JP3783008B2 - 脂肪族ポリエステル共重合体、成形物並びに農業用マルチフィルム - Google Patents
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Description
汎用性の高い生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル共重合体が注目されており、最近ではポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などが上市されている。
また、ポリブチレンサクシネート(PBS)やポリエチレンサクシネート(PES)に代表される脂肪族ポリエステル共重合体は、ポリオレフィン代替可能な生分解性プラスチックとして期待されている。PBSがポリエチレンに近い特性を有していることから、フィルムやシート等の用途に適しており、特に農業用マルチフィルム等に利用されている。それに対し、PESは、同一分子量のPBSと比較して溶融粘度が小さいため、射出成形用途にも期待されている。
グリコール成分としてエチレングリコールを使用したPESのような共重合体を製造する場合、1,4−ブタンジオールを使用した場合と比較して、反応が遅くなってしまい、高分子量体を得るのに長時間必要とするという問題があった。このため、得られたポリマー中には副反応により形成されたエーテル結合等の異種結合が多く、耐熱性や色相等の品質面で劣るものであった。
すなわち、本発明の目的は、エチレングリコールを主成分とする脂肪族ジオールとコハク酸のような脂肪族ジカルボン酸類および必要に応じて加えられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸類とを共重合することにより、副反応により形成された異種結合が少なく、耐熱性及び色相に優れた高分子量の脂肪族ポリエステル、従来のPESに比較して製造時間を短縮した製造方法、およびそれを成形してなる成形物を提供することにある。
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−(CH2)2−O− (2)
−O−R3−O− (3)
[式中、R3は炭素数3〜12の二価脂肪族基を表す。]
及び必要に応じて下記一般式(4)で示される繰返し単位:
−CO−R4−O− (4)
(式中、R4は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなり、重量平均分子量が50,000以上である脂肪族ポリエステル共重合体を提供する。
本発明の第2は一般式(2)で示される繰り返し単位と一般式(3)で示される繰り返し単位合計100モル%のうち、一般式(2)で示される繰り返し単位が80〜98モル%である上記発明1に記載の高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第3は一般式(4)で示される繰り返し単位の共重合体に占めるモル分率が、0.01〜0.25である上記発明1または2に記載の高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第4は一般式(1)で示される繰返し単位がコハク酸、一般式(2)で示される繰返し単位がエチレングリコール及び一般式(3)で示される繰返し単位が1,4−ブタンジオールにより生じるものである上記発明1または2に記載の高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第5は一般式(4)で示される繰返し単位が、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコール酸および乳酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の残基である上記発明1〜4のいずれかに記載の高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第6は脂肪族ポリエステル樹脂の酸価(末端カルボキシル基含量)が2.0(mgKOH/g)未満であり、かつ、副反応により形成されたエーテル結合濃度が10.0×10-6mol/gである上記発明1〜5のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体を提供する。
本発明の第7は触媒として2A族、2B族、または4A族元素化合物を使用する上記発明1〜6のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体を提供する。
本発明の第8は上記発明1〜7のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体を成形してなる成形物を提供する。
本発明の第9は成形物がフィルムまたはシートである上記発明8に記載の成形物を提供する。
本発明の第10は上記発明1〜7のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体を成形してなる農業用マルチフィルムを提供する。
<脂肪族ポリエステル共重合体>
本発明の脂肪族ポリエステル共重合体は前記一般式(1)、(2)、(3)、および必要に応じて使用される化合物に由来する(4)で示される繰返し単位を有しており、重量平均分子量(Mw)が50,000以上、通常70,000〜200,000、好ましくは70,000〜150,000のものである。
また、本発明の脂肪族ポリエステル共重合体は、重量平均分子量5,000〜50,000の低分子量のポリエステルが、ポリイソシアネート化合物等の後述する連結剤により結合され、重量平均分子量(Mw)が上記範囲に高分子量化された脂肪族ポリエステル共重合体であってもよい。
下記一般式(1)
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
で示される繰返し単位を37.5〜49.5モル%
下記一般式(2)
−O−(CH2)2−O− (2)
で示される繰返し単位
及び下記一般式(3)
−O−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数3〜10の二価脂肪族基を表す。)
で示される繰返し単位[一般式(2)で示される繰り返し単位と一般式(3)で示される繰り返し単位合計100モル%のうち、一般式(2)で示される繰り返し単位が80〜98モル%]を含んでおり、さらに必要に応じて下記一般式(4)で示される繰返し単位:
−CO−R4−O− (4)
(式中、R4は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)を1〜25モル%含んでおり、重量平均分子量は50,000以上である。
上記くり返し単位である式(1)を形成する化合物としては、脂肪族ジカルボン酸、またはその無水物、又はそのモノまたはジエステル体が挙げられ、下記一般式(1´)で表される。
R5−OCO−R1−COO−R6 (1´)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基、R5およびR6は水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族基を表す。R5およびR6は同一でも異なっていてもよい。)
R1で示される二価脂肪族基としては、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基であり、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−(CH2)6−等の炭素数2〜6の直鎖状低級アルキレン基が挙げられる。
R5およびR6で示される脂肪族基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
中でも、R5およびR6は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の低級アルキル基である。このようなジアルキルエステルとしては、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジメチル等が挙げられる。これらのものは単独で用いてもよいし2種以上組合わせて用いてもよい。
くり返し単位(3)を形成する化合物としては、脂肪族ジオールが挙げられる。
脂肪族ジオールは下記一般式(3´)で表わされる。
HO−R3−OH (3´)
(式中、R3は炭素数3〜12の二価脂肪族基を表す。)
二価の脂肪族基としては、炭素数3〜12、好ましくは3〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、−(CH2)3−、−(CH2)4−等の炭素数3〜6の直鎖状低級アルキレン基である。 具体的な脂肪族ジオールとしては、例えば、また、二価脂肪族基R3は反応に不活性な置換基、例えば、アルコキシ基やケト基等を有することができる。
具体的な脂肪族ジオールとしては、例えば1,3‐プロパンジオール、1,2‐プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を用いることができる。中でも、1,4−ブタンジオールを使用することが好ましい。これらのものは単独でも、2種以上組合せて用いてもよい。
R7OCO−R4−OH (5)
(式中、R4は炭素数1〜10の二価脂肪族基、R7は水素原子または炭素数1〜6の脂肪族基を表す。)
式(6)で、二価脂肪族基R4としては、好ましくは、炭素数2〜10、より好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。
式(5)で、R7は水素、又は脂肪族基である。脂肪族基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基が挙げられる。
前記ヒドロキシカルボン酸はその2分子が結合した環状二量体エステルであることができる。その具体例としては、グリコール酸から得られるグリコリドや、乳酸から得られるもの等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、例えば、上記ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル等や、酢酸エステル等が挙げられる。
式(6)で、二価脂肪族基R4としては、炭素数4〜10、好ましくは4〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ラクトン類の具体例としては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトンなどの各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状エステル等を挙げることができる。これらは2種以上のモノマーを混合して使用してもよい。
用いられる触媒としては2A族、2B族、または4A族元素化合物が好ましい。具体的には、Mg、Ca、Ba、Ti、Zr、Znなどの金属を含む金属化合物、例えば、有機酸塩、金属アルコキシド、金属錯体(アセチルアセトナートなど)等の有機金属化合物;金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などの無機金属化合物が例示される。これらの金属化合物触媒の中でも、チタン化合物、特に、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタンアルコキシド等の有機チタン化合物が好ましい。これらの触媒は2種以上併用することもできる。
[2]/[3]は80/20〜98/2、好ましくは、85/15〜95/5である。本発明は[2]/[3]を上記のような一定の比率で使用することを特徴としている。
[1]/([2]+[3])は1/1.01〜1/1.25、好ましくは、1/1.02〜1/1.02、さらに好ましくは、1/1.03〜1/1.15である。
[4]/([1]+[2]+[3]+[4])は0.25以下、好ましくは、0.20以下、さらに好ましくは、0.15以下である。
([1]、[2]、[3]、[4]は、それぞれくり返し単位(1)、(2)、(3)、(4)を形成する化合物の使用モル数を示す。)
[2]/[3]が80/20より小さい場合は、得られるポリマーは耐熱性が低いものとなり、[2]/[3]が98/2より大きい場合は、脂肪族ポリエステル共重合体を製造するために要する時間が長くなり、しかも、得られた脂肪族ポリエステル共重合体が着色するので、好ましくない。
[1]/([2]+[3])が1/1.25より小さい場合は、反応に長時間必要となり、1/1.01より大きい場合は、高分子量体が得られなくなり、好ましくない。
また、上記式中の[4]/([1]+[2]+[3]+[4])は、脂肪族ポリエステル共重合体中に含まれるくり返し単位(4)のモル分率を表し、くり返し単位(4)を形成する化合物の種類等によっては、上記の数値が0.25より大きい場合は、得られる共重合体の融点が低くなりすぎたり、柔軟性が低下するため実用に不向きである場合があるので、好ましくない。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。
本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。また、実施例における各特性値は以下の方法により測定したものである。
(1)分子量
検出器として示差屈折率系と差圧粘度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンから作成した汎用較正曲線を用いて、重量平均分子量(Mw)を求めた。溶離液にはクロロホルムを用い、カラムはShodex806Lを3本連結したものを用いた。
(2)酸価
JIS K0070に基づいて測定した。
(3)エーテル結合濃度
1H−NMRにより測定したエーテル結合に対応するピークの面積から算出した。
パドル翼を備えたジャケット付き縦型反応槽内を窒素置換した後、コハク酸40.00Kg、1,4−ブタンジオール1.69Kg、エチレングリコール20.91Kg、ε‐カプロラクトン2.03Kg、チタンテトライソプロポキシド96.28g、リン酸水素マグネシウム水和物(MgHPO4・3H2O)19.68gを仕込み、窒素雰囲気下で、室温から徐々に240℃まで昇温した。昇温開始後、5.0時間で留出液の量が12.0Kgになった時点でエステル化反応を終了した。
続いて、得られた脂肪族ポリエステル低分子量体を高粘度バッチ式重合機に移し、反応液の温度を240℃に保ち撹拌し、常圧から徐々に減圧にして最終的に1.0mmHg(133Pa)で6.5時間撹拌して重縮合反応を行った。反応生成物を重合槽から排出し、水槽で冷却し、カッターで裁断してペレット状のポリマーを得た。このポリマーの重量平均分子量は109,000、NMRから求めたエーテル結合濃度は8.7×10-6mol/gであった。
パドル翼を備えたジャケット付き縦型反応槽内を窒素置換した後、コハク酸40.00Kg、エチレングリコール22.08Kg、ε‐カプロラクトン2.03Kg、チタンテトライソプロポキシド96.28g、リン酸水素マグネシウム水和物(MgHPO4・3H2O)19.68gを仕込み、窒素雰囲気下で、室温から徐々に240℃まで昇温した。昇温開始後、5.25時間で留出液の量が12.1Kgになった時点でエステル化反応を終了した。
続いて、得られた脂肪族ポリエステル低分子量体を高粘度バッチ式重合機に移し、反応液の温度を240℃に保ち撹拌し、常圧から徐々に減圧にして最終的に1.0mmHg(133Pa)で8.0時間撹拌して重縮合反応を行った。反応生成物を重合槽から排出し、水槽で冷却し、カッターで裁断してペレット状のポリマーを得た。このポリマーの重量平均分子量は65,000、NMRから求めたエーテル結合濃度は10.6×10-6mol/gであった。
Claims (8)
- 下記一般式(1)、(2)、(3)で示される繰返し単位
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−(CH2)2−O− (2)
−O−R3−O− (3)
[式中、R3は炭素数3〜12の二価脂肪族基を表す。]
及び必要に応じて下記一般式(4)で示される繰返し単位:
−CO−R4−O− (4)
(式中、R4は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなり、
一般式(2)で示される繰り返し単位と一般式(3)で示される繰り返し単位合計100モル%のうち、一般式(2)で示される繰り返し単位が80〜98モル%であり、
重量平均分子量が50,000以上である脂肪族ポリエステル共重合体。 - 一般式(4)で示される繰り返し単位の共重合体に占めるモル分率が、0.01〜0.25である請求項1に記載の高分子量脂肪族ポリエステル。
- 一般式(1)で示される繰返し単位がコハク酸、一般式(2)で示される繰返し単位がエチレングリコール及び一般式(3)で示される繰返し単位が1,4−ブタンジオールにより生じるものである請求項1に記載の脂肪族ポリエステル共重合体。
- 一般式(4)で示される繰返し単位が、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコール酸および乳酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の残基である請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体。
- 触媒として2A族、2B族、または4A族元素化合物を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体を成形してなる成形物。
- 成形物がフィルムまたはシートである請求項6に記載の成形物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体を成形してなる農業用マルチフィルム。
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