JP3786864B2 - 焼結製品の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂インサートに適した焼結製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インサート品を装填した金型内に樹脂を注入して、インサート品と溶融樹脂とを一体化した複合部品を製造するインサート工法が知られている。インサート工法では、樹脂と金属のように異なる性質を有する複数種の材質を一体に備える複合部品を作業性よく製造することができ、たとえばインサート品として焼結部品を樹脂部品と一体化することにより、無給油駆動が可能な複合部品を容易に得ることができる。
【0003】
樹脂部品と焼結部品とからなる複合部品には一般に、ラジアル荷重、スラスト荷重あるいはその両方が加えられるため、樹脂インサートされる焼結部品には、樹脂部品に対する回転を防止する回転止め形状や、埋め込まれた樹脂部品からの軸方向脱落を防止する抜け止め形状を設ける必要がある。
【0004】
焼結部品の樹脂部品に対する回転は、たとえば図3に示すような部品50の外周面51に、軸方向全長にわたる直線溝52を設けて、この直線溝52に樹脂を入り込ませることにより防止することができる。この直線溝52は、部品50を成形する金型の内周面に圧縮方向に延びる凸条を形成することにより、圧粉体を形成する圧縮成形時あるいは焼結後のサイジング(再圧縮)時に形成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
また、焼結部品の樹脂部品からの軸方向脱落は、上述した部品50の外周面51に、たとえば図4に示すように周溝53を設けて、この周溝53に樹脂を入り込ませることにより防止することができる。しかしながら、この周溝53の形状はアンダーカット形状となるため、直線溝52のように金型で形成することができず、機械加工により形成しなければならない。このため、抜け止め形状と回転止め形状の両方を有する焼結部品の製造には、樹脂インサート成形の他にさらに機械加工を行うための装置、加工時間を要しており、加工性が悪く、製造コストが嵩んでしまい、生産性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、樹脂インサートに好適な、抜け止め形状および回転止め形状を有する焼結部品を、容易にかつ低コストで提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る焼結製品の製造方法は、材料粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を焼結して円筒状の焼結体を形成した後に、この焼結体にサイジングを施して、樹脂インサート成形のインサート品として用いられる焼結製品を形成する焼結製品の製造方法であって、サイジング用の矯正金型のキャビティ内で前記焼結体にサイジングを施す際、前記キャビティの形成面に形成された凸条を、この焼結体の外周面に食い込ませることにより、その外周面において互いに軸方向に一致しない位置に、両端面からそれぞれその端面にかかり軸方向に沿ってその途中まで延びる有底溝を形成することを特徴としている。
【0008】
この発明により形成された焼結製品によれば、製品外周面に軸方向に延びかつ軸方向途中に端面を有する有底溝が設けられているので、この製品をインサート品として樹脂インサート成形した場合には、この有底溝中に樹脂が入り込み硬化することにより、有底溝の側面が樹脂部分との相対回転を抑止できるとともに、有底溝の端面が樹脂部分の軸方向への相対移動すなわち抜けを抑止することができる。このような有底溝は、焼結体のサイジング(再圧縮用)の矯正金型により容易に形成することができるので、抜け止め形状および回転止め形状を有する焼結製品を、容易かつ低コストで提供することができる。
【0009】
また、この発明により形成された焼結製品によれば、さらに有底溝が軸方向反対向きにも設けられていることにより、焼結製品は樹脂部分に対して軸方向いずれの方向に対しても移動しないので、焼結製品の樹脂部分からの抜けをより確実に防止することができる。
【0010】
さらに、この発明により形成された焼結製品によれば、有底溝を軸方向に一致させないことにより、インサート品として樹脂インサート成形したときの樹脂の流れが良好となるので、樹脂部品に対して確実に固定され、安定して使用することができる。
また、有底溝を焼結製品の長さの1/2以上の長さで設けることができるので、より強い回転防止力を有する焼結製品を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1に、本発明の一実施形態による焼結製品10を示す。この焼結製品10は、材料粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を焼結、サイジング(再圧縮)して形成されていて、外周面11に有底溝12A、12Bがそれぞれ1本以上(本実施形態では等間隔に4本ずつ)設けられている。
【0012】
有底溝12Aは一方の端面13にかかり軸方向に沿ってその途中まで延びていて、有底溝12Aに対し反対向きに設けられた有底溝12Bは、他方の端面14にかかり軸方向に沿ってその途中まで延びている。これらの有底溝12A、12Bは、本実施形態では有底溝12Aと有底溝12Bとが交互に45°間隔で、互いに軸方向に一致しないように設けられている。
【0013】
このような形状の焼結製品10は、インサート品として樹脂部品中にインサートされると、有底溝12A、12Bの側面が樹脂部分との相対回転を抑止するとともに、有底溝12A、12Bの端面が樹脂部分の軸方向への相対移動すなわち抜けを抑止するので、ラジアル荷重あるいはスラスト荷重を受けても樹脂部品から脱落しにくく、安定して使用することができる。
【0014】
上述した有底溝12A、12Bは、材料粉末の圧縮成形時や、焼結後のサイジング(再圧縮)時に形成することができる。以下に、焼結後の再圧縮によって有底溝12A、12Bを形成する場合について説明する。
【0015】
図2に、材料粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を焼結した円筒状の焼結体15に、本実施形態の焼結製品10の有底溝12A、12Bを形成するための金型の概略を示す。この金型は、焼結体15を再圧縮して形状精度を向上させるためのサイジング(再圧縮)用の矯正金型20であって、軸方向に移動されるロアーパンチ22、アッパーパンチ27およびコアロッド26を備え、ダイ21に形成された貫通孔21a内に配置されたロアーパンチ22、アッパーパンチ27およびコアロッド26の間に、焼結製品10を成形するための円筒状のキャビティCが形成される。なお、図2は左半分が圧縮前、右半分が圧縮時を示しており、この矯正金型20によって再圧縮される前の焼結体15は、図2左側に示すように凹凸のない円筒状に形成されている。
【0016】
ロアーパンチ22は、ダイ21の貫通孔21aに嵌挿された円筒状の第1ロアーパンチ23と、この第1ロアーパンチ23の内側に嵌挿された円筒状の第2ロアーパンチ24とを備えている。第1ロアーパンチ23の上端内周部分には、焼結製品10の外周面下部を形成する円筒状のブロック25が固定されている。
【0017】
ブロック25は、その内周面がキャビティCの外周面下部の形成面であって、内周面下端から軸方向に沿って途中まで延びる、有底溝12Bを形成するための凸条25aが形成されている。第1ロアーパンチ23の内径はこの凸条25aの内径に一致し、第2ロアーパンチ24の外周面に嵌合するように設定されている。第1ロアーパンチ23およびブロック25の内側に嵌合されて摺動可能な第2ロアーパンチ24の内側にはコアロッド26が嵌合していて、第2ロアーパンチ24の内径およびコアロッド26の外径は、焼結体15(焼結製品10)の内径に一致している。
【0018】
アッパーパンチ27は、円筒状の第1アッパーパンチ28と、この第1アッパーパンチ28の内側に嵌挿された円筒状の第2アッパーパンチ29とを備えている。第1アッパーパンチ28の下端内周部分には、焼結製品10の外周面上部を形成する円筒状のブロック30が固定されている。
【0019】
ブロック30は、その内周面がキャビティCの外周面上部の形成面であって、内周面上端から軸方向に沿って途中まで延びる、有底溝12Aを形成するための凸条30aが形成されている。第1アッパーパンチ28の内径はこの凸条30aの内径に一致し、第2アッパーパンチ29の外周面に嵌合するように設定されている。第1アッパーパンチ28およびブロック30の内側に嵌合されて摺動可能な第2アッパーパンチ29の内側にはコアロッド26が嵌合可能であり、第2アッパーパンチ29の内径およびコアロッド26の外径は、焼結体15(焼結製品10)の内径に一致している。
【0020】
つぎに、以上のように構成された矯正金型20による有底溝12A、12Bの形成について説明する。
まず、図2左側に示すように、アッパーパンチ27を上昇させるとともに、ロアーパンチ22の上面をダイ21上面に一致させておき、第2ロアーパンチ24上に焼結体15を載置する。そして、第1アッパーパンチ28および第2アッパーパンチ29を下降させて、焼結体15の端面13、14を第2アッパーパンチ29下面および第2ロアーパンチ24上面により拘束するとともに、ブロック30およびブロック25を焼結体15の外側に嵌め、コアロッド26を焼結体15の内側に嵌め込む。
【0021】
さらに、図2右側に示すように、ダイ21内で第1アッパーパンチ28(ブロック30)下面と第1ロアーパンチ23(ブロック25)上面とが当接するまでアッパーパンチ27とロアーパンチ22とを下降させて互いに押圧することにより、焼結体15がキャビティCの形状に沿うように塑性変形される。すなわち、焼結体15は、矯正金型20により各部が精度の良好な形状に再圧縮成形されるとともに、外周面11にブロック25の凸条25aおよびブロック30の凸条30aが食い込んで有底溝12A、12Bが形成されることにより、焼結製品10としての形状に矯正される。
【0022】
なお、前記実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。前記実施形態では、両端面13、14にそれぞれ有底溝12A、12Bを形成することにより両方向からのスラスト荷重に耐えうる焼結製品を示したが、軸受に加えられるスラスト荷重が一方向からのみの場合には、いずれか一方の端面のみから延びる有底溝を形成するだけでもよい。また、前記実施形態では、有底溝を矯正金型により形成したが、これを圧粉成形時に形成することも可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る焼結製品の製造方法より形成された焼結製品によれば、製品外周面に軸方向に延びかつ軸方向途中に端面を有する有底溝が設けられているので、この製品をインサート品として樹脂インサート成形した場合には、この有底溝中に樹脂が入り込み硬化することにより、有底溝の側面が樹脂部分との相対回転を抑止できるとともに、有底溝の端面が樹脂部分の軸方向への相対移動すなわち抜けを抑止することができる。
また、このような有底溝は、焼結体の矯正金型により容易に形成することができるので、抜け止め形状および回転止め形状を有する焼結製品を、機械加工を行うことなく、容易かつ低コストで提供することができる。
【0024】
また、この発明により形成された焼結製品によれば、さらに有底溝が軸方向反対向きにも設けられていることにより、焼結製品は樹脂部分に対して軸方向いずれの方向に対しても移動しないので、焼結製品の樹脂部分からの抜けをより確実に防止することができる。
【0025】
さらに、この発明により形成された焼結製品によれば、有底溝を軸方向に一致させないことにより、インサート品として樹脂インサート成形したときの樹脂の流れが良好となるので、樹脂部品に対して確実に固定され、安定して使用することができる。
また、有底溝長さを製品長さの1/2以上に設けることができるので、より強い回転防止力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による焼結製品を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す焼結製品を形成する金型を示す断面図である。
【図3】 従来の回転止め形状を有する焼結製品を示す斜視図である。
【図4】 従来の回転止めおよび抜け止め形状を有する焼結製品を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 焼結製品
11 外周面
12A、12B 有底溝
13、14 端面
Claims (1)
- 材料粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を焼結して円筒状の焼結体を形成した後に、この焼結体にサイジングを施して、樹脂インサート成形のインサート品として用いられる焼結製品を形成する焼結製品の製造方法であって、
サイジング用の矯正金型のキャビティ内で前記焼結体にサイジングを施す際、前記キャビティの形成面に形成された凸条を、この焼結体の外周面に食い込ませることにより、その外周面において互いに軸方向に一致しない位置に、両端面からそれぞれその端面にかかり軸方向に沿ってその途中まで延びる有底溝を形成することを特徴とする焼結製品の製造方法。
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