JP3784129B2 - 高強度アルミナ質焼結体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエハ研磨用プレートや半導体製造装置用治具などの精密加工製品、ポンプ、バルブ、粉砕機用部品、伸線機械用部品などの耐食・耐摩耗・耐熱部品、切削工具、ICパッケージ基板、高温で使用される耐熱部材などに使用される高強度アルミナ質焼結体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルミナ質焼結体は、その優れた耐摩耗性、耐食性、適度な強度を有し、廉価であることから、広く産業機械部品に使用される他、高絶縁性とメタライズ配線技術の確立によって、配線基板などの絶縁基板として広く使用されている。
【0003】
このアルミナ質焼結体は、一般には、アルミナ粉末に、焼結助剤としてSiO2 、CaO、MgOなどの酸化物を添加し成形後、1500〜1700℃の温度で焼成することにより作製される。
【0004】
ところが、かかるアルミナ質焼結体の強度はせいぜい300〜400MPa程度であることから、産業機械部品としてさらに強度が要求される部品や切削工具等に使用することができず、高強度化が進められてきた。
【0005】
そこで、従来より、アルミナに対して、炭化ケイ素やジルコニアを分散させることにより高強度化が図ることが、特開昭61−122164号、特開昭63−139044号等にて提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルミナに炭化ケイ素等の炭化物を分散させた焼結体は、高温の酸化性雰囲気で炭化物が酸化物に酸化されやすく焼結体の耐酸化性に欠けるという問題があり、また、1000℃を越える温度での強度が低いものであった。
【0007】
また、ジルコニアを分散させた系は、室温では高い強度を有するものの、900℃付近から強度が極端に低下するために、それを越える温度領域では、使用できないという問題があった。
【0008】
従って、本発明は、室温から高温まで高い強度を有するアルミナ質焼結体とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の高強度アルミナ質焼結体は、平均粒径10μm以下の結晶粒子からなるアルミナマトリックスに、該マトリックスとの反応層を介して平均粒径1μm以下の窒化珪素および/またはサイアロンからなる無機質結晶粒子を0.001〜0.5体積%の割合で分散含有するとともに、相対密度が96%以上であることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のアルミナ質セラミックスは、アルミナからなるマトリックスと、該マトリックス中に分散する無機質結晶からなる分散粒子によって構成される相対密度96%以上,特に98%以上の緻密体からなる。アルミナマトリックスは、その平均粒径が10μm以下、特に5μm以下、さらには2μm以下の微細な結晶粒子によって構成されることが必要である。なお、アルミナ結晶の平均粒径が10μmよりも大きいと、焼結体の強度が極端に低下してしまう。
【0012】
一方、アルミナマトリックス中に分散する無機質結晶粒子は、窒化珪素(Si3 N4 )および/またはサイアロンからなる。これらの分散粒子は、アルミナマトリックス中に、0.001〜0.5体積%、特に0.005〜0.1体積%、さらには、0.005〜0.08体積%の割合で分散させることが必要であり、分散粒子の量が0.001体積%よりも少ないと、強度向上効果が得られず、0.5体積%を越えると緻密化することが難しく相対密度96%以上が達成されなくなる。なお、サイアロンは、Si6-Z AlZ OZ N8-Z (ただし、0<z≦4)で表されるβ−サイアロン、サイアロンの結晶格子中にY、希土類元素が侵入したものであってもよい。また、分散粒子は、平均粒径で1μm以下、特に0.5μm以下の粒子として分散されることが重要であり、この粒径が1μmよりも大きいと焼結体の強度が向上しない。なお、この分散粒子はアルミナ結晶粒子内およびその粒界に分散含有される。
【0013】
マトリックスを構成するアルミナは、それ自体、高温での耐酸化性に優れるものの高温強度が低く、一方、窒化珪素あるいはサイアロンは、高温での強度には優れるが、酸化性雰囲気中では酸化される性質を有する。
【0014】
本発明によれば、図1のアルミナ結晶粒内の分散粒子の状態を示す図、あるいは図2のアルミナ結晶粒界の分散粒子の状態を示す図から明らかなように、アルミナマトリックスのアルミナ結晶粒子1の粒内、あるいはアルミナ結晶粒子1の粒界に、窒化珪素あるいはサイアロンの結晶粒子2を反応層3を介して前述したように極微量分散させることで、アルミナの優れた耐酸化性を損なうことなく、高温での強度を大幅に向上することができる。
【0015】
これは、図1においてアルミナ結晶粒子1の粒内に反応層3を介して存在する無機質分散粒子2が、両者の熱膨張差による残留応力場が広げるとともに、図2において粒界に存在する分散粒子2は、反応層3の形成により粒界を強固に結合させ、粒界破壊を抑制する作用をなしているものと推察される。なお、反応層3は、アルミナと微量の窒素、ケイ素を含む非晶質層により形成される。
【0016】
かかる高強度アルミナ質焼結体を製造する方法としては、マトリックスを形成する成分として、平均粒径が2μm以下、好ましくは1μm以下のアルミナ粉末を用いる。このアルミナ粉末の平均粒径が2μmを越えると、緻密化不足を招いて、強度低下を引き起こすためである。
【0017】
また、分散粒子形成成分としては、平均粒径が1μm以下、特に0.5μm以下の窒化珪素粉末および/またはサイアロン粉末、または熱分解によって窒化珪素および/またはサイアロンに変化し得る有機ケイ素化合物を添加する。かかる有機ケイ素化合物としては、ポリシラザン、ポリカルボシラザン等が挙げられる。なお、窒化珪素粉末および/またはサイアロン粉末を用いる場合、平均粒径が1μmを越えると、強度特性の向上が図れず、また、酸窒化ケイ素粉末は、焼結体中において粉末粒子とほぼ同様な粒子径で存在することから、1μmを越えると、焼結体中での粒径も大きくなり特性効果が達成されない。
【0018】
これら分散粒子源は、窒化珪素あるいはサイアロンに換算して、0.001〜0.5体積%、特に0.005〜0.1体積%、さらには、0.005〜0.08体積%の割合になるように混合する。この量が0.001体積%よりも少ないと強度向上効果が望めず、0.5体積%を越えると、緻密化することが難しくなる。なお、この配合量は、熱分解によって窒化珪素および/またはサイアロンに変化し得る無機化合物を用いた場合には熱分解後の形態に換算した量を示す。
【0019】
次に、窒化珪素粉末あるいはサイアロン粉末を添加した場合は、その混合粉末を所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、射出成形、押出し成形等により任意の形状に成形する。なお、前記有機ケイ素化合物を添加した場合は、混合粉末を一旦熱分解させて窒化珪素あるいはサイアロンを生成させた後、前記の方法により成形するか、または、有機ケイ素化合物を含む混合物を所定形状に成形した後、窒素ガス、または窒素ガスと水素ガスとの混合ガス中で熱分解させて窒化珪素あるいはサイアロンを生成させる。
【0020】
有機ケイ素化合物を熱分解させる温度としては、アルミナの緻密化が始まる温度以下であることが望ましく、1000℃以下が望ましい。1000℃を越えると、アルミナの緻密化が始まり、熱分解ガスが焼結体内部にトラップされてしまい、緻密化を疎外し、密度低下、強度低下を引き起こす場合があるためである。
【0021】
このようにして得られた成形体を窒素雰囲気中で1200℃以上、好ましくは1300℃〜1550℃の温度で焼成する。焼成方法としては、ホットプレス、常圧焼成、または熱間静水圧焼成して作製する。この時の焼成温度が1200℃に達しないと緻密化が不足して密度が低下したり、反応層の形成が不十分となり強度低下を引き起こす。また、ホットプレスを行う場合には、成形と焼成を同時に行うことができる。
【0022】
【実施例】
実施例1(試料No.1〜23、26、27)
アルミナ粉末として純度99.99%、結晶粒径が0.2μmの大明化学工業株式会社製のタイミクロンTM−DAR(A−1)を用いた。窒化ケイ素粉末として平均粒径が0.4μmの宇部興産製の窒化ケイ素粉末(B−1)、サイアロン粉末として、z値が1〜3の平均粒径が0.5μm前後になるように粉砕して作製した宇部興産製のZ=1の粉末(C−1)、Z=2の粉末(C−2)、Z=3の粉末(C−3)を準備した。比較のために、結晶粒径が1.2μmのAl2 O3 粉末(A−2)と、平均粒径が1.8μmの窒化ケイ素粉末(B−2)を準備した。
【0023】
そして、上記アルミナ粉末と窒化ケイ素粉末あるいはサイアロン粉末を表1および表2に示す組み合わせおよび配合量で秤量し、アルミナのボールを用いて有機溶媒中で混合し、エバポレーターを用いて乾燥粉末を得た。
【0024】
焼成は、ホットプレス焼成(H.P)と雰囲気焼成(PLS)を用いた。ホットプレス焼成の場合は、この粉末をカーボン型に入れ、窒素ガス中、30MPa圧力下で表に示す焼成温度で焼成した。雰囲気焼成の場合は、この粉末を3t/cm2 の圧力で静水圧処理をして成形体を作製し、常圧の窒素ガス中、表1、2に示す焼成温度で焼成した。
【0025】
得られた焼結体から試験片を切り出し、研磨加工した。そして比重をJISR2205に基づいて求め、相対密度を求めた。強度値はJISR1601に基づく4点曲げ試験より室温および1400℃の強度を求めた。また、試験片表面を鏡面加工し窒素雰囲気中で熱エッチングし、焼結体中の表面を観察した。また、電子顕微鏡写真によりマトリックスや分散粒子の粒径を観察測定測定した。結果は、表1、2に示した。
【0026】
実施例2(試料No.24,25)
アルミナ粉末をアルミナメデイアを用いて有機溶媒中で解砕、分散させた後、窒素置換したグローボックス中で東燃株式会社製のポリシラザンNーN510(D−1)の有機ケイ素化合物を窒化珪素換算で各々表2に示す量を添加し、密閉後、再度、混合した。そして、有機ケイ素化合物を添加した混合粉末を乾燥し、窒素+4%水素混合ガス中で800℃で熱分解させて窒化珪素を生成させた後、再度軽く解砕し、整粒した。焼成は、上記のようにして調製した整粒粉末をカーボン型に入れ、窒素ガス中、30MPaの圧力を印加して表2の温度でホットプレス焼成した。
【0027】
得られた焼結体から、実施例1と同様にして、相対密度、JISR1601に基づく室温および1400℃における4点曲げ試験より求めた。また、試験片表面を鏡面加工し、窒素雰囲気中で熱エッチングし、焼結体中のアルミナマトリックスの平均粒径および分散粒子の平均粒径を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
測定の結果、分散粒子形成成分として、平均粒径が1μm以下のB−1、C−1〜C−3を使用した場合、および有機ケイ素化合物を用いた場合、分散粒子はいずれも平均粒径0.5μm以下の微細な粒子として、アルミナ結晶粒内および粒界に分散していた。
【0031】
しかし、平均粒径が1μmを越える粉末(B−2)を使用した試料No.27では、分散粒子は1.8μmの大きさとなっており、その結果、反応層は形成されても強度の向上は見られなかった。
【0032】
また、何ら分散粒子を含まない試料No.1は、室温強度450MPa、1400℃強度では170MPaと非常に低い。また、無機質結晶粒子の含有量が0.5体積%を越える試料No.8、9、21、焼結体のアルミナマトリックスの平均粒径が10μmを越える試料No.13、無機質結晶粒子の平均粒径が1μmを越える試料No.27では、機械的強度の向上効果が得られなかった。また、原料としてのアルミナ粉末の平均粒径が2μmを越える試料No.26および焼成温度が1200℃よりも低い試料No.10では、いずれも相対密度96%以上が達成できなかった。
【0033】
これらに対して、平均粒径1μm以下の窒化珪素やサイアロンを0.001〜0.5体積%の割合で含有せしめた本発明の焼結体は、いずれも室温強度600MPa以上、1400℃強度300MPa以上の優れた機械的強度を示した。また、高温耐酸化性においてもアルミナと同等の優れた特性を示した。
【0034】
【発明の効果】
上述の如く、本発明のアルミナ質焼結体は、室温から高温まで優れた抗折強度を有することから、ウエハ研磨用プレートや半導体製造装置用治具などの精密加工製品、ポンプ、バルブ、粉砕機用部品、伸線機械用部品などの耐食・耐摩耗・耐熱部品、切削工具、ICパッケージ基板、高温で使用する耐熱部材等に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミナ質焼結体のアルミナ結晶粒内の分散粒子の状態を説明するための図である。
【図2】本発明のアルミナ質焼結体のアルミナ結晶粒界の分散粒子の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
1 アルミナ結晶粒子
2 分散粒子
3 反応層
Claims (2)
- 平均粒径10μm以下の結晶粒子からなるアルミナマトリックスに、該マトリックスとの反応層を介して平均粒径1μm以下の窒化珪素および/またはサイアロンからなる無機質結晶粒子を0.001〜0.5体積%の割合で分散含有するとともに、相対密度が96%以上であることを特徴とする高強度アルミナ質焼結体。
- 前記無機質結晶粒子は、前記アルミナ結晶粒子内およびその粒界に分散する請求項1記載の高強度アルミナ質焼結体。
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JPH10273359A JPH10273359A (ja) | 1998-10-13 |
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