JP3784114B2 - 表面溶融炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天井部および当該天井部の周囲から垂下した内筒からなる固定部と、前記内筒に対して同軸芯の状態に前記内筒の外方に位置する外筒および当該外筒の下端部に連接する底板とからなる回転部とを備え、前記内筒の内側に乾留残渣を燃焼処理する燃焼室が形成されると共に、前記内筒と前記外筒との間に乾留残渣を充填状態で自重落下させる環状供給路を形成し、当該環状供給路の下端が前記燃焼室に連通している表面溶融炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の表面溶融炉の場合には、図3に示すごとく、当該表面溶融炉R内に投入された乾留残渣6を燃焼処理するのに、天井部1の中央部に備えた燃焼バーナー8から灯油などの燃料を噴射すると共に、内筒2の内側側面から助燃空気12を供給することで前記燃料を燃焼させ、その輻射熱を利用して焼却灰等を溶融処理していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の燃焼による方法によれば次のような問題があった。
即ち、上記従来の表面溶融炉Rにおいては、既に焼却処理された焼却灰等を輻射熱で溶融処理するから、助燃空気12は燃焼バーナー8の熱を効率よく溶融物に伝えるように噴き出す形式であった。
しかしながら、溶融処理する廃棄物の中には未燃焼の炭素を含んで自燃性を有するものが混在する場合があり、さらには、自燃性を有する廃棄物を積極的に表面溶融炉Rを用いて溶融処理したい場合がある。このような場合には、前記燃焼バーナー8の輻射熱に加え、高温化した前記廃棄物に燃焼用の空気を吹き付けるように供給して溶融速度を向上させることが考えられる。
ただし、自燃性を有する前記廃棄物が例えば乾留残渣である場合には、その粒径は50mm程度或いはそれ以上あるのが普通であるから、たとえ燃焼用空気を供給しながら処理を行うにしても前記乾留残渣の中心部分まで完全に溶融するにはある程度の時間を必要とし、溶融処理速度の向上を図るにもある程度の限界があった。
【0004】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、未燃焼の炭素を含み、自燃性を有する乾留残渣の溶融処理速度を向上できる表面溶融炉を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
本発明の表面溶融炉は、請求項1に記載したごとく、天井部および当該天井部の周囲から垂下した内筒からなる固定部と、前記内筒に対して同軸芯の状態に前記内筒の外方に位置する外筒および当該外筒の下端部に連接する底板とからなる回転部とを備え、前記内筒の内側に乾留残渣を燃焼処理する燃焼室が形成されると共に、前記内筒と前記外筒との間に乾留残渣を充填状態で自重落下させる環状供給路を形成し、当該環状供給路の下端が前記燃焼室に連通している表面溶融炉であって、当該表面溶融炉の燃焼室に臨む乾留残渣の環状堆積部分に対して、燃焼用空気を堆積表面側から供給する空気供給機構と水蒸気を堆積表面側から供給する水蒸気供給機構とを備えた構成にすることができる。
(作用・効果)
本構成の表面溶融炉では自燃性を有する乾留残渣を処理する。このように自燃性を有する乾留残渣を溶融させるためには、従来の表面溶融炉のごとく燃焼バーナーの輻射熱が利用できるのは勿論であるが、この他に、高温化された乾留残渣に燃焼用空気を供給すれば乾留残渣は自燃し、さらに、水蒸気を供給すれば乾留残渣中の未燃焼の炭素との水性ガス化反応が生じるから乾留残渣の処理をさらに促進させることができる。
【0007】
(構成2)
請求項1の表面溶融炉は、請求項2に記載したごとく、前記空気供給機構と前記水蒸気供給機構とを、前記天井部に設けて構成してもよい。
(作用・効果)
本構成であれば、前記空気供給機構と前記水蒸気供給機構とが簡単に構成できる。
【0008】
(構成3)
請求項1の表面溶融炉においては、請求項3に記載したごとく、前記空気供給機構を空気供給路を前記内筒自身の内部に貫通形成すると共に、前記空気供給路のうち前記乾留残渣に対する空気出口を前記内筒の下端部に形成するものであってもよい。
(作用・効果)
本構成であれば燃焼反応が起こる溶融面への均一な吹込みができ、空気出口から供給される燃焼用空気が他の無関係な部分に飛散するのを抑制して燃焼用空気の多くを乾留残渣の自燃に利用できる。よって、燃焼用空気の供給量を必要最小限に留めることができ、燃焼用空気の使用効率を高めることができる。
また、燃焼用空気の量を必要最小限に留めることができれば、当該燃焼用空気によって燃焼室内部が冷却されるという不都合を回避することもできる。
【0009】
(構成4)
請求項1の表面溶融炉は、請求項4に記載したごとく、前記水蒸気供給機構を水蒸気供給路を前記内筒自身の内部に貫通形成すると共に、前記水蒸気供給路のうち前記乾留残渣に対する水蒸気出口を前記内筒の下端部に形成するものであってもよい。
(作用・効果)
本構成によれば、上記構成3と同様に水蒸気の供給量を必要最小限に留め、水蒸気の使用効率を高めることができると共に、余分な水蒸気の供給を低減できれば水蒸気によって燃焼室内部が冷却される不都合を回避できる。
【0010】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
(概要)
本発明の表面溶融炉Rは、例えば図1に示すごとく、天井部1および当該天井部1の周囲から垂下した内筒2からなる固定部Aと、前記内筒2に対して同軸芯の状態に前記内筒2の外方に位置する外筒3および当該外筒3の下端部に連接する底板4とからなる回転部Bとを備えている。さらに、前記内筒2の内側に燃焼室5が形成されており、前記内筒2と前記外筒3との間が、乾留残渣6を充填状態で自重落下させる環状供給路7となっていて、当該環状供給路7の下端は前記燃焼室5に連通している。前記外筒3は回転軸芯Xの回りに回転自在であり、乾留残渣6を前記内筒2の全周に亘って均等に供給する。前記環状供給路7を抜けて前記燃焼室5の内部に移動した前記乾留残渣6は、図1に示すごとく前記内筒2の下端部から下方に向けてすり鉢状の表面を形成して堆積する。
【0013】
前記表面溶融炉Rの天井部1中央位置には燃焼バーナー8を設けてある。当該燃焼バーナー8からは灯油や各種の可燃ガス等が燃焼室5内に供給される。
一方、この灯油等を燃焼すべく、助燃空気9が前記内筒2に設けた助燃空気供給装置10から供給される。この助燃空気供給装置10は、前記内筒2の下端部全周に亘って分散配置されている。当該助燃空気9の吹き付け方向は、灯油等が燃焼した炎が前記燃焼室5内に留まるよう略水平方向に設定してある。ただし、前記燃焼室5の径方向に対しては、前記助燃空気9が前記燃焼室5内で旋回流を形成できるよう所定の角度を設けてある。これにより、前記燃焼バーナー8の燃焼炎の形状を前記燃焼室5内で均等に維持できる等の利点が得られる。
前記表面溶融炉Rの立上げに際しては、前記燃焼バーナー8の燃焼炎の輻射熱によって燃焼室5内の温度がおよそ1300℃に高められ、前記乾留残渣6の溶融処理が開始される。
【0014】
本発明の表面溶融炉Rには、前記天井部1に設けた燃焼バーナー8に加えて、燃焼室5の内部に投入した乾留残渣6に燃焼用空気11を吹き付け供給する空気供給機構Kと、前記乾留残渣6の一部を水蒸気との水性ガス化反応によって処理すべく乾留残渣6に対して水蒸気12を供給する水蒸気供給機構Hとを備えてある。そして、本発明の表面溶融炉Rは、前記空気供給機構Kと前記水蒸気供給機構Hとを、前記燃焼バーナー8の運転と併用する点に、あるいは、前記燃焼バーナー8の運転を停止した状態で使用する点に特徴を有する。以下、夫々の機構について説明する。
【0015】
(空気供給機構Kによる燃焼処理)
燃焼処理する廃棄物が乾留残渣6のごとく自燃性を有するものである場合には、前記燃焼バーナー8で高温化された乾留残渣6に燃焼用空気11を供給するだけで乾留残渣6を燃焼処理することができる。この燃焼用空気11による乾留残渣6の処理過程は次のとおりである。
C + O2 → CO2 + 393.5 kJ/mol … ( 1 )
2C + O2 → 2CO + 221.2 kJ/mol … ( 2 )
乾留残渣6中の炭素成分は、( 1 )式および( 2 )式のごとく酸素と反応して二酸化炭素あるいは一酸化炭素となる。このうち、( 2 )式の反応で生じた一酸化炭素はさらに( 3 )式のごとく酸素と反応して二酸化炭素となる。( 3 )式は( 1 )式と( 2 )式とから求めることができる。
2CO + O2 → 2CO2 + 565.8 kJ/mol … ( 3 )
何れの反応過程を経るにせよ上記燃焼反応は発熱反応であり、一旦燃焼反応が開始されると順次反応が進行し易くなる。
以上のごとく、本構成であれば、従来の燃焼バーナー8のみによる処理に比べて乾留残渣6を効率的に処理することができる。
【0016】
(水蒸気供給機構Hによる処理)
本発明の表面溶融炉Rでは、上記空気供給機構Kに加えて水蒸気供給機構Hを設けてある。つまり、乾留残渣6に含まれる炭素成分の処理効率を向上すべく、これまでの燃焼用空気11による燃焼処理だけでなく、水蒸気12と炭素成分との間で水性ガス化反応を生じさせるものである。
以下に、水性ガス化反応のプロセスを示す。
C + H2O → CO + H2 − 130.8 kJ/mol … ( 4 )
当該水性ガス化反応は、およそ800〜1000℃の温度域あるいはこれ以上の温度域で生じる吸熱反応である。ただし、( 4 )式で生成される一酸化炭素もこのあと燃焼処理されるから、当該燃焼反応をも加えると( 3 )式+2×( 4 )式よりさらに次式が得られる。
2C + 2H2O + O2 → 2CO2 + 2H2 + 304.2 kJ/mol … ( 5 )
当該( 5 )式から明らかなごとく、吸熱反応である水性ガス化反応を利用するとはいえ、炭素成分の燃焼反応と水性ガス化反応とを合わせた反応はトータルとして発熱反応となり、上記反応が一旦開始された後は順次反応が進行する。
【0017】
【実施例】
以下には、前記空気供給機構Kと前記水蒸気供給機構Hとの具体的な構成例を示す。
【0018】
〈1〉
先ず、図1(イ)(ロ)に示すごとく、前記空気供給機構Kと前記水蒸気供給機構Hとの双方とも前記固定部Aを構成する天井部1に設けることができる。
例えば、前記空気供給機構Kと前記水蒸気供給機構Hとは夫々筒状の空気ノズルK1および水蒸気ノズルH1として構成できる。図1(ロ)には、空気ノズルK1と水蒸気ノズルH1とを四つずつ交互に分散配置した例を示す。( 5 )式から明らかなごとく必要な空気量と水蒸気量とは異なるから、前記空気ノズルK1および水蒸気ノズルH1からの気体供給量は適宜調節する必要がある。あるいは、前記空気ノズルK1の数と前記水蒸気ノズルH1の数とを始めから異なるものとしておいてもよい。
また、前記空気ノズルK1の方向および前記水蒸気ノズルH1の方向は鉛直下方に設定してもよいし、図1(イ)に示すごとく、供給した燃焼用空気11および水蒸気12が螺旋状に降下すべく夫々のノズルK1,H1を偏向させるものであってもよい。特に後者の場合には、夫々の気流が螺旋状に降下することで乾留残渣6と接触する時間が延長され、供給した燃焼用空気11及び水蒸気12の消費効率が向上する。
【0019】
尚、図1から明らかなごとく、前記空気ノズルK1等の他には、従来からの燃焼用バーナー8が前記天井部1の中央に設けてあり、助燃空気供給装置10が前記内筒2の下端部に設けてある。表面溶融炉Rの立上げに際しては、まず当該燃焼用バーナー8を作動させ、乾留残渣6の溶融処理が安定状態に達した段階で前記空気供給機構Kおよび前記水蒸気供給機構Hを作動させ、乾留残渣6を自燃溶融させる。
本発明の表面溶融炉Rにおいては、前記乾留残渣6が良好な自燃性を有する場合には前記空気供給機構Kからの燃焼用空気11の供給だけで溶融処理を行うことができる。しかし、前記乾留残渣6の自燃性がそれ程良好でない場合には、前記燃焼バーナー8と前記空気供給機構K等を併用して溶融処理を行えばよい。
本構成であれば従来からの表面溶融炉Rに簡単な構成を付加するだけで、上記のごとく乾留残渣6の処理を促進することができる。
【0020】
〈2〉
前記空気供給機構Kおよび前記水蒸気供給機構Hは、図2(イ)(ロ)に示すごとく前記内筒2に設けることができる。
具体的には、例えば燃焼用空気11に係る空気供給路13および水蒸気12に係る水蒸気供給路14を、前記内筒2自身の内部に貫通形成すると共に、前記空気供給路13および前記水蒸気供給路14のうち前記乾留残渣6に対する空気出口15および水蒸気出口16を前記内筒2の下端部に形成するものが考えられる。前記空気出口15および前記水蒸気出口16の数あるいは開口面積は任意である。ただし、乾留残渣6は前記燃焼室5内に環状に堆積していることを鑑みれば、前記空気出口15および前記水蒸気出口16は前記内筒2下端部の略全周に亘って均等に分散配置させるのが好ましい。さらに、前記空気出口15および前記水蒸気出口16から吹き出される燃焼用空気11および水蒸気12の吹き出し方向は、単純に前記乾留残渣6の堆積表面の最大傾斜方向に沿わせるものであってもよいし、図2に示すごとく前記堆積表面に沿って螺旋降下するよう偏向させるものであってもよい。特に後者の場合には、前記空気出口15および前記水蒸気出口16から吹き出された燃焼用空気11および水蒸気12が乾留残渣6と接触する時間が長くなるから供給した燃焼用空気11および水蒸気12の消費効率が向上する。
【0021】
尚、図示は省略するが、前記空気供給路13あるいは前記水蒸気供給路14の何れか一方を前記内筒2に形成し、他方を上記実施例〈1〉と同様に天井部1に設ける構成であってもよい。例えば、前記空気供給路13を前記内筒2に設け、前記水蒸気供給路14は前記天井部1に設ければ、発熱反応である空気と炭素との反応を重点的に生じさせることができるから、吸熱反応である水性ガス化反応を主にした場合に比べて乾留残渣6の溶融効率を高く維持できる。
さらに、前記燃焼用バーナー8と前記助燃空気供給装置10を備えている点、および、少なくとも表面溶融炉Rの立上げに際しては前記燃焼用バーナー8の運転が必要な点は上記実施例〈1〉と同じである。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
尚、上記課題を解決するための手段の説明中、図面を参照し、図面との対照を便利にするために符号を記すが、当該記入により本発明が添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る表面溶融炉の説明図および断面図
【図2】 別実施形態に係る表面溶融炉の説明図および断面図
【図3】 従来例に係る表面溶融炉の説明図および断面図
【符号の説明】
1 天井部
2 内筒
3 外筒
4 底板
5 燃焼室
6 乾留残渣
7 環状供給路
11 燃焼用空気
12 水蒸気
13 空気供給路
14 水蒸気供給路
15 空気出口
16 水蒸気出口
A 固定部
B 回転部
K 空気供給機構
H 水蒸気供給機構
Claims (4)
- 天井部(1)および当該天井部(1)の周囲から垂下した内筒(2)からなる固定部(A)と、
前記内筒(2)に対して同軸芯の状態に前記内筒(2)の外方に位置する外筒(3)および当該外筒(3)の下端部に連接する底板(4)とからなる回転部(B)とを備え、
前記内筒(2)の内側に乾留残渣(6)を燃焼処理する燃焼室(5)が形成されると共に、
前記内筒(2)と前記外筒(3)との間に乾留残渣を充填状態で自重落下させる環状供給路(7)を形成し、
当該環状供給路(7)の下端が前記燃焼室(5)に連通している表面溶融炉であって、
前記燃焼室(5)に臨む乾留残渣(6)の環状堆積部分に対し、
燃焼用空気(11)を堆積表面側から供給する空気供給機構(K)と、
水蒸気(12)を堆積表面側から供給する水蒸気供給機構(H)とを備えた表面溶融炉。 - 前記空気供給機構(K)と前記水蒸気供給機構(H)とを、前記天井部(1)に設けた請求項1に記載の表面溶融炉。
- 前記空気供給機構(K)が、空気供給路(13)を前記内筒(2)自身の内部に貫通形成すると共に、前記空気供給路(13)のうち前記乾留残渣(6)に対する空気出口(15)が前記内筒(2)の下端部に形成してある請求項1に記載の表面溶融炉。
- 前記水蒸気供給機構(H)が、水蒸気供給路(14)を前記内筒(2)自身の内部に貫通形成すると共に、前記水蒸気供給路(14)のうち前記乾留残渣(6)に対する水蒸気出口(16)が前記内筒(2)の下端部に形成してある請求項1に記載の表面溶融炉。
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