JP2003093050A - 基底膜の調製方法 - Google Patents

基底膜の調製方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現な
どを制御する機能を持った細胞外マトリックスである基
底膜の調製方法、特に上皮細胞、内皮細胞等の基底膜形
成能を有する細胞が内生の基底膜成分を有効に活用しう
る基底膜の調製方法や、かかる基底膜の調製方法により
得られる組織モデルや、かかる組織モデルを含むテスト
ティッシュキットを提供すること 【解決手段】 基底膜形成能を有する細胞の基底面に、
基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化
させることができる糖鎖、例えばβ−D−グルコピラノ
ース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−
β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖を有す
るポリマーをコーティングした線維性コラーゲン基質上
で肺胞上皮細胞や血管内皮細胞を培養し、肺胞上皮細胞
や血管内皮細胞直下にインビボ同様なバリヤー機能を有
する基底膜を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞の形態、分
化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った
細胞外マトリックスである基底膜の調製方法や、かかる
基底膜の調製方法により得られる組織モデルや、かかる
組織モデルを含むテストティッシュキットに関する。
【0002】
【従来の技術】動物の体の内外の表面を覆っている細胞
層である表皮、角膜上皮、肺胞上皮、消化器系の粘膜上
皮、腎臓子球体上皮、肝実質細胞等の上皮組織は、外界
から異物(微生物、アレルゲン、化学物質等)が侵入す
るのを防いでいる。かかる上皮組織を構成する上皮細胞
の外界面は上端面(apical)、内側下面は基底面(basa
l)と呼ばれ、かかる基底面直下には、蛋白質やプロテ
オグリカン等の細胞外基質(ECM)から成る(細胞を含
まない)基底膜と呼ばれる50〜100nmの薄膜の構
造体が存在する。基底膜は、未成熟な上皮細胞が増殖
し、成熟した細胞に分化して、本来の形態や、機能を発
現するのに必須の構造体と考えられている。即ち、基底
膜なしでは上皮組織は自分自身の維持や本来のパフォー
マンスが達成できない。多層又は単層の上皮細胞層はバ
リアーとして外界からの異物の侵入を防いでいるが、基
底膜自体も物理的なバリアーとして作用する。このよう
に、上皮組織を構成する上皮細胞と基底膜が協働して、
強固なバリアーを形成し、体内の生命活動を保護してい
る。
【0003】上皮細胞の他、内皮細胞、筋細胞、脂肪細
胞、シュワン細胞などの実質細胞と結合組織との界面に
形成される細胞外基質の特異な膜状構造物である基底膜
は、生体の各組織・臓器に普遍的に見い出される一方
で、腎糸球体毛細血管ループや神経シナプス膜など高度
に特化したものもある。したがって、細胞を間質に接着
させるだけでなく、選択的な物質・細胞透過や細胞分化
の誘導等の機能が明らかにされている。腎糸球体では、
基底膜の陰性荷電が腎のろ過機能を担っているとみなさ
れ、その陰性荷電は現在パールカンとよばれるヘパラン
硫酸プロテオグリカン(HSPG)によることが古典的
に知られている。HSPGは腎糸球体基底膜だけでな
く、種々の基底膜に、IV型コラーゲン、ラミニン、エン
タクチン等と同様に、その基本的構成分子としてひろく
分布している。
【0004】細胞外マトリックス、特に基底膜は、上記
のように個体の発生や分化等の生理現象だけでなく、癌
の増殖転移や炎症などの病態形成にも深く関与している
ことが明らかとなりつつあり、その構成タンパク質の機
能の解明が重要な課題となってきている。例えば、基底
膜の主要糖タンパク質であるラミニンは、α、β、γの
3種類のサブユニットからなる複合体で、15種類のア
イソフォームが知られており、これらが組織特異的ある
いは発生時の各段階で特異的に発現している。ラミニン
は様々な生物活性を有し、20種類以上のラミニンレセ
プターが報告されている分子量90万の複雑な巨大分子
である。
【0005】細胞が接着可能な薄い細胞外マトリックス
層である基底膜の構成成分と上皮細胞との相互作用が、
移動、増殖及び分化等の細胞機能に影響を及ぼしている
(Crouch et al., Basement membrane. .In The Lung(e
d .R. G. Crystal and J. B.West), pp53.1-53.23. Phi
ladephia : Lippincott-Raven. 1996)。基底膜の主要
成分としては、前記のように、ラミニン、IV型コラーゲ
ン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)及びエ
ンタクチンが知られており(Curr. Opin. CellBiol. 6,
674-681, 1994)、ラミニン及びIV型コラーゲンのアイ
ソフォームを含む基底膜成分の合成には、間充織細胞が
重要な役割を担っていると考えられている(Matrix Bio
l. 14, 209-211, 1994、J.Biol. Chem. 268, 26033-260
36, 1993)が、上皮細胞の役割もまた、重要なものであ
る。HSPGは、上皮細胞由来と考えられているが、ラ
ミニン、IV型コラーゲン及びエンタクチンは、上皮細胞
及び間充織細胞の双方によって、インビボで合成される
(Development 120, 2003-2014, 1994、Gastroenterolo
gy 102, 1835-1845, 1992)。連続した緻密層(lamina
densa)を示すインビトロでの上皮組織モデルを作製す
る試みが、今まで数多く行われてきた。腸(J. Cell Bi
ol.133, 417-430, 1996)及び皮膚(J. Invest. Dermat
ol. 105, 597-601, 1995、J. Invest. Dermatol. 109,
527-533, 1997、Dev. Dynam. 197, 255-267, 1993)等
の組織モデルが研究されており、いくつかの間充織細胞
由来基底膜成分が、基底膜形成に重要な役割を果たして
いることも見い出されている。
【0006】従来から、上皮細胞を培養することにより
基底膜を構築し、基底面直下に基底膜構造体が存する上
皮組織を構築する幾つかの方法が報告されている。例え
ば、本発明者らは、肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共
培養によりインビトロで基底膜が形成されることを報告
した(Cell Struc.Func., 22: 603-614, 1997)。すなわ
ち、肺線維芽細胞をI型コラーゲンゲルに包埋した状態
で順化培養すると、肺線維芽細胞によってコラーゲンゲ
ルは収縮し堅さを増し、また分泌された細胞外基質が細
胞周囲のコラーゲン線維にまとわりついて沈着し、その
形成物はインビボにおける間質と類似することから擬似
間質と呼ばれ、この擬似間質化したI型コラーゲン線維
上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を14日間程度
培養する(T2-Fgel)と、肺線維芽細胞が分泌する細胞
外基質中のIV型コラーゲンやラミニン等の基底膜構成成
分が培地中に拡散して、上記II型肺胞上皮細胞株の基底
面に到達し、基底膜構築材料として使われる結果、基底
膜構造体が形成されることを報告した。
【0007】また、希薄な中性コラーゲン溶液を、5%
CO2中37℃でインキュベートし、コラーゲン線維を
形成させた後、無菌状態の中で風を当てて乾燥させた風
乾コラーゲン線維基質(fib)を、上記擬似間質の代替
物として用い、上記肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共
培養の場合と同様にして、基底膜を形成することも報告
されている(Eur. J. Cell Biol., 78: 867-875, 1999,
J. Cell Sci., 113:859-868, 2000)。この方法の場
合、コラーゲン溶液の濃度が高いと、形成されたコラー
ゲン線維に隙間が少なく、あるいはなくなって、基底膜
形成のため上皮細胞を長期間培養(10日〜2週間)す
ると、細胞が剥がれて浮き上がることから(例:Becton
Dickinson, Fibrillar collagen coat culture inser
t)、コラーゲン溶液濃度は、0.3〜0.5mg/m
lが最適であるとされている(Eur.J. Cell Biol., 78:
867-875, 1999, J. Cell Sci., 113: 859-868, 200
0)。
【0008】線維芽細胞を包埋したコラーゲンマトリッ
クスを使用する代わりに、マトリゲル(Matrigel;Bect
on Dickinsonの登録商標)を加えたコラーゲン線維基質
上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を培養した。こ
のときマトリゲルは、基底膜成分の外来性(exogenou
s)供給源として機能した。マトリゲルは、Engelbreth-
Holm-Swarm腫瘍マトリックスから抽出された基底膜調製
物であり(J. Exp. Med.145, 204-220, 1977)、ECM
合成に影響を及ぼす可能性のある種々のサイトカインの
他に、ラミニン−1、エンタクチン、IV型コラーゲン、
パールカンを含んでいる(Exp. Cell Res. 202, 1-8, 1
992)。基底膜に取り込まれたマトリゲルの成分を追跡
するために、マトリゲルをビオチンで標識し、基底膜成
分であるラミニン、エンタクチン、IV型コラーゲン、パ
ールカンの免疫蛍光染色と電子顕微鏡観察により、マト
リゲル量に依存して基底膜形成が促進し、点状に分泌さ
れた基底膜マトリックスがシート状に沈着して基底膜が
発達してゆく過程が観察された。その結果、肺胞上皮細
胞の下方にて、安定化した外来性ラミニン−1及びエン
タクチンが、インビトロでの上記上皮細胞による基底膜
の完全なる発達に大きく関与していることが明らかにな
っている(J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、線維性コ
ラーゲン基質上に肺胞上皮細胞を培養する際に、線維芽
細胞の順化、TGF−β又はマトリゲルの存在下で培養
することにより、上皮細胞直下の基質に基底膜構造体を
形成させる方法等について研究を進め、II型肺胞上皮細
胞の場合、図1に示されるように、II型肺胞上皮細胞
を、カルチャーインサートの上部ウェルの肺線維芽細胞
マトリックス基層(線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲ
ル)上で培養した場合(T2-Fgel)、下部ウェルに肺線
維芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェルの線維性コ
ラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib-Fcm)、下部ウ
ェルにコーティングされたマトリゲルの共存下、上部ウ
ェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib
-MG)、上部ウェル及び下部ウェルの成長因子TGF−
βの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培
養した場合(T2-fib-TGFβ)に基底膜が形成されるこ
とを確認したが、II型肺胞上皮細胞が内在性の(endoge
nous)基底膜成分を有効に活用できないために、例えば
線維芽細胞、マトリゲル等の外来性の基底膜成分や成長
因子TGF−βの供給を仰がなければ、II型肺胞上皮細
胞は基底膜を構築できないことも確認した。しかし、基
底膜構成成分や成長因子TGF−βを細胞外に分泌する
線維芽細胞を用いる場合は、培養中にゲル収縮を起こし
プラスチック膜上から肺胞上皮とともに剥がれてしまう
トラブルが起こりやすいという問題や、基底膜標品を作
るとき線維芽細胞が包埋されていると試薬等が残りやす
く、その除去操作が煩雑であるという問題や、また、細
胞の一部が残っていると抗原となるという問題や、さら
に、基底膜を形成する上での培養が複雑となるという問
題があった。また、基底膜構成成分の供給源としてマト
リゲル等の線維芽細胞代替物や成長因子TGF−βを用
いる場合は、これらマトリゲルや成長因子TGF−βが
高価であり、コスト面で有利ではないという問題があっ
た。
【0010】他方、内皮細胞(EC)による基底膜の構
築についても検討した。内皮細胞の基底面直下に存在す
る基底膜も、内皮細胞の機能発現と維持に寄与してお
り、内皮細胞の基底膜は、炎症性細胞が血管から組織に
侵入する際、あるいはガン細胞が転移する際の障壁の役
割を果たしているが、血管内皮細胞の基底膜は、上皮細
胞の様に容易には形成されない。血管内皮細胞による基
底膜形成においては、II型肺胞上皮細胞の場合と異な
り、図2に示されるように、上部ウェルの線維芽細胞マ
トリックス基層上で培養した場合(EC-Fgel)、下部ウ
ェルに肺線維芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェル
の線維性コラーゲン基層上で培養した場合(EC -fib-Fc
m)、下部ウェルにコーティングされたマトリゲルの共
存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した
場合(EC-fib-MG)、上部ウェルの線維性コラーゲン基
質上で培養した場合(EC -fib)には、(EC-Fgel)の場
合を除き基底膜が形成されなかった。
【0011】本発明の課題は、細胞の形態、分化、増
殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った細胞外
マトリックスである基底膜の調製方法、特に上皮細胞、
内皮細胞等の基底膜形成能を有する細胞が内在性の基底
膜成分を有効に活用しうる基底膜の調製方法や、かかる
基底膜の調製方法により得られる組織モデルや、かかる
組織モデルを含むテストティッシュキットを提供するこ
とにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上皮細胞、内皮細胞等の
基底膜形成能を有する細胞や線維芽細胞から細胞外に分
泌された基底膜成分は、それ自体だけでは基底膜構造体
を形成することができず、上皮細胞、内皮細胞等の基底
膜形成能を有する細胞、特にその基底面に局在すると考
えられているレセプターが必要であるが、かかるレセプ
ターの実体は単一蛋白かどうかも含めて現在のところよ
くわかっていない。本発明者は、基底膜形成のメカニズ
ムを鋭意研究する過程で、インビトロで特定の糖鎖、す
なわち基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構
成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させるこ
とができる糖鎖、例えばβ−D−グルコピラノース(β
-D-glucopyranosyl)非還元末端又は2−アセトアミド
−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース(2-acetoa
mide-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)非還元末端をもつ
糖鎖を有するポリマーに、II型肺胞上皮細胞や血管内皮
細胞が接着することができることから、II型肺胞上皮細
胞や血管内皮細胞は、その基底面にこれら糖鎖のレセプ
ターを発現しているとの知見を得た。次いで、上記ポリ
マーをコーティングした線維性コラーゲン基層上でII型
肺胞上皮細胞や血管内皮細胞を培養したところ、II型肺
胞上皮細胞や血管内皮細胞直下にインビボ同様なバリヤ
ー機能を有する基底膜が形成されることを見い出した。
かかる基底膜の形成に際しては、マトリゲル等の基底膜
成分の供給やTGF−βの添加は必要としなかったが、
マトリゲルを添加すると、基底膜の構築は著しく昂進
し、培養期間は1週間で十分であり、基底膜も数倍厚く
なることがわかった。このことは、前記糖鎖に対するレ
セプターが関与して基底膜の形成が昂進した結果である
との知見を得た。本発明はこれら知見に基づいて完成す
るに至ったものである。
【0013】すなわち本発明は、基底膜形成能を有する
細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレ
セプターを局在化させることができる糖鎖を備えた支持
体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを特
徴とする基底膜の調製方法(請求項1)や、糖鎖を備え
た支持体の相対する2つの基層面上で、基底膜形成能を
有する細胞を培養することを特徴とする請求項1記載の
基底膜の調製方法(請求項2)や、基底膜構成成分とし
て、基底膜形成能を有する細胞から分泌された成分を用
いることを特徴とする請求項1又は2記載の基底膜の調
製方法(請求項3)や、糖鎖又は糖鎖の一部がレセプタ
ーと結合することにより、基底膜形成能を有する細胞を
支持体上に接着しうる糖鎖を用いることを特徴とする請
求項1〜3のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項
4)や、レセプターと結合する糖鎖又は糖鎖の一部が基
底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることを特徴とす
る請求項4記載の基底膜の調製方法(請求項5)や、糖
鎖を備えた支持体が、糖鎖を有するポリマーをコーティ
ングした支持体であることを特徴とする請求項1〜5の
いずれか記載の基底膜の調製方法(請求項6)や、糖鎖
を有するポリマーが、β−D−グルコピラノース非還元
末端又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グ
ルコピラノース非還元末端をもつ糖鎖を有するポリマー
であることを特徴とする請求項6記載の基底膜の調製方
法(請求項7)や、糖鎖を有するポリマーとして、PV-G
lcNAc、PV-CA、PV-Lamから選ばれる1種又は2種以上の
ポリマーを用いることを特徴とする請求項7記載の基底
膜の調製方法(請求項8)に関する。
【0014】また本発明は、基底膜形成能を有する細胞
を、線維芽細胞又はその代替物と共培養することを特徴
とする請求項1〜8のいずれか記載の基底膜の調製方法
(請求項9)や、基底膜形成能を有する細胞を、基底膜
構成成分の1種又は2種以上の存在下で培養することを
特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の基底膜の調製
方法(請求項10)や、基底膜形成能を有する細胞を、
TGF−β(トランスフォーミング増殖因子)の存在下
で培養することを特徴とする請求項1〜10のいずれか
記載の基底膜の調製方法(請求項11)や、基底膜形成
能を有する細胞が、上皮細胞、内皮細胞又は間充織細胞
であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載
の基底膜の調製方法(請求項12)や、基底膜形成能を
有する細胞及び/又は線維芽細胞が、基底膜構成成分の
1種又は2種以上の遺伝子が導入された、基底膜構成成
分高発現細胞であることを特徴とする請求項1〜12の
いずれか記載の基底膜の調製方法(請求項13)や、支
持体が、線維性コラーゲンであることを特徴とする請求
項1〜13のいずれか記載の基底膜の調製方法(請求項
14)や、請求項1〜14のいずれか記載の基底膜の調
製方法により得られることを特徴とする組織モデル(請
求項15)や、請求項1〜14のいずれか記載の基底膜
の調製方法により得られる組織モデルを含むことを特徴
とするテストティッシュキット(請求項16)に関す
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の基底膜の調製方法として
は、特定の糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞
の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプ
ターを局在化させることができる糖鎖を備えた支持体上
で、基底膜形成能を有する細胞を培養する方法であれば
特に制限されるものではなく、上記基底膜形成能を有す
る細胞としては上皮細胞、内皮細胞、間充織細胞などを
挙げることができ、上記上皮細胞としては表皮細胞、角
膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化器系の粘膜上皮細胞、
腎臓子球体上皮細胞、肝実質細胞等を、上記内皮細胞と
しては腎臓子球体毛細血管内皮細胞、肺動脈血管内皮細
胞、胎盤静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞等を、
間充織細胞としては筋細胞、脂肪細胞、グリア細胞、シ
ュワン細胞等をより具体的に例示することができる。
【0016】基底膜の調製には、ラミニン、IV型コラー
ゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エ
ンタクチン等の基底膜構成成分が必要とされ、また個々
の基底膜形成能を有する細胞は基底膜構成成分を分泌す
るが、かかる細胞から分泌される基底膜構成成分は、細
胞の基底面(下面)から線維性コラーゲンマトリックス
が形成する細胞外基質の内部に向かって分泌される。し
たがって、分泌された基底膜成分の大部分は基底面表面
から離れてしまい反対側から培地中に拡散したり、途中
で蛋白質分解酵素に分解されたりして、通常有効利用さ
れない。しかし、本発明の基底膜の調製方法において
は、特定の糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞
の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプ
ターを局在化させることができる糖鎖を備えた支持体上
で、基底膜形成能を有する細胞を培養することにより、
上記上皮細胞や内皮細胞などの基底膜形成能を有する細
胞から分泌される内生の基底膜構成成分を好適に活用す
ることができる。
【0017】また、糖鎖を備えた支持体の相対する2つ
の基層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養する本
発明の方法、例えば、多孔性メンブレン膜の両側に線維
性コラーゲンを作製し、その両側に上皮細胞と血管内皮
細胞の組み合わせなど、2種類の基底膜形成能を有する
細胞を播種・培養すると、基底膜形成能を有する細胞か
ら分泌される内生の基底膜構成成分の拡散が防止され、
基底膜成分の有効利用率を高めることができる。すなわ
ち、一方の細胞が分泌する基底膜構成成分が、線維性コ
ラーゲンの反対側に位置する他方の細胞に辿り着き、か
かる細胞が形成する細胞−細胞間結合(密着結合)で隙
間の無い障壁により阻まれて、培地中に拡散することが
なく、その結果、基底膜成分の有効利用率を高めること
ができる。図3の上段には、コラーゲンゲル包埋線維芽
細胞存在下、コラーゲン線維を介しての上皮細胞と血管
内皮細胞の共培養による基底膜の形成(左)、本発明の
糖鎖を備えた支持体であるコラーゲン線維の薄膜を介し
ての上皮細胞と血管内皮細胞の共培養による基底膜の形
成(中)、コラーゲン線維を介しての上皮細胞と線維芽
細胞の共培養による基底膜の形成(右)が模式的に示さ
れており、また、図3の下段には、所望の細胞組織では
ない方の細胞組織、すなわち、血管内皮組織(左)、上
皮組織(中)、線維芽細胞(右)を機械的に剥がして取
り除いた状態が示されている。これら細胞の組合せとし
ては、上皮細胞と血管内皮細胞、上皮細胞と上皮細胞、
内皮細胞と内皮細胞、上皮細胞又は内皮細胞と一部の間
充織細胞等が考えられる。上記支持体としては、線維性
コラーゲン膜や線維性コラーゲンマトリックスの他、多
孔性PET膜、エラスチン(ポリマー)膜を例示するこ
とができる。
【0018】そして、本発明の基底膜の調製方法におい
ては、これら基底膜形成能を有する細胞から分泌される
内生の基底膜構成成分に加えて、外生の基底膜構成成分
等をも利用して短期間で基底膜を調製することができる
ように、基底膜構成成分及びTGF−βを分泌する線維
芽細胞、好ましくは線維芽細胞の順化培地や、基底膜構
成成分を豊富に含有するマトリゲルなどの線維芽細胞代
替物と共培養することもできる。また、同様に短期間で
基底膜を調製することができるように、基底膜形成能を
有する細胞を、別途調製されたラミニン、IV型コラーゲ
ン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エン
タクチン等の基底膜構成成分の1種又は2種以上の存在
下で培養したり、TGF−βの存在下で培養することも
できる。上記ラミニンやHSPGは市販品が用いること
ができ、IV型コラーゲンとしては、牛レンズカプセルか
ら酢酸抽出したものを有利に用いることができる。
【0019】上記ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン
硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エンタクチン等の
基底膜構成成分やTGF−βを用いる方法は、コスト高
になることから、本発明の基底膜の調製方法において用
いられる、基底膜形成能を有する細胞や線維芽細胞とし
て、基底膜構成成分の1種又は2種以上の遺伝子が導入
された基底膜構成成分高発現細胞や、TGF−βの遺伝
子が導入された成長因子高発現細胞を選抜・使用するこ
とができる。
【0020】本発明の基底膜の調製方法における特定の
糖鎖、すなわち、基底膜形成能を有する細胞の基底面
に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局
在化させることができる糖鎖としては、糖鎖又は該糖鎖
の一部が上記レセプターと結合することにより、基底膜
形成能を有する細胞を支持体上に接着しうる糖鎖、中で
も、レセプターと結合する糖鎖又は該糖鎖の一部が前記
基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることが好まし
い。また、本発明における糖鎖を備えた支持体として
は、かかる糖鎖を有する一体成形体、あるいは、糖鎖を
有するポリマーをコーティングした支持体であることが
好ましく、該糖鎖を有するポリマーとしては、β−D−
グルコピラノース(β-D-glucopyranosyl)非還元末端
又は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコ
ピラノース(2-acetoamide-2-deoxy-β-D-glucopyranos
yl)非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーを例示す
ることができる。また、かかるβ−D−グルコピラノー
ス非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーとしてはPV
-CAやPV-Lam等、2−アセトアミド−2−デオキシ−β
−D−グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖を有す
るポリマーとしてはPV-GlcNAc等のビニル系モノマーに
オリゴ糖を導入した高分子ポリマー(PV-sugar)をより
具体的に例示することができる。そして、これらPV-sug
arは1種単独の他、2種以上の混合物を用いてもよく、
これらPV-sugarは市販のものを用いることができる。
【0021】本発明の基底膜の調製方法における(糖鎖
を備えた)支持体としては、線維性コラーゲンマトリッ
クス、多孔性PET膜、ポリスチレンプレート、(合
成)エラスチンポリマー、生体吸収性ポリマー等を例示
することができるが、栄養塩、老廃物の拡散を確保する
点で線維性コラーゲンマトリックスが好ましく、かかる
線維性コラーゲンマトリックスとしては、線維芽細胞に
よって収縮されるコラーゲンゲルの高密度マトリックス
を用いることもできる。この場合、コラーゲンの生合成
を高めるため、ascorbic acid-2-phosphate(Asc−
P)を添加することもできる。また、中性I型コラーゲ
ン溶液をCO2インキュベーター内で静置してインキュ
ベートし、ポリマー化したゲルを、室温下に風乾した線
維性コラーゲンマトリックスを用いることもできる。ま
た、生体吸収性ポリマーを用いると、支持体に担持され
た基底膜の構造を保持したままで移植が可能なことから
好ましく、かかる生体吸収性ポリマーとしては、ポリグ
リコール酸、ポリ−L−乳酸、L−乳酸−グリコール酸
共重合体、グリコール酸−ε−カプロラクトン共重合
体、L−乳酸−ε−カプロラクトン共重合体、ポリ−ε
−カプロラクトン等を具体的に例示することができる。
【0022】本発明の組織モデルとしては、上記本発明
の基底膜の調製方法により得られる細胞層とその直下の
基底膜を含む組織であればどのようなものでもよいが、
例えば、表皮組織モデル、角膜上皮組織モデル、肺胞上
皮組織モデル、気道上皮組織モデル、腎糸球体組織モデ
ル、肝実質組織モデル、肺動脈血管内皮組織モデル等を
具体的に挙げることができる。本発明の組織モデルは、
生体同様の細胞層と基底膜構造を有していることから、
生体本来のバリアー機能を備えており、従前のバリアー
機能を保持していない人工皮膚等に比べて、化学物質等
の薬理試験、毒性試験等への応用上特に有利に用いるこ
とができる。例えば、被検物質を上皮組織モデルの細胞
層上に存在せしめ、上皮細胞の上面と基底面間の電気抵
抗を測定することにより、上皮組織に対する被検物質の
安全性や毒性を試験することができる。被検物質により
肺胞上皮組織に軽微だが傷害が生ずれば、電気抵抗が低
下することから、被検物質の安全性や毒性を評価するこ
とができる。また、被検物質を上皮組織モデルの細胞層
上に存在せしめ、上皮細胞や基底膜の状態を走査型電子
顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察することにより、上皮
組織に対する被検物質の安全性や毒性を試験することが
できる。
【0023】本発明のテストティッシュキットとして
は、本発明の基底膜の調製方法により得られる組織モデ
ルを含むキットであれば特に制限されるものではなく、
例えば、本発明の組織モデル構造体を含む薬理試験用、
毒性試験用等のテストキットや、薬理試験用、毒性試験
用等の組織モデル作製キットを挙げることができる。組
織モデル作製キットとしては、検査組織を構成する所定
の細胞、該細胞を播種するPV-GlcNAc等でコーティング
された線維性コラーゲン等の細胞外基質、DMEM培地
等の前記細胞を培養するための標準的な培地、補助成分
としてマトリゲル、IV型コラーゲン溶液、緩衝液等を含
むキットを具体的に例示することができ、かかる組織モ
デル作製キットを用いて組織モデルを作製する様子が図
4に示されている。
【0024】さらに、本発明の組織モデルから、基底膜
形成能を有する細胞を基底膜から除去することにより、
基底膜標品(rBM;reconstructed basement membran
e)を作製することができる。基底膜形成能を有する細
胞を基底膜から除去する方法としては特に制限されない
が、基底膜に損傷を与えること無く、上皮細胞や内皮細
胞を除去する方法が好ましく、トリプシン等の蛋白分解
酵素を使って細胞を除去すると、基底膜まで分解されて
しまうので好ましくない。基底膜に損傷を与えること無
く上皮細胞や内皮細胞を除去する方法としては、例え
ば、0.18Mの過酸化水素で10分間、肺胞上皮細胞
等の基底膜を形成した細胞を処理し、その後1日間培養
を継続して自動的に細胞を基底膜から剥離させる等の公
知方法を挙げることもできるが、本発明者により見い出
された方法、すなわち、界面活性剤、例えば、0.1%
トリトン(Triton)X−100等の界面活性剤により細
胞の脂質成分を溶解し、アルカリ性溶液、例えば、50
mMのNH3や1mMのNaOH等のアルカリ性溶液で
細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解し(基底膜の
蛋白までは溶かしてはならない)、細胞が溶解する際に
遊離してくるリソゾーム中の蛋白分解酵素等の内因性プ
ロテアーゼ活性による基底膜の分解を抑制するため、蛋
白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、protease inhibit
ors cocktail)を添加したリン酸緩衝液中で行う方法が
好ましい。
【0025】かかる基底膜形成能を有する細胞を基底膜
から除去する工程により、上皮細胞や内皮細胞が剥離さ
れ、基底膜が露出した基底膜標品を作製することができ
る。上皮細胞や内皮細胞が形成した基底膜構造体とコラ
ーゲン線維等の支持材からなる上記基底膜標品は、他の
細胞の培養に利用することができる(図5参照)。上皮
の基底膜と内皮の基底膜とは同じものとはいえないもの
の構成成分の多くが共通し、上皮細胞が形成した基底膜
を内皮組織の構築に転用することができ、例えば、基底
膜標品上に目的とするヒト上皮細胞やヒト内皮細胞を播
種し、培養するだけでヒト上皮組織やヒト内皮組織を構
築することができる。実際、肺胞II型上皮細胞が形成し
た基底膜上に肺動脈内皮細胞を播種・培養し、肺動脈内
皮組織を構築することができることを確認している。基
底膜構造体上に上皮細胞ないし血管内皮細胞を播種し、
新たな組織を形成させる際、目的とする組織や臓器の間
質細胞(線維芽細胞)を共存させると、基底膜の新陳代
謝が円滑になることから好ましい。また、基底膜は、細
胞が接着した状態では保存出来ないが、細胞が除去され
非細胞成分のみで構成される前記基底膜標品は、保存が
容易であり、必要時に、何時でも、何処でも使用できる
という利点を有する。そして、基底膜標品の保存は、冷
蔵でも冷凍でも全く問題がなく行うことができる。
【0026】上記のように、基底膜標品を利用した上皮
組織や内皮組織などの構築方法は汎用性が高く、例え
ば、ラットの肺胞上皮細胞を用いて作製した基底膜はヒ
トの組織構築にも使用することが可能であり、また、か
かるラット肺胞上皮細胞由来の基底膜から構築される臓
器や組織も肺胞に限定されるものではない。これに対
し、個々の臓器の上皮細胞や内皮細胞を培養して基底膜
を形成させ、上皮組織や内皮組織などを構築する場合に
は、個々の細胞に応じた培養系を開発するのに、多くの
時間と労力が必要であり、また、それぞれの組織用に基
底膜を個別に用意するのでは無駄が多いが、上記のよう
に、基底膜標品を組織構築用共通ベース資材として使う
ことによって、効率化を図ることができる。そして、基
底膜標品を利用して上皮組織や内皮組織などを構築する
場合の培養容器としては特に制限されず、カルチャーイ
ンサート方式の他、ホロファーバー方式にも応用するこ
とができ、例えば、人工血管に適用する場合は、人工血
管における問題点である血栓の発生を防止することがで
き、また、人工透析に適用する場合は、患者への負担が
軽減できる。このように、基底膜標品から構築された組
織モデルや臓器モデルも、本発明の組織モデルと同様
に、生体本来のバリアー機能を備えた細胞層と基底膜構
造を有していることから、生体本来のバリアー機能を備
えており、化学物質等の薬理試験、毒性試験等へ有利に
応用することができる。
【0027】さらに、プラスチック膜等を有さない基底
膜標品やプラスチック表面に固着していない基底膜標
品、例えば、コラーゲン線維上に形成された基底膜標品
を利用して構築された組織や臓器等は、基底膜の構造を
保持したままで移植が可能なことから、その汎用性が一
層高く、その適用例として、内径3mm以下の微細人工
血管や、体内埋込み型のヒト人工組織等を例示すること
ができ、特に、人工子球体、人工肝臓、人工肺胞など上
皮組織と内皮組織が近接する組織や臓器を好適に例示す
ることができる。上記プラスチック膜等を有さない基底
膜標品の作製には、反応性の官能基(反応基)を有する
ポリマー、より詳細には、プラスチック表面に吸着する
ことができる、ポリビニール鎖、直鎖状アミノ酸ポリマ
ー(ポリグリシン、ポリアラニン等)などの疎水性の直
鎖状骨格を持つポリマーで、該疎水性の直鎖状骨格に直
接、あるいは、スペーサーを介して、コラーゲン等の蛋
白質と反応できる反応基を有するポリマーを好適に用い
ることができる。これらのポリマーは、前記疎水性の直
鎖状骨格により、化学結合でなく疎水性結合でプラスチ
ック表面に吸着されることから、プラスチックの種類や
材質に関係なく用いることができ、例えば、コラーゲン
線維上に形成された基底膜標品を利用して組織や臓器等
を構築する場合、培養後の操作中に基底膜標品がプラス
チック膜から剥がれて、その使用価値を失うといったお
それがない一方で、必要に応じてプラスチック膜やプラ
スチック表面から容易に機械的に剥離させることができ
る。
【0028】また、上記反応基としては、タンパク質の
官能基と反応して、結合しうるものであれば特に制限さ
れるものではなく、無水カルボン酸型の反応基、アミノ
基、SH基等を例示することができる。上記無水カルボ
ン酸型の反応基としては、無水マレイン酸基を好適に例
示することができ、タンパク質のN末端アミノ基、リジ
ンε−アミノ基、SH基等の官能基と結合する。上記ア
ミノ基はタンパク質のカルボキシル基と反応するが、化
学結合とするためペプチド縮合剤を添加することが好ま
しい。上記SH基はタンパク質のSH基と主として反応
し、時には、S−S結合とSS交換反応で結合すること
もある。そして、かかるSH基に、前記疎水性の直鎖状
骨格とコポリマーを形成することができる範囲内で、簡
単に外れる可逆的な保護基をつけることもできる。
【0029】かかる反応性の官能基を有するポリマーと
して、メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸との交互
共重合体(MMAC;Methyl vinyl ether / maleic an
hydride copolymer)を具体的に挙げることができ、M
MACの場合、メチレン基を骨格とする直鎖ポリマー
が、プラスチック表面に疎水性結合で吸着することを可
能にしているが、−CH2−CH2−骨格だけだとあまり
にも疎水性で、水との親和性が低くなり、微視的には水
をはじいて、反応性に支障がでる可能性があり、そこ
で、メチレン基のH原子の一部をCH3O基で置換し、
O原子の存在により反応効率が高まると考えられてい
る。なお、CH3O基に代えてOH基で置換すると、分
子間で無水カルボン酸とエステル結合を作ることから好
ましくない。またMMACは、エタノールに可溶のた
め、アセトン等を必要とするポリマーよりも使い易い上
に、塗布後に速やかに風乾できる。そして、MMACに
おける反応基である無水マレイン酸は、コラーゲン等の
タンパク質のアミノ基と結合することになるが、この無
水マレイン酸がたとえ水と反応してカルボン酸になった
としても、タンパク質の+の電荷とイオン結合すること
ができる。コラーゲンタンパク質は、分子内にリジン残
基を有しており、側鎖のε−アミノ基がその結合相手に
なると考えられる。
【0030】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例に限
定されるものではない。 実施例1(基底膜を形成する上皮細胞・内皮細胞) 上皮細胞として、Dr. A. Clement, Hopital Armand Tro
usseau, Paris(Clement et al.,Exp.Cell Res., 196:
198-205, 1991)から供与された肺胞II型上皮細胞(S
V40−ラージT抗原遺伝子をトランスフェクトしたラ
ットから採取;T2細胞)を、10mMの2−[4−
(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタン
スルホン酸(HEPES)(pH7.2)、10%ウシ
胎児血清(FBS;Hyclone Laboratories Inc., Loga
n, Utah)、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加
したDMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)に
おいて、空気95%/CO25%の大気条件下で培養し
て用いた。また、内皮細胞として、クローンテックス
(Clonetics)社から購入したヒト肺動脈血管内皮細胞
(HPAE細胞)を、10mMのHEPES(pH7.
2)、2%FBS、成長因子、ペニシリン及びストレプ
トマイシンを添加したMCDB131単独又はMCDB
131とDMEMの等量混合培地において、空気95%
/CO25%の大気条件下で培養して用いた。線維芽細
胞は、雄ラットJcl:Fischer 344由来の肺線維芽細胞を
文献(CELL STRUCTURE AND FUNCTION 22: 603-614,199
7)記載の方法に準じて調製したもの、及び、クローン
テックス社から購入したヒト肺線維芽細胞を用いた。
【0031】実施例2(上皮細胞におけるレセプターの
存在の確認) 10μg/ml濃度の各種PV-Sugar(生化学工業社製)
を、製造者のプロトコールに従い、96穴ポリスチレン
製プレート(ベクトンディッキンソン社製)にコーティ
ングし、その上にラット肺胞II型上皮細胞を1×104
個まき、10mM HEPES(pH7.2)と1%F
BSを添加したDMEM中、CO2インキュベーターで
37℃、24〜48時間インキュベートした。インキュ
ベート後、クリスタルバイオレットで細胞を染色し、5
95nmの吸光度を測定して細胞数とすることにより、
各種PV-Sugarとの接着性について調べた。また、細胞接
着因子のファイブロネクチン(FN)及びビトロネクチ
ン(VN)コートに対する細胞接着も同時に行い、対照
実験とした。結果を図6に示す。図6の横軸には、種々
の非還元末端糖鎖のPV-sugar(GlcNAc;2-acetoamide-2
-deoxy-β-D-glucopyranosyl、Lam;β-D-glucopyranos
yl-(1→3)、CA;β-D-glucopyranosyl-(1→4)、LA;β-
D-galactopyranosyl、MA;α-D-glucopyranosyl、Man;
β-D-mannopyranosyl、MEA;α-D-galactopyranosyl)
が示されている。図6から、肺胞II型上皮細胞は、2−
アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノー
ス非還元末端を有する糖鎖をもつPV-GlcNAc、β−D−
グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖をもつPV-CA
やPV-Lam、β−D−ガラクトピラノース非還元末端を有
する糖鎖をもつPV-LAに対し強い接着を示すことがわか
った。これらの結果から、肺胞II型上皮細胞は、その基
底面にこれら糖鎖に対するレセプターを発現することが
示された。
【0032】実施例3(線維性コラーゲン基質の調製) コラーゲンゲル線維を、通常線維芽細胞によって構築さ
れるコラーゲンゲルの密度マトリックスを模して調製し
た。DMEM(pH7.2)における中性I型コラーゲ
ン溶液(0.42mlのウシ真皮から酸抽出で採った
0.3〜0.5mg/mlのI型コラーゲン;Koken C
o., Tokyo)を、6ウエル培養プレート(Becton Dickin
son Labware, Franklin Lakes, NJ)のポリエチレンテ
レフタル酸エステル膜と共に、4.3cm2の培養線維
芽細胞層に投入し、CO2インキュベーターで、数時間
〜24時間インキュベートし、ゲル化した。このゲル
を、室温下24〜48時間風乾して圧縮し、高密度コラ
ーゲン線維(fib)として使用した。上記線維芽細胞
としては、雄ラットJcl:Fischer 344由来の肺線維芽細
胞を文献(CELL STRUCTURE AND FUNCTION 22: 603-614,
1997)記載の方法に準じて調製した。
【0033】実施例4(肺胞II型上皮細胞による基底膜
の調製) 基底膜の調製には、下部ウェルと、該下部ウェルに同心
円上に収納され、底部にPET膜を有する上部ウェルか
らなるカルチャーインサートを用いた(図1を参照)。
上部ウェルの底部PET膜上に、実施例3で示した方法
で作製した高密度コラーゲン線維(fib)にDMEM
に溶解した10μg/ml濃度のPV-GlcNAc、PV-CA又は
PV-Lamをコーティングした支持体(fib*)上で、肺
胞II型上皮細胞を37℃、5%CO2存在下で2週間培
養した。この培養では、線維芽細胞を包埋したコラーゲ
ンゲル(Fgel)、マトリゲル(MG)又はTGFβを培養系
に添加せず、培養液には10mMのHEPES(pH
7.2)、1%FBSと0.2mMascorbic acid-2-ph
osphate(Asc−P)を添加したDMEMを用いた。
形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図7
に、形成された肺胞上皮組織の表面の肺胞II型上皮細胞
層を参考例1(後述)に示す方法で除去し、露出した肺
胞上皮組織直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を
図8に示す。
【0034】図7中、太矢印は基底膜緻密板(lamina d
ensa)を、細矢印は培養初期に形成され、一部は分解さ
れつつある旧基底膜を、鏃は基底膜が形成されていない
領域をそれぞれ示す(スケールの長さは1μm)。また
図8のPV-sugar未処理(Cont)では、既存のfib(コ
ラーゲン線維,白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集
積している個所(*)が認められるにすぎないが、PV-G
lcNAc,PV-Lam,PV-CA処理では、基底膜が平面状(図7
の太矢印に対応)に形成されており、PV-Lam処理では、
肺胞II型上皮細胞層を除去する際に、一部失われた基底
膜の欠損窓から、下部のコラーゲン線維(白抜き太矢
印)が垣間見える(スケールの長さは1μm)。これら
の結果から、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D
−グルコピラノース非還元末端を有するPV-GlcNAcやβ
−D−グルコピラノース非還元末端を有するPV-CAやPV-
Lamでコーティングした高密度コラーゲン線維支持体(G
lcNAc-fib*, CA-fib*, Lam-fib*)上で培養すると、肺
胞II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮
組織が構築されることを確認した。また、β−D−ガラ
クトピラノース非還元末端を有するPV-LAに対して、肺
胞II型細胞は接着するが(図6)、基底膜は形成されな
かった(図7及び図8)。このことは、糖鎖に対する細
胞接着は、基底膜形成の必要条件ではあっても、十分条
件ではないことを示している。
【0035】実施例5(マトリゲルによる基底膜形成を
促進する効果) 図1のT2-fib-MGに示した様に、下部ウェルにマトリゲ
ル200μlをコーティングし、高密度コラーゲン線維
(fib)上で肺胞上皮細胞を2週間培養すると上皮細
胞直下に基底膜が形成される。しかし、マトリゲルの量
が50μlに満たないと基底膜は形成されない(J. Cel
l Sci., 113: 589-868, 2000)。この場合にあっても、
実施例3に示した方法で高密度コラーゲン線維(fi
b)を作製し、実施例4に示した方法でPV-GlcNAc, PV-
CA又はPV-Lamでコーティングした培養基質(fib*)
を用いると、10日間培養で肺胞II型上皮細胞層直下に基
底膜が形成される。図9には、種々のPV-sugarをコーテ
ィングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培
養皿底面にコーティングした25μlマトリゲルと10
日間共培養し、形成した上皮組織の透過型電子顕微鏡写
真(左側:未処理、及びPV-GlcNAc,PV-CAコーティン
グ)、及び参考例1(後述)に示す方法で肺胞上皮細胞
層を除去し、直下の基底膜構造体を表面に露出させ走査
型電子顕微鏡で撮影した(右側:未処理、及びPV-GlcNA
c,PV-CAコーティング)結果が示されている(記号の意
味及びスケールは実施例4と同じ。)。これらの結果か
ら、マトリゲルの量が不十分の場合でも、PV-GlcNAc又
はPV-CAでコーティングした高密度コラーゲン線維支持
体(GlcNAc-fib*, CA-fib*)を用いることにより、肺胞
II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮組
織が構築されることを確認した。
【0036】実施例6(ヒト肺動脈血管内皮細胞による
基底膜の調製) ヒト肺動脈血管内皮(HPAE)細胞を、図2に示した
方法で培養した。すなわちヒト線維芽細胞を包埋したコ
ラーゲンゲル(Fgel)上に直接培養(EC-Fgel)、Fgel
共存下で高密度コラーゲン線維(fib)上に培養(EC
-fib-Fcm)、200μlのマトリゲルと共にfib上で
共培養(EC-fib-MG)、及びfib上で培養(EC-fib)
した。培養後、表面のHPAE細胞層を参考例1(後
述)の方法で除去し、細胞直下の細胞外基質構造を走査
型電子顕微鏡で観察した(図10)。EC-Fgelの場合は
基底膜が形成されたが、EC-fib-Fcm,EC-fib-MG,EC-fi
bの場合には既存のコラーゲン線維が露出し、T2細胞
の場合(T2-fib-Fcm, T2-fib-MG)の様に基底膜は形成
されなかった(白抜き太矢印はコラーゲン線維。*はコ
ラーゲン線維間に沈着した分泌物。スケールの長さは1
μm。)。そこで、EC-fib-Fcmの培養系を用いて、実施
例5の肺胞II型上皮細胞の場合と同様に、PV-sugarをコ
ーティングした高密度コラーゲン線維支持体(fib
*)上で培養した。培養後、表面のHPAE細胞層を参
考例1の方法で除去し、露出した細胞直下の細胞外基質
構造を、走査型電子顕微鏡で観察した(図11)。PV-G
lcNAc,PV-CAコーティングの場合に、基底膜の形成が認
められた。PV-Lamコーティングの場合には、基底膜の形
成が不完全だった。PV-sugar未処理(Cont)及びPV-LA,
PV-MA, PV-Man, PV-MEA処理では、既存のコラーゲン線
維(白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集積(*)し
ているが、基底膜は形成していない。これらの結果か
ら、PV-GlcNAc, PV-CAコーティングしたfib*(GlcN
Ac-fib*,CA-fib*)を用いると、ヒト肺動脈血管内皮細
胞層の直下に基底膜が形成されたヒト肺動脈内皮組織が
構築されることを確認した。
【0037】参考例1(肺胞上皮細胞層が除去され、基
底膜が露出した基底膜標品の作製) 組織モデル(T2-fib-MG)から、図5に模式的に示され
ているように、II型肺胞上皮細胞層を剥離し、基底膜が
露出した基底膜標品を作製し、作製した基底膜構造体上
に、ラット気道上皮細胞又はヒト肺動脈血管内皮細胞を
播種し、気道上皮組織や血管上皮組織を作製した。ま
ず、カルチャーインサートの上部ウェルのII型肺胞上皮
組織に、蛋白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、ペプチ
ド研究所社製、大阪)を添加した等張のリン酸緩衝液
(pH7.2;PBS(−))中で、0.1%のトリト
ンX−100(界面活性剤)2mlを用いて、上皮細胞
の脂質成分を溶解・溶出すると同時に、共存する50m
M NH3で、細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解
する操作を2回(基底膜の蛋白までは溶かしてはならな
い)繰り返した後、再度PICを含むPBC(−)溶液
で基底膜から界面活性剤とアルカリ洗浄をすることによ
って、肺胞上皮細胞層を剥離して基底膜が露出した基底
膜標品を作製した。
【0038】参考例2(基底膜構造体上でのラット気道
上皮組織の構築) 参考例1で構築した基底膜構造体上に、ラット気道上皮
細胞株(SPOC1、米国NIEHS(National Instit
ute of Environmental Health and Sciences)のDr.Paul
Nettesheimより供与)を5×105個播種し、37℃、
5%CO2存在下、10mMのHEPES(pH7.
2)と1%FBSを添加した、Ham'sF12:DM
EM=1:1の混合培地中で1週間培養して、気道上皮
組織を構築した。基底膜構造体上に構築された気道上皮
組織の透過型電子顕微鏡写真を図12として示す。図1
2Aは基底膜構造体上の気道上皮細胞を示し、図12B
は気道上皮細胞が肺胞上皮細胞由来の基底膜を認識して
アンカリングフィラメントで繋がっている、気道上皮細
胞の基底面と基底膜構造体との強拡大の境界面を示し、
図12Cは細胞−細胞間結合で気道上皮細胞同士が結合
して上皮組織を形成していることを示している。
【0039】参考例3(基底膜構造体上でのヒト血管上
皮組織の構築) 参考例1で構築した基底膜構造体上に、ヒト肺動脈血管
内皮細胞(クローンテック社製)を5×105個播種
し、37℃、5%CO2存在下、10mMのHEPES
(pH7.2)と2%FBSを添加した、MCDB13
1:DMEM=1:1の混合培地中で2週間培養して、
ヒト血管上皮組織を構築した。基底膜構造体上に構築さ
れたヒト血管内皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図13
として示す。図13Aには線維芽細胞との共培養により
構築したヒト血管上皮組織を、図13Bにはマトリゲル
共存下で構築したヒト血管上皮組織を示している。
【0040】
【発明の効果】本発明の基底膜の調製方法によると、特
定の糖鎖をもつポリマーを用いることにより、基底膜構
造体をもつ上皮組織モデルや内皮組織モデルを穏和な条
件で構築することができ、またかかる方法で調製した基
底膜構造体は他組織の上皮組織や内皮組織をも形成させ
ることが可能となった。これら基底膜構造体及び上皮組
織・内皮組織は、医学・生物学の研究用に、人工血管、
人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚、人工角膜等とし
て移植・治療用に、薬理試験や毒性試験用に利用するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】肺胞上皮細胞による基底膜形成を示す模式図で
ある。
【図2】肺動脈内皮細胞による基底膜形成を示す模式図
である。
【図3】上皮細胞と内皮細胞の共培養による基底膜の形
成を示す模式図である。
【図4】基底膜構造体の作製と肺胞上皮組織の構築を示
す模式図である。
【図5】再構成基底膜標品を用いた内皮組織や上皮組織
の構築を示す模式図である。
【図6】肺胞II型細胞の糖鎖接着の特異性を示す図であ
る。
【図7】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間
培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微
鏡写真を示す図である。
【図8】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間
培養した結果形成された肺胞上皮組織直下の細胞外基質
の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培養
皿底面にコーティングした25μlマトリゲルと10日
間共培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子
顕微鏡写真(左)と肺胞上皮組織直下の細胞外基質の走
査型電子顕微鏡写真(右)を示す図である。
【図10】図2の培養方法によるヒト肺動脈血管内皮細
胞の基底膜形成の結果を示す細胞外基質の走査型電子顕
微鏡写真を示す図である。
【図11】種々のPV-sugarをコーティングした高密度コ
ラーゲン線維(fib*)上にヒト肺動脈血管内皮細胞
を播種し、肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルと2
週間共培養した(EC-fib*-Fcm)結果形成された血管内
皮細胞層直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を示
す図である。
【図12】基底膜構造体上に構築された気道上皮組織の
透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図13】基底膜構造体上に構築されたヒト血管内皮組
織の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基底膜形成能を有する細胞の基底面に、
    基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化
    させることができる糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形
    成能を有する細胞を培養することを特徴とする基底膜の
    調製方法。
  2. 【請求項2】 糖鎖を備えた支持体の相対する2つの基
    層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することを
    特徴とする請求項1記載の基底膜の調製方法。
  3. 【請求項3】 基底膜構成成分として、基底膜形成能を
    有する細胞から分泌された成分を用いることを特徴とす
    る請求項1又は2記載の基底膜の調製方法。
  4. 【請求項4】 糖鎖又は糖鎖の一部がレセプターと結合
    することにより、基底膜形成能を有する細胞を支持体上
    に接着しうる糖鎖を用いることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれか記載の基底膜の調製方法。
  5. 【請求項5】 レセプターと結合する糖鎖又は糖鎖の一
    部が基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることを特
    徴とする請求項4記載の基底膜の調製方法。
  6. 【請求項6】 糖鎖を備えた支持体が、糖鎖を有するポ
    リマーをコーティングした支持体であることを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれか記載の基底膜の調製方法。
  7. 【請求項7】 糖鎖を有するポリマーが、β−D−グル
    コピラノース非還元末端又は2−アセトアミド−2−デ
    オキシ−β−D−グルコピラノース非還元末端をもつ糖
    鎖を有するポリマーであることを特徴とする請求項6記
    載の基底膜の調製方法。
  8. 【請求項8】 糖鎖を有するポリマーとして、PV-GlcNA
    c、PV-CA、PV-Lamから選ばれる1種又は2種以上のポリ
    マーを用いることを特徴とする請求項7記載の基底膜の
    調製方法。
  9. 【請求項9】 基底膜形成能を有する細胞を、線維芽細
    胞又はその代替物と共培養することを特徴とする請求項
    1〜8のいずれか記載の基底膜の調製方法。
  10. 【請求項10】 基底膜形成能を有する細胞を、基底膜
    構成成分の1種又は2種以上の存在下で培養することを
    特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の基底膜の調製
    方法。
  11. 【請求項11】 基底膜形成能を有する細胞を、TGF
    −β(トランスフォーミング増殖因子)の存在下で培養
    することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の
    基底膜の調製方法。
  12. 【請求項12】 基底膜形成能を有する細胞が、上皮細
    胞、内皮細胞又は間充織細胞であることを特徴とする請
    求項1〜11のいずれか記載の基底膜の調製方法。
  13. 【請求項13】 基底膜形成能を有する細胞及び/又は
    線維芽細胞が、基底膜構成成分の1種又は2種以上の遺
    伝子が導入された、基底膜構成成分高発現細胞であるこ
    とを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の基底膜
    の調製方法。
  14. 【請求項14】 支持体が、線維性コラーゲンであるこ
    とを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の基底膜
    の調製方法。
  15. 【請求項15】 請求項1〜14のいずれか記載の基底
    膜の調製方法により得られることを特徴とする組織モデ
    ル。
  16. 【請求項16】 請求項1〜14のいずれか記載の基底
    膜の調製方法により得られる組織モデルを含むことを特
    徴とするテストティッシュキット。
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