ここで、電動機によって圧縮機構を回転駆動すると、発生した加振力によって圧縮機構及び電動機が変位する。その際、圧縮機構及び電動機は、その軸方向と周方向と半径方向とに変位しようとする。
上記特許文献1に記載された圧縮機において、圧縮機構及び電動機は、複数のコイルばねで弾性支持されており、その軸方向、周方向、及び半径方向の何れにも変位可能である。従って、この圧縮機では、圧縮機構や電動機から密閉容器への振動の伝達を比較的よく遮断できる。ところが、この圧縮機では、コイルばねが電動機の側方に配置されており、圧縮機構や電動機の外周面と密閉容器の内周面との隙間をかなり広くとる必要がある。このため、密閉容器が大型化してしまい、圧縮機を設置する際の制約が大きくなったり、圧縮機の製造コストが増大するという問題があった。
一方、上記特許文献2に記載された圧縮機において、圧縮機構や電動機を弾性支持するコイルばねは、圧縮機構の下面と密閉容器の底面との間に設けられている。従って、特許文献1の圧縮機に比べれば、圧縮機構や電動機の外周面と密閉容器の内周面との隙間を狭めることができ、密閉容器を小型化できる可能性がある。ところが、この圧縮機では、密閉容器から延びるピンが電動機に、圧縮機構から延びる吸入ポートが密閉容器にそれぞれ挿入されている。そして、圧縮機構や電動機は、その軸方向や周方向には変位可能だが、半径方向には殆ど変位できない状態となっている。このため、圧縮機構や電動機から密閉容器へ伝わる振動を充分に遮断できないおそれがあった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、密閉容器を大型化させることなく圧縮機構や電動機から密閉容器に伝わる振動を確実に遮断しうる圧縮機を提供することにある。
第1の発明は、吸入管(42)及び吐出管(14)が接続された円筒状の密閉容器(10)と、上記吸入管(42)から吸入したガスを圧縮して上記密閉容器(10)内へ吐出する圧縮機構(20)と、上記圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結された電動機(30)と、互いに連結された上記圧縮機構(20)及び電動機(30)によって構成される本体部(70)を密閉容器(10)内で弾性支持する弾性支持機構(E)とを備える圧縮機を対象としている。そして、上記弾性支持機構(E)は、上記本体部(70)の端部と上記密閉容器(10)の端部との間に配置され、上記本体部(70)をその半径方向、周方向、及び軸方向への変位可能に弾性支持している。
さらに、上記圧縮機構(20)には、該圧縮機構(20)の外側面に開口するように吸入ポート(40)が形成され、上記吸入管(42)は、その終端が圧縮機構(20)の外側面における上記吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置されている。
その上、第1の発明は、上記圧縮機構(20)の外側面に押圧されるシール部材(72)を備えて上記吸入ポート(40)と吸入管(42)の終端とを接続するシール機構(S)が設けられている。
加えて、上記密閉容器(10)は、吸入管(42)が基端側に接続された継手部材(43)を備え、上記継手部材(43)の先端側部分は、円柱状に形成されて円柱部(71)を構成し、上記シール部材(72)は、円筒状に形成されて上記円柱部(71)に遊嵌され、上記シール機構(S)には、上記シール部材(72)に押圧力を作用させて該シール部材(72)の先端面を圧縮機構(20)の外側面に押圧する押圧部材(75)が設けられている。
第2の発明は、第1の発明において、シール機構(S)では、円柱部(71)の外周面の全周に亘って外周溝(71a)が形成され、円環の一部を切除した形状のリング部材(78)が上記外周溝(71a)に嵌め込まれており、弾性変形した上記リング部材(78)のその径方向へ広がろうとする復元力で該リング部材(78)の外周面をシール部材(72)の内周面に押圧することによって円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされるものである。
第3の発明は、吸入管(42)及び吐出管(14)が接続された円筒状の密閉容器(10)と、上記吸入管(42)から吸入したガスを圧縮して上記密閉容器(10)内へ吐出する圧縮機構(20)と、上記圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結された電動機(30)と、互いに連結された上記圧縮機構(20)及び電動機(30)によって構成される本体部(70)を密閉容器(10)内で弾性支持する弾性支持機構(E)とを備える圧縮機を対象としている。そして、上記弾性支持機構(E)は、上記本体部(70)の端部と上記密閉容器(10)の端部との間に配置され、上記本体部(70)をその半径方向、周方向、及び軸方向への変位可能に弾性支持している。
さらに、上記圧縮機構(20)は、その外形が円柱形状になると共に、その外周面に吸入ポート(40)が開口しており、上記吸入管(42)は、その終端が上記圧縮機構(20)の外側面における上記吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置されている。
その上、第3の発明は、互いに対向する上記圧縮機構(20)の外周面と上記密閉容器(10)の内周面の隙間に上記吸入ポート(40)及び上記吸入管(42)と連通する低圧空間(81)を形成するためのシール機構(S)を備えている。
加えて、上記圧縮機構(20)の外周面では、その全周に亘る凹溝(23c)が吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ形成されており、上記シール機構(S)は、上記凹溝(23c)と、円環の一部を切除した形状に形成されて該凹溝(23c)に嵌め込まれるリング部材(80)とを備え、弾性変形した上記リング部材(80)のその径方向へ広がろうとする復元力で該リング部材(80)の外周面を密閉容器(10)の内周面に押圧することによって上記圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールしている。
第4の発明は、第3の発明において、圧縮機構(20)には、該圧縮機構(20)を軸方向に貫通する油戻し通路(29)が形成されるものである。
第5の発明は、第1の発明において、密閉容器(10)には、本体部(70)の半径方向への変位が抑制されるように該本体部(70)を弾性支持する変位抑制機構(D)が設けられるものである。
第6の発明は、第5の発明において、変位抑制機構(D)では、圧縮機構(20)の外周面に押圧力を作用させるための弾性部材(96)が3つ以上設けられ、各弾性部材(96)が上記圧縮機構(20)の異なる方向に配置されるものである。
第7の発明は、第1の発明において、密閉容器(10)には、本体部(70)の半径方向への変位が抑制されるように該本体部(70)を弾性支持する変位抑制機構(D)が設けられ、上記変位抑制機構(D)では、圧縮機構(20)の外周面に押圧力を作用させるための弾性部材(96)が3つ以上設けられ、各弾性部材(96)が上記圧縮機構(20)の異なる方向に配置されると共に、弾性部材(96)の1つがシール機構(S)の押圧部材(75)によって構成されるものである。
第8の発明は、第1〜第7の何れか1の発明において、弾性支持機構(E)は、上記本体部(70)の端部と上記密閉容器(10)の端部との間に設けられた複数のバネ(65,65,…)によって構成されるものである。
−作用−
上記第1の発明では、圧縮機構(20)及び電動機(30)が互いに連結されて本体部(70)を構成する。弾性支持機構(E)は、本体部(70)の端部と上記密閉容器(10)の端部との間に配置されており、本体部(70)を弾性支持している。つまり、弾性支持機構(E)は、本体部(70)の側面と密閉容器(10)の間ではなく、本体部(70)の端部と密閉容器(10)の間に設けられている。
圧縮機の運転中において、圧縮機構(20)の駆動軸(31)が電動機(30)により回転駆動されると、吸入管(42)のガスが圧縮機構(20)へ吸い込まれる。圧縮機構(20)で圧縮されたガスは、一旦密閉容器(10)内に吐出された後、吐出管(14)から密閉容器(10)の外部へ導出される。また、本体部(70)は、圧縮機構(20)の圧縮仕事に伴うトルク変動に起因する振動などにより振動し、その半径方向、周方向、及び軸方向へ変位しようする。この発明では、本体部(70)が弾性支持機構(E)によって弾性支持されており、本体部(70)の半径方向、周方向、及び軸方向への変位が可能となる。このため、本体部(70)の振動が弾性支持機構(E)に吸収され、本体部(70)から密閉容器(10)へ伝わる振動が遮断される。
また、吸入管(42)の終端が圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向している。そして、圧縮機構(20)の外側面にシール部材(72)を押し付けることによって、シール機構(S)が圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールし、互いに対向する吸入管(42)の終端と吸入ポート(40)とを接続している。
圧縮機の運転中には、吸入管(42)のガスがシール機構(S)により接続された吸入ポート(40)を通って圧縮機構(20)へ吸い込まれる。また、圧縮機構(20)が振動して該圧縮機構(20)が駆動軸(31)の軸方向や周方向へ変位すると、圧縮機構(20)の外側面は密閉容器(10)の内面に対して概ね平行な方向へ変位する。その際、シール機構(S)のシール部材(72)は、圧縮機構(20)の外側面と摺動し、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールする。
さらに、シール部材(72)が継手部材(43)の円柱部(71)に遊嵌されて円柱部(71)の軸方向に移動可能となる。このシール部材(72)の先端面は、押圧部材(75)により圧縮機構(20)の外側面に押し付けられる。圧縮機の運転中に圧縮機構(20)が振動すると、シール部材(72)は、変位する圧縮機構(20)の外側面に追従して移動する。そして、シール部材(72)の先端面が、圧縮機構(20)の外側面と密着した状態に保持される。
上記第2の発明では、円柱部(71)の外周面のうちシール部材(72)の内周面に対向する部分に、その全周に亘って外周溝(71a)が形成される。この外周溝(71a)には、リング部材(78)が嵌め込まれている。外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)は、周囲をシール部材(72)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(78)の外周面は、リング部材(78)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、シール部材(72)の内周面に押し付けられる。そして、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされる。
上記第3の発明では、吸入管(42)の終端が圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向している。圧縮機構(20)は、その外形が円柱形状に形成される。このため、圧縮機構(20)の外周面は、その全面が密閉容器(10)の内周面に対面した状態となる。そして、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間には、全周に亘って環状の隙間が形成される。一方、圧縮機には、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間に低圧空間(81)を形成するためのシール機構(S)が設けられる。圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間のうち、シール機構(S)によって仕切られた部分が、吸入管(42)と吸入ポート(40)とに連通する低圧空間(81)となる。
圧縮機の運転中には、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)に吸入管(42)及び低圧空間(81)を通じて低圧のガスが導入される。ここで、仮に圧縮機構(20)の外周面のうち吸入ポート(40)以外の部分全てに吐出ガス圧が作用する状態を考えると、この状態では、圧縮機構(20)の半径方向に作用するガス圧が不均一となる。そして、ガス圧によって圧縮機構(20)が吸入ポート(40)側へ押さえ付けられて密閉容器(10)に接触すると、該圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を充分に遮断できなくなる。
これに対し、この第3の発明では、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間の全周に亘って低圧空間(81)が形成されている。つまり、圧縮機構(20)の外周面には、その全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用することになる。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用することとなり、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。そして、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位が妨げられ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)に接触することがないため、圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動が確実に遮断される。
さらに、圧縮機構(20)の外周面に、その全周に亘って凹溝(23c)が形成される。この凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部の両側に少なくとも1つずつ設けられている。各凹溝(23c)には、リング部材(80)が嵌め込まれている。凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)は、周囲を密閉容器(10)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(80)の外周面は、リング部材(80)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、密閉容器(10)の内周面に押し付けられる。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間がシールされ、吸入ポート(40)に連通する低圧空間(81)が形成される。
上記第4の発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成される。ここで、圧縮機構(20)から吐出されたガスには、該圧縮機構(20)を潤滑するための冷凍機油が混在している。この冷凍機油は、吐出管(14)へ至るまでの間の密閉容器(10)内でガスと分離する。一方、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間は、シール機構(S)によってシールされている。つまり、密閉容器(10)内は、シール機構(S)によって2つの空間に仕切られた状態となっている。この発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられており、ガスと分離した冷凍機油は、密閉容器(10)内の吐出ガスで満たされた空間から油戻し通路(29)を通ってもう一方の空間へと移動する。
上記第5の発明では、密閉容器(10)に変位抑制機構(D)が設けられる。上述のように、圧縮機の運転中には、本体部(70)が振動してその半径方向、周方向、及び軸方向へ変位しようする。一方、変位抑制機構(D)を設けて本体部(70)の半径方向への変位を抑制することにより、該本体部(70)の半径方向への変位量が少なく抑えられる。
上記第6の発明では、変位抑制機構(D)の弾性部材(96)が、圧縮機構(20)の周方向の異なる位置に3つ以上設けられる。このため、少なくとも弾性部材(96)が設けられている3方向への本体部(70)の変位は、確実に抑制される。また、3つ以上の弾性部材(96)を圧縮機構(20)の周方向に等角度間隔に配置した場合には、本体部(70)の全ての半径方向の変位が抑制される。
上記第7の発明では、変位抑制機構(D)の弾性部材(96)が、圧縮機構(20)の周方向の異なる位置に3つ以上設けられる。このため、少なくとも弾性部材(96)が設けられている3方向への本体部(70)の変位は、確実に抑制される。また、3つ以上の弾性部材(96)を圧縮機構(20)の周方向に等角度間隔に配置した場合には、本体部(70)の全ての半径方向の変位が抑制される。
この発明では、弾性部材(96)の1つがシール機構(S)の押圧部材(75)によって構成されている。密閉容器(10)と圧縮機構(20)の隙間がシール機構(S)によってシールされる一方、シール機構(S)の押圧部材(75)によって圧縮機構(20)の外側面に押圧力を作用させることで、本体部(70)が弾性支持される。つまり、シール機構(S)の押圧部材(75)は変位抑制機構(D)の一部を構成しており、この押圧部材(75)によっても本体部(70)の半径方向への変位が抑制される。
上記第8の発明では、弾性支持機構(E)が複数のバネ(65,65,…)により構成される。つまり、本体部(70)の端部と密閉容器(10)の端部との間には、弾性支持機構(E)を構成する複数のバネ(65,65,…)が設けられる。
上記第1の発明では、弾性支持機構(E)が本体部(70)の端部と密閉容器(10)の端部との間に設けられる。このため、本体部(70)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間が小さくて済み、密閉容器(10)を大型化させることなく弾性支持機構(E)によって本体部(70)を弾性支持することができる。また、本体部(70)を弾性支持機構(E)で弾性支持することにより、本体部(70)の半径方向、周方向、及び軸方向への変位が可能となる。このように、本体部(70)の変位自由度を確保することで、その振動が弾性支持機構(E)に吸収され、本体部(70)から密閉容器(10)へ伝わる振動が遮断される。従って、この発明によれば、密閉容器(10)内で圧縮機構(20)及び電動機(30)を弾性支持する場合に、密閉容器(10)を大型化させることなく圧縮機構(20)や電動機(30)から密閉容器(10)に伝わる振動を確実に遮断することができる。
また、圧縮機構(20)の外側面にシール部材(72)を押し付けて圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールしている。このため、圧縮機の運転中に圧縮機構(20)が駆動軸(31)の軸方向や周方向へ変位した場合であっても、シール部材(72)が圧縮機構(20)の外側面と摺動することで、圧縮機構(20)の変位を妨げずに圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールすることができる。
また、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外周面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置している。このため、吸入ポート(40)を圧縮機構(20)の半径方向に貫通するように形成した場合に、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することができ、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
このように、第1の発明によれば、圧縮機の運転中における圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシール機構(S)によって確実にシールすることができる。また、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することで、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
また、シール部材(72)が円柱部(71)に遊嵌され、このシール部材(72)が圧縮機構(20)の外側面に押圧部材(75)により押し付けられる。このため、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、シール部材(72)の先端面を圧縮機構(20)の外側面と密着した状態に保持することができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間のシールを一層確実にできる。
上記第2の発明では、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をその径方向へ広がろうとする復元力によってシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間をシールしている。従って、この発明によれば、シール機構(S)を外周溝(71a)とリング部材(78)とで構成することにより、円柱部(71)とシール部材(72)の間のシールを確実にできる。
上記第3の発明では、シール機構(S)によって圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間に低圧空間(81)を形成している。ここで、密閉容器(10)は円筒状に形成されており、圧縮機構(20)はその外形が円柱形状に形成されている。つまり、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との間には、環状の隙間が形成されている。このため、圧縮機の複雑化を抑制しつつ、簡単な構造のシール機構(S)によって圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間に低圧空間(81)を形成することができる。
また、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外周面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置している。このため、吸入ポート(40)を圧縮機構(20)の半径方向に貫通するように形成した場合に、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することができ、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
上述のように、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間には、全周に亘って低圧空間(81)が形成されており、圧縮機構(20)の外周面にはその全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用する。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用し、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。従って、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位を妨げることができ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)へ接触するのを防いで圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を一層確実に遮断することができる。
また、圧縮機構(20)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるリング部材(80)とによってシール機構(S)を構成している。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)をその径方向へ広がろうとする復元力によって密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間をシールしている。従って、この発明によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、リング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。また、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機のコスト増加を抑制できる。
上記第4の発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成される。ここで、密閉容器(10)内では、吐出ガスで満たされた空間と冷凍機油が貯留される空間とが圧縮機構(20)を介して反対側に設けられる場合が多い。そして、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられていない場合には、ガスと分離した冷凍機油が吐出ガスで満たされた空間に貯留されることとなり、冷凍機油が不足して圧縮機構(20)が潤滑不良を起こすおそれがある。
一方、この発明では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成されているため、ガスと分離した冷凍機油を油戻し通路(29)を通じて冷凍機油が貯留される空間へ導くことができる。従って、この発明によれば、密閉容器(10)内が仕切られて一方の空間に貯留される冷凍機油が他方の空間へ吐出される構成であっても、冷凍機油の不足を防ぐことができ、圧縮機構(20)の潤滑不良を回避することができる。また、油戻し通路(29)を設けることにより、密閉容器(10)内の圧力を均一に保つことができる。
上記第5の発明によれば、密閉容器(10)に変位抑制機構(D)を設けて本体部(70)の半径方向への変位を抑制することにより、該本体部(70)の半径方向への変位量を少なく抑えることができる。従って、この発明によれば、本体部(70)と密閉容器(10)の隙間を小さくすることができ、密閉容器(10)を小さくすることができる。
上記第6の発明では、変位抑制機構(D)の弾性部材(96)が、圧縮機構(20)の周方向の異なる位置に3つ以上設けられる。弾性部材(96)を3つ以上設けて圧縮機構(20)の外側面の3点以上に押圧力を作用させることで、圧縮機構(20)をその半径方向に弾性支持することができ、該本体部(70)の半径方向への変位を確実に抑制することができる。従って、この発明によれば、本体部(70)と密閉容器(10)の隙間を一層小さくすることができ、密閉容器(10)を一層小さくすることができる。
上記第7の発明では、変位抑制機構(D)の弾性部材(96)が、圧縮機構(20)の周方向の異なる位置に3つ以上設けられる。弾性部材(96)を3つ以上設けて圧縮機構(20)の外側面の3点以上に押圧力を作用させることで、圧縮機構(20)をその半径方向に弾性支持することができ、該本体部(70)の半径方向への変位を確実に抑制することができる。また、この発明では、弾性部材(96)の1つがシール機構(S)の押圧部材(75)によって構成されている。このため、シール機構(S)によって密閉容器(10)と圧縮機構(20)の隙間をシールしつつ、この押圧部材(75)によって本体部(70)を弾性支持することができる。従って、この発明によれば、変位抑制機構(D)の構造を簡素化できる。また、本体部(70)と密閉容器(10)の隙間を一層小さくすることができ、密閉容器(10)を一層小さくすることができる。
上記第8の発明では、本体部(70)が弾性支持機構(E)を構成する複数のバネ(65,65,…)によって弾性支持される。従って、本体部(70)が半径方向、周方向、及び軸方向へ変位するのを許容しつつ、本体部(70)を複数のバネ(65,65,…)により弾性支持して該本体部(70)から密閉容器(10)へ伝わる振動を確実に低減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るものであり、この実施形態1では本発明をいわゆる揺動ピストン型のロータリ圧縮機(1)に適用した場合を示す。この圧縮機(1)は、空気調和装置の冷凍サイクルにおいて冷媒圧縮行程を行うものである。
上記圧縮機(1)では、圧縮機構(20)及び電動機(30)が密閉容器(10)に収容されている。圧縮機構(20)の駆動軸(31)は、その軸方向が上下方向となっている。電動機(30)は、圧縮機構(20)の上側に配置されており、圧縮機構(20)の駆動軸(31)に連結されている。圧縮機構(20)は電動機(30)と連結されており、該圧縮機構(20)と電動機(30)とによって本体部(70)が構成されている。本体部(70)は、弾性支持機構(E)によって弾性支持されている。
上記密閉容器(10)は、上下方向に長い円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端内側に嵌め込まれる碗状の上部鏡板(12)と、上記胴部(11)の下端に配設されて該胴部(11)の外径よりも大きい板状の下部鏡板(13)とを備えている。上記胴部(11)の上端及び下端の全周は、上記上部鏡板(12)及び下部鏡板(13)にそれぞれ溶接されていて、これら胴部(11)、上部鏡板(12)、及び下部鏡板(13)が一体化されている。また、密閉容器(10)の胴部(11)は、運転中に圧縮機構(20)及び電動機(30)とぶつからないように、その内径が圧縮機構(20)等の外径よりも大きくなっている。
上記上部鏡板(12)の略中央部には、該上部鏡板(12)を上下方向に貫通する吐出管(14)が配設されている。また、上部鏡板(12)の吐出管(14)から径方向に離れた箇所には、上記電動機(30)に給電するためのターミナル(15)が配設されている。
上記密閉容器(10)は、吸入管(42)を圧縮機構(20)の吸入ポート(40)に接続するための継手部材(43)と、ブロック部材(46)とを備えている。継手部材(43)及びブロック部材(46)は、比較的短い円柱状に形成されており、その先端側部分が円柱部(71)を構成している。尚、吸入ポート(40)については後述する。また、継手部材(43)は継手側円筒部材(73)に、ブロック部材(46)はブロック側円筒部材(83)にそれぞれ挿入されている。継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)は、比較的短い管状に形成されている。
継手部材(43)の円柱部(71)は、その中心線が継手部材(43)の中心線と一致するように形成されている。この円柱部(71)の外径は、継手部材(43)の基端側の外径よりも小さくなっている。継手部材(43)の基端側は、継手側円筒部材(73)の内周面の全体に密着するように形成され、この継手部材(43)の軸方向の長さは、継手側円筒部材(73)の軸方向の長さと概ね同じとされている。
上記継手部材(43)には、貫通孔(43a)が形成されている。貫通孔(43a)は、その中心線が継手部材(43)の中心線と一致するように形成され、該継手部材(43)の先端面と基端面とに開口している。貫通孔(43a)は、その基端側が先端側よりも大径に形成され、この基端側の部分に吸入管(42)の一端が挿入されて固定されている。
一方、ブロック部材(46)は、中実となっている。ブロック部材(46)の円柱部(81)は、その中心線がブロック部材(46)の中心線と一致するように形成されている。この円柱部(81)の外径は、ブロック部材(46)の基端側の外径よりも小さくなっている。ブロック部材(46)の基端側は、ブロック側円筒部材(83)の内周面の全体に密着するように形成され、このブロック部材(46)の軸方向の長さはブロック側円筒部材(83)の軸方向の長さと概ね同じとされている。
また、継手部材(43)及びブロック部材(46)は、その密閉容器(10)の内側に位置するそれぞれの先端面が、継手部材(43)及びブロック部材(46)の中心線と略直交する平坦面となっている。上記密閉容器(10)において、その内面の一部分は、継手部材(43)及びブロック部材(46)の先端面によって構成されている。そして、継手部材(43)の先端面は、密閉容器(10)の内面のうちで圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分と対向する一部分となっている。
上記継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)は、胴部(11)に取り付けられている。具体的に、胴部(11)における上下方向の中央部よりやや下であって圧縮機構(20)の高さと概ね等しい位置には、継手側円筒部材(73)を挿入するための継手側挿入孔(11a)と、ブロック側円筒部材(83)を挿入するためのブロック側挿入孔(11b)とが、互いに対向する位置に1つずつ形成されている。
継手側挿入孔(11a)には継手側円筒部材(73)の先端部が、ブロック側挿入孔(11b)にはブロック側円筒部材(83)の先端部がそれぞれ挿入されている。これら継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)は、それぞれの中心線が略水平に延びる同一直線上に位置している。この状態で、継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)は、それぞれの外周面が全周に亘って胴部(11)の挿入孔(11a,11b)の周縁に溶接されている。つまり、継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)は、胴部(10)における同じ高さで周方向に180゜離れた位置に配置されいる。また、継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)の先端面は、互いに対向している。
上記圧縮機構(20)は、概ね円筒状に形成されたシリンダ(23)を備えている。このシリンダ(23)の上部には、該シリンダ(23)の上端面の開口を閉塞するフロントヘッド(54)が配置されている。また、シリンダ(23)の下部には、該シリンダ(23)の下端面の開口を閉塞するリヤヘッド(55)が配置されている。これらフロントヘッド(54)及びリヤヘッド(55)は、シリンダ(23)に図示しないボルト等を用いて締結されて一体化されている。この圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の中心線が上記胴部(11)の中心線と略一致するように位置付けられている。
上記シリンダ(23)内には、駆動軸(31)の回転により揺動する揺動ピストン(25)が内挿されている。そして、上記シリンダ(23)内には、揺動ピストン(25)の外周面、シリンダ(23)の内周面、フロントヘッド(54)の下面、及びリヤヘッド(55)の上面に囲まれた圧縮室(22)が形成される。
上記揺動ピストン(25)は、図2に示すように、円環状の本体部(25a)と、該本体部(25a)の外周面の1箇所から径方向外方へ突出して延びる平板状のブレード(25b)とが一体的に形成されたものである。上記ブレード(25b)は、一対のブッシュ(27)により挟まれた状態でシリンダ(23)の圧縮室(22)外方に形成された挿入孔(28)に挿入支持されている。このブレード(25b)により、圧縮室(22)が低圧側と高圧側とに区画されている。
上記シリンダ(23)には、吸入ポート(40)が形成されている。この吸入ポート(40)は、圧縮室(22)の低圧側に臨むシリンダ(23)の内周面にその一端が開口しており、その一端からシリンダ(23)を半径方向外方へ真っ直ぐに貫通している。吸入ポート(40)の他端は、シリンダ(23)の外側面に開口している。また、シリンダ(23)には、上記ブッシュ(27)のすぐ横に吐出ポート(41)が形成されている。この吐出ポート(41)は、シリンダ(23)の上端面から掘り下げたものと、その下端面から掘り下げたものとが対になって形成されている。
また、上記シリンダ(23)には、連通路(51)が形成されている。この連通路(51)は、円弧状部分(51a)と直線状部分(51b)とによって構成されている。円弧状部分(51a)は、上記圧縮室(22)の低圧側に臨むシリンダ(23)の内周面に沿って概ね半円弧状に延びている。この円弧状部分(51a)は、その基端部が吸入ポート(40)に接続され、その先端部がシリンダ(23)における吸入ポート(40)とは反対側に位置している。一方、連通路(51)の直線状部分(51b)は、円弧状部分(51a)の先端部からシリンダ(23)の径方向外側へ向かって真っ直ぐに貫通して形成されている。この直線状部分(51b)は、その中心線が上記吸入ポート(40)の中心線と一致するように形成されている。また、連通路(51)の直線状部分(51b)は、その先端がシリンダ(23)の外側面に開口している。
上記フロントヘッド(54)及びリヤヘッド(55)には、図1に示すように、シリンダ(23)側の吐出ポート(41)と連通するヘッド側吐出ポート(56,57)がそれぞれ形成されている。また、フロントヘッド(54)の上端面及びリヤヘッド(55)の下端面には、上記ヘッド側吐出ポート(56,57)を開閉する吐出弁(48)がそれぞれ配設されている。この吐出弁(48)は、いわゆるリード弁により構成されている。この吐出弁(48)が開くと、ヘッド側吐出ポート(56,57)が密閉容器(10)の内部空間と連通する。つまり、この圧縮機(1)は、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)を吸入管(42)に接続する一方、ヘッド側吐出ポート(56,57)を密閉容器(10)の内部空間に連通させた、いわゆる高圧ドーム型に構成されている。
フロントヘッド(54)の中央部には、上方へ突出する筒状部(58)が形成されている。この筒状部(58)は、駆動軸(31)を支持するすべり軸受を構成している。フロントヘッド(54)には、上記ヘッド側吐出ポート(56)の上方を覆う大略円盤状の上側マフラ(59)が固定されている。一方、リヤヘッド(55)の中央部にも、下方へ突出する筒状部(60)が形成されている。この筒状部(60)は、駆動軸(31)を支持するすべり軸受を構成している。リヤヘッド(55)には、圧縮機構(20)を下部鏡板(13)に固定するためのステー部材(61)が取り付けられている。このステー部材(61)は、上側マフラ(59)よりも厚肉な板材により構成され、筒状部(60)から半径方向の外側へ延びている。このステー部材(61)は、上記ヘッド側吐出ポート(57)の下方を覆うように形成されている。
また、図示しないが、リヤヘッド(55)、シリンダ(23)、及びフロントヘッド(54)には、圧縮機構(20)とステー部材(61)の間の空間と上側マフラ(59)とを連通させる連通穴が設けられている。
上記ステー部材(61)下面の外周側には、弾性支持機構(E)が設けられている。この弾性支持機構(E)は、下部鏡板(13)に固定された4つの基台(64,64,…)と、各基台(64)の上面に固定されて上方へ延び上端がステー部材(61)下面に固定されたコイルバネ(65)と、該コイルバネ(65)の縮み量を制限するストッパ(66)とから構成されている。つまり、弾性支持機構(E)は、4つの基台(64,64,…)と、4つのコイルバネ(65,65,…)と、4つのストッパ(66,66,…)とから構成されている。
上記4つのコイルバネ(65,65,…)は、同一ピッチ円上に90°間隔で配置されている。また、各コイルバネ(65)は、圧縮機構(20)の外周面よりも内側、即ち圧縮機構(20)の中心軸寄りに配置されている。そして、これら4つのコイルバネ(65,65,…)は、圧縮機構(20)及び電動機(30)を半径方向、周方向、及び軸方向に変位可能に弾性支持している。
上記圧縮機構(20)は、胴部(11)に挿入された継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)と概ね同じ高さに配置されている。また、圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部が継手部材(43)の先端面における貫通孔(43a)の開口部に対面し、シリンダ(23)の外側面における連通路(51)の開口部がブロック部材(46)に対面する姿勢で設置されている。つまり、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部は、継手部材(43)に取り付けられた吸入管(42)の終端に対向している。
シリンダ(23)の外側面のうち吸入ポート(40)が開口する部分は、図2に示すように、シリンダ(23)の半径方向における外側へ僅かに突出している。この僅かに突出した部分の突端面は、図3に示すように、シリンダ(23)の半径方向と直交する平坦面であって、上下方向に延びており、この突端面に吸入ポート(40)が開口している。吸入ポート(40)の開口する突端面は、継手部材(43)の先端面に対面しており、これら両面の間には比較的狭い隙間が形成されている。
シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の周縁部分は、シリンダ(23)の半径方向と略直交する平坦面となっており、この平坦面がシール面を構成している。シール面には、シール部材(72)が押し付けられている。このシール部材(72)は、継手部材(43)の円柱部(71)に遊嵌されている。
上記シール部材(72)は、断面が四角形のリング状に形成されている。つまり、このシール部材(72)は、継手部材(43)の軸方向に延びる比較的短い円筒状に形成されている。シール部材(72)は、その内径が円柱部(71)の外径よりもやや大きくなっている。
また、円柱部(71)の外周面のうちシール部材(72)の内周面に対向する部分には、その全周に亘って外周溝(71a)が形成されている。この外周溝(71a)は、円柱部(71)の2ヶ所に形成されている。2つの外周溝(71a)のそれぞれには、リング部材(78)が嵌め込まれている。このリング部材(78)は、自動車等のエンジンに用いられるピストンリングと同様の形状をしている。つまり、リング部材(78)は、円環の一部を切除した形状に形成され、外力を加えることによってその径方向に弾性変形するように構成されている。
上記外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)は、周囲をシール部材(72)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(78)の外周面は、リング部材(78)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、シール部材(72)の内周面に押し付けられる。そして、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間がシールされる。
また、シール部材(72)の継手部材(43)側である基端面と、継手部材(43)との間には、押圧部材としてのバネ(75)が設けられている。このバネ(75)は、継手部材(43)の軸方向に伸縮するように形成されている。バネ(75)は、シリンダ(23)方向への力をシール部材(72)に作用させている。このバネ(75)からの力を受けて、シール部材(72)の先端面はシリンダ(23)の外側面におけるシール面に押し付けられている。
シリンダ(23)と継手部材(46)の隙間は、吸入ポート(40)と吸入管(42)とに接続している。この隙間は、吐出ガスで満たされた密閉容器(10)の内部空間から区画されている。また、吸入管(42)から吸入ポート(40)までの通路の気密は、シリンダ(23)に密着するシール部材(72)と該シール部材(72)に押し付けられるリング部材(78)とによって保持されている。
そして、上記シール面に押圧されるシール部材(72)と該シール面に押圧力を作用させるバネ(75)とによってシリンダ(23)と継手部材(43)の隙間をシールし、円柱部(71)の外周溝(71a)とそこに嵌め込まれるリング部材(78)とによって円柱部(71)とシール部材(72)の隙間をシールするシール機構(S)が構成されている。
一方、シリンダ(23)の外側面のうち連通路(51)の直線状部分(51b)が開口する部分は、図2に示すように、シリンダ(23)の径方向における外側へ僅かに突出している。この僅かに突出した部分の突端面は、図3に示すように、シリンダ(23)の半径方向と直交する平坦面であって、上下方向に延びており、この突端面に連通路(51)が開口している。連通路(51)の開口する突端面は、ブロック部材(46)の先端面に対面しており、これら両面の間には比較的狭い隙間が形成されている。
シリンダ(23)の外側面における連通路(51)の直線状部分(51b)の周縁部分は、シリンダ(23)の径方向と略直交する平坦面となっており、この平坦面がシール面を構成している。シール面には、シール部材(82)が押し付けられている。このシール部材(82)は、ブロック部材(46)の円柱部(81)に遊嵌されている。
上記シール部材(82)は、断面が四角形のリング状に形成されている。つまり、このシール部材(82)は、ブロック部材(46)の軸方向に延びる比較的短い円筒状に形成されている。シール部材(82)は、その内径が円柱部(81)の外径よりもやや大きくなっている。
また、円柱部(81)の外周面のうちシール部材(82)の内周面に対向する部分には、その全周に亘って外周溝(81a)が形成されている。この外周溝(81a)は、円柱部(81)の2ヶ所に形成されている。2つの外周溝(81a)のそれぞれには、リング部材(88)が嵌め込まれている。このリング部材(88)は、自動車等のエンジンに用いられるピストンリングと同様の形状をしている。つまり、リング部材(88)は、円環の一部を切除した形状に形成され、外力を加えることによってその径方向に弾性変形するように構成されている。
上記外周溝(81a)に嵌め込まれたリング部材(88)は、周囲をシール部材(82)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(88)の外周面は、リング部材(88)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、シール部材(82)の内周面に押し付けられる。そして、外周溝(81a)に嵌め込まれたリング部材(88)をシール部材(82)の内周面に押し付けることで、円柱部(81)とシール部材(82)の隙間がシールされる。
また、シール部材(82)のブロック部材(46)側である基端面と、ブロック部材(46)との間には、バネ(85)が設けられている。このバネ(85)は、ブロック部材(46)の軸方向に伸縮するように形成されている。バネ(85)は、シリンダ(23)方向への力をシール部材(82)に作用させている。このバネ(85)からの力を受けて、シール部材(82)の先端面はシリンダ(23)の外側面におけるシール面に押し付けられている。
シリンダ(23)とブロック部材(46)の隙間よりも内側のシリンダ(23)の部分は、周囲から仕切られた吸入圧室(50)となっている。この吸入圧室(50)は、吐出ガスで満たされた密閉容器(10)の内部空間から区画されると共に、連通路(51)を介して吸入ポート(40)に連通している。また、吸入圧室(50)の気密は、シリンダ(23)に密着するシール部材(82)と該シール部材(82)に押し付けられるリング部材(88)とによって保持されている。
上記電動機(30)には、ブラシレスDCモータが用いられている。このDCモータには、モータ効率を向上させるため、厚さが0.2mmと薄い電磁鋼板が採用されている。図1に示すように、電動機(30)は、圧縮機構(20)のフロントヘッド(54)に固定された円筒状のステータ(32)と、このステータ(32)内に回転可能に配置されたロータ(33)とからなる。このロータ(33)の中心孔(33a)には、駆動軸(31)が挿入されて固定されている。
上記駆動軸(31)は、その中心線が上記シリンダ(23)の中心線と略一致するように位置付けられている。この駆動軸(31)の下端側には、偏心部(31a)が形成されている。偏心部(31a)は、駆動軸(31)の他の部分よりも大径に形成されており、その中心線が駆動軸(31)の軸心に対して偏心している。そして、上記駆動軸(31)は、シリンダ(23)内に設けられた揺動ピストン(25)の本体部(25a)を貫通しており、その偏心部(31a)の外周面が本体部(25a)の内周面と揺動する。
上記ステータ(32)の外周部には、上記上部鏡板(12)の下端へ接近する突出部(32a)が周方向に間隔をあけて複数突設されている。ステータ(32)の突出部(32a)対応箇所には、上下方向に貫通する貫通孔(32b)がそれぞれ形成されている。一方、上記圧縮機構(20)のフロントヘッド(54)上部には、上記ステータ(32)の貫通孔(32b)に対応するボス(54a)が形成されている。そして、上記貫通孔(32b)にボルト(67)を挿通してフロントヘッド(54)のボス(54a)に締結することにより、ステータ(32)がフロントヘッド(54)に固定されて両者が一体化する。
上記ステータ(32)の突出部(32a)は、圧縮機構(20)及び電動機(30)の上方への変位量を制限するストッパとしての役割を果たしている。例えば、圧縮機(1)を輸送する際に、圧縮機構(20)及び電動機(30)に大きな加振力が加わったときには、突出部(32a)が上記上部鏡板(12)の下端に当接することにより、圧縮機構(20)及び電動機(30)の過度な変位が防止される。
−運転動作−
上記のように構成された圧縮機(1)では、電動機(30)が起動して揺動ピストン(25)が揺動すると、吸入管(42)の吸入ガスが吸入ポート(40)へ導入される。この吸入ポート(40)へ流入した吸入ガスは、圧縮室(22)へ吸入される。
上記圧縮機(1)において、吸入ポート(40)は、シリンダ(23)の半径方向に真っ直ぐ延びており、その長さが比較的短くなっている。このため、吸入管(42)からの吸入ガスは、直線状で短い吸入ポート(40)を通って該圧縮室(22)に吸入される。従って、吸入ガスが屈曲した吸入ポートを流れる場合に比べて、吸入ポート(40)から圧縮室(22)へ吸入されるまでのガスの圧力損失が小さくなる。そして、圧縮室(22)へ流入する時点におけるガス密度の低下が抑制され、圧縮機(1)の効率が向上する。
圧縮室(22)に吸入された吸入ガスは、揺動ピストン(25)により圧縮されてシリンダ(23)側の吐出ポート(41)及びヘッド側吐出ポート(56,57)を順に通る。このときの吐出ガス圧により吐出弁(48)が開き、圧縮された圧縮室(22)内のガスが吐出ガスとして密閉容器(10)内に吐出される。
上記密閉容器(10)内は、圧縮機構(20)からの吐出ガスで満たされて高圧状態となる。その際、ヘッド側吐出ポート(56)からの吐出ガスは、まず上側マフラ(59)へ吐出され、その後に上側マフラ(59)の外側へ流出する。一方、下側のヘッド側吐出ポート(57)からの吐出ガスは、ステー部材(61)の内側へ吐出され、その後にリヤヘッド(55)、シリンダ(23)、及びフロントヘッド(54)に設けられた連通穴を通って上側マフラ(59)へ導かれ、その後に上側マフラ(59)の外側へ流出する。これによって、吐出ガスの脈動が緩和され、吐出音が低減される。そして、上記吐出ガスは、密閉容器(10)内における電動機(30)の上方の空間へ流れ込み、吐出管(14)を通って密閉容器(10)の外部へと導出される。
上記圧縮機(1)の運転中には、圧縮機構(20)の圧縮仕事に伴うトルク変動に起因する振動や、電動機(30)の振動が発生し、本体部(70)がその半径方向、周方向、及び軸方向に変位しようとする。この圧縮機(1)では、本体部(70)が弾性支持機構(E)としてのコイルバネ(65)により弾性支持されており、本体部(70)の半径方向、周方向、及び軸方向への変位が可能となっている。
具体的に、本体部(70)が半径方向へ変位すると、該本体部(70)の変位方向のコイルバネ(65)が短縮する一方、該本体部(70)の変位方向と反対側のコイルバネ(65)が伸長する。本体部(70)が周方向へ変位すると、各コイルバネ(65)がこれに追従して捻れるように変形する。また、本体部(70)が軸方向へ変位すると、各コイルバネ(65)が軸方向に伸縮する。そして、本体部(70)が半径方向、周方向、及び軸方向へ変位すると、コイルバネ(65)は、上記の変形パターンを組み合わせて変形する。このように、本体部(70)の変位自由度を確保することにより、本体部(70)の振動がコイルバネ(65)に吸収され、本体部(70)から密閉容器(10)に伝わる振動が確実に遮断される。
また、コイルバネ(65)は4つ設けられているため、本体部(70)が半径方向、周方向、及び軸方向へ変位すると、各コイルバネ(65)がそれに追従して変形する。そして、複数のコイルバネ(65)で本体部(70)を弾性支持することにより、該本体部(70)の半径方向、周方向、及び軸方向へ変位量が過大となるのを抑制できる。
また、本体部(70)が弾性支持機構(E)によって弾性支持されているため、圧縮機(1)の運転中に本体部(70)で振動が発生すると、圧縮機構(20)のシリンダ(23)も継手部材(43)やブロック部材(46)に対して変位する。圧縮機構(20)のシリンダ(23)が変位すると、シリンダ(23)のシール面に押圧されたシール部材(72,78)は、変位するシリンダ(23)のシール面に追従して移動する。そして、継手部材(43)側のシール部材(72)は、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、シリンダ(23)と継手部材(43)の間をシールする。また、ブロック部材(46)側のシール部材(78)は、圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、シリンダ(23)とブロック部材(46)の間をシールする。
このように、本実施形態では、継手部材(43)側でシール部材(72)をシリンダ(23)のシール面に押圧させ、これに対向するブロック部材(46)側でシール部材(82)をシリンダ(23)のシール面に押圧させてシリンダ(23)を弾性支持している。つまり、シリンダ(23)は、その半径方向において継手部材(43)側とこれに対向するブロック部材(46)側の両方で弾性支持されている。これにより、圧縮機構(20)の半径方向における継手部材(43)側とブロック部材(46)側への変位が抑制される。また、圧縮機構(20)と電動機(30)とが連結されて本体部(70)が構成されており、該本体部(70)の半径方向における継手部材(43)側とブロック部材(46)側への変位も抑制される。
また、本実施形態では、シール部材(72,82)の内周面と円柱部(71,81)の外周面との間に隙間が設けられ、円柱部(71,81)の外周溝(71a,81a)に嵌め込まれたリング部材(78,88)によってこの隙間がシールされる。そして、この隙間をリング部材(78,88)のその半径方向へ広がろうとする復元力によってシールすることで、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72,82)が確実に追従し、シール部材(72,82)の先端面がシリンダ(23)の外側面に密着した状態に保たれて圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間が確実にシールされる。また、圧縮機構(20)の変位に対してシール部材(72,82)が確実に追従するため、このシール部材(72,82)を介して圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動が確実に遮断される。
また、本実施形態の圧縮機(1)は、高圧ドーム型に構成されている。このため、密閉容器(10)内の高圧の吐出ガス圧が本体部(70)全体に同様に作用する。一方、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には、吸入管(42)を通じて低圧の吸入ガスが導入される。ここで、仮に圧縮機構(20)の外周面のうち吸入ポート(40)以外の部分全てに吐出ガス圧が作用する状態を考えると、この状態では、圧縮機構(20)の半径方向に作用するガス圧が不均一となる。そして、ガス圧によって圧縮機構(20)が吸入ポート(40)側へ押さえ付けられて密閉容器(10)に接触すると、該圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を充分に遮断できなくなる。
上述のように、本実施形態では、シリンダ(23)の連通路(51)を通じて吸入ポート(40)の吸入ガスが吸入圧室(50)に導入される。このため、圧縮機構(23)の半径方向における吸入ポート(40)とは反対側にも、吸入ガス圧が作用する。つまり、密閉容器(10)内の吐出ガス圧が圧縮機構(20)の全体に作用する一方、圧縮機構(20)の半径方向では吸入ポート(40)側と該吸入ポート(40)の反対側とで吸入ガス圧が逆向きに作用する。これにより、吐出ガス圧及び吸入ガス圧に起因して圧縮機構(20)に作用する力は、それら全てが互いに打ち消し合うこととなり、圧縮機構(20)に作用する吸入ポート(40)側への押圧力がほぼゼロになる。このため、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位が妨げられ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)に接触することがないため、圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動が確実に遮断される。
−実施形態1の効果−
本実施形態では、弾性支持機構(E)が本体部(70)の端部と密閉容器(10)の端部との間に設けられる。このため、本体部(70)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間が小さくて済み、密閉容器(10)を大型化させることなく弾性支持機構(E)によって本体部(70)を弾性支持することができる。また、本体部(70)を弾性支持機構(E)で弾性支持することにより、本体部(70)の半径方向、周方向、及び軸方向への変位が可能となる。このように、本体部(70)の変位自由度を確保することで、その振動が弾性支持機構(E)に吸収され、本体部(70)から密閉容器(10)へ伝わる振動が遮断される。従って、本実施形態によれば、密閉容器(10)内で圧縮機構(20)及び電動機(30)を弾性支持する場合に、密閉容器(10)を大型化させることなく圧縮機構(20)や電動機(30)から密閉容器(10)に伝わる振動を確実に遮断することができる。
また、本実施形態では、本体部(70)が弾性支持機構(E)を構成する複数のバネ(65,65,…)によって弾性支持される。従って、本体部(70)が半径方向、周方向、及び軸方向へ変位するのを許容しつつ、本体部(70)を複数のコイルバネ(65,65,…)により弾性支持して該本体部(70)から密閉容器(10)へ伝わる振動を確実に低減することができる。
本実施形態では、圧縮機構(20)の外側面にシール部材(72)を押し付けて圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールしている。このため、圧縮機(1)の運転中に圧縮機構(20)が駆動軸(31)の軸方向や周方向へ変位した場合であっても、シール部材(72)が圧縮機構(20)の外側面と摺動することで、圧縮機構(20)の変位を妨げずに圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシールすることができる。
また、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外周面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置している。このため、吸入ポート(40)を圧縮機構(20)の半径方向に貫通するように形成した場合であっても、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することができ、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
このように、本実施形態によれば、圧縮機(1)の運転中における圧縮機構(20)の変位を妨げることなく、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間をシール機構(S)によって確実にシールすることができる。また、吸入管(42)から吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することで、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
また、本実施形態では、シール部材(72)が円柱部(71)に遊嵌され、このシール部材(72)が圧縮機構(20)の外側面にバネ(75)により押し付けられる。このため、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、シール部材(72)の先端面を圧縮機構(20)の外側面と密着した状態に保持することができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の間のシールを一層確実にできる。
また、本実施形態では、外周溝(71a)に嵌め込まれたリング部材(78)をその径方向へ広がろうとする復元力によってシール部材(72)の内周面に押し付けることで、円柱部(71)とシール部材(72)の隙間をシールしている。従って、本実施形態によれば、シール機構(S)を外周溝(71a)とリング部材(78)とで構成することにより、円柱部(71)とシール部材(72)の間のシールを確実にできる。
−実施形態1の変形例−
上記実施形態1の圧縮機(1)において、弾性支持機構(E)の構成を変更してもよい。上記実施形態1では、コイルバネ(95)を4つ設け、各コイルバネ(95)を圧縮機構(20)の周方向に90°間隔に配置している。これに限らず、コイルバネ(95)を3つ設け、各コイルバネ(95)を圧縮機構(20)の周方向に120°間隔に配置してもよい。また、コイルバネ(95)を5つ以上設け、これらのコイルバネ(95)を圧縮機構(20)の周方向に等角度間隔に配置してもよい。
また、上記実施形態1の圧縮機(1)において、円柱部(71,81)の構成を変更してもよい。図1では、円柱部(71,81)に外周溝(71a,81a)を2つ形成してそれぞれの外周溝(71a,81a)にリング部材(78,88)を嵌め込んだものを示している。これに限らず、外周溝を1つだけ形成してこの外周溝にリング部材を嵌め込んでもよい。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2は、上記実施形態1の圧縮機(1)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図4に示すように、本実施形態の圧縮機(1)では、密閉容器(10)に変位抑制機構(D)が設けられている。この変位抑制機構(D)は、本体部(70)である圧縮機構(20)及び電動機(30)の半径方向への変位を抑制するためのものである。
上記変位抑制機構(D)は、圧縮機構(20)の外周面を90°間隔に4ヶ所で弾性支持している。この変位抑制機構(D)は、継手側円筒部材(73)、継手部材(43)、シール部材(72)、バネ(75)、及びリング部材(78)と、ブロック側円筒部材(83)、ブロック部材(46)、シール部材(82)、バネ(85)、及びリング部材(88)とを備え、圧縮機構(20)の外周面を継手部材(43)側とブロック部材(46)側との2ヶ所で弾性支持している。
具体的に、変位抑制機構(D)は、継手部材(43)側で弾性部材(96)としてのバネ(75)によりシール部材(72)を押圧してシリンダ(23)の外周面にシリンダ(23)の内側へ向かう力を作用させる一方、ブロック部材(44)側でシール機構(S)を構成する弾性部材(96)としてのバネ(85)によりシール部材(82)を押圧してシリンダ(23)の外周面にシリンダ(23)の内側へ向かう力を作用させている。つまり、変位抑制機構(D)は、継手部材(43)側とブロック部材(46)側とで互いに逆向きの力をシリンダ(23)の外周面に作用させ、圧縮機構(20)を半径方向に弾性支持している。
また、変位抑制機構(D)は、支持用円筒部材(93)、円柱部材(47)、支持部材(92)、弾性部材(96)としてのバネ(95)、及びリング部材(98)を備え、シリンダ(23)の外周面を更に2ヶ所で弾性支持している。
具体的に、支持用円筒部材(93)は、胴部(10)の2ヶ所に挿入されている。これら支持用円筒部材(93)は、比較的短い管状に形成されており、図1における圧縮機(1)の手前側と奥側とに1つずつ設けられている。支持用円筒部材(93)は、継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)と同じ高さであって、密閉容器(10)の周方向に該継手側円筒部材(73)及びブロック側円筒部材(83)と90°離れた位置に対向して設けられている。支持用円筒部材(93)は、その先端部が支持用挿入孔(11c)に挿入されており、その外周面が全周に亘って支持用挿入孔(11c)の周縁に溶接されている。
上記支持用円筒部材(93)には、円柱部材(47)が挿入されている。この円柱部材(47)は、比較的短い円柱状に形成されており、その先端側部分が円柱部(91)を構成している。上記密閉容器(10)において、その内面の一部分は、円柱部材(47)によって構成されている。また、円柱部材(47)の先端面に対向するシリンダ(23)の外側面は平坦面となっており、この面に支持部材(92)が押圧される。支持部材(47)が押圧されるシリンダ(23)の外側面は、シール部材(72,82)が押圧されるシリンダ(23)の外側面と直交している。尚、支持部材(92)の形状は、シール部材(72,82)の形状と同じである。
上記支持部材(92)は、円柱部材(47)の円柱部(91)に遊嵌されている。また、円柱部(91)の外周面に形成される2つの外周溝(91a)のそれぞれには、リング部材(98)が嵌め込まれている。上記外周溝(91a)に嵌め込まれたリング部材(98)は、周囲を支持部材(92)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(98)の外周面は、リング部材(98)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、支持部材(92)の内周面に押し付けられる。
上記支持部材(92)の円柱部材(47)側である基端面と円柱部材(47)との間に設けられるバネ(96)は、該円柱部材(47)の軸方向に伸縮するように形成されている。バネ(96)は、シリンダ(23)方向への力を支持部材(92)に作用させている。このバネ(96)からの力を受けて、支持部材(92)の先端面はシリンダ(23)の外側面に押し付けられている。
そして、変位抑制機構(D)は、一方の円柱部材(47)側で弾性部材(96)としてのバネ(95)により支持部材(92)を押圧してシリンダ(23)の外周面にシリンダ(23)の内側へ向かう力を作用させる一方、他方の円柱部材(47)側で弾性部材(96)としてのバネ(95)により支持部材(92)を押圧してシリンダ(23)の外周面にシリンダ(23)の内側へ向かう力を作用させている。つまり、変位抑制機構(D)は、一方の円柱部材(47)側と他方の円柱部材(47)側とで互いに逆向きの力をシリンダ(23)の外周面に作用させ、圧縮機構(20)を半径方向に弾性支持している。
本実施形態では、圧縮機構(20)のシリンダ(23)の外側面を継手部材(43)側からとブロック部材(46)側からとでバネ(75,85)によって押圧し、該シリンダ(23)の外側面にシール部材(72,82)を介して押圧力を作用させている。また、圧縮機構(20)のシリンダ(23)の外側面を互いに対向する円柱部材(47,47)側からバネ(96,96)によって押圧し、該シリンダ(23)の外側面に支持部材(92,92)を介して押圧力を作用させている。このように、弾性部材としてのバネ(75,85,95,95)を圧縮機構(20)の周方向に90°間隔で配置して該圧縮機構(20)の外周面を4ヶ所で弾性支持することにより、本体部(70)の半径方向への変位量をその全周に亘って低減することができ、該本体部(70)の半径方向への変位を確実に抑制することができる。
本実施形態では、変位抑制機構(D)の弾性部材(96)が、圧縮機構(20)の周方向の異なる位置に3つ以上設けられる。弾性部材(96)を3つ以上設けて圧縮機構(20)の外側面の3点以上に押圧力を作用させることで、圧縮機構(20)をその半径方向に弾性支持することができ、該本体部(70)の半径方向への変位を確実に抑制することができる。また、この本実施形態では、弾性部材(96)の1つがシール機構(S)のバネ(75)によって構成されている。このため、シール機構(S)によって密閉容器(10)と圧縮機構(20)の隙間をシールしつつ、このバネ(75)によって本体部(70)を弾性支持することができる。従って、本実施形態によれば、変位抑制機構(D)の構造を簡素化できる。また、本体部(70)と密閉容器(10)の隙間を一層小さくすることができ、密閉容器(10)を一層小さくすることができる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3は、上記実施形態1の圧縮機(1)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態について、上記実施形態1と異なる点を説明する。なお、実施形態3は、実施形態3の前提技術を説明した後、本発明の実施形態3を説明する。
−実施形態3の前提技術−
図5及び図6に示すように、本前提技術の圧縮機(1)では、密閉容器(10)の胴部(11)に継手部材(43)のみが挿入され、継手側円筒部材(73)、ブロック側円筒部材(83)、ブロック部材(46)、吸入圧室(50)、及び連通路(51)が省略されている。また、本前提技術では、継手部材(43)の形状が上記実施形態1のものと異なっている。
本前提技術の継手部材(43)は、円管状に形成されている。この継手部材(43)には、貫通孔(43a)が形成されている。貫通孔(43a)は、その中心線が継手部材(43)の中心線と一致するように形成され、該継手部材(43)の先端面と基端面とに開口している。貫通孔(43a)は、その基端側が先端側よりも大径に形成され、この基端側の部分に吸入管(42)の一端が挿入されて固定されている。
上記継手部材(43)は、密閉容器(10)の胴部(11)に取り付けられている。具体的に、胴部(11)には、継手部材(43)を挿入するための継手側挿入孔(11a)が形成されている。この継手側挿入孔(11a)は、圧縮機構(20)よりもその下端が高くその上端が低くなっている。継手部材(43)は、その先端部が胴部(11)の厚みと同じ長さだけ継手側挿入孔(11a)に挿入され、この継手部材(43)の外周面が全周に亘って継手側挿入孔(11a)の周縁に溶接されている。また、継手部材(43)の先端面の形状は、密閉容器(10)の内周面の形状に合う曲面となっている。継手部材(43)の先端面は、密閉容器(10)の内周面の一部を構成している。
圧縮機構(20)のシリンダ(23)は、その外径が密閉容器(10)の内径よりもやや小さい円柱形状に形成されている。そして、圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の外周面が全面に亘って密閉容器(10)の内周面と向き合う姿勢となっている。つまり、シリンダ(23)の外周面と密閉容器(10)の内周面の間には、比較的狭い環状の隙間が形成されている。また、シリンダ(23)の外周面のうち吸入ポート(40)の開口部の形状は、シリンダ(23)の外周面の形状に合う曲面となっている。そして、吸入ポート(40)の開口部と密閉容器(10)の内周面との間には、比較的狭い隙間が形成されている。尚、シリンダ(23)には、吐出ガスから分離した冷凍機油を通過させるための油戻し通路(29)が複数設けられており、この油戻し通路(29)はシリンダ(23)を軸方向に貫通している。
また、圧縮機構(20)は、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部が継手部材(43)の先端面における貫通孔(43a)の開口部に対面する姿勢で設置されている。つまり、シリンダ(23)の外側面における吸入ポート(40)の開口部は、継手部材(43)に取り付けられた吸入管(42)の終端に対向している。
上記シリンダ(23)の外周面には、その全周に亘って凹溝(23c)が形成されている。この凹溝(23c)は、シリンダ(23)の上下に1つずつ形成されている。このうち上側の凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部よりも高い位置に形成され、その下端が継手側挿入孔(11a)の上端と概ね同じかやや上に位置している。下側の凹溝(23c)は、吸入ポート(40)の開口部よりも低い位置に形成され、その上端が継手側挿入孔(11a)の下端と概ね同じかやや下に位置している。
上記2つの凹溝(23c,23c)には、それぞれにOリング(79)が嵌め込まれている。Oリング(79)は、その太さが凹溝(23c)の深さよりも大きくなっている。そして、Oリング(79)は、シリンダ(23)における凹溝(23c)の底面と密閉容器(10)の内面との両方に密着し、且つシリンダ(23)と密閉容器(10)に挟まれて押し潰された状態となっている。そして、Oリング(79)がシリンダ(23)と密閉容器(10)の両方に密着することで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間がシールされる。また、このようにOリング(79)を予め押し潰しておくことにより、圧縮機(1)の運転中にシリンダ(23)が変位しても、Oリング(79)がシリンダ(23)と密閉容器(10)の両方に密着した状態に保持される。
本前提技術では、シリンダ(23)に形成される凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるOリング(79)とによってシール機構(S)が構成される。シリンダ(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面の隙間のうち、上下のOリング(79)によって仕切られた空間は、低圧空間(81)を形成している。この低圧空間(81)は、吐出ガスで満たされた密閉容器(10)の内部空間から区画されると共に、吸入ポート(40)と吸入管(42)とに連通している。また、低圧空間(81)の気密は、シリンダ(23)と密閉容器(10)とに密着するOリング(79)によって保持されている。
本前提技術において、圧縮機構(20)の吸入ポート(40)には、吸入管(42)を通じて低圧の吸入ガスが導入される。ここで、仮に圧縮機構(20)の外周面のうち吸入ポート(40)以外の部分全てに吐出ガス圧が作用する状態を考えると、この状態では、圧縮機構(20)の半径方向に作用するガス圧が不均一となる。そして、ガス圧によって圧縮機構(20)が吸入ポート(40)側へ押さえ付けられて密閉容器(10)に接触すると、該圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を充分に遮断できなくなる。
上述のように、本前提技術では、圧縮機構(20)の外周面と密閉容器(10)の内周面との隙間の全周に亘って低圧空間(81)が形成されている。つまり、圧縮機構(20)の外周面には、その全周に亘って低圧空間(81)の内圧、即ち吸入ガス圧が作用する。このため、圧縮機構(20)の半径方向に対しては均一なガス圧が作用し、圧縮機構(20)はガス圧の影響を受けずに済む。従って、ガス圧による圧縮機構(20)の吸入ポート(40)側への変位を妨げることができ、該圧縮機構(20)が密閉容器(10)へ接触するのを防いで圧縮機構(20)から密閉容器(10)へ伝わる振動を一層確実に遮断することができる。
本前提技術では、圧縮機構(20)のシリンダ(23)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるOリング(79)とによってシール機構(S)を構成している。従って、本前提技術によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、Oリング(79)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。また、シール機構(S)を簡素な構造で実現することができ、シール機構(S)の設置に伴う圧縮機(1)のコスト増加を抑制できる。
また、本前提技術では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成される。ここで、密閉容器(10)内では、吐出ガスで満たされた空間と冷凍機油が貯留される空間とが圧縮機構(20)を介して反対側に設けられる場合が多い。そして、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が設けられていない場合には、ガスと分離した冷凍機油が吐出ガスで満たされた空間に貯留されることとなり、冷凍機油が不足して圧縮機構(20)が潤滑不良を起こすおそれがある。
一方、本前提技術では、圧縮機構(20)に油戻し通路(29)が形成されているため、ガスと分離した冷凍機油を油戻し通路(29)を通じて冷凍機油が貯留される空間へ導くことができる。従って、本前提技術によれば、密閉容器(10)内が仕切られて一方の空間に貯留される冷凍機油が他方の空間へ吐出される構成であっても、冷凍機油の不足を防ぐことができ、圧縮機構(20)の潤滑不良を回避することができる。また、油戻し通路(29)を設けることにより、密閉容器(10)内の圧力を均一に保つことができる。
−実施形態3−
実施形態3について、上記実施形態3の前提技術と異なる点を説明する。
図7に示すように、本実施形態3では、凹溝(23c)がシリンダ(23)の上下に2つずつ形成されている。上側の2つの凹溝(23c,23c)のうち高さの低い方は、吸入ポート(40)の開口部よりも高い位置に形成され、その下端が継手側挿入孔(11a)の上端と概ね同じかやや上に位置している。下側の2つの凹溝(23c,23c)のうち高さの高い方は、吸入ポート(40)の開口部よりも低い位置に形成され、その上端が継手側挿入孔(11a)の下端と概ね同じかやや下に位置している。
上記複数の凹溝(23c23c,…)のそれぞれには、金属製のリング部材(80)が嵌め込まれている。このリング部材(80)は、自動車等のエンジンに用いられるピストンリングと同様の形状をしている。つまり、リング部材(80)は、円環の一部を切除した形状に形成され、外力を加えることによってその径方向に弾性変形するように構成されている。
上記凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)は、周囲を密閉容器(10)に囲まれており、径方向へ押し縮められて弾性変形した状態となっている。この弾性変形したリング部材(80)の外周面は、リング部材(80)自身の径方向へ広がろうとする復元力により、密閉容器(10)の内周面に押し付けられる。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間がシールされる。
尚、図7では、シリンダ(23)の上下に凹溝(23c)を2つずつ形成してそれぞれの凹溝(23c)にリング部材(80)を嵌め込んだものを示しているが、これに限らず、シリンダ(20)の上下に凹溝(23c)を1つずつ形成してそれぞれの凹溝(23c)にリング部材(80)を嵌め込んでもよい。
本実施形態3では、圧縮機構(20)のシリンダ(23)に形成された凹溝(23c)と、そこに嵌め込まれるリング部材(80)とによってシール機構(S)を構成している。そして、凹溝(23c)に嵌め込まれたリング部材(80)をその径方向へ広がろうとする復元力によって密閉容器(10)の内周面に押し付けることで、シリンダ(23)と密閉容器(10)の隙間をシールしている。従って、本変形例によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位しても、リング部材(80)を密閉容器(10)の内周面に対して摺動させることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を確実にシールすることができる。
また、本実施形態3では、金属製のリング部材(80)と金属製の密閉容器(10)の間で摩擦抵抗が発生する。一方、例えばOリングを凹溝(23c)に嵌め込む場合において、摩擦抵抗は、ゴム製のOリングと金属製の密閉容器(10)の間で発生する。また、金属と金属の摩擦抵抗の方が、金属とゴムの摩擦抵抗よりも小さい。このため、金属製の密閉容器(10)との摩擦抵抗は、金属製のリング部材(80)の方がゴム製のOリングよりも小さくなる。従って、本実施形態3によれば、圧縮機構(20)の振動に伴って圧縮機構(20)が変位する際のリング部材(80)と密閉容器(10)の摺動抵抗を小さくすることができ、圧縮機構(20)と密閉容器(10)の隙間を一層確実にシールすることができる。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4は、上記実施形態1の圧縮機(1)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図8に示すように、本実施形態の圧縮機(1)では、継手部材(43)が省略されている。また、本実施形態では、継手側円筒部材(73)及び圧縮機構(20)の形状が上記実施形態1のものと異なっている。
本実施形態の継手側円筒部材(73)は、円筒状に形成されている。継手側円筒部材(73)の端面は塞がっており、この端面に配管部材(90)が挿入されている。この配管部材(90)は円筒状に形成されており、その中央部に可撓性の蛇腹部分(91)が形成されている。つまり、配管部材(90)は、全体として可撓性を有している。配管部材(90)の蛇腹部分(91)は、圧縮機構(23)がその径方向、周方向、及び軸方向へ変位すると、それに追従して撓むようになっている。また、配管部材(90)は、その一端が圧縮機構(20)の吸入ポート(40)と接続し、その他端が密閉容器(10)の外部で吸入管(42)と接続している。
圧縮機構(20)のシリンダ(23)は、その吸入管(42)と対向する部分がシリンダ(23)の中心側に向かって掘り下げられている。このようにシリンダ(23)の一部分を掘り下げることにより、吸入ポート(40)に接続される配管部材(90)の蛇腹部分(91)の距離を長くとることができ、圧縮機構(20)の変位に対して配管部材(90)を確実に追従させることができる。
本実施形態では、圧縮機構(20)と吸入管(42)とが可撓性の配管部材(90)で接続されており、配管部材(90)が圧縮機構(20)の変位に追従して撓むようになっている。従って、本実施形態によれば、圧縮機構(20)から吸入管(42)を通じて密閉容器(10)へ伝わる振動を確実に遮断することができる。
また、本実施形態では、吸入管(42)を圧縮機構(20)の外側面における吸入ポート(40)の開口部に対向するように配置し、配管部材(90)を吸入管(42)の終端と吸入ポート(40)とに接続している。従って、本実施形態によれば、吸入管(42)から配管部材(90)を通って吸入ポート(40)へ至るまでの吸入ガスの通路を直線状に形成することができ、吸入ガスの圧力損失が増大するのを回避することができる。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記実施形態1〜3では、ピストン(25)にブレード(25b)が一体形成されていてシリンダ(23)内でピストン(25)が揺動する揺動ピストン型のロータリ圧縮機(1)に本発明を適用したものを示したが、本発明の適用対象となる圧縮機は、この形式の圧縮機に限定されるものではない。例えば、ピストンとブレードが別体に形成されてピストン外周面にブレード先端が押圧されるローリングピストン型のロータリ圧縮機に本発明を適用することも可能である。また、スクロール型圧縮機に本発明を適用することも可能である。
−第2変形例−
上記実施形態3の前提技術では、シリンダ(23)の外側面に凹溝(23c)を形成し、この凹溝(23c)にOリング(79)又はリング部材(80)を嵌め込んでいる。これに限らず、密閉容器(10)の内面に凹溝(図示せず)を形成し、この凹溝にOリング(79)又はリング部材(80)を嵌め込んでもよい。実施形態3の前提技術では、シリンダ(23)の外周面のうち密閉容器(10)の凹溝に対向する部分がシール面を構成する。また、密閉容器(10)に形成される凹溝と、そこに嵌め込まれるOリング(79)又はリング部材(80)とによって、シール機構(S)が構成される。