JP3789427B2 - 電気二重層コンデンサ用電極体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大容量・高出力の電気二重層コンデンサに使用するのに適した電気二重層コンデンサ用電極体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層コンデンサは、従来の二次電池のように充放電において化学反応を伴わないため長寿命であり、かつ高サイクル特性を有し、さらに大電流による充放電が可能になるなどの特徴から、近年、新たな蓄電源として、また、車載用を始めとする各種機器の駆動用電源等として注目を集めており、特に、大容量・高出力の電気二重層コンデンサの開発が進められている。
【0003】
このような電気二重層コンデンサ用電極体の製造方法として、アルミニウム箔等の集電体シート上に導電性接着剤を塗布し、この導電性接着剤を介して電極部形成シートを接合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、活性炭と導電性カーボンと結合剤と溶媒とを加えて混練し、圧延・乾燥することによって得た電極部形成シートをカーボンブラックやグラファイト等の導電性フィラーとポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂成分からなる結着剤とを含んだ導電性接着剤が塗布された集電体シート上に接合・乾燥するというものである。この方法によって、電気二重層コンデンサ用電極体を作製することができる。このようなPVAを用いた導電性接着剤は水溶媒を用いることから、調製が容易で、かつ有害な有機溶媒を用いる必要もなく環境対策が軽微で済むため、コスト的に優れており、さらに保存性にも優れているという特徴がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−162787号公報(要約書)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PVA等の水系接着剤は、被接着物の表面物性、温度等に影響を受けやすく接着力が不安定になりやすいという問題点がある。接着力が不安定になると、集電体シートと導電性接着剤からなる層(以下、導電性接着剤層)とが界面剥離し易くなり、充放電に伴って界面抵抗が上昇する。特に、車載用駆動電源として用いる場合には、過酷な環境で使用されることから電解液が高温になり、界面剥離の問題が生じやすくなる。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、PVAを導電性接着剤の樹脂成分として使用した電気二重層コンデンサ用電極体の集電体シートと電極部形成シートとの接着性の向上を図ることにより、抵抗の上昇を抑制することができる電気二重層コンデンサ用電極体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気二重層コンデンサ用電極体は、集電体シートと電極部形成シートとの間に主として導電性フィラーとPVAとからなる導電性接着剤層を設けた電気二重層コンデンサ用電極体において、上記PVAのけん化度を90.0〜98.5とし、上記ポリビニルアルコールに含まれる水酸基の総数に対し、0.5〜2.0%の水酸基中の水素がケイ素に置換されていることを特徴としている。
【0008】
PVAの製造工程においては、酸素共存下で酢酸とエチレンを反応させて酢酸ビニルを合成し、これを重合させてポリ酢酸ビニルとし、これにアルカリを加えてポリ酢酸ビニル中の酢酸基(CHCOO−)にけん化反応を行って水酸基(OH基)に変換するという合成方法が一般的である。しかしながら、すべての酢酸基をけん化すると、水に溶けにくくなるという問題や、容易にゲル化するなど保存性に問題があることから、実際のPVAの製造工程では、[化1]に示すように酢酸基と水酸基を混在させた状態で製造しており、両官能基の総数に対する水酸基の割合をけん化度と定義している。
【0009】
【化1】
Figure 0003789427
【0010】
上記構成の本発明の導電性接着剤では、PVAのけん化度が90.0〜98.5であるため、残留している酢酸基の割合が非常に少なく、電解液であるプロピレンカーボネート(PC)による導電性接着剤層の膨潤が抑制され、結果的に接着力が向上する。
【0011】
このような導電性接着剤を用いることにより、集電体シートと電極体形成シートが好適に接着されるとともに、溶剤に水が使用可能となることで、乾燥工程において最小限の熱で溶剤を除去でき、熱による電極の脆化を抑制することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の導電性接着剤は、導電性フィラーと結着剤と分散剤を備えていると好適である。ここで、導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等の炭素系粒子が望ましく、さらには、大小の導電性カーボン粒子を共に備えていることが望ましい。
【0013】
大粒径のカーボン粒子のみでは、マクロな導電パスは確保できる反面、接着力・接触面積に乏しく接着界面で容易に剥離してしまい、小粒径のカーボン粒子のみでは、接着力・接触面積の観点からは好ましい反面、マクロな導電パスに乏しいからである。本発明で使用する導電性接着剤においては、大粒径のカーボン粒子としてはグラファイトを、小粒径のカーボン粒子としてはカーボンブラックを添加している。添加する割合は、30:70〜70:30の範囲が望ましく、本発明ではより好ましい55:45の割合で添加させている。
【0014】
本発明では、結着剤であるPVAのけん化度が90.0〜98.5の範囲であることを特徴としている。一般的にPVAは、前述のようにその製造工程において水酸基のほかに酢酸基を有している。この残留酢酸基が多い(けん化度が低い)と、電解液によって導電性接着剤層が膨潤してしまい、集電体シートと導電性接着剤層の剥離を引き起こしてしまう。一方、けん化度がこの範囲より高いものは製造後、容易にゲル化してしまうなど保存性が著しく低い。したがって、PVAのけん化度は、本発明の範囲内であることが望ましい。
【0015】
また、本発明では、結着剤であるPVAに含まれる水酸基の総数に対し、0.5〜2.0%の水酸基中のH原子がSi原子に置換されていることが望ましい。すなわち、一般にアルミニウム等の金属は、主に水酸化物を含む皮膜を金属の表面に形成するが、上記構成のPVAでは、PVA中のSi原子は集電体シートであるアルミニウム箔の表面に形成された被膜の水酸基と結合するため、接着性がさらに向上する。このため、低いけん化度のPVAであっても、導電性接着剤層と集電体シートの剥離を抑制することが可能になる。このような作用を得るためには、H原子のSi原子への置換は0.5%以上必要であり、Si置換の割合が高いほど接着性も向上する。しかしながら、Si置換の割合が2.0%を超えると水への溶解性が悪くなるため、接着剤の作製が困難になる。よって、本発明におけるH原子のSi原子への置換の割合は、0.5〜2.0%の範囲が望ましい。
【0016】
本発明の導電性接着剤に用いる溶媒としては、水以外にもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トリクロロエチレン、ジメチルホルムアミド、エチルエーテル、アセトン等、各種の溶媒を単独又は複数種類混合して用いることができる。
【0017】
本発明の導電性接着剤においては、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いている。これは、導電性フィラーであるカーボンブラック及びグラファイトが凝集し易いことから、これらを分散させるために用いられる。
【0018】
本発明の集電体シートとしては、各種の金属箔を用いることができるが、一般的にはアルミニウム箔が好適である。特に本発明においては、アルミニウム箔の表面にエッチング処理を施したものを使用しており、このエッチング処理により生じた表面の微細なピット(窪み)に導電性接着剤中のカーボン粒子が入り込むことにより強固に接着され、導電性接着剤と集電体シートの界面剥離を抑制することが可能である。本発明で用いる集電体シートの表面性状は、径が4〜10μmで深さが4〜15μmのピットを単位面積(1cm)あたり100,000個以上有し、その面積が50%以下の占有率であると好適である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
1.導電性接着剤の作製
けん化度が98.5のポリビニルアルコール3重量部、カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業(株)製)10重量部、グラファイト(SP−300、日本黒鉛工業(株)製)10重量部、カルボキシメチルセルロース(セロゲンF−3H、第一工業製薬(株)製)3重量部および精製水74重量部を混合・攪拌して実施例の導電性接着剤を得た。
【0020】
2.電極部形成シートの作製
活性炭粉末(KH−1200、呉羽化学工業(株)製)80重量部、導電性カーボン(デンカブラック、電気化学工業(株)製)10重量部、PTFE樹脂(テフロン(登録商標)6J、三井デュポンフロロケミカル(株)製)10重量部を混合・攪拌し、原料粉体の均一分散を行った。次に、この混合物を混練装置に移し、0.5±0.05MPaの条件下で2軸混練による一体化処理を10分間行い、固形物を得た。次に、この固形物を粉砕し、粉砕粉を得た。続いてこの粉砕粉をカレンダーロールを用いてプレシート成形し、さらに圧延ロールを用いた圧延工程により、シートの厚みを調整し、電極部形成シートを得た。
【0021】
3.電極体の作製
表面にエッチング処理が施された長尺アルミニウム箔(ED−402H、日本ケミコン(株)製)の表面に上記で得られた導電性接着剤をグラビアロールで塗布し、その後導電性接着剤層上に上記で得られた電極部形成シートを重ね合わせて接合し、160℃で72時間真空乾燥して電極体を得た。
【0022】
次に、下記のような条件で実施例2〜6及び比較例1〜6の電極体を作製した。
[実施例2]
ポリビニルアルコールのけん化度を95とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0023】
[実施例3]
ポリビニルアルコールのけん化度を92とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0024】
[実施例4]
ポリビニルアルコールのけん化度を90とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0025】
[比較例1]
ポリビニルアルコールのけん化度を88とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0026】
[比較例2]
ポリビニルアルコールのけん化度を85とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0027】
[比較例3]
ポリビニルアルコールのけん化度を80とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0028】
[比較例4]
ポリビニルアルコールのけん化度を99とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。しかしながら、保存性が悪くてゲル化してしまったため、電極を作製することができなかった。
【0029】
[実施例5]
けん化度が98.5のポリビニルアルコールを、けん化度92かつSi置換2%とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0030】
[実施例6]
けん化度が98.5のポリビニルアルコールを、けん化度90かつSi置換2%とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0031】
[比較例5]
けん化度が98.5のポリビニルアルコールを、けん化度88かつSi置換2%とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0032】
[比較例6]
けん化度が98.5のポリビニルアルコールを、けん化度85かつSi置換2%とした以外は実施例1と同様に電極体を作製した。
【0033】
[実施例及び比較例の評価]
電気二重層コンデンサは、多数直列接続されたものが自動車などに搭載されて用いられるため、経時による充放電特性の低下は好ましくないという観点から、実施例1〜6及び比較例1〜6の各電極を用いて作製された電気二重層コンデンサの単セルについて耐久試験を行った。耐久試験は、45℃の温度下で2.5Vの電圧を2000時間印加することで行った。試験後、初期抵抗に対して抵抗上昇率が20%未満のものを良品、20%以上のものを不良品とした。結果を図1に示す。水酸基のH原子がSi原子に置換されているものは、PVAのけん化度が低くてもセルの不良率を抑制することができることを示している。これは、Si原子とアルミニウム表面の水酸基が結合しているためであると考えられる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、PVAを導電性接着剤の樹脂成分として使用した電気二重層コンデンサ用電極体の集電体シートと電極部形成シートとの接着性の向上を図ることにより、抵抗の上昇を抑制することができる電気二重層コンデンサ用電極体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の電気二重層コンデンサ用電極体におけるPVAのけん化度とセルの不良率の関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 集電体シートと電極部形成シートとの間に主として導電性フィラーとポリビニルアルコールとからなる導電性接着剤層を設けた電気二重層コンデンサ用電極体において、上記ポリビニルアルコールのけん化度を90.0〜98.5とし、上記ポリビニルアルコールに含まれる水酸基の総数に対し、0.5〜2.0%の水酸基中の水素がケイ素に置換されていることを特徴とする電気二重層コンデンサ用電極体。
  2. 前記導電性フィラーは、互いに径の異なる少なくとも2種類の導電性カーボン粒子からなり、これらのうち相対的に大粒径の導電性カーボン粒子と、この粒子よりも小粒径の導電性カーボン粒子とが30:70〜70:30の割合で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサ用電極体。
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