JP3782737B2 - 椅子の張り構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子のクッション体を支持するシェルに、クッション体を着脱可能に取り付ける椅子の張り構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
椅子の分別廃棄時や補修、クリーニング時における椅子カバーの分離を容易にすることは、例えば特開２００１ー５４４３８号公報、特開２００１ー２９９４９４号公報等に記載されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者では、クッション材は別体のものであり、これを覆う布製の椅子カバーを取り外し可能に取り付けている。また、座部を覆う椅子カバーの三方に取付用芯材を取り付けて、これを座フレームすなわちシェルの裏面に形成した溝に押し込んで固定し、椅子カバーの残りの一方にいくつかの係止用突起を設けて、これらの係止用突起をシェルの係止孔に差し込んで固定している。このような構造では、クッション材をくるめ込む作業及び三方にわたる溝に芯材を押し込む作業に手間がかかり、面倒である。
【０００４】
また、後者では、上部に三日月形材料部分を袋状に取り付けた背凭れクッション組立体を、背凭れに着脱式に取り付けている。このような構造では、座者が背を凭せ掛けた際、クッション組立体が上方にずれる傾向があり不具合である。殊に、このような構造を座部に適用した場合には、座者が、使用中クッション組立体に体重とともに前後動の力を加えるので、クッション組立体の固定がなされにくい。
【０００５】
本発明は、上述の問題点に鑑み、クッション材と表皮材とからなるクッション体を、椅子のシェルに着脱可能に、かつ確実に、しかも簡単かつ迅速に取り付けることができるようにした椅子の張り構造を提供することを目的としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
（１）椅子のクッション体を支持するほぼ水平とした座用のシェルの前端縁部に、複数の透孔を左右方向に並べて設けるとともに、各透孔の中央に、両端が前記シェルと一体をなす軸部を設け、かつ前記クッション体の裏面側に設けられた支持板に、前記軸部に係脱可能な係合受部を突設し、さらに、クッション体の前部裏面側に、後方に開口する袋部を設け、該袋部により、前記透孔を含めてシェルの前部裏面を覆うようにする。
【０００７】
（２）上記(１)項において、シェルの前部裏面側を覆う袋部の後端縁の後方近傍において、前記シェルに、左右方向に長い下向きのリブを突設する。
【０００８】
（３）上記(２)項において、大径孔と該大径孔に連続する小径孔とからなる複数のだるま孔を、前記小径孔を前にしてシェルの後端縁部に設けるとともに、クッション体の後部裏面側に設けられた支持板に、前記だるま孔に係止される有頭軸を突設する。
【０００９】
（４） 上記(３)項において、だるま孔の頸部の間隔を、有頭軸の軸部の外径より若干小とする。
【００１０】
【発明の実施の形態】
図１〜図３は、本発明の張り構造の一実施形態を備えた椅子を示す図で、図１は、その側面図、図２は、図１の椅子の部分拡大図で、その座部のクッション体をシェルから離した状態で示す図、図３は、座部のシェルからクッション体を取り外した椅子の平面図である。
【００１１】
これらの図に示されるように、この椅子は、キャスター付きの脚(１)に立設された支基(２)の上に、座部のシェル(３)を取り付け、このシェル(３)の上にクッション体(４)を取り付けてなるものである。なお、支基(２)の後方には、背凭れ(５)が取り付けられている。
【００１２】
シェル(３)は、好適には合成樹脂材料の一体成型品であり、図２から明らかなように、その前端縁部(3a)が若干下方に曲がっており、図３に示すように、ここに３個の透孔(６)が左右方向に並べて穿設されている。
図４に拡大して示すように、透孔(６)は矩形の孔であって、その中央部に、左右方向に延びる丸棒状の軸部(７)が、その左右の端部をシェル(３)と一体化させて形成されている。なお、軸部(７)は、別体のものをシェル(３)に固着して形成してもよい。
【００１３】
図３に示すように、シェル(３)の後端縁部には、左右方向に長い長円形（楕円形または円形でもよい）の大径孔と、その前部中央に連続する円形の小径孔とからなる３個のだるま孔(８)が、左右方向に並べて穿設されている。
このだるま孔(８)は、図５に拡大して示すように、大径孔と小径孔との境目部分である頸部(8a)が、左右いずれの側においても僅かに内方に突出するようにされている。
【００１４】
シェル(３)の裏面には、図４及び図５に示すように、縦横に走る補強用のリブが設けられているが、ここでは、シェル(３)の前端縁部において透孔(６)の後方に左右方向に延びるリブ(９)が重要な意味を有している。
【００１５】
図６〜図８に示すように、クッション体(４)は、成型されたポリウレタン発泡体のようなクッション材(10)を、布材または合成樹脂製シート等のような表皮材(11)により被包してなるものである。
【００１６】
また、クッション体(４)は、その前端縁側の裏面を二重に覆い後方を開放する表皮材(11a)を有しており、この表皮材(11a)により袋部が形成されている。袋状の表皮材(11a)は、前述のシェル(３)の左右方向に延びるリブ(９)の手前で終わっている。
【００１７】
クッション材(10)の前端縁側には、プラスチック成型品である左右方向に延びる支持板(12)が裏面に埋め込まれており、この支持板(12)と一体に形成した係合受部(13)が表皮材(11)を貫いて下方に突出している。
【００１８】
係合受部(13)は、前述のシェル(３)の透孔(６)に対応する位置に設けられており、また、軸部(７)に嵌合する断面ほぼＣ字状をなしている。係合受部(13)の開口部の間隔は、軸部(７)の外径よりも僅かに狭く設定されている。このため、軸部(７)と係合受部(13)とは、弾性的に嵌合可能であり、かつ係合受部(13)は、嵌合後透孔(６)内に収容される。
【００１９】
クッション材(10)の後端縁側には、プラスチック成型品である左右方向に延びる支持板(14)が裏面に埋め込まれており、この支持板(14)と一体に形成した有頭軸(15)が表皮材(11)を貫いて下方に突出している。
【００２０】
有頭軸(15)は、前述のシェル(３)のだるま孔(８)に対応する位置に設けられており、その軸部(15a)は、だるま孔(８)の頸部(8a)の間隔よりも僅かに大きい径を有し、軸部(15a)が、ここを弾性的に乗り越えて小径孔に進入できるようになっている。
【００２１】
クッション体(４)をシェル(３)に取り付ける際には、図９に示すように、クッション体(４)の前端縁部の袋状表皮材(11a)を、シェル(３)の前端縁部に下から被せて、袋部の中に入ったシェル(３)の軸部(７)に、支持板(12)の係合受部(13)を押しつけて係合させ、係合受部(13)の弾性により軸部(７)を把持させて、クッション体(４)の前部をシェル(３)の前部に装着する。
【００２２】
ついで、クッション体(４)の後端縁部を後方に引っ張って張りを与えながら、クッション体(４)の後端縁部における支持板(14)の有頭軸(15)の頭部を、シェル(３)の後端縁部のだるま孔(８)の長円形ないしは楕円形の基部に差し入れ、次いで、引っ張っていた手を離すと、有頭軸(15)の軸部(15a)は、だるま孔(８)の頸部(8a)を弾性的に乗り越えて、だるまの頭部すなわち小径孔内へと若干前方に戻って、ここに保持され、図７に示す取付状態となる。
【００２３】
クッション体の取り外しは、上述と逆手順に行うことにより、簡単かつ迅速に行なうことができる。
なお、上述においては、本発明の張り構造を、椅子の座部分に適用する例を示したが、背凭れにおいても同様に適用することができる。
【００２４】
【発明の効果】
請求項１記載の発明によれば、クッション体側の係合受部を、シェル側の軸部に押しつけて係合させるだけで、クッション体を簡単かつ確実に取り付けることができ、また、係合受部が軸部から離脱するように、クッション体をシェルから引き剥がすだけで、それらを簡単かつ迅速に分離することができ、椅子の廃棄時に、部品を材料別に分別するのに便利である。また、クッション体側にシェルとの係合のための突起物が形成されないので、クッション性を損なうことがない。
【００２５】
また、クッション体の取り付けにあたり、その前部を、シェルに対して容易に位置決めすることができるとともに、透孔、軸部、及び係合受部を隠して見栄えをよくすることができる。
【００２６】
請求項２記載の発明によれば、リブが袋部と協働して、クッション体の前部の後面を隠し、見栄えをよくすることができる。
【００２７】
請求項３記載の発明によれば、前部を係合受部とシェル側の軸部との係合により、シェルの前部に係止したクッション体に張りを与えながら、クッション体の後部をシェルの後部に簡単に止め付けることができる。
【００２８】
請求項４記載の発明によれば、有頭軸を所要の抵抗力をもって係止状態に保持することができ、さらに僅かな力を加えることにより、これを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の張り構造の一実施形態を備えた椅子の側面図である。
【図２】 同じく、座部のクッション体を分離した状態で示す部分拡大側面図である。
【図３】 同じく、座部のクッション体を取り外して示す椅子の平面図である。
【図４】 座部のシェルの前側縁側に穿設した透孔と軸部とを示す部分拡大平面図である。
【図５】 座部のシェルの後側縁側に穿設しただるま孔を示す部分拡大平面図である。
【図６】 座部のシェルとクッション体とを分離した状態で示す拡大縦断側面図である。
【図７】 座部のシェルにクッション体を取り付けた状態を示す拡大縦断側面図である。
【図８】 クッション体の前端部付近を破断して示す部分拡大斜視図である。
【図９】 座部のクッション体のシェルへの取り付け手順を説明する分解斜視図である。
【符号の説明】
(１)脚
(２)支基
(３)シェル
(3a)前端縁部
(４)クッション体
(５)背凭れ
(６)透孔
(７)軸部
(８)だるま孔
(8a)頸部
(９)リブ
(10)クッション材
(11)表皮材
(11a)袋状表皮材
(12)支持板
(13)係合受部
(14)支持板
(15)有頭軸
(15a)軸部

Claims (4)

1. 椅子のクッション体を支持するほぼ水平とした座用のシェルの前端縁部に、複数の透孔を左右方向に並べて設けるとともに、各透孔の中央に、両端が前記シェルと一体をなす軸部を設け、かつ前記クッション体の裏面側に設けられた支持板に、前記軸部に係脱可能な係合受部を突設し、さらに、クッション体の前部裏面側に、後方に開口する袋部を設け、該袋部により、前記透孔を含めてシェルの前部裏面を覆うようにしたことを特徴とする椅子の張り構造。
2. シェルの前部裏面側を覆う袋部の後端縁の後方近傍において、前記シェルに、左右方向に長い下向きのリブを突設した請求項１記載の椅子の張り構造。
3. 大径孔と該大径孔に連続する小径孔とからなる複数のだるま孔を、前記小径孔を前にしてシェルの後端縁部に設けるとともに、クッション体の後部裏面側に設けられた支持板に、前記だるま孔に係止される有頭軸を突設した請求項２記載の椅子の張り構造。
4. だるま孔の頸部の間隔を、有頭軸の軸部の外径より若干小とした請求項３に記載の椅子の張り構造。

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