JP3787444B2 - 半導体薄膜の形成方法および装置 - Google Patents

半導体薄膜の形成方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体薄膜の形成方法および装置に関し、特に、太陽電池等の半導体機能素子を構成するための非単結晶半導体薄膜の形成方法および装置、例えば、アモルファスシリコンやアモルファスシリコン合金を用いた太陽電池等の光起電力素子を大量生産する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマ放電を使って連続的に搬送可能な長尺帯状部材上へ堆積膜を形成する際に、堆積膜の元素組成比率を膜厚方向に変化を持たせて堆積させる試みとして、例えば、特開平5−121338号公報では、長尺帯状部材を連続的に移動させながら、該基板上にプラズマCVDによって堆積膜を形成するにあたり、帯状部材移動方向と平行な方向に材料ガスの流れを形成し、同時に基板移動方向と平行な方向に高周波電力を印加するための放電手段を複数個設置して、堆積膜の膜厚方向の元素組成比率に変化を持たせる方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記例の従来技術では、成膜空間内における原料ガスの流れ方向を帯状部材移動方向(搬送方向)に平行な方向に形成する必要があり、これを実現させるためには、ガス供給管、排気口等の配置、成膜室のガス流れ方向長等を検討し成膜室構造を作り込んでいく必要があり、また容器構造の設計自由度が必ずしも大きくなかった。
また、ガスの流れをうまく作り出せないような大きさ(小ささ)の容器であったり、レイアウトによっては効果が期待できなくなってしまうという問題点があった。さらには、一つの成膜室に対し、複数の放電手段を設置することもあり、装置的には複雑かつ大掛かりとなり、成膜条件の最適化という面においてもパラメータが増加する関係上煩雑であった。さらにまた、堆積膜の条件を検討するに当たり、複数種類含有する原料ガスの総流量を変更した場合には、必然的に成膜室内における材料ガスの滞留時間が変化するため、それを考慮する必要があり、滞留時間を一定にするためには、排気コンダクタンスを調整する等の作業が必要であった。
すなわちハード的な面に関する問題としては、成膜室の設計自由度が減少することや構造が多少なりとも大掛かりで複雑化してしまうこと等で、必然的に装置制作コストが増加してしまう傾向にあった。一方、ソフト的な面に関する問題としては、最適化を検討すべきパラメータの増加により技術開発検討項目が増える結果、技術開発期間を長期化させてしまうことや、最適化値が決定された後においても、それらの最適値を使って定常なプラズマ放電をある特定時間連続して行うような生産過程においても、再現性良く制御すべきパラメータの数が増加してしまうという問題が生じていた。
【0004】
そこで、本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、プラズマ放電を使って電気的特性の優れた半導体層を形成する際のCVD(Chemical Vaper Deposition)法において、
プラズマ放電状態を定常な一定状態に保ち、複数の元素を含有する半導体薄膜をその膜厚方向に所望の組成分布(プロファイル)を形成しながら、再現性よく形成することが可能な方法および装置として、
成膜室内の放電空間内におけるガスの流れに必ずしも依存すること無く、膜厚方向に所望の組成分布(プロファイル)を形成することができ、さらには、それをよりコスト安に実現することのできる半導体薄膜の形成方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、半導体薄膜の形成方法および装置を、つぎのように構成したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明の半導体薄膜の形成方法は、半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを成膜室の放電空間内へ導入し、高周波電力を印加して該原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解し、非単結晶半導体薄膜を所望の基体上へ形成する半導体薄膜形成方法において
つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室を連結させた構成を備え、該複数の成膜室を連結させるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室を隣り合うように配置し、該隣り合う成膜室間で異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成することを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを成膜室の放電空間内へ導入し、高周波電力を印加して該原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解し、非単結晶半導体薄膜を所望の基体上へ形成する半導体薄膜形成方法において、
一つの外側成膜室に対し、一つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室を連結させた構成を備え、該複数の成膜室を連結させるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室を隣り合うように配置し、該隣り合う成膜室間で異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成することを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記基体が、連続搬送可能な導電性帯状部材であることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記高周波電力の印加が、混合ガス成分のうち分解しやすいガスの分解率がほとんど飽和し、かつ分解しにくいガスの分解率がまだ飽和しきらないような高周波電力値の印加によって行われることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記高周波電力の印加は、その高周波電力の値が帯状部材の搬送方向である長手方向に平行な方向に段階的に変化させるようにして行われることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記高周波電力の値は、帯状部材の搬送方向である長手方向に沿って、n型層形成用成膜室側へ向かって段階的に大きな電力値とすることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記一つの電力導入手段は、高周波電力とDC電力とを重畳させて電力を導入することを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記一つの電力導入手段は、成膜室や帯状部材とは電気的に絶縁された導電性材質の電極により電力の導入を行うことを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記一つの成膜室には、一つの混合用ガスミキシング設備が配され、該混合用ガスミキシング設備と前記一つ以上の原材料ガス導入手段との間を該原料ガス導入手段の個数分だけ分岐手段によって接続し、原材料ガス供給元となる前記混合用ガスミキシング設備からガスの供給を行うことを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原料材料ガスを総流量比で分配することを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原材料混合ガスのガス混合比を、同一とすることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記複数の成膜室において、該複数の成膜室間でのガスミキシング設備から供給される原材料ガスのそれぞれの総流量およびガス混合比を、同一とすることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成方法は、前記原材料ガスは、シリコンを含有する材料ガスと、炭素、ゲルマニウムのうちいずれか一つを含有する材料ガスとの混合ガスを含むことを特徴としている。
【0006】
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、成膜室と、該成膜室の放電空間内に半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを導入する原材料ガス導入手段と、該導入された原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解するため該放電空間内に高周波電力を導入する電力導入手段とを備え、所望の基体上に半導体薄膜を形成する薄膜形成装置において
つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室が連結された構成を備え、該複数の成膜室は連結されるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室が隣り合うように配置され、且つ該複数の成膜室はそれぞれ独立した異なる電力源を有し、それぞれの成膜室における電力導入手段に対し異なった電力値の電力を印加する構成を備えていることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、成膜室と、該成膜室の放電空間内に半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを導入する原材料ガス導入手段と、該導入された原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解するため該放電空間内に高周波電力を導入する電力導入手段とを備え、所望の基体上に半導体薄膜を形成する薄膜形成装置において、
一つの外側成膜室に対し、二つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室が連結された構成を備え、該複数の成膜室は連結されるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室が隣り合うように配置され、且つ該複数の成膜室はそれぞれ独立した異なる電力源を有し、それぞれの成膜室における電力導入手段に対し異なった電力値の電力を印加する構成を備えていることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記基体が、連続搬送可能な導電性帯状部材であることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記複数の成膜室は、前記連続搬送可能な導電性帯状部の搬送方向である長手方向に平行な方向に直列的に連結して配置されていることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記電力導入手段は、高周波電力とDC電力とを重畳して印加し電力を導入することが可能な構成を備えていることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記電力導入手段は、成膜室や帯状部材とは電気的に絶縁された導電性材質の電極によって構成されていることを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記一つの成膜室には、一つの混合用ガスミキシング設備が配され、該混合用ガスミキシング設備と前記一つ以上の原材料ガス導入手段との間を該原料ガス導入手段の個数分だけ分岐手段によって接続し、原材料ガス供給元となる前記混合用ガスミキシング設備からガスの供給を行うことを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原料材料ガスを総流量比で分配することが可能な構成を備えたことを特徴としている。
また、本発明の半導体薄膜の形成装置は、前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原材料混合ガスのガス混合比は変化させず同一に維持可能とする構成を備えたことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記構成のプラズマ放電方法および装置を用いることによって、数百メートルにもおよぶ長尺帯状部材に半導体層を形成するといった長時間におよぶ成膜時間全体にわたって、歩留まり良く、均一で再現性が良い放電状態を維持制御し半導体層を連続的に形成することが可能となる。これと同時に、連続的に半導体薄膜を形成可能な装置を制作するにあたり、制作コストを削減することが可能となる。とりわけ、本発明においては、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、同一の導電型の半導体薄膜を形成するための隣り合う成膜室間で、異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成することにより、膜厚方向に元素の組成比の変化をもたせて、所望の組成分布(プロファイル)を形成することができる半導体薄膜の形成方法および装置を実現したものである。
【0008】
本発明においては、基体として、連続搬送可能な導電性帯状部材を用いることができる。導電性帯状部材の材質としては、ステンレスおよびその合金、アルミニウムおよびその合金等が考えられるが、その他に、導電性性質をもった材質であれば特にこれらに限った材質である必要はない。厚さが1mm以下に圧延可能で、ボビン等にコイル状に重ねて巻いたロールにすることが可能な材質であればさしつかえない。
本発明によれば、原材料ガスのプラズマ放電空間内におけるガス流れ方向は、帯状部材の長手方向(搬送方向)と平行な方向に一致させる必要はなく、特に流れ方向が限定されるものではない。とりわけ、ガス流れ自体を画一的にある一定方向に制御することが困難な小さな成膜室内やガス流れをうまく作り出せないような部品レイアウトの成膜室内、さらには元来積極的にガス流れを作り出すような思想なく設計された成膜室等においても、特にガス流れ方向を意識すること無く、堆積膜の膜厚方向に所望の組成分布(プロファイル)を形成することができる。
【0009】
また、本発明においては、各成膜室へ印加する高周波電力の値は、帯状部材の長手方向(搬送方向)に平行な方向に段階的に変化させ、具体的には、各成膜室へ印加する高周波電力の値は、帯状部材の長手方向(搬送方向)にそって、n型層形成用成膜室側へ向かって段階的に大きな電力値とする構成を採ることができる。
上記した点を、例えば、pin型アモルファスシリコン太陽電池素子を形成する際のi型層形成工程にあてはめてみると、プラズマ放電が空間的に分離した複数個の成膜室を直列に連結したi型層形成用成膜室を使用する際、各成膜室内に一つだけ設けられた各電力導入手段に印加する高周波電力値を相隣り合う真空容器間で異なる電力値を印加することを意味する。さらに言えば、複数個のi型層形成用容器にそれぞれ印加する高周波電力値を段階的に、しかも帯状部材の長手方向(搬送方向)にそって、n型層形成用成膜室側へ向かって大きな電力値を以って印加することが望ましい。このことは、以下に述べる予備実験によって得られたものである。
【0010】
この時の複数個の成膜室からなるi型層形成用成膜室内の概念図は、図1のようになる。これは、図9に示すpin型アモルファスシリコン太陽電池素子を形成するための装置全体図において、真ん中に位置する真空容器203近傍を切り出したものと同等である。
図1において、不図示ではあるが、紙面向かって左方向にn型層形成容器があり、反対に右方向にp型層形成容器がある。帯状部材1101は紙面向かって右方向に移動する。混合ガス(例えば、GeH4とSiH4との混合ガス、混合比は一定)はそれぞれのガス導入管1112から導入され、放電空間雰囲気においてほぼ均等なガス雰囲気を形成している。各成膜室内にそれぞれ一つの棒状の電力導入手段1124が、棒の軸方向は紙面に垂直で、放電空間の搬送方向に平行な方向に対しては中央部の位置に設置されている。
【0011】
このような装置において、複数個あるi型層形成容器のうちの一つの成膜室に注目して予備実験を行った。ある一定比率の混合ガスを所定量容器内に流し、帯状部材を搬送すること無く、静止させて、プラズマ放電を一定時間生起させると、静止された上記帯状部材状には、シリコンゲルマニウム(SiGe)半導体層が堆積されることとなる(以下、静止成膜サンプルと呼ぶ)。高周波電力の値の異なる静止成膜サンプルを複数作成し、各々の静止成膜サンプル上の同様の位置において、堆積膜中のゲルマニウム(Ge)原子含有率の高周波電力依存性を測定しグラフにすると、図13(a)のようになる。
すなわち、ガス流量一定で、ガス混合比率も一定にした場合、放電空間内の所定位置においては、膜中に含有されるGe原子は、高周波電力(高周波電力密度)に依存し、電力が大きくなっていくにつれて減少していく。
本例のようにSiH4とGeH4とを含む混合ガスを使用する際には、両ガスの分解エネルギーの違いから、放電が生起した直後の電力値(低電力側)においては、混合ガス中のすべてのガスが分解されているわけではなく、より分解エネルギーの低いGeH4がSiH4に比べてより多く選択的に分解され、膜中Ge含有量の多い薄膜が堆積される。そこから高周波電力値を大きくしていくと次第にSiH4が分解する比率が上がっていく結果、膜中Ge含有量は減少していく。
そしてさらに印加電力値を大きくし、GeH4およびSiH4両ガスがほぼ100%十分に分解可能な電力値に達した後は、膜中Ge含有量は印加電力値に依存しなくなりー定値を示すようになることを図13(a)は示している。
【0012】
このことを図13(b)を用いてさらに説明する。混合ガス中の各ガス(この場合、GeH4とSiH4)について、各々の分解率を高周波電力値に対する依存性を示すと図13(b)のようになる。高周波電力が小さい領域(図中A領域)では、SiH4に比べて分解しやすいGeH4の方が分解率が高くなる。しかし、さらに高周波電力値を大きくしていくと、GeH4はほとんど全てが分解しつくし分解率は飽和し始める。その時、GeH4に比ベ分解しにくいSiH4の分解率はまだ飽和しきっていない(図中B領域)。ここからさらに高周波電力値を大きくしていくと、GeH4もSiH4もほとんど全てが分解した領域になる(図中C領域)。図13(a)の結果は、図13(b)中のB領域にて放電を行っていることに起因している。
すなわち、混合ガスの成分のうち、分解しやすいガスの分解率がほとんど飽和した領域でかつ分解しにくいガスの分解率がまだ飽和しきっていない領域において、高周波プラズマ放電を行うことで、本発明の効果が発揮されることになる。このことは、分解エネルギーの異なるガスを複数含んだ混合ガス系においては、本質的に存在する現象である。例えばSiH4とCH4とを含む混合ガス系においても同様な結果となる。
【0013】
太陽電池のi型層として複数の元素を含有する合金系半導体層を使用する際、含有される元素組成比によって決定されるバンドギャッププロファイルを有することになるのは公知である。例えば、元素組成比を膜厚方向に対し均一になるよう堆積させた場合には、そのバンドギャッププロファイルにおける伝導帯(Ec)と価電子帯(Ev)とのギャップは膜厚方向に対して均一になる(図12(a))。
一方、元素組成比を膜厚方向に対して変化させた場合には、その元素組成比を反映したかたちのバンドギャッププロファイルが得られる(図12(b))。
また、元素組成比を膜厚方向で極値を持たせて形成することもできる(図12(c))。さらに、太陽電池の変換効率を向上させるための一つの手段として、i型層の膜厚方向の元素組成比を変化させ、図12(b)や図12(c)に示すようなバンドギャッププロファイルになるよう作成することにより、光電変換効率が向上するということも公知である。本発明は、このような太陽電池のi型層のバンドギャッププロファイルを、光入射側に対して図12(b)や図12(c)に示すような形で実現させようとするものである。
【0014】
本発明は、一つの電力導入手段に対し、高周波電力とDC電力とを重畳させて電力導入することを一つの特徴とするものである。一つの成膜室内のプラズマ放電に異なる種類の電力を複数印加する際、互いに独立した電力導入手段を複数設けることも考えられるが、本発明においては、一つの成膜室に対して、一つの電力導入手段のみを設置することで、印加電力の空間的な均一性を実現させる。なぜなら、複数個の電力導入手段を一つの成膜室内に設置してしまうと、それぞれの電力導入手段から印加された高周波電力同士が干渉し合い、プラズマ放電空間内において電界分布が乱され、空間的に均一な電力分布が損なわれてしまうからである。
本発明においては、一つの電力導入手段により、成膜室や帯状部材等の周辺部材とは電気的に絶縁された導電性材質の電極によって電力導入を行うことを一つの特徴としている。このことは、マイクロ波帯等の超高周波帯をプラズマ発生電力源として構成される無電極電力導入手段、例えばセラミックス等の絶縁体窓からなるアプリケーター/導波管構造等の電力導入手段は含まないことを意味する。この電極の材質としては、ステンレスやアルミニウム、銅等の金属材料や、導電性セラミックス等、電気的に導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0015】
本発明の原材料ガスの供給は、一つの成膜室内に設置された二つ以上の原材料ガス導入手段に対し、つなぎ込む原材料ガス供給元となる混合用ガスミキシング設備は一つとし、前記一つ以上の原材料ガス導入手段とガスミキシング設備との間の任意の場所において、成膜室内に設置された原料ガス導入手段の個数分だけ分岐させて原材料ガス供給を行うことを特徴とする。
また、本発明においては、二つ以上の原材料ガス導入手段を設置した場合には、各々のガス導入手段に対し前記ガスミキシング設備から供給される原材料混合ガスのガス混合比を、各々のガス導入手段の間において同一量とし、原料材料混合ガスを総流量比で分配することを特徴とする。すなわち、成膜室へ供給されるガス混合比は、各々のガス専用の精密流量計(例えば、マスフローコントローラー等)にて調整、設定され、二つ以上設置されたガス導入手段に対するガス流量の分配比は、配管が分岐した後に流量調整手段(例えば、ニードルバルブ等)で調整し、各配管に流れるガス流量は流量計(例えば、フローメーター等)にて監視しても良い。いずれにせよ、ガスミキシング設備とガス導入手段との間に存在する配管の分岐前後において、ガスの混合比は変化させること無く、分配流量比は等量分配させてもさせなくても良い。
【0016】
さらに本発明においては、放電空間が空間的に分離された複数個の成膜室間において、ガスミキシング設備から供給する原材料ガスのそれぞれの総流量およびガス混合比は同一な値に設定しても良い。この場合、複数個の成膜室に対する混合ガス供給元であるガスミキシング設備は一つあれば良いことになり、従来成膜室各々に対して設置していた複数個のガス供給設備が大幅に削減され、装置全体のコストダウンにも効果がある。すなわち、本発明に因れば、複数の成膜室に対しそれぞれ供給する混合ガスを同一に設定しても、堆積膜の膜厚方向に対し、所望の組成分布(プロファイル)の形成が可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の方法においては、前記原材料ガスは、シリコンを含有する材料ガスと、炭素、ゲルマニウムのうちいずれか一つを含有する材料ガスとの混合ガスを含むことを特徴とする。
また、本発明の装置においては、複数の成膜室を、帯状部材の幅方向ではなく、複数個帯状部材長手方向(搬送方向)に平行な方向に直列的に連結させて配置した構造を有し、また、各成膜室内に設置された各電力導入手段に対し、それぞれ独立した異なる電力源を設置し、各々の電力導入手段に対し異なった電力値の電力の印加可能な構造を有することを特徴とする。
例えば、図2に示すように、電力導入手段として棒状の導電性電極を用いた場合、その電力導入電極の位置を、一つの成膜室内の一つの放電空間内において、帯状部材の幅方向については平行に配置し、長手方向(搬送方向)にそって、放電空間のほぼ中心部へ配置した構造とし、本成膜室を帯状部材長手方向に平行な方向に複数個、直列に連結した構造とすることが望ましい。
このような成膜室構造にすることで、放電を生起し矢印方向に搬送された帯状部材上に堆積される半導体薄膜の組成分布は、帯状部材の幅方向については、均一性が一様で、長手方向については、前記本発明における方法の項で述べた理由により、膜厚方向に対して原子組成に変化を持たせた半導体薄膜を形成することができる。
【0018】
本発明のプラズマ放電によって形成する薄膜、とりわけ半導体薄膜等の原料材料ガスとしては、シリコン原子を含有したガス化し得る化合物、ゲルマニウム原子を含有したガス化し得る化合物、炭素原子を含有したガス化し得る化合物等、及び該化合物の混合ガスを挙げることができる。
具体的にシリコン原子を含有するガス化し得る化合物としては、SiH4,SiH6,SiF4,SiFH3,SiF22,SiF3H,Si38,SiD4,SiHD3,SiH22,SiH3D,SiFD3,SiF22,SiD3H,Si233等が挙げられる。
また、具体的にゲルマニウム原子を含有するガス化し得る化合物としては、SiH4,GeD4,GeF4,GeFH3,GeF22,GeF3H,GeHD3,GeH22,GeH3D,GeH6,GeD6等が挙げられる。
さらに、具体的に炭素原子を含有するガス化し得る化合物としてはCH4,CD4,Cn2n+2(nは整数)Cn2n(nは整数),C22,C66,CO2,CO等が挙げられる。窒素含有ガスとしてはN2,NH3,ND3,NO,NO2,N2Oが挙げられる。酸素含有ガスとしてはO2,CO,CO2,NO,NO2,N2O,CH3CH2OH,CH3OH等が挙げられる。
【0019】
本発明のプラズマ放電によって形成する薄膜、とりわけ半導体薄膜の価電子制御を行うためにp型層またはn型層に導入される物質としては周期率表第III族原子及び第V族原子が挙げられる。
第III族原子導入用の出発物質として有効に使用されるものとしては、具体的にはホウソ原子導入用としては、B26,B410,B59,B511,B610,B612,B614等の水素化ホウソ、BF3,BCl3,等のハロゲン化ホウソ等を挙げることができる。このほかにAlCl3,GaCl3,InCl3,TlCl3等も挙げることができる。特にB26,BF3が適している。
第V族原子導入用の出発物質として有効に使用されるのは、具体的には燐原子導入用としてはPH3,P24等の水素化燐、PH4I,PF3,PF5,PCl3,PCl5,PBr3,PBr5,PI3等のハロゲン化憐が挙げられる。このほかAsH3,AsF3,AsCl3,AsBr3,AsF5,SbH3,SbF3,SbF5,SbCl3,SbCl5,BiH3,BiCl3,BiBr3等も挙げることができる。特にPH3,PF3が適している。
また前記ガス化し得る化合物を、H2,He,Ne,Ar,Xe,Kr等のガスで適宜希釈して堆積室に導入しても良い。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の光起電力素子を連続的に製造する方法及び装置についての実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(装置例1)
図1に、本発明によるプラズマ放電装置の外略図の一例を示す。本図における真空容器1103は、ガスゲート1106を介して複数個連結された連続真空容器(図9)の一部である。長尺の帯状部材1101を真空容器を貫通するようなかたちで複数の成膜室を通過させながら連続搬送することで、所望の層構造の半導体薄膜積層構造を連続的に形成可能となる。以下、その中の二つの真空成膜室に着目して説明を行うが、特にこの二つに限定されるものではなく、二つ以上の成膜室を連結させた場合においても効果は同様である。
【0021】
成膜室内の放電空間において高周波プラズマを生起させるために、原料材料ガスがガスミキシング設備1129に配管接続されたガス導入手段1112よりそれぞれの成膜室内へ導入される。成膜室内の圧力は、圧力計1116にて計測させる。プラズマ放電を生起させるための電力が、電力導入手段1124へ印加され、プラズマ放電が生起される。この場合、電力導入手段1124は、周辺に存在する帯状部材や成膜室とは電気的に絶縁された状態にて導入し、材質SUS−316で作成した棒状の部材であり、棒の長手方向は紙面に垂直で、帯状部材1101の長手方向(搬送方向)に平行な方向に対しては中央部の位置に設置した(図2)。さらにプラズマ放電生起時には、DCバイアス電力を電力導入手段1124を介して同時に重畳した。
【0022】
図3には、本発明によるプラズマ放電装置の外略図の他の一例を示す。一つのいわば外側成膜室内ヘプラズマ放電を空間的に分離された複数個の内側成膜室を設置している点が図1と異なるが、プラズマ放電が空間的に分離独立した一つの成膜室に対し、一つ以上の原材料ガス導入手段と、一つの電力導入手段とを有した成膜室という意味では同様である。
すなわち、内側成膜室と外側成膜室とを有するプラズマ放電装置においては、例えば、図3に示されているように、プラズマ放電が空間的に分離独立した内側成膜室に対して、一つ以上の原材料ガス導入手段と、一つの電力導入手段が備えられた構成を有している。
したがって、内側成膜室と外側成膜室とを有する形態の実施例では、この内側成膜室が本発明でいう「成膜室」に相当するものである。
図4には、本発明によるプラズマ放電装置の概略図の他の一例を示す。一つの成膜室内ヘプラズマ放電を空間的に分離された複数個の内側成膜室を設置し、なおかつ各内側成膜室内に複数個のガス導入手段を設置している点が図1と異なるが、プラズマ放電が空間的に分離独立した一つの成膜室に対し、一つ以上の原材料ガス導入手段と、一つの電力導入手段とを有した成膜室という意味では同様である。
【0023】
以上、図1、図3および図4においては、一つ以上のガス導入手段に対し、一つだけのガスミキシング手段を用い、ガス導入手段とガスミキシング設備1129、1329との間の配管を必要数分、適宜分岐させることで、一つ以上のガス導入手段ヘガス供給を行う構造である。
一方、図5、図6および図7においては、一つ以上のガス導入手段に対し、各々に独立したガスミキシング設備1129、1329を必要数分設置し、配管接続した構造を有する。この場合、各プラズマ放電空間に流す混合ガス流量は、独立したガスミキシング設備間において同一にしても良いし、異なる設定にしても良い。
【0024】
本発明の装置では、従来型の代表例であるところの図8(a)および、図8(b)の構造とは異なるものである。図8(a)においては、i型層形成容器が一つの場合の図であるが、それ故に相隣り合うの成膜室間で異なる高周波電力値を設定することは不可能である。また、図8(b)においては、電力導入手段2224が、平板状である場合を示すが、一つの成膜室しかないという同様の理由から相隣り合うの成膜室間で異なる高周波電力値を設定することは不可能である。さらに図8(a)および、図8(b)に示すようなi型層形成用成膜室を複数個直列に連結した構造の装置においても、それらに印加する高周波電力値が相隣り合う成膜室間で同じ電力値に設定した場合には、本発明の方法とは明らかに異なり、本発明の効果は得ることができないのは言うまでもない。
【0025】
[実施例1]
以下、実施例1に基づいて具体的な製作例を述べる。
図9に、本発明の作製方法を用いた実施例1におけるシングル型光起電力素子の製造装置例の簡略化した模式図を示す。該製造装置例は、帯状部材208の送り出し及び巻き取り用の真空容器201及び205、第1の導電型層作製用真空容器202、二つのi型層作製用真空容器203、第2の導電型層作製用真空容器204をガスゲート206を介して接続した装置から構成されている。
実施例1では、真空容器203の放電炉構造を図1に示したような構造の真空容器と同等である。すなわち、i型層形成用成膜室を二つ直列に連結した構造とした。さらに、この場合i型層形成用ガスミキシング設備は一つであるため、二つの真空容器203に対して流す混合ガスに関しては、両者間でガス混合比は同じで、総流量は等量分配させた。二つのi型層は、n型層側から順にi−1型層、i−2型層と区別して呼ぶことにする。
【0026】
このような製造装置を用い、表1に示す作製条件で、下部電極上に、第1の導電型層、i−1型層、i−2型層、第2の導電型層を以下に示すような作製手順により、シングル型光起電力素子を連続的に作製した(素子−実1)。
まず、基板送り出し機構を有する真空容器201に、十分に脱脂洗浄を行い、下部電極として、スパッタリング法により、銀薄膜を100nm、ZnO薄膜を1μm蒸着してあるSUS430BA製帯状部材208(幅120mm×長さ200m×厚さ0.13mm)の巻きつけられたボビン217をセットし、該帯状部材208をガスゲート、各非単結晶層作製用真空容器を介して、帯状部材巻き取り機構を有する真空容器205まで通し、たるみのない程度に張力調整を行った。
そこで、各真空容器201、202、二つの203、204、205を不図示の真空ポンプで1×10-4Torr以下まで真空引きした。
【0027】
次に、ガスゲートに各々ゲートガス導入管214よりゲートガスとしてH2を各々700sccm流し、各々ランプヒータ209により、帯状部材208を、各々350℃、350℃、350℃、300℃に加熱した。そして、第1の導電層形成容器には、SiH4ガスを60sccm、PH3ガス(H2でPH3濃度を2%に希釈したもの)を50sccm、H2ガスを500sccm、i−1型層形成容器およびi−2型層形成容器には、SiH4ガスを200sccm、SiH4ガスを100sccm、H2ガスを200sccm、第2の導電層形成容器には、SiH4ガスを20sccm、BF3ガス(H2でBF3濃度を20%に希釈したもの)を100sccm、H2ガスを2000sccm、ガス導入管212より夫々導入した。
【0028】
真空容器201内の圧力が、圧力計216で1.0Torrになるようにコンダクタンスバルブ220で調整した。真空容器202内の圧力が、圧力計216で1.5Torrになるように不図示のコンダクタンスバルブで調整した。二つの真空容器203内の圧力が、圧力計216で0.02Torrになるように不図示のコンダクタンスバルブで調整した。真空容器204内の圧力が、圧力計216で1.6Torrになるように不図示のコンダクタンスバルブで調整した。真空容器205内の圧力が、圧力計216で1.0Torrになるようにコンダクタンスバルブ220で調整した。
【0029】
その後、第1の導電層形成容器内のプラズマ電力印加電極223に、RF電力を400W導入し、i−1型層形成容器内の電力導入手段226にVHF電力を550W、DCバイアス電力を+250V重畳して導入し、i−2型層形成容器内の電力導入手段226にVHF電力を450W、DCバイアス電力を+250V重畳して導入し、第2の導電層形成容器内のプラズマ電力印加電極225に、RF電力を800W導入した。
【0030】
次に、帯状部材208を図中の矢印の方向に搬送させ、帯状部材上に、第1の導電型層を真空容器202で、i−1型層およびi−2型層を真空容器203で、第2の導電型層を真空容器204で形成した。
次に、第2の導電型層上に、透明電極として、ITO(In23+SnO2)を真空蒸着にて80nm蒸着し、さらに集電電極として、Alを真空蒸着にて2μm蒸着し、光起電力素子を作成した(素子−実1)。
以上の、光起電力素子の作成条件を表1に示す。また、素子の概念図を図10に示す。図10において、4001はSUS基板、4002はAg薄膜、4003はZnO薄膜、4004は第1の導電型層、4005はi−1型層、4006はi−2型層、4007は第2の導電型層、4008はITO、4009は集電電極である。
【0031】
(比較例1)
図9における二つのi型層形成用真空成膜室203において、二つの各電力導入手段226へ印加する高周波電力の電力値を両者同じ値にしたこと以外は、実施例1と同様の手法により、表2に示す作成条件で図10の構成のシングル型光起電力素子を連続的に作製した(素子−比1)。
実施例1(素子−実1)および比較例1(素子−比1)で作成した光起電力素子の開放電圧、短絡電流、曲線因子、光電変換効率の評価を行なった。
素子サンプルは、帯状部材上にて、10mおきに5cm角の面積で切出す際、帯状部材幅方向において中央部にて切り出した(素子サンプル数総計100個)。AM−1.5(100mW/cm2)光照射下に設置し、電流−電圧特性を測定することで開放電圧、短絡電流、曲線因子、光電変換効率を評価した。開放電圧、短絡電流、曲線因子、光電変換効率の評価には、中央部を切り出した全素子サンプルの平均値を用いた。その結果を表3に示す。各値は、素子−比1の各特性を1.00とした場合の任意値である。
【0032】
【表1】
Figure 0003787444
【0033】
【表2】
Figure 0003787444
【0034】
【表3】
Figure 0003787444
素子−実1では、素子−比1に比べ、平均開放電圧、平均短絡電流、平均曲線因子がそれぞれ向上し、その結果、平均光電変換効率が素子−比1に比べ1.05倍増加した。
【0035】
表3に示すように、比較例1(素子−比1)の光起電力素子に対して、実施例1(素子−実1)の光起電力素子は、光電変換効率において優れており、本発明の作製方法により作製した半導体薄膜素子が、電気的特性、均一性、生産性のすべてにおいて向上していることが判明し、本発明の効果が実証された。
【0036】
[実施例2]
図9における二つのi型層形成用真空成膜室203を、図3に示すような放電空間が空間的に分離された三つの内側成膜室構造を有する成膜室構造一つと置き換え、各電力導入手段1324へ印加する高周波電力の電力値の違いによる効果を検討した。それぞれの電力導入手段に印加した電力値は表5に示す。このようにしたこと以外は、実施例1と同様の手法によりシングル型光起電力素子を連続的に作製した(素子−実2−1、素子−実2−2、素子−実2−3、素子−実2−4、素子−実2−5、素子実2−6、素子−実−2−7、素子−実2−8)。図3において紙面向かって左側がn型層形成容器側であり、反対に紙面向かって右側がp型層形成容器側となる。三つのi型層形成用内側成膜室で堆積したi型層をn型層側からそれぞれ順にi−1型層、i−2型層、i−3型層とする。光起電力素子の作成条件は表4に示す。また、素子の概念図を図11に示す。図11において、4021はSUS基板、4022はAg薄膜、4023はZnO薄膜、4024は第1の導電型層、4025はi−1型層、4026はi−2型層、4027はi−3型層、402は第2の導電型層、4029はITO、4030は集電電極である。
【0037】
(比較例2)
実施例2における放電空間が空間的に分離された三つの内側成膜室構造を有する成膜室内の、各電力導入手段1324へ印加する高周波電力の電力値を、表5に示すように全て同じ値としたこと以外は、実施例1と同様の手法により、三つのi型層形成用内側成膜室光起電力素子の作成条件を表4の作成条件によって、図11の構成のシングル型光起電力素子を連続的に作製した(素子−比2)。
【0038】
【表4】
Figure 0003787444
【0039】
【表5】
Figure 0003787444
素子−実2−1、素子−実2−2、素子−実2−3、素子−実2−4、素子−実2−5、素子−実2−6、素子−実2−7、素子−実2−8における開放電圧、短絡電流、曲線因子、光電変換効率の評価を実施例1と同様の手法を用いて評価した。その結果を表5に示す。太陽電池特性の評価基準としては、◎:良好、○:やや良好、△:やや悪い、×:かなり悪いという基準とした。
【0040】
各放電容器内に印加する高周波電力を、i−1型層からi−2型層、i−3型層に向かって段階的に低くした素子−実2−1は、電力値をすべて等しくした素子比−2に比べて、非常に良好な太陽電池特性を示した。その一方で、i−1型層側で電力値を低くし膜中Ge含有量(Ge濃度)を増加させた素子−実2−3、素子−実2−5、素子−実2−8では、光電変換効率が悪化した。
【0041】
すなわち、表5に示すように、複数連結して設置したi型層形成容器では、p型層側へ向かって、印加する高周波電力値を段階的に小さくしていくことで膜中Ge含有量を減少させた膜厚方向プロファイルを実現できるため光電変換効率において優れており、本発明の効果が実証された。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると同一の導電型の半導体薄膜を形成するための隣り合う成膜室間で、異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成する構成によって、複数の種類の材料混合ガスを用いて特定の半導体層を形成する際、成膜室内の放電空間内におけるガスの流れに必ずしも依存すること無く、その膜厚方向に元素の組成比を変化をもたせて、所望の組成分布(プロファイル)の半導体薄膜を形成することが可能となり、これにより、とりわけ太陽電池等の半導体機能素子の変換効率、変換効率の面内均一性および歩留まりを向上させることができ、欠陥が少なく、コスト安の非単結晶半導体薄膜を大量に再現良く形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマ放電炉構造図の一例を示す図である。
【図2】図1の簡略化した斜視図である。
【図3】本発明のプラズマ放電炉構造図の他の一例を示す図である。
【図4】本発明のプラズマ放電炉構造図の他の一例を示す図である。
【図5】本発明のプラズマ放電炉構造図の他の一例を示す図である。
【図6】本発明のプラズマ放電炉構造図の他の一例を示す図である。
【図7】本発明のプラズマ放電炉構造図の他の一例を示す図である。
【図8】従来のプラズマ放電炉構造図の一例を示す図であり、(a)はi型層形成容器が一つの場合、(b)はi型層形成容器が一つで電力導入手段が、平板状である場合を示す図である。
【図9】本発明による他の光起電力素子製造装置例の概念的模式図である。
【図10】シングル型光起電力素子の概念的断面図である。
【図11】他のシングル型光起電力素子の概念的断面図である。
【図12】i型半導体層のフラットなバンドギャッププロファイルを示す説明図であり、(a)は膜厚方向に対して均一な状態、(b)は元組成比を膜厚方向に対して変化させた状態、(c)は元組成比を膜厚方向で極値を持たせて形成した状態のそれぞれのバンドギャッププロファイルを示す図である。
【図13】静止成膜サンプル上における膜中Ge原子含有率の高周波電力依存性を示す図であり、(a)は高周波電力と膜中Geとの関係を、(b)は高周波電力と各ガスの分解率との関係を示す図である。
【符号の説明】
201、202、203、204、205:真空容器
206:ガスゲート
208:帯状部材
209:ランプヒータ
211:排気口
212:ガス導入管
214:ゲートガス導入管
215:排気口
216:真空計
217:送り出しボビン
218:巻き取りボビン
220:コンダクタンスバルブ
221、222:ステアリングローラー
224:原材料ガス導入手段
223、225:プラズマ電力印加電極
226:電力導入手段
1101:帯状部材
1103:真空成膜室
1106:ガスゲート
1109:バイアス電力印加電極
1111:排気口
1112:ガス導入手段
1114:ゲートガス導入管
1116:真空計
1124:電力導入手段
1129:ガスミキシング設備
1301:帯状部材
1303:真空成膜室
1306:ガスゲート
1309:バイアス電力印加電極
1311:排気口
1312:ガス導入手段
1314:ゲートガス導入管
1316:真空計
1324:電力導入手段
1329:ガスミキシング設備
2101:帯状部材
2103:真空成膜室
2106:ガスゲート
2109:バイアス電力印加電極
2111:排気口
2112:ガス導入手段
2114:ゲートガス導入管
2116:真空計
2124:電力導入手段
2129:ガスミキシング設備
2201:帯状部材
2203:真空成膜室
2206:ガスゲート
2209:バイアス電力印加電極
2211:排気口
2212:ガス導入手段
2214:ゲートガス導入管
2216:真空計
2224:電力導入手段
2229:ガスミキシング設備
4001:SUS基板
4002:Ag薄膜
4003:ZnO薄膜
4004:第1の導電型層
4005:i−1型層
4006:i−2型層
4007:第2の導電型層
4008:ITO
4009:集電電極
4021:SUS基板
4022:Ag薄膜
4023:ZnO薄膜
4024:第1の導電型層
4025:i−1型層
4026:i−2型層
4027:i−3型層
4028:第2の導電型層
4029:ITO
4030:集電電極

Claims (22)

  1. 半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを成膜室の放電空間内へ導入し、高周波電力を印加して該原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解し、非単結晶半導体薄膜を所望の基体上へ形成する半導体薄膜形成方法において
    つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室を連結させた構成を備え、該複数の成膜室を連結させるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室を隣り合うように配置し、該隣り合う成膜室間で異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成することを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
  2. 半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを成膜室の放電空間内へ導入し、高周波電力を印加して該原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解し、非単結晶半導体薄膜を所望の基体上へ形成する半導体薄膜形成方法において、
    一つの外側成膜室に対し、一つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室を連結させた構成を備え、該複数の成膜室を連結させるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室を隣り合うように配置し、該隣り合う成膜室間で異なる電力値の高周波電力を印加して半導体薄膜を形成することを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
  3. 前記基体が、連続搬送可能な導電性帯状部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体薄膜の形成方法。
  4. 前記高周波電力の印加が、混合ガス成分のうち分解しやすいガスの分解率がほとんど飽和し、かつ分解しにくいガスの分解率がまだ飽和しきらないような高周波電力値の印加によって行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  5. 前記高周波電力の印加は、その高周波電力の値が帯状部材の搬送方向である長手方向に平行な方向に段階的に変化させるようにして行われることを特徴とする請求項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  6. 前記高周波電力の値は、帯状部材の搬送方向である長手方向に沿って、n型層形成用成膜室側へ向かって段階的に大きな電力値とすることを特徴とする請求項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  7. 前記一つの電力導入手段は、高周波電力とDC電力とを重畳させて電力を導入することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  8. 前記一つの電力導入手段は、成膜室や帯状部材とは電気的に絶縁された導電性材質の電極により電力の導入を行うことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  9. 前記一つの成膜室には、一つの混合用ガスミキシング設備が配され、該混合用ガスミキシング設備と前記一つ以上の原材料ガス導入手段との間を該原料ガス導入手段の個数分だけ分岐手段によって接続し、原材料ガス供給元となる前記混合用ガスミキシング設備からガスの供給を行うことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  10. 前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原料材料ガスを総流量比で分配することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  11. 前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原材料混合ガスのガス混合比を、同一とすることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  12. 前記複数の成膜室において、該複数の成膜室間でのガスミキシング設備から供給される原材料ガスのそれぞれの総流量およびガス混合比を、同一とすることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  13. 前記原材料ガスは、シリコンを含有する材料ガスと、炭素、ゲルマニウムのうちいずれか一つを含有する材料ガスとの混合ガスを含むことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成方法。
  14. 成膜室と、該成膜室の放電空間内に半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを導入する原材料ガス導入手段と、該導入された原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解するため該放電空間内に高周波電力を導入する電力導入手段とを備え、所望の基体上に半導体薄膜を形成する薄膜形成装置において
    つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室が連結された構成を備え、該複数の成膜室は連結されるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室が隣り合うように配置され、且つ該複数の成膜室はそれぞれ独立した異なる電力源を有し、それぞれの成膜室における電力導入手段に対し異なった電力値の電力を印加する構成を備えていることを特徴とする半導体薄膜の形成装置。
  15. 成膜室と、該成膜室の放電空間内に半導体薄膜の原料となる物質を複数含有する原材料混合ガスを導入する原材料ガス導入手段と、該導入された原材料混合ガスをプラズマ放電によって分解するため該放電空間内に高周波電力を導入する電力導入手段とを備え、所望の基体上に半導体薄膜を形成する薄膜形成装置において、
    一つの外側成膜室に対し、二つ以上の原材料ガス導入手段と一つの電力導入手段とをそれぞれに有する複数の成膜室が連結された構成を備え、該複数の成膜室は連結されるに当たり同一の導電型の半導体薄膜を形成するための成膜室が隣り合うように配置され、且つ該複数の成膜室はそれぞれ独立した異なる電力源を有し、それぞれの成膜室における電力導入手段に対し異なった電力値の電力を印加する構成を備えていることを特徴とする半導体薄膜の形成装置。
  16. 前記基体が、連続搬送可能な導電性帯状部材であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の半導体薄膜の形成装置。
    に記載の半導体薄膜の形成装置。
  17. 前記複数の成膜室は、前記連続搬送可能な導電性帯状部の搬送方向である長手方向に平行な方向に直列的に連結して配置されていることを特徴とする請求項16に記載の半導体薄膜の形成装置。
  18. 前記電力導入手段は、高周波電力とDC電力とを重畳して印加し電力を導入することが可能な構成を備えていることを特徴とする請求項14〜請求項17のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成装置。
  19. 前記電力導入手段は、成膜室や帯状部材とは電気的に絶縁された導電性材質の電極によって構成されていることを特徴とする請求項14〜請求項18のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成装置。
  20. 前記一つの成膜室には、一つの混合用ガスミキシング設備が配され、該混合用ガスミキシング設備と前記一つ以上の原材料ガス導入手段との間を該原料ガス導入手段の個数分だけ分岐手段によって接続し、原材料ガス供給元となる前記混合用ガスミキシング設備からガスの供給を行うことを特徴とする請求項14〜請求項19のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成装置。
  21. 前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原料材料ガスを総流量比で分配することが可能な構成を備えていることを特徴とする請求項14〜請求項20のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成装置。
  22. 前記一つ以上の原材料ガス導入手段において、各々のガス導入手段に対し原材料混合ガスのガス混合比は変化させず同一に維持可能とする構成を備えていることを特徴とする請求項14〜請求項21のいずれか1項に記載の半導体薄膜の形成装置。
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