JP3780755B2 - 微生物数測定装置および微生物数測定方法 - Google Patents

微生物数測定装置および微生物数測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液中の微生物数または微生物濃度を測定するための微生物数測定装置および微生物数測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶液中の微生物数を測定する方法としては、特開昭57−50652号公報に記載されたもの等、多数の技術が知られている。
【0003】
しかし、従来の技術による微生物数の測定方法は、測定感度は比較的高いが微生物分野及び生化学分野に関する専門知識が必要であったり、また専用で高価な大型の測定装置が必要となり、さらには専任者による作業が必要となる等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定することができるものではなかった。
【0004】
そこで、物理的手段のみを使い、薬剤を一切用いないで、試料系に組み込んでの自動測定が可能で簡易な小型の微生物数測定装置が例えば特開昭59−91900号公報において提案されたが、微生物数が10の8乗cells/ml(1ml中に微生物数が1億個)以上にならないと検出できないため、その応用範囲に著しい制限が加えられていた。また、この小型で簡易な微生物数測定装置では、試料の中の微生物の数を知ることはできるが、どのような種類の微生物がいるかとか、ある特定の微生物がどの程度の数存在しているかといった微生物の種類に関する情報は何も得ることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記従来の微生物数測定方法では、専用の測定装置,専門知識を持った専任者による操作が必要であるという問題点を有していた。また、上記従来の小型簡易の微生物数測定装置では、専任者を必要とせず自動測定が可能になるが、微生物数が非常に多くないと測定が難しく、低感度の測定性能しか得られず、微生物数を知り得たとしても、特定の種類の微生物の数についてはわからないという問題点を有していた。
【0006】
この微生物数測定装置および微生物数測定方法では、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できることが要求されている。
【0007】
本発明は、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できる微生物数測定装置、および、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定するための微生物数測定方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の微生物数測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と前記抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液を混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、前記抗原抗体反応した微生物を含む試料液の導電率を透析によって低下せしめる透析ステップと、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の前記標識物質の濃度を少なくとも電流の変化量または蛍光強度の時間変化いずれか一方を調べることにより測定する濃度測定ステップと、前記測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有する構成を備えている。
【0009】
これにより、簡易な構造でありながら、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定できる微生物数測定装置が得られる。
【0010】
上記課題を解決するために本発明の微生物数測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の標識物質の濃度を測定する濃度測定ステップと、測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有する構成を備えている。
【0011】
これにより、さまざまな試料中の特定の微生物の数を高感度に自動で測定するための微生物数測定方法が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載された微生物数測定装置は、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液とを混合して抗原抗体反応を生じさせるための反応セルと、試料液を反応セルに導入する試料液導入部と、検液を反応セルに導入する検液導入部と、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することとしたものである。
【0013】
この構成により、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識した特定微生物の数だけを測定することができるので、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数を高感度に測定することができるという作用を有する。
【0014】
請求項2に記載された微生物数測定装置は、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液とを混合して抗原抗体反応を生じさせるための反応セルと、試料液を反応セルに導入する試料液導入部と、検液を反応セルに導入する検液導入部と、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、測定セルにイオン透過性隔膜を介して連接され、内部に透析電極を備えた透析セルと、測定セル内の微生物を誘電泳動するための泳動電源回路と、透析電極に電圧を印加して測定セル内のイオン濃度を低下させる透析電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することとしたものである。
【0015】
この構成により、抗原抗体反応時に導入されたイオンを透析によって迅速に測定セルから除くことができ、測定セル中の試料の電気伝導率を低下させることができるので、イオン濃度が高い抗原抗体反応後の試料中の微生物であっても、効率よく誘電泳動を行うことができ、高精度で高感度な測定ができるという作用を有する。
【0016】
請求項3に記載された微生物数測定装置は、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液を導入する試料液導入部と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液を導入する検液導入部と、微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、測定セルにイオン透過性隔膜を介して連接され、測定セル内のイオン濃度を低下するための透析セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源回路と、測定セル内のイオン濃度を低下させる透析電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することとしたものである。
【0017】
この構成により、簡易な構造で効率良く抗原抗体反応と透析を行うことができ、高感度な微生物数の測定ができるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載された微生物数測定装置は、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は蛍光物質であることとしたものである。
【0019】
この構成により、測定に感度の高い蛍光法を用いた微生物数測定ができるといいう作用を有する。
【0020】
請求項5に記載された微生物数測定装置は、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は色素であることとしたものである。
【0021】
この構成により、測定のための光学系を簡易なものにすることができるという作用を有する。
【0022】
請求項6に記載された微生物数測定装置は、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は酵素であることとしたものである。
【0023】
この構成により、測定対象の微生物数が少なくても酵素反応による増幅効果によって高感度に検出を行うことができるという作用を有する。
【0024】
請求項7に記載された微生物数測定装置は、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は導電性の物質であることとしたものである。
【0025】
この構成により、光学系を用いない電気的な測定系のみで簡易な測定装置とすることができるという作用を有する。
【0026】
請求項8に記載された微生物数測定装置は、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、測定部は、電界集中部に光を出射するための光ファイバと電界集中部からの光を入射するための光ファイバとを含む光学系を備えることとしたものである。
【0027】
この構成により、簡易な光学系で高感度の微生物数測定装置を構成することができるという作用を有する。
【0028】
請求項9に記載された微生物数測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の標識物質の濃度を測定する濃度測定ステップと、測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有することとしたものである。
【0029】
この構成により、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識した特定微生物の数だけを測定することができるので、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数を高感度に測定することができるという作用を有する。
【0030】
請求項10に記載された微生物数測定方法は、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液を混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、抗原抗体反応した微生物を含む試料液の導電率を透析によって低下せしめる透析ステップと、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の標識物質の濃度を測定する濃度測定ステップと、測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有することとしたものである。
【0031】
この構成により、抗原抗体反応時に導入されたイオンを透析によって迅速に測定セルから除くことができ、測定セル中の試料の電気伝導率を低下させることができるので、イオン濃度が高い抗原抗体反応後の試料中の微生物であっても、効率よく誘電泳動を行うことができ、高精度で高感度な測定ができるという作用を有する。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による微生物数測定装置を示す構成図であり、図2(a)、(b)は図1の微生物数測定装置の電極を示す構成図である。
【0034】
図1において、1は測定セル、2は電極基板、3は反応セル、4は試料系への配管(試料液導入部)、5は検液導入口(検液導入部)、6は連通路、7は排出口、8、9、10、11は電磁弁、12は光源側光ファイバ、13は検出側光ファイバ、14は光源、15は検出器、16は制御部、17は泳動電源回路、18は測定部、19は演算部、20は表示部である。また、図2(a)において、31は薄膜電極(泳動電極)、32は薄膜電極のギャップ、40は光源側光ファイバから放出された光束の広がる発光範囲、41は検出側光ファイバの受光範囲、図2(b)において、33は薄膜電極間に誘電泳動によって移動した微生物である。
【0035】
このように構成された微生物数測定装置について、その動作等を図3、図4を用いて説明する。図3は図1の微生物数測定装置の動作を示すフローチャートであり、図4は蛍光強度の時間変化を示すグラフである。
【0036】
まず、本実施の形態において検出対象としている微生物について説明する。本実施の形態で言う微生物とは、一般に細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウィルスとして分類されているいわゆる微生物学の対象となっている生物のほかに、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、生物体の断片、分離または培養した動植物細胞、精子、花粉、卵、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。また本実施の形態では、測定対象として液体中の微生物を想定している。
【0037】
図1、図2に示すように測定セル1内には誘電泳動によって試料液体中の微生物33を所定位置に移動させるために、電極基板2上の2つの極からなる薄膜電極31が微小なギャップ32を介して対向して設けられている。本実施の形態において薄膜電極31は2つの極からなり、図2に示すように、くさび型の電極が対向して配置されている。図2の電極基板2上の薄膜電極31が本実施の形態における泳動電極である。また、ギャップ32に近接して光源側光ファイバ12と検出側光ファイバ13の端面が配置されている。
【0038】
泳動電極としての薄膜電極31はスパッタリングや蒸着、メッキ等の方法によって電極基板2上に密着して形成された導電体からなり、2つの極からなる薄膜電極31の間に構成されるギャップ32付近の電界がもっとも強くなるため、ギャップ32が本実施の形態における電界集中部になる。詳細は後述するが、微生物はもっとも電界が集中するこのギャップ32付近に向かって泳動される。
【0039】
薄膜電極31は、極端に抵抗が高くない限りどのような材料から構成されてもよいが、液体中での使用、特に本実施の形態のように水中で使用されることを想定すると、なるべくイオン化傾向が低い金属が望ましい。誘電泳動時には薄膜電極31間に強い電界が生じるため、印加する周波数と水中の電解質濃度によっては電気分解が生じることがある。電気分解が生じるとイオン化傾向の大きな金属から構成された電極では、電極の溶解が生じ、電極形状の崩れや極端な場合には電極の破断等が生じてしまうものである。このようなことに鑑み、本実施の形態では電極の主材料として白金を使用している。
【0040】
測定セル1は、蛍光強度測定時の外部からの迷光の影響を避けるために、全面が遮光されている。もちろん、これは、蛍光強度検出に迷光の影響がなければよいのであって、系全体を遮光したり、測定セル1のうち測定に関わる一部分を遮光したりしてもよいことは言うまでもない。
【0041】
光源側光ファイバ12は石英ガラスを主材料とし、コア径50ミクロン、クラッド径125ミクロンで、コアの屈折率に分布を持ち、樹脂製の保護外皮すなわち絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子コーティングが施されている。光源側光ファイバ12は、一方を光源14側に他方をギャップ32に近接して配置され、両端面は光学的に平坦に研磨されている。また図示しないが、光源14と光源側光ファイバ12との間にはレンズ等の光学素子が配置され、光源14の光を光源側光ファイバ12に効率よく入射させている。また、光源14と光源側光ファイバ12との間にはやはり図示しないが、光源が放出する光の長波長側すなわち測定対象となる蛍光物質の蛍光スペクトルを含む領域の波長をカットするフィルタが挿入されている。本実施の形態では光源14として重水素ランプを用いている。
【0042】
光源側光ファイバ12のギャップ32側の端面からは、光源側光ファイバ12内を伝わってくる光源14の光が、図2の発光範囲40に示すような範囲に広がって出射する。本実施の形態においては、この光束の広がる発光範囲40と少なくとも一方の薄膜電極31の先端とが互いに重なるように配置されている。言い換えるなら、薄膜電極31の端部が液中に入射された光の広がる光学的開口面上またはこの開口面内に配置されることになる。なお、本実施の形態では光源側光ファイバ12として石英ガラスを主成分とする光ファイバを用いたが、有機高分子を主成分とする光ファイバを用いてもよい。有機高分子を主成分とする光ファイバは、石英ガラスを主成分とする光ファイバと比較して、光の伝播時の減衰が大きく、また透過できる波長範囲も限られていることが知られているが、本実施の形態のように伝播距離が通信用途等と比較して極端に短い場合には、大きな問題は生じない。但し、紫外域の光を用いる場合には、有機高分子による光の吸収が著しく大きくなるため、石英ガラスを主成分とする光ファイバを使うことが望ましい。
【0043】
受光側光ファイバ13は光源側光ファイバ12と同様に、石英ガラスを主材料とし、コア径50ミクロン、クラッド径125ミクロンで、コアの屈折率に分布を持ち、樹脂製の保護外皮すなわち絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子コーティングが施されている。受光側光ファイバ13は、一方を検出器15側に他方をギャップ32に近接して配置され、両端面は光学的に平坦に研磨されている。また図示しないが、検出器15と受光側光ファイバ13との間にもレンズ等の光学素子が配置され、受光側光ファイバ13を伝って来た光が効率よく検出器15で検出される。さらに、受光側光ファイバ13と検出器15との間には、受光側光ファイバ13を透過してきた光のうち対象となる蛍光物質の発光スペクトルよりも短波長側をカットするフィルタが挿入されている。光源側に挿入されたフィルタが透過する光の波長域と、受光側に挿入されたフィルタが透過する光の波長域とは、互いに重なり合わないようになっている。これにより、ギャップ32付近で電極や泳動された微生物33によって散乱される光源光が直接検出器15に入ることはなく、蛍光物質からの蛍光のみを高精度で検出することができる。
【0044】
また、受光側光ファイバ13のギャップ32側の端面では、図2の受光範囲41の内側から受光側光ファイバ13に入射した光だけが検出器15で検出される。受光範囲41以外の範囲から受光側光ファイバ13に入射した光は受光側光ファイバ13内の光の伝播条件を満たすことができず、検出器15に至る以前に減衰して消滅してしまうものである。受光側光ファイバ13についても有機高分子を主成分とする光ファイバを用いることができる。
【0045】
本実施の形態においては、光源側光ファイバ12と受光側光ファイバ13とは同一平面内で互いに135度の角度をもって配置される。この135度というのは望ましい角度の1つであって、後述するような微生物に付着した抗体上の標識物質からの蛍光を測定するのが容易な角度であれば他の角度でもよく、例えば90度付近から170度付近までの角度を採用することができる。さらに、受光範囲41と光束の広がる発光範囲40とが、少なくとも一方の薄膜電極31の先端部分と互いに重なるように配置される。言い換えると、少なくとも一方の薄膜電極31の端部が光源側と受光側の光学的開口面上またはこの開口面内に配置されることになる。
【0046】
このように光ファイバを含む光学系を構成することにより、ギャップ32付近の蛍光の強度を効率よく測定することができる。
【0047】
反応セル3は、本実施の形態における試料液導入部としての試料系配管4と検液導入部としての検液導入口5とを備え、連通路6を介して測定セル1と連通している。反応セル3内では、試料系配管4から導入される微生物33を含んだ試料溶液と、検液導入口5から導入される後述する組成の検液としての抗原抗体反応試薬とが混合され、抗原抗体反応が進行する。そして、反応終了後の溶液は連通路6を通って測定セル1内に移送される。
【0048】
試料系配管4、検液導入口5、連通路6、排出口7はそれぞれ制御部16によって制御される電磁弁8〜11を備えており、後述する一連の手順に従って、電磁弁を解放して各溶液を導入したり、遮断して反応セル3または測定セル1を系から独立させたりといった動作を行うことができるようになっている。
【0049】
泳動電源回路17は、誘電泳動を起こすための交流電流を電極基板2の薄膜電極31間に供給するものである。
【0050】
制御部16は、図示しないマイクロプロセッサや、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマ等から構成され、あらかじめ設定されたプログラムにしたがって電磁弁8〜11の開閉を行い、泳動電源回路17を制御して電極基板2へ特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。さらに制御部16は、測定部18と演算部19と信号の送受信を行ない適宜制御を行うことで、測定動作全般の流れを管理する。
【0051】
次に測定部18は、図示しないマイクロプロセッサや、光源14を点灯させるためのリレー、検出器15からの信号を検出する検出回路、制御部16との間の信号を伝える伝送路等から構成され、詳細は後述するが、微生物に付着した抗体に結合された標識物質からの蛍光強度を測定する。
【0052】
また演算部19は、図示しないマイクロプロセッサ、メモリ等から構成され、詳細は後述するが、測定部18にて測定された結果から、電極基板2の薄膜電極31間のインピーダンスを解析し、電極基板2の薄膜電極31間の静電容量を演算する。そして、必要に応じて、演算結果をメモリに格納したり、予め保存されているデータを読み出して比較を行なう等して、最終的に試料系配管4に含まれている微生物数を算出し表示部20に表示を行うなどする。
【0053】
なお、測定部18と演算部19のマイクロプロセッサは制御部16のマイクロプロセッサと共用することができる。また、測定部18と演算部19は制御部16によって制御されており、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0054】
また表示部20は、算出された微生物数を試料1mLあたりの微生物数としてデジタル表示する。表示部20の表示が本実施の形態における微生物数測定装置の最終出力となる。本実施の形態では、使用者は測定された微生物数を試料1mLあたりの微生物数として直接知ることができるが、表示方法としては、たとえば多いまたは少ないなど、目的に応じてほかの表示方法であっても良い。さらに、試料中の微生物数を調べて殺菌装置を制御するとか、温度などの培養条件を制御するなど、使用者が直接微生物数を知る必要が無く、本微生物数測定装置を含む任意の装置の制御を行うために微生物数が明らかであれば良いような場合には、そのまま制御を行い表示部は特に設ける必要がないのは言うまでもない。
【0055】
さて、ここで、本実施の形態の主要な内容である抗原抗体反応と蛍光検出と誘電泳動とについて、その基本的な内容を説明する。
【0056】
まず、抗原抗体反応について簡単に説明する。抗原抗体反応は或る特定の抗原に対して特異的に結合する抗体が存在し、この両者の間で行われる化学反応のことである。抗原抗体反応は生体内における免疫応答機構の研究から明らかになったものであり、生体内では、たとえば体外から進入した望ましくないウィルスや細菌と自らを構成する細胞との違いを見いだし、ウィルスや細菌のみを攻撃するための目印を付ける役目を担っている。
【0057】
この特異性を利用して特定物質の検出を行うことを目的とした生化学の一分野が免疫測定技術分野であり、免疫クロマト法や、ELISA法は生体関連物質の検出法として広く利用されている。抗原抗体反応の特異的な結合作用について、レジオネラ・ニューモフィラ・セログループ1(以下、「レジオネラ菌」という)を例にして説明するが、以下の説明はレジオネラ菌に限ったことではなく、微生物全般に共通して言えることであることはいうまでもない。
【0058】
さて、レジオネラ菌の表面は細胞壁で覆われているが、全面が細胞壁で覆われているわけではなく、栄養分摂取等の外界との物質授受に作用するタンパク質が細胞壁表面に分散するように露出している。これらのタンパク質は、レジオネラ菌以外の細菌やその他の微生物、動物細胞に至るまで、レジオネラ菌と共通なものもあるが、レジオネラ菌だけに特異的なものもある。この特異的なタンパク質が抗原として利用できる。このようなタンパク質の種類はただ一つに限られることはなく、レジオネラ菌に特異的なタンパク質、すなわち抗原になりうるタンパク質は複数存在する。
【0059】
また、抗原となりうるタンパク質の露出場所は、レジオネラ菌表面に多数存在し、それぞれが抗体と結合することができる。従って、抗原抗体反応が進行するとレジオネラ菌の表面には多量の抗体が結合することになる。一方、抗体も抗原と同様タンパク質様の物質から構成され、異なるタンパク質に対して結合する抗体であってもその基本骨格は同一である。抗体は、その構造の一部に特定タンパクとうまく嵌合する構造を2カ所持っている。抗体は、免疫応答機構に従い、生体細胞中で合成される。そして、合成の際に目標となる抗原に対して特異的に結合するような構造に作られる。このようにして得られた抗体と抗原を生体内に近い特定条件の水溶液中で混合すると、両者の結合反応が進行する。詳細は後述するが、本実施の形態では、ドイツPROGEN社製のマウスIg−G由来のモノクローナル抗体を用いてレジオネラ菌の検出を行っている。
【0060】
抗原と抗体の結合はいわゆる鍵と鍵穴の関係であると言える。抗原となるタンパク質は、炭素、酸素、水素、窒素、硫黄等からなるアミノ酸が多数結合した巨大な高分子であり、アミノ酸の配列の仕方によって特徴的な三次元的な高次構造をなす。この高次構造がタンパク質の機能と密接に関係しており、機能が異なるタンパクでは必ず一部の構造が互いに異なっている。抗体は特定のタンパク質の特徴的な高次構造とうまく嵌合するような構造を持つように作られ、官能基の結合位置がわずかに異なるだけの非常に類似したタンパク質が同時に存在していても高い特異性を持って特定タンパクだけと結合を生じる。
【0061】
さらに、前述したように抗体は特定タンパク質の高次構造と嵌合するような構造を2つずつ持っている。このような抗体の構造により、抗原−抗体−抗原−抗体・・・という連鎖を生成することもできる。この連鎖が生じると、抗原と抗体は凝集塊をつくり、目視でも確認できるような沈殿を生じる。しかしながら、レジオネラ菌の場合には、抗体に比較してレジオネラ菌が大きいため、巨視的な凝集塊を生じることは少ない。レジオネラ菌と抗体の反応の場合には、抗体は2カ所ある結合構造のうち片方をレジオネラ菌表面の抗原と結合させ、もう一方は何にも結合しないままにしているか、あるいは両方を一個のレジオネラ菌上の2カ所の抗原に結合しているかといった場合が多い。抗体の産生は近年においては、マウスやラットを使うほかに、人工的に培養した動物細胞を利用して行うことができ、抗原を入手することができれば、それに対して特異的に結合する抗体を産生することは工業的規模で可能となっている。
【0062】
以上、簡単に抗原抗体反応について説明したが、さらに詳細な説明は「免疫学イラストレイテッド」(多田富雄監訳、南江堂)等を参照願いたい。
【0063】
さて、前述したようにこのような抗原と抗体の特異的な結合は様々な物質の中から特定の物質を検出するための手段として応用されている。抗原の検出を目的として抗原抗体反応を行う際には、先に説明したような反応に伴う沈殿の生成を観察したり、固定化した抗体に抗原を反応させ、さらに、詳しくは後述するが検出時の指標となる何らかの標識物質を結合させた抗体を添加し、反応前後の標識物質の量を測定するなどして、抗原の有無や定量を行っている。次に、本実施の形態で用いている蛍光検出法について説明する。
【0064】
本実施の形態では、レジオネラ菌の表面に特異的に存在する抗原に対し特異的に結合する抗体に蛍光標識を行い、蛍光によるレジオネラ菌の検出を行う例を説明している。蛍光標識とは、レジオネラ菌と抗原抗体反応を行う前に、抗体に対して蛍光物質を化学的に結合させておくということである。蛍光標識を行った後に、紫外光もしくは可視光の短波長側の光を励起光として抗体に照射することによって、蛍光物質が励起光より長波長側の蛍光を放射する。この蛍光の強度を観察することにより抗体の存在量を知ることができる。以下、蛍光物質を化学的に結合した抗体を「標識抗体」という。なお、標識抗体の標識物質は蛍光物質に限らないのは当然のことである。例えば、導電物質で修飾する場合は、金コロイドなどを用いればよい。導電物質を標識物質として用いた場合、次のような特徴がある。実施の形態1においては光ファイバを含む光学系を用いて蛍光修飾された抗体から放射される蛍光強度の時間変化を観察して検出対象微生物であるレジオネラ菌の数を算出しているが、たとえば金コロイドなどの導電性物質を標識に用いた場合、複雑な光学系を用いなくとも、誘電泳動時に電極間に流れる電流の変化量を観察することによって、レジオネラ菌の数を測定することができる。それは、特異的な抗原抗体反応によって反応終了後にはレジオネラ菌のみに金コロイドによる修飾が行われ、金コロイドに修飾されたレジオネラ菌が電極間に誘電泳動によって移動することにより、電極間の電気伝導率は、レジオネラ菌以外の微生物が泳動されてきたときに比べて、極端に大きな電流値の変化を示すことになるからである。
【0065】
標識抗体を用いてレジオネラ菌と抗原抗体反応を行うということは、レジオネラ菌表面への抗体の結合、すなわちレジオネラ菌表面への抗体を介した蛍光物質の結合を意味し、反応が進行するとレジオネラ菌表面は多量の蛍光物質によって覆われることになる。通常、標識抗体は未知量の抗原に対して十分に過剰な量が添加される。本実施の形態においても、この通例に従っている。十分な量の標識抗体の添加によって、抗原となるレジオネラ菌の数に関わらず、十分な量の標識抗体をレジオネラ菌に結合させることができる。
【0066】
さて、このような過程を経ることにより、レジオネラ菌の表面にだけ特異的に抗体を集め、その結果レジオネラ菌を蛍光物質で修飾することができるが、この状態で試料全体に励起光を照射しても、レジオネラ菌の数を調べることは難しい。それは、抗原抗体反応の有無に関わらず、試料内の標識抗体の数は変化しないため、試料から放射される蛍光の強度に変化がないからである。標識された抗体(標識抗体)は抗原抗体反応によって試料中に均一に分散していた状態から、レジオネラ菌表面に移動したにすぎず、絶対数は変化していないし、前述したように標識抗体は抗原であるレジオネラ菌に対して十分に過剰な量が添加されているために、未結合状態の標識抗体も試料中に多量に存在している。
【0067】
たとえば、励起光を照射した状態で蛍光の発光状態を画像として捕らえ処理を施すことによって、レジオネラ菌を特に強く発光している輝点として捕らえることは可能であり、この輝点を計数してレジオネラ菌数(他の微生物に対しても応用できることは言うまでもない)を計測する装置も考案されているが、そのような装置は、高価な光学系と画像処理のための高速なマイクロプロセッサとを必要とするなど、非常に大がかりなものとなり、本発明の目的とする簡易なものとはとてもいえなくなってしまうものである。
【0068】
本実施の形態においては、詳細は後述するが、蛍光標識抗体によって修飾されたレジオネラ菌を誘電泳動を用いた微生物濃縮を用いることによって高精度、高感度に検出している。
【0069】
次に微生物の誘電泳動現象について簡単に説明するが、必要であれば詳細な説明は文献J.theor.Biol(1972)vol.37,1−13を参照されたい。
【0070】
電極基板2の薄膜電極31間に高周波の交流電圧を印加すると、これによって発生する交流電界の作用で、測定セル1内の微生物33はその誘電的な性質によって最も電場が強くかつ不均一な部分、すなわち電界集中部に泳動される。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。この時、微生物の誘電体微粒子としての双極子モーメントをμとすると、微生物に働く誘電泳動力Fと電場Eとの間には(数1)関係が成立する。
【0071】
【数1】
Figure 0003780755
【0072】
さらに、微生物の細胞質の比誘電率をε2、微生物を含んでいる液体の比誘電率をε1、微生物を球体と見なしたときの半径をa、円周率をπとすると、誘電泳動力Fは(数2)のように書き換えることができる。
【0073】
【数2】
Figure 0003780755
【0074】
(数2)は誘電泳動による力Fが、電位勾配、媒質の比誘電率と誘電体微粒子としての微生物の比誘電率との差などの影響を受けることを示している。
【0075】
ところで、本実施の形態では、電極基板2のギャップ32付近の構成が電界集中部にあたり、中でも最も電界が集中するのはギャップ32である。従って、ギャップ32部分にもっとも強く微生物33が泳動される。図2に示すギャップ32はくさび状の薄膜電極の先端が対向している部分である。
【0076】
ギャップ32付近に浮遊する微生物33は、電極基板2の薄膜電極31間に生じるこのような電界作用によってギャップ32に引き寄せられ、電気力線に沿って整列する。この時、ギャップ32付近の微生物33の移動状態は、試料液体中に存在する微生物数とギャップ32の間隔とに依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ32が微生物から構成される鎖によって架橋されるほどになる。この際、当初からギャップ32付近に浮遊していた微生物33は直ちにギャップ32部分へ移動するし、ギャップ32から離れたところに浮遊していた微生物33は距離に応じて所定時間経過後にギャップ32部に至るため、一定時間後にギャップ32付近の所定領域に集まっている微生物33の数は測定セル1内の微生物数にも比例する。これは、当然のことながら、試料系配管4から供給された試料溶液中に存在する微生物数に比例するものである。
【0077】
ところで、本実施の形態におけるギャップ32の間隔は100μmに設定されているが、ギャップ32の間隔は測定対象となる試料溶液中の微生物の濃度の影響を受けるため必要に応じて調節される。本実施の形態のように標識された抗体(標識抗体)からの蛍光を検出して微生物を測定する場合には、誘電泳動によって移動してきた微生物33はなるべく塊を作らない方がよい。なぜなら、ギャップ32付近で微生物33が塊を作ることにより検出対象の微生物33、すなわち標識された抗体が結合した微生物33が塊の中に埋もれてしまい、励起光があたる可能性が低くなってしまうからである。
【0078】
従って、試料溶液中の総微生物濃度が大きな場合には、ギャップ32の間隔を広くするのがよい。ギャップ32の間隔が広ければ、試料溶液中に多数の微生物33が存在していたとしても、電気力線に沿って整列する十分な隙間を確保できるために塊になることがない。こうすることにより、試料中の複数の種類の微生物33の中から検出対象である微生物33に結合している抗体の標識物質を効率よく励起することができ、検出対象の微生物が少ないときでも高感度に測定を行うことができる。
【0079】
以上のようなことを鑑み、本実施の形態においては、ギャップ32の間隔を100μmとしているが、この値は試料溶液中の微生物量に合わせて0.2〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。
【0080】
(化1)〜(化4)は検液の組成成分を示す。
【0081】
【化1】
Figure 0003780755
【0082】
【化2】
Figure 0003780755
【0083】
【化3】
Figure 0003780755
【0084】
【化4】
Figure 0003780755
【0085】
本実施の形態では、(化1)の組成成分20g、(化2)の組成成分2g、(化3)の組成成分80g、(化4)の組成成分2gおよびFITC標識抗体0.1gの試薬を蒸留水1リットル(L)で溶解したものを検液とする。
【0086】
さて、以下、試料の導入から反応セル3内での抗原抗体反応、測定セル1内への移送、測定セル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを図1〜図4を用いて説明するが、抗原抗体反応に必要となる反応条件、測定手順を図3に記載する。そして、本実施の形態では複数の種類の微生物を含む試料溶液中からレジオネラ菌を測定対象として検出を行う場合を例にして説明する。
【0087】
初期状態では、電磁弁8、電磁弁10、電磁弁11は開放状態であり、試料系配管4から流入した複数の微生物を含む試料液は反応セル3と測定セル1を自由に通過している。所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると、制御部16は、電磁弁8と電磁弁10を閉状態にし、反応セル3を系から独立させる。本実施の形態では反応セル3内の試料液量は900マイクロリットルである(S1)。
【0088】
次いで制御部16は、電磁弁9を所定時間解放して、反応セル3内に検液としての抗原抗体反応試薬を100マイクロリットル導入する(S2)。本実施の形態においては、検液には、レジオネラ菌の表面タンパクと特異的に結合する抗体であるドイツPROGEN社製Anti−Legionella SG1,M−ouse Ig−G,Monoclonal抗体が混入されている。さらに、この抗体には蛍光標識物質としてFITC(フルオレッセイン イソチオシアネート)が標識されている。そして、このとき電磁弁9を解放する時間によって反応セル3内の試薬の濃度が抗原抗体反応に最適となるようにあらかじめプログラムがなされており、前述したように、測定するレジオネラ菌の数に比較して十分過剰な量の標識抗体が添加される。本実施の形態では、反応セル内の標識抗体数が10の12乗個以上になるように検液を調製している。反応セル3内では、検液の導入によって、試料液と検液が混ざり合い、抗原抗体反応が始まる(S3、抗原抗体反応ステップ)。
【0089】
抗原抗体反応は摂氏25度付近の常温でも十分進行するが、より積極的に反応を進めるために摂氏37度付近の恒温に保つことも望ましい。さてこのとき、抗原抗体反応の特異性によって、試料中に複数の種類の微生物が混在していても、その中にレジオネラ菌が含まれていれば、標識抗体はレジオネラ菌表面のタンパク質と特異的に結合し、レジオネラ菌表面の標識抗体の濃度のみが非常に大きくなる。だが、レジオネラ菌が存在しない場合には、標識抗体はレジオネラ菌以外の微生物と特異的な結合を作ることはなく、単に微生物表面への少量の物理吸着を行うのみで、大部分の標識抗体は溶液中にとどまる。
【0090】
所定時間の抗原抗体反応が終了すると、制御部16は、電磁弁10を一時的に解放し、試料液を測定セル1内に導入する。試料導入後は再び電磁弁10を閉鎖して、測定セル1を系から独立させ、測定部18に測定開始の指示を送って測定動作に入る(S4)。測定部18は、直ちに光源14を点灯させ、検出器15からの信号の強度、すなわちギャップ32における蛍光の強度を測定する。光源14である重水素ランプから放出される光(以下、「励起光」という)のうち485nmよりも長波長側は光源14に挿入されたフィルタにて吸収される。
【0091】
光源側光ファイバ12を透過してきた励起光はギャップ32で光束の広がる発光範囲に存在する蛍光物質であるフルオレッセインイソチオシアネートを励起する。フルオレッセインイソチオシアネートは励起によって530nm付近にピークを持つ蛍光を発する。受光側光ファイバ13には、この蛍光と同時に、ギャップ32付近で散乱された励起光も入射するが、本実施の形態における検出器15内には500nmより短い波長を透過しないフィルタが挿入されているために、検出器15では蛍光のみが検出されることになる。測定部18は、得られた値を演算部19に送る。演算部19は、この値を初期値としてメモリに格納し、初期値の測定が終了したことを信号を送って制御部16に伝える(S5)。以下、制御部16と測定回路18と演算部19とは、必要に応じて適宜信号のやり取りを行い、予め設定されたプログラムに従った円滑な動作を行う。
【0092】
次いで制御部16は、泳動電源回路17を制御して電極基板2の薄膜電極31間に周波数100kHzでピーク電圧100Vの正弦波交流電圧を印加させ、誘電泳動による試料中の微生物33の濃縮を開始させる。予め設定された所定時間が経過した後に送出される制御部16からの信号により、測定部18は再び、蛍光強度を測定し、その値を演算部19に送る。演算部19は、その値をメモリに格納する。以下、予め設定された時間毎に、制御部16と測定部18は連携して、蛍光強度の測定を繰り返す。演算部19は、測定された蛍光強度をその都度メモリに格納する(S6、濃度測定ステップ)。このように、誘電泳動による微生物33のギャップ32付近への移動を行ないながら蛍光強度の測定を繰り返すことによって、蛍光強度の時間変化を調べることができる。
【0093】
誘電泳動のための交流電圧印加開始後予めプログラムされた所定の回数の蛍光強度の測定を行うと、演算部19は、メモリに格納されている複数の蛍光強度測定結果から、その時点までの電極3間の蛍光強度の時間変化の傾きを計算し、後述する変換式に従って試料系の微生物数を算出する(S7、算出ステップ)。
【0094】
ここで、ギャップ32付近の蛍光強度の時間変化について図4を用いて説明する。
【0095】
まず、初期状態においては、薄膜電極31に電圧は印加されていないため、測定セル1内の試料液は均一な状態にある。よって、ギャップ32付近の蛍光強度は添加される標識抗体の量に応じたバックグラウンドの蛍光すなわち図4に初期値として示した値が観察されるのみである。
【0096】
前述したように、標識抗体は測定されるレジオネラ菌に比較して十分過剰な量が添加されるため、バックグラウンドの値は試料中のレジオネラ菌の数に対して大きな変動をすることはない。また、光ファイバ12、13はギャップ32に近接して配置されており、ギャップ32付近の蛍光強度のみを検出できるようになっているので、たまたまギャップ32付近を浮遊している標識抗体で修飾されたレジオネラ菌をバックグラウンドとして検出する可能性は低い。さらに、より正確な測定のために、数回のバックグラウンド測定を行うことによって、このような確率的な影響は簡単に排除できる物であることは言うまでもない。
【0097】
薄膜電極31に電圧が印加され誘電泳動による細菌の移動が始まると、ギャップ32の近傍には試料溶液中の微生物33が集められてくる。誘電泳動による微生物33の移動の際は、微生物の表面に標識抗体が結合しているか否かには関係がなく、試料溶液中のすべての微生物33が泳動されてくる。このとき、標識抗体は微生物に比較して非常に小さいために誘電泳動による力も小さく、電極近傍に泳動されることもない。これはすでに説明した(数2)からも明らかである。すなわち、誘電泳動力Fは微生物を球体とみなしたときの半径aの三乗に比例して変化する。つまり、たとえば球体とみなしたときの見かけの半径が2倍異なる微生物に働く力の比は、半径の比である1:2の三乗である1:8となり、じつに8倍もの力の差となるのである。本実施の形態で例として説明しているレジオネラ菌と一般的な修飾を行った抗体とを見かけの半径で比較すると1000倍程度の差があり、誘電泳動力の差はその三乗であるから、おのおのに働く誘電泳動力の差は非常に大きな物となる。さらに、本発明においては微生物を広く生態由来の微粒子として定義しており、その中にはリケッチアやウィルス等も想定しているが、微生物としては非常に小さなウィルスを比較に出しても、なお抗体との大きさの差は大きく、おのおのに働く誘電泳動力の差は歴然としている。
【0098】
さて、誘電泳動開始後の時間経過に伴うギャップ32付近の蛍光強度の変化は試料溶液中にレジオネラ菌が存在する場合と存在しない場合で大きく異なってくる。まず、試料溶液中にレジオネラ菌が存在しない場合、既述したように試料溶液中のレジオネラ菌の有無に関わらず、誘電泳動による微生物の移動は進行する。しかしながら、ギャップ32付近での蛍光強度すなわち抗体に結合した標識物質である蛍光物質の濃度はレジオネラ菌以外の微生物の移動と何ら相関しない。なぜなら、抗体自身は誘電泳動によってギャップ32近傍に移動することはなく、またレジオネラ菌以外の微生物に標識抗体が結合することはほとんどないからである。従って、この場合のギャップ32付近の蛍光強度変化はほとんどないか、泳動されてくる微生物に物理的に吸着された少量の抗体に標識された蛍光物質によるわずかな変化のみである。
【0099】
一方、試料溶液中にレジオネラ菌が存在する場合、誘電泳動によってギャップ32近傍に微生物が集まってくるに従いギャップ32付近の蛍光強度は著しく増大する。それは、泳動されてくる微生物中のレジオネラ菌だけが測定に先立って行われた抗原抗体反応によって、標識抗体による修飾を受けているからである。このとき蛍光強度の変化は、泳動されてくるレジオネラ菌の数に比例し、図4に示すように試料中のレジオネラ菌数が多いほど蛍光強度とその時間変化は大きくなる。この蛍光強度変化を演算することによって、複数の微生物が混在する試料溶液中から、レジオネラ菌の数だけを算出することが可能になる。
【0100】
さて、蛍光強度変化と試料溶液中のレジオネラ菌の数とを関連付けるためには蛍光強度とレジオネラ菌数との間の変換式が必要である。この変換式はレジオネラ菌の数が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物数測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時のレジオネラ菌の数と蛍光強度との間の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数をもちいる。この変換式を演算部19のメモリに記憶させ、微生物数が未知の試料を測定する場合には、所定時間内における蛍光強度変化の値を代入することにより試料溶液中の微生物数を算出できる。
【0101】
ここで、本実施の形態の例としてレジオネラ菌を用いた説明を行ったが、既述したように抗原と抗体の反応は特異的であり、抗体を産生する事は容易である。よって、レジオネラ菌の代わりに、他の微生物とその微生物に特異的に反応する抗体との組み合わせを用いることにより、本実施の形態で説明した方法で特定の微生物の数を測定することは容易である。例えば、大腸菌を検出したい場合には抗体として、Anti−E.coli monoclonal antibody(CHEMICON International Inc.)などを使えばよく、この抗体に蛍光物質や導電性物質の標識を行った後に実施の形態1に示した方法によって測定を行えば、複数の微生物が混在する試料液の中から大腸菌の数のみを測定することができる。さらに、蛍光修飾を行った抗体を用いて測定を行う場合、それぞれ異なる微生物と特異的に抗原抗体反応を行うような複数の種類の抗体を準備し、そのおのおのに互いに異なる蛍光波長をもった蛍光色素による標識を行うことによって複数の微生物を同時に測定することも可能になる。この場合、励起によって放出される蛍光をプリズムや回折格子などの分光手段を用いて分光し、互いに異なる蛍光の波長ごとにその強度の時間変化を追跡すればよい。このような方法によって、実施の形態1で説明した測定方法を本質的に変更することなくして複数の微生物を同時に測定することができる微生物数測定装置を構成することもできる。
【0102】
試料溶液中のレジオネラ菌数を算出後、演算部19は、測定終了の通知を制御部16に送る。これを受け、制御部16は、電極基板2への通電を停止するとともに電磁弁8、10、11を開放して洗浄に入る。ギャップ32付近に集まった微生物33は、電磁弁8、10、11の開放により、流入する試料系配管10の液体によって洗い流され、一連の測定動作が終了する。
【0103】
このように本実施の形態では、微生物数測定に先立って試料液中の特定の微生物を対象とした抗原抗体反応を行うことにより、簡易な構造でありながら、複数の微生物が混在する試料から特定の微生物の数のみを測定することができ、自動測定も可能で、メンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0104】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2による微生物数測定装置を示す構成図である。本実施の形態においても、レジオネラ菌検出を例として用いる。また、実施の形態1の微生物数測定装置と重複する部分があるため、実施の形態1と異なる部分について詳細な説明を加える。図6は図5の微生物数測定装置を構成する測定セルおよびその周辺を示す部分詳細説明図である。
【0105】
図5、図6において、測定セル1、電極基板2、反応セル3、試料系への配管(試料液導入部)3、検液導入口(検液導入部)5、連通路6、排出口7、電磁弁8〜11、光源側光ファイバ12、検出側光ファイバ13、光源14、検出器15、制御部16、泳動電源回路17、測定部18、演算部19、表示部20は図1と同様のものなので、同一符号を付し、説明は省略する。50は透析電源回路、51は陽イオン交換膜(陽イオン透過性隔膜)、52は第1の透析電極、53、55は電磁弁、54は蒸留水導入口、56は陰イオン交換膜(陰イオン透過性隔膜)、57は蒸留水排出口、58は第1の透析セル、59は第2の透析セル、60は蒸留水供給部、61は第2の透析電極、1Aは測定セル1と第1、第2の透析セル58、59とから成る測定セル部である。ここで、透析電源回路50は電気透析を実現するものであればどのようなものでも良く、本実施の形態では直流電源回路を用いている。透析電源回路50は電極に電圧を印加する事ができ、制御部16によって制御されている。また、後述するように微生物数の測定前に行われる試料の電気伝導率(導電率)の測定結果に応じて任意の電圧値を第1の透析電極52を陰極として、第2の透析電極61を陽極として印加できるようになっている。
【0106】
また、実施の形態2における微生物数測定装置は試料導入部としての試料系への配管4および検液導入部としての検液導入口5が電磁弁9、10を介して測定セル1に直接連通している。
【0107】
このように構成された微生物数測定装置について、その動作を図7、図8を用いて説明する。図7は図5、図6の微生物数測定装置の動作を示すフローチャートであり、図8(a)、(b)は誘電泳動力と周波数の関係を表すグラフである。試料中のレジオネラ菌数をパラメータとした蛍光強度の時間変化は、図4に示すグラフ特性と同様であるので、詳細な説明は実施の形態1に譲って省略する。
【0108】
図7に示すように、本実施の形態では、反応セル3での抗原抗体反応の後、測定セル1において測定が行われるのに先立って、電気透析(S15)により測定セル1内の試料液の導電率(電気伝導率)を低下させる。このように測定に先立って電気透析を行なうことにより、より効率的に誘電泳動を行うことができ、微生物測定の精度を向上させることができる点が実施の形態1と最も異なるところであるので、以下の説明ではこの最も異なる部分を中心に説明し、実施の形態1と同様の部分については実施の形態1に説明を譲って割愛する。
【0109】
図5、図6に示すように、測定セル部1Aは、陰イオン交換膜56と陽イオン交換膜51を介して測定セル1に連接された第1の透析セル58と第2の透析セル59を備えており、第1の透析セル58と第2の透析セル59にはそれぞれ、第1の透析電極52と第2の透析電極61がもうけられている。2種類のイオン交換膜はいずれもイオン交換能をもった厚膜であり陰イオン交換膜56は陰イオンのみを、陽イオン交換膜51は陽イオンのみをそれぞれ透過することができる。第1の透析電極52、第2の透析電極61としては、チタンの棒状電極に白金をコーティングしたものが用いられている。さらに、第1の透析セル58、第2の透析セル59にはそれぞれ、1カ所の蒸留水導入口54、2カ所の蒸留水排出口57が設けられている。蒸留水導入口54は電磁弁53、55を介して蒸留水供給部60に接続されている。蒸留水供給部60は、詳細は図示しないが、蒸留水を一時的に貯留するタンクとポンプおよびそれらを接続するチューブ類から構成され、制御部16によって制御されている。
【0110】
測定セル1内の電極基板2、光源側光ファイバ12、検出側光ファイバ13、薄膜電極31、ギャップ32さらには上記で説明した以外の部分(発光範囲40、受光範囲41等)については実施の形態1に同じであるので、説明を割愛する。
【0111】
次に、なぜ測定に先立って透析を行うと測定精度が向上するのかについて説明する。
【0112】
微生物の細胞質の比誘電率をε2、微生物を含んでいる液体の比誘電率をε1、微生物を球体と見なしたときの半径をa、円周率をπとすると、誘電泳動力Fは(数2)のように書き換えることができ、(数2)は誘電泳動による力Fが電位勾配、媒質と誘電体微粒子としての微生物との比誘電率の差などの影響を受けることを示していることは実施の形態1において既に説明したとおりである。
【0113】
(数2)をさらに詳細に考察すると、誘電泳動のために印加する交流電圧によって比誘電率εの周波数依存性の影響がでてくる、たとえばε1に対して交流に対する応答を考慮したものをε1′とすると、ε1′は(数3)のようにε1に虚数単位jと電気伝導率σ1と角周波数ωとを用いた項が付加された形になる。
【0114】
【数3】
Figure 0003780755
【0115】
このように、(数3)は媒質の電気伝導率の項も含むことになる。さて、この媒質の電気伝導率σ1が誘電泳動力Fに対してどのように作用するのかを説明する。今、媒質をイオン濃度の低い水とし、微生物としての一般的な比誘電率等の値を用いて誘電泳動力Fと周波数との関係をグラフに表したのが図8(a)である。ところで、媒質である水のイオン濃度を高めて電気伝導率σ1を高くした状態で再度グラフ化を行ったのが図8(b)である。水のイオン濃度即ち電気伝導率σ1を大きくした以外、印加電圧等の各因子の値は図8(a)のものと同じである。このとき、図8(b)から明らかなように、媒質である水のイオン濃度を高めて電気伝導率σ1を高くすると、引力を示す周波数領域は狭くなり、また引力自体も弱くなっているのがわかる。試料の電気伝導率σ1が大きくなって、誘電泳動による引力が弱くなると、電極近傍の限られた範囲に浮遊している微生物しかギャップ32付近に移動させることができず、測定の精度が悪くなってしまうので、効率的に微生物を移動させ、より精度よく迅速な測定を行うためには試料の電気伝導率σ1は小さいほうが望ましいことがわかる。
【0116】
次に、試料の電気伝導率を低下せしめるための電気透析について説明する。
【0117】
イオンを含む水溶液に複数の電極を浸し、電極間に電位差をかけると、溶媒と溶質によって定まる一定の電位差で電気化学反応が生じ、溶液内をイオンが移動する。この現象は電気分解として一般に知られている現象である。またこの時、陽極側には負電荷をもった陰イオンが移動し、陰極側には正電荷をもった陽イオンが移動してくるのが観察される。電極間の電位差が反転しないような電圧の印加、たとえば直流の印加を行えば、イオンの移動方向は一定となる。
【0118】
測定セル部1Aの構造において第1の透析電極52を陰極とし、第2の透析電極61を陽極として、両電極間に直流電圧を印加する場合について説明する。なお、印加される電圧の値は電気分解を起こすに十分な大きさであることが必要であり、本実施の形態においては10Vが印加されている。
【0119】
電圧の印加と同時に電気分解が生じ、測定セル1内の陰イオンは陽極側へ、そして陽イオンは陰極側へ移動しようとする。この時、第2の透析電極61は陽極であり、陰イオン交換膜56は陰イオンを透過することができるので、第2の透析セル59と測定セル1内の陰イオンは容易に陽極側へ移動することができるが、陽イオン交換膜51に隔てられた第1の透析セル58内の陰イオンは陽イオン交換膜51を透過することができないために、第1の透析セル58内にとどまる。同様に、第1の透析セル58と測定セル1内の陽イオンは容易に第1の透析電極52側へ移動できるが、第2の透析セル59内の陽イオンは陰イオン交換膜56を通過できないために、第2の透析セル59内にとどまる。
【0120】
このような状況下で電圧の印加を続けると、測定セル1内の陽イオン及び陰イオンは測定セル1からそれぞれのイオン交換膜51、56を通過して第1、第2の透析セル58、59内へ移動し、測定セル1内のイオン濃度は低下する。そして、測定セル1内の電荷のキャリアであるイオン濃度が低下するに従い、系に流れる電流は次第に減少する。こうして、測定セル1内のイオン濃度は低下し、測定セル1内の溶液の電気伝導率も低下する。
【0121】
本実施の形態では、第1の透析セル58及び第2の透析セル59に蒸留水を供給することによって、さらに効率のよい透析が行われるようになっている。すなわち、電気透析によって測定セル1外に移動した陽及び陰イオンは蒸留水供給部60から次々に供給され蒸留水排出口57から流れ去る蒸留水に押し流されて、系外へ運びされられる。こうすることにより、電気透析終了後もイオン交換膜51と56を介した透析セル側から測定セル側への拡散によるイオンの移動が生じることがなく、安定した誘電泳動と測定が行われる。
【0122】
さて、微生物および抗体は一般的に負に帯電していることが知られている。したがって、測定セル1内の微生物と抗体も当然陽極側へ移動しようとする。しかしながら、抗体は小さいといえどもイオンに比べれば非常に巨大な粒子であり、溶液中での移動速度はイオンに比べて大変遅い。抗体よりも大きな微生物ではさらにこの傾向は強くなる。したがって、前述したような電気透析現象によって測定セル1内のイオン濃度を低下させるという目的を達するための時間のスケールでは、微生物及び抗体の移動というのはほとんど考慮する必要が無いものである。さらに、イオン交換膜のイオンが透過する細孔は微生物や抗体に比較して大変小さいものであり、もし測定セル1内の微生物が陽極側へ移動しようとしても陰イオン交換膜に引っかかってしまうものである。したがって、電気透析によって微生物や抗体までが移動することはなく、測定セル1内のイオン濃度のみを低下させることができるものである。
【0123】
以下、図7を用いて、試料の導入から測定セル1内の微生物の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明する。
【0124】
初期状態では電磁弁10、電磁弁11は開放状態であり、試料系配管4から流入した複数の微生物を含む試料液は測定セル1を自由に通過している。所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると、制御部16は電磁弁10を閉状態にする。電磁弁10が閉状態になると、試料液の供給が絶たれるために測定セル1内に残っていた試料液が流出した後に測定セル1は空になる。その後制御部16は、電磁弁6を所定時間開放して測定セル1内に検液としての抗原抗体反応試薬を100マイクロリットル導入する(S11)。次いで制御部16は電磁弁10を開放し、試料液を900マイクロリットル測定セル1内に導入する(S12)。試料液の導入によって、測定セル1内にすでに導入されていた検液としての抗原抗体反応試薬と試料液は十分に混合され、測定セル1内は満たされる。本実施の形態においては測定セル1の内容積は1mlである。測定セル1内では試料液と検液の混合によって直ちに抗原抗体反応が始まる(S13)。所定時間の抗原抗体反応が終了すると、制御部16は、透析電源回路50を制御して第1、第2の透析電極間に10Vの直流を印加するとともに、蒸留水供給部60を制御して第1の透析セル58と第2の透析セル59にイオン濃度の低い蒸留水を供給し、電気透析を開始する(S14、透析ステップ)。電気透析の進行過程はすでに説明した通りである。そして、本実施の形態においては、第1、第2の透析セル58、59に流れ込んだ蒸留水が、透析によって測定セル1から移動してきたイオンを蒸留水排出口57から流し去るので、効率のよいイオンの除去を行うことができる。電気透析を行う前の試料溶液の組成は実施の形態1で説明した物と同じであり、その電気伝導率は850mS/m程度であるが、本実施の形態における条件での10秒間の電気透析によって100分の1以下の1〜2mS/m程度まで低下する。
【0125】
所定時間の電気透析が終了すると、レジオネラ菌数の測定に移る(S15)。ここからの手順も実施の形態1(図3)で既に説明したものと同じ、すなわち図7のS16、S17は図3のステップ6、7(S6、S7)に相当するので、その説明は省略する。
【0126】
このように本実施の形態では、微生物数測定に先立って抗原抗体反応を行い、さらに試料液の電気伝導率を電気透析によって低下させるために、複数の微生物が混在する試料から特定の微生物の数のみを高精度に測定することができ、高精度な自動測定も可能で、メンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0127】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に記載された微生物数測定装置によれば、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液とを混合して抗原抗体反応を生じさせるための反応セルと、試料液を反応セルに導入する試料液導入部と、検液を反応セルに導入する検液導入部と、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、前記標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することにより、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識した特定微生物の数だけを測定することができるので、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数を高感度に測定することができるという有利な効果が得られる。
【0128】
請求項2に記載された微生物数測定装置によれば、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液とを混合して抗原抗体反応を生じさせるための反応セルと、試料液を反応セルに導入する試料液導入部と、検液を反応セルに導入する検液導入部と、反応セル内と連通路で連通され、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、測定セルにイオン透過性隔膜を介して連接され、内部に透析電極を備えた透析セルと、測定セル内の微生物を誘電泳動するための泳動電源回路と、透析電極に電圧を印加して測定セル内のイオン濃度を低下させる透析電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することにより、抗原抗体反応時に導入されたイオンを透析によって迅速に測定セルから除くことができ、測定セル中の試料の電気伝導率を低下させることができるので、イオン濃度が高い抗原抗体反応後の試料中の微生物であっても、効率よく誘電泳動を行うことができ、高精度で高感度な測定ができるという有利な効果が得られる。
【0129】
請求項3に記載された微生物数測定装置によれば、所定の抗原決定基をもつ微生物を含有した試料液を導入する試料液導入部と、抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有する検液を導入する検液導入部と、微生物を誘電泳動させて電界集中部に集めるための泳動電極が設けられた測定セルと、測定セルにイオン透過性隔膜を介して連接され、測定セル内のイオン濃度を低下するための透析セルと、泳動電極に交流電圧を印加する泳動電源回路と、測定セル内のイオン濃度を低下させる透析電源回路と、電界集中部に集められた抗原抗体反応した微生物に結合された標識物質の濃度を測定する測定部と、標識物質の濃度から微生物数または微生物濃度を算出する演算部とを有することにより、簡易な構造で効率良く抗原抗体反応と透析を行うことができ、高感度な微生物数の測定ができるという有利な効果が得られる。
【0130】
請求項4に記載された微生物数測定装置によれば、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は蛍光物質であることにより、測定に感度の高い蛍光法を用いた微生物数測定ができるといいう有利な効果が得られる。
【0131】
請求項5に記載された微生物数測定装置によれば、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は色素であることにより、測定のための光学系を簡易なものにすることができるという有利な効果が得られる。
【0132】
請求項6に記載された微生物数測定装置によれば、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は酵素であることにより、測定対象の微生物数が少なくても酵素反応による増幅効果によって高感度に検出を行うことができるという有利な効果が得られる。
【0133】
請求項7に記載された微生物数測定装置によれば、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、標識物質は導電性の物質であることにより、光学系を用いない電気的な測定系のみで簡易な測定装置とすることができるという有利な効果が得られる。
【0134】
請求項8に記載された微生物数測定装置によれば、請求項1ないし3に記載された微生物数測定装置において、測定部は、電界集中部に光を出射するための光ファイバと電界集中部からの光を入射するための光ファイバとを含む光学系を備えたことにより、簡易な光学系で高感度の微生物数測定装置を構成することができるという有利な効果が得られる。
【0135】
請求項9に記載された微生物数測定方法によれば、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液とを混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、抗原抗体反応した微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の標識物質の濃度を測定する濃度測定ステップと、測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有することにより、抗原抗体反応によって特定の微生物に特異的に標識を行い、誘電泳動によって試料中の微生物を電極付近に集中した後、標識した特定微生物の数だけを測定することができるので、簡易な構造でありながら試料中の特定種類の微生物の数を高感度に測定することができるという有利な効果が得られる。
【0136】
請求項10に記載された微生物数測定方法によれば、抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液を混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、抗原抗体反応した微生物を含む試料液の導電率を透析によって低下せしめる透析ステップと、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の標識物質の濃度を測定する濃度測定ステップと、測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有することにより、抗原抗体反応時に導入されたイオンを透析によって迅速に測定セルから除くことができ、測定セル中の試料の電気伝導率を低下させることができるので、イオン濃度が高い抗原抗体反応後の試料中の微生物であっても、効率よく誘電泳動を行うことができ、高精度で高感度な測定ができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による微生物数測定装置を示す構成図
【図2】(a)図1の微生物数測定装置の電極を示す構成図
(b)図1の微生物数測定装置の電極を示す構成図
【図3】図1の微生物数測定装置の動作を示すフローチャート
【図4】蛍光強度の時間変化を示すグラフ
【図5】本発明の実施の形態2による微生物数測定装置を示す構成図
【図6】図5の微生物数測定装置を構成する測定セルおよびその周辺を示す部分詳細説明図
【図7】図5、図6の微生物数測定装置の動作を示すフローチャート
【図8】(a)誘電泳動力と周波数の関係を表すグラフ
(b)誘電泳動力と周波数の関係を表すグラフ
【符号の説明】
1 測定セル
2 電極基板
3 反応セル
4 試料系配管(試料液導入部)
5 検液導入口(検液導入部)
6 連通路
7 排出口
8、9、10、11、53、55 電磁弁
12 光源側光ファイバ
13 受光側光ファイバ
14 光源
15 検出器
16 制御部
17 泳動電源回路
18 測定部
19 演算部
20 表示部
31 薄膜電極(泳動電極)
32 ギャップ
33 微生物
40 発光範囲
41 受光範囲
50 透析電源回路
51 陽イオン交換膜(陽イオン透過性隔膜)
52 第1の透析電極
54 蒸留水導入口
56 陰イオン交換膜(陰イオン透過性隔膜)
57 蒸留水排出口
58 第1の透析セル
59 第2の透析セル
60 蒸留水供給部
61 第2の透析電極

Claims (5)

  1. 抗原決定基を備えた微生物含有の試料液と前記抗原決定基と抗原抗体反応し且つ標識物質を結合した抗体を含有した検液を混合して抗原抗体反応させる抗原抗体反応ステップと、前記抗原抗体反応した微生物を含む試料液の導電率を透析によって低下せしめる透析ステップと、試料液中の微生物を誘電泳動によって電界集中部に集め、集まった微生物の前記標識物質の濃度を少なくとも電流の変化量または蛍光強度の時間変化いずれか一方を調べることにより測定する濃度測定ステップと、前記測定した標識物質の濃度に基づいて微生物数または微生物濃度を算出する算出ステップとを有することを特徴とする微生物数測定方法。
  2. 前記標識物質は蛍光物質であることを特徴とする請求項1に記載された微生物数測定方法
  3. 前記標識物質は色素であることを特徴とする請求項1に記載された微生物数測定方法
  4. 前記標識物質は酵素であることを特徴とする請求項1に記載された微生物数測定方法
  5. 前記標識物質は導電性の物質であることを特徴とする請求項1に記載された微生物数測定方法
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