JP3789863B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
この発明は、放電管内を通る反応ガスをこの放電管の外側からマイクロ波で励起することにより生成したプラズマガスを真空容器に導き、真空容器内に置いた被処理物にエッチングなどの処理を施すプラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、真空容器内でプラズマガスによりエッチング、アッシング(灰化)、薄膜形成などの処理を行うプラズマ処理装置が公知である。特にケミカルドライエッチング装置では、真空容器の外に設けたプラズマ生成部で反応ガスをプラズマ化し、このプラズマガスを真空容器に導くようにした放電分離型のものが広く用いられている。
【0003】
この放電分離型の装置は、反応ガスを放電管に通し、この放電管の外からマイクロ波により反応ガスを励起するものである。この場合、放電管は極めて高温になるから、放電管を外側から冷却することが必要である。
【0004】
放電管を冷却するために、従来より放電管の外周を間隙を介して冷却水ジャケットで囲み、この冷却水ジャケットと放電管の間隙にN2(窒素)などの冷却用ガスを流すようにしたものがある。ここに冷却水ジャケットには冷却液(水)が循環されている。このように冷却用ガス(N2)を流すものでは、放電管と冷却水ジャケットとの間に冷却ガスを流すための空隙があるため、開放型と呼ばれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この開放型のものでは、空隙を介してマイクロ波が周囲に漏れることになると共に、熱伝達が気体との間で行われるため、冷却効率が悪いという問題がある。
【0006】
そこでこの間隙を設けずに放電管の外周面に冷却水ジャケットを密着させることが考えられる(非開放型、密着型)。しかしこのように両者を密着させることは、放電管が高温になりその熱膨張などを考慮すると、構造上極めて困難になる。
【0007】
そこで従来は放電管の外周面と冷却水ジャケットの内周面との間に弾力性に優れるシリコンラバーを装填していた。しかし放電管の表面温度は300℃を超えるため弾力性の良いシリコンラバーのシートでは耐熱性が不足する。そこでこのシリコンラバーと放電管との間にアルミニウム箔(アルミ箔)等を挟むことも行われている。
【0008】
図5はこの従来の構造を示すための放電管の断面図である。この図5で符号1は放電管であり、石英、アルミナ、サファイヤなどで作られた円筒である。2はこの放電管2の外周に密着するアルミ箔、3は冷却水ジャケットである。冷却水ジャケット3は、円筒状の内壁3aと外壁3bとの間に冷却水通路3cを形成したものであり、その内径すなわち内壁3aの内径はアルミ箔2の外径よりも大きい。これら冷却水ジャケット3の内周面とアルミ箔2の外周面との間に形成される間隙には、シリコンラバー4が挟まれている。
【0009】
このような構造のものでは、耐熱性に優れるシリコンラバー4を挟んでいるが、このシリコンラバー4の熱伝導性は小さいため、放電管の冷却性が悪くなる。このため放電管の温度が上昇し、シリコンラバー4や放電管1などの寿命も短くなる。この結果装置の稼働率が下がり、生産性も低下するという問題が生じる。
【0010】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、放電管と冷却水ジャケットとの間にシリコンラバーなどの弾性材を挟む場合に、放電管の冷却性を向上させ、装置の耐久性と稼働率を向上させることができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
【発明の構成】
この発明によればこの目的は、放電管内を通る反応ガスを前記放電管の外側から加えるマイクロ波によって励起して真空容器に導くプラズマ処理装置において、前記放電管の外周面を所定間隙あけて囲む冷却水ジャケットと、前記間隙に装填された複数の短冊状の耐熱性弾性材と、隣接する耐熱性弾性材の間を通り一端が前記放電管の外周面と前記耐熱性弾性材との間に挟まれ他端が前記冷却水ジャケットの内周面と前記耐熱性弾性材との間に挟まれた耐熱性かつ良熱伝導性のシートと、を備えることを特徴とするプラズマ処理装置、により達成される。
【0012】
耐熱性弾性材は放電管の長手方向に長い短冊状であり、同じ耐熱性かつ良熱伝導性のシートの両端を放電管の周方向に隣接する異なる耐熱性弾性材の内周面および外周面に密着させる構造とすることができる。この場合には、シートは隣接する弾性材の間を半径方向に通りその両端を互いに逆周方向に折曲して略クランク状にすることになる。シートはコ字状に折曲して、1つの弾性材の内周面と外周面とに密着させるようにしてもよい。
【0013】
耐熱性弾性材はシリコンラバーとすることができる。シートはカーボングラファイトシートとすることができる。この装置はドライエッチング装置に適する。
【0014】
【実施態様】
図1は本発明に係る装置の一実施態様を示す概念図、図2は放電管の断面図、図3はその一部の拡大展開図、図4は放電管冷却装置の分解斜視図である。
【0015】
図1において符号10は真空容器である。この真空容器10は垂直においた円筒形であり、その上下両端が塞がれている。この真空容器10内にはヒータ付きの保持台12が昇降可能に設けられ、その上面には被処理物としてのウェハ14が保持されている。
【0016】
真空容器10の底には、圧力制御器(Auto Pressure Controller,APC)16を介してターボ分子ポンプ(TMP)などのドライポンプ18が接続されている。圧力制御器16は、真空容器10の内圧を検出する真空計(図示せず)の出力に基づいて、真空容器10の内圧を所定圧に制御する。
【0017】
20はプラズマ生成部であり、マイクロ波により反応ガスを励起し、プラズマ化して真空容器10に導く。プラズマ生成部20は、石英やアルミナやサファイヤなどで作られた放電管22と、この放電管22にその中央付近で交叉する導波管24と、この導波管24の一端からマイクロ波を供給するマイクロ波電源26と、放電管22の冷却装置30とを持つ。
【0018】
放電管22の一端には反応ガス供給部32から反応ガスが供給される。放電管22の他端はガス導入管34によって真空容器10に接続されている。ここにガス導入管34はプラズマガスによる腐蝕に耐える材料、例えば石英、ステンレス鋼、セラミックス、一部のフッ素ベース材料などのチューブで作られている。
【0019】
マイクロ波電源26が供給する所定周波数(例えば2.75GHZ)のマイクロ波は、導波管24を通り、放電管22を透過して放電管22内を流れる反応ガスを励起する。
【0020】
反応ガス供給部32は、反応ガスを供給する。例えば、CF4,NF3,Ar,O2のガスが流量制御弁(Mass Flow Controller,MFC)36を介し、放電管22の一端に取付けた端板38を通して放電管22内に供給可能である。ガスの供給量はコントローラ40によって制御される。
【0021】
このコントローラ40はまた、APC16により真空容器10の内部の真空度を制御したり、マイクロ波電源26やドライポンプ18などを制御する。すなわちこの制御はその全体の動作がコントローラ40により制御されるものである。
【0022】
ガス導入管34は、真空容器10内の上部にプラズマガスを導入する。真空容器10内には、このガス導入管34のプラズマガス導入口よりも下方でウェハ14の上方を覆う整流板42が取付けられている。この整流板42は多数のノズル孔44が形成された円板であり、ウェハ14から離して真空容器10の内壁に固定されている。
【0023】
整流板42は、ウェハ14の表面に導かれるプラズマガスの流動を整流し、プラズマガスがウェハ14に均一に当たるようにするものである。プラズマガスの流動はガス流量などの処理条件の変化によって変わるから、処理条件によって最適なノズル孔44の数や配置も変えるのが望ましい。
【0024】
次に放電管22の冷却装置30を説明する。図2、3において46は冷却水ジャケットであり、内筒形の内壁48および外壁50と、これらの間に形成される冷却水流路52とを持つ。この冷却水ジャケット46は、図4に示すように上下割りの半体46A、46Bで構成される。半体46A、46Bにはスリット54があけられている。これらのスリット54は導波管24内に開口し、マイクロ波はこれらのスリット54から放電管22内に入り、反応ガスを励起するものである。
【0025】
内壁48の内径は放電管22の外径よりも大きく、両者の間に間隙が形成される。この間隙には、放電管22の長手方向に長い短冊状のシリコンラバー56と、カーボングラファイトシート(以下単にシートともいう)58とを組合せた充填材60が充填されている。
【0026】
すなわち充填材60のシート58は、図3に示すように、シリコンラバー56の内周面(放電管22側の面)と、このシリコンラバー56に隣接する他のシリコンラバー56の外周面(冷却水ジャケット46側の面)とに密着するようにクランク状に折曲している。
【0027】
この冷却装置30を組み立てる際には、図4に示すように、ジャケット46の半体46A、46Bを分割し、これらの内面にシリコンラバー56とシート58とを交互に重ねるように組付けた後、これを放電管22の外周に密着させて固定する。なおマイクロ波が通る半体46A、46Bのスリット54の部分は充填材60を除去しておく。
【0028】
この結果放電管22とジャケット46の内壁48との間に充填材60が挟まれ、この時シリコンラバー56の弾性により、シート58の一端がラバー56と放電管22の間に挟圧され、シート58の他端がラバー56と内壁48との間に挟圧される。シート58はカーボングラファイト製なので、耐熱性に優れると共に、熱伝導性が良い。
【0029】
このため放電管22の熱は、その外周に密着するシート58の一端から、このシート58を介して内壁48に密着するシート58の他端へ速やかに伝わる。従って放電管22の熱は、シート58を通してジャケット46に伝わり、ジャケット46の冷却水流路52内を流れる冷却水(冷却液)に伝わるものである。
【0030】
【発明の効果】
この発明は以上のように、放電管と冷却水ジャケットとの間隙に複数の短冊状の耐熱性弾性材を装填し、この弾性材と放電管との間に、耐熱性かつ良熱伝導性のシートの一端を挟み、このシートを隣接する耐熱性弾性材の間を通してその他端を弾性材と冷却水ジャケットの内周面との間に挟んだものであるから、放電管の熱はこのシートを通して冷却水ジャケットに効率良く伝えられる。従って放電管の冷却性が向上し、装置の耐久性とその稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す図
【図2】その放電管の断面図
【図3】放電管断面の一部拡大展開図
【図4】放電管冷却装置の分解斜視図
【図5】従来装置の放電管の断面図
【符号の説明】
10 真空容器
14 ウェハ(被処理物)
20 プラズマ生成部
22 放電管
24 導波管
26 マイクロ波電源
30 冷却装置
46 冷却水ジャケット
56 シリコンラバー(耐熱性弾性材)
58 カーボングラファイトシート
Claims (5)
- 放電管内を通る反応ガスを前記放電管の外側から加えるマイクロ波によって励起して真空容器に導くプラズマ処理装置において、
前記放電管の外周面を所定間隙あけて囲む冷却水ジャケットと、前記間隙に装填された複数の短冊状の耐熱性弾性材と、隣接する耐熱性弾性材の間を通り一端が前記放電管の外周面と前記耐熱性弾性材との間に挟まれ他端が前記冷却水ジャケットの内周面と前記耐熱性弾性材との間に挟まれた耐熱性かつ良熱伝導性のシートと、
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 耐熱性弾性材は放電管の長手方向に長い短冊状であり、同一の耐熱性かつ良熱伝導性のシートの両端は放電管の周方向に隣接する異なる耐熱性弾性材の内周面および外周面にそれぞれ密着している請求項1のプラズマ処理装置。
- 耐熱性弾性材は、シリコンラバーである請求項1または2のプラズマ処理装置。
- 耐熱性かつ良熱伝導性のシートは、カーボングラファイトシートである請求項1〜3のいずれかのプラズマ処理装置。
- プラズマ処理装置がケミカルドライエッチング装置である請求項1〜4のいずれかのプラズマ処理装置。
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