平4−173945号公報、特開平9−25537号公報、特開平9−263883号公報などに記載されているように、残留オーステナイトの加工誘起変態を活用することにより優れた伸びを有する高強度鋼板やマルテンサイトなどの硬質相を活用した組織強化鋼板を母材鋼板とする溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が、耐食性に優れた自動車用鋼板として広く使用されるに及んでいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平4−26744号公報に記載された技術では、溶融亜鉛めっきラインで残留オーステナイトを生成させ、伸びの優れた高強度鋼板が得られているものの、Si量が高いため、めっき性が悪く、一部の実施例では表面研削やプレめっきという追加工程が必要とされている。
また、特開平5−331537号公報に記載された技術では、フェライト+マルテンサイトの複合組織を有する鋼板の製造方法が開示されているが、この技術においても鋼板の焼入れ性を高めるために積極的に添加されたSi量、Mn量に伴ってめっき性が低下しており、そのめっき性の低下をプレめっきという追加工程を実施することで回避している。このように、加工性とめっき性を両立させることは非常に困難であり、これまで表面研削やプレめっきという製造工程の追加で対応してきた。
また、特開平4−128320号公報およぴ特開平4−128321号公報に記載された技術は、溶融亜鉛めっきラインにて高い冷却速度を実現し、複合組織を得ることによって、伸びの高い高強度鋼板が得られるものの、マルテンサイト変態を生ぜしめるため、焼き入れ性向上の手段としてSi添加によるオーステナイト中へのC濃縮を採用している。因みに、実施例では0.17〜0.20%のSiを添加している。しかし、Siの過多の添加は同公報にも記載されているとおり合金化処理を施した場合のめっき不良を招くが、それ以前に不めっきと呼ばれる溶融亜鉛めっきの濡れ性に起因する表面不具合が生じる。このため、実施例に記載されたSi量よりも格段に厳しく管理する必要がある。
また、特開平4−173945号公報に記載された技術は、ベイナイトを主体としたベイナイト・フェライト・マルテンサイトの複合組織を有する鋼板の製造方法であるが、この技術においてもCのオーステナイト相への排出によるフェライトの延性を向上させるため、Si添加が必要であり、その悪影響については、上記したとおりである。更にその組織が比較的軟質な低温変態相であるベイナイト主体であり、曲げ加工性のような局所的な変形能には優れるが、伸び特性に関しては必ずしも有利ではない。
また、特開平9−25537号会報および特開平9−263883号公報に記載された技術は、フェライトと、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトの低温変態生成物とからなる高強度熱延鋼板、冷延鋼板に関するものであるが、耐孔明き腐食性改善のために、一定量以上のTiを添加しておく必要がある。しかし、Tiは鋼中において粗大な窒化物を形成し局所変形能を劣化させるだけでなく、炭化物を形成し、低温変態相形成に必要なC量そのものを減少させてしまう。さらにはめっきの合金化挙動にも大きく影響し、安定製造を困難にする可能性が高い。
【0005】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、表面研削工程やプレめっき工程を追加をすることなく、高強度を有し、優れた加工性とめっき性とを兼備した溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、mass%で、
C :0.02〜0.20%、
Mn:1.50〜2.40%、
Cr:0.03〜0.595%、
Mo:0.03〜1.50%、
3Mn+6Cr+Mo:8.1%以下、
Mn+6Cr+10Mo:3.5%以上、 Al:0.010〜0.150%
かつSi:0.04%以下、P:0.060%以下、S:0.030%以下、Ti:0.01%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライトが50〜95面積%、マルテンサイトが5〜50面積%で、フェライトおよびマルテンサイト以外の組織が0〜5面積%とする複合組織からなる母材鋼板に溶融亜鉛めっき層が形成されたものである。なお、本発明では、前記溶融亜鉛めっき層としては、めっき後に合金化処理を施したものをも含む。
【0007】
以下、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の母材鋼板の化学成分(単位mass%)の限定理由を説明する。
C:0.02〜0.20%
Cは鋼の強度に大きく作用し、低温変態生成物の量や形態を変えることで伸びや伸びフランジ性にも影響する。0.02%未満では440N/mm2 以上の高強度を得ることが困難であり、一方0.20%を越えて添加すると溶接性の低下を招く。このため、C量の下限を0.02%、好ましくは0.04%とし、その上限を0.20%、好ましくは0.15%とする。
【0008】
Mn:1.50〜2.40%
Mnはオーステナイトを安定化し、オーステナイト中の固溶C量を変化させ冷却過程で生成する低温変態生成物の特性に大きく影響する元素であり、本発明ではこの低温変態生成物の生成のために添加される。加工性の非常に優れた高強度鋼板としての特性を得るためには少なくとも1.50%の添加が必要である。しかし2.40%を越えると溶製が困難になるばかりでなく、溶接性に悪影響を及ぼすため、これを上限とする。
【0009】
Mo:0.03〜1.50%、Cr:0.03〜0.595%
本発明では、焼入れ性向上元素としてCrとMoを複合添加する。Mnも基本的に焼入れ性向上元素であり、これらの元素はオーステナイト中にCを濃化させ、安定度を高め、マルテンサイトを生成させやすくするだけでなく、酸化物を鋼板表面に形成することによって、めっき性にも影響する。作用効果は詳細には不明であるが、Cr,Mo,Mnの複合添加とすることによって、それぞれの元素が互いに補完しあい、効率的に、めっき性、加工性の両立が達成される。Cr,Moの添加量は、それぞれ0.03%未満では、焼入性向上を効果が期待できない。一方、Moは1.50%を超えて添加されても効果が飽和するばかりか、コスト面も不利になる。また、Crは後述のMn、Cr、Moの複合添加量の制限からその上限が0.595%となる。このため、Cr量、Mo量の下限を0.03%、Moの上限を1.50%、Crの上限を0.595%とする。
【0010】
3Mn+6Cr+Mo:8.1%以下、Mn+6Cr+10Mo:3.5%以上(左記式中の元素記号はその元素の添加量を意味する。)
上記Cr,Mo,Mnは、後述の実施例から明らかなように、それらの添加量を適正なバランスにすることが必要である。まずマルテンサイト変態を効率的に生ぜしめ、加工性に適正な複合組織とするためには、Mn+6Cr+10Moを3.5%以上、好ましくは5.0%以上とすることが必要である。3.5%未満では、ベイナイトなどの軟質な低温変態生成物が過剰に生じやすくなり、優れた強度−伸びバランスが得られないようになる。一方、めっき性の観点からは、3Mn+6Cr+Moを8.1%以下、好ましくは7.0%以下とすることが必要である。8.1%を超えると、生成する酸化物組成の影響と思われるが、溶融亜鉛めっき時にピンホール状にめっきのつかない部分(不めっき部)が鋼板表面に多発し、著しく外観品質を損なうようになる。
【0011】
Al:0.010〜0.150%
Alは脱酸のために少なくとも0.010%以上添加する。しかし、添加量が過多であると、コスト高になるだけでなく、表面性状を悪化させるので、上限を0.150%とする。
【0012】
本発明の母材鋼板は、上記基本成分を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる場合のほか、基本成分の作用・効果を妨げず、更に鋼板の特性を向上させる元素として下記のB、Caの1種以上を前記基本成分に添加して、下記(1) 、(2) の化学成分(残部Feおよび不可避的不純物)とすることができる。
(1) 基本成分+B
(2) 基本成分又は前記(1) の成分+Ca
【0013】
B:0.0050%以下
Bは溶接性を向上させ、また焼入性を高める作用がある。かかる作用を効果的に発現させるには、好ましくは0.0005%以上添加するのがよい。しかし、過多に添加すると、これらの作用が飽和するだけでなく、延性が劣化し、加工性が低下するようになるので、その上限を0.0050%、好ましくは0.0030%とする。
【0014】
Ca:0.0050%以下
Caは介在物の形態を制御して、延性を高め、加工性を向上させる作用がある。かかる作用を効果的に発現させるには、好ましくは0.0010%以上添加するのがよい。しかし、過多に添加すると、鋼中の介在物量が増加し、延性が劣化し、加工性が低下するようになるので、その上限を0.0050%、好ましくは0.0040%とする。
【0015】
本発明においては、所期の目的を達成するために、不可避的不純物の中でも特に、Si、P、S、Tiについては下記所定量以下制限することが必要である。以下、これらの不純物成分の限定理由について説明する。
Siは鋼板表面に酸化皮膜を形成し、めっきの濡れ性を極めて劣化させる元素であるため、本発明では基本的には添加しないが、不可避的に不純物として混入する場合、その上限を0.04%、好ましくは0.02%に止める必要がある。
また、Pは0.060%を超えるとめっきむらが生じやすくなったり、また合金化処理が困難になるので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.060%、好ましくは0.030%に止める必要がある。
また、Sは鋼中で析出物として固定されるが、その量が増大すると、伸びや伸びフランジ性の劣化を招くので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.030%、好ましくは0.015%に止める必要がある。
さらに、Tiは炭窒化物を形成し、局所変形能を劣化させるのに加え、所定の変態組織確保の面で悪影響を引き起こすほか、溶融亜鉛めっきの合金化を著しく促進する元素であり、多量の添加は合金化過多を招き、鋼板加工時にパウダリングあるいはめっき層と地鉄の界面に硬質で脆いΓ相の形成に起因するフレーキングと呼ばれるめっき層の剥離不具合につながる。このためその添加量を厳格に管理する必要があり、その上限を0.01%とする。
【0016】
本発明の母材鋼板の組織は、フェライト+マルテンサイトが主体の複合組織であり、上記化学成分の鋼板をめっき処理前の均熱保持工程(焼鈍工程)でフェライト+オーステナイトとし、めっき処理後あるいは更に合金化処理後にこれを5℃/sec 以上の平均冷却速度でMs点以下に冷却することで得られる。前記主体とは、面積率でフェライト50〜95%、マルテンサイト5〜50%であり、かつフェライトおよびマルテンサイト以外の組織が面積率で0〜5%であることを意味する。パーライトやべイナイトなどの異なる組織が混在すると、加工性が劣化するために、フェライトおよびマルテンサイト以外の組織が面積率で5%以下(0%を含む。)、好ましくは3%以下(0%を含む。)の不可避的なレベルとされる。上記化学成分の下では、面積率でフェライト50〜95%、マルテンサイト5〜50%となり、高強度下で、優れた加工性とめっき性を兼備させることができる。
前記フェライト量を50%以上、好ましくは70%超、より好ましくは75%以上に組織調整することにより、極めて優れた強度−伸びバランス(後述の実施例におけるTS*El)が達成でき、さらにフェライト量を75%以上、好ましくは80%以上とすることで、局所的な変形能が向上し、強度−穴拡げ性バランスも向上する。
【0017】
本発明の好適な製造方法は、前記化学成分を有する鋼のスラブを熱間圧延した後、700℃以下で巻き取り、必要に応じて酸洗を行った後、冷間圧延し、連続式溶融亜鉛めっきラインにてAc1点以上の温度にて均熱後、1℃/sec 以上の平均冷却速度にてめっき浴温度まで冷却して溶融亜鉛めっきを施し、あるいはさらに合金化処理を施し、5℃/sec 以上の平均冷却速度にて冷却するものである。
【0018】
本発明において、熱間圧延は常法に従って行えばよく、望ましくは、鋼片の加熱温度は仕上温度の確保およびオーステナイト粒径の粗大化の防止の観点から1000℃〜1300℃とし、熱間圧延の仕上温度は加工性を阻害する集合組織が形成されないように800℃〜950℃とし、仕上圧延後の冷却速度はパーライトの生成を抑制するため30〜120℃/sec とすればよい。巻取温度を700℃以下に規定するのは、この温度より高温で巻取ると鋼板表面のスケールが厚くなり、酸洗性が劣化するためである。巻取温度の下限は特には規定しないが、あまり低過ぎると硬くなり、冷間圧延性を低下させるので、下限を250℃、好ましくは400℃とするのがよい。
【0019】
熱間圧延後は常法に従って酸洗、冷間圧延を行う。冷延率は30%以上で実施するのが望ましく、30%未満では所望の製品を得るためには、熱延板が薄く、長くなり、酸洗時の生産性などが低下するようになる。
【0020】
冷延後は、母材冷延鋼板を連続式溶融亜鉛めっきラインにて、めっき前にAc1点以上で加熱保持すれば良いが、所期の組織を確実に得ることによって加工性の安定化させるのためには、本発明範囲の成分鋼ではAc1点より50℃程度高温の780℃以上に加熱するのが良い。上限は特に規定しないが900℃以下であれば何ら問題はない。保持時間は、高温で処理するため10sec 以上であれば十分に均熱され、フェライト+オーステナイト組織が得られる。
【0021】
加熱保持して均熱した後は、めっき浴温度(通常440〜470℃)まで1℃/sec 以上の平均速度で冷却し、めっき処理を施す。1℃/sec 未満ではパーライトが生成し、最終組織として残留するようになるため、加工性が劣化する。このため、均熱後の冷却速度の下限を1℃/sec 、好ましくは5℃/sec とする。冷却速度の上限は特に規定しないが、板温の制御性や設備コスト高の抑制のためには50℃/sec とするのがよい。合金化処理を行う場合は、めっき後、通常のように500〜750℃程度の温度にて加熱する。合金化処理を行わない場合はめっき後、合金化処理を行った場合は合金化処理後、5℃/sec 以上で常温まで冷却することで、オーステナイトをマルテンサイトに変態させ、フェライト+マルテンサイトを主体とする組織を得る。5℃/sec 未満では、パーライトやベイナイトが生成するおそれがあるので、冷却速度の下限を5℃/sec 、好ましくは10℃/sec とする。
【0022】
【実施例】
〔実施例1〕
下記の化学成分をベース成分とし、これにMn、Crを添加して種々のMn量、Cr量を含有した鋼を溶製し、この溶鋼を鋳造したスラブを1150℃に加熱し、仕上温度870〜900℃で2.6mm厚まで熱間圧延し、40℃/sec の平均冷却速度で、それぞれ480℃で巻取った。酸洗後、冷延率46%で1.4mm厚まで冷間圧延し、800℃で20sec 保持する均熱処理を行った後、平均冷却速度として15℃/sec で冷却し、引き続き460℃の溶融亜鉛めっき浴でめっきを施し、25℃/sec 以上で常温まで冷却し、圧下率0.8%で調質圧延して溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
・ベース成分(mass%、残部実質的にFe)
C:0.06%、Si:0.01%、P:0.010%、
S:0.001%、Al:0.030%、Mo:0.10%
【0023】
得られた溶融亜鉛めっき鋼板を用いて、母材鋼板の板厚中央部における組織の種類と面積%をSEM観察(1000倍、面積%は20視野の平均値)により調査すると共に、JIS5号試験片を採取し、引張試験によって引張強さ(TS)、伸び(El)を測定し、強度−延性バランス(TS×El)を求めた。また、不めっきの発生を目視によって観察した。調査結果を図1に示す。
図1より、本発明範囲内(図中斜線部分)の成分を有する鋼板は、機械的特性(TS×El)に優れるだけでなく、不めっきの発生も全くないことがわかる。一方、本発明範囲外の成分を有する鋼板は、機械的特性の劣化および/または不めっきの発生が認められる。なお、本発明成分を満足する鋼板の組織は、全てフェライト+マルテンサイトの2相組織で、マルテンサイト量は13〜24面積%であった。
【0024】
〔実施例2〕
下記の化学成分をベース成分とし、これにMo、Crを添加して種々のMn量、Cr量を含有した鋼を溶製し、実施例1と同様の条件で冷延鋼板を製造し、810℃で60sec 保持する均熱処理を行った後、平均冷却速度として30℃/sec で冷却し、引き続き460℃の溶融亜鉛めっき浴でめっきを施し、15℃/sec 以上で常温まで冷却し、圧下率0.5%で調質圧延して溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
・ベース成分(mass%、残部実質的にFe)
C:0.04%、Si:0.01%、Mn:1.6%、
P:0.005%、S:0.003%、Al:0.020%
【0025】
得られた溶融亜鉛めっき鋼板を用いて、実施例1と同様にして、強度−延性バランス(TS×El)および不めっきの発生状況を調査した。調査結果を図2に示す。図2より、本発明範囲内(図中斜線部分)の成分を有する鋼板は、機械的特性(TS×El)に優れるだけでなく、不めっきも全く認められなかったが、本発明範囲外の成分を有する鋼板は、機械的特性の劣化および/または不めっきの発生が認められる。なお、実施例2においても、本発明成分を満足する鋼板の組織は、全てフェライト+マルテンサイトの2相組織で、マルテンサイト量は8〜16面積%であった。
【0026】
〔実施例3〕
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、実施例1と同様の条件で冷延鋼板を製造し、830℃で40sec 保持する均熱処理を行った後、平均冷却速度として25℃/sec で冷却し、引き続き460℃の溶融亜鉛めっき浴でめっきを施し、試料No. 1及び2については更に550℃で合金化処理し、その後30℃/sec 以上の冷却速度で室温まで冷却し、圧下率1.0%で調質圧延して溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む。)を製造した。得られた溶融亜鉛めっき鋼板を用いて、実施例1と同様にして、組織の種類とその量、機械的特性、不めっきの発生状況を調査した。さらに、穴拡げ性について、日本鉄鋼連盟自動車用鋼板規格(The Japan Iron and Steel Federation Standard, Method of hole expanding Test ):JFST1001−1996に基づいて穴拡げ試験を行い、穴拡げ率λを求めた。穴拡げ試験は、鋼板に打ち抜き加工した初期穴(穴径d1=φ10mm)にバリと反対側から頂角60度の円錐ポンチを押し込み、板厚を貫通する割れが発生した時点における穴径d2を測定するものであり、穴拡げ率λは下記式によって算出される。これらの調査結果を表2に示す。
λ(%)=(d2−d1)/d1×100
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表2から明らかなように、発明例(試料No. 1〜4)では引張強さが450MPa以上と高強度であり、降伏比も低く、また良好な強度−延性バランス(TS×El≧17000MPa・%)を示し、加工性に優れる。また、不めっきの発生も皆無である。さらに、フェライト面積率が高いもの(試料No. 1,2,4)では、強度−穴拡げ性バランス(TS*λ)が29000MPa・%以上であり、局部変形能(局部延性)にも優れる。
【0030】
これに対して、化学成分範囲が本発明条件とは異なる比較例(試料No. 5〜11)において、No. 5,7,9,11ではフェライトおよびマルテンサイト以外の組織(ベイナイトやパーライト)が5%を超えて多量に生成するようになり、強度−延性バランスが発明例に比し著しく劣っている。一方、Si量が本発明の制限範囲を超えているNo. 6および3Mn+6Cr+Mo量が本発明範囲外である比較例(試料No. 8,10)では不めっきが発生していることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板によれば、引張強さが440〜780N/mm2 程度の高強度を有し、降伏比が低く、良好な強度−延性バランスを示し、加工性に優れる。また、不めっきも生じず、優れためっき性を兼備したものである。また、本発明の製造方法によれば、上記の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を容易に製造することができ、生産性に優れる。また、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板を用いて製造された自動車用部材は、車体の軽量化に貢献するとともに、使用時は元より、加工時における溶融亜鉛めっき層の剥離等の不具合が生じ難いことから優れた防錆能、耐久性を備える。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるCr量、Mn量が強度−延性バランスおよびめっき性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】実施例2におけるCr量、Mo量が強度−延性バランスおよびめっき性に及ぼす影響を示すグラフである。
Claims (5)
- mass%
C :0.02〜0.20%、
Mn:1.50〜2.40%、
Cr:0.03〜0.595%、
Mo:0.03〜1.50%、
3Mn+6Cr+Mo:8.1%以下、
Mn+6Cr+10Mo:3.5%以上、
Al:0.010〜0.150%
かつ
Si:0.04%以下、
P :0.060%以下、
S :0.030%以下、
Ti:0.01%以下
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライトが50〜95面積%、マルテンサイトが5〜50面積%で、フェライトおよびマルテンサイト以外の組織が0〜5面積%とする複合組織からなる母材鋼板に溶融亜鉛めっき層が形成された、優れた加工性とめっき性を備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、Feの一部に代えて、B:0.0050%以下を含む請求項1に記載した高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、Feの一部に代えて、Ca:0.0050%以下を含む請求項1又は2に記載した高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載された化学成分を有する鋼のスラブを熱間圧延した後、700℃以下で巻き取り、必要に応じて酸洗を行った後、冷間圧延し、連続式溶融亜鉛めっきラインにてAc1点以上の温度にて均熱後、1℃/sec 以上の平均冷却速度にてめっき浴温度まで冷却して溶融亜鉛めっきを施し、あるいはさらに合金化処理を施し、5℃/sec 以上の平均冷却速度にて冷却する優れた加工性とめっき性を備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載された高強度溶融亜鉛めっき鋼板を用いて製造された自動車用部材。
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