ここで、ロータリ圧縮機において、圧縮機構の圧縮室は、駆動軸に装着されたピストンの外周面とシリンダの内周面との間に形成される。従って、圧縮室に接続される吸入ポートの下流端は、駆動軸の軸心から離れた位置でシリンダ内面に開口する。そこで、上記特許文献1の圧縮機では、吸入ポートを屈曲形成することにより、該吸入ポートの上流端の中心線を駆動軸の軸心と一致させている。
しかしながら、上記特許文献1のような構造を採ると、圧縮機の効率が低下するという問題がある。つまり、特許文献1の圧縮機では、屈曲した吸入ポートを通って圧縮機構へガスが流入するため、圧縮室へ至るまでのガスの圧力損失が大きくなる。このため、圧縮室へ流入する時点でのガス密度が低下し、その結果、圧縮機効率の低下を招いていた。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機構及び電動機を密閉容器に弾性支持する場合に、圧縮機構の吸入ポートと吸入管とのシール構造に工夫を凝らし、圧縮機構へ吸入されるガスの圧力損失を増大させることなく、しかも圧縮機構及び電動機の変位を妨げずに、吸入ポートと吸入管の間を確実にシールすることにある。
本発明は、吸入管を圧縮機構の外側面における吸入ポートの開口部に対向するように配置し、シリンダの外側面における吸入ポートの周縁部分又は密閉容器の内面のいずれか一方を平坦なシール面とし、該シール面に押圧されるシール部材を備えたシール機構により吸入管と吸入ポートとを接続するようにした。
第1の発明は、吸入管(42)及び吐出管(14)が接続された円筒状の密閉容器(10)と、上記吸入管(42)から吸入したガスを圧縮して密閉容器(10)内へ吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結された電動機(30)と、上記密閉容器(10)内に収納された圧縮機構(20)及び電動機(30)を支持する弾性支持部材(65)とを備える圧縮機を対象とする。
そして、上記圧縮機構(20)には、該圧縮機構(20)を半径方向へ貫通して該圧縮機構(20)の外側面に開口する吸入ポート(40)を形成する。上記吸入管(42)は、その終端が上記圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置する。上記圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分及び該周縁部分に対向する上記密閉容器(10)の内面の一部分のいずれか一方がシール面を構成している。加えて、上記シール面に押圧されるシール部材(45)を備えて上記圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールすることにより上記吸入管(42)と吸入ポート(40)を接続するシール機構(S)を設ける。更に、上記密閉容器(10)内の吐出ガスによって圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力が低減するように吸入ガス圧を圧縮機構(20)に作用させる差圧力キャンセル機構(52)を備えている。
この構成では、圧縮機構(20)の駆動軸(31)が電動機(30)により回転駆動されると、吸入管(42)のガスがシール機構(S)により接続された吸入ポート(40)へ流入する。この吸入ポート(40)は、圧縮機構(20)を半径方向に貫通しており、その形状が直線状で、その長さも短くなっている。そして、吸入管(42)からのガスは、直線状で比較的短い吸入ポート(40)を通って圧縮機構(20)へ吸い込まれる。
この圧縮機において、圧縮機構(20)の外側面には密閉容器(10)の内面が対向している。また、上記圧縮機では、互いに向き合う圧縮機構(20)の外側面と密閉容器(10)の内面のいずれかがシール面となる。そのシール面にシール部材(45)を押し付けることによって、シール機構(S)が圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールしている。
上記圧縮機の運転中に圧縮機構(20)が振動して該圧縮機構(20)が駆動軸(31)の軸方向や周方向へ変位すると、圧縮機構(20)の外側面は密閉容器(10)の内面に対して概ね平行な方向へ変位する。その際、シール機構(S)のシール部材(45)は、圧縮機構(20)又は密閉容器(10)に設けられたシール面と摺動し、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールする。
更に、密閉型圧縮機の運転中において、密閉容器(10)内の吐出ガス圧が圧縮機構(20)に作用する。また、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には吸入管(42)が接続されているため、吸入ポート(40)へ導入される吸入ガス圧も圧縮機構(20)に作用する。既に吐出ガス圧と吸入ガス圧とが作用している圧縮機構(20)に対し、差圧力キャンセル機構(52)は、更に吸入ガス圧を作用させる。この結果、密閉容器(10)内の吐出ガス圧と、吸入ポート(40)へ導入される吸入ガス圧と、差圧力キャンセル機構(52)が作用させる吸入ガス圧とにそれぞれ起因して圧縮機構(20)に作用する力が互いに打ち消し合う。したがって、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向への押圧力が低減される。
尚、第1の発明において、差圧力キャンセル機構(52)は、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力を単に削減するものであってもよいし、この押圧力を削減してゼロにするものであってもよい。
第2の発明は、第1の発明において、圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分に対向する密閉容器(10)の内面の一部分がシール面を構成する。圧縮機構(20)には、その外側面における吸入ポート(40)の開口部を囲むように円環状の凹溝(23a)を形成する。上記シール部材(45)は、リング状に形成して上記凹溝(23a)に嵌め込み、更には該凹溝(23a)の底面と上記シール面に挟み込まれて弾性変形するように構成されている。そして、上記凹溝(23a)及びシール部材(45)がシール機構(S)を構成している。
この構成では、密閉容器(10)の内面のうちで圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分に対向する部分がシール面を構成する。また、圧縮機構(20)の凹溝(23a)には、シール部材(45)が嵌め込まれる。このシール部材(45)は、凹溝(23a)の底面と密閉容器(10)の内面に挟み込まれ、厚み方向に押し潰された状態となる。そして、シール部材(45)は、密閉容器(10)の内面により構成されたシール面と凹溝(23a)の底面とに密着し、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールする。運転中に圧縮機構(20)が振動すると、シール部材(45)は、圧縮機構(20)と共に変位し、密閉容器(10)のシール面と摺動する。
第3の発明は、第2の発明において、上記シール部材がOリング(45)である構成としている。
この構成では、シール部材としてのOリング(45)が圧縮機構(20)の凹溝(23a)へ嵌め込まれる。そして、このOリング(45)は厚み方向に押し潰されて圧縮機構(20)と密閉容器(10)とに密着する。
第4の発明は、第2の発明において、シール部材(70)が、断面U字状に形成されて厚み方向に弾性変形するように構成としている。
この構成では、シール部材(70)の断面がU字状となる。このシール部材(70)は、その厚み方向の一方の側面が凹溝(23a)の底面に、他方の側面が密閉容器(10)の内面にそれぞれ密着する。このシール部材(70)は、その断面が中空状になっている。従って、このシール部材(70)は、例えば断面が中実状のOリングに比べ、その厚み方向に変形しやすくなっている。
第5の発明は、吸入管(42)及び吐出管(14)が接続された円筒状の密閉容器(10)と、上記吸入管(42)から吸入したガスを圧縮して密閉容器(10)内へ吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結された電動機(30)と、上記密閉容器(10)内に収納された圧縮機構(20)及び電動機(30)を支持する弾性支持部材(65)とを備える圧縮機を対象とする。
そして、上記圧縮機構(20)には、該圧縮機構(20)を半径方向へ貫通して該圧縮機構(20)の外側面に開口する吸入ポート(40)が形成されている。上記吸入管(42)は、その終端が上記圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置されている。更に、上記圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分がシール面を構成している。上記シール面に押圧されるシール部材(45)を備えて上記圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールすることにより上記吸入管(42)と吸入ポート(40)を接続するシール機構(S)が設けられている。
上記密閉容器(10)は、先端面が圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分に対向して吸入管(42)が基端側に取り付けられる継手部材(43)を備えている。上記継手部材(43)は、その先端側部分が円柱状に形成されて円柱部(71)を構成している。そして、上記シール部材(72)を、断面が四角形のリング状に形成して上記円柱部(71)に遊嵌し、シール機構(S)には、上記シール面にシール部材(72)の先端面が当接するように該シール部材(72)に押圧力を作用させる押圧部材(75)を設けている。
この構成では、圧縮機構(20)の外側面にシール面が構成される。一方、シール部材(72)は継手部材(43)の円柱部(71)に遊嵌されて円柱部(71)の軸方向に移動可能となる。このシール部材(72)の先端面が押圧部材(75)によりシール面に押し付けられる。運転中に圧縮機構(20)が振動すると、継手部材(43)に設けられたシール部材(72)は、変位する圧縮機構(20)のシール面を摺動する。また、圧縮機構(20)の振動に伴って該圧縮機構(20)が継手部材(43)の先端面と垂直な方向へ変位した場合には、圧縮機構(20)の変位に追従してシール部材(72)が円柱部(71)の軸方向へ移動し、シール部材(72)が圧縮機構(20)のシール面と密着した状態に保持される。
第6の発明は、第5の発明において、押圧部材が、シール部材(72)の基端面と継手部材(43)とに当接するバネ(75)である構成としている。
この構成では、シール部材(72)の基端面と継手部材(43)との間にバネ(75)が配置される。このバネ(75)によってシール部材(72)の先端面がシール面へ押し付けられる。
第7の発明は、第6の発明において、シール部材(72)は、内周面が全周に亘って円柱部(71)の外周面に摺接している構成としている。
この構成では、円柱部(71)に遊嵌されたシール部材(72)は、その内周面が円柱部(71)の外周面と全周に亘って摺動する。つまり、シール部材(72)の内径と円柱部(71)の外径とがほぼ等しくなっており、シール部材(72)と円柱部(71)の間は隙間がほとんどない状態となっている。
第8の発明は、第5の発明において、シール部材(72)には、その内周面の全周に亘って内周溝(72a)を形成している。上記シール機構(S)には、上記内周溝(72a)に嵌め込まれて円柱部(71)の外周面に接するOリング(76)を設けている。
この構成では、Oリング(76)がシール部材(72)の内周溝(72a)に嵌め込まれ、この状態でシール部材(72)が円柱部(71)に遊嵌される。このOリング(76)の外周面はシール部材(72)の内周溝(72a)の底面に密着する一方、Oリング(76)の内周面は円柱部(71)の外周面に密着する。シール部材(72)が円柱部(71)の軸方向へ移動すると、Oリング(76)が円柱部(71)の外周面と摺動する。
第9の発明は、第5の発明において、押圧部材が、シール部材(72)の基端面と継手部材(43)とに当接するOリング(77)である構成としている。
この構成では、シール部材(72)の基端面と継手部材(43)との間にOリング(77)が配置される。このOリング(77)は、シール部材(72)と継手部材(43)の両方に密着する。このOリング(77)を厚み方向に弾性変形させると、その復元力によりシール部材(72)の先端面がシール面へ押し付けられる。
第10の発明は、第1又は第5の発明において、密閉容器(10)が、上下に延びる円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端を塞ぐ上部鏡板(12)と、該胴部(11)の下端を塞ぐ下部鏡板(13)とを備えている。上記上部鏡板(12)は、その下端部を胴部(11)の内側に嵌め込み、弾性支持部材(65)により支持された圧縮機構(20)又は電動機(30)には、上記上部鏡板(12)の下端に当接して圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位量を制限するストッパ部(32a)を設けている。
この構成では、胴部(11)に上部鏡板(12)を組み付けると、上部鏡板(12)の下端部が胴部(11)の内周面よりも内側に位置する。ここで、圧縮機の輸送時等には、圧縮機構(20)及び電動機(30)に大きな加振力が作用する場合がある。このような場合に、圧縮機構(20)及び電動機(30)が上方へ所定量変位すると、ストッパ部(32a)が上部鏡板(12)の下端部に当接する。これにより、圧縮機構(20)及び電動機(30)の上方への変位量が制限される。
第11の発明は、第1又は第5の発明において、上記密閉容器(10)内では、電動機(30)の下方に圧縮機構(20)を配置し、上記圧縮機構(20)を、板状のステー部材(61)を介して弾性支持部材(65)に固定する。一方、上記圧縮機構(20)の下面には、圧縮されたガスを密閉容器(10)内へ吐出するための吐出ポート(57)が開口し、上記ステー部材(61)を、圧縮機構(20)の下面における吐出ポート(57)の開口部を覆うように構成している。
この構成では、圧縮機構(20)が電動機(30)の下方でステー部材(61)により弾性支持部材(65)に固定される。一方、圧縮機構(20)で圧縮されたガスは圧縮機構(20)の下面に開口する吐出ポート(57)から密閉容器(10)内へ吐出される。この吐出ポート(57)の開口部は、ステー部材(61)により覆われている。このため、圧縮機構(20)で圧縮されたガスは、吐出ポート(57)から圧縮機構(20)とステー部材(61)の間の空間へ吐出される。このとき、例えば、圧縮機構(20)の上側に上側マフラ(59)を設けるとともに、圧縮機構(20)に、該圧縮機構(20)とステー部材(61)の間の空間と、上記上側マフラ(59)とを連通させる連通穴を設けた場合には、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間へ吐出された吐出ガスがこの連通穴を通って上側マフラ(59)に吐出されるようになる。
第12の発明は、第5の発明において、上記シール機構(S)には、円柱部(71)の外周面の全周に亘って外周溝(71a)が形成され、円環の一部を切除した形状のリング部材(78)が上記外周溝(71a)に嵌め込まれている。弾性変形した上記リング部材(78)のその径方向へ広がろうとする復元力で該リング部材(78)の外周面をシール部材(72)の内周面に押圧することによって上記円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされる。
この構成では、円柱部(71)の外周面のうちシール部材(72)の内周面に対向する部分に、その全周に亘って外周溝(71a)が形成される。この外周溝(71a)には、リング部材(78)が嵌め込まれている。外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)は、周囲をシール部材(72)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(78)の外周面は、リング部材(78)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、シール部材(72)の内周面に押し付けられる。そして、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされる。
第13の発明は、第12の発明において、シール部材(72)とリング部材(78)とが、何れも金属製である構成としている。
この構成において、リング部材(78)の外周面とシール部材(72)の内周面との間には、摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗は、金属製のリング部材(78)と金属製のシール部材(72)の間で発生する。一方、例えばOリングを外周溝(71a)に嵌め込む場合において、摩擦抵抗は、ゴム製のOリングと金属製のシール部材(72)の間で発生する。また、金属と金属の摩擦抵抗の方が、金属とゴムの摩擦抵抗よりも小さい。このため、金属製のシール部材(72)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(78)の方がゴム製のOリングよりも小さくなる。よって、リング部材(78)の方が、Oリングよりもシール部材(72)に対してスムーズに摺動する。
第14の発明は、第5の発明において、上記密閉容器(10)内の吐出ガスによって圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力が低減するように吸入ガス圧を圧縮機構(20)に作用させる差圧力キャンセル機構(52)を備えている。
この構成によれば、密閉型圧縮機の運転中において、密閉容器(10)内の吐出ガス圧が圧縮機構(20)に作用する。また、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には吸入管(42)が接続されているため、吸入ポート(40)へ導入される吸入ガス圧も圧縮機構(20)に作用する。既に吐出ガス圧と吸入ガス圧とが作用している圧縮機構(20)に対し、差圧力キャンセル機構(52)は、更に吸入ガス圧を作用させる。この結果、密閉容器(10)内の吐出ガス圧と、吸入ポート(40)へ導入される吸入ガス圧と、差圧力キャンセル機構(52)が作用させる吸入ガス圧とにそれぞれ起因して圧縮機構(20)に作用する力が互いに打ち消し合う。したがって、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向への押圧力が低減される。
尚、第14の発明において、差圧力キャンセル機構(52)は、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力を単に削減するものであってもよいし、この押圧力を削減してゼロにするものであってもよい。
第15の発明は、第1又は第14の発明において、上記圧縮機構(20)を、シリンダ(23)の内周面とピストン(25)の外周面との間に圧縮室(22)が形成されるロータリ式流体機械により構成する。そして、上記差圧力キャンセル機構(52)は、上記圧縮機構(20)におけるシリンダ(23)の外側面に吸入ガス圧を作用させる構成としている。
この構成によれば、差圧力キャンセル機構(52)が吸入ガス圧をシリンダ(23)の外側面に作用させているため、密閉容器(10)内の吐出ガスから圧縮機構(20)が受ける吸入ポート(40)方向の押圧力、即ち、シリンダ(23)の半径方向の押圧力が低減される。このように差圧力キャンセル機構(52)は、圧縮機構(20)のうち吸入ポート(40)の形成されたシリンダ(23)に対して、吸入ガス圧を直接作用させている。
第16の発明は、第15の発明において、上記差圧力キャンセル機構(52)が、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)と反対側に吸入ガス圧を作用させる構成としている。
この構成によれば、シリンダ(23)の外側面のうち、該シリンダ(23)を貫通する吸入ポート(40)とは反対側の箇所に差圧力キャンセル機構(52)が吸入ガス圧を作用させている。これにより、例えば、吸入ガス圧をシリンダ(23)の1箇所にのみ作用させるように差圧力キャンセル機構(52)を構成しても、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位が安定して抑えられる。
第17の発明は、第15の発明において、上記差圧力キャンセル機構(52)が、密閉容器(10)の内面とシリンダ(23)の外側面との間に区画形成された吸入圧室(50)と、該吸入圧室(50)を圧縮機構(20)の吸入ポート(40)と連通させる連通路(51)とを備え、上記吸入圧室(50)のガス圧をシリンダ(23)に作用させる構成としている。
この構成によれば、吸入ポート(40)の吸入ガス圧が連通路(51)によって吸入圧室(50)に導入される。この吸入圧室(50)は、密閉容器(10)の内面とシリンダ(23)の外側面との間に形成されている。そして、吸入圧室(23)へ導入された吸入ガス圧は、シリンダ(23)の外側面に作用する。
第18の発明は、第17の発明において、上記差圧力キャンセル機構(52)の連通路(51)をシリンダ(23)に形成する構成としている。
この構成によれば、圧縮機構(20)を構成するシリンダ(23)に差圧力キャンセル機構(52)の連通路(51)を形成しているので、連通路(51)を構成する部材を別に設ける必要がなくなる。
第19の発明は、第17の発明において、上記差圧力キャンセル機構(52)の連通路(51)をシリンダ(23)の内周面に沿って延びる円弧状に形成する構成としている。
この構成によれば、シリンダ(23)の外側面と内周面との間に連通路(51)が形成されることとなり、シリンダ(23)の外側面から内周面へ向かう熱伝導が連通路(51)によって阻害される。つまり、密閉容器(10)内の高温の吐出ガスの熱が圧縮室(22)へ伝わり難くなる。
第20の発明は、吸入管(42)及び吐出管(14)が接続された円筒状の密閉容器(10)と、上記吸入管(42)から吸入したガスを圧縮して密閉容器(10)内へ吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結された電動機(30)と、上記密閉容器(10)内に収納された圧縮機構(20)及び電動機(30)を支持する弾性支持部材(65)とを備える縦型の圧縮機を対象としている。
そして、上記圧縮機構(20)は、その外形が円柱形状になると共に、その外周面に吸入ポート(40)が開口しており、上記吸入管(42)は、その終端が上記圧縮機構(20)の外周面における上記吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置されている。一方、互いに対向する上記圧縮機構(20)の外周面と上記密閉容器(10)の内周面の隙間に上記吸入ポート(40)及び上記吸入管(42)と連通する低圧空間(81)を形成するためのシール機構(S)を備えている。
この構成において、圧縮機構(20)の外周面は、その全面が密閉容器(10)の内周面に対面した状態となる。そして、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間には、全周に亘って環状の隙間が形成されている。一方、圧縮機には、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間に低圧空間(81)を形成するためのシール機構(S)が設けられている。圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間のうち、シール機構(S)によって仕切られた部分が、吸入管(42)と吸入ポート(40)とに連通する低圧空間(81)となる。
上記の構成において、圧縮機構(20)の駆動軸(31)が電動機(30)により回転駆動されると、吸入管(42)のガスが低圧空間(81)を通って吸入ポート(40)へ流入する。吸入管(42)は、その終端が圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向している。圧縮機構(20)の吸入ポート(40)へ流入したガスは、圧縮された後に圧縮機構(20)から吐出される。
上述のように、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には、吸入管(42)を通じて低圧の吸入ガスが導入される。ここで、仮に圧縮機構(20)の外周面のうち吸入ポート(40)以外の部分全てに吐出ガス圧が作用する状態を考えると、この状態では、圧縮機構(20)の半径方向に作用するガス圧が不均一となる。そして、ガス圧によって圧縮機構(20)が吸入ポート(40)側へ押さえ付けられて密閉容器(10)に接触すると、該圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を充分に遮断できなくなる。
これに対し、第20の発明では、上記圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間の全周に亘って低圧空間(81)が形成されている。つまり、上記圧縮機構(20)の外周面には、その全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用することになる。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用することとなり、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。そして、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位が妨げられ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)に接触することがないため、圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動が確実に遮断される。
第21の発明は、第20の発明において、シール機構(S)では、圧縮機構(20)の外周面の全周に亘るOリング(79)が該外周面における吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ設けられる構成としている。
この構成では、圧縮機構(20)の外周面の全周に亘ってOリング(79)が設けられている。このOリング(79)は、吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ設けられている。Oリング(79)は、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面に挟み込まれ、厚み方向に押し潰された状態となる。そして、Oリング(79)が圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面とに密着することで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間には、その全周に亘って吸入ポート(40)に連通する低圧空間(81)が形成される。
第22の発明は、第20の発明において、圧縮機構(20)の外周面では、その全周に亘る凹溝(23c)が吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ形成されている。シール機構(S)は、上記凹溝(23c)と、円環の一部を切除した形状に形成されて該凹溝(23c)に嵌め込まれるリング部材(80)とを備え、弾性変形した上記リング部材(80)のその径方向へ広がろうとする復元力で該リング部材(80)の外周面を密閉容器(10)の内周面に押圧することによって上記圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールする構成としている。
この構成では、圧縮機構(20)の外周面に、その全周に亘って凹溝(23c)が形成される。この凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ設けられている。各凹溝(23c)には、リング部材(80)が嵌め込まれている。凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)は、周囲を密閉容器(10)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(80)の外周面は、リング部材(80)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、密閉容器(10)の内周面に押し付けられる。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間がシールされ、吸入ポート(40)に連通する低圧空間(81)が形成される。
第23の発明は、第22の発明において、リング部材(80)の材質が金属である構成としている。
この構成において、リング部材(80)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間には、摩擦抵抗が発生する。一般に密閉容器(10)は金属製であり、この摩擦抵抗は、金属製のリング部材(80)と金属製の密閉容器(10)の間で発生する。一方、例えばOリングを凹溝(23c)に嵌め込む場合において、摩擦抵抗は、ゴム製のOリングと金属製の密閉容器(10)の間で発生する。また、金属と金属の摩擦抵抗の方が、金属とゴムの摩擦抵抗よりも小さい。このため、金属製の密閉容器(10)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(80)の方がゴム製のOリングよりも小さくなる。よって、リング部材(80)の方が、Oリングよりも密閉容器(10)に対してスムーズに摺動する。
第24の発明は、第20の発明において、圧縮機構(20)には、該圧縮機構(20)を軸方向に貫通する油戻し通路(29)が形成される構成としている。
この構成において、圧縮機構(20)には油戻し通路(29)が形成される。ここで、圧縮機構(20)から吐出されたガスには、圧縮機構(20)を潤滑するための冷凍機油が混在している。この冷凍機油は、吐出管(14)へ至るまでの間の密閉容器(10)内でガスと分離する。一方、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間は、シール機構(S)によってシールされている。つまり、密閉容器(10)内は、シール機構(S)によって2つの空間に仕切られた状態となっている。この発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられており、ガスと分離した冷凍機油は、密閉容器(10)内の吐出ガスで満たされた空間から油戻し通路(29)を通ってもう一方の空間へと移動する。
上記第1の発明は、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置し、圧縮機構(20)の外側面と密閉容器(10)の内面のいずれかで構成されたシール面にシール部材(45)を押し付けることで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールしている。このため、圧縮機の運転中に圧縮機構(20)が駆動軸(31)の軸方向や周方向へ変位した場合であっても、シール部材(45)が圧縮機構(20)又は密閉容器(10)に設けられたシール面と摺動することで、圧縮機構(20)の変位を妨げずに圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールすることができる。
このように、第1の発明によれば、圧縮機構(20)を半径方向へ貫通するように吸入ポート(40)を形成した場合であっても、圧縮機の運転中における圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間のシールを確保できる。従って、この発明によれば、吸入ポート(40)を直線的で比較的短く形成して吸入されるガスの圧力損失が増大するのを回避した上で、相対的に変位する圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシール機構(S)によって確実にシールすることができ、更には圧縮機構(20)の変位自由度を確保して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を削減することができる。
また、差圧力キャンセル機構(52)を設け、密閉容器(10)内の吐出ガスによって圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力を低減している。したがって、密閉容器(10)内の吐出ガス圧と吸入ガス圧との差に起因する圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できる。このように、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できるため、弾性部材(65)の硬さを圧縮機構(20)及び電動機(30)に作用する重力だけを支持できる程度に設定することができる。その結果、圧縮機構(20)及び電動機(30)が柔らかく支持され、これら圧縮機構(20)及び電動機(30)から密閉容器(10)への振動の伝達が抑制されて密閉型圧縮機の騒音を低減できる。
また、上記圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できるため、密閉容器(10)と、圧縮機構(20)及び電動機(30)とのクリアランスを大きめに確保する必要がなくなる。したがって、密閉容器(10)を小さくすることが可能となり、密閉型圧縮機を小型化できる。
上記第2の発明は、圧縮機構(20)に形成された凹溝(23a)と、そこに嵌め込まれるシール部材(45)とによってシール機構(S)を構成している。従って、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加を抑制できる。
上記第3の発明は、広く一般的に利用されているOリング(45)をシール部材として用いているので、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加をより一層抑制できる。
上記第4の発明は、シール部材(70)は、その断面がU字状に形成されており、厚み方向に変形しやすくなっている。このため、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が密閉容器(10)の内面と垂直な方向へ変位した場合には、圧縮機構(20)の変位に伴って、シール部材(70)が厚み方向へ容易に変形することで、圧縮機構(20)から密閉容器(10)に伝わる加振力を低減できる。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)から密閉容器(10)に伝わる振動を一層低減できる。
上記第5の発明は、シール部材(72)が円柱部(71)に遊嵌され、このシール部材(72)が圧縮機構(20)の外側面に構成されたシール面に押圧部材(75)により押し付けられる。このため、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、シール部材(72)の先端面をシール面と密着した状態に保持することができ、圧縮機構(20)と継手部材(43)の間のシールを一層確実にできる。
上記第6の発明は、バネ(75)によりシール部材(72)の基端面がシール面に押し付けられる。従って、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が継手部材(43)の先端面と垂直な方向へ変位した場合には、バネ(75)の変形によって、圧縮機構(20)から密閉容器(10)に伝わる加振力を十分に低減でき、圧縮機構(20)から密閉容器(10)に伝わる振動を一層低減できる。
上記第7の発明は、シール部材(72)は、内周面が全周に亘って円柱部(71)の外周面に摺接しており、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間はほとんど隙間のない状態となっている。従って、この発明によれば、シール部材(72)を円柱部(71)に沿って自由に移動可能とした上で、シール部材(72)と円柱部(71)の間をシールすることができる。
上記第8の発明は、シール部材(72)の内周溝(72a)にOリング(76)を嵌め込み、このOリング(76)によってシール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間をシールしている。このため、シール部材(72)と円柱部(71)の間のシールを確保した上で、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広くすることができる。そして、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広げることで、運転中に変位する圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間を一層確実にシールすることが可能となる。
この点について説明する。圧縮機の運転中には、圧縮機構(20)の外側面が密閉容器(10)の内面に対して傾斜するように変位する場合がある。このような場合に圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間のシールを確保するには、シール部材(72)を傾斜させてシール部材(72)の先端面を全体に亘って圧縮機構(20)の外側面に密着させるのが望ましい。そして、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広く設定しておけば、圧縮機構(20)に追従してシール部材(72)が傾斜しても、シール部材(72)が円柱部(71)と接触することはない。
上記第8の発明は、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)を確実に追従させることができ、シール部材(72)の先端面を圧縮機構(20)の外側面に密着した状態に保って圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間を確実にシールすることができる。また、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)が確実に追従するため、このシール部材(72)を介して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を低減することができる。
上記第9の発明は、広く一般に利用されているOリング(77)によりシール部材(72)がシール面に押し付けられる。このため、圧縮機のコストの増加を抑制しつつ、シール部材(72)をシール面に密着させて圧縮機構(20)と継手部材(43)の間のシールを確実にできる。
上記第10の発明は、胴部(11)に嵌め込まれた上部鏡板(12)の下端にストッパ部(32a)を当接させることによって、圧縮機構(20)及び電動機(30)の過大な変位を規制している。このため、例えば圧縮機の輸送中に大きな加振力が作用した場合でも、弾性支持された圧縮機構(20)や電動機(30)自体が密閉容器(10)に衝突して損傷するのを防止できる。
上記第11の発明は、圧縮機構(20)を弾性支持部材(65)に取り付けるためのステー部材(61)で吐出ポート(57)の開口部を覆い、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間の空間へ吐出ポート(57)からガスを吐出している。従って、吐出ポート(57)から下向きに吐出されたガスによって密閉容器(10)の下部に貯留された冷凍機油が飛散するのを回避でき、飛散した冷凍機油が吐出ポート(57)へ流入するのを防止できる。
さらに、吐出ガスは、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間へ一旦吐出される。このとき、例えば、圧縮機構(20)の上側に上側マフラ(59)を設けるとともに、圧縮機構(20)に、該圧縮機構(20)とステー部材(61)の間の空間と、上記上側マフラ(59)とを連通させる連通穴を設けた場合には、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間へ吐出された吐出ガスが連通穴を通って上側マフラ(59)に吐出されるようになる。これによって、吐出ガスの脈動を緩和することができ、吐出ガスの脈動に起因する吐出音を低減できる。つまり、この発明では、圧縮機構(20)の設置に必要なステー部材(61)を利用して冷凍機油の流入防止や吐出音の低減が可能となる。従って、吐出音低減用のマフラや冷凍機油の流入防止部材を別途設ける必要がなくなって部品点数を低減でき、圧縮機の低コスト化を図ることができる。
上記第12の発明は、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をその径方向へ広がろうとする復元力によってシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間をシールしている。従って、この発明によれば、シール機構(S)を外周溝(71a)とリング部材(78)とで構成することにより、円柱部(71)とシール部材(72)の間のシールを確実にできる。
上記第13の発明は、リング部材(78)の外周面とシール部材(72)の内周面との間に摩擦抵抗が発生する。上述のように、金属製のシール部材(72)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(78)の方がゴム製のOリング等よりも小さくなる。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位する際のリング部材(78)とシール部材(72)の摺動抵抗を小さくすることができ、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)を一層確実に追従させることができる。そして、圧縮機構(20)の変位自由度を確保して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を低減することができる。
上記第14の発明は、差圧力キャンセル機構(52)を設け、密閉容器(10)内の吐出ガスによって圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向の押圧力を低減している。したがって、密閉容器(10)内の吐出ガス圧と吸入ガス圧との差に起因する圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できる。このように、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できるため、弾性部材(65)の硬さを圧縮機構(20)及び電動機(30)に作用する重力だけを支持できる程度に設定することができる。その結果、圧縮機構(20)及び電動機(30)が柔らかく支持され、これら圧縮機構(20)及び電動機(30)から密閉容器(10)への振動の伝達が抑制されて密閉型圧縮機の騒音を低減できる。
また、上記圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を抑制できるため、密閉容器(10)と、圧縮機構(20)及び電動機(30)とのクリアランスを大きめに確保する必要がなくなる。したがって、密閉容器(10)を小さくすることが可能となり、密閉型圧縮機を小型化できる。
上記第15の発明は、ロータリ式流体機械により構成された圧縮機構(20)において、シリンダ(23)の外側面に差圧力キャンセル機構(52)が吸入ガス圧を作用させている。このため、吸入ポート(40)が設けられているシリンダ(23)に対して吸入ガス圧が直接作用することになり、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を容易にかつ安定的に抑制することができる。
上記第16の発明は、差圧力キャンセル機構(52)は、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)と反対側に吸入ガス圧を作用させているので、例えば、吸入ガス圧をシリンダ(23)の1箇所にのみ作用させるように差圧力キャンセル機構(52)を構成しても、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を安定して抑えることができる。このため、差圧力キャンセル機構(52)の構造を簡素化でき、密閉型圧縮機のコストを低減できる。
上記第17の発明は、差圧力キャンセル機構(52)に吸入圧室(50)と連通路(51)とを設け、吸入圧室(50)へ導入した吸入ガス圧をシリンダ(23)に作用させている。このため、比較的簡素な構成で差圧力キャンセル機構(52)を実現でき、差圧力キャンセル機構(52)を設けることによる密閉型圧縮機のコスト上昇を抑制できる。
上記第18の発明は、差圧力キャンセル機構(52)の連通路(51)をシリンダ(23)に形成したので、連通路(51)を構成する部材を別に設ける必要がなくなる。したがって、差圧力キャンセル機構(52)を設けることによる部品点数の増大を抑制することができるとともに、密閉型圧縮機の大型化を回避することができる。
上記第19の発明は、シリンダ(23)に形成された連通路(51)を利用して、密閉容器(10)内の高温の吐出ガスの熱を圧縮室(22)へ伝わり難くしている。したがって、密閉容器(10)内の吐出ガスから圧縮室(22)内の吸入ガスへ侵入する熱量を削減でき、圧縮仕事の効率を向上できる。
上記第20の発明は、シール機構(S)によって圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間に低圧空間(81)を形成している。ここで、密閉容器(10)は円筒状に形成されており、圧縮機構(20)はその外形が円柱形状に形成されている。つまり、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間には、環状の隙間が形成されている。このため、圧縮機の複雑化を抑制しつつ、簡単な構造のシール機構(S)によって圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間に低圧空間(81)を形成することができる。
また、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外周面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置している。このため、吸入ポート(40)を圧縮機構(20)の半径方向に貫通するように形成した場合に、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することができ、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
上述のように、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間には、全周に亘って低圧空間(81)が形成されており、圧縮機構(20)の外周面にはその全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用する。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用し、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。従って、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位を妨げることができ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)へ接触するのを防いで圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を一層確実に遮断することができる。
上記第21の発明は、圧縮機構(20)の外周面の全周に亘るOリング(79)によってシール機構(S)を構成している。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、Oリング(79)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。また、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加を抑制できる。
上記第22の発明は、圧縮機構(20)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるリング部材(80)とによってシール機構(S)を構成している。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)をその径方向へ広がろうとする復元力によって密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールしている。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、リング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。また、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加を抑制できる。
上記第23の発明は、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間に摩擦抵抗が発生する。上述のように、金属製の密閉容器(10)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(80)の方がゴム製のOリング等よりも小さくなる。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位する際のリング部材(80)と密閉容器(10)の摺動抵抗を小さくすることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を一層確実にシールすることができる。
上記第24の発明は、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成される。ここで、密閉容器(10)内では、吐出ガスで満たされた空間と冷凍機油が貯留される空間とが圧縮機構(20)を介して反対側に設けられる場合が多い。そして、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられていない場合には、ガスと分離した冷凍機油が吐出ガスで満たされた空間に貯留されることとなり、冷凍機油が不足して圧縮機構(20)が潤滑不良を起こすおそれがある。
一方、この発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成されているため、ガスと分離した冷凍機油を油戻し通路(29)を通じて冷凍機油が貯留される空間へ導くことができる。従って、この発明によれば、密閉容器(10)内が仕切られて一方の空間に貯留される冷凍機油が他方の空間へ吐出される構成であっても、冷凍機油の不足を防ぐことができ、圧縮機構(20)の潤滑不良を回避することができる。また、油戻し通路(29)を設けることにより、密閉容器(10)内の圧力を均一に保つことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係るものであり、この実施形態1では本発明をいわゆる揺動ピストン型のロータリ圧縮機(1)に適用した場合を示す。この圧縮機(1)は、空気調和装置の冷凍サイクルにおいて冷媒圧縮行程を行うものである。
上記圧縮機(1)では、圧縮機構(20)及び電動機(30)が密閉容器(10)に収容されている。圧縮機構(20)の駆動軸(31)は、その軸方向が上下方向となっている。電動機(30)は、圧縮機構(20)の上側に配置されており、圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結されている。電動機(30)は圧縮機構(20)と一体化していて、この圧縮機構(20)が密閉容器(10)に支持機構(63)を介して弾性支持されている。
上記密閉容器(10)は、上下方向に長い円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端内側に嵌め込まれる碗状の上部鏡板(12)と、上記胴部(11)の下端に配設されて該胴部(11)外径よりも大きい板状の下部鏡板(13)とを備えている。上記胴部(11)の上端及び下端の全周は、上記上部鏡板(12)及び下部鏡板(13)にそれぞれ溶接されていて、これら胴部(11)、上部鏡板(12)、及び下部鏡板(13)が一体化されている。また、密閉容器(10)の胴部(11)は、運転中に圧縮機構(20)及び電動機(30)とぶつからないように、その内径が圧縮機構(20)等の外径よりも大きくなっている。
上記上部鏡板(12)の略中央部には、該上部鏡板(12)を上下方向に貫通する吐出管(14)が配設されている。また、上部鏡板(12)の吐出管(14)から径方向に離れた箇所には、上記電動機(30)に給電するためのターミナル(15)が配設されている。
上記密閉容器(10)は、吸入管(42)を圧縮機構(20)の吸入ポート(40)に接続するための継手部材(43)と、ブロック部材(46)とを備えている。尚、吸入ポート(40)については後述する。これら継手部材(43)及びブロック部材(46)は、比較的短い円柱状に形成されている。また、継手部材(43)及びブロック部材(46)は、その密閉容器(10)の内側に位置するそれぞれの先端面が、継手部材(43)及びブロック部材(46)の中心線と略直交する平坦面となっている。この継手部材(43)及びブロック部材(46)の先端面における外周側には、面取りが施されている。
このように、上記密閉容器(10)において、その内面の一部分は、継手部材(43)及びブロック部材(46)の先端面によって構成されている。そして、継手部材(43)の先端面は、密閉容器(10)の内面のうちで圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分と対向する一部分となっている。
上記継手部材(43)には、貫通孔(43a)が形成されている。貫通孔(43a)は、その中心線が継手部材(43)の中心線と一致するように形成され、該継手部材(43)の先端面と基端面とに開口している。貫通孔(43a)は、その基端側が先端側よりも大径に形成され、この基端側の部分に吸入管(42)の一端が挿入されて固定されている。一方、ブロック部材(46)は、中実となっている。
上記継手部材(43)及びブロック部材(46)は、胴部(11)に取り付けられている。具体的に、胴部(11)における上下方向の中央部よりやや下には、継手部材(43)を挿入するための継手側挿入孔(11a)と、ブロック部材(46)を挿入するためのブロック側挿入孔(11b)とが、互いに対向する位置に1つずつ形成されている。継手側挿入孔(11a)には継手部材(43)の先端部が、ブロック側挿入孔(11b)にはブロック部材(46)の先端部がそれぞれ挿入されている。これら継手部材(43)及びブロック部材(46)は、それぞれの中心線が略水平に延びる同一直線上に位置している。この状態で、継手部材(43)及びブロック部材(46)は、それぞれの外周面が全周に亘って胴部(11)の挿入孔(11a,11b)の周縁に溶接されている。
つまり、継手部材(43)及びブロック部材(46)は、胴部(10)における同じ高さで周方向に180゜離れた位置に配置されいる。また、継手部材(43)及びブロック部材(46)の先端面は、互いに向かい合っている。
上記圧縮機構(20)は、概ね円筒状に形成されたシリンダ(23)を備えている。このシリンダ(23)の上部には、該シリンダ(23)の上端面の開口を閉塞するフロントヘッド(54)が配置されている。また、シリンダ(23)の下部には、該シリンダ(23)の下端面の開口を閉塞するリヤヘッド(55)が配置されている。これらフロントヘッド(54)及びリヤヘッド(55)は、シリンダ(23)にボルト等(図示せず)を用いて締結されて一体化されている。この圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の中心線が上記胴部(11)の中心線と略一致するように位置付けられている。
上記シリンダ(23)内には、駆動軸(31)の回転により揺動する揺動ピストン(25)が内挿されている。そして、上記シリンダ(23)内には、揺動ピストン(25)の外周面、シリンダ(23)の内周面、フロントヘッド(54)の下面、及びリヤヘッド(55)の上面に囲まれた圧縮室(22)が形成される。
上記揺動ピストン(25)は、図2に示すように、円環状の本体部(25a)と、該本体部(25a)の外周面の1箇所から径方向外方へ突出して延びる平板状のブレード(25b)とが一体的に形成されたものである。上記ブレード(25b)は、一対のブッシュ(27)により挟まれた状態でシリンダ(23)の圧縮室(22)外方に形成された挿入孔(28)に挿入支持されている。このブレード(25b)により、圧縮室(22)が低圧側と高圧側とに区画されている。
上記シリンダ(23)には、吸入ポート(40)が形成されている。この吸入ポート(40)は、圧縮室(22)の低圧側に臨むシリンダ(23)の内周面にその一端が開口しており、その一端からシリンダ(23)を半径方向外方へ真っ直ぐに貫通している。吸入ポート(40)の他端は、シリンダ(23)の外側面に開口している。また、シリンダ(23)には、上記ブッシュ(27)のすぐ横に吐出ポート(41)が形成されている。この吐出ポート(41)は、シリンダ(23)の上端面から掘り下げたものと、その下端面から掘り下げたものとが対となって形成されている。
また、上記シリンダ(23)には、連通路(51)が形成されている。この連通路(51)は、円弧状部分(51a)と直線状部分(51b)とによって構成されている。円弧状部分(51a)は、上記圧縮室(22)の低圧側に臨むシリンダ(23)の内周面に沿って概ね半円弧状に延びている。この円弧状部分(15a)は、その基端部が吸入ポート(40)に接続され、その先端部がシリンダ(23)における吸入ポート(40)とは反対側に位置している。一方、連通路(51)の直線状部分(51b)は、円弧状部分(51a)の先端部からシリンダ(23)の径方向外側へ向かって真っ直ぐに貫通して形成されている。この直線状部分(51b)は、その中心線が上記吸入ポート(40)の中心線と一致するように形成されている。また、連通路(51)の直線状部分(51b)は、その先端がシリンダ(23)の外側面に開口している。
上記フロントヘッド(54)及びリヤヘッド(55)には、図1に示すように、シリンダ(23)側の吐出ポート(41)と連通するヘッド側吐出ポート(56,57)がそれぞれ形成されている。また、フロントヘッド(54)の上端面及びリヤヘッド(55)の下端面には、上記ヘッド側吐出ポート(56,57)を開閉する吐出弁(48)がそれぞれ配設されている。この吐出弁(48)は、いわゆるリード弁により構成されている。この吐出弁(48)が開くと、ヘッド側吐出ポート(56,57)が、密閉容器(10)の内部空間とが連通する。つまり、この圧縮機(1)は、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)を吸入管(42)に接続する一方、吐出ポート(56,57)を密閉容器(10)の内部空間に連通させた、いわゆる高圧ドーム型に構成されている。
フロントヘッド(54)の中央部には上方へ突出する筒状部(58)が形成されている。この筒状部(58)は、駆動軸(31)を支持するすべり軸受を構成している。フロントヘッド(54)には、上記ヘッド側吐出ポート(56)の上方を覆う大略円盤状の上側マフラ(59)が固定されている。一方、リヤヘッド(55)の中央部にも、下方へ突出する筒状部(60)が形成されている。この筒状部(60)は、駆動軸(31)を支持するすべり軸受を構成している。リヤヘッド(55)には、圧縮機構(20)を下部鏡板(13)に固定するためのステー部材(61)が取り付けられている。該ステー部材(61)は、上側マフラ(59)よりも厚肉な板材により構成され、筒状部(60)から半径方向の外側へ延びている。このステー部材(61)は、上記ヘッド側吐出ポート(57)の下方を覆うように形成されている。
また、図示しないが、リヤヘッド(55)、シリンダ(23)、及びフロントヘッド(54)には、圧縮機構(20)とステー部材(61)の間の空間と上側マフラ(59)とを連通させる連通穴が設けられている。
上記ステー部材(61)下面の外周側には、支持機構(63)が周方向に間隔をあけて複数(例えば4つ)取り付けられている。各支持機構(63)は、下部鏡板(13)に固定された基台(64)と、該基台(64)上面に固定されて上方へ延び上端がステー部材(61)下面に固定された弾性支持部材としてのコイルバネ(65)と、コイルバネ(65)の縮み量を制限するストッパ(66)とから構成されている。支持機構のコイルバネ(65)は、圧縮機構(20)及び電動機(30)を上下方向(即ち駆動軸(31)の軸方向)に変位可能に支持している。
上記圧縮機構(20)は、密閉容器(10)に設けられた継手部材(43)及びブロック部材(46)と概ね同じ高さに配置されている。また、圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部が継手部材(43)の先端面における貫通孔(43a)開口部に対面し、シリンダ(23)の外側面における連通路(51)の開口部分がブロック部材(46)に対面する姿勢で設置されている。つまり、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部は、継手部材(43)に取り付けられた吸入管(42)の終端に対向している。
シリンダ(23)の外側面のうち吸入ポート(40)が開口する部分は、図2に示すように、シリンダ(23)の半径方向における外側へ僅かに突出している。この僅かに突出した部分の突端面は、図3に示すように、シリンダ(23)の半径方向と直交する平坦面であって、上下方向に延びており、この突端面に吸入ポート(40)が開口している。吸入ポート(40)の開口する突端面は、継手部材(43)の先端面に対面しており、これら両面の間には比較的狭い隙間が形成されている。また、シリンダ(23)には、この突端面における吸入ポート(40)の開口部分を囲むように円環形の凹溝(23a)が設けられている。この凹溝(23a)は、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部分の周囲を全周に亘って掘り下げて形成されている。
上記凹溝(23a)には、Oリング(45)が嵌め込まれている。該Oリング(45)は、シリンダ(23)の吸入ポート(40)の開口や継手部材(43)の貫通孔(43a)よりも大径に形成されている。このOリング(45)は、シリンダ(23)における凹溝(23a)の底面と継手部材(43)の先端面との両方に密着し、かつ、シリンダ(23)と継手部材(43)に挟まれて押し潰された状態となるように、その太さが設定されている。このようにOリング(45)を予め押し潰しておくことにより、運転中にシリンダ(23)が継手部材(43)から離れる方向に変位しても、Oリング(45)がシリンダ(23)と継手部材(43)の両方に密着した状態に保持される。
シリンダ(23)の外側面と継手部材(43)の先端面との隙間は、このOリング(45)によってシールされ、吸入管(42)から吸入ポート(40)までの通路の気密が確保される。つまり、本実施形態では、継手部材(43)の先端面がシール面を構成しており、このシール面に押し付けられるOリング(45)がシール部材を構成している。そして、シリンダ(23)に形成された凹溝(23a)と、そこに嵌め込まれるOリング(45)とによって、シリンダ(23)と継手部材(43)の隙間をシールして吸入管(42)と吸入ポート(40)を接続するシール機構(S)が構成されている。
シリンダ(23)の外側面のうち連通路(51)の直線状部分(51b)が開口する部分は、図2に示すように、シリンダ(23)の径方向における外側へ僅かに突出している。この僅かに突出した部分の突端面は、シリンダ(23)の半径方向と直交する平坦面であって、この突端面に連通路(51)が開口している。連通路(51)の開口する突端面は、ブロック部材(46)の先端面に対面しており、これら両面の間には比較的狭い隙間が形成されている。また、シリンダ(23)には、この突端面における連通路(51)の開口部分を囲むように凹溝(23b)が設けられている。この凹溝(23b)は、シリンダ(23)の外側面における連通路(51)の開口部分の周囲を全周に亘って掘り下げて形成されている。
上記凹溝(23b)には、Oリング(47)が嵌め込まれている。このOリング(47)は、連通路(51)の直線状部分(51b)よりも大径に形成されており、その直径は、吸入ポート(40)側に設けられたOリング(45)と等しくなっている。このOリング(47)は、シリンダ(23)における凹溝(23a)の底面とブロック部材(46)の先端面との両方に密着し、かつ、シリンダ(23)とブロック部材(46)に挟まれて押し潰された状態となるように、その太さが設定されている。また、このOリング(47)は、運転中に圧縮機構(20)が変位しても、シリンダ(23)とブロック部材(46)の両方に密着した状態に保持される。
シリンダ(23)とブロック部材(46)の隙間のうち、このOリング(47)よりも内側の部分は、周囲から仕切られた吸入圧室(50)となっている。この吸入圧室(50)は、吐出ガスで満たされた密閉容器(10)の内部空間から区画されると共に、連通路(51)を介して吸入ポート(40)に連通している。また、吸入圧室(50)の気密は、シリンダ(23)とブロック部材(46)に密着するOリング(47)によって保持されている。そして、この吸入圧室(50)と前記連通路(51)とが、差圧力キャンセル機構(52)を構成している。
一方、上記電動機(30)には、ブラシレスDCモータが用いられている。このDCモータには、モータ効率を向上させるため、厚さが0.2mmと薄い電磁鋼板が採用されている。図1に示すように、電動機(30)は、圧縮機構(20)のフロントヘッド(54)に固定された円筒状のステータ(32)と、このステータ(32)内に回転可能に配置されたロータ(33)とからなる。このロータ(33)の中心孔(33a)には、駆動軸(31)が挿入されて固定されている。
上記駆動軸(31)は、その中心線が上記シリンダ(23)の中心線と略一致するように位置付けられている。この駆動軸(31)の下端側には、偏心部(31a)が形成されている。偏心部(31a)は、駆動軸(31)の他の部分よりも大径に形成されており、その中心線が駆動軸(31)の軸心に対して偏心している。そして、上記駆動軸(31)は、シリンダ(23)内に設けられた揺動ピストン(25)の本体部(25a)を貫通しており、その偏心部(31a)の外周面が本体部(25a)の内周面と揺動する。
上記ステータ(32)の外周部には、上記上部鏡板(12)の下端へ接近する突出部(32a)が周方向に間隔をあけて複数突設されている。ステータ(32)の突出部(32a)対応箇所には、上下方向に貫通する貫通孔(32b)がそれぞれ形成されている。一方、上記圧縮機構(20)のフロントヘッド(54)上部には、上記ステータ(32)の貫通孔(32b)に対応するボス(54a)が形成されていて、上記貫通孔(32b)にボルト(67)を挿通してフロントヘッド(54)のボス(54a)に締結することによりステータ(32)がフロントヘッド(54)に固定されて両者が一体化する。
上記ステータ(32)の突出部(32a)は、圧縮機構(20)及び電動機(30)の上方への変位量を制限するためのストッパ部を構成している。すなわち、例えば、圧縮機(1)を輸送する際に、圧縮機構(20)及び電動機(30)に大きな加振力が加わったときには、突出部(32a)が上記上部鏡板(12)の下端に当接することによって、圧縮機構(20)及び電動機(30)の過度な変位が防止される。
上記のように構成された圧縮機(1)では、電動機(30)が起動して揺動ピストン(25)が揺動すると、吸入管(42)の吸入ガスが吸入ポート(40)へ流入する。この吸入ポート(40)に流入した吸入ガスは、圧縮室(22)に吸入される。
上記圧縮機(1)において、吸入ポート(40)は、シリンダ(23)の半径方向に真っ直ぐ延びており、その長さが比較的短くなっている。このため、吸入管(42)からの吸入ガスは、直線状で短い吸入ポート(40)を通って該圧縮室(22)に吸入される。従って、従来のように吸入ガスが屈曲した吸入ポートを流れる場合に比べて、吸入ポート(40)から圧縮室(22)に吸入されるまでのガスの圧力損失が小さくなる。そして、圧縮室(22)へ流入する時点におけるガス密度の低下が抑制され、圧縮機(1)の効率が向上する。
圧縮室(22)に吸入された吸入ガスは、揺動ピストン(25)により圧縮されてシリンダ(23)側の吐出ポート(41)及びヘッド側吐出ポート(56,57)を順に通る。このときの吐出ガス圧により吐出弁(48)が開き、圧縮された圧縮室(22)内のガス冷媒が吐出ガスとして密閉容器(10)内に吐出される。
上記密閉容器(10)内は、圧縮機構(20)からの吐出ガスで満たされて高圧状態となる。その際、ヘッド側吐出ポート(56)からの吐出ガスは、まず上側マフラ(59)へ吐出され、その後に上側マフラ(59)の外側へ流出する。一方、下側のヘッド側吐出ポート(57)からの吐出ガスは、ステー部材(61)の内側へ吐出され、その後にリヤヘッド(55)、シリンダ(23)、及びフロントヘッド(54)に設けた連通穴を通って上側マフラ(59)へ導かれ、その後に上側マフラ(59)の外側へ流出する。これによって、吐出ガスの脈動が緩和され、吐出音が低減される。そして、上記吐出ガスは、密閉容器(10)内における電動機(30)の上方の空間へ流れ込み、吐出管(14)を通って密閉容器(10)の外部に導出される。
上記圧縮機(1)では、リヤヘッド(55)に形成されたヘッド側吐出ポート(56)の下方をステー部材(61)により覆うことで、密閉容器(10)の下部に貯留されている冷凍機油がヘッド側吐出ポート(56)に流入するのを防止できる。すなわち、圧縮機構(20)の下側に吐出音低減用のマフラや冷凍機油の流入防止用の部材を配設する必要がないので、部品点数が削減されて、圧縮機(1)のコンパクト化及び低コスト化が図られる。
−実施形態1の作用・効果−
この圧縮機(1)の運転中には、圧縮機構(20)の圧縮仕事に伴うトルク変動に起因する振動や、電動機(30)の振動が発生し、圧縮機構(20)及び電動機(30)が振動する。この圧縮機(1)では、圧縮機構(20)及び電動機(30)がコイルバネ(65)により支持されているため、圧縮機構(20)や電動機(30)で発生した振動は、コイルバネ(65)によって吸収される。従って、圧縮機構(20)や電動機(30)から密閉容器(10)に伝わる振動が低減される。
また、圧縮機構(20)は複数のコイルバネ(65)を介して密閉容器(10)の底部に支持されているため、圧縮機(1)の運転中に圧縮機構(20)や電動機(30)で振動が発生すると、圧縮機構(20)のシリンダ(23)も継手部材(43)やブロック部材(46)に対して変位する。このシリンダ(23)の外側面は、駆動軸(31)の軸方向に平坦な面であって、継手部材(43)の先端面と平行に延びている。このため、圧縮機(1)の運転中にシリンダ(23)が変位すると、シリンダ(23)の凹溝(23a)に嵌め込まれたOリング(45)は、継手部材(43)の先端面と摺動する。そして、このOリング(45)は、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、シリンダ(23)と継手部材(43)の間をシールする。
また、シリンダ(23)の凹溝(23b)に嵌め込まれたOリング(47)は、ブロック部材(46)の先端面と摺動する。そして、このOリング(47)は、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、シリンダ(23)とブロック部材(46)の間をシールする。さらに、シリンダ(23)が継手部材(43)やブロック部材(46)の先端面に垂直な方向へ変位した場合、Oリング(45,47)は、シリンダ(23)の変位に応じて変形し、継手部材(43)やブロック部材(46)とシリンダ(23)の間のシールを確保する。
このように、本実施形態によれば、シリンダ(23)を半径方向へ貫通するように吸入ポート(40)を形成した場合であっても、圧縮機(1)の運転中における圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、シリンダ(23)と継手部材(43)の間のシールを確保できる。つまり、吸入ポート(40)を直線的で比較的短く形成して吸入されるガスの圧力損失が増大するのを回避した上で、シリンダ(23)と継手部材(43)の間をシール機構(S)によって確実にシールすることができ、更には圧縮機構(20)を変位自由度を確保して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を削減することができる。
また、シール機構(S)は、シリンダ(23)に凹溝(23a)を形成し、この凹溝(23a)にシール部材(45)を嵌め込んで構成されている。これにより、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができる。その上、Oリング(45)はシール部材として一般に広く利用されているため、シール機構(S)のシール部材が安価になる。これらのことにより、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機(1)のコスト増加を抑制できる。
また、圧縮機構(20)をコイルバネ(65)に取り付けるためのステー部材(61)で吐出ポート(57)の開口部を覆い、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間の空間へ吐出ポート(57)からガスを吐出している。従って、吐出ポート(57)から下向きに吐出されたガスによって密閉容器(10)の下部に貯留された冷凍機油が飛散するのを回避でき、飛散した冷凍機油が吐出ポート(57)へ流入するのを防止できる。
さらに、吐出ガスは、圧縮機構(20)の下面とステー部材(61)の間へ一旦吐出された後に、ステー部材(61)の外部に流出する。これによって、吐出ガスの脈動を緩和することができ、吐出ガスの脈動に起因する吐出音を低減できる。つまり、圧縮機構(20)の設置に必要なステー部材(61)を利用して冷凍機油の流入防止や吐出音の低減が可能となる。従って、吐出音低減用のマフラや冷凍機油の流入防止部材を別途設ける必要がなくなって部品点数を低減でき、圧縮機(1)の低コスト化を図ることができるとともに、圧縮機(1)のコンパクト化を図ることができる。
また、胴部(11)に組み付けられた上部鏡板(12)の下端部は、胴部(11)の内周面よりも内側に位置している。そして、圧縮機構(20)及び電動機(30)が上方へ所定量変位すると、突出部(32a)が上部鏡板(12)の下端部に当接する。これにより、圧縮機構(20)及び電動機(30)の上方への変位量が制限される。つまり、上部鏡板(12)の下端に突出部(32a)を当接させることによって、圧縮機構(20)及び電動機(30)の過大な変位が規制される。このため、圧縮機(1)の輸送時等に、圧縮機構(20)及び電動機(30)に大きな加振力が作用した場合に、コイルバネ(65)により弾性支持された圧縮機構(20)や電動機(30)自体が密閉容器(10)に衝突して損傷するのを防止できる。
また、この圧縮機(1)は高圧ドーム型に構成されているため、密閉容器(10)内の高圧の吐出ガス圧が圧縮機構(20)及び電動機(30)全体に同様に作用する。一方、圧縮機構(20)のシリンダ(23)の吸入ポート(40)には、吸入管(42)を通じて低圧の吸入ガスが導入されている。このため、この圧縮機(1)のうち吸入ポート(40)側のOリング(45)より内側の領域には、吸入ガス圧が作用する。さらに、この圧縮機(1)には、差圧力キャンセル機構(52)が設けられており、シリンダ(23)の連通路(51)を通じて吸入ポート(40)の吸入ガス圧が吸入圧室(50)に導入される。このため、シリンダ(23)のうち吸入ポート(40)とは反対側のシリンダ(23)のOリング(47)より内側の領域にも、吸入ガス圧が作用する。
つまり、密閉容器(10)内の吐出ガス圧が圧縮機構(20)の全体に作用する一方、この圧縮機構(20)のシリンダ(23)における吸入ポート(40)側と該吸入ポート(40)の反対側とでは、互いに同じ面積の領域に吸入ガス圧が逆向きに作用する。これにより、圧縮機構(20)に作用する吐出ガス圧及び吸入ガス圧に起因して圧縮機構(20)に作用する力は、それら全てが互いに打ち消し合うこととなり、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向への押圧力がほぼゼロになる。
その結果、コイルバネ(65)には、吐出ガス圧と吸入ガス圧の差に起因して圧縮機構(63)に及ぼされる力が作用しないので、コイルバネ(65)のバネ定数を圧縮機構(20)及び電動機(20)に作用する重力だけを支持できる程度の小さな値に設定することが可能となる。よって、コイルバネ(65)を柔らかくすることができて、圧縮機構(20)及び電動機(30)の振動がより一層容器に伝わり難くなり、圧縮機(1)の騒音を十分に低減できる。
また、上記差圧力キャンセル機構(52)によって圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)方向への押圧力が低減されるため、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位が抑制される。その結果、上記圧縮機構等(20)と密閉容器(10)の内面とのクリアランスを小さくすることができる。このクリアランスを小さくできる分、密閉容器(10)を小さく形成することが可能となり、圧縮機(1)を小型化できる。
また、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)と反対側に吸入ガス圧を作用させているので、シリンダ(23)の外側面の1箇所にのみ吸入ガス圧を作用させるように差圧力キャンセル機構(52)を構成することで、吸入ポート(40)方向への押圧力を安定的に低減できる。これにより、差圧力キャンセル機構(52)の構造を簡素化でき、圧縮機(1)のコストを低減できる。また、差圧力キャンセル機構(52)が吸入ガス圧をシリンダ(23)の外側面に直接作用させているため、圧縮機構(20)及び電動機(30)の変位を容易にかつ安定的に抑制することができる。
また、前記第2ブロック部材(46)の先端面とシリンダ(23)の外側面との間に吸入圧室(50)を形成し、連通路(51)から導入した吸入ガス圧をシリンダ(23)の外側面に作用させている。このため、差圧力キャンセル機構(52)を比較的簡単な構成で実現でき、差圧力キャンセル機構(52)を設けることによる圧縮機(1)のコスト上昇を抑制できる。また、吸入圧室(50)を構成するシリンダ(23)の外側面の面積を変えることで、差圧力キャンセル機構(52)によるシリンダ(23)への力を変更することもできる。
また、差圧力キャンセル機構(52)の連通路(51)をシリンダ(23)に形成しているので、連通路(51)を構成する部材を別に設けなくてもよい。これにより、部品点数の増大を抑制することができるとともに、圧縮機(1)の大型化を回避することができる。
また、上記連通路(51)をシリンダ(23)の圧縮室(22)の低圧側内周面に沿って延びるように形成しているので、シリンダ(23)の外側面と圧縮室(22)との間に空間が形成される。この連通路(51)により、シリンダ(23)の外側面から内周面へ向かう熱伝導が阻害される。その結果、密閉容器(10)内に吐出された高温の吐出ガスの熱が圧縮室(22)へ伝わり難くなる。このことで、圧縮室(22)に吸入された吸入ガスが加熱されるのが抑制されて圧縮機効率を高めることができる。
尚、上記実施形態1では、差圧力キャンセル機構(52)によってシリンダ(23)の1箇所にのみ吸入ガス圧を作用させるように構成しているが、これに限らず、図示しないが、シリンダ(23)の複数箇所に吸入ガス圧を作用させるように構成してもよい。すなわち、シリンダ(23)の外側面の2箇所に差圧力キャンセル機構(52)によって吸入ガス圧を作用させる場合には、シリンダ(23)の吸入ポート(40)形成箇所を基準としてシリンダ(23)の周方向に略等しい間隔をあけて、即ち120゜毎に上記実施形態1と同様な吸入圧室を形成する。そして、シリンダ(23)に吸入ポート(40)と上記各吸入圧室とを連通させる複数の連通路を形成する。
また、同様にシリンダ(23)の3箇所に差圧力キャンセル機構(52)によって吸入ガス圧を作用させる場合には、90゜毎に吸入圧室を形成するようにすればよい。このようにシリンダ(23)の外側面に略等しい間隔で吸入ガス圧を作用させることで、圧縮機構(20)に作用する押圧力を安定的に低減することができる。
さらに、上記実施形態1では、吸入管(42)を1本だけ設けているが、2本設けるようにしてもよい。この場合、第2ブロック部材(46)を上記第1ブロック部材(43)と同様に構成する。この第2ブロック部材(46)の貫通孔に上記吸入管(42)と同様な吸入管である補助吸入管の一端を挿入する。この補助吸入管が連通路(51)を介して吸入ポート(40)に連通するので、2本の吸入管(42)により吸入ガスが圧縮室(22)に吸入されることとなる。その結果、吸入管(42)及び補助吸入管における吸入ガスの流速が低下する。このため、圧縮室(22)に吸入される際の吸入ガスの圧力損失を低減できて、圧縮機構(20)の効率を向上できる。また、吸入圧室を2つ以上設ける場合には、それに対応させて吸入管の数を増やしてもよい。
−実施形態1の変形例1−
上記実施形態1では、シール部材としてOリングを用いているが、図4に示すように、このOリングに代えて、断面がシール部材の外周側に開いたU字状もしくは馬蹄形に形成された中空状シール部材(70)を用いてもよい。尚、図4は、図1における継手部材(43)近傍を拡大図示したものであって、シリンダ(23)の吸入ポート(40)側の凹溝(23a)に嵌め込まれたシール部材(70)だけを図示しているが、シリンダ(23)の連通路(51)側の凹溝(23b)にも本実施形態のシール部材(70)が嵌め込まれる。
この場合、シール部材(70)におけるシリンダ(23)の凹溝(23a)の底面に接する部分と、継手部材(43)の先端面に接する部分との間が中空状であるため、シール部材(70)はその厚み方向に小さい力で変形する。圧縮機構(20)が継手部材(43)の先端面と垂直な方向へ変位すると、シリンダ(23)の外側面と継手部材(43)の先端面との距離が変化するが、この距離の変化に対応してシール部材(70)は容易に変形する。このため、シール部材(70)がシリンダ(23)の凹溝(23a)の底面及び継手部材(43)の先端面の両面に接触した状態に保たれ、シリンダ(23)と継手部材(43)との隙間が確実にシールされる。
さらに、この変形例では、シール部材(70)が厚み方向に小さい力で変形するため、シリンダ(23)の継手部材(43)の先端面と垂直な方向への振動が密閉容器(10)へ伝わり難くなり、騒音がより一層低減される。
−実施形態1の変形例2−
上記実施形態1では、継手部材(43)の先端面をシール面としているが、図5に示すように、胴部(11)の内面をシール面としてもよい。この変形例において、胴部(11)のうちシリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分に対向する部位には、内側へ窪んだ凹部(11c)が形成されている。この凹部(11c)の中心には、継手側挿入孔(11a)が形成されている。継手側挿入孔(11a)に挿入される継手部材(43)を介して吸入管(42)が胴部(11)に固定される。
すなわち、凹部(11c)は円形断面を有し、胴部(11)の内側に臨む面が駆動軸(31)の軸方向に平行な平坦面となっている。また、継手部材(43)は上記実施形態のものよりも薄肉に形成された円筒状のものであり、この継手部材(43)の貫通孔(43a)の基端側に吸入管(42)の一端が挿入されて固定されている。継手部材(43)の先端部は継手側挿入孔(11a)に挿入されていて、この継手部材(43)の外周面が全周に亘って継手側挿入孔(11a)の周縁に溶接されている。
尚、図示しないが、この変形例では、胴部(11)におけるシリンダ(23)の連通路(51)の周縁部分に対向する部位に上記凹部(11c)と同様な凹部を形成し、この凹部にOリング(47)を密着させるようにしてもよい。
〈実施形態2〉
図6は、本発明の実施形態2に係るロータリ圧縮機を示している。本実施形態のロータリ圧縮機は、シール機構(S)、継手部材(43)及びブロック部材(46)の構造を除き、実施形態1のものと同様に構成されている。以下の説明では、実施形態1と同一の部分には同一の符号を付し、これと異なる部分だけを詳細に説明する。
本実施形態では、図7にも示すように、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分がシリンダ(23)の径方向と略直交する平坦面となっており、この平坦面がシール面となっている。一方、継手部材(43)の先端側部分は、円柱状に形成されており、この部分が円柱部(71)を構成している。そして、この円柱部(71)にシール部材(72)が遊嵌され、該シール部材(72)がシール面に押し付けられている。
具体的には、胴部(11)の継手側挿入孔(11a)には、比較的短い管状の円筒部材(73)が挿入され、この円筒部材(73)に継手部材(43)が挿入されている。継手部材(43)の円柱部(71)は、その中心線が継手部材(43)の中心線と一致するように形成されている。この円柱部(71)の外径は、継手部材(43)の基端側の外径よりも小さくなっている。円筒部材(73)は、継手部材(43)の基端側の外周面の全体に密着するように形成され、この円筒部材(73)の軸方向の長さは、継手部材(43)の軸方向の長さと概ね同じとされている。円筒部材(73)の先端縁は、全周に亘って密閉容器(10)の継手側挿入孔(11a)に溶接されている。
シール部材(72)は、断面が四角形のリング状に形成されている。つまり、このシール部材(72)は、継手部材(43)の軸方向に延びる比較的短い円筒状に形成されている。シール部材(72)は、その内径が円柱部(71)の外径よりもやや大きくなっている。シール部材(72)には、その内周面の全周に亘って内周溝(72a)が形成されている。この内周溝(72a)にはOリング(76)が嵌め込まれている。このOリング(76)は、その内周面が円柱部(71)の外周面に接するように形成されている。
シール部材(72)の継手部材(43)側である基端面と、継手部材(43)との間には、バネ(75)が設けられている。このバネ(75)は、継手部材(43)の軸方向に伸縮するように形成されている。バネ(75)は、シリンダ(23)方向への力をシール部材(72)に作用させている。このバネ(75)からの力を受けて、シール部材(72)の先端面はシリンダ(23)の外側面におけるシール面に押し付けられている。
本実施形態では、Oリング(76)がシール部材(72)の内周溝(72a)に嵌め込まれ、この状態でシール部材(72)が円柱部(71)に遊嵌される。このため、Oリング(76)の外周面がシール部材(72)の内周溝(72a)の底面に密着する一方、Oリング(76)の内周面が円柱部(71)の外周面に密着する。従って、Oリング(76)によってシール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間をシールすることができる。
また、シール部材(71)がシリンダ(23)の外側面に構成されたシール面にバネ(75)により押し付けられる。このため、圧縮機構(20)の振動に伴ってシリンダ(23)が変位しても、シール部材(72)の先端面をシール面と密着した状態に保持することができ、シリンダ(23)と継手部材(43)の間のシールを一層確実にできる。
さらに、本実施形態では、シール部材(72)の内周溝(72a)に嵌め込まれたOリング(76)によってシール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間をシールしている。このため、シール部材(72)と円柱部(71)の間のシールを確保した上で、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広くすることができる。そして、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広げることで、運転中に変位する圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間を一層確実にシールすることが可能となる。
この点について図8に基づいて説明すると、圧縮機(1)の運転中には、圧縮機構(20)が振動して、シリンダ(23)の外側面が密閉容器(10)の内面に対して傾斜するように変位する場合がある。このような場合に圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間のシールを確保するには、シール部材(72)を傾斜させてシール部材(72)の先端面を全体に亘ってシリンダ(23)の外側面に密着させるのが望ましい。そして、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間隔を広く設定しておけば、圧縮機構(20)の変位に追従してシール部材(72)が傾斜しても、シール部材(72)の内周面が円柱部(71)の外周面と接触することはない。
従って、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)を確実に追従させることができ、シール部材(72)の先端面をシリンダ(23)の外側面に密着した状態に保って圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間を確実にシールすることができる。また、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)が確実に追従するため、このシール部材(72)を介して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を低減することができる。
尚、この実施形態2では、ブロック部材(46)も継手部材(43)と同様に構成されている。図6に示すように、胴部(11)のブロック側挿入孔(11b)には、円筒部材(83)が挿入され、この円筒部材(83)にブロック部材(46)が挿入されている。シール部材(82)は、断面が四角形のリング状に形成され、シール部材(82)のブロック部材(46)側である基端面と、ブロック部材(46)との間には、バネ(85)が設けられている。このバネ(85)は、シリンダ(23)方向への力をシール部材(82)に作用させており、このバネ(85)からの力を受けて、シール部材(82)はシリンダ(23)の外側面に押し付けられている。
−実施形態2の変形例1−
上記実施形態2では、シール部材(72)に内周溝(72a)を形成してOリング(76)を嵌め込むようにしているが、図9に示すように、Oリング(76)を省略するとともにシール部材(72)を単純な円筒状に形成し、このシール部材(72)の内周面を全面に亘って円柱部(71)の外周面と摺接させるようにしてもよい。つまり、シール部材(72)の内径を円柱部(71)の外径よりもわずかに大きくし、シール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面の間にはほとんど隙間が形成されないようにしてもよい。こうすることで、シール部材(72)の内周側にOリング(76)を設けなくても、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ流れるガスがシール部材(72)の内周面と円柱部(71)の外周面との間から洩れるのを防止でき、シール性能を確保しながらシール機構(S)の簡素化を図ることができる。尚、図9では、シリンダ(23)の吸入ポート(40)側の凹溝(23a)に嵌め込まれたシール部材(72)だけを図示しているが、シリンダ(23)の連通路(51)側の凹溝(23b)にも本実施形態のシール部材(72)が嵌め込まれる。
−実施形態2の変形例2−
上記実施形態2では、シール部材(72)をバネ(75)によりシリンダ(23)の外側面に押圧しているが、図10に示すように、バネ(75)に代えて、Oリング(77)により押圧するようにしてもよい。この場合、Oリング(77)が潰れ方向に弾性変形したときの復元力によりシール部材(72)がシリンダ(23)の外側面におけるシール面に押し付けられる。
また、Oリング(77)は、シール部材(72)の基端面と継手部材(43)の両方に密着している。このため、押圧部材としてのOリング(77)を利用して、シール部材(72)と継手部材(43)の間をシールすることができる。
これにより、広く一般に利用されているOリング(77)を用いてシール部材(72)をシール面に密着させることができる。その結果、圧縮機(1)のコストの増加を抑制しつつ、シリンダ(23)と継手部材(43)との間のシールを確実にできる。
−実施形態2の変形例3−
上記実施形態2では、シール部材(72)の内周溝(72a)にOリング(76)を嵌め込んでいるが、これに代えて、次のような構成を採ってもよい。つまり、図11に示すように、シール部材(72)を単純な円筒状に形成し、円柱部(71)の外周面に外周溝(71a)を設けてこの外周溝(71a)にリング部材(78)を嵌め込んでもよい。
本変形例において、シール部材(72)は金属製である。また、シール部材(72)は、断面が四角形のリング状に形成されている。つまり、このシール部材(72)は、継手部材(43)の軸方向に延びる比較的短い円筒状に形成されている。シール部材(72)は、その内径が円柱部(71)の外径よりもやや大きくなっている。尚、本変形例のシール部材(72)は、単純な円筒状に形成されており、このシール部材(72)に内周溝(72a)は設けられていない。
また、円柱部(71)の外周面のうちシール部材(72)の内周面に対向する部分には、その全周に亘って外周溝(71a)が形成されている。この外周溝(71a)は、円柱部(71)の2ヶ所に形成されている。2つの外周溝(71a)のそれぞれには、金属製のリング部材(78)が嵌め込まれている。このリング部材(78)は、自動車等のエンジンに用いられるピストンリングと同様の形状をしている。つまり、リング部材(78)は、円環の一部を切除した形状に形成され、外力を加えることによってその径方向に弾性変形するように構成されている。
上記外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)は、周囲をシール部材(72)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(78)の外周面は、リング部材(78)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、シール部材(72)の内周面に押し付けられる。そして、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされる。
尚、上記シール部材(72)は、四フッ化エチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイト樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、及びフェノール樹脂等の樹脂、カーボン、或いはセラミック等により形成されていてもよい。また、リング部材(78)は、四フッ化エチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイト樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、及びフェノール樹脂等の樹脂により形成されていてもよい。また、リング部材(78)には、上記の樹脂を内側と外側とで貼り合わせたものや、金属の表面に上記の樹脂をコーティングしたものを用いてもよい。
更に、図11では、円柱部(71)に外周溝(71a)を2つ形成してそれぞれの外周溝(71a)にリング部材(78)を嵌め込んだものを示しているが、これに限らず、外周溝(71a)を1つだけ形成してこの外周溝(71a)にリング部材(78)を嵌め込んでもよい。
本実施形態では、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をその径方向へ広がろうとする復元力によってシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間をシールしている。従って、本実施形態によれば、シール機構(S)を外周溝(71a)とリング部材(78)とで構成することにより、円柱部(71)とシール部材(72)の間のシールを確実にできる。
また、本実施形態では、金属製のリング部材(78)と金属製のシール部材(72)の間で摩擦抵抗が発生する。一方、例えばOリングを外周溝(71a)に嵌め込む場合において、摩擦抵抗は、ゴム製のOリングと金属製のシール部材(72)の間で発生する。また、金属と金属の摩擦抵抗の方が、金属とゴムの摩擦抵抗よりも小さい。このため、金属製のシール部材(72)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(78)の方がゴム製のOリングよりも小さくなる。従って、本実施形態によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位する際のリング部材(78)とシール部材(72)の摺動抵抗を小さくすることができ、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72)を一層確実に追従させることができる。そして、圧縮機構(20)の変位自由度を確保して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を低減することができる。
〈実施形態3〉
本発明の実施形態3は、上記実施形態1の圧縮機の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図12及び図13に示すように、本実施形態の圧縮機(1)では、ブロック部材(46)と吸入圧室(50)と連通路(51)とが省略されている。また、本実施形態では、継手部材(43)の形状が上記実施形態1のものと異なっている。
本実施形態の継手部材(43)は、円筒状に形成されている。継手部材(43)に設けられる貫通孔(43a)の基端側には、吸入管(42)の一端が挿入されて固定されている。密閉容器(10)の胴部(11)に設けられる継手側挿入孔(11a)は、圧縮機構(20)よりもその下端が高くその上端が低くなっている。継手部材(43)は、その先端部が胴部(11)の厚みと同じ長さだけ継手側挿入孔(11a)に挿入され、この継手部材(43)の外周面が全周に亘って継手側挿入孔(11a)の周縁に溶接されている。また、継手部材(43)の先端面の形状は、密閉容器(10)の内周面の形状に合う曲面となっている。そして、継手部材(43)の先端面は、密閉容器(10)の内周面の一部を構成している。
圧縮機構(20)のシリンダ(23)は、その外径が密閉容器(10)の内径よりもやや小さい円柱形状に形成されている。そして、圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の外周面が全面に亘って密閉容器(10)の内周面と向き合う姿勢となっている。つまり、シリンダ(23)の外周面と密閉容器(10)の内周面の間には、比較的狭い環状の隙間が形成されている。また、シリンダ(23)の外周面のうち吸入ポート(40)の開口部の形状は、シリンダ(23)の外周面の形状に合う曲面となっている。そして、吸入ポート(40)の開口部と密閉容器(10)の内周面との間には、比較的狭い隙間が形成されている。尚、シリンダ(23)には、吐出ガスから分離した冷凍機油を通過させるための油戻し通路(29)が複数設けられており、この油抜き穴(29)はシリンダ(23)を軸方向に貫通している。
上記シリンダ(23)の外周面には、その全周に亘って凹溝(23c)が形成されている。この凹溝(23c)は、シリンダ(23)の上下に1つずつ形成されている。このうち上側の凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部よりも高い位置に形成され、その下端が継手側挿入孔(11a)の上端と概ね同じかやや上に位置している。下側の凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部よりも低い位置に形成され、その上端が継手側挿入孔(11a)の下端と概ね同じかやや下に位置している。
上記2つの凹溝(23c)には、それぞれにOリング(79)が嵌め込まれている。Oリング(79)は、その太さが凹溝(23c)の深さよりも大きくなっている。そして、Oリング(79)は、シリンダ(23)における凹溝(23c)の底面と密閉容器(10)の内面との両方に密着し、且つシリンダ(23)と密閉容器(10)に挟まれて押し潰された状態となっている。そして、Oリング(79)がシリンダ(23)と密閉容器(10)の両方に密着することで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間がシールされる。また、このようにOリング(79)を予め押し潰しておくことにより、圧縮機(1)の運転中にシリンダ(23)が変位しても、Oリング(79)がシリンダ(23)と密閉容器(10)の両方に密着した状態に保持される。
本実施形態では、シリンダ(23)に形成される凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるOリング(79)とによってシール機構(S)が構成される。シリンダ(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間のうち、上下のOリング(79)によって仕切られた空間は、低圧空間(81)を形成している。この低圧空間(81)は、吐出ガスで満たされた密閉容器(10)の内部空間から区画されると共に、吸入ポート(40)と吸入管(42)とに連通している。また、低圧空間(81)の気密は、シリンダ(23)と密閉容器(10)とに密着するOリング(79)によって保持されている。
本実施形態において、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には、吸入管(42)を通じて低圧の吸入ガスが導入される。ここで、仮に圧縮機構(20)の外周面のうち吸入ポート(40)以外の部分全てに吐出ガス圧が作用する状態を考えると、この状態では、圧縮機構(20)の半径方向に作用するガス圧が不均一となる。そして、ガス圧によって圧縮機構(20)が吸入ポート(40)側へ押さえ付けられて密閉容器(10)に接触すると、該圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を充分に遮断できなくなる。
上述のように、本実施形態では、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間の全周に亘って低圧空間(81)が形成されている。つまり、圧縮機構(20)の外周面には、その全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用する。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用し、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。従って、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位を妨げることができ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)へ接触するのを防いで圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を一層確実に遮断することができる。
本実施形態では、圧縮機構(20)のシリンダ(23)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるOリング(79)とによってシール機構(S)を構成している。従って、本実施形態によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、Oリング(79)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。また、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加を抑制できる。
また、本実施形態では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成される。ここで、密閉容器(10)内では、吐出ガスで満たされた空間と冷凍機油が貯留される空間とが圧縮機構(20)を介して反対側に設けられる場合が多い。そして、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられていない場合には、ガスと分離した冷凍機油が吐出ガスで満たされた空間に貯留されることとなり、冷凍機油が不足して圧縮機構(20)が潤滑不良を起こすおそれがある。
一方、本実施形態では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成されているため、ガスと分離した冷凍機油を油戻し通路(29)を通じて冷凍機油が貯留される空間へ導くことができる。従って、本実施形態によれば、密閉容器(10)内が仕切られて一方の空間に貯留される冷凍機油が他方の空間へ吐出される構成であっても、冷凍機油の不足を防ぐことができ、圧縮機構(20)の潤滑不良を回避することができる。また、油戻し通路(29)を設けることにより、密閉容器(10)内の圧力を均一に保つことができる。
−実施形態3の変形例−
上記実施形態3において、圧縮機(1)の構成を変更してもよい。ここでは、本変形例について、上記実施形態3と異なる点を説明する。
図14に示すように、本変形例では、凹溝(23c)がシリンダ(23)の上下に2つずつ形成されている。上側の2つの凹溝(23c,23c)のうち高さの低い方は、吸入ポート(40)の開口部よりも高い位置に形成され、その下端が継手側挿入孔(11a)の上端と概ね同じかやや上に位置している。下側の2つの凹溝(23c,23c)のうち高さの高い方は、吸入ポート(40)の開口部よりも低い位置に形成され、その上端が継手側挿入孔(11a)の下端と概ね同じかやや下に位置している。
上記複数の凹溝(23c,23c,…)のそれぞれには、金属製のリング部材(80)が嵌め込まれている。このリング部材(80)は、自動車等のエンジンに用いられるピストンリングと同様の形状をしている。つまり、リング部材(80)は、円環の一部を切除した形状に形成され、外力を加えることによってその径方向に弾性変形するように構成されている。
上記凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)は、周囲を密閉容器(10)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(80)の外周面は、リング部材(80)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、密閉容器(10)の内周面に押し付けられる。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間がシールされる。
尚、上記リング部材(80)は、四フッ化エチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイト樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、及びフェノール樹脂等の樹脂により形成されていてもよい。また、リング部材(80)には、上記の樹脂を内側と外側とで貼り合わせたものや、金属の表面に上記の樹脂をコーティングしたものを用いてもよい。
また、図14では、シリンダ(23)の上下に凹溝(23c)を2つずつ形成してそれぞれの凹溝(23c)にリング部材(80)を嵌め込んだものを示しているが、これに限らず、シリンダ(20)の上下に凹溝(23c)を1つずつ形成してそれぞれの凹溝(23c)にリング部材(80)を嵌め込んでもよい。
本変形例では、圧縮機構(20)のシリンダ(23)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるリング部材(80)とによってシール機構(S)を構成している。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)をその径方向へ広がろうとする復元力によって密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間をシールしている。従って、本変形例によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、リング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。
また、本変形例では、金属製のリング部材(80)と金属製の密閉容器(10)の間で摩擦抵抗が発生する。一方、例えばOリングを凹溝(23c)に嵌め込む場合において、摩擦抵抗は、ゴム製のOリングと金属製の密閉容器(10)の間で発生する。また、金属と金属の摩擦抵抗の方が、金属とゴムの摩擦抵抗よりも小さい。このため、金属製の密閉容器(10)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(80)の方がゴム製のOリングよりも小さくなる。従って、本変形例によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位する際のリング部材(80)と密閉容器(10)の摺動抵抗を小さくすることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を一層確実にシールすることができる。
〈その他の実施形態〉
−第1変形例−
上記実施形態1〜3では、ピストン(25)にブレード(25b)が一体形成されていてシリンダ(23)内でピストン(25)が揺動する揺動ピストン型のロータリ圧縮機(1)に本発明を適用したものを示したが、本発明の適用対象となる圧縮機は、この形式の圧縮機に限定されるものではない。例えば、ピストンとブレードが別体に形成されてピストン外周面にブレード先端が押圧されるローリングピストン型のロータリ圧縮機に本発明を適用することも可能である。また、スクロール型圧縮機に本発明を適用することも可能である。
−第2変形例−
上記実施形態3では、シリンダ(23)の外側面に凹溝(23c)を形成し、この凹溝(23c)にOリング(79)又はリング部材(80)を嵌め込んでいる。これに限らず、密閉容器(10)の内面に凹溝(図示せず)を形成し、この凹溝にOリング(79)又はリング部材(80)を嵌め込んでもよい。本変形例では、シリンダ(23)の外周面のうち密閉容器(10)の凹溝に対向する部分がシール面を構成する。また、密閉容器(10)に形成される凹溝と、そこに嵌め込まれるOリング(79)又はリング部材(80)とによって、シール機構(S)が構成される。