JP3780218B2 - 新規キラル銅触媒とそれを用いたn−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法 - Google Patents

新規キラル銅触媒とそれを用いたn−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、新しい銅触媒とそれを用いたN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は新規キラル銅錯体と、それを用いてエナンチオ選択性高くN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する不斉Mannich型反応に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
自然界には、多くの重要なN−アセチルアミノ酸誘導体が存在する。例えば、カルシウム拮抗性を有する蘭藻類Scytonema sp. (strain U-3-3)の主な代謝生成物であるScytonemin A(Helms, G.L; Moore, R.E., Niemczura, W.P., Patterson, G.M.L., Tomer,K.B., Gross, M.L., J.Org.Chem. 1998, 53, 1298)、Theonella属の海生海綿体由来の抗菌性ペプチドであるTheonellamide F(Matusnaga, S., Fusetani, N., Hashimoto, K., Walchli, M., J.Am.Chem.Soc. 1989, 111, 2582)、スフィンゴ脂質(Dickson, R. C. Annu. Rev. Biochem. 1998, 67, 27)を始めとする多くのものが単離、報告されている(Humphrey, .M., Chamberlin, A.R., Chem. Rev. 1997, 97, 2243; von Dohren, H., Keller, U., Vater, J., Zocher, R. Chem. Rev. 1997, 97, 2675; Koltr, T., Sandhoff, K. Angew.Chem., Int. Ed. 1999, 38, 1532など)。
【0003】
この出願の発明者らは、中でも、動物細胞におけるスフィンゴミエリン(SM)合成に特異的に作用し、スフィンゴ脂質の細胞内輸送を抑制する物質として報告されている、セラミド類似体のN-(3-Hydroxy-1-hydroxymethyl-3-phenylpropyl)dodecanamide(HPA−12)(Yasuda, S., Kitagawa, H., Ueno, M., Ishitani, H., Fukasawa, M., Nishijima, M., Kobayashi, S, Hanada, K. J.Biol.Chem. 2001, 276, 43994-44002)に注目した。このような物質を立体選択性高く合成することができれば、スフィンゴミエリン(SM)合成サイトから小胞体へのセラミド輸送の抑制剤として作用し、細胞死を抑制することが可能となると期待される。
【0004】
HPA−12のような天然化合物やその類似化合物を化学合成によって生産する方法としては、α−イミノエステルとエノラートの立体選択的Mannich型反応(Kobayashi, S., Ishitani, H. Chem. Rev. 1999, 99, 1069)が効率的である。発明者らは、最近、ジルコニウム触媒による立体選択的Mannich型反応方法を開発し、報告している(Ishitani, H., Ueno, M., Kobayashi, S. J.Am.Chem.SOc. 1997, 119, 7153; Kobayashi, S., Ishitani, H., Ueno, M. J.Am.Chem.Soc. 1998, 120, 431; Ishitani, H., Ueno, M., Kobayashi, S. J.Am.Chem.Soc. 2000, 122, 8180; Kobayashi, S., Ishitani, H., Yamashita, Y., Ueno, M., Shimizu, H. Tetrahedron 2001, 57, 861)。また、α−イミノエステルの不斉マンニッヒ反応に関しても多くの報告がなされている(例えば、Hagiwara, E., Fujii, A., Sodeoka, M. J.Am.Chem.Soc. 1998, 120, 2474; Ferraris, D., Young, B., Dudding, T., Lectka, T. J.Org.Chem. 1999, 64, 2168他)。
【0005】
しかし、これら公知の反応方法では、生成物からN−保護基をはずし、さらにアシル化する必要があり、煩雑な操作を要するものであった。
【0006】
そこで、より効率的な反応方法として、N−アシルイミノエステルをエノラートと反応させてN−アシル化アミノ酸誘導体を直接得る方法が検討された。しかし、出発物質として用いられるN−アシルイミノエステルの多くは、不安定であり、有機合成への適用範囲が限定されていたのが実情である。
【0007】
したがって、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、N−アシルイミノエステルを出発物質とする効率よく、簡便な立体選択的Mannich型反応を可能とする触媒系を提供することを課題としている。また、この出願の発明は、このような触媒を用いてスフィンゴミエリン合成サイトから小胞体へのセラミド輸送の抑制剤として作用し、細胞死を抑制する(1R,3R)N−(3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−3−フェニルプロピル)ドデカンアミド(HPA−12)を始めとするN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法をも提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず、第1には、次式(I)
【0009】
【化10】
Figure 0003780218
【0010】
(ただし、 1 は芳香族炭化水素基であり、R 2 は1−ナフチル基である
で表されることを特徴とする新規キラル銅触媒を提供する。
【0011】
第2には、この出願の発明は、トリフルオロメタンスルホン酸銅と次式(II)
【0012】
【化11】
Figure 0003780218
【0013】
(ただし、 1 は芳香族炭化水素基であり、R 2 は1−ナフチル基である
で表される配位子を混合して得られる新規キラル銅触媒を提供する。
【0014】
また、この出願の発明は、第3には、R1がフェニル基である前記いずれかの新規キラル銅触媒を提供する。
【0015】
さらに、この出願の発明は、第には、エナンチオ選択的にN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する方法であって、次式(III)
【0016】
【化12】
Figure 0003780218
【0017】
(ただし、R3、R4は同一または別異に置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である)
で表されるN−アシルイミノエステルと、次式(IV)
【0018】
【化13】
Figure 0003780218
【0019】
(ただし、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R6はトリアルキルシリル基、R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるシリルエノールエーテルを、次式(I)
【0020】
【化14】
Figure 0003780218
【0021】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
で表されるキラル銅触媒の存在下に反応させることを特徴とするN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法を提供する。
【0022】
この出願の発明は、また、第には、エナンチオ選択的にN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する方法であって、次式(III)
【0023】
【化15】
Figure 0003780218
【0024】
(ただし、R3、R4は同一または別異に置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である)
で表されるN−アシルイミノエステルと、次式(IV)
【0025】
【化16】
Figure 0003780218
【0026】
(ただし、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R6はアルキル基、R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるアルキルビニルエノールエーテルを、次式(I)
【0027】
【化17】
Figure 0003780218
【0028】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
で表されるキラル銅触媒の存在下に反応させ、酸処理することを特徴とするN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法を提供する。
【0029】
この出願の発明は、第には、キラル銅触媒が、トリフルオロメタンスルホン酸銅と次式(II)
【0030】
【化18】
Figure 0003780218
【0031】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
で表される配位子を混合して得られる前記いずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法を提供する。
【0032】
そして、この出願の発明は、第には、キラル銅触媒において、R1がフェニル基である前記いずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法を、第には、キラル銅触媒において、R2が1−ナフチル基である前記いずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法をも提供する。
【0033】
【発明の実施の形態】
この出願の発明では、まず、次式(III)
【0034】
【化19】
Figure 0003780218
【0035】
(ただし、R3、R4は同一または別異に置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である)
で表されるN−アシルイミノエステルと、次式(IV)
【0036】
【化20】
Figure 0003780218
【0037】
(ただし、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R6はトリアルキルシリル基、R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるシリルエノールエーテルを、次式(I)
【0038】
【化21】
Figure 0003780218
【0039】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
で表される新規なキラル銅触媒の存在下に反応させることにより、エナンチオ選択的にN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する。また、シリルエノールエーテルの代わりに、前記(IV)におけるR6がアルキル基であるアルキルビニルエーテルを用いた場合には、N−アシルイミノエステルと前記のキラル銅触媒の存在下に反応させた後、酸処理させれば、エナンチオ選択性高くN−アシル化アミノ酸誘導体が製造される。
【0040】
この新規キラル銅触媒(I)は、トリフルオロメタンスルホン酸銅と次式(II)
【0041】
【化22】
Figure 0003780218
【0042】
で表される配位子を、例えば溶液中で混合して得られるものであり、単離されたものを触媒として用いてもよいし、反応溶液中でin situで錯形成させ、調製してもよい。
【0043】
この出願の発明の新規キラル銅触媒(I)において、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、とくに限定されない。具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基、あるいは、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジtブチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基等の置換基を有する芳香族炭化水素基が好ましく例示される。後述の実施例からも明らかなように、発明者らの研究によれば、とくに、R1がフェニル基でR2が1−ナフチル基である新規キラル銅触媒は、不斉Mannich型反応における生成物の収率やエナンチオ選択性が高くなり、好ましい。
【0044】
この出願の発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法において、次式(III)
【0045】
【化23】
Figure 0003780218
【0046】
のN−アシルイミノエステルにおけるR3およびR4は、いずれも鎖状炭化水素基であり、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等のアルキル基が例示される。これらの置換基は、不斉Mannich型反応の生成物であるN−アシル化アミノ酸誘導体に反映されることから、目的とするN−アシル化アミノ酸誘導体に応じて適宜選択すればよい。例えば、後述のHPA−12を生成する場合には、R3をC1123とすればよい。一方、R4については、反応の障害にならなければとくに限定されないが、例えばメチルやエチル等の短鎖アルキル基とすることができる。
【0047】
この出願の発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法は、前記のN−アシルイミノエステルは、次式(IV)
【0048】
【化24】
Figure 0003780218
【0049】
の化合物と反応される。このとき、(IV)において、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、具体的には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−クロロフェニル等が例示される。また、R7は水素原子であってもよいし、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の炭化水素基や、これらにハロゲン、S、N、O等のヘテロ原子や置換基が結合した基から選択される。一方、R6については、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基とすることもできるし、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等のアルキル基としてもよい。R6がトリアルキルシリルエーテルの場合には、(IV)はシリルエノールエーテルとなり、アルキル基の場合には、(IV)はアルキルビニルエーテルとなる。(IV)では、とくに、R5は不斉Mannich反応後に生成物のN−アシル化アミノ酸誘導体中に残留することから、目的とするN−アシル化アミノ酸誘導体に応じてR5を適宜選択すればよい。例えば、後述のHPA−12を最終目的物とするならば、R5をフェニル基とすればよい。
【0050】
この出願の発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法において、反応物であるN−アシルイミノエステルとシリルエノールエーテル(またはアルキルビニルエーテル)は、試薬として市販されているものや公知の有機合成方法により合成、単離されるものを用いてもよいし、化合物の単離が難しいものや不安定なものについては、Mannich型反応に際してin situで合成して用いてもよい。
【0051】
さらに、この出願の発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法において、Mannich型反応は、前記の新規キラル銅触媒の存在下で行われるものであればよく、その反応条件はとくに限定されない。例えば、反応は、各種の有機溶媒中で行われることが好ましい。溶媒は、出発物質であるN−アシルイミノエステルやシリルエノールエーテル(またはアルキルビニルエーテル)、そして触媒を溶解できるものであればよく、反応温度において固化あるいは分解しないものであればよく、とくに限定されない。例えば、クロロホルムやジクロロメタン等の含ハロゲン溶媒等が例示される。反応温度は、各反応物質が安定で触媒がとくに効率的に作用する温度範囲であればよく、好ましくは室温以下の低温、より好ましくは、−100℃〜室温程度とする。さらに、具体的な反応操作については、一般的な化学反応において実施される攪拌、分離、精製等の操作が適用できる。
【0052】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0053】
【実施例】
以下の実施例において、融点は補正せずに表示した。
【0054】
また、1Hおよび13CNMRスペクトルは、特記しない限り、CDCl3中でJEOL JNM-LA300、JNM-LA400、またはJNM-LA500スペクトロメーターにより測定した。1Hでは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として用いた(δ=0)。また、13Cでは、CDCl3を内部標準として用いた(δ=77.0)。
【0055】
IRスペクトルは、JASCO FT/IR-610スペクトロメーターを用いて測定した。
【0056】
円旋光性は、JASCO P-1010旋光計により測定した。
【0057】
高速液体クロマトグラフィーは、SHIMADZU LC-10AT(液体クロマトグラフ)、SHIMADZU SPD-10A(紫外線検知機)、およびSHIMADZU C-R6Aクロマトパックを用いて行った。
【0058】
ガスクロマトグラフィーおよびマススペクトルはSHIMADZU GC-17AおよびSHIMADZU GCMS-QP5050Aを用いて測定した。
【0059】
カラムクロマトグラフィーは、Silica gel 60 (Merck社)で、また薄層クロマトグラフィーは、Wakogel B-5F(和光純薬)を用いて行った。
【0060】
いずれの反応もアルゴン下、乾燥させたガラス機器を用いて行った。
【0061】
N−アシルイミノエステル2aおよび2bは対応するα−クロログリシン誘導体(Schmitt, M., Bourguignon, J., Barlin, G.B., Davies, L.P. Aust. J. Chem. 1997, 50, 719)より得た。
<実施例1> 新規キラル銅触媒を用いたN−アシルイミノエステルとアセトフェノン由来のシリルエノールエーテルのMannich型反応
次式(A)にしたがって、N−アシルイミノエステルとアセトフェノン由来のシリルエノールエーテルのMannich型反応を行った。
【0062】
【化25】
Figure 0003780218
【0063】
Cu(OTf)2(3.6 mg, 0.01 mmol)を100℃の真空下で2時間乾燥させた後、化合物3e(5.4 mg, 0.0011 mmol)のジクロロメタン(1.0 mL)溶液をアルゴン下、室温で加え、得られた薄緑色の液を濃緑色になるまで1.5時間攪拌した。溶液を0℃まで冷却し、シリルエノールエーテル(0.15mmol)のジクロロメタン(1.0 mL)溶液を加えた。
【0064】
さらに、N−アシルイミノエステル(2a)(0.1mmol)のジクロロメタン(1.0 mL)溶液を20分間かけて添加し、反応溶液を0℃で18時間放置した。
【0065】
反応溶液にTHF−水を添加し、反応を停止させ、2分間攪拌後、室温まで加温された。飽和NH4Cl水溶液を溶液中に加え、ジクロロメタンで抽出した。
【0066】
有機層を塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム上で脱水し、溶媒を減圧除去した。
【0067】
ジクロロメタン(3.0mL)および0.2N HClのジクロロメタン溶液(1.0 mL)を残渣に加え、反応液を室温で10分間攪拌した後、溶媒を除去して乾燥させた。
【0068】
混合物を室温で1時間攪拌し、水(5mL)およびAcOEt(5ml)で反応を停止した。混合液をAcOEtで抽出した後、有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で脱水した。
【0069】
溶媒を除去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物5aを得た。
【0070】
5aの同定結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
Figure 0003780218
【0072】
同様に3eの代わりに表2に示した3a〜3fを配位子としてキラル銅触媒を調製し、不斉Mannich型反応を行った。表2に各キラル銅触媒、反応収率、および光学純度を示した。
【0073】
【表2】
Figure 0003780218
【0074】
表2より、各種の配位子(II)を有するこの出願の発明の新規キラル銅触媒を用いることにより、高いエナンチオ選択性でN−アシル化アミノ酸誘導体が得られることが示された。中でも、R2として1−ナフチル基を有する新規キラル銅触媒を用いた場合に、高い反応収率と光学純度が得られた。
<実施例2>
次に、式(B)に従って、本願発明の新規キラル銅触媒による各種のN−アシルイミノエステル(2)とシリルエノールエーテルまたはビニルエーテルの不斉Mannich型反応について検討した。
【0075】
【化26】
Figure 0003780218
【0076】
反応は、実施例1と同様の方法で行った。触媒は、Cu(OTf)2(3.6 mg, 0.01 mmol)を100℃の真空下で2時間乾燥させた後、化合物3e(5.4 mg, 0.0011 mmol)のジクロロメタン(1.0 mL)溶液をアルゴン下、室温で加え、得られた薄緑色の液を濃緑色になるまで1.5時間攪拌して得た。
【0077】
アルキルビニルエーテルを使用した系では、ジクロロメタン(3.0mL)および0.2N HClのジクロロメタン溶液(1.0 mL)を残渣に加える代わりに、THF(5.0 ml)および1N HCl水溶液(0.25 mL)を残渣に加え、反応液を室温で10分間攪拌した後、溶媒を除去して乾燥させ、生成物を得た。
【0078】
生成物5b〜5dの同定結果を表3〜5に示した。
【0079】
【表3】
Figure 0003780218
【0080】
【表4】
Figure 0003780218
【0081】
【表5】
Figure 0003780218
【0082】
また、表6に反応条件と生成物の収率および光学純度を示した。
【0083】
【表6】
Figure 0003780218
【0084】
表6より、この出願の発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法では、ケトン、エステルおよびチオエステル由来の各種のシリルエノールエーテルからN−アシル化アミノ酸誘導体が高い反応収率とエナンチオ選択性で得られることが確認された。また、アルキルビニルエーテルについても、対応するN−アシル化アミノ酸誘導体への変換が進行した。
<実施例3> HPA−12の合成
スフィンゴ脂質とは、長鎖塩基であるスフィンゴシンと脂肪酸よりなる複合脂質の総称で、グリセロリン脂質、ステロールとともに生体膜の構成成分である。スフィンゴ脂質は、1874年に脳抽出物中に発見されてから、長年、その機能が明らかになっていなかった。しかし、近年、脂質の細胞内シグナル伝達に寄与していることが明らかになり、その重要性が注目されている。
【0085】
脂肪酸がNH2基によりアミド結合したものがセラミドと呼ばれ、すべてのスフィンゴ脂質の共通部分となっている。スフィンゴ脂質は、その親水基の違いにより、さらにスフィンゴ糖脂質とスフィンゴリン脂質に大きく分けられ、多様な構造を有するものが存在する。スフィンゴ脂質からセラミドが生じると、それは様々な合成・代謝系を経てスフィンゴシン、糖脂質、セラミド−1−リン脂質、スフィンゴミエリン等に変換される。細胞外膜に多く存在するセラミド、スフィンゴミエリン、糖脂質はエンドソームによりリソソームへ輸送され、酵素によって分解される。
【0086】
セラミドは、アポトーシスシグナル伝達分子であることが明らかになっており、セラミドを細胞内に導入させると、DNAの断片化や核の濃縮、断片化などが生じ、アポトーシスを起こす。また、細胞内でスフィンゴミエリンを分解してセラミドが生成されてもアポトーシスが引き起こされることが知られている。
【0087】
最近、スフィンゴミエリン合成サイトから小胞体へのセラミド輸送の抑制剤として作用し、細胞死を抑制する物質として、(1R,3R)N−(3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−3−フェニルプロピル)ドデカンアミド(HPA−12)が報告されている(Yasuda, S., Kitagawa, H., Ueno, M., Ishitani, H., Fukasawa, M., Nishijima, M., Kobayashi, S, Hanada, K. J.Biol.Chem. 2001, 276, 43994-44002)。
【0088】
HPA−12を次式(C)に従って合成した。
【0089】
【化27】
Figure 0003780218
【0090】
5a(20.1 mg, 0.050 mmol)のエチレングリコールジメチルエーテル溶液(0.75 mL)に1M K-SelectrideのTHF溶液(0.25 mL, 0.25 mmol)を−45℃で加えた。混合溶液を−45℃で2時間攪拌した後、1M super-hydride(0.25 mL)を滴下した。
【0091】
反応液を室温まで加温した後、1時間攪拌し、水と30% H2O2を加えて反応を停止し、AcOEtで抽出した。抽出液を飽和NaHCO3溶液で洗浄した後、水層を合わせ、AcOEtで抽出した。また、有機層は塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で脱水した。
【0092】
溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、HPA−12を得た。
【0093】
この出願の発明者らは、キラルジルコニウム触媒を用いたエナンチオ選択的Mannich型反応によりHPA−12を合成し、報告している(Ueno, M., Kitagawa, H., Ishitani, H., Yasuda, S., Nishijima, K., Hanada, K., Kobayashi, S. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 7863)。このようなキラルジルコニウム触媒を用いる方法では、HPA−12は6ステップで得られた(全収率6.0%)。一方、本願発明の新規キラル銅錯体を用いる不斉Mannich型反応では、HPA−12を2aから3ステップ(2ポット)で合成でき、全収率は68.6%であった。
【0094】
したがって、本願発明のN−アシル化アミノ酸誘導体の合成方法は、各種のHPA−12類似体への応用範囲が広く、有用性が高いことが示唆される。
【0095】
なお、5aの絶対配置は、発明者らによりRであることが報告されている(Ueno, M., Kitagawa, H., Ishitani, H., Yasuda, S., Nishijima, K., Hanada, K., Kobayashi, S. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 7863)。
【0096】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、新規なキラル銅触媒と、それを用いたN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法が提供される。この発明の方法は、少ない工程でN−アシル化アミノ酸誘導体を高収率およびエナンチオ選択的に製造することを可能とするものであり、各種の天然物質や生理活性物質、あるいはその中間体の合成において有用性が高い。

Claims (8)

  1. N−アシルイミノエステルと、シリルエノールエーテルまたはアルキルビニルエノールエーテルとの反応におけるキラル銅触媒であって、次式(I)
    Figure 0003780218
    (ただし、R1は芳香族炭化水素基であり、R2は1−ナフチル基である)
    で表されることを特徴とする新規キラル銅触媒。
  2. N−アシルイミノエステルと、シリルエノールエーテルまたはアルキルビニルエノールエーテルとの反応におけるキラル銅触媒であって、トリフルオロメタンスルホン酸銅と次式(II)
    Figure 0003780218
    (ただし、R1は芳香族炭化水素基であり、R2は1−ナフチル基である)
    で表される配位子を混合して得られる新規キラル銅触媒。
  3. 1はフェニル基である請求項1または2のいずれかの新規キラル銅触媒。
  4. エナンチオ選択的にN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する方法であって、次式(III)
    Figure 0003780218
    (ただし、R3、R4は同一または別異に置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である)
    で表されるN−アシルイミノエステルと、次式(IV)
    Figure 0003780218
    (ただし、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R6はトリアルキルシリル基、R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)
    で表されるシリルエノールエーテルを、次式(I)
    Figure 0003780218
    (ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
    で表されるキラル銅触媒の存在下に反応させることを特徴とするN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法。
  5. エナンチオ選択的にN−アシル化アミノ酸誘導体を製造する方法であって、次式(III)
    Figure 0003780218
    (ただし、R3、R4は同一または別異に置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基である)
    で表されるN−アシルイミノエステルと、次式(IV)
    Figure 0003780218
    (ただし、R5は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R6はアルキル基、R7は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)
    で表されるアルキルビニルエノールエーテルを、次式(I)
    Figure 0003780218
    (ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
    で表されるキラル銅触媒の存在下に反応させ、酸処理することを特徴とするN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法。
  6. キラル銅触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸銅と次式(II)
    Figure 0003780218
    (ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である)
    で表される配位子を混合して得られる請求項4または5のいずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法。
  7. キラル銅触媒において、R1はフェニル基である請求項4ないし6のいずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法。
  8. キラル銅触媒において、R2は1−ナフチル基である請求項4ないし7のいずれかのN−アシル化アミノ酸誘導体の製造方法。
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