JP3781406B2 - トラカール固定具 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は内視鏡下外科手術において、体腔内へ内視鏡や鉗子類を挿通するための通路となるトラカール管を、体壁に保持するさいの体腔側固定手段となるトラカール固定具に関する。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡下外科手術においては、内視鏡や鉗子類等の手術器具を体腔内に挿入するための通路として、トラカールと呼称される基部を有する管状体を体壁に装着するが、術中これが抜けたり、ずれたりしないように体壁との当接部を固定する必要があり、多くのトラカールでは体表側用と体腔側用の固定手段をトラカール管に付属させて各々設け、これで体壁を挟持して固定する手段を用いている。そして、この手段による従来の体腔側固定手段としては、トラカール管自体の先端近傍外周面に、バルーンに代表されるような、体腔内部にトラカール管を挿入した後に、この固定手段を拡張させて、術中該トラカール管を体腔内から固定して、使用後は拡張を解除して抜去できる機構を設けた固定手段が一般的となっている。
【0003】
また、別の手段として例えば、特開平7−163577のような外套管(トラカール管)外周部に設けた、止め具、止め具の先端となるループ、及び止め具の基端となる取手より構成した抜止め部材の止め具を、外套管の中心軸から偏倚した位置で、該外套管の長手方向に平行な軸上を中心として取手により回動操作することにより先端部に設けたループが外套管の外方に突出されて固定手段となるもの、あるいは、これに類似する特開平7−265327のようなトラカールの先端に回動可能に設けた複数の内側固定部材と該固定部材を操作する操作部材を設け、操作部材を体外より回動操作することにより固定部材がトラカール外周面の外方に突出して固定手段となるものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来のいずれの手段によっても、トラカール管の体壁への固定という機能的側面から検討すると大きな問題はなく使用されるものであるが、いずれも固定手段をトラカール本体に設けており、この固定手段は、体壁への挿入のさいはトラカール管の外径と極力段差のないものとすることが求められ、一方、体内に固定するさいは抜止め具としての機能が求められるため、これを体腔挿入後に拡張させる等の構造が必要となり、トラカール本体の部品点数を増やし構成を複雑とし、また、固定手段のトラカールへの取り付けなど製造工程も複雑となることから、トラカール製造のなかでも最も面倒でコストのかかる部材の一つとなって、結果、器具が高価なものとなっているといった問題がある。また、これら固定手段は前記したように極力段差なく構成するべく努力されているが、トラカール管の外径を大きくすることは避けられず、これら固定手段の付設により患者の創を大きくしてしまうといった問題もある。
【0005】
また、前記固定手段としてバルーンを使用した場合などはバルーンの耐久性の問題からディスポーザブル品となることが多く、また他の従来の固定手段を用いたものであっても複雑な構成のため作動不要や破損の可能性も高く、形状も複雑となるため使用後の洗浄が面倒となるなど利用者にとってもコスト高になるといった問題もある。
【0006】
上記の問題点に鑑み、本発明はトラカール本体の部品点数を少なくし簡単な構造で済ますことのできる、製造者側もまた使用者側もトラカールに関わるコストを低下することができ、かつ、固定具により患者の創を大きくすることのないトラカール固定具を提供することを課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のトラカール固定具は、トラカールを人体に固定するための体腔側の固定具であって、トラカール管外周部に着脱自在に装着され、トラカール管の外径と適合する内径を有する柔軟なゴム弾性部材のリングよりなる抜け止め手段と、該抜止め手段を体外部より操作可能な操作手段とを具備し、トラカール管とは別部材として構成する。
【0008】
前記抜止め手段は、トラカールを体内に挿入後、トラカール管腔内を通じて、体腔内部に挿入あるいは取り出し可能なようにトラカール管腔内を挿通可能な構造のものとした。
【0009】
前記抜止め手段のリングは、体腔内部でのトラカール管への挿入の容易性を考慮して、一方端側の内径はトラカール管の外径と適合する径として、他方側はやや大きく形成されることが望ましい。
【0010】
前記抜止め手段を体外部より操作する操作手段は、抜止め手段の一箇所あるいは複数箇所を糸で係止し、該糸の端部を延設して体外部に置いて操作部とするか、該糸の端部に操作手段を付設して構成する。
【0011】
前記糸の端部に付設する操作手段として、操作用のリングを糸に係止して操作部とする。
【0012】
また、抜止め手段及び操作手段の各々の手段の部位が、トラカール管外周部に着脱自在に装着される機能と、抜止め手段を体外部より操作可能な機能を共に有し、各々が抜止め手段及び操作手段として兼用可能な構成とする。
【0013】
前記抜止め手段及び操作手段を兼用可能とする構成として、前述されているような抜止めリングを前述の糸の両端部に付設し、特定しない一方のリングを抜止めリング、他方を操作用のリングとして用い、各々のリングに抜止め手段のリング及び操作用のリングの機能を兼用させて構成する。
【0014】
前記抜止め手段及び操作手段兼用の両リングは、少なくとも各々の内径を異として構成する。
【0015】
(作用)前記のトラカール固定具を用いると、トラカール本体に該トラカール製造上最も面倒な部材の一つである体腔側の体壁固定手段を必要としないため、トラカール本体の基本構成としては、外套管と外套管を挿通する内針、外套管基部、基部に設けるガス漏れ防止弁機構及び体表側の体壁固定手段があれば足り、トラカール自体の部品点数を少なく簡単な構造とすることができる。
【0016】
また、トラカール管外周に体腔内の体壁固定手段を設ける必要がないため、トラカール管の外径を大きくする必要がなく人体への創を必要最小限にすることができる。
【0017】
更に、抜止め手段及び操作手段を兼用可能に構成すると、どちら側を抜止め手段として用いても良い、また、各々を内径の異なる径に設定すると、2種類の外径のトラカールに対応可能な使い勝手の良いトラカール固定具とすることができる。
【0018】
【実施例】
本発明のトラカール固定具の実施例を、図面を参考にして詳細に説明する。
【0019】
(実施例1)図1は本発明のトラカール固定具の実施例1を示す。トラカールを体腔内部より固定する抜止め手段となる、抜止めリング1は柔軟な弾性体としてシリコンゴムを用い、内径を対応するトラカール管4の外径に適合するサイズとしたリング状の成型部材として形成し、抜止め手段と操作手段を繋ぐ糸2は細径かつ必要十分な強度をもつ樹脂としてポリアミド樹脂の糸を用い、前記抜止め手段を体外部より操作する操作手段となる操作リング3は樹脂製でリング状の成型品として形成した。尚、抜止めリング1のリング形状としては、単なる断面円形のリング状であっても、また、より確実な体壁固定のため断面を楕円状とする等により体腔側当接部への接触面積を大きくするものであっても、更に、体腔内部でのトラカール管4への挿入の容易性を考慮して、一方端側の内径をトラカール管の外径と適合する径として、他方側はやや大きく形成した形状であっても良い。
【0020】
本実施例1のトラカール固定具は、前記構成部品の抜止めリング1と操作リング3を糸2で繋いで構成され、詳しくは、糸2の一方端部を2本として抜止めリング1の対称となる2点21で係止し、一方他端部は1本として、把持リング3に1点23で係止して、中間部の適当位置22で糸2、2本を1本にまとめた構造として構成した。
【0021】
図2は、本発明のトラカール固定具を、体壁に装着したトラカールに取り付けた体壁固定部位の様子で、体壁7に装着したトラカール管4の先端近傍部で体腔側8の当接部を抜止めリング1で、必要に応じ体表側9の当接部を特定しない体表側固定手段6で挟持して体壁7とトラカール管4を固定している。
【0022】
図3は、本発明のトラカール固定具のトラカール管への装着、及び体壁への固定方法を示す概略図で、以下の工程により装着固定される。
(a)体壁7へのトラカール管4の穿刺、装着に先立つ準備として、抜止めリング1を、トラカール管4内腔をスムーズに挿通可能なように押しつぶし楕円状に変形させ、鉗子10等を用いてトラカール管4の先端側から挿入し、基端部からトラカール外部に取り出し、トラカール管4の管腔内に糸2を貫通させる。
(b)前段の糸2を貫通させたトラカール管4の内腔に、内針5を挿入しトラカール針としてセットし準備を完了する。
(c)前段のトラカール針を体壁7に穿刺、体腔内に適当量を挿入して装着し、内針5を抜去した後、鉗子等を用いて(a)工程と同様に抜止めリング1を変形させてトラカール管4の基端部より管腔内へと挿入する。
(d)更に、抜止めリング1を鉗子10等によりトラカール管4管腔に押し入れ、トラカール管先端部より完全に体腔内に押し出す。体腔内に押し出された抜止めリング1は弾性により元の円形形状に戻る。
(e)前段の体腔内に押し出された抜止めリング1を、腹腔鏡の画像を見ながら、手元操作部となる把持リング3あるいは糸2を介して遠隔操作し、トラカール管4の外周部に装着する。このさい必要に応じて該トラカール管4あるいは別の経路から体腔内に挿入した鉗子等を用いて操作を補助すると容易に装着することができる。
(f)抜止めリング1をトラカール管4外周部に装着したら、手元の把持リング3あるいは糸2を引っ張り、該抜止めリング1がトラカール管4の適当位置、即ち抜止めリング1が体腔内側の体壁に当接する位置に設定されるよう調整して、本例のトラカール固定具のトラカール管4への装着を完了する。
【0023】
(実施例2)図4は本発明のトラカール固定具の実施例2を示し、抜止め手段及び操作手段が兼用される一例を示す。抜止め防止手段及び操作手段となる、抜止めリング・操作リング兼用のリング(以下兼用リングA)11及びもう一方の抜止めリング・操作リング兼用のリング(以下兼用リングB)12は、各々柔軟な弾性体としてシリコンゴムを用い、内径をトラカール管4の一般的な外径サイズとなる5mm用及び10mm用に適合するサイズとするように、兼用リングA11を約10mm、兼用リングB12を約5mmとしてリング状の成型部材として形成し、糸2は実施例1と同様に細径かつ必要十分な強度をもつ樹脂としてポリアミド樹脂の糸を用い形成した。当然、5mm用のトロッカーを用いる場合は、兼用リングB12を抜止めリング、兼用リングA11を操作リングとして用い、10mm用のトロッカーを用いる場合は逆に用いれば良い。
【0024】
本実施例2のトラカール固定具は、兼用リングA11と兼用リングB12を糸2で繋いで構成され、詳しくは、糸2、2本を兼用リングA11の対称となる2点21で係止し、他端部は兼用リングB12の対称となる2点23で係止して構成した。尚、本実施例2のトラカール管への装着、及び体壁への固定方法は前記実施例1で説明したものと同様となる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、トラカール本体に体壁固定のための体腔側固定手段を設ける必要がないため、シンプルな構造のトロッカーを用意すれば良く、また本発明のトラカール固定具も、弾性部材のリングと糸のみより基本構成される部品点数の少ない簡単な構成によるものである作用と併せると、従来に比較して、製造者にとってトラカール装置にかかるコストを非常に少なくすることができる。また、このシンプルな構成により破損や作動不良も少なく、また、万一破損したような場合も本体と固定具は別部品であるため別々に取り替え可能で、更に洗浄等の使用後のメンテナンスも容易なため使用者にとってもコスト低減となることで、トロッカーに関する総合的なコストを低減することができる。
【0026】
また、トラカール管本体外周に体腔内の体表固定手段を設ける必要がないため、トラカール管の外径を大きくする必要がなく、患者への創を必要最小限にすることのできる侵襲の少ないトラカール固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1を示すトラカール固定具の構成図
【図2】 前記トラカール固定具をトラカール管に装着して体壁に固定した状態を示す模式図
【図3】 前記トラカール固定具のトラカール管への装着方法を示す説明図
【図4】 本発明の実施例2を示すトラカール固定具の構成図
【符号の説明】
1. 抜止めリング
2. 糸
3. 操作リング
4. トラカール管
5. トラカール内針
7. 体壁
11.兼用リングA
12.兼用リングB
Claims (8)
- 内視鏡下外科手術においてトラカール管を体壁に固定するための体腔側固定具であって、トラカール管外周部に着脱自在に装着される柔軟なゴム弾性部材のリングよりなる抜止め手段と、該抜止め手段を体外部より操作可能な操作手段とを具備したことを特徴とするトラカール固定具。
- 前記抜止め手段は、トラカール管管腔内を挿通可能な請求項1のトラカール固定具。
- 前記抜止め手段のリングは、リングの一方端側の内径が他方側より大きく形成される請求項1乃至2のトラカール固定具。
- 前記抜止め手段を体外部より操作可能な操作手段は、抜止め手段の一箇所あるいは複数箇所を糸で係止し、該糸の端部を延設して操作部とするか、または該糸の端部に操作手段を付設する請求項1乃至3のトラカール固定具。
- 前記糸の端部に付設する操作手段は、操作用のリングとした請求項4のトラカール固定具。
- 前記抜止め手段及び操作手段は、各々の手段の部位がトラカール管外周部に着脱自在に装着される機能、及び、抜止め手段を体外部より操作可能な機能を共に有し、各々の手段を兼用可能な請求項1乃至5のトラカール固定具。
- 前記トラカール管外周部に着脱自在に装着される機能、及び、抜止め手段を体外部より操作可能な機能を共に有する抜止め手段及び操作手段は、請求項1乃至3の抜止め手段のリングとして構成され、各々の手段を兼用可能な請求項6のトラカール固定具。
- 前記抜止め手段及び操作手段を兼用する各々のリングはリング径を異とする請求項7のトラカール固定具。
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