JP3783108B2 - 被加工物の稜にアールを施す加工方法 - Google Patents

被加工物の稜にアールを施す加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被加工物の稜線上のバリ取りあるいは稜にアール加工を施す方法に関し、特に工具の切刃の稜のアール加工に最適な加工方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
被加工物の稜線にアールを施すには、バリ取りあるいは比較的小さなアールを施す場合は被加工物と粒状砥材とを容器内に入れて回転又は振動を与えて相互のすり合わせで研磨するバレル研磨等の方法が行われている。
【0003】
また比較的大きな場合は把持された被加工物を研削砥石で研磨する方法が行われている。
特に稜にアールを施す被加工物が工具で図5に示すフインガカッタの替刃のような切削工具の切刃の逃げ面に沿う方向の特定の稜のみにアールを施したい場合には、図6に示すように総型砥石で研磨する方法。或いは砥石台を型板に倣わせ図7に示すように砥石を型板通りに移動させて研磨する方法がある。
また、ショットブラストにより特定の個所に粒体を打ちつけてアール加工を施す方法もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
バレル研磨の方法では、被加工物と砥材とが混合されて研磨するので特定の場所の稜のみアール加工を施すことは不可能であり、アールの大きさの制御がむつかしいという問題がある。しかも稜が3本以上集まる角部は極端に大きく研磨されるという問題がある。
また砥石で研磨する方法は、砥石の摩耗による変形が生じるため、上記替刃の場合、アール形状や左右の対称精度が悪くなり、砥石をしばしばツルーイングする必要がある。また面粗度の向上には更に細かい砥粒の砥石で仕上げなければならないという問題がある。
【0005】
また倣い研磨盤を用いるものでは型板を刃形に合わせて製作しなければならないという問題がある。
そしてこれらの研磨方法は被加工物を一個ずつ研磨するため時間がかかるという問題があった。
また、ショットブラストでは粒体の速度が速過ぎるため、稜以外の部分も変形しアール形状の制御がむつかしく、装置が大掛かりとなり騒音も大きいという問題がある。
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは面粗度を向上させ、能率良く且つアールを被加工物の所望の位置の稜に施す加工方法を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、粒状の砥材を入れた容器内で駆動源により回転可能に設けられ被加工物が外周上に突出して取り付けられた加工回転軸を回転させ、被加工物の研磨したい部分が砥材中を通過するようにして被加工物の研磨したい個所の稜にアールを施す加工方法であって、前記被加工物が切刃であり、該切刃の逃げ面側から前記砥材に食込むように前記加工回転軸を回転させるものである。
【0007】
被加工物のアールを施したい稜が砥材中を通過するので、この部のみが砥材との接触による摩耗でアールに加工される。多数個が一度に加工ができ能率的で安定したアール面が得られる。
ただし、ここでのアール面とは丸味のある面という意味で、曲率が一定の円弧面を限定するものではない。
【0008】
【発明の実施の形態】
【実施例】
本発明の実施例その1の側面図を示す図1a、同容器部分を省略し加工回転軸に切刃を取り付けた状態の正面図を示す図1b、切刃の取付角度をかえた時の側面図を示す図2にもとづき説明する。
【0009】
略半円状の2枚の側板とその間を帯状の円弧板で密着して形成し、上方に開口する容器1が図示しない機台に固定されている。少なくとも一方の側板(図1aの手前側)を透明としたものでもよい。
一方、機台に図示しない軸受で回転可能に軸承された加工回転軸2は容器1の一方の側板を貫通して容器1内に突出されている。そしてその先端部の円板装着軸部に装着される切刃取付円板3は、回転軸心に対して放射方向で外方に切欠いた複数個の切刃取付溝3aが等角度位置に(必ずしも等角度でなくてもよい)削設されている。切刃4(本実施例ではフインガカッタの替刃を示す)はすくい面が同じ向きで且つ外方突出量を等しい状態で着脱可能にボルト5で取り付けられている。
【0010】
この切刃取付円板3の複数板は加工回転軸2の円板装着軸に小径の当板6,7を介しナット8によって回転しないように固着されている。なおナットは加工回転軸のA方向の回転によって締まり勝手となるねじである。
容器1内には切刃取付円板3に固着した切刃4のアールを施したい部分が円板回転時に食い込む量の粒状の砥材9が底部にたまるように入れられている。
尚加工回転軸2と容器1との高さを調整可能に相対的に移動可能な構成とすることによって切刃の食い込み量を調整することも勿論実施できる。
【0011】
砥材は加工回転軸の回転に伴う切刃の回転により回転前方と左右両側に堆積する傾向にあるが、或る程度以上堆積すると自重で自然に崩れ落ち、傾斜面を形成する。この傾斜面が形成された状態でアール加工を施したい切刃の先端部分が砥材中を通過するよにう砥材の量、或いは加工回転軸と容器1の相対高さを調整する。
【0012】
砥材としてはアランダム(A),ホワイトアランダム(WA),グリーンカーボランダム(GC),ダイヤモンド(D)等の砥粒(砥粒の種類,粒度の異なるものを混合してもよい)、或いは砥粒を樹脂で結合し、砥粒より大き目の粒としたメディア等を用いることができる。比較的小さな面取りの場合は小さな砥粒、大きな面取りを行う場合はメディアの方が適し短時間で加工ができる。
【0013】
このように構成されているので、加工回転軸2を切刃の逃げ面側が先行する矢印A方向に回転させると、切刃4が下側に来たとき切刃の先端が砥材9をかき分けるように砥材中を通過する。
切刃4は逃げ面側から砥材9にくい込むため稜にアールが施される。しかし刃先線にはアール面が殆ど形成されず刃先線の鋭利さは損なわれない。
【0014】
例えば加工回転軸2を300r.p.mで回転させ、焼入れした高速度工具鋼の切刃に対し粒度46番のA砥粒を用いた場合、30分程で0.03mmアール相当のアール面取り加工ができた。
又同回転数で同切刃に対しGC砥粒とA砥粒とを樹脂で固めφ2×2としたメディアを用いた場合は、20分程で0.3mmアール相当のアール面取り加工ができた。
【0015】
さらにまた面取り量を大きくすることで隣接する稜のアール加工を連続して半円弧状とすることも可能である。勿論、各面を研削により形成した際に生じる稜上のバリ(砥かえり)も非常に簡単に除去することも可能である。
このようなアール加工によって短時間で多数の切刃の特定の稜に精度良く左右対称形のアール加工を同時に施すことが可能である。
切刃取付方向を図1の放射方向にかえ、図2のように半径方向に対してすべて同方向に同角度に大きく傾斜させたものは外周逃げ面の稜全長にアールが施される。
【0016】
【実施例】
本発明の実施例その2の容器の手前側面板を取り除いた側面図を示す図3a、容器を断面とした正面図を示す図3bにもとづき説明する。
図1a、図1bと同じものは同符号を付して説明を省略する。
円板装着軸部に装着した複数枚の切刃取付円板3は同径の当板6,7により切刃とともに挟持されるようにボルト11によって一体に締着されてナット8により固着されている。そしてナット8及びボルト11を緩めることによって切刃が着脱可能である。また容器1は砥材によって簡単に摩耗しない材料によって作られている。
【0017】
そして図3aの手前側の上半分と外周上半分1aが蓋となっており、円周方向一方側を蝶番12によって蓋は開閉可能で、その蓋の隙間には砥材9が飛び出さないようにパッキン14が介在されて他方側の引っかけ固定具13により密封容器となる。さらに容器1は後側の側板にボス部3bが形成されていて、加工回転軸2の上に容器側をシール17で保護した軸受16を介して加工回転軸2と同心に回転可能に支承されており図示しないモータによって加工回転軸の反対方向矢印B方向に回転されるようになっている。
そして容器の回転は適量入れられた砥材が空中に舞い上がらず且つ常に斜面を形成する程度の回転数で回転される。したがって砥材は回転によって攪拌される。この場合加工回転軸心,容器回転軸心は水平に保持されている。
【0018】
このように構成されているので、容器のB方向の低速回転に対して加工回転軸がA方向の逆方向に比較的高速正回転されると、切刃が下側に近づいたとき、切刃の先端が逃げ面側から砥材をかき分けるように侵入して砥材中を通過する。砥材と接触した部分の稜にアールが施される。
【0019】
実施例その1より砥材が十分に攪拌されるので加工が安定し、アール加工の時間が短縮される。
例えば実施例その1と同じ切刃に対し、同じメディアを用いて容器回転軸の回転数を30r.p.mとし、加工回転軸を300r.p.mとして加工した場合、15分ほどで0.3mmアール相当のアール加工ができた。
尚容器内の砥材の量は、前記傾斜面が形成された状態でアール加工を施したい切刃の先端部分が砥材中を通過するように調整されている。
また加工回転軸は同心的でなくても、所望のアール形状によっては両回転軸は平行でなくても、水平でなくても良い。さらに容器の回転方向は加工回転軸と同じ方向であっても実施可能である。
【0020】
【実施例】
本発明の実施例3は容器の手前側面板を取り除いた図4にもとづき説明する。シャーレ状の容器21は水平方向に揺動可能に設けられ、図示しないモータの偏心板と連結されている。容器21の上面に容器21と直角に軸受で回転可能に軸承された加工回転軸22を設ける。その下端には切刃取付円板23が取り付けられており、外周等間隔に加工回転軸と平行且つ下方を切欠いた切刃取付溝23aが削設されている。切刃24はボルト25により着脱可能である。そして切刃の先端はすべて同一水平面上に位置させる。
【0021】
容器21には切刃の稜にアールを形成したい部分が食い込む量の砥材が入れている。切刃の食い込み量は、加工回転軸または容器の何れかを上下調整するように構成することにより容易に決定される。勿論砥材の量を調整してもよい。
さらに切刃取付溝23aの方向は図2と同じ目的から、加工回転軸22に対してすべて同一方向に同角度傾斜させることも可能である。
【0022】
さらにまた加工回転軸は砥材を入れた容器に対して水平方向に相対的に揺動するように設けることも可能である。
このように構成されているので、加工回転軸を矢印C方向に回転させると切刃24の逃げ面側から砥材に侵入し稜にアールの加工が施される。容器21と加工回転軸22とを相対的に水平に揺動することで砥材攪拌作用がまんべんに行われ且つ砥材面も安定させうるのでアール加工が安定したものとなり、また回転中切刃は砥材から離脱しないので加工時間が一層短縮される。
【0023】
尚実施例では特定の切刃により説明したが、丸鋸,フライス,バイト等にも応用されうる。例えば、丸鋸そのものを加工回転軸に装着して刃先を加工することも可能である。また、乾式で説明したが、砥粒の流動性に不都合が生じない相当量の液体(研削液等)を加え、湿式で行うこともできる。これにより、加工中の温度上昇や粉塵の飛散が防止できる。
【0024】
【発明の効果】
一度に多数の被加工物にアール加工ができ極めて能率的である。また所定位置に必要なアールの加工が施される工具の場合は逃げ面側から砥材に侵入させるので切刃の鋭利さを損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例その1を示す図で、aは手前側の側板を除いた側面図、bは容器を外した状態の正面図である。
【図2】本発明の実施例その1の他の態様で、切刃取付方向を傾斜させた場合の手前側の側板を除いた図である。
【図3】本発明の実施例その2を示す図で、aは手前側の側板を除いた側面図、bは縦断面図である。
【図4】実施例その3を示す図で、手前側の側板を除いた図である。
【図5】切刃としてフィンガカッタの替刃を示す図で、aは側面図、bは正面図、cは刃先の拡大図である。
【図6】従来の総形砥石によるアール研磨の図である。
【図7】従来の倣い研磨によるアール研磨の図である。
【符号の説明】
1,21 容器
2,22 加工回転軸
3,23 切刃取付円板
4,24 切刃
9 砥材

Claims (1)

  1. 粒状の砥材を入れた容器内で駆動源により回転可能に設けられ被加工物が外周上に突出して取り付けられた加工回転軸を回転させ、被加工物の研磨したい部分が砥材中を通過するようにして被加工物の研磨したい個所の稜にアールを施す加工方法であって、前記被加工物が切刃であり、該切刃の逃げ面側から前記砥材に食込むように前記加工回転軸を回転させることを特徴とする被加工物の稜にアールを施す加工方法。
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