JP3782694B2 - 排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)は、炭素質から成る煤と、高沸点炭化水素成分から成るSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とし、更に微量のサルフェート(ミスト状硫酸成分)を含んだ組成を成すものであるが、この種のパティキュレートの低減対策としては、排気ガスが流通する排気管の途中に、パティキュレートフィルタを装備することが従来より行われている。
【0003】
この種のパティキュレートフィルタは、コージェライト等のセラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路については、その出口が目封じされるようになっており、各流路を区画する多孔質薄壁を透過した排気ガスのみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0004】
そして、排気ガス中のパティキュレートは、前記多孔質薄壁の内側表面に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要があるが、通常のディーゼルエンジンの運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ない為、例えばアルミナに白金を担持させたものに適宜な量のセリウム等の希土類元素を添加して成る酸化触媒を一体的に担持させた触媒再生型のパティキュレートフィルタの実用化が進められている。
【0005】
即ち、このような触媒再生型のパティキュレートフィルタを採用すれば、捕集されたパティキュレートの酸化反応が促進されて着火温度が低下し、従来より低い排気温度でもパティキュレートを燃焼除去することが可能となるのである。
【0006】
ただし、斯かる触媒再生型のパティキュレートフィルタを採用した場合であっても、該パティキュレートフィルタに担持される酸化触媒には活性温度領域があり、この活性下限温度を下まわるような排気温度での運転状態が続くと、酸化触媒が活性化しない為にパティキュレートが良好に燃焼除去されないという不具合が起こり得るので、電気ヒータや燃料添加装置等を付属させて強制的な加熱を行うことが検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電気ヒータや燃料添加装置等を付属させた場合には、電気ヒータに通電を行うための電気系統や、燃料添加装置に燃料を供給するための燃料系統等を新たに敷設しなければならず、これによりパティキュレートフィルタの再生に関するシステムが複雑なものとなってコストが高騰するという問題があり、他方、電気ヒータや燃料添加装置等による強制的な加熱を行わない場合には、パティキュレートフィルタが短期間に目詰まりしてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、電気ヒータや燃料添加装置等の強制的な加熱手段を不要としてコストの低減化を図ると共に、短期間での目詰まりを確実に回避し得るようにすることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内燃機関からの排気ガスが流通する排気管途中のフレキシブルチューブより下流側に触媒再生型のパティキュレートフィルタを装備した排気浄化装置であって、前記フレキシブルチューブより上流側の排気管に開度調整可能な排気ブレーキを設けると共に、前記パティキュレートフィルタの直後に出口絞り弁を設け、該出口絞り弁を通常運転の軽負荷運転領域で絞り込み且つ排気ブレーキの作動時に該排気ブレーキと協働して排気流路を段階的に絞り込むように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、内燃機関の軽負荷運転時における排気温度の低い運転状態にあっても、出口絞り弁により排気流路が絞り込まれて該出口絞り弁より上流側で排気ガスが昇圧されることにより排気温度が上昇され、しかも、内燃機関の排気抵抗が高まることにより、該内燃機関の気筒内に比較的温度の低い吸気が流入し難くなって比較的温度の高い排気ガスの残留量が増加し、この比較的温度の高い排気ガスを多く含む気筒内の空気が更に圧縮行程で圧縮されて爆発行程を迎えることでも更なる排気温度の上昇が図られる。
【0011】
そして、このように排気温度が上昇されて酸化触媒の活性下限温度以上に維持されると、パティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートが良好に燃焼除去されて該パティキュレートフィルタが良好に再生されることになる。
【0012】
また、排気ブレーキの作動時には、該排気ブレーキと出口絞り弁により排気流路が段階的に絞り込まれるので、排気ブレーキの上流側で従来通りの排気圧力を得るのに際し、排気ブレーキから出口絞り弁までの排気流路における排気圧力の上昇を所定圧以下に抑制してフレキシブルチューブの破損を回避し且つある程度の昇圧は達成して排気温度を上昇させることが可能であり、排気ブレーキ作動時の排気エネルギーを有効に利用して排気温度の上昇を図ることが可能となる。
【0013】
つまり、排気ブレーキのみによる排気流路の絞り込みで制動力を得るとした場合には、該排気ブレーキの上流側で排気圧力の上昇による温度上昇が同様に起こるが、フレキシブルチューブを経て下流側のパティキュレートフィルタに到達するまでに排気温度がかなり低下してしまうことになり、他方、出口絞り弁のみによる排気流路の絞り込みで制動力を得るとした場合には、フレキシブルチューブが排気圧力の上昇に耐えきれずに破損してしまうことになるので、排気ブレーキと出口絞り弁との協働により排気流路を段階的に絞り込むことが好ましいのである。
【0014】
更に、前述した如き排気浄化装置においては、パティキュレートフィルタの過捕集状態を判定する過捕集判定手段を備え、該過捕集判定手段によりパティキュレートフィルタの過捕集状態が判定された条件下でのみ軽負荷運転領域での出口絞り弁の絞り込み操作を行わしめるように構成すると良く、このようにすれば、パティキュレートフィルタの過捕集状態が過捕集判定手段で判定された時だけ軽負荷運転領域での出口絞り弁の絞り込み操作が行われるように制御範囲が限定される結果、比較的温度の高い(容積の大きな)排気ガスの残留で気筒内の充填効率が低下することによる出力や燃費の低下が極力抑制されることになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例の排気浄化装置においては、図1に示す如き自動車のディーゼルエンジン1(内燃機関)から排気マニホールド2を介して排出された排気ガス3が流通している排気管4のマフラ5内に、酸化触媒を一体的に担持して成る触媒再生型のパティキュレートフィルタ6を収容させた場合を例示しており、該パティキュレートフィルタ6を抱持するフィルタケース7がマフラ5の外筒を成すようになっている。
【0017】
ここで、パティキュレートフィルタ6の具体的な構造は図2に示す通りであり、このパティキュレートフィルタ6は、セラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路8の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路8については、その出口が目封じされるようになっており、各流路8を区画する多孔質薄壁9を透過した排気ガス3のみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0018】
そして、パティキュレートフィルタ6より上流側の適宜位置には、排気管4の流路(排気流路)を適宜な開度に絞り込む開度調整可能な排気ブレーキ10が装備されており、該排気ブレーキ10は、制御装置11からの制御信号10sにより開度制御されるようになっている。
【0019】
尚、一般的に、車体側に固定されることになる排気管4は、ディーゼルエンジン1からの振動により破断応力が作用することを防止するために、該ディーゼルエンジン1に近い位置にフレキシブルチューブ12を介装するようにしてあるが、この種のフレキシブルチューブ12は、可撓性を優先した薄肉構造となっていて耐圧性がそれほど高くないので、排気ブレーキ10の作動時における排気圧力の上昇がフレキシブルチューブ12に悪影響を及ぼさないよう該フレキシブルチューブ12の上流側に前記排気ブレーキ10を配置するようになっている。
【0020】
他方、フレキシブルチューブ12より下流側の排気管4に装備されているパティキュレートフィルタ6の直後にも、フィルタケース7の出口流路を適宜な開度に絞り込む出口絞り弁13が装備されており、該出口絞り弁13は、前記制御装置11からの制御信号13sにより開度制御されるようになっている。
【0021】
更に、パティキュレートフィルタ6の過捕集状態を排気圧力の上昇から検知する過捕集判定手段の一例について以下に説明すると、本形態例における過捕集判定手段は、ディーゼルエンジン1に装備されて機関回転数を検出する回転センサ14と、図示しない運転席のアクセルに装備されてアクセル開度をディーゼルエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ15(負荷センサ)と、排気管4のマフラ5の入側に装備されて入口ガス圧力を検出する圧力センサ16と、これら回転センサ14、アクセルセンサ15、圧力センサ16からの回転数信号14s、アクセル開度信号15s、圧力信号16sに基づきパティキュレートフィルタ6の過捕集状態を判定する制御装置11とにより構成されるようになっている。
【0022】
そして、制御装置11においては、圧力センサ16からの圧力信号16sにより入口ガス圧力の実測値を監視する一方、アクセル開度信号15s及び回転数信号14sに基づく現在の運転状態での入口ガス圧力の予測値を推定し、その予測値と実測値との偏差が正常範囲内にあるかどうかが制御装置11内で判別されるようになっており、パティキュレートフィルタ6に捕集されたパティキュレートの残留量(燃え残り)が多い場合には、パティキュレートフィルタ6の入口ガス圧力が正常範囲を超えて上昇するので、パティキュレートフィルタ6が過捕集状態に陥っているものと判断され、パティキュレートフィルタ6の再生運転が実行されるようになっている。
【0023】
ここで、制御装置11によるパティキュレートフィルタ6の再生運転とは、アクセル開度信号15s及び回転数信号14sに基づいて判断される通常運転の軽負荷運転領域で出口絞り弁13を絞り込む開度制御を行い、しかも、排気ブレーキ10の作動時に該排気ブレーキ10と協働して排気流路を段階的に絞り込む開度制御を行うというものである。
【0024】
尚、排気ブレーキ10の作動時に該排気ブレーキ10と協働して排気流路を段階的に絞り込むにあたっては、排気ブレーキ10の絞り開度を従来の排気ブレーキ単独使用の場合より大きめに開けておき、その下流側で出口絞り弁13を絞り込むことにより排気ブレーキ10の上流側圧力が従来と同レベルになるようにすれば良い。
【0025】
而して、このような制御装置11により排気浄化装置を運転すれば、パティキュレートフィルタ6に多くのパティキュレートが捕集されて再生が必要となった時に、入口ガス圧力の上昇によりパティキュレートフィルタ6が過捕集状態に陥ったことが制御装置11に判定され、パティキュレートフィルタ6の再生運転が実行される結果、ディーゼルエンジン1の軽負荷運転時における排気温度の低い運転状態にあっても、出口絞り弁13により排気流路が絞り込まれて該出口絞り弁13より上流側で排気ガス3が昇圧されることにより排気温度が上昇される。
【0026】
即ち、排気ガス3の温度Tと、排気圧力Pと、流量Vとには、下記の関係式
P・V/T=一定
が決まっており、排気流路を絞り込んで排気圧力Pを大きくして流量Vを一定に保てば、所定の運転状態に関して排気ガス3の温度Tが下記の例1〜例4のように大きく上昇することになる。
【0027】
【数1】
(0.1×V)/200+273・・・例1
=(0.2×V)/673+273・・・例2
=(0.3×0.5V)/436.5+273・・・例3
=(0.25×0.75V)/614+273・・・例4
【0028】
しかも、ディーゼルエンジン1の排気抵抗が高まることにより、該ディーゼルエンジン1の気筒内に比較的温度の低い吸気が流入し難くなって比較的温度の高い排気ガス3の残留量が増加し、この比較的温度の高い排気ガス3を多く含む気筒内の空気が更に圧縮行程で圧縮されて爆発行程を迎えることでも更なる排気温度の上昇が図られることになる。
【0029】
そして、このように排気温度が上昇されて酸化触媒の活性下限温度以上に維持されると、パティキュレートフィルタ6に捕集されたパティキュレートが良好に燃焼除去されて該パティキュレートフィルタ6が良好に再生されることになる。
【0030】
また、排気ブレーキ10の作動時には、該排気ブレーキ10と出口絞り弁13により排気流路が段階的に絞り込まれるので、排気ブレーキ10の上流側で従来通りの排気圧力を得るのに際し、排気ブレーキ10から出口絞り弁13までの排気流路における排気圧力の上昇を所定圧以下に抑制してフレキシブルチューブ12の破損を回避し且つある程度の昇圧は達成して排気温度を上昇させることが可能であり、排気ブレーキ10の作動時の排気エネルギーを有効に利用して排気温度の上昇を図ることが可能となる。
【0031】
つまり、排気ブレーキ10のみによる排気流路の絞り込みで制動力を得るとした場合には、該排気ブレーキ10の上流側で排気圧力の上昇による温度上昇が同様に起こるが、フレキシブルチューブ12を経て下流側のパティキュレートフィルタ6に到達するまでに排気温度がかなり低下してしまうことになり、他方、出口絞り弁13のみによる排気流路の絞り込みで制動力を得るとした場合には、フレキシブルチューブ12が排気圧力の上昇に耐えきれずに破損してしまうことになるので、排気ブレーキ10と出口絞り弁13との協働により排気流路を段階的に絞り込むことが好ましいのである。
【0032】
従って、上記形態例によれば、従来の如き電気ヒータや燃料添加装置等の強制的な加熱手段を不要としてコストの低減化を図ることができ、しかも、適宜に排気温度を上昇させてパティキュレートフィルタ6の酸化触媒を安定した活性状態に維持することができるので、パティキュレートフィルタ6に捕集されたパティキュレートを良好に燃焼除去することができ、これによりパティキュレートフィルタ6の目詰まりを確実に回避することができる。
【0033】
また、特に本形態例においては、パティキュレートフィルタ6の過捕集状態を判定する過捕集判定手段として、回転センサ14、アクセルセンサ15、圧力センサ16、制御装置11を備え、これらによりパティキュレートフィルタ6の過捕集状態が判定された条件下でのみ軽負荷運転領域での出口絞り弁13の絞り込み操作を行わしめるように構成しているので、パティキュレートフィルタ6の過捕集状態が過捕集判定手段で判定された時だけ軽負荷運転領域での出口絞り弁13の絞り込み操作が行われるように制御範囲を限定することができ、比較的温度の高い(容積の大きな)排気ガス3の残留で気筒内の充填効率が低下することによる出力や燃費の低下を極力抑制することができる。
【0034】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、過捕集判定手段を装備せずに、排気温度の低い軽負荷運転領域で常に出口絞り弁の絞り込み操作が行われるような制御信号を制御装置から出力させるモード設定をしても良く、また、過捕集判定手段を装備する場合には、前述した如き圧力センサによる入口ガス圧力の実測値と現在の運転状態における予測値とを比較して判定する手段以外にも、走行距離や運転時間等を目安としてパティキュレートフィルタの過捕集状態を推定する手段等を採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0035】
【発明の効果】
上記した本発明の排気浄化装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0036】
(I)従来の如き電気ヒータや燃料添加装置等の強制的な加熱手段を不要としてコストの低減化を図ることができ、しかも、適宜に排気温度を上昇させてパティキュレートフィルタの酸化触媒を安定した活性状態に維持することができるので、パティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを良好に燃焼除去することができ、これによりパティキュレートフィルタの目詰まりを確実に回避することができる。
【0037】
(II)パティキュレートフィルタの過捕集状態を判定する過捕集判定手段を備え、該過捕集判定手段によりパティキュレートフィルタの過捕集状態が検知された条件下でのみ軽負荷運転領域での出口絞り弁の絞り込み操作を行わしめるように構成すれば、パティキュレートフィルタの過捕集状態が検知された時だけ軽負荷運転領域で出口絞り弁の絞り込み操作を行うように制御範囲を限定することができ、比較的温度の高い(容積の大きな)排気ガスの残留で気筒内の充填効率が低下することによる出力や燃費の低下を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】図1のパティキュレートフィルタの詳細を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)
3 排気ガス
4 排気管
6 パティキュレートフィルタ
10 排気ブレーキ
11 制御装置(過捕集判定手段)
12 フレキシブルチューブ
13 出口絞り弁
14 回転センサ(過捕集判定手段)
15 アクセルセンサ(過捕集判定手段)
16 圧力センサ(過捕集判定手段)
Claims (2)
- 内燃機関からの排気ガスが流通する排気管途中のフレキシブルチューブより下流側に触媒再生型のパティキュレートフィルタを装備した排気浄化装置であって、前記フレキシブルチューブより上流側の排気管に開度調整可能な排気ブレーキを設けると共に、前記パティキュレートフィルタの直後に出口絞り弁を設け、該出口絞り弁を通常運転の軽負荷運転領域で絞り込み且つ排気ブレーキの作動時に該排気ブレーキと協働して排気流路を段階的に絞り込むように構成したことを特徴とする排気浄化装置。
- パティキュレートフィルタの過捕集状態を判定する過捕集判定手段を備え、該過捕集判定手段によりパティキュレートフィルタの過捕集状態が判定された条件下でのみ軽負荷運転領域での出口絞り弁の絞り込み操作を行わしめるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
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