JP3788814B2 - 溶剤回収処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化学工場において有機溶剤を溶媒として用いる製膜工程、塗布工程等において、蒸発した溶剤を吸着剤を用いて回収する溶剤回収処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶剤濃度の異なる少なくとも3種以上の溶剤含有排ガスを発生させる工程として製膜工程、塗布工程等がある。これらの工程で発生する溶剤を処理する溶剤回収方法として、各溶剤排ガス発生源よりの溶剤含有排ガスをそれぞれ冷却器で冷却した後、送風機によって混合してから吸着装置に送り吸着剤に溶剤を吸着させていた。吸着塔の排ガスはそのまま排気するか、又はフィルターを通してから再び送風機で循環処理してもよい。一方、吸着装置には加熱再生用気体を送って吸着剤に吸着された溶剤を脱着し、これをコンデンサーにおいて凝縮し、溶剤を溶剤貯蔵タンクに回収していた。吸着装置には2塔を使用して、相互に吸着と脱着回収を各バルブの切替によって行い連続操業を行なっていた。
【0003】
又、溶剤濃度の異なる各溶剤含有排ガス発生源の吸着装置を各々別個に設けて、上記と同様な方法で吸着、脱着回収処理する方法もあった。
【0004】
しかしながら、これらの方法では濃厚ガスが希薄ガスと混合されるため濃厚ガスが希釈されることによって吸着剤の吸着能力が減じあるいは吸着装置が増えて設備費が多額になり、かつ単位溶剤処理当たりの再生コストが高くついた。
【0005】
これらの問題点を解決した溶剤回収処理方法として、溶剤含有濃度の異なる少なくとも2種の溶剤ガス含有気体を吸着する溶剤回収処理方法において、先ず希薄なる溶剤ガス含有気体を第1の吸着装置に通し、吸着剤が破過開始する前の一定時間後に該含有気体を第2の吸着装置に切り替え送風し、第1の吸着装置には濃厚なる溶剤ガス含有気体を通し、その濃厚なる溶剤ガスの吸着を吸着剤が破過開始する時間内でかつ前記希薄なる溶剤ガス吸着時間に合わせた時間行った後、第2の吸着装置に切り替え送風し、同時に希薄なる溶剤ガス含有気体は第3の吸着装置に切り替え送風し、第1の吸着装置は再生操作に移ることを順次繰返し行う方法が開発されている(特開平4−59019号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法を、脱着再生ガスに水蒸気を用いて溶剤濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤含有排ガスに適用した場合、低濃度ガスの吸着工程における溶剤ガスの破過が予想外に早いため、大気放出から再吸着への切替を早期に行なわなければならず、これが設備負担を増加させ、溶剤回収コストを上昇させていた。
【0007】
本発明の目的は、脱着再生ガスに水蒸気を用いて、溶剤濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤含有排ガスから溶剤を吸着回収するにあたり、吸着剤の吸着能力を充分に発揮させて溶剤を効率よく回収するとともに吸着塔からの排ガスの溶剤濃度を極めて低濃度に抑えることができる溶剤回収処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、溶剤濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤含有排ガスを少なくとも4塔の吸着塔を有する吸着装置の各塔に順次導入して溶剤の吸着回収を行ない、少なくとも1塔では水蒸気による脱着再生を行なう方法であって、各塔には前記溶剤含有排ガスのうち中濃度排ガス、低濃度排ガス、高濃度排ガスの順に供給し、中濃度排ガスを送入した塔のガスは低濃度排ガスに合わせ、低濃度排ガスを送入した塔の排ガスは放出あるいは次の処理工程に移し、高濃度排ガスを送入した塔は次いで水蒸気を送入して脱着再生を行なうことを特徴とする溶剤回収処理方法によって達成される。
【0009】
すなわち、本発明では、脱着工程後の吸着1段目で中濃度ガスの吸着を行い、また排気は再処理のため低濃度ガスと合わせ吸着回収し、2段目以降低濃度ガスの吸着を行い、大気放出する。最終段で高濃度ガスの吸着を行い、排気は再処理のため低濃度ガスと合わせ吸着回収するのである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様を図1を用いて説明する。
【0011】
図1において低濃度ガス発生源1と中濃度ガス発生源2と高濃度ガス発生源3とがあり、それに対して第1の吸着塔10aから第6の吸着塔10fまでにそれぞれ通じる管路があり、バルブ15で切り替えが出来るようになっている。
【0012】
第1の吸着塔10aには中濃度ガス発生源2よりの溶剤ガスが通された後、一定時間後、第2の吸着装置10bに切り換えられ、第1の吸着装置10aには低濃度ガス発生源1からの溶剤ガスが通され、一定時間後排気ガス濃度が所定の濃度になる前に第2の吸着装置10bに切り換えられ、中濃度溶剤ガスは第3の吸着装置10cに切り換えられる。第1の吸着装置10aは低濃度ガスの吸着により排気ガス濃度が一定値以上となると切り換えられ高濃度ガス発生源3よりの溶剤ガスが通される。前記の一定時間とは低濃度ガスの吸着による排気ガス濃度が所定の濃度以下を保つ時間を基準として定める。図1において、第1の吸着装置10aが再生状態に入った状態を表すとして説明すると、中濃度ガス発生源2よりの溶剤ガスは冷却器5によって冷却され、送風機8によって第6の吸着装置10fに通され、吸着剤11fにその溶剤ガスを吸着されている。吸着後の気体中には溶剤ガスが含まれているので、再び低濃度ガスとして吸着処理される。低濃度ガス発生源1からの溶剤ガスは冷却器4によって冷却され、送風機7によって第5の吸着装置10e、第4の吸着装置10dおよび第3の吸着装置10cに通され、吸着剤11e、11d、11cにその溶剤ガスを吸着されている。吸着後の気体には所定の濃度以下の溶剤しか含まれていない。
【0013】
高濃度ガス発生源3よりの溶剤ガスは冷却器6によって冷却され、送風機9によって既に中濃度溶剤ガス、低濃度溶剤ガスを吸着した第2の吸着装置10bに通され、吸着剤11bにその溶剤ガスを吸着されている。排気ガスに溶剤ガスが含まれる場合には中濃度ガスの吸着後の排気と同様に再び吸着処理される。
【0014】
第1の吸着装置10aは、中濃度溶剤ガス、低濃度溶剤ガス、高濃度溶剤ガスの順に吸着したあと、再生中であり、加熱再生用水蒸気12が吹き込まれ吸着剤11aに吸着された溶剤は加熱再生用気体に蒸発してコンデンサー13によって冷却凝縮し、液体となって回収され、溶剤貯蔵タンク14に貯蔵される。
【0015】
吸着塔は少なくとも4塔あればよい。一方、吸着あるいは脱着を2塔以上直列に連結して連塔方式で行なうこともでき、その場合にはそれに必要な塔数を増設する。
【0016】
溶剤は吸着剤で吸着回収できるものであればよく、例えば塩化メチレン、アセトン、メタノール、n−ブタノール等がある。
【0017】
本発明が適用される溶剤含有排ガスの溶剤濃度は本発明の効果を発揮しうるものであればよいが、例えば、高濃度ガスは1,000ppm以上、中濃度ガスは500ppm以上1,000ppm未満、低濃度ガスは500ppm未満である。
【0018】
溶剤含有排ガスが4種類ある場合には、まず2番目又は3番目の濃度のガスを供給し、次に、低濃度ガス、3番目又は2番目の濃度のガス、高濃度ガスの順に供給すればよい。
【0019】
吸着剤は、ゼオライト、粒状活性炭、繊維活性炭等を使用できる。吸着は常圧、加圧のいずれで行なってもよい。
【0020】
脱着は水蒸気を用いる。
【0021】
濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤ガス(高濃度,中濃度,低濃度)を吸着回収するに対し、吸着剤の吸着能力を十分活用し、且つ吸着塔からの大気排気濃度を極低濃度(5ppm以下)に押さえると共に、設備費、再生コストを低減させるため、本発明では、脱着工程後の吸着1段目で中濃度ガスの吸着を行い、また排気は再処理のため低濃度ガスと合わせ吸着回収し、2段目以降低濃度ガスの吸着を行い、大気放出する。最終段で高濃度ガスの吸着を行い、排気は再処理のため低濃度ガスと合わせ吸着回収することを特徴とする。従来技術では吸着1段目から低濃度ガスの吸着を行い、順次高濃度側の吸着を行っていた。
【0022】
この従来技術では、通常脱着直後の吸着1段目の排気は水蒸気を多量に含み、また溶剤分を若干含んでおり白煙状で大気に放出するが、本発明では吸着1段目の排気を再処理のため低濃度ガスと合わせ吸着再処理するため、環境への水蒸気、溶剤分の放出を極力低減できる。
【0023】
また、従来の知見ではサイクルタイムを延長すると低濃度ガスの吸着工程で破過が始まり、大気放出ガス濃度を目標値以下に維持できなかったが、本発明の方法によれば、吸着1段目の中濃度ガスによる吸着剤を乾燥する効果が大きくなることにより、2段目以降の吸着能力が向上しサイクルタイムを延長しても、大気放出ガス濃度を目標値以下に維持することができた。このため脱着のための水蒸気量を約2/3に削減でき、省エネ効果を出すことができた。
【0024】
【実施例】
図1に示す装置を用いた。この装置は、1塔当たり4m3/minの風量処理能力のある吸着塔6塔よりなっている。吸着剤には繊維活性炭を用い、1塔当り5.2kgを充填した。まず、中濃度溶剤含有ガス(塩化メチレン550ppm)3m3/minを1段目の吸着塔で処理し、大気放出ガス濃度を極低濃度(塩化メチレン5ppm以下)とするため、排気(塩化メチレン20ppm)は再処理のため低濃度ガス(塩化メチレン300ppm,8m3/min)及び後述の高濃度ガスを最終段で吸着処理した後の排気(塩化メチレン30ppm,1m3/min)を合わせ、2段目から4段目で処理をし大気放出したところ、塩化メチレン濃度を5ppm以下とすることができた。高濃度ガス(塩化メチレン10,000ppm,1m3/min)を最終段(5段目)で吸着処理し、その排ガスは低濃度ガスと合わせ吸着処理を行い、大気放出した。
【0025】
脱着に要したスチーム量は12kg/Hrであった。
【0026】
この実施例では1塔処理風量が中濃度ガス風量3m3/minと高濃度ガス風量1m3/minとの合計風量4m3/minとしたため再処理用の低濃度吸着塔は1塔で間に合い、設備構成上のメリットがあった。
【0027】
従来の方法では、低濃度ガス(塩化メチレン300ppm,8m3/min)のうちの4m3/minを1段目で処理をすると大気放出の排気濃度が5ppm以上となり目的を達成できなかった。また大気放出の排気濃度を5ppm以下とするためには、吸着塔を1基増設する必要があり設備費の低減化に反する結果となった。
【0028】
【発明の効果】
濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤ガス(高濃度,中濃度,低濃度)を吸着回収するに対し、吸着剤の吸着能力を十分活用し、且つ吸着塔からの大気排気濃度を極低濃度(5ppm以下)に押さえると共に、設備費、再生コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の溶剤回収処理方法で使用される吸着装置の一例のフローシートである。
【符号の説明】
1 低濃度ガス発生源
2 中濃度ガス発生源
3 高濃度ガス発生源
4,5,6 冷却器
7,8,9 送風機
10a〜f 吸着装置
11a〜f 吸着剤
12 加熱再生用気体
13 コンデンサー
14 溶剤貯蔵タンク
15 バルブ

Claims (2)

  1. 溶剤濃度の異なる少なくとも3種類の溶剤含有排ガスを少なくとも4塔の吸着塔を有する吸着装置の各塔に順次導入して溶剤の吸着回収を行ない、少なくとも1塔では水蒸気による脱着再生を行なう方法であって、各塔には前記溶剤含有排ガスのうち中濃度排ガス、低濃度排ガス、高濃度排ガスの順に供給し、中濃度排ガスを送入した塔のガスは低濃度排ガスに合わせ、低濃度排ガスを送入した塔の排ガスは放出あるいは次の処理工程に移し、高濃度排ガスを送入した塔は次いで水蒸気を送入して脱着再生を行なうことを特徴とする溶剤回収処理方法
  2. 溶剤が塩化メチレンであって、前記高濃度ガスの塩化メチレン濃度は1,000ppm以上、中濃度ガスの塩化メチレン濃度は500以上1,000ppm未満、低濃度ガスの塩化メチレン濃度は500ppm未満であることを特徴とする請求項1記載の溶剤回収処理方法
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