しかし、図15,図16に示した従来の構成では、ブレード(123A,123B)と環状ピストン(122)とが線接触をし、図17に示した構成ではブレード(123)とシリンダ(124,125)とが線接触をしているため、運転時に環状ピストン(122)が偏心回転運動をする際に接触部の受ける荷重が大きく、該接触部が摩耗したり、焼き付いたりするおそれがあった。
また、このように部材同士が線接触をしているため、接触部のシール性が低い欠点もある。このため、上記構成では、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)のそれぞれで、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ冷媒が漏れることで、圧縮効率が低下するおそれもあった。
なお、以上の例では流体機械として圧縮機について説明したが、上記流体機械が膨張機である場合や、ポンプである場合も、ブレード(123A,123B)(123)と環状ピストン(122)との接触部の摩耗のおそれや、第1室(C1-Hp,C2-Hp)と第2室(C1-Lp,C2-Lp)の間でガスが漏れるおそれはある。
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、シリンダが有する環状のシリンダ室の内部に該シリンダ室を外側シリンダ室と内側シリンダ室とに区画する環状ピストンが配置されるとともに、シリンダと環状ピストンとが相対的に偏心回転運動をするように構成され、さらに該シリンダ室がブレードで第1室と第2室に区画された偏心回転形ピストン機構を有する回転式流体機械において、運転時のブレードや環状ピストンの焼き付き、摩耗を防止するとともに、第1室と第2室の間でのガスの漏れも防止することである。
本発明は、ブレード(23)と環状ピストン(22)とを連結部材(揺動ブッシュ)(27)によって相互に可動に連結することにより、連結箇所において部材同士が面接触をする構成を実現したものである。
具体的に、第1の発明は、環状のシリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)と、該シリンダ(21)に対して偏心してシリンダ室(C1,C2)に収納され、シリンダ室(C1,C2)を外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)とに区画する環状ピストン(22)と、上記シリンダ室(C1,C2)に配置され、各シリンダ室(C1,C2)を第1室(C1-Hp,C2-Hp)と第2室(C1-Lp,C2-Lp)とに区画するブレード(23)とを有し、シリンダ(21)と環状ピストン(22)とが相対的に偏心回転運動をする偏心回転形ピストン機構(20)と、該偏心回転形ピストン機構(20)を駆動する駆動機構(30)と、該偏心回転形ピストン機構(20)を収納するケーシング(10)とを備えた回転式流体機械を前提としている。
そして、この回転式流体機械は、上記ブレード(23)がシリンダ(21)に設けられるとともに、上記環状ピストン(22)とブレード(23)とを相互に可動に連結する連結部材(27)を備え、上記連結部材(27)は、環状ピストン(22)に対する第1摺動面(P1)と、ブレード(23)に対する第2摺動面(P2)とを備えていることを特徴としている。なお、上記構成で言う「環状」には、真円の環状だけでなく、楕円形や卵形の環状も含まれる。
この第1の発明では、偏心回転形ピストン機構(20)を圧縮機構にした場合、該圧縮機構を駆動すると、シリンダ(21)と環状ピストン(22)とが相対的に偏心回転運動をする。この偏心回転運動の際に、環状ピストン(22)とブレード(23)とは、所定の揺動中心で相対的に揺動するとともに、該ブレード(23)の面方向へ相対的に進退する。そして、シリンダ室(C1,C2)の容積が拡大する際にガスが該シリンダ室(C1,C2)に吸入され、該シリンダ室(C1,C2)の容積が縮小する際に該ガスが圧縮される。
この発明では、ブレード(23)と環状ピストン(22)とが、連結部材(27)を介して動作(相対的な揺動動作及び進退動作)をする際に、連結部材(27)は、環状ピストン(22)及びブレード(23)の両方に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をする。また、このように部材同士が摺動面(P1,P2)で面接触をするので、その接触箇所に作用する単位面積あたりの荷重を小さくできる。
第2の発明は、第1の発明の回転式流体機械において、環状ピストン(22)が、円環の一部分が分断されたC型形状に形成され、ブレード(23)が、環状のシリンダ室(C1,C2)の内周側の壁面から外周側の壁面まで、環状ピストン(22)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、連結部材(27)が、上記ブレード(23)を進退可能に保持するブレード溝(28)と、上記環状ピストン(22)に分断箇所において揺動自在に保持される円弧状外周面とを有する揺動ブッシュ(27)であることを特徴としている。
この第2の発明では、偏心回転形ピストン機構(20)を駆動すると、ブレード(23)は揺動ブッシュ(27)のブレード溝(28)内で面接触しながら進退し、該揺動ブッシュ(27)は環状ピストン(22)の分断箇所で面接触しながら揺動する。こうすることで、連結部材(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して確実に面同士で接触し、また、該接触箇所に作用する単位面積あたりの荷重を確実に小さくできる。
第3の発明は、第2の発明の回転式流体機械において、揺動ブッシュ(27)の円弧状外周面の直径寸法が、環状ピストン(22)の壁厚寸法よりも大きいことを特徴としている。この場合、「環状ピストン(22)の壁厚寸法」とは、環状ピストン(22)の外周面の半径寸法と内周面の半径寸法との差を言う。
ここで、環状ピストン(22)が下死点位置にある図4(A)及び上死点位置にある図4(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の直径寸法(D)が環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)と同じであれば、環状ピストン(22)が偏心回転運動をする際のブレード(23)の挙動(図4(A)の仮想線参照)を妨げないように、環状ピストン(22)に切り欠き部(22a)が必要となる。この場合、上記切り欠き部(22a)の中は、第1室としての高圧室(C1-Hp,C2-Hp)での圧縮行程が完了しても高圧ガスが排出されずに残る無効容積(Ds)となる。その結果、この無効容積(Ds)に残留した高圧ガスが次の吸入行程開始時に第2室としての低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ漏れ込んで再膨張し、効率が低下することになってしまう。
一方、上記第3の発明では、環状ピストン(22)が下死点位置にある図5(A)及び上死点位置にある図5(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の直径寸法(D)を環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)よりも大きくしているので、揺動ブッシュ(27)に面取り部(27a)を設けるだけで無効容積(Ds)を小さくできる。
第4の発明は、第2の発明の回転式流体機械において、揺動ブッシュ(27)の揺動中心が、環状ピストン(22)の壁厚の中心よりも径方向内側に変位していることを特徴としている。
ここで、環状ピストン(22)が下死点位置にある図6(A)及び上死点位置にある図6(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心と一致させ、両側に同じ面取り部(27a)を持った対称型の揺動ブッシュ(27)を使うと、環状ピストン(22)の内側に無効容積(Ds)が生じ、再膨張損失が問題となる。逆に言うと、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心と一致させた場合に再膨張損失を低減しようとすると、組み立て作業の面倒な非対称形状の揺動ブッシュ(27)が必要となる。
これに対し、この第4の発明では、環状ピストン(22)が下死点位置にある図7(A)及び上死点位置にある図7(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心よりも径方向内側に変位させているので、対称型の揺動ブッシュ(27)を使った場合でも無効容積(Ds)を作らずに、簡単に再膨張損失を低減できる。
第5の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、ケーシング(10)に環状ピストン(22)が固定される一方、駆動機構(30)にシリンダ(21)が連結されていることを特徴としている。
この第5の発明では、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)が可動側となり、シリンダ室(C1,C2)内の環状ピストン(22)が固定側となる。このため、シリンダ(21)に一体化されたブレード(23)が、位置が固定された環状ピストン(22)に対して連結部材(27)を介して揺動しながら進退し、偏心回転形ピストン機構(20)の動作が行われる。その動作の際、連結部材(27)は、環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して、上記各発明と同様に面接触をする。
第6の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、ケーシング(10)にシリンダ(21)が固定される一方、駆動機構(30)に環状ピストン(22)が連結されていることを特徴としている。
この第6の発明では、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)が固定側となり、シリンダ室(C1,C2)内の環状ピストン(22)が可動側となる。このため、シリンダ(21)に一体化されるとともに位置が固定されたブレード(23)に対して、環状ピストン(22)が連結部材(27)を介して揺動しながら進退し、偏心回転形ピストン機構(20)の動作が行われる。その動作の際、連結部材(27)は、環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して、上記各発明と同様に面接触をする。
第7の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、シリンダ(21)は、シリンダ室(C1,C2)を形成する外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)と、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)の軸方向端部に連結された鏡板(26)とを備え、外側シリンダ(24)、内側シリンダ(25)及び鏡板(26)が一体化されていることを特徴としている。
この第7の発明では、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とが鏡板(26)によって一体化されたシリンダ(21)を用いているので、シリンダ(21)の強度が強くなる。
第8の発明は、第7の発明の回転式流体機械において、環状ピストン(22)の端面と鏡板(26)との間の軸方向隙間を縮小するコンプライアンス機構(29)を備えていることを特徴としている。
この第8の発明では、シリンダ室(C1,C2)内のガスの高圧圧力により生じうる、環状ピストン(22)の端面と鏡板(26)との間の軸方向隙間を、上記コンプライアンス機構(29)によって小さくできる。したがって、この軸方向隙間からのガスの漏れが生じにくくなる。
第9の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、シリンダ(21)が、シリンダ室(C1,C2)を形成する外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)を備え、外側シリンダ(24)、内側シリンダ(25)及びブレード(23)が一体化されていることを特徴としている。
この第9の発明では、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とがブレード(23)によって一体化されたシリンダを用いているので、シリンダ(21)の構造を簡素化できる。
第10の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、駆動機構(30)が、電動機(30)と、該電動機(30)に連結された駆動軸(33)とを備え、上記駆動軸(33)は回転中心から偏心した偏心部(33a)を備え、該偏心部(33a)がシリンダ(21)または環状ピストン(22)に連結され、上記駆動軸(33)が、偏心部(33a)の軸方向両側部分が軸受け部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持されていることを特徴としている。
この第10の発明では、偏心回転形ピストン機構(20)を駆動する駆動軸(33)が、シリンダ(21)及び環状ピストン(22)のうちの可動側に連結される偏心部(33a)の軸方向両側部分で軸受け部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持された状態で回転するので、該偏心回転形ピストン機構(20)の動作が安定する。
第11の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、環状ピストン(22)の外側に形成される外側シリンダ室(C1)と、該環状ピストン(22)の内側に形成される内側シリンダ室(C2)とは、吸入閉じ切り角度が相違していることを特徴としている。ここで、「吸入閉じ切り角度」とは、シリンダ室(C1,C2)において吸入行程が終了する環状ピストン(22)(またはシリンダ(21))の角度のことであり、別の言い方をすれば、圧縮行程が開始される角度のことである。
また、第12の発明は、第11の発明の回転式流体機械において、外側シリンダ室(C1)の吸入閉じ切り角度が内側シリンダ室(C2)の吸入閉じ切り角度よりも大きいことを特徴としている。
これら第11,第12の発明では、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)の吸入閉じ切り角度を相違させ、特に外側シリンダ室(C1)の吸入閉じ切り角度を内側シリンダ室(C2)のそれよりも大きくすることによって、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)の圧縮容積の差を小さくすることができる。この圧縮容積の差が大きい場合は、外側シリンダ室(C1)におけるトルク変動の振幅と、外側シリンダ室(C2)におけるトルク変動の振幅との差によって、若干の振動が発生するおそれがあると考えられるが、第11,第12の発明では、外側シリンダ室(C1)におけるトルク変動の振幅と、外側シリンダ室(C2)におけるトルク変動の振幅との差が少なくなり、機構(20)の動作が安定する。
第13の発明は、第1から第4のいずれか1の発明の回転式流体機械において、偏心回転形ピストン機構(20)の外周に断熱空間(S3)が設けられていることを特徴としている。ここで言う断熱空間(S3)は、例えば低圧のガスが滞留する空間のことである。
この第13の発明では、偏心回転形ピストン機構(20)が例えば圧縮機構(20)である場合に、該圧縮機構(20)に吸入される低圧冷媒に、ケーシング(10)内の高圧空間(S2)の熱が伝達されにくくなるようにすることができる。
第14の発明は、第1から第13のいずれか1の発明の回転式流体機械において、偏心回転形ピストン機構(20)が、ガスを吸入して圧縮する圧縮機構であることを特徴としている。
この第14の発明では、偏心回転形ピストン機構(20)を圧縮機構とした場合に、ガスの漏れによる圧縮効率の低下や、環状ピストン(22)やブレード(23)の摩耗、焼き付きを防止できる。
上記第1の発明によれば、偏心回転形ピストン機構(20)の動作の際に、連結部材(27)と環状ピストン(22)及びブレード(23)とが摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をするため、その接触箇所に作用する単位面積あたりの荷重を小さくできる。したがって、運転時にブレード(23)と環状ピストン(22)とが連結部材(27)を介して摺動する際に、接触部が摩耗したり、焼き付いたりしにくくなる。また、連結部材(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で面接触することにより、第1室(C1-Hp,C2-Hp)と第2室(C1-Lp,C2-Lp)の間でガスが漏れるのも防止できる。
また、この第1の発明によれば、ブレード(23)をシリンダ(21)に一体的に設けるようにすれば、偏心回転形ピストン機構(20)の動作の際に異常な集中荷重がかかったり、応力集中が起こったりしにくく、機構の信頼性を高められる利点もある。
上記第2の発明によれば、連結部材(27)として、上記ブレード(23)を進退可能に保持するブレード溝(28)と、上記環状ピストン(22)に分断箇所において揺動自在に保持される円弧状外周面とを有する揺動ブッシュ(27)を用いているので、運転時のガスの漏れや、部材の摩耗、焼き付きを確実に防止できるのに加えて、連結部の構造が複雑になることも防止できる。このため、機構の大型化やコスト増加も防止できる。
上記第3の発明によれば、揺動ブッシュ(27)の円弧状外周面の直径寸法(D)を、環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)よりも大きくしたことにより、揺動ブッシュ(27)に面取り部(27a)を設けるだけで無効容積(Ds)を小さくできるので、偏心回転形ピストン機構(20)を圧縮機構とする場合の再膨張損失を簡単な構造で低減でき、運転の効率を高められる。したがって、第3の発明によれば、環状ピストン(22)とブレード(23)とを揺動ブッシュ(27)で連結した第2の発明において、揺動ブッシュ(27)を偏心回転形ピストン機構(20)の効率面で特に優れた構成にすることができる。
上記第4の発明によれば、揺動ブッシュ(27)の揺動中心が、環状ピストン(22)の壁厚の中心よりも径方向内側に変位するようにしたことにより、対称型の揺動ブッシュ(27)を使った場合でも再膨張損失を低減できるようにしているので、運転の効率を高められる。したがって、第4の発明によれば、第3の発明と同様に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを揺動ブッシュ(27)で連結した第2の発明において、揺動ブッシュ(27)を偏心回転形ピストン機構(20)の効率面で特に優れた構成にすることができる。
また、再膨張損失を低減するために非対称形状の揺動ブッシュ(27)を使わずに、対称型の揺動ブッシュ(27)を用いることができるので、機構の誤組立を避けることも可能となる。
上記第5の発明によれば、シリンダ(21)を可動側とし、環状ピストン(22)を固定側とした構造において、連結部材(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して面接触しながら、環状ピストン(22)に対するシリンダ(22)の動作が行われる。したがって、シリンダ(21)が可動の構造において、ガスの漏れや、部材の摩耗、焼き付きを防止できる。
上記第6の発明によれば、シリンダ(21)を固定側とし、環状ピストン(22)を可動側とした構造において、連結部材(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して面接触しながら、シリンダ(21)に対する環状ピストン(22)の動作が行われる。したがって、環状ピストン(22)が可動の構造において、ガスの漏れや、部材の摩耗、焼き付きを防止できる。
上記第7の発明によれば、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とを鏡板(26)によって一体化したシリンダ(21)を用いているので、シリンダ(21)の強度が強くなる。したがって高強度の機構(20)を設計しやすくなる利点がある。
上記第8の発明によれば、環状ピストン(22)の端面と鏡板(26)との間に生じうる軸方向隙間を縮小するコンプライアンス機構(29)を設けたことによって、この軸方向隙間からのガスの漏れが生じにくくなるので、効率の高い運転が可能となる。
上記第9の発明によれば、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とをブレード(23)によって一体化したシリンダを用いているので、シリンダ(21)の構造を簡素化できる。このため、コンパクトな設計が可能となる。
上記第10の発明によれば、偏心回転形ピストン機構(20)を駆動する駆動軸(33)が、シリンダ(21)及び環状ピストン(22)のうちの可動側に連結される偏心部(33a)の軸方向両側部分で軸受け部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持された状態で回転するようにしたことにより、該偏心回転形ピストン機構(20)の動作が安定するので、機構(20)の信頼性が向上する。
上記第11の発明によれば、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)の吸入閉じ切り角度を相違させるようにしているので、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)とで圧縮容積の比を調整することが可能となる。
上記第12の発明によれば、外側シリンダ室(C1)の吸入閉じ切り角度を内側シリンダ室(C2)のそれよりも大きくすることによって、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)の圧縮容積の差を小さくすることができるので、外側シリンダ室(C1)におけるトルク変動の振幅と、外側シリンダ室(C2)におけるトルク変動の振幅との差が少なくなり、機構(20)の動作が安定する。
上記第13の発明によれば、偏心回転形ピストン機構(20)の外周に断熱空間(S3)を設けたことにより、偏心回転形ピストン機構(20)が例えば圧縮機構(20)である場合に、該圧縮機構(20)に吸入される低圧冷媒に、ケーシング(10)内の高圧空間(S2)の熱が伝達されにくくなるようにすることができるので、吸入過熱損による性能低下を防止できる。
上記第14の発明によれば、偏心回転形ピストン機構(20)を圧縮機構とした場合に、ガスの漏れによる圧縮効率の低下や、環状ピストン(22)やブレード(23)の摩耗、焼き付きを確実に防止できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本実施形態は、回転式圧縮機に関するものである。図1に示すように、この圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、圧縮機構(偏心回転形ピストン機構)(20)と電動機(駆動機構)(30)とが収納され、全密閉型に構成されている。上記圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して、凝縮器へ吐出するために用いられる。
ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。上部鏡板(12)には、該鏡板(12)を貫通する吸入管(14)が設けられ、胴部(11)には、該胴部(11)を貫通する吐出管(15)が設けられている。
上記圧縮機構(20)は、ケーシング(10)に固定された上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)との間に構成されている。この圧縮機構(20)は、環状のシリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)と、該シリンダ室(C1,C2)内に配置された環状ピストン(22)と、図2に示すようにシリンダ室(C1,C2)を第1室である高圧室(圧縮室)(C1-Hp,C2-Hp)と第2室である低圧室(吸入室)(C1-Lp,C2-Lp)とに区画するブレード(23)とを有している。シリンダ(21)と環状ピストン(22)とは、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。この実施形態1では、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)が可動側であり、シリンダ室(C1,C2)内に配置される環状ピストン(22)が固定側である。
電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを備えている。ステータ(31)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(32)には駆動軸(33)が連結されていて、該駆動軸(33)がロータ(32)とともに回転するように構成されている。駆動軸(33)は、上記シリンダ室(C1,C2)を上下方向に貫通している。
上記駆動軸(33)には、該駆動軸(33)の内部を軸方向にのびる給油路(図示省略)が設けられている。また、駆動軸(33)の下端部には、給油ポンプ(34)が設けられている。そして、上記給油路は、該給油ポンプ(34)から圧縮機構(20)まで上方へのびている。この構成により、ケーシング(10)内の底部に貯まる潤滑油を、この給油ポンプ(34)で上記給油路を通じて圧縮機構(20)の摺動部まで供給するようにしている。
駆動軸(33)には、シリンダ室(C1,C2)の中に位置する部分に偏心部(33a)が形成されている。偏心部(33a)は、該偏心部(33a)の上下の部分よりも大径に形成され、駆動軸(33)の軸心から所定量だけ偏心している。
上記シリンダ(21)は、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)を備えている。外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)は、下端部が鏡板(26)で連結されることにより一体化されている。そして、駆動軸(33)の偏心部(33a)に、上記内側シリンダ(25)が摺動自在に嵌め込まれている。
上記環状ピストン(22)は、上部ハウジング(16)と一体的に形成されている。また、上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)には、それぞれ、上記駆動軸(33)を支持するための軸受け部(16a,17a)が形成されている。このように、本実施形態の圧縮機(1)は、上記駆動軸(33)が上記シリンダ室(C1,C2)を上下方向に貫通し、偏心部(33a)の軸方向両側部分が軸受け部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持される貫通軸構造となっている。
上記圧縮機構(20)は、環状ピストン(22)とブレード(23)とを相互に可動に連結する連結部材として、揺動ブッシュ(27)を備えている。環状ピストン(22)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されている。上記ブレード(23)は、シリンダ室(C1,C2)の径方向線上で、シリンダ室(C1,C2)の内周側の壁面(内側シリンダ(25)の外周面)から外周側の壁面(外側シリンダ(24)の内周面)まで、環状ピストン(22)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)に固定されている。そして、揺動ブッシュ(27)は、環状ピストン(22)の分断箇所で該環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結している。なお、ブレード(23)は、図2に示すように外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)と一体的に形成してもよいし、別部材を両シリンダ(24,25)に取り付けてもよい。なお、ブレード(23)は、該ブレード(23)の長手方向に移動するように取り付けてもよい。
外側シリンダ(24)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面は、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に上記シリンダ室(C1,C2)が形成されている。上記環状ピストン(22)は、外周面が外側シリンダ(24)の内周面よりも小径で、内周面が内側シリンダ(25)の外周面よりも大径に形成されている。このことにより、環状ピストン(22)の外周面と外側シリンダ(24)の内周面との間に外側シリンダ室(C1)が形成され、環状ピストン(22)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面との間に内側シリンダ室(C2)が形成されている。
また、環状ピストン(22)とシリンダ(21)は、環状ピストン(22)の外周面と外側シリンダ(24)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、環状ピストン(22)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
上記揺動ブッシュ(27)は、ブレード(23)に対して高圧室(C1-Hp,C2-Hp)側に位置する吐出側ブッシュ(27A)と、ブレード(23)に対して低圧室(C1-Lp,C2-Lp)側に位置する吸入側ブッシュ(27B)とから構成されている。吐出側ブッシュ(27A)と吸入側ブッシュ(27B)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、両ブッシュ(27A,27B)の対向面の間のスペースがブレード溝(28)を構成している。
このブレード溝(28)にブレード(23)が挿入され、揺動ブッシュ(27A,27B)のフラット面(第2摺動面(P2):図2(C)参照)がブレード(23)と実質的に面接触し、円弧状の外周面(第1摺動面(P1))が環状ピストン(22)と実質的に面接触している。揺動ブッシュ(27A,27B)は、ブレード溝(28)にブレード(23)を挟んだ状態で、ブレード(23)がその面方向にブレード溝(28)内を進退するように構成されている。同時に、揺動ブッシュ(27A,27B)は、環状ピストン(22)に対してブレード(23)と一体的に揺動するように構成されている。したがって、上記揺動ブッシュ(27)は、該揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として上記ブレード(23)と環状ピストン(22)とが相対的に揺動可能となり、かつ上記ブレード(23)が環状ピストン(22)に対して該ブレード(23)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、この実施形態では両ブッシュ(27A,27B)を別体とした例について説明したが、両ブッシュ(27A,27B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
以上の構成において、駆動軸(33)が回転すると、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)は、ブレード(23)がブレード溝(28)内を進退しながら、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。この揺動動作により、環状ピストン(22)とシリンダ(21)との接触点が図2において(A)図から(D)図へ順に移動する。このとき、上記外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)は駆動軸(33)の周りを公転するが、自転はしない。
上部ハウジング(16)には、吸入管(14)の下方の位置に吸入口(41)が形成されている。この吸入口(41)は、内側シリンダ室(C2)から、外側シリンダ(24)の外周に形成されている吸入空間(42)に跨って、長穴状に形成されている。該吸入口(41)は、上部ハウジング(16)をその軸方向に貫通し、シリンダ室(C1,C2)の低圧室(C1-Lp,C2-Lp)及び吸入空間(42)と上部ハウジング(16)の上方の空間(低圧空間(S1))とを連通している。また、外側シリンダ(24)には、上記吸入空間(42)と外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)とを連通する貫通孔(43)が形成され、環状ピストン(22)には、外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)と内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)とを連通する貫通孔(44)が形成されている。
なお、上記外側シリンダ(24)と環状ピストン(22)は、上記吸入口(41)に対応した箇所の上端部を図1に破線で示すように面取りし、くさび形状にするとよい。こうすると、低圧室(C1-Lp,C2-Lp)への冷媒の吸入を効率よく行うことができる。
上部ハウジング(16)には吐出口(45,46)が形成されている。これらの吐出口(45,46)は、それぞれ、上部ハウジング(16)をその軸方向に貫通している。吐出口(45)の下端は外側シリンダ室(C1)の高圧室(C1-Hp)に臨むように開口し、吐出口(46)の下端は内側シリンダ室(C2)の高圧室(C2-Hp)に臨むように開口している。一方、これらの吐出口(45,46)の上端は、該吐出口(45,46)を開閉する吐出弁(リード弁)(47,48)を介して吐出空間(49)に連通している。
この吐出空間(49)は、上部ハウジング(16)とカバープレート(18)との間に形成されている。上部ハウジング(16)及び下部ハウジング(17)には、吐出空間(49)から下部ハウジング(17)の下方の空間(高圧空間(S2))に連通する吐出通路(49a)が形成されている。
一方、上記下部ハウジング(17)には、シールリング(29)が設けられている。このシールリング(29)は、下部ハウジング(17)の環状溝(17b)に装填され、シリンダ(21)の鏡板(26)の下面に圧接している。また、シリンダ(21)と下部ハウジング(17)の接触面には、シールリング(29)の径方向内側部分に高圧の潤滑油が導入されるようになっている。以上のことにより、上記シールリング(29)は、上記潤滑油の圧力を利用して環状ピストン(22)の下端面とシリンダ(21)の鏡板(26)との間の軸方向隙間を縮小するコンプライアンス機構を構成している。
−運転動作−
次に、この圧縮機(1)の運転動作について説明する。
電動機(30)を起動すると、ロータ(32)の回転が駆動軸(33)を介して圧縮機構(20)の外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)に伝達される。そうすると、ブレード(23)が揺動ブッシュ(27A,27B)の間で往復運動(進退動作)を行い、かつ、ブレード(23)と揺動ブッシュ(27A,27B)が一体的になって、環状ピストン(22)に対して揺動動作を行う。その際、揺動ブッシュ(27A,27B)は、環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をする。そして、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)が環状ピストン(22)に対して揺動しながら公転し、圧縮機構(20)が所定の圧縮動作を行う。
具体的に、外側シリンダ室(C1)では、図2(D)の状態で低圧室(C1-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(33)が図の右回りに回転して図2(A)、図2(B)、図2(C)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C1-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(14)、低圧空間(S1)及び吸入口(41)を通って該低圧室(C1-Lp)に吸入される。このとき、冷媒は、吸入口(41)から低圧室(C1-Lp)へ直接吸入されるだけでなく、一部は吸入口(41)から吸入空間(42)へ入り、そこから貫通孔(43)を通って低圧室(C1-Lp)へ吸入される。
駆動軸(33)が一回転して再び図2(D)の状態になると、上記低圧室(C1-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C1-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(C1-Hp)となり、ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C1-Lp)が形成される。駆動軸(33)がさらに回転すると、上記低圧室(C1-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(C1-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C1-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C1-Hp)の圧力が所定値となって吐出空間(49)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C1-Hp)の高圧冷媒によって吐出弁(47)が開き、高圧冷媒が吐出空間(49)から吐出通路(49a)を通って高圧空間(S2)へ流出する。
内側シリンダ室(C2)では、図2(B)の状態で低圧室(C2-Lp)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(33)が図の右回りに回転して図2(C)、図2(D)、図2(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C2-Lp)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(14)、低圧空間(S1)及び吸入口(41)を通って該低圧室(C2-Lp)に吸入される。このとき、冷媒は、吸入口(41)から低圧室(C2-Lp)へ直接吸入されるだけでなく、一部は吸入口(41)から吸入空間(42)へ入り、そこから貫通孔(43)、外側シリンダ室の低圧室(C1-Lp)、及び貫通孔(44)を通って内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)へ吸入される。
駆動軸(33)が一回転して再び図2(B)の状態になると、上記低圧室(C2-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C2-Lp)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(C2-Hp)となり、ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C2-Lp)が形成される。駆動軸(33)がさらに回転すると、上記低圧室(C2-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(C2-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C2-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C2-Hp)の圧力が所定値となって吐出空間(49)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C2-Hp)の高圧冷媒によって吐出弁(48)が開き、高圧冷媒が吐出空間(49)から吐出通路(49a)を通って高圧空間(S2)へ流出する。
このようにして外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)で圧縮されて高圧空間(S2)へ流出した高圧の冷媒は吐出管(15)から吐出され、冷媒回路で凝縮行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後、再度圧縮機(1)に吸入される。
−実施形態1の効果−
この実施形態1では、環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結する連結部材として揺動ブッシュ(27)を設け、この揺動ブッシュ(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をするように構成しているので、運転時に環状ピストン(22)やブレード(23)が摩耗したり、その接触部が焼き付いたりするのを防止できる。
また、このように揺動ブッシュ(27)を設け、揺動ブッシュ(27)と環状ピストン(22)及びブレード(23)とが面接触をするようにしているので、接触部のシール性にも優れている。このため、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)のそれぞれで、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ冷媒が漏れて圧縮効率が低下するのも防止できる。
さらに、この実施形態の圧縮機(1)によれば、外側シリンダ室(C1)での圧縮動作に伴うトルク変動と内側シリンダ室(C2)での圧縮動作に伴うトルク変動の位相差が180°ずれるため、1シリンダ型の圧縮機と比べて、合計のトルクカーブの振幅が小さくなる。この振幅が大きいと圧縮機(1)の振動や騒音が問題となるが、本実施形態ではそのような問題も防止できる。また、騒音が小さな構造のため、防音材も不要となり、コスト低減効果もある。
さらに、圧縮機構を2段に重ねた従前の2シリンダタイプの圧縮機(例えば、特開2000−161276号公報参照)では、構成が複雑になり、コストも高くなるが、この実施形態の圧縮機(1)では、1つの圧縮機構(20)に設けた2つのシリンダ室(C1,C2)により上記2シリンダ機と同等の能力を得ることができるうえ、構造も簡素化できるしコストも抑えられる。また、この実施形態では、圧縮機構を2段に重ねた2シリンダ機よりも軸受け間のスパンを短くできるため、駆動軸のたわみが少なくなり、動作が安定する。
さらに、この実施形態の構造によれば、運転条件の変化によって冷媒回路の蒸発器から圧縮機(1)へ液バックが生じた場合に、シリンダ室(C1,C2)の高圧室(C1-Hp,C2-Hp)の高圧圧力が異常に上昇すると、シールリング(29)が変形することでシリンダ(21)が下方へ変位する。こうすることで液冷媒を高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ漏らすことができるため、液圧縮も防止できる。その結果、圧縮機構(20)の故障のおそれが少なく、信頼性が向上する。
また、この実施形態1によれば、ブレード(23)がシリンダ(21)に一体的に設けられ、その両端でシリンダ(21)に保持されているので、運転中にブレード(23)に異常な集中荷重がかかったり、応力集中が起こったりしにくい。このため、摺動部が損傷したりしにくく、その点からも機構の信頼性を高められる。
また、図14〜図16に示した従来のものでは、環状ピストン(22)を自転させずに偏心回転だけさせるための自転阻止機構としてオルダム機構が用いられているが、本実施形態1では揺動ブッシュ(27)を介して環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結すること自体が環状ピストンの自転阻止機構となっており、専用の自転阻止機構が不要であるため、コンパクトな設計が可能となる。
−実施形態1の変形例−
(第1変形例)
実施形態1の第1の変形例を図3に示している。
この変形例は、シリンダ(21)を、鏡板(26)を用いずに構成した例である。具体的には、シリンダ(21)は、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とブレード(23)とが一体化されたものになっている。また、この例では、図1に示したシールリング(29)は設けていない。
このように構成すると、シリンダ(21)の構成をより簡素化することができ、圧縮機構(20)の小型化が可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果は実施形態1と同じであるため、具体的な説明は省略する。
(第2変形例)
第2の変形例は、揺動ブッシュ(27)の円弧状外周面の直径寸法(D)を、環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)よりも大きくしたものである。この場合、「環状ピストン(22)の壁厚寸法」とは、環状ピストン(22)の外周面の半径寸法と内周面の半径寸法との差を表している。
ここで、環状ピストン(22)が下死点位置にあるときの比較例を示す図4(A)及び上死点位置にあるときの該比較例を示す図4(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の直径寸法(D)が環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)と同じであれば、環状ピストン(22)が偏心回転運動をする際のブレード(23)の挙動を妨げないように(図4(A)の仮想線参照)、環状ピストン(22)に切り欠き部(22a)を設けることが必要となる。この場合、上記切り欠き部(22a)の中の空間は、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)での圧縮行程が完了しても高圧ガスが排出されずに残る無効容積(Ds)となる。その結果、この無効容積(Ds)に残留した高圧ガスが次の吸入行程開始時に低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ漏れ込んで再膨張し、効率が低下することになってしまう。
一方、この変形例では、環状ピストン(22)が下死点位置にある図5(A)及び上死点位置にある図5(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の直径寸法(D)を環状ピストン(22)の壁厚寸法(T)よりも大きくしているので、環状ピストン(22)に面取り部(27a)を設けるだけで無効容積(Ds)を小さくできる。したがって、偏心回転形ピストン機構(20)を圧縮機構とする場合の再膨張損失を低減でき、運転の効率を高められる。
このように、第2の変形例によれば、環状ピストン(22)とブレード(23)とを揺動ブッシュ(27)で連結した場合に、揺動ブッシュ(27)を圧縮機構(20)の効率面で特に優れた構成にすることができる。
(第3変形例)
第3の変形例は、揺動ブッシュ(27)の揺動中心を、環状ピストン(22)の壁厚の中心よりも径方向内側に変位させるようにしたものである。
ここで、環状ピストン(22)が下死点位置にあるときの比較例を示す図6(A)及び上死点位置にあるときの該比較例を示す図6(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心と一致させ、両側に同じ面取り部(27a)を持った対称型の揺動ブッシュ(27)を使うと、環状ピストン(22)の内側に無効容積(Ds)が生じ、再膨張損失が問題となる。逆に言うと、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心と一致させた場合に再膨張損失を低減しようとすると、環状ピストン(22)の内側のみの上記面取り部(27a)を小さくした、組み立て作業の面倒な非対称形状の揺動ブッシュ(27)が必要となる。
これに対し、この変形例では、環状ピストン(22)が下死点位置にある図7(A)及び上死点位置にある図7(B)に示すように、揺動ブッシュ(27)の中心を環状ピストン(22)の壁厚の中心よりも径方向内側に変位させているので、対称型の揺動ブッシュ(27)を使った場合でも、ほとんど無効容積(Ds)を作らないことが可能である。このことにより、簡単に再膨張損失を低減でき、運転の効率を高められる。
このように、第3の変形例によれば、第2の変形例と同様に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを揺動ブッシュ(27)で連結した場合に、揺動ブッシュ(27)を圧縮機構(20)の効率面で特に優れた構成にすることができる。
また、非対称形状の揺動ブッシュ(27)を使わずに、対称型の揺動ブッシュ(27)を用いても、再膨張損失を低減することができるので、簡単に機構の誤組立を避けることもできる。つまり、非対称形状の揺動ブッシュ(27)を用いた場合には取付の向きを間違えることで誤組立のおそれがあるが、この例では対称形状の揺動ブッシュ(27)を用いているので、誤組立や、誤組立を防止するための面倒な作業が不要となる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2は、ケーシング(10)内での圧縮機構(20)と電動機(30)の配置を実施形態1とは変更した例である。
この実施形態2では、図8に示すように、圧縮機構(20)をケーシング(10)内の下部に配置し、電動機(30)を上部に配置している。圧縮機構(20)は、ケーシング(10)の下部に固定された上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)の間に構成され、上部ハウジング(16)に環状ピストン(22)が一体的に形成されている。シリンダ(21)は、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)と鏡板(26)とが一体的に形成されたもので、駆動軸(33)の偏心部(33a)に内側シリンダ(25)が摺動自在に嵌合し、上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)の間に保持されている。また、上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)には、それぞれ、駆動軸(33)を支持する軸受け部(16a,17a)が設けられている。
上記ケーシング(10)の胴部(11)には吸入管(14)が設けられ、上部鏡板(12)には吐出管(15)が設けられている。また、上部ハウジング(16)には、吸入口(41)を介して上記吸入管(14)と連通する吸入空間(42)と、該吸入空間(42)から外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)及び内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)に連通する吸入通路(42a)が形成されている。また、吸入空間(42)は、外側シリンダ(24)の貫通孔(43)を介して外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)に連通し、さらに環状ピストン(22)の貫通孔(44)を介して内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)に連通している。
上部ハウジング(16)には、外側シリンダ室(C1)の吐出口(45)と内側シリンダ室(C2)の吐出口(46)が設けられていて、吐出口(45)に吐出弁(47)が、吐出口(46)に吐出弁(48)が装着されている。
上部ハウジング(16)には、これら吐出口(45,46)を覆う吐出カバー(消音部材)が設けられている。この吐出カバー(50)と上部ハウジング(16)との間に吐出空間(49)が形成されている。この吐出空間(49)は、吐出カバー(50)の中心部に設けられた開口(50a)を介して該吐出カバー(50)の上方の空間と連通している。
この実施形態2において、その他の構成は実施形態1と同様である。したがって、上記以外の構成について、ここでは具体的な説明を省略する。
この実施形態2においても、上記実施形態1と同様に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結する連結部材として揺動ブッシュ(27)を設け、この揺動ブッシュ(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をするように構成している。したがって、運転時に環状ピストン(22)やブレード(23)が摩耗したり、その接触部が焼き付いたりするのを防止できる。
また、揺動ブッシュ(27)と環状ピストン(22)及びブレード(23)とが面接触をするために、接触部のシール性に優れている点も実施形態1と同様である。このため、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)のそれぞれで、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ冷媒が漏れて圧縮効率が低下するのも防止できる。
その他、合計のトルクカーブの振幅が小さくなることによる低振動化及び低騒音化やコスト低減を初め、従前の2シリンダ機と比較した場合の構造の簡素化、液圧縮の防止など、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
また、この実施形態では圧縮機構(20)をケーシング(10)内の下部に配置し、機構の摺動部が油溜まりの近くに位置するようにしているので、潤滑を容易に行える利点もある。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3は、圧縮機構(20)の構造を、実施形態1とは一部変更した例である。
この実施形態3では、図9に示すように、圧縮機構(20)自体の上下関係を実施形態1とは逆転させるとともに、吸入構造を変更している。具体的に、シリンダ(21)は、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)とを、その上端において鏡板(26)で連結することにより一体的に構成されている。また、環状ピストン(22)は、下部ハウジング(17)に一体的に形成されている。シールリング(29)は、上部ハウジング(16)に形成された環状溝(16b)に装填され、シリンダ(21)の鏡板(26)の上面に圧接している。
吸入管(14)はケーシング(10)の胴部(11)に横向きに設けられ、下部ハウジング(17)に該吸入管(14)と連通する吸入口(41)が形成されている。また、下部ハウジング(17)には、吸入口(41)に連通する吸入空間(42)と、該吸入空間(42)から外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)及び内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)に連通する吸入通路(42a)とが形成されている。この吸入空間(42)は、外側シリンダ(24)の貫通孔(43)を介して外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)に連通し、さらに環状ピストン(22)の貫通孔(44)を介して内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)に連通している。
吐出口(45,46)は、下部ハウジング(17)に設けられている。そして、外側シリンダ室(C1)の吐出口(45)に吐出弁(47)が、内側シリンダ室(C2)の吐出口(46)に吐出弁(48)が装着されている。また、下部ハウジング(17)の下面にはカバープレート(18)が設けられていて、該下部ハウジング(17)とカバープレート(18)との間に吐出空間(49)が形成されている。この吐出空間(49)は、図示しない吐出通路を介して、圧縮機構(20)の下方の高圧空間(S2)に連通している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
この実施形態3においても、上記各実施形態と同様に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結する連結部材として揺動ブッシュ(27)を設け、この揺動ブッシュ(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をするように構成している。したがって、運転時に環状ピストン(22)やブレード(23)が摩耗したり、その接触部が焼き付いたりするのを防止できる。
また、揺動ブッシュ(27)と環状ピストン(22)及びブレード(23)とが面接触をするために、接触部のシール性に優れている点も上記各実施形態と同様である。このため、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)のそれぞれで、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ冷媒が漏れて圧縮効率が低下するのも防止できる。
さらに、合計のトルクカーブの振幅が小さくなることによる低振動化及び低騒音化やコスト低減を初め、従前の2シリンダ機と比較した場合の構造の簡素化、液圧縮の防止など、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4は、実施形態1〜3が環状ピストン(22)を固定側にし、シリンダ(21)を可動側にした例であるのに対して、シリンダ(21)を固定側にし、環状ピストン(22)を可動側にした例である。
この実施形態4では、図10に示すように、圧縮機構(20)は実施形態1と同様にケーシング(10)内の上部に配置されている。この圧縮機構(20)は、上記各実施形態と同様に、上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)の間に構成されている。
一方、上記各実施形態とは異なり、上部ハウジング(16)に外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)が設けられている。これらの外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)が上部ハウジング(16)に一体化されてシリンダ(21)が構成されている。
上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)の間には、環状ピストン(22)が保持されている。この環状ピストン(22)は、鏡板(26)と一体化されている。該鏡板(26)には駆動軸(33)の偏心部(33a)に摺動自在に嵌合するハブ(26a)が設けられている。したがって、この構成では、駆動軸(33)が回転すると、環状ピストン(22)がシリンダ室(C1,C2)内で偏心回転運動をする。なお、ブレード(23)は、上記各実施形態と同様にシリンダ(21)に一体化されている。
上部ハウジング(16)には、ケーシング(10)内における圧縮機構(20)の上方の低圧空間(S1)から外側シリンダ室(C1)及び内側シリンダ室(C2)に連通する吸入口(41)と、外側シリンダ室(C1)の吐出口(45)及び内側シリンダ室(C2)の吐出口(46)が形成されている。また、上記ハブ(26a)と内側シリンダ(25)との間に上記吸入口(41)と連通する吸入空間(42)が形成され、内側シリンダ(25)に貫通孔(44)が、環状ピストン(22)に貫通孔(43)が形成されている。また、環状ピストン(22)と内側シリンダ(25)の上端部には、吸入口(41)に対応する箇所に破線で示すように面取りをするとよい。
圧縮機構(20)の上方にはカバープレート(18)が設けられ、上部ハウジング(16)とカバープレート(18)の間に吐出空間(49)が形成されている。この吐出空間は、上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)に形成された吐出通路(49a)を介して、圧縮機構(20)の下方の高圧空間(S2)と連通している。
この実施形態4においても、上記各実施形態と同様に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを連結する連結部材として揺動ブッシュ(27)を設け、この揺動ブッシュ(27)が環状ピストン(22)及びブレード(23)に対して摺動面(P1,P2)で実質的に面接触をするように構成している。したがって、運転時に環状ピストン(22)やブレード(23)が摩耗したり、その接触部が焼き付いたりするのを防止できる。
また、揺動ブッシュ(27)と環状ピストン(22)及びブレード(23)とが面接触をするために、接触部のシール性に優れている点も上記各実施形態と同様である。このため、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)のそれぞれで、高圧室(C1-Hp,C2-Hp)から低圧室(C1-Lp,C2-Lp)へ冷媒が漏れて圧縮効率が低下するのも防止できる。
さらに、合計のトルクカーブの振幅が小さくなることによる低振動化及び低騒音化やコスト低減を初め、従前の2シリンダ機と比較した場合の構造の簡素化、液圧縮の防止など、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5は、環状ピストン(22)の外側に形成される外側シリンダ室(C1)と、該環状ピストン(22)の内側に形成される内側シリンダ室(C2)とで、吸入閉じ切り角度が相違するようにした例である。
この実施形態5では、吸入構造として、既に説明した図8及び図9に示すように、ケーシング(10)の胴部(11)に横向きに取り付けられた吸入管(14)及び吸入空間(42)から、外側シリンダ(24)の貫通孔(43)及び内側シリンダ(25)の貫通孔(44)を介して、外側シリンダ室(C1)と内側シリンダ室(C2)に冷媒が吸入されるものとする。
そして、図11に示すように、外側シリンダ(24)の貫通孔(43)が、内側シリンダ(25)の貫通孔(44)よりも周方向に広い範囲に形成され、吸入行程の終了する位置(圧縮行程の開始する位置)が、内側シリンダ室(C2)よりも外側シリンダ室(C1)で遅くなるように構成されている。つまり、外側シリンダ室(C2)の吸入閉じ切り角度が内側シリンダ室(C1)の吸入閉じ切り角度よりも大きくなっている。
このように構成すると、外側シリンダ室(C1)の圧縮容積を、上記各実施形態に比べて小さくすることができる。こうすることで、環状ピストン(22)の外周側に位置する外側シリンダ室(C1)の圧縮容積と、該環状ピストン(22)の内周側に位置する内側シリンダ室(C2)の容積容積との差を小さくすることが可能となる。したがって、外側シリンダ室での圧縮動作に伴うトルク変動の振幅と、内側シリンダ室(C2)での圧縮動作に伴うトルク変動の振幅との差が少なくなるため、全体としてのトルク変動を上記各実施形態よりもさらに小さくすることが可能となる。このため、低振動化、低騒音化のメリットをさらに向上させることが可能となる。
なお、その他にも、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
《発明の実施形態6》
本発明の実施形態6は、圧縮機構(20)の外周に断熱空間(S3)を設けた例である。
具体的には、図12に示すように、上記実施形態1(図1)において外側シリンダ(24)に形成した貫通孔(43)と環状ピストン(22)に形成した貫通孔(44)とを設けずに、外側シリンダ(24)の周囲の空間を低圧の断熱空間(S3)としたものである。つまり、この実施形態6では、実施形態1の吸入空間(42)を低圧冷媒が滞留する断熱空間(S3)として機能させている。
その他の構成は実施形態1と同様である。
このように構成すると、圧縮機構(20)に吸入される低圧冷媒に高圧空間(S2)の熱が伝達されにくくなるので、吸入過熱損による性能低下を防止できる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、揺動ブッシュ(27A,27B)を、図13に示すように構成してもよい。この例では、吐出側ブッシュ(27A)と吸入側ブッシュ(27B)は、幅寸法が互いに異なる形状に形成されている。具体的には、ブレード(23)の中心に対して揺動ブッシュ(27A,27B)の円弧状外周面の中心が吸入側にずれており(吐出側ブッシュ(27A)の円弧状外周面の半径(R1)と吸入側ブッシュ(27B)の円弧状外周面の半径(R2)とは同一寸法である)、吐出側ブッシュ(27A)よりも吸入側ブッシュ(27B)が幅が大きく形成されている。これは、以下の理由による。
まず、吸入側ブッシュ(27B)の周囲の空間である外側シリンダ室(C1)の低圧室(C1-Lp)と内側シリンダ室(C2)の低圧室(C2-Lp)は、いずれも常に低圧空間であり、両空間(C1-Lp,C2-Lp)の圧力差はほとんど生じない。一方、吐出側ブッシュ(27A)の周囲の空間である外側シリンダ室(C1)の高圧室(C1−Hp)と内側シリンダ室(C2)の高圧室(C2-Hp)は、いずれも低圧から高圧まで圧力が変動するため、両空間(C1-Hp,C2-Hp)の間では相当の圧力差が発生する。このため、高圧側ブッシュ(27A)と環状ピストン(22)の円弧状の接触面には、図の上向きまたは下向きに該高圧側ブッシュ(27A)が圧力を受けることで、荷重が作用する。そこで、高圧側ブッシュ(27A)が大きい場合には上記接触面の荷重が大きくなってしまうが、この例では高圧側ブッシュ(27A)の幅を小さくしているので、該接触面の荷重を抑えることができる。
また、揺動ブッシュ(27A,27B)は、図14に示すように構成してもよい。この例では、ブレード(23)の中心と揺動ブッシュ(27A,27B)の円弧状外周面の中心は一致しているが、吐出側ブッシュ(27A)の円弧状外周面の半径(R1)と吸入側ブッシュ(27B)の円弧状外周面の半径(R2)とが相違している。つまり、吐出側ブッシュ(27A)の円弧状外周面の半径(R1)よりも吸入側ブッシュ(27B)の円弧状外周面の半径(R2)を大きくすることで、吐出側ブッシュ(27A)よりも吸入側ブッシュ(27B)の幅を大きくしている。このようにしても、上記と同様の理由により、高圧側ブッシュ(27A)と環状ピストン(22)の円弧状の接触面に作用する荷重を抑えることができる。
一方、上記各実施形態では、環状ピストン(22)を円環の一部分が分断されたC型形状とし、ブレード(23)がその分断箇所を挿通する構成において、環状ピストン(22)とブレード(23)とを揺動ブッシュ(27)を介して連結するようにしているが、逆に環状ピストン(22)を円環とし、ブレード(23)を2つに分断した構成において、環状ピストン(22)とブレード(23)とを相互に可動に連結し、その連結箇所で面接触させるようにしてもよい。この場合でも、面接触をする箇所において、摩耗、焼き付き、ガスの漏れが生じにくくなる。
また、上記各実施形態では、ブレード(23)がシリンダ室(C1,C2)の径方向線上に位置するように配置しているが、ブレード(23)は、シリンダ室(C1,C2)の径方向線分に対して傾斜した配置にしてもよい。
さらに、上記各実施形態では、本発明の流体機械として圧縮機について説明したが、本発明は、高圧冷媒などのガスをシリンダ室に導入し、該ガスが膨張することによって回転軸の駆動力を発生させる膨張機にも適用できるし、ポンプにも適用できる。
また、駆動機構(30)はケーシング(10)の内部に必ずしも収納しなくてもよく、ケーシング(10)の外部から圧縮機構(偏心回転形ピストン機構)(20)を駆動するようにしてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。