JP3782884B2 - エンジンのクランク角検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランク角検出装置に関し、詳しくは、エンジンの各気筒の制御基準位置を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各気筒毎の制御基準となる位置(例えば4気筒では180 °CA)毎にパルス信号(基準角度信号)を出力するカムセンサと、単位クランク角度毎にパルス信号(単位角度信号)を出力するクランク角センサとを設け、前記カムセンサから基準角度信号が出力された直後の単位角度信号(又は直後の単位角度信号から所定数だけ後の単位角度信号)を制御基準位置として、点火時期や燃料噴射タイミングを制御することが行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成によると、カムセンサとクランク角センサとの間の信号発生タイミングのずれが、最大でもクランク角センサの検出信号の1周期分しか許容されないため、クランク角センサの角度分解能を保持したまま、制御基準位置を精度良く検出させるのには、センサの製造ばらつきや取り付けばらつきを厳しく制限するか、又は、個々に調整作業を行う必要が生じるという問題があった。
【0004】
上記問題点は、基準角度信号と単位角度信号とを、1つの信号にまとめることで解消し得る。例えば、単位角度信号に信号抜け部分を設定し、この単位角度信号の周期比に基づいて前記信号抜け部分を検出して、これに基づいて例えば信号抜け後の最初又は次の単位角度信号を基準位置とする方法であれば、少なくとも信号間の位相ずれの問題は生じない。
【0005】
但し、上記の構成では、周期比の演算が制御装置における演算負荷を大きくしてしまうという問題があり、基準信号を出力するカムセンサと、単位角度信号を出力するクランク角センサとの組み合わせにより、両センサの信号相関から制御基準位置を求める構成において、検出信号間の位相ずれの許容代を、角度分解能を低下させることなく増大できるクランク角検出装置の提供が望まれていた。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、基準信号を出力するカムセンサと、単位角度信号を出力するクランク角センサとの組み合わせによって制御基準位置を検出する構成において、単位角度検出の分解能を低下させることなく、検出信号間の位相ずれの許容代を広げることができるクランク角検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1記載の発明は、各気筒の行程位相差に相当する基準位置毎に、該基準位置に対応する検出信号を先頭として気筒番号を示す数の検出信号を出力するカムセンサと、クランク軸の回転に同期した検出信号を出力する手段であって、一定角度毎に検出信号を出力するよう構成されると共に、前記カムセンサの先頭検出信号の発生毎に前記検出信号に抜けが生じるよう構成されるクランク角センサと、前記クランク角センサからの検出信号の出力時にカウンタの値をカウントアップさせるカウントアップ手段と、前記カムセンサからの検出信号の出力時に前記カウンタの値をクリアするクリア手段と、前記カムセンサからの検出信号の出力時に、前記クリア手段でクリアされる前のカウント値を参照し、該カウント値が予め設定された閾値よりも大きいときに、そのときの前記カムセンサからの検出信号を先頭の検出信号として検出する先頭信号検出手段と、該先頭信号検出手段による検出結果に基づいて前記クランク角センサの検出信号から制御基準位置を検出する制御基準位置検出手段と、を含んで構成される。
【0008】
かかる構成によると、カムセンサからの検出信号の発生間隔において、カウンタは、クランク角センサからの検出信号の発生数をカウントすることになり、カウンタの値はカムセンサからの検出信号の発生間隔(角度周期)を示すことになる。従って、気筒番号を示す数の一連の検出信号の周期と、該一連の検出信号の最後から先頭の検出信号までの周期との違いを、クリアされる前のカウント値が予め設定された閾値よりも大きいか否かに基づいて判断して、先頭の検出信号を検出できることになる。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記制御基準位置検出手段が、前記カムセンサから基準位置に対応して出力される検出信号の後に、最初にクランク角センサから出力された検出信号を制御基準位置とする構成とした。
かかる構成によると、クランク角センサの検出信号の発生間隔が広くなっている部分において、カムセンサから基準位置に対応する検出信号が出力されると、その後に最初にクランク角センサから出力された検出信号、即ち、抜けている信号の後の検出信号が制御基準位置として検出されるから、カムセンサから基準位置に対応して出力される検出信号の発生タイミングが、信号抜け部分を挟む検出信号を越えてずれない限り、制御基準位置がずれることはない。
【0012】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、検出信号の数によって気筒番号を示すカムセンサからの検出信号の発生間隔で、クランク角センサからの検出信号の発生数をカウントさせることで、カムセンサから出力される検出信号のうちの基準位置に対応する先頭の検出信号を検出することができ、以って、カムセンサからの検出信号に基づいて基準位置の検出と気筒判別とを簡便に行えるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の発明によると、制御基準位置とすべきクランク角センサの検出信号を、比較的大きな信号発生タイミングのずれが発生しても、確実に検出させることができるという効果がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態におけるエンジンを示す図であり、この図に示すエンジン1は、後述するように、筒内噴射式の火花点火ガソリンエンジンである。但し、エンジン1を、筒内噴射式のガソリンエンジンに限定するものではなく、ポート噴射を行わせるエンジンであっても良い。
【0015】
エンジン1には、エアクリーナ2を通過した空気が、スロットル弁3で計量され、吸気弁4を介してシリンダ内に吸引される。
電磁式の燃料噴射弁5は燃焼室内に直接燃料(ガソリン)を噴射する構成であり、該燃料噴射弁5から噴射された燃料によってシリンダ内に混合気が形成される。
【0016】
前記混合気は、点火栓6による火花点火によって着火燃焼し、燃焼排気は、排気弁7を介してシリンダ内から排出され、触媒8で浄化された後に大気中に放出される。
マイクロコンピュータを内蔵したコントロールユニット10は、前記燃料噴射弁5による燃料噴射及び点火栓6による点火(図示しない点火コイルへの通電)を制御するものであり、前記コントロールユニット10には各種のセンサからの信号が入力される。
【0017】
前記各種センサとして、エンジン1の吸入空気流量Qを検出するエアフローメータ11、排気中の酸素濃度に感応して燃焼混合気の空燃比を検出する酸素センサ15,前記スロットル弁3の開度TVOを検出するスロットルセンサ16、冷却水温度Twを検出する水温センサ17が設けられている。
また、クランク軸に軸支されたシグナルプレートからクランク軸の回転に同期した検出信号を取り出すセンサであって、クランク角10°毎(一定角度毎)にポジション信号POS(検出信号)を出力するクランク角センサ12が設けられている。
【0018】
前記クランク角センサ12は、TDCを基準としてクランク角10°毎にポジション信号POS10を出力するものであるが、図2に示すように、BTDC60°に対応する1パルスだけ前記ポジション信号POS10が出力されずに信号抜けになるように構成されている。
また、カム軸に軸支したシグナルプレートからカム軸の回転に同期した検出信号を取り出すセンサであって、各気筒の行程位相差に相当する角度毎に気筒番号と同数のパルス信号CAM(検出信号)を発生するカムセンサ18が設けられている。
【0019】
本実施の形態におけるエンジン1を、直列4気筒エンジンとした場合には、各気筒の行程位相差が180 °CAとなり、点火順を#1→#3→#4→#2の順とすると、前記カムセンサ18からのパルス信号は、図2に示すように、180 °CA毎に、1パルス→3パルス→4パルス→2パルスの出力を繰り返すことになり、パルス信号の出力パターンの1周期である720 °CAで10パルスが出力される。ここで、前記180 °CA毎(基準位置毎)に出力されるパルス群の先頭パルス(基準信号)の出力位置が、前記ポジション信号POS10の抜けが生じるBTDC60°に略一致するように設定してある。
【0020】
コントロールユニット10は、図2に示すように、前記カムセンサ18から180 °CA毎に出力される先頭パルスの立ち下がりを検出すると、その後に最初に入力されたポジション信号POS10の位置を基準位置(BTDC50°)として判定し、前記基準位置(BTDC50°)から更にポジション信号POS10で12個後ろの位置、即ち、BTDC110 °(ATDC70°)の位置を最終的な制御基準位置REFとして、点火制御,燃料噴射タイミングの制御に用いる。
【0021】
尚、本実施の形態では、BTDC110 °の位置を最終的な制御基準位置REFとする構成としたが、このBTDC110 °は、先頭パルスの立ち下がり後に最初に入力されたポジション信号POS10に基づき検出される基準位置(BTDC50°)を基準として検出されるものであるから、BTDC50°をポジション信号POS10における実質的な制御基準位置と見做すことができる。また、単位クランク角度,ポジション信号POS10の抜け位置,基準位置,制御基準位置REFを上記に示した値に限定するものではないことは明らかである。
【0022】
次に、コントロールユニット10によって行われる前記先頭パルス,基準位置及び制御基準位置REFの検出の様子を、図3を参照しつつ詳細に説明する。
前記ポジション信号POS10の立ち下がりエッジが入力される毎に、カウンタCNTFSTの値(カウント値)が1アップされ(カウントアップ手段)、また、前記カウンタCNTFSTは、前記カムセンサ18からのパルス信号の立ち下がりエッジが入力される毎にゼロにクリアされるようになっている(クリア手段)。
【0023】
ここで、前記カムセンサ18からのパルス信号の立ち下がりエッジが入力されると、前記カウンタCNTFSTをクリアする前に、前記カウンタCNTFSTの値と予め設定された閾値(例えば5)とを比較し、前記カウンタCNTFSTの値が閾値以上であれば、そのときに前記カムセンサ18からの入力されたパルス信号の立ち下がりエッジが先頭パルスであると判定し(基準信号検出手段)、前記カウンタCNTFSTの値が閾値未満であれば、前記先頭パルスに続いて出力されたパルスの立ち下がりエッジであると判定し、該判定の後に前記カウンタCNTFSTをゼロにクリアする。
【0024】
前記カムセンサ18から出力されるパルス信号の発生周期は、先頭パルスに続いて出力される気筒番号に対応する数のパルス信号間では比較的短いのに対し、最後のパルス信号から次の先頭パルスまで間隔は大幅に大きいので、前記閾値を、一連のパルス信号の間隔ではカウントアップされることのない値に設定することで、前記カウンタCNTFSTの値が閾値以上のときに先頭パルスを判定できるものである。
【0025】
換言すれば、クランク角センサ12における一定周期の出力パターンと、カムセンサ18から出力されるパルス信号CAMの出力パターンとの組み合わせから、カムセンサ18から出力されるパルス信号CAMの周期変化のパターンを捉えることができ、前記周期変化を前記カウンタCNTFSTの値に基づいて検出するものである。
【0026】
尚、前記閾値と比較させる前記カウンタCNTFSTの初期値は0に設定され、エンジンの始動によりポジション信号POS10が発生すると、カウントアップが行われるから、スタートスイッチのON位置が、先頭パルスから前記閾値以上に前であれば、最初の先頭パルスから検出することが可能である。
先頭パルスを判定すると、基準位置信号#FSTCAMを立ち上げ、その後に最初に入力されたポジション信号POS10の立ち下がりエッジに同期させて、前記基準位置信号#FSTCAMを立ち下げ、この基準位置信号#FSTCAMの立ち下がりエッジを、基準位置(BTDC50°)とする(制御基準位置検出手段)。
【0027】
前記カウンタCNTFSTとは別に、ポジション信号POS10の立ち下がりエッジが入力される毎に1アップされるカウンタCRACNTが設けられており、このカウンタCRACNTは、前記基準位置信号#FSTCAMの立ち下がりエッジに同期してゼロにクリアされるようにしてある。
そして、前記カウンタCRACNTが12になると、そのときのポジション信号POS10の立ち下がりエッジを、制御基準位置REFとして判定する。
【0028】
更に、前記カムセンサ18からのパルス信号CAMの立ち下がりエッジが入力される毎に1アップされるカウンタCAMCNTが設けられており、前記カウンタCRACNTが気筒判別タイミングとして設定された所定値(例えば8)になると、前記カウンタCAMCNTの値を参照して気筒判別CYLCSを行い、該気筒判別後に前記カウンタCAMCNTをゼロにクリアする。
【0029】
前記制御基準位置REFでは、前記気筒判別CYLCSの結果を読み込んで更新し、該更新された気筒判別CYLCSに基づいて、制御基準位置REFを基準とした点火時期,噴射タイミングの制御等を行う。
上記のように、先頭パルス(基準信号)が検出された後に最初に入力したポジション信号POS10を基準位置とするため、カムセンサ18におけるパルス信号CAMの発生タイミングとポジション信号POS10の発生タイミングがずれると、本来基準位置として検出すべきポジション信号POS10とは異なるポジション信号POS10を基準位置として検出する可能性がある。
【0030】
しかし、上記のように、ポジション信号POS10の信号抜け部分で先頭パルスが発生するようにしてあれば、信号抜けによってポジション信号POS10の信号間隔が広くなった部分内でのタイミングのずれは基準位置の検出に影響を与えないことになり、ポジション信号POS10を抜けなく全て単位クランク角度毎に出力させる場合よりも、前記タイミングずれの許容代が2倍に広がることになり、然も、ポジション信号POS10による角度分解能を低下させることもない。
【0031】
尚、カムセンサ18,クランク角センサ12は、光学式、電磁ピックアップを用いるもの、更にはホール素子を用いる構成のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるエンジンのシステム構成を示す図。
【図2】実施の形態における基準位置検出の概要を示すタイムチャート。
【図3】実施の形態における基準位置検出の詳細を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
5 燃料噴射弁
6 点火栓
10 コントロールユニット
12 クランク角センサ
18 カムセンサ

Claims (2)

  1. 各気筒の行程位相差に相当する基準位置毎に、該基準位置に対応する検出信号を先頭として気筒番号を示す数の検出信号を出力するカムセンサと、
    クランク軸の回転に同期した検出信号を出力する手段であって、一定角度毎に検出信号を出力するよう構成されると共に、前記カムセンサの先頭検出信号の発生毎に前記検出信号に抜けが生じるよう構成されるクランク角センサと、
    前記クランク角センサからの検出信号の出力時にカウンタの値をカウントアップさせるカウントアップ手段と、
    前記カムセンサからの検出信号の出力時に前記カウンタの値をクリアするクリア手段と、
    前記カムセンサからの検出信号の出力時に、前記クリア手段でクリアされる前のカウント値を参照し、該カウント値が予め設定された閾値よりも大きいときに、そのときの前記カムセンサからの検出信号を先頭の検出信号として検出する先頭信号検出手段と、
    該先頭信号検出手段による検出結果に基づいて前記クランク角センサの検出信号から制御基準位置を検出する制御基準位置検出手段と、
    を含んで構成されたことを特徴とするエンジンのクランク角検出装置。
  2. 前記制御基準位置検出手段が、前記カムセンサから基準位置に対応して出力される先頭の検出信号の後に、最初にクランク角センサから出力された検出信号を制御基準位置とすることを特徴とする請求項1記載のエンジンのクランク角検出装置。
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