JP3789703B2 - 洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、洗濯兼脱水槽を駆動するモータとしてDCブラシレス型のモータを採用し、PWM制御によってこのモータに印加する電圧を調整し、モータの回転速度を制御するようにした洗濯機が実用化されている。また、設定回転速度に到達させ、この設定回転速度を維持するためにどのくらいの電圧を印加するか、即ち、PWM制御におけるデューティ比を決定する制御手法として、与えられた偏差(回転速度制御では、設定回転速度と実回転速度との差)に、比例動作(P動作)、積分動作(I動作)、微分動作(D動作)の演算を加えて出力値を決定する、PID制御(狭義)、PI制御、IP制御等のいわゆるPID制御(広義)が採用されている。
【0003】
図7に上記PID制御(広義)の1つである速度型IP制御のブロック線図を示す。そして、これを計算式で表すと下記数1の式1、式2ようになる。
【0004】
【数1】
【0005】
上記の計算を、サンプリング時間(例えば8ms)毎に繰り返し、操作量Mn、即ちデューティ比を増減させる。
【0006】
なお、1回当たりのデューティ比の増減は、制御ゲイン、即ち上記計算式の場合、主として積分ゲインa0及び比例ゲインa1に依存する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
洗濯兼脱水槽を回転させる場合、洗濯兼脱水槽内に投入される洗濯物の量(負荷量)によってモータにかかる負荷が大きく異なってくる。特にモータの起動時、その差は大きい。
【0008】
ところで、PID制御においては、上記数1に示す計算式にも表れているように、起動時、即ちモータが回転するまでは、デューティ比の増減は積分ゲインのみに依存する。
【0009】
このため、洗濯兼脱水槽を駆動するモータにおけるPID制御では、積分ゲインをうまく調整しないと、モータの回転速度制御を適切に行うことができない。即ち、図8のBのように、モータが素早く起動し且つ目標とする回転速度を変動少なく維持できることが理想であるが、積分ゲインを小さく設定すると、負荷量が大きい場合、図8のAに示すように、モータが回転し始めるまでに長い時間がかかってしまう。だからかといって、積分ゲインを大きく設定すると、負荷量が小さい場合、図8のCに示すように、目標回転速度に対してオーバーシュートを起こしたり、Dに示すように振動(速度が大きく上下に変動を繰り返す状態)を起こしたりする虞がある。なお、脱水すすぎにおける給水時など、洗濯兼脱水槽を極めて低速で回転させることがあり、この場合、オーバーシュートや振動が特に起こりやすくなる。
【0010】
本発明は、洗濯機に関し、このような課題を解消するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明の洗濯機の請求項1に係る構成は、外槽内に回転自在に配置された洗濯兼脱水槽と、この洗濯兼脱水槽を駆動するDCブラシレス型のモータと、このモータの回転速度を検出する速度センサと、この速度センサが検出した回転速度に基づいて、PWM制御により前記モータに印加する電圧を調整するとともに、サンプリング時間毎に、予め定められた前記モータの設定回転速度と前記速度センサにより検出された実回転速度との偏差に、比例動作、積分動作、微分動作の演算のうち少なくとも積分動作の演算を加えて、PWM制御におけるデューティ比の増減分を算出し、この増減分を前回のデューティ比に加えて今回出力するデューティ比を決定する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記モータを停止状態から起動させる際、前記モータが回転を開始するまで、前記積分動作における積分ゲインを、前記モータへの通電開始からの時間経過に伴って大きくすることを特徴とするものである。
【0012】
この構成では、モータへ通電を開始してからの時間の経過に伴って積分ゲインが大きくなり、デューティ比の増加分も大きくなる。
【0013】
よって、洗濯兼脱水槽内の負荷量が大きい場合でも、モータが回転するまでの時間を短くできる。また、負荷量が小さい場合には、積分ゲインが小さいうちにモータが回転し始めることになるので、特に、モータを起動して低速で回転させる制御を行ったとしても、オーバーシュートや振動が起こりにくい。
【0014】
なお、モータ起動時にはどうしても大きなトルクが必要となるため、上記のような構成とした場合、起動直後の積分ゲインは大きくなりがちであり、このままの積分ゲインでは、オーバーシュートや振動を起こす可能性がある。
【0015】
これに対し、本発明の洗濯機の請求項2に係る構成では、前記制御装置は、前記モータが回転を開始すると、前記積分ゲインを小さくすることを特徴としている。
【0016】
この構成では、モータが起動してモータにかかる負荷が大きく低減すると、それに合わせて、積分ゲインも小さくするので、一層、オーバーシュートや振動を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
各図面に基づいて、本発明の一実施形態の洗濯機について詳述する。図1は本実施形態の洗濯機の概要を示す、側面縦断面図である。
【0020】
図1において、1は機枠、2はこの機枠1内に4本の吊り棒3により吊り下げ支持された、上面が開口した外槽である。4は周囲に多数の脱水孔(図示せず)を有し、前記外槽2内に配置された、同じく上面が開口した洗濯兼脱水槽で、この洗濯兼脱水槽4は底壁に設けられた回転軸5を中心として回転する。
【0021】
6は前記洗濯兼脱水槽4内の底部に回転自在に配設されたパルセータ、7は前記洗濯兼脱水槽4及び回転翼6に動力伝達機構8を介して連結されたモータで、このモータ7は洗い及びすすぎ(ためすすぎ及び注水すすぎ)時には主にパルセータ6のみを低速回転させ、洗濯物の脱水時には洗濯兼脱水槽4を回転軸5を中心として一方向へ高速回転させる(このとき前記パルセータ6も同時に高速回転する)。ここでは、前記モータ7としてDCブラシレス型のモータを使用している。
【0022】
9は前記機枠2の上面に取りつけられた上面板で、中央部に洗濯物の投入口10とこの投入口10を開閉自在に覆う上蓋11とを備えている。
【0023】
12は前記上面板9の前部に設けられた操作ボックスで、その上面には、スタートキー等からなる操作部及び運転条件や行程を表示するための表示部を備えた操作パネル13が設けられており、内部には、マイクロコンピュータを中心として構成され、前記モータ7などの各種負荷を駆動制御して洗濯運転を実行する制御部14が収容されている。
【0024】
15は前記上面板9の後部に配置された注水口であり、洗剤等を投入するための洗剤容器16を内部に備えている。17は前記注水口15に接続され、前記外槽2及び洗濯兼脱水槽4の上方から洗濯兼脱水槽4へ落下給水するための給水管であり、この給水管17の途中には、電磁式の給水弁18が設けられている。19は前記外槽2の底壁に設けられた排水パイプ、20はこの排水パイプ19の途中に設けられた排水弁で、トルクモータ21の動作により開閉される。
【0025】
前記モータ7は、回転速度を可変できるよう、インバータ制御(PWM制御)されている。図2はモータ7のインバータ制御のための制御機構を示すブロック回路図である。
【0026】
回転速度センサ22は、前記モータ7に配置されたホールICによりモータ7の磁極位置を検出し、この磁極位置から回転速度を検出し、インバータ用のマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)23に出力する。マイコン23には、数1(従来の技術の欄に記載)に示すの速度型IP制御の演算式(式1、式2)が記憶されており、マイコン23は、この演算式を用い、前記回転速度センサ22から読み込んだ回転速度に基づいてPWM信号のデューティ比(オンオフ1周期におけるオン時間の割合)を算出する。ドライブ回路24は、マイコン23から出力されたPWM信号に応じて、280Vの直流電源25に接続された三相ブリッジ回路26のスイッチング素子26aをオン/オフし、モータ7の3相に印加する電圧を調整してモータ7のトルクを制御する。こうして、モータ7の回転速度が制御される。なお、デューティ比が大きいほどモータ7に印加される電圧が大きくなり、モータ7のトルクが大きくなる。
【0027】
本発明の実施形態の洗濯機にあっては、脱水すすぎにおける給水時など、洗濯兼脱水槽4を極めて低速回転させることがある。脱水すすぎは、洗いに続く脱水によって槽壁にへばりついた洗濯物に給水して水を染み込ませた後、洗濯兼脱水槽4を高速回転させて染み込んだ水とともに洗剤を絞り出す節水型のすすぎである。この脱水すすぎの給水時に洗濯兼脱水槽4を低速回転させるのは、槽の全周にへばりついた洗濯物に満遍なく水を当てるためである。具体的には、洗濯兼脱水槽4は約20rpmで回転させ、このため、モータ7は約30rpmで回転させる。(モータ‐脱水槽間の減速比が約0.6に設定されている)
本実施形態では、このようにモータを極めて低速で回転させる場合であっても、洗濯兼脱水槽4内の負荷量に影響されることなく、モータ7を素早く起動させ且つ目標回転数からのオーバーシュート等をできるだけ抑えるようにするため、例えば、モータ7の目標回転速度を30rpmとした場合、上述の速度型IP制御における比例ゲインa1、及び積分ゲインa0を、図3の表のように設定している。即ち、モータ7が起動するまでは、モータ7へ通電を開始してからの時間taに伴って積分ゲインa0を大きくするようにし、モータ7が回転を開始すると、積分ゲインa0を低減するようにしている。なお、比例ゲインa1は、モータ7の起動時には寄与しないので、常に一定の値としている。
【0028】
以下、前記モータ7の速度制御動作を、図4〜図6に示すPADチャートに基づいて詳述する。図4は速度制御におけるメインルーチンのPADチャート、図5は速度制御における初期設定サブルーチンのPADチャート、図6は速度制御におけるIP制御サブルーチンである。
【0029】
インバータ用のマイコン23に接続されたメインのマイコン(図示せず)からモータ7の起動指令が出力されると、マイコン23は、初期設定サブルーチンを実行した後、次にモータ7の停止指令が出力されるまでIP制御サブルーチンを実行する。
【0030】
即ち、初期設定サブルーチンでは、操作量(デューティ比)Mnのメモリエリア、今回サンプリングした回転速度ωnのメモリエリア、及び、前回サンプリングした回転速度ωn−1のメモリエリア内の値をリセットするとともに、サンプリング時間tsplをカウントするためのサンプリング時間カウンタ、及び、モータへ通電を開始してからの時間taをカウントするための起動時間カウンタをリセットする。なお、前記メモリエリア及びカウンタは、マイコン23内に用意されている。
【0031】
次にIP制御サブルーチンに移り、サンプリング時間tsplが8msになる毎に以下の動作を行う。
【0032】
まず、サンプリング時間カウンタをリセットする。次に、積分ゲインa0、及び比例ゲインa1を設定する。
【0033】
比例ゲインa1は、常に一定の値、即ち8000に設定される。一方、積分ゲインa0は、モータ7が回転するまでは起動時間カウンタの時間taに伴って大きな値に変更されていく。即ち、積分ゲインa0は、モータ7へ通電を開始してから10秒が経過するまでは90に設定され、10秒が経過すると15秒が経過するまでは130に設定され、さらに15秒が経過すると700に設定される。また、積分ゲインa0は、モータ7が回転し始めると低減され、80に設定される。
【0034】
積分ゲインa0、比例ゲインa1が設定されると、回転速度センサ22によりモータ7の回転速度を測定し、測定した回転速度を今回サンプリングした回転速度ωnとして記憶する。そして、回転速度ωn等を用いて、前述した数1の式1によりデューティ比の増減分(増減幅)Δmnを算出する。さらに数1の式2によりデューティ比Mnを算出する。即ち、前回のデューティ比Mnに増減分Δmnを加えて、今回出力するPWM信号のデューティ比Mnを決定する。
【0035】
こうして、マイコン23は、決定されたデューティ比MnのPWM信号を出力する。これにより、モータ7には、デューティ比Mnに応じた電圧が印加される。
【0036】
最後に、次回のサンプリング時間でのデューティ比Mnの算出に用いるため、今回サンプリングした回転速度ωnを、前回サンプリングした回転速度ωn−1に置き換え、そのメモリエリアに記憶する。
【0037】
さて、上述の式1からも明らかなように、デューティ比Mnの増減幅Δmnは、モータ7が回転を開始するまでは積分ゲインa0のみに依存する。これは、ωn及びωn−1がゼロになるので、式1がΔmn=a0*ωcとなるためである。
【0038】
本実施形態では、モータ7が回転を開始するまでは、時間の経過に伴って積分ゲインa0が大きくなるようにしているので、デューティ比Mn、即ちモータ7に印加される電圧は一定の割合で大きくなっていくのではなく、略二次関数的に大きくなっていく。
【0039】
よって、洗濯兼脱水槽4を回転させる際、槽内の負荷量が大きく、モータ7の起動に大きなトルクが必要となる場合であっても、比較的短時間でモータ7を起動させることができる。さらに、槽内の負荷量が小さい場合には、短い時間でモータ7が起動し、積分ゲインa0が大きくなる前に起動するので、モータ7を低速回転で制御する場合でも、オーバーシュートや振動が起こりにくい。
【0040】
また、モータ7が回転し始めると、モータ7にはあまり大きなトルクが必要でなくなる。よって、その後モータ7を低速回転させる場合には、デューティ比の増加幅を小さくしたり、あるいは、デューティ比を減少させる必要が出てくる。この場合、式1のωnやωn−1はゼロでなくなるため、デューティ比の増加幅は起動時よりも抑えられることになるが、積分ゲインa0が大きいままであると、デューティ比の増加幅を小さくしたり、デューティ比を減少させたりすることが素早く行えず、オーバーシュートや振動を起こしてしまう虞がある。
【0041】
これに対し、本実施形態では、モータ7が起動すると積分ゲインa0を小さい値に変更するようにしているので、モータ7の起動後デューティ比の調整を素早く行え、オーバーシュートや振動の発生をより防止することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は、一実施形態であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。例えば、本実施形態では速度型IP制御を用いているが、その他のPID制御(広義)を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の洗濯機の概要を示す側面縦断面図である。
【図2】洗濯兼脱水槽を駆動するモータのインバータ制御のための制御機構を示すブロック回路図である。
【図3】速度型IP制御における積分ゲイン、及び比例ゲインの設定値を示す表である。
【図4】モータの速度制御におけるメインルーチンのPADチャートである。
【図5】モータの速度制御における初期設定サブルーチンのPADチャートである。
【図6】モータの速度制御におけるIP制御サブルーチンである。
【図7】速度型IP制御のブロック線図である。
【図8】速度型IP制御において、積分ゲインの大小が及ぼすモータの回転速度制御への影響を示す図である。
【符号の説明】
2 外槽
4 洗濯兼脱水槽
7 モータ
22 回転速度センサ(速度センサ)
23 マイクロコンピュータ(制御装置)
Claims (2)
- 外槽内に回転自在に配置された洗濯兼脱水槽と、この洗濯兼脱水槽を駆動するDCブラシレス型のモータと、このモータの回転速度を検出する速度センサと、この速度センサが検出した回転速度に基づいて、PWM制御により前記モータに印加する電圧を調整するとともに、サンプリング時間毎に、予め定められた前記モータの設定回転速度と前記速度センサにより検出された実回転速度との偏差に、比例動作、積分動作、微分動作の演算のうち少なくとも積分動作の演算を加えて、PWM制御におけるデューティ比の増減分を算出し、この増減分を前回のデューティ比に加えて今回出力するデューティ比を決定する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記モータを停止状態から起動させる際、前記モータが回転を開始するまで、前記積分動作における積分ゲインを、前記モータへの通電開始からの時間経過に伴って大きくすることを特徴とする洗濯機。
- 前記制御装置は、前記モータが回転を開始すると、前記積分ゲインを小さくすることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
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