JP3785532B2 - 基底膜の調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った細胞外マトリックスである基底膜の調製方法や、かかる基底膜の調製方法により得られる組織モデルや、かかる組織モデルを含むテストティッシュキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
動物の体の内外の表面を覆っている細胞層である表皮、角膜上皮、肺胞上皮、消化器系の粘膜上皮、腎臓子球体上皮、肝実質細胞等の上皮組織は、外界から異物(微生物、アレルゲン、化学物質等)が侵入するのを防いでいる。かかる上皮組織を構成する上皮細胞の外界面は上端面(apical)、内側下面は基底面(basal)と呼ばれ、かかる基底面直下には、蛋白質やプロテオグリカン等の細胞外基質(ECM)から成る(細胞を含まない)基底膜と呼ばれる50〜100nmの薄膜の構造体が存在する。基底膜は、未成熟な上皮細胞が増殖し、成熟した細胞に分化して、本来の形態や、機能を発現するのに必須の構造体と考えられている。即ち、基底膜なしでは上皮組織は自分自身の維持や本来のパフォーマンスが達成できない。多層又は単層の上皮細胞層はバリアーとして外界からの異物の侵入を防いでいるが、基底膜自体も物理的なバリアーとして作用する。このように、上皮組織を構成する上皮細胞と基底膜が協働して、強固なバリアーを形成し、体内の生命活動を保護している。
【0003】
上皮細胞の他、内皮細胞、筋細胞、脂肪細胞、シュワン細胞などの実質細胞と結合組織との界面に形成される細胞外基質の特異な膜状構造物である基底膜は、生体の各組織・臓器に普遍的に見い出される一方で、腎糸球体毛細血管ループや神経シナプス膜など高度に特化したものもある。したがって、細胞を間質に接着させるだけでなく、選択的な物質・細胞透過や細胞分化の誘導等の機能が明らかにされている。腎糸球体では、基底膜の陰性荷電が腎のろ過機能を担っているとみなされ、その陰性荷電は現在パールカンとよばれるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)によることが古典的に知られている。HSPGは腎糸球体基底膜だけでなく、種々の基底膜に、IV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン等と同様に、その基本的構成分子としてひろく分布している。
【0004】
細胞外マトリックス、特に基底膜は、上記のように個体の発生や分化等の生理現象だけでなく、癌の増殖転移や炎症などの病態形成にも深く関与していることが明らかとなりつつあり、その構成タンパク質の機能の解明が重要な課題となってきている。例えば、基底膜の主要糖タンパク質であるラミニンは、α、β、γの3種類のサブユニットからなる複合体で、15種類のアイソフォームが知られており、これらが組織特異的あるいは発生時の各段階で特異的に発現している。ラミニンは様々な生物活性を有し、20種類以上のラミニンレセプターが報告されている分子量90万の複雑な巨大分子である。
【0005】
細胞が接着可能な薄い細胞外マトリックス層である基底膜の構成成分と上皮細胞との相互作用が、移動、増殖及び分化等の細胞機能に影響を及ぼしている(Crouch et al., Basement membrane. .In The Lung(ed .R. G. Crystal and J. B.West), pp53.1-53.23. Philadephia : Lippincott-Raven. 1996)。基底膜の主要成分としては、前記のように、ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)及びエンタクチンが知られており(Curr. Opin. CellBiol. 6, 674-681, 1994)、ラミニン及びIV型コラーゲンのアイソフォームを含む基底膜成分の合成には、間充織細胞が重要な役割を担っていると考えられている(Matrix Biol. 14, 209-211, 1994、J.Biol. Chem. 268, 26033-26036, 1993)が、上皮細胞の役割もまた、重要なものである。HSPGは、上皮細胞由来と考えられているが、ラミニン、IV型コラーゲン及びエンタクチンは、上皮細胞及び間充織細胞の双方によって、インビボで合成される(Development 120, 2003-2014, 1994、Gastroenterology 102, 1835-1845, 1992)。連続した緻密層(lamina densa)を示すインビトロでの上皮組織モデルを作製する試みが、今まで数多く行われてきた。腸(J. Cell Biol.133, 417-430, 1996)及び皮膚(J. Invest. Dermatol. 105, 597-601, 1995、J. Invest. Dermatol. 109, 527-533, 1997、Dev. Dynam. 197, 255-267, 1993)等の組織モデルが研究されており、いくつかの間充織細胞由来基底膜成分が、基底膜形成に重要な役割を果たしていることも見い出されている。
【0006】
従来から、上皮細胞を培養することにより基底膜を構築し、基底面直下に基底膜構造体が存する上皮組織を構築する幾つかの方法が報告されている。例えば、本発明者らは、肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共培養によりインビトロで基底膜が形成されることを報告した(Cell Struc.Func., 22: 603-614, 1997)。すなわち、肺線維芽細胞をI型コラーゲンゲルに包埋した状態で順化培養すると、肺線維芽細胞によってコラーゲンゲルは収縮し堅さを増し、また分泌された細胞外基質が細胞周囲のコラーゲン線維にまとわりついて沈着し、その形成物はインビボにおける間質と類似することから擬似間質と呼ばれ、この擬似間質化したI型コラーゲン線維上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を14日間程度培養する(T2-Fgel)と、肺線維芽細胞が分泌する細胞外基質中のIV型コラーゲンやラミニン等の基底膜構成成分が培地中に拡散して、上記II型肺胞上皮細胞株の基底面に到達し、基底膜構築材料として使われる結果、基底膜構造体が形成されることを報告した。
【0007】
また、希薄な中性コラーゲン溶液を、5%CO2中37℃でインキュベートし、コラーゲン線維を形成させた後、無菌状態の中で風を当てて乾燥させた風乾コラーゲン線維基質(fib)を、上記擬似間質の代替物として用い、上記肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共培養の場合と同様にして、基底膜を形成することも報告されている(Eur. J. Cell Biol., 78: 867-875, 1999, J. Cell Sci., 113:859-868, 2000)。この方法の場合、コラーゲン溶液の濃度が高いと、形成されたコラーゲン線維に隙間が少なく、あるいはなくなって、基底膜形成のため上皮細胞を長期間培養(10日〜2週間)すると、細胞が剥がれて浮き上がることから(例:Becton Dickinson, Fibrillar collagen coat culture insert)、コラーゲン溶液濃度は、0.3〜0.5mg/mlが最適であるとされている(Eur.J. Cell Biol., 78: 867-875, 1999, J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。
【0008】
線維芽細胞を包埋したコラーゲンマトリックスを使用する代わりに、マトリゲル(Matrigel;Becton Dickinsonの登録商標)を加えたコラーゲン線維基質上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を培養した。このときマトリゲルは、基底膜成分の外来性(exogenous)供給源として機能した。マトリゲルは、Engelbreth-Holm-Swarm腫瘍マトリックスから抽出された基底膜調製物であり(J. Exp. Med.145, 204-220, 1977)、ECM合成に影響を及ぼす可能性のある種々のサイトカインの他に、ラミニン−1、エンタクチン、IV型コラーゲン、パールカンを含んでいる(Exp. Cell Res. 202, 1-8, 1992)。基底膜に取り込まれたマトリゲルの成分を追跡するために、マトリゲルをビオチンで標識し、基底膜成分であるラミニン、エンタクチン、IV型コラーゲン、パールカンの免疫蛍光染色と電子顕微鏡観察により、マトリゲル量に依存して基底膜形成が促進し、点状に分泌された基底膜マトリックスがシート状に沈着して基底膜が発達してゆく過程が観察された。その結果、肺胞上皮細胞の下方にて、安定化した外来性ラミニン−1及びエンタクチンが、インビトロでの上記上皮細胞による基底膜の完全なる発達に大きく関与していることが明らかになっている(J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、線維性コラーゲン基質上に肺胞上皮細胞を培養する際に、線維芽細胞の順化、TGF−β又はマトリゲルの存在下で培養することにより、上皮細胞直下の基質に基底膜構造体を形成させる方法等について研究を進め、II型肺胞上皮細胞の場合、図1に示されるように、II型肺胞上皮細胞を、カルチャーインサートの上部ウェルの肺線維芽細胞マトリックス基層(線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル)上で培養した場合(T2-Fgel)、下部ウェルに肺線維芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib-Fcm)、下部ウェルにコーティングされたマトリゲルの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib-MG)、上部ウェル及び下部ウェルの成長因子TGF−βの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib-TGFβ)に基底膜が形成されることを確認したが、II型肺胞上皮細胞が内在性の(endogenous)基底膜成分を有効に活用できないために、例えば線維芽細胞、マトリゲル等の外来性の基底膜成分や成長因子TGF−βの供給を仰がなければ、II型肺胞上皮細胞は基底膜を構築できないことも確認した。しかし、基底膜構成成分や成長因子TGF−βを細胞外に分泌する線維芽細胞を用いる場合は、培養中にゲル収縮を起こしプラスチック膜上から肺胞上皮とともに剥がれてしまうトラブルが起こりやすいという問題や、基底膜標品を作るとき線維芽細胞が包埋されていると試薬等が残りやすく、その除去操作が煩雑であるという問題や、また、細胞の一部が残っていると抗原となるという問題や、さらに、基底膜を形成する上での培養が複雑となるという問題があった。また、基底膜構成成分の供給源としてマトリゲル等の線維芽細胞代替物や成長因子TGF−βを用いる場合は、これらマトリゲルや成長因子TGF−βが高価であり、コスト面で有利ではないという問題があった。
【0010】
他方、内皮細胞(EC)による基底膜の構築についても検討した。内皮細胞の基底面直下に存在する基底膜も、内皮細胞の機能発現と維持に寄与しており、内皮細胞の基底膜は、炎症性細胞が血管から組織に侵入する際、あるいはガン細胞が転移する際の障壁の役割を果たしているが、血管内皮細胞の基底膜は、上皮細胞の様に容易には形成されない。血管内皮細胞による基底膜形成においては、II型肺胞上皮細胞の場合と異なり、図2に示されるように、上部ウェルの線維芽細胞マトリックス基層上で培養した場合(EC-Fgel)、下部ウェルに肺線維芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(EC-fib-Fcm)、下部ウェルにコーティングされたマトリゲルの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(EC-fib-MG)、上部ウェルの線維性コラーゲン基質上で培養した場合(EC-fib)には、(EC-Fgel)の場合を除き基底膜が形成されなかった。
【0011】
本発明の課題は、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った細胞外マトリックスである基底膜の調製方法、特に上皮細胞、内皮細胞等の基底膜形成能を有する細胞が内在性の基底膜成分を有効に活用しうる基底膜の調製方法や、かかる基底膜の調製方法により得られる組織モデルや、かかる組織モデルを含むテストティッシュキットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上皮細胞、内皮細胞等の基底膜形成能を有する細胞や線維芽細胞から細胞外に分泌された基底膜成分は、それ自体だけでは基底膜構造体を形成することができず、上皮細胞、内皮細胞等の基底膜形成能を有する細胞、特にその基底面に局在すると考えられているレセプターが必要であるが、かかるレセプターの実体は単一蛋白かどうかも含めて現在のところよくわかっていない。本発明者は、基底膜形成のメカニズムを鋭意研究する過程で、インビトロで特定の糖鎖、すなわち基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる糖鎖、例えばβ−D−グルコピラノース(β-D-glucopyranosyl)非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース(2-acetoamide-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)非還元末端をもつ糖鎖を有するポリマーに、II型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞が接着することができることから、II型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞は、その基底面にこれら糖鎖のレセプターを発現しているとの知見を得た。次いで、上記ポリマーをコーティングした線維性コラーゲン基層上でII型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞を培養したところ、II型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞直下にインビボ同様なバリヤー機能を有する基底膜が形成されることを見い出した。かかる基底膜の形成に際しては、マトリゲル等の基底膜成分の供給やTGF−βの添加は必要としなかったが、マトリゲルを添加すると、基底膜の構築は著しく昂進し、培養期間は1週間で十分であり、基底膜も数倍厚くなることがわかった。このことは、前記糖鎖に対するレセプターが関与して基底膜の形成が昂進した結果であるとの知見を得た。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち本発明は、基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる、β−D−グルコピラノース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを特徴とする基底膜の調製方法(請求項1)や、糖鎖を備えた支持体の相対する2つの基層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを特徴とする請求項1記載の基底膜の調製方法(請求項2)や、基底膜構成成分として、基底膜形成能を有する細胞から分泌された成分を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の基底膜の調製方法(請求項3)や、糖鎖又は糖鎖の一部がレセプターと結合することにより、基底膜形成能を有する細胞を支持体上に接着しうる糖鎖を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項4)や、レセプターと結合する糖鎖又は糖鎖の一部が基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることを特徴とする請求項4記載の基底膜の調製方法(請求項5)や、糖鎖を備えた支持体が、糖鎖を有するポリマーをコーティングした支持体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項6)に関する。
【0014】
また本発明は、基底膜形成能を有する細胞を、線維芽細胞又はマトリゲル(登録商標)と共培養することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項7)や、基底膜形成能を有する細胞を、基底膜構成成分の1種又は2種以上の存在下で培養することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項8)や、基底膜形成能を有する細胞を、TGF−β(トランスフォーミング増殖因子)の存在下で培養することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項9)や、基底膜形成能を有する細胞が、上皮細胞、内皮細胞又は間充織細胞であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項10)や、基底膜形成能を有する細胞及び/又は線維芽細胞が、基底膜構成成分の1種又は2種以上の遺伝子が導入された、基底膜構成成分高発現細胞であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項11)や、支持体が、線維性コラーゲンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項12)に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の基底膜の調製方法としては、特定の糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる、β−D−グルコピラノース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養する方法であれば特に制限されるものではなく、上記基底膜形成能を有する細胞としては上皮細胞、内皮細胞、間充織細胞などを挙げることができ、上記上皮細胞としては表皮細胞、角膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化器系の粘膜上皮細胞、腎臓子球体上皮細胞、肝実質細胞等を、上記内皮細胞としては腎臓子球体毛細血管内皮細胞、肺動脈血管内皮細胞、胎盤静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞等を、間充織細胞としては筋細胞、脂肪細胞、グリア細胞、シュワン細胞等をより具体的に例示することができる。
【0016】
基底膜の調製には、ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エンタクチン等の基底膜構成成分が必要とされ、また個々の基底膜形成能を有する細胞は基底膜構成成分を分泌するが、かかる細胞から分泌される基底膜構成成分は、細胞の基底面(下面)から線維性コラーゲンマトリックスが形成する細胞外基質の内部に向かって分泌される。したがって、分泌された基底膜成分の大部分は基底面表面から離れてしまい反対側から培地中に拡散したり、途中で蛋白質分解酵素に分解されたりして、通常有効利用されない。しかし、本発明の基底膜の調製方法においては、特定の糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することにより、上記上皮細胞や内皮細胞などの基底膜形成能を有する細胞から分泌される内生の基底膜構成成分を好適に活用することができる。
【0017】
また、糖鎖を備えた支持体の相対する2つの基層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養する本発明の方法、例えば、多孔性メンブレン膜の両側に線維性コラーゲンを作製し、その両側に上皮細胞と血管内皮細胞の組み合わせなど、2種類の基底膜形成能を有する細胞を播種・培養すると、基底膜形成能を有する細胞から分泌される内生の基底膜構成成分の拡散が防止され、基底膜成分の有効利用率を高めることができる。すなわち、一方の細胞が分泌する基底膜構成成分が、線維性コラーゲンの反対側に位置する他方の細胞に辿り着き、かかる細胞が形成する細胞−細胞間結合(密着結合)で隙間の無い障壁により阻まれて、培地中に拡散することがなく、その結果、基底膜成分の有効利用率を高めることができる。図3の上段には、コラーゲンゲル包埋線維芽細胞存在下、コラーゲン線維を介しての上皮細胞と血管内皮細胞の共培養による基底膜の形成(左)、本発明の糖鎖を備えた支持体であるコラーゲン線維の薄膜を介しての上皮細胞と血管内皮細胞の共培養による基底膜の形成(中)、コラーゲン線維を介しての上皮細胞と線維芽細胞の共培養による基底膜の形成(右)が模式的に示されており、また、図3の下段には、所望の細胞組織ではない方の細胞組織、すなわち、血管内皮組織(左)、上皮組織(中)、線維芽細胞(右)を機械的に剥がして取り除いた状態が示されている。これら細胞の組合せとしては、上皮細胞と血管内皮細胞、上皮細胞と上皮細胞、内皮細胞と内皮細胞、上皮細胞又は内皮細胞と一部の間充織細胞等が考えられる。上記支持体としては、線維性コラーゲン膜や線維性コラーゲンマトリックスの他、多孔性PET膜、エラスチン(ポリマー)膜を例示することができる。
【0018】
そして、本発明の基底膜の調製方法においては、これら基底膜形成能を有する細胞から分泌される内生の基底膜構成成分に加えて、外生の基底膜構成成分等をも利用して短期間で基底膜を調製することができるように、基底膜構成成分及びTGF−βを分泌する線維芽細胞、好ましくは線維芽細胞の順化培地や、基底膜構成成分を豊富に含有するマトリゲルなどの線維芽細胞代替物と共培養することもできる。また、同様に短期間で基底膜を調製することができるように、基底膜形成能を有する細胞を、別途調製されたラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エンタクチン等の基底膜構成成分の1種又は2種以上の存在下で培養したり、TGF−βの存在下で培養することもできる。上記ラミニンやHSPGは市販品が用いることができ、IV型コラーゲンとしては、牛レンズカプセルから酢酸抽出したものを有利に用いることができる。
【0019】
上記ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エンタクチン等の基底膜構成成分やTGF−βを用いる方法は、コスト高になることから、本発明の基底膜の調製方法において用いられる、基底膜形成能を有する細胞や線維芽細胞として、基底膜構成成分の1種又は2種以上の遺伝子が導入された基底膜構成成分高発現細胞や、TGF−βの遺伝子が導入された成長因子高発現細胞を選抜・使用することができる。
【0020】
本発明の基底膜の調製方法における特定の糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる、β−D−グルコピラノース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖としては、糖鎖又は該糖鎖の一部が上記レセプターと結合することにより、基底膜形成能を有する細胞を支持体上に接着しうる糖鎖、中でも、レセプターと結合する糖鎖又は該糖鎖の一部が前記基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることが好ましい。また、本発明における糖鎖を備えた支持体としては、かかる糖鎖を有する一体成形体、あるいは、糖鎖を有するポリマーをコーティングした支持体であることが好ましく、該糖鎖を有するポリマーとしては、β−D−グルコピラノース(β-D-glucopyranosyl)非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース(2-acetoamide-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーを例示することができる。また、かかるβ−D−グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーとしてはPV-CAやPV-Lam等、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーとしてはPV-GlcNAc等のビニル系モノマーにオリゴ糖を導入した高分子ポリマー(PV-sugar)をより具体的に例示することができる。そして、これらPV-sugarは1種単独の他、2種以上の混合物を用いてもよく、これらPV-sugarは市販のものを用いることができる。
【0021】
本発明の基底膜の調製方法における(糖鎖を備えた)支持体としては、線維性コラーゲンマトリックス、多孔性PET膜、ポリスチレンプレート、(合成)エラスチンポリマー、生体吸収性ポリマー等を例示することができるが、栄養塩、老廃物の拡散を確保する点で線維性コラーゲンマトリックスが好ましく、かかる線維性コラーゲンマトリックスとしては、線維芽細胞によって収縮されるコラーゲンゲルの高密度マトリックスを用いることもできる。この場合、コラーゲンの生合成を高めるため、ascorbic acid-2-phosphate(Asc−P)を添加することもできる。また、中性I型コラーゲン溶液をCO2インキュベーター内で静置してインキュベートし、ポリマー化したゲルを、室温下に風乾した線維性コラーゲンマトリックスを用いることもできる。また、生体吸収性ポリマーを用いると、支持体に担持された基底膜の構造を保持したままで移植が可能なことから好ましく、かかる生体吸収性ポリマーとしては、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸、L−乳酸−グリコール酸共重合体、グリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体、L−乳酸−ε−カプロラクトン共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等を具体的に例示することができる。
【0022】
本発明の組織モデルとしては、上記本発明の基底膜の調製方法により得られる細胞層とその直下の基底膜を含む組織であればどのようなものでもよいが、例えば、表皮組織モデル、角膜上皮組織モデル、肺胞上皮組織モデル、気道上皮組織モデル、腎糸球体組織モデル、肝実質組織モデル、肺動脈血管内皮組織モデル等を具体的に挙げることができる。本発明の組織モデルは、生体同様の細胞層と基底膜構造を有していることから、生体本来のバリアー機能を備えており、従前のバリアー機能を保持していない人工皮膚等に比べて、化学物質等の薬理試験、毒性試験等への応用上特に有利に用いることができる。例えば、被検物質を上皮組織モデルの細胞層上に存在せしめ、上皮細胞の上面と基底面間の電気抵抗を測定することにより、上皮組織に対する被検物質の安全性や毒性を試験することができる。被検物質により肺胞上皮組織に軽微だが傷害が生ずれば、電気抵抗が低下することから、被検物質の安全性や毒性を評価することができる。また、被検物質を上皮組織モデルの細胞層上に存在せしめ、上皮細胞や基底膜の状態を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察することにより、上皮組織に対する被検物質の安全性や毒性を試験することができる。
【0023】
本発明のテストティッシュキットとしては、本発明の基底膜の調製方法により得られる組織モデルを含むキットであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明の組織モデル構造体を含む薬理試験用、毒性試験用等のテストキットや、薬理試験用、毒性試験用等の組織モデル作製キットを挙げることができる。組織モデル作製キットとしては、検査組織を構成する所定の細胞、該細胞を播種するPV-GlcNAc等でコーティングされた線維性コラーゲン等の細胞外基質、DMEM培地等の前記細胞を培養するための標準的な培地、補助成分としてマトリゲル、IV型コラーゲン溶液、緩衝液等を含むキットを具体的に例示することができ、かかる組織モデル作製キットを用いて組織モデルを作製する様子が図4に示されている。
【0024】
さらに、本発明の組織モデルから、基底膜形成能を有する細胞を基底膜から除去することにより、基底膜標品(rBM;reconstructed basement membrane)を作製することができる。基底膜形成能を有する細胞を基底膜から除去する方法としては特に制限されないが、基底膜に損傷を与えること無く、上皮細胞や内皮細胞を除去する方法が好ましく、トリプシン等の蛋白分解酵素を使って細胞を除去すると、基底膜まで分解されてしまうので好ましくない。基底膜に損傷を与えること無く上皮細胞や内皮細胞を除去する方法としては、例えば、0.18Mの過酸化水素で10分間、肺胞上皮細胞等の基底膜を形成した細胞を処理し、その後1日間培養を継続して自動的に細胞を基底膜から剥離させる等の公知方法を挙げることもできるが、本発明者により見い出された方法、すなわち、界面活性剤、例えば、0.1%トリトン(Triton)X−100等の界面活性剤により細胞の脂質成分を溶解し、アルカリ性溶液、例えば、50mMのNH3や1mMのNaOH等のアルカリ性溶液で細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解し(基底膜の蛋白までは溶かしてはならない)、細胞が溶解する際に遊離してくるリソゾーム中の蛋白分解酵素等の内因性プロテアーゼ活性による基底膜の分解を抑制するため、蛋白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、protease inhibitors cocktail)を添加したリン酸緩衝液中で行う方法が好ましい。
【0025】
かかる基底膜形成能を有する細胞を基底膜から除去する工程により、上皮細胞や内皮細胞が剥離され、基底膜が露出した基底膜標品を作製することができる。上皮細胞や内皮細胞が形成した基底膜構造体とコラーゲン線維等の支持材からなる上記基底膜標品は、他の細胞の培養に利用することができる(図5参照)。上皮の基底膜と内皮の基底膜とは同じものとはいえないものの構成成分の多くが共通し、上皮細胞が形成した基底膜を内皮組織の構築に転用することができ、例えば、基底膜標品上に目的とするヒト上皮細胞やヒト内皮細胞を播種し、培養するだけでヒト上皮組織やヒト内皮組織を構築することができる。実際、肺胞II型上皮細胞が形成した基底膜上に肺動脈内皮細胞を播種・培養し、肺動脈内皮組織を構築することができることを確認している。基底膜構造体上に上皮細胞ないし血管内皮細胞を播種し、新たな組織を形成させる際、目的とする組織や臓器の間質細胞(線維芽細胞)を共存させると、基底膜の新陳代謝が円滑になることから好ましい。また、基底膜は、細胞が接着した状態では保存出来ないが、細胞が除去され非細胞成分のみで構成される前記基底膜標品は、保存が容易であり、必要時に、何時でも、何処でも使用できるという利点を有する。そして、基底膜標品の保存は、冷蔵でも冷凍でも全く問題がなく行うことができる。
【0026】
上記のように、基底膜標品を利用した上皮組織や内皮組織などの構築方法は汎用性が高く、例えば、ラットの肺胞上皮細胞を用いて作製した基底膜はヒトの組織構築にも使用することが可能であり、また、かかるラット肺胞上皮細胞由来の基底膜から構築される臓器や組織も肺胞に限定されるものではない。これに対し、個々の臓器の上皮細胞や内皮細胞を培養して基底膜を形成させ、上皮組織や内皮組織などを構築する場合には、個々の細胞に応じた培養系を開発するのに、多くの時間と労力が必要であり、また、それぞれの組織用に基底膜を個別に用意するのでは無駄が多いが、上記のように、基底膜標品を組織構築用共通ベース資材として使うことによって、効率化を図ることができる。そして、基底膜標品を利用して上皮組織や内皮組織などを構築する場合の培養容器としては特に制限されず、カルチャーインサート方式の他、ホロファーバー方式にも応用することができ、例えば、人工血管に適用する場合は、人工血管における問題点である血栓の発生を防止することができ、また、人工透析に適用する場合は、患者への負担が軽減できる。このように、基底膜標品から構築された組織モデルや臓器モデルも、本発明の組織モデルと同様に、生体本来のバリアー機能を備えた細胞層と基底膜構造を有していることから、生体本来のバリアー機能を備えており、化学物質等の薬理試験、毒性試験等へ有利に応用することができる。
【0027】
さらに、プラスチック膜等を有さない基底膜標品やプラスチック表面に固着していない基底膜標品、例えば、コラーゲン線維上に形成された基底膜標品を利用して構築された組織や臓器等は、基底膜の構造を保持したままで移植が可能なことから、その汎用性が一層高く、その適用例として、内径3mm以下の微細人工血管や、体内埋込み型のヒト人工組織等を例示することができ、特に、人工子球体、人工肝臓、人工肺胞など上皮組織と内皮組織が近接する組織や臓器を好適に例示することができる。上記プラスチック膜等を有さない基底膜標品の作製には、反応性の官能基(反応基)を有するポリマー、より詳細には、プラスチック表面に吸着することができる、ポリビニール鎖、直鎖状アミノ酸ポリマー(ポリグリシン、ポリアラニン等)などの疎水性の直鎖状骨格を持つポリマーで、該疎水性の直鎖状骨格に直接、あるいは、スペーサーを介して、コラーゲン等の蛋白質と反応できる反応基を有するポリマーを好適に用いることができる。これらのポリマーは、前記疎水性の直鎖状骨格により、化学結合でなく疎水性結合でプラスチック表面に吸着されることから、プラスチックの種類や材質に関係なく用いることができ、例えば、コラーゲン線維上に形成された基底膜標品を利用して組織や臓器等を構築する場合、培養後の操作中に基底膜標品がプラスチック膜から剥がれて、その使用価値を失うといったおそれがない一方で、必要に応じてプラスチック膜やプラスチック表面から容易に機械的に剥離させることができる。
【0028】
また、上記反応基としては、タンパク質の官能基と反応して、結合しうるものであれば特に制限されるものではなく、無水カルボン酸型の反応基、アミノ基、SH基等を例示することができる。上記無水カルボン酸型の反応基としては、無水マレイン酸基を好適に例示することができ、タンパク質のN末端アミノ基、リジンε−アミノ基、SH基等の官能基と結合する。上記アミノ基はタンパク質のカルボキシル基と反応するが、化学結合とするためペプチド縮合剤を添加することが好ましい。上記SH基はタンパク質のSH基と主として反応し、時には、S−S結合とSS交換反応で結合することもある。そして、かかるSH基に、前記疎水性の直鎖状骨格とコポリマーを形成することができる範囲内で、簡単に外れる可逆的な保護基をつけることもできる。
【0029】
かかる反応性の官能基を有するポリマーとして、メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸との交互共重合体(MMAC;Methyl vinyl ether / maleic anhydride copolymer)を具体的に挙げることができ、MMACの場合、メチレン基を骨格とする直鎖ポリマーが、プラスチック表面に疎水性結合で吸着することを可能にしているが、−CH2−CH2−骨格だけだとあまりにも疎水性で、水との親和性が低くなり、微視的には水をはじいて、反応性に支障がでる可能性があり、そこで、メチレン基のH原子の一部をCH3O基で置換し、O原子の存在により反応効率が高まると考えられている。なお、CH3O基に代えてOH基で置換すると、分子間で無水カルボン酸とエステル結合を作ることから好ましくない。またMMACは、エタノールに可溶のため、アセトン等を必要とするポリマーよりも使い易い上に、塗布後に速やかに風乾できる。そして、MMACにおける反応基である無水マレイン酸は、コラーゲン等のタンパク質のアミノ基と結合することになるが、この無水マレイン酸がたとえ水と反応してカルボン酸になったとしても、タンパク質の+の電荷とイオン結合することができる。コラーゲンタンパク質は、分子内にリジン残基を有しており、側鎖のε−アミノ基がその結合相手になると考えられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1(基底膜を形成する上皮細胞・内皮細胞)
上皮細胞として、Dr. A. Clement, Hopital Armand Trousseau, Paris(Clement et al.,Exp.Cell Res., 196: 198-205, 1991)から供与された肺胞II型上皮細胞(SV40−ラージT抗原遺伝子をトランスフェクトしたラットから採取;T2細胞)を、10mMの2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)(pH7.2)、10%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone Laboratories Inc., Logan, Utah)、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したDMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)において、空気95%/CO25%の大気条件下で培養して用いた。また、内皮細胞として、クローンテックス(Clonetics)社から購入したヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAE細胞)を、10mMのHEPES(pH7.2)、2%FBS、成長因子、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したMCDB131単独又はMCDB131とDMEMの等量混合培地において、空気95%/CO25%の大気条件下で培養して用いた。線維芽細胞は、雄ラットJcl:Fischer 344由来の肺線維芽細胞を文献(CELL STRUCTURE AND FUNCTION 22: 603-614,1997)記載の方法に準じて調製したもの、及び、クローンテックス社から購入したヒト肺線維芽細胞を用いた。
【0031】
実施例2(上皮細胞におけるレセプターの存在の確認)
10μg/ml濃度の各種PV-Sugar(生化学工業社製)を、製造者のプロトコールに従い、96穴ポリスチレン製プレート(ベクトンディッキンソン社製)にコーティングし、その上にラット肺胞II型上皮細胞を1×104個まき、10mM HEPES(pH7.2)と1%FBSを添加したDMEM中、CO2インキュベーターで37℃、24〜48時間インキュベートした。インキュベート後、クリスタルバイオレットで細胞を染色し、595nmの吸光度を測定して細胞数とすることにより、各種PV-Sugarとの接着性について調べた。また、細胞接着因子のファイブロネクチン(FN)及びビトロネクチン(VN)コートに対する細胞接着も同時に行い、対照実験とした。結果を図6に示す。図6の横軸には、種々の非還元末端糖鎖のPV-sugar(GlcNAc;2-acetoamide-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl、Lam;β-D-glucopyranosyl-(1→3)、CA;β-D-glucopyranosyl-(1→4)、LA;β-D-galactopyranosyl、MA;α-D-glucopyranosyl、Man;β-D-mannopyranosyl、MEA;α-D-galactopyranosyl)が示されている。図6から、肺胞II型上皮細胞は、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖をもつPV-GlcNAc、β−D−グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖をもつPV-CAやPV-Lam、β−D−ガラクトピラノース非還元末端を有する糖鎖をもつPV-LAに対し強い接着を示すことがわかった。これらの結果から、肺胞II型上皮細胞は、その基底面にこれら糖鎖に対するレセプターを発現することが示された。
【0032】
実施例3(線維性コラーゲン基質の調製)
コラーゲンゲル線維を、通常線維芽細胞によって構築されるコラーゲンゲルの密度マトリックスを模して調製した。DMEM(pH7.2)における中性I型コラーゲン溶液(0.42mlのウシ真皮から酸抽出で採った0.3〜0.5mg/mlのI型コラーゲン;Koken Co., Tokyo)を、6ウエル培養プレート(Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)のポリエチレンテレフタル酸エステル膜と共に、4.3cm2の培養線維芽細胞層に投入し、CO2インキュベーターで、数時間〜24時間インキュベートし、ゲル化した。このゲルを、室温下24〜48時間風乾して圧縮し、高密度コラーゲン線維(fib)として使用した。上記線維芽細胞としては、雄ラットJcl:Fischer 344由来の肺線維芽細胞を文献(CELL STRUCTURE AND FUNCTION 22: 603-614,1997)記載の方法に準じて調製した。
【0033】
実施例4(肺胞II型上皮細胞による基底膜の調製)
基底膜の調製には、下部ウェルと、該下部ウェルに同心円上に収納され、底部にPET膜を有する上部ウェルからなるカルチャーインサートを用いた(図1を参照)。上部ウェルの底部PET膜上に、実施例3で示した方法で作製した高密度コラーゲン線維(fib)にDMEMに溶解した10μg/ml濃度のPV-GlcNAc、PV-CA又はPV-Lamをコーティングした支持体(fib*)上で、肺胞II型上皮細胞を37℃、5%CO2存在下で2週間培養した。この培養では、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル(Fgel)、マトリゲル(MG)又はTGFβを培養系に添加せず、培養液には10mMのHEPES(pH7.2)、1%FBSと0.2mMascorbic acid-2-phosphate(Asc−P)を添加したDMEMを用いた。形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図7に、形成された肺胞上皮組織の表面の肺胞II型上皮細胞層を参考例1(後述)に示す方法で除去し、露出した肺胞上皮組織直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0034】
図7中、太矢印は基底膜緻密板(lamina densa)を、細矢印は培養初期に形成され、一部は分解されつつある旧基底膜を、鏃は基底膜が形成されていない領域をそれぞれ示す(スケールの長さは1μm)。また図8のPV-sugar未処理(Cont)では、既存のfib(コラーゲン線維,白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集積している個所(*)が認められるにすぎないが、PV-GlcNAc,PV-Lam,PV-CA処理では、基底膜が平面状(図7の太矢印に対応)に形成されており、PV-Lam処理では、肺胞II型上皮細胞層を除去する際に、一部失われた基底膜の欠損窓から、下部のコラーゲン線維(白抜き太矢印)が垣間見える(スケールの長さは1μm)。これらの結果から、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端を有するPV-GlcNAcやβ−D−グルコピラノース非還元末端を有するPV-CAやPV-Lamでコーティングした高密度コラーゲン線維支持体(GlcNAc-fib*, CA-fib*, Lam-fib*)上で培養すると、肺胞II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮組織が構築されることを確認した。また、β−D−ガラクトピラノース非還元末端を有するPV-LAに対して、肺胞II型細胞は接着するが(図6)、基底膜は形成されなかった(図7及び図8)。このことは、糖鎖に対する細胞接着は、基底膜形成の必要条件ではあっても、十分条件ではないことを示している。
【0035】
実施例5(マトリゲルによる基底膜形成を促進する効果)
図1のT2-fib-MGに示した様に、下部ウェルにマトリゲル200μlをコーティングし、高密度コラーゲン線維(fib)上で肺胞上皮細胞を2週間培養すると上皮細胞直下に基底膜が形成される。しかし、マトリゲルの量が50μlに満たないと基底膜は形成されない(J. Cell Sci., 113: 589-868, 2000)。この場合にあっても、実施例3に示した方法で高密度コラーゲン線維(fib)を作製し、実施例4に示した方法でPV-GlcNAc, PV-CA又はPV-Lamでコーティングした培養基質(fib*)を用いると、10日間培養で肺胞II型上皮細胞層直下に基底膜が形成される。図9には、種々のPV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培養皿底面にコーティングした25μlマトリゲルと10日間共培養し、形成した上皮組織の透過型電子顕微鏡写真(左側:未処理、及びPV-GlcNAc,PV-CAコーティング)、及び参考例1(後述)に示す方法で肺胞上皮細胞層を除去し、直下の基底膜構造体を表面に露出させ走査型電子顕微鏡で撮影した(右側:未処理、及びPV-GlcNAc,PV-CAコーティング)結果が示されている(記号の意味及びスケールは実施例4と同じ。)。これらの結果から、マトリゲルの量が不十分の場合でも、PV-GlcNAc又はPV-CAでコーティングした高密度コラーゲン線維支持体(GlcNAc-fib*, CA-fib*)を用いることにより、肺胞II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮組織が構築されることを確認した。
【0036】
実施例6(ヒト肺動脈血管内皮細胞による基底膜の調製)
ヒト肺動脈血管内皮(HPAE)細胞を、図2に示した方法で培養した。すなわちヒト線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル(Fgel)上に直接培養(EC-Fgel)、Fgel共存下で高密度コラーゲン線維(fib)上に培養(EC-fib-Fcm)、200μlのマトリゲルと共にfib上で共培養(EC-fib-MG)、及びfib上で培養(EC-fib)した。培養後、表面のHPAE細胞層を参考例1(後述)の方法で除去し、細胞直下の細胞外基質構造を走査型電子顕微鏡で観察した(図10)。EC-Fgelの場合は基底膜が形成されたが、EC-fib-Fcm,EC-fib-MG,EC-fibの場合には既存のコラーゲン線維が露出し、T2細胞の場合(T2-fib-Fcm, T2-fib-MG)の様に基底膜は形成されなかった(白抜き太矢印はコラーゲン線維。*はコラーゲン線維間に沈着した分泌物。スケールの長さは1μm。)。そこで、EC-fib-Fcmの培養系を用いて、実施例5の肺胞II型上皮細胞の場合と同様に、PV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維支持体(fib*)上で培養した。培養後、表面のHPAE細胞層を参考例1の方法で除去し、露出した細胞直下の細胞外基質構造を、走査型電子顕微鏡で観察した(図11)。PV-GlcNAc,PV-CAコーティングの場合に、基底膜の形成が認められた。PV-Lamコーティングの場合には、基底膜の形成が不完全だった。PV-sugar未処理(Cont)及びPV-LA, PV-MA, PV-Man, PV-MEA処理では、既存のコラーゲン線維(白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集積(*)しているが、基底膜は形成していない。これらの結果から、PV-GlcNAc, PV-CAコーティングしたfib*(GlcNAc-fib*,CA-fib*)を用いると、ヒト肺動脈血管内皮細胞層の直下に基底膜が形成されたヒト肺動脈内皮組織が構築されることを確認した。
【0037】
参考例1(肺胞上皮細胞層が除去され、基底膜が露出した基底膜標品の作製)
組織モデル(T2-fib-MG)から、図5に模式的に示されているように、II型肺胞上皮細胞層を剥離し、基底膜が露出した基底膜標品を作製し、作製した基底膜構造体上に、ラット気道上皮細胞又はヒト肺動脈血管内皮細胞を播種し、気道上皮組織や血管上皮組織を作製した。まず、カルチャーインサートの上部ウェルのII型肺胞上皮組織に、蛋白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、ペプチド研究所社製、大阪)を添加した等張のリン酸緩衝液(pH7.2;PBS(−))中で、0.1%のトリトンX−100(界面活性剤)2mlを用いて、上皮細胞の脂質成分を溶解・溶出すると同時に、共存する50mMNH3で、細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解する操作を2回(基底膜の蛋白までは溶かしてはならない)繰り返した後、再度PICを含むPBS(−)溶液で基底膜から界面活性剤とアルカリ洗浄をすることによって、肺胞上皮細胞層を剥離して基底膜が露出した基底膜標品を作製した。
【0038】
参考例2(基底膜構造体上でのラット気道上皮組織の構築)
参考例1で構築した基底膜構造体上に、ラット気道上皮細胞株(SPOC1、米国NIEHS(National Institute of Environmental Health and Sciences)のDr.Paul Nettesheimより供与)を5×105個播種し、37℃、5%CO2存在下、10mMのHEPES(pH7.2)と1%FBSを添加した、Ham'sF12:DMEM=1:1の混合培地中で1週間培養して、気道上皮組織を構築した。基底膜構造体上に構築された気道上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図12として示す。図12Aは基底膜構造体上の気道上皮細胞を示し、図12Bは気道上皮細胞が肺胞上皮細胞由来の基底膜を認識してアンカリングフィラメントで繋がっている、気道上皮細胞の基底面と基底膜構造体との強拡大の境界面を示し、図12Cは細胞−細胞間結合で気道上皮細胞同士が結合して上皮組織を形成していることを示している。
【0039】
参考例3(基底膜構造体上でのヒト血管上皮組織の構築)
参考例1で構築した基底膜構造体上に、ヒト肺動脈血管内皮細胞(クローンテック社製)を5×105個播種し、37℃、5%CO2存在下、10mMのHEPES(pH7.2)と2%FBSを添加した、MCDB131:DMEM=1:1の混合培地中で2週間培養して、ヒト血管上皮組織を構築した。基底膜構造体上に構築されたヒト血管内皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図13として示す。図13Aには線維芽細胞との共培養により構築したヒト血管上皮組織を、図13Bにはマトリゲル共存下で構築したヒト血管上皮組織を示している。
【0040】
【発明の効果】
本発明の基底膜の調製方法によると、特定の糖鎖をもつポリマーを用いることにより、基底膜構造体をもつ上皮組織モデルや内皮組織モデルを穏和な条件で構築することができ、またかかる方法で調製した基底膜構造体は他組織の上皮組織や内皮組織をも形成させることが可能となった。これら基底膜構造体及び上皮組織・内皮組織は、医学・生物学の研究用に、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚、人工角膜等として移植・治療用に、薬理試験や毒性試験用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】肺胞上皮細胞による基底膜形成を示す模式図である。
【図2】肺動脈内皮細胞による基底膜形成を示す模式図である。
【図3】上皮細胞と内皮細胞の共培養による基底膜の形成を示す模式図である。
【図4】基底膜構造体の作製と肺胞上皮組織の構築を示す模式図である。
【図5】再構成基底膜標品を用いた内皮組織や上皮組織の構築を示す模式図である。
【図6】肺胞II型細胞の糖鎖接着の特異性を示す図である。
【図7】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間培養した結果形成された肺胞上皮組織直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培養皿底面にコーティングした25μlマトリゲルと10日間共培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微鏡写真(左)と肺胞上皮組織直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真(右)を示す図である。
【図10】図2の培養方法によるヒト肺動脈血管内皮細胞の基底膜形成の結果を示す細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図11】種々のPV-sugarをコーティングした高密度コラーゲン線維(fib*)上にヒト肺動脈血管内皮細胞を播種し、肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルと2週間共培養した(EC-fib*-Fcm)結果形成された血管内皮細胞層直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図12】基底膜構造体上に構築された気道上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図13】基底膜構造体上に構築されたヒト血管内皮組織の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
Claims (12)
- 基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができる、β−D−グルコピラノース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを特徴とする基底膜の調製方法。
- 糖鎖を備えた支持体の相対する2つの基層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを特徴とする請求項1記載の基底膜の調製方法。
- 基底膜構成成分として、基底膜形成能を有する細胞から分泌された成分を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の基底膜の調製方法。
- 糖鎖又は糖鎖の一部がレセプターと結合することにより、基底膜形成能を有する細胞を支持体上に接着しうる糖鎖を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- レセプターと結合する糖鎖又は糖鎖の一部が基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることを特徴とする請求項4記載の基底膜の調製方法。
- 糖鎖を備えた支持体が、糖鎖を有するポリマーをコーティングした支持体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- 基底膜形成能を有する細胞を、線維芽細胞又はマトリゲル(登録商標)と共培養すること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の基底膜の調製方法。 - 基底膜形成能を有する細胞を、基底膜構成成分の1種又は2種以上の存在下で培養することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- 基底膜形成能を有する細胞を、TGF−β(トランスフォーミング増殖因子)の存在下で培養することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- 基底膜形成能を有する細胞が、上皮細胞、内皮細胞又は間充織細胞であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- 基底膜形成能を有する細胞及び/又は線維芽細胞が、基底膜構成成分の1種又は2種以上の遺伝子が導入された、基底膜構成成分高発現細胞であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の基底膜の調製方法。
- 支持体が、線維性コラーゲンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の基底膜の調製方法。
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