JP3779368B2 - 生体用複合インプラント材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内での生体適合性および耐食性に優れた生体用複合インプラント材に関する。特に、骨代替材料および骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性および生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることの出来る歯科、整形外科などの分野において有用なインプラント材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、整形外科あるいは口腔外科の分野などにおいて、人体の骨や歯根等がその機能を低下もしくは損失した場合、人工骨や人工歯根などを生体に埋め込むことが行われている。特に、骨損傷に至った場合には、損傷を受けた箇所に人工骨を埋設したり、骨が回復するまで補強または固定したりする。また、脊椎手術などでは人工骨の移植などが行われている。
【0003】
一般に、このような人工骨、関節材またはこれらの骨補強材料としては強度に優れているステンレス鋼やコバルト−クロム系合金材料が多く使用されていた。しかし、ステンレス鋼やコバルト−クロム系合金は人体に有害な元素を含有しており、人工関節置換手術後に悪性腫瘍の合併をみたという報告が少なからずある。このように最近生体内における毒性のある金属イオンの溶出が問題視されてきた。
【0004】
ステンレス鋼は、表面に耐食性の高い酸化被膜(=耐食性被膜、不働態膜)を形成し、一般に耐食性材料と言われているが、生体内のような酸素分圧の低く、種々の塩化物が存在する高腐食環境下では孔食や腐食疲労などを起こして破壊しやすくなる。また、手術や使用中のステンレス鋼自体の傷の発生などによって表面の耐食性被膜が部分的に破壊された場合、通常、大気中ならばその不働態膜が急速に再生するのであるが、体内では酸素分圧が低いため、長期にわたって生地が露出し、ステンレス鋼の主要添加成分元素であるニッケルなどの金属イオンが溶出していることが確認されている。金属ニッケル自身はアレルギーまたは発癌性物質としての毒性を持つという報告がなされている。
【0005】
そこで耐食性を増すために、表面に人工的に耐食性被膜を形成することも行われているが、手術中あるいは体内中で何らかの原因で破壊されると耐食性被膜が再生せず、ガルバニック腐食が発生し、金属イオンの溶出がより起こりやすくなるという危険性がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、生体用インプラント材として要求される主な性質をまとめると、以下のようになる。
【0007】
▲1▼生体適合性
細胞毒性を示さないことまたはそれ自体毒性を持たないこと
金属イオンとなって溶出しないこと
生体組織との適合性が良いこと
発癌性および抗原性がないこと
代謝以上を起こさないこと
血液凝固または溶血を起こさないこと
生体内劣化や分解が起こらないこと
吸着性や沈澱物を生じないこと
【0008】
▲2▼機械的性質
適度な静的(引張り、圧縮、曲げ、剪断)強度および延性をもつこと
十分な疲労強度をもつこと
機械加工性に優れていること
【0009】
特に、生体適合性の問題があることから、毒性を持つ金属又はそれを成分として含有する合金材料を用いることが忌避されるようになってきた。
このようなことからステンレス鋼やコバルト−クロム系合金材料に替わる材料として、生体適合性および耐食性に優れかつ軽量であるチタンが着目されるようになってきている。
【0010】
チタン材料は、純チタンとチタン合金に大きく分けられる。
純チタンは酸素量によって強度が変化し、ISO規格では不純物の低いものからGrade1〜4に分けられて規定されている。
上記に示すISO規格の純チタンは、他のインプラント材と比較して、耐食性に優れているという利点があるが、それでも体内において腐食し、溶出することが知られている。我々は不純物を減少させることにより、耐食性をより向上させることができることを見いだした(特願平7−228634号)。(この超高純度チタンを以下ではUP−Tiとする)
しかしながら、純チタンとUP−Tiは、チタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金に比べ機械的強度が劣ると言われており、高強度が必要とされる部分には敬遠されている。
【0011】
一方、チタン合金は、V、Mo、Fe、Crなどのβ安定化元素の増加に従い室温までβ相が存在するようになるが、このβ相の有無によってα型、α−β型及びβ型の3種に分類される。このようなチタン合金の中でも医療用としてTi−6Al−4Vが知られている。これはアメリカASTMおよびISO規格に外科用インプラント材料として規定されているものである。このようなチタン合金は、機械的強度の点では優れているが、しかし、この合金は単独で用いると強い細胞毒性を示すと言われているVが含まれているため、その危険性を指摘する研究者もおり、このためVフリーの生体用チタン合金の開発も行われているが、根本的な解決には至っていないのが現状である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記のような問題につき鋭意試験および研究の結果、本発明者らは、骨代替材料および骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性および生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることのできる歯科、整形外科などの分野において有用な複合インプラント材を見いだし、本発明に至った。
【0013】
チタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金に比べて、純チタンは上記のように、機械的強度が劣るという問題点を残している。本発明においては表層部を生体適合性および耐食性に優れたUP−Tiとし、内層部をチタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金とすることにより、インプラント材として機械的強度の向上をもたらし、かつ生体適合性および耐食性が純チタンと同等であるインプラント材を提供する。即ち、本発明は、純チタンと同様の生体適合性および耐食性に優れ、かつ強度の高い生体用複合インプラント材を提供するものである。
【0014】
本第1の発明は、酸素を主成分とするガス成分の総量が10〜4000ppm、鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限が100ppm、残部チタンからなる外層部と、チタン合金、ステンレス鋼又はコバルト−クロム系合金から選択した一種または二種以上の合金の内層部から形成されていることを特徴とする生体用複合インプラント材に関する。
【0015】
次に第2の発明は、陽極酸化、加熱酸化又は溶融塩酸化などにより、外層部表面に酸化皮膜が形成されていることを特徴とする上記第1に記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0016】
次に第3の発明は、外層部のガス成分として含有される水素量の上限が50ppm、窒素量の上限が200ppm、炭素量の上限が400ppmであることを特徴とする上記第1乃至2のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0017】
次に第4及び5の発明は、外層部のガス成分として含有される水素量の上限がそれぞれ30ppm及び20ppmであることを特徴とする上記第1乃至3のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0018】
次に第6、7及び8の発明は、外層部のガス成分として含有される窒素量の上限がそれぞれ100ppm、50ppmおよび20ppmであることを特徴とする上記第1乃至5のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0019】
次に第9、10及び11の発明は、外層部のガス成分として含有される炭素量の上限がそれぞれ200ppm、100ppm及び50ppmであることを特徴とする上記第1乃至8のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0020】
次に第12及び13の発明は、外層部の鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限がそれぞれ50ppm及び20ppmであることを特徴とする上記第1乃至11のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細およびその作用について説明する。
まず、本発明の生体用複合インプラント材の外層部に含まれるガス成分等の限定理由などについて詳細に説明する。
【0022】
酸素(O)を主成分とするガス成分:本発明において、酸素を主成分とするガス成分の総量を10〜4000ppmとする。不働態化皮膜(酸化膜)の迅速な形成のために、チタンに含有される合金元素や不純物元素の量を極力制限する必要があるが、強度の低下は否めない。酸素量を調節することによって大きく強度の維持を図ることができる。チタン中の酸素の存在は不働態化皮膜(酸化膜)形成には影響を与えることはなく、最低10ppm以上含有させることが望ましい。酸素量の増加に伴って強度も向上するが、4000ppmを越えると加工性が悪くなるため、上限を4000ppmとする。
【0023】
生体用チタン製インプラント材の表面には、陽極酸化、加熱酸化または溶融塩酸化などにより、予め酸化膜を形成することができる。これによって、均一かつ緻密な酸化膜により耐食性を著しく向上させることができる。前記酸素を主成分とするガス成分の総量10〜4000ppmの中には、この表面酸化膜に含まれる酸素量は除く。
【0024】
水素(H):本発明において、水素は50ppm以下とする。均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味から、むしろ妨害要因となるので、極力少ない方が良い。この水素は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下とする。
【0025】
窒素(N):本発明において、窒素は200ppm以下とする。窒素が200ppmを越えると、均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味からむしろ妨害要因となるので、極力少なくすることが必要である。この窒素は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とする。さらに好ましくは20ppm以下とする。
【0026】
炭素(C):本発明において、炭素は400ppm以下とする。炭素はTi中に侵入型固溶体元素として存在し、Tiの強度を増加させる働きがあるが、400ppmを越えると均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味から、むしろ妨害要因となるので、極力少なくすることが必要である。この炭素は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下とする。さらに好ましくは50ppm以下とする。
【0027】
ガス成分以外の成分:本発明において、ガス成分以外の成分含有量は100ppm以下とする。生体用インプラント材として、不働態皮膜(酸化皮膜)を均一かつ緻密に形成するためには、ガス成分以外の成分含有量を極力低減する必要がある。特に長い年月体内に埋め込まれる骨代替品などについては、酸化皮膜が何らかの原因で破壊されたとしても、体内で再び皮膜が迅速に再生されるような材料であることが必要である。本発明のチタン製インプラント材は、体内における低酸素分圧下においても酸化皮膜をより迅速に形成することができる。好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下とする。
【0028】
次に本発明の生体用複合インプラント材の内層部について説明する。
内層部には前述した通りチタン合金、ステンレス鋼又はコバルト−クロム系合金等の機械的強度の優れた材料を用いる。それにより、純チタンと同様の生体適合性および耐食性に優れた利点を持ち、かつインプラント材として十分な強度を有する生体用複合インプラント材を提供することができる。
【0029】
本発明において、外層のチタンはクラッド、メッキ、イオンプレーティングもしくは溶射等により形成することができる。その後、密着性を向上させるために拡散接合を行っても良い。
クラッド−拡散接合の場合は、HIPもしくはCIP、圧延或いは鍛造等により冷間加工後熱処理を行うことにより或いは熱間において上記加工法を行うことにより複合材料とすることができる。
【0030】
【実施例】
生体用インプラント材として好適な本発明の実施例を、クラッド材として使用しないUP−Ti単独、鉄などのガス成分以外の成分含有量が上限を越えているCP−Ti単独、およびステンレス(SUS316L)単独のものを比較例として対比して説明する。
【0031】
(実施例1および比較例1)
本発明の生体用複合インプラント材は以下のようにして作製した。
成分調整を行ったチタン材を電子ビーム溶解法により溶解鋳造した後、パイプ形状に加工した。このパイプ形状のUP−Tiにステンレス(SUS316L)棒を挿入し、真空中でパイプの両端の電子ビーム溶接を行った。次にそれをHIPにより拡散接合を行い、クラッド材とした。さらに圧延加工を行い、φ5mmの丸棒とした(試料1)。
比較例としてはUP−Ti単独(試料2)、CP−Ti単独(試料3)および市販のステンレス(SUS316L)単独(試料3)で同様のφ5mmの丸棒としたものを用いた。
【0032】
〔化学分析値〕
実施例および比較例の化学成分の分析値を表1に示す。
表1に試料1〜試料4の化学分析値を示す。なお、試料1については、外層部分の分析値である。また、表面の酸化皮膜部分は含まれない。
試料1すなわち本発明の実施例は、試料2すなわちUP−Ti単独のものと同じ化学成分組成であり、生体適合性に悪影響を与える可能性のある金属成分の含有量が極めて小さくなっている。また、ガス成分も十分に低減されている。
これに対して、試料3(CP−Ti)は、Feの含有量が高く、0.03重量%(300ppm)含有されている。
また、試料4(SUS316L)では、Fe,Ni,Crの他Mo,Mn等の金属も多く含まれている。
【0033】
【表1】
【0034】
〔耐食性試験(動電位分極曲線)〕
実施例および比較例の各試料について、動電位分極曲線を測定し、耐食性の評価を行った。実施例については、外層部を測定面とした。試料1〜試料3は、測定面を耐水研磨紙により#600まで研磨後、弗酸−過酸化水素水−水からなる研磨液により化学研磨を行い、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。また、試料4(SUS316L単独)は、測定面を鏡面までバフにより仕上げた後、試料1〜3と同様に、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。
測定条件は次の通りである。
電解液:Arにより脱酸素したハンク氏液、液温:310K
参照極:Ag/AgCl、対極:Pt、電位掃引速度:40mV/min
以上の結果を図1に示す。
【0035】
〔耐食性の試験の結果〕
試料1(UP−Ti/SUS316L、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)、試料4(SUS316L単独)とも初期の表面に不働態皮膜が存在していない状態の動電位分極曲線である。図1から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に自然浸漬電位が試料3(CP−Ti)より貴な側にあり、かつ耐食性皮膜形成で試料3よりも電流値が低くなっている。これより本発明の実施例である複合インプラント材は、UP−Ti同様耐食性が高いことがわかる。
試料4のステンレス(SUS316L)は、電流値がすぐに立ち上がるため、耐食性は実施例、UP−Ti、およびCP−Tiのいずれよりも悪い。
さらに、同図1から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に、分極初期において電流の立上がりが鋭く、酸化皮膜の形成が迅速である。これは、体内で酸化皮膜の破壊があっても、酸化皮膜の再形成が他の耐食性材料に比べ速いことを意味し、生体用インプラント材として好適であるという優れた特徴を有していることがわかる。
【0036】
(実施例2および比較例2)
実施例1及び比較例1と同一の工程で、試料1(UP−Ti/SUS316L)、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)および試料4(SUS316L単独)の原試料を作製し、測定面を仕上げ、さらに以下の表面処理を行い、試料とした。化学成分は実施例1および比較例1と同一である。異なる点は、事前に陽極酸化により酸化皮膜を形成した点である。
試料1〜試料3は、シュウ酸−硫酸浴中でSUS304を陰極とし陽極酸化を行った。この時の酸化電圧は6.5Vである。陽極酸化後、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。試料4は、ASTM F−86の方法に従い、硝酸中に30分浸漬し、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。
測定条件は次の通りである。
電解液:Arにより脱酸素したハンク氏液、液温:310K
参照極:Ag/AgCl、対極:Pt、電位掃引速度:40mV/min
以上の結果を図2に示す。
【0037】
〔耐食性の試験の結果〕
試料1(UP−Ti/SUS316L、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)、試料4(SUS316L単独)とも表面に不働態皮膜を形成した状態の動電位分極曲線である。図2から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に自然浸漬電位が試料3(CP−Ti)より貴な側にあり、かつ耐食性皮膜形成で試料3よりも電流値が低くなっている。これより本発明の実施例である複合インプラント材は、UP−Ti同様耐食性が高いことがわかる。
試料4のステンレス(SUS316L)は、試料1〜3よりも貴な側にあるが、電流値が急速に立ち上がるため、耐食性は実施例、UP−Ti、およびCP−Tiのいずれよりも悪い。
以上から明かなように、本発明の複合インプラント材はCP−Tiおよびステンレス(SUS316L)に比較して、耐食性が著しく高く、また酸化皮膜の形成が迅速であることがわかる。
【0038】
次に、本発明の生体用複合インプラント材を用いて以下のような引張試験を行った。
〔引張試験〕(0.2%耐力、引張強さの測定)
試料として、外層部にUP−Tiを用いて内層部に、▲1▼ステンレス(SUS316L)を用いたもの、▲2▼Co−Cr−Mo合金を用いたもの、▲3▼Ti−6Al−4V合金を用いたものの3種類を作製した。そして内層部の fill ratio (内層部断面積/clad全体の断面積)が0%、25%、50%、75%、100%のものについてそれぞれ引張強さおよび0.2%耐力を測定した。
測定条件は、標点間距離:50mm、引張速度:5mm/min、標点間の直径:5.0mmとした。
【0039】
〔引張試験の結果〕
図3〜5に、上記の引張強さおよび0.2%耐力の測定結果を示す。
fill ratio が0%のときは外層部のUP−Tiの強度であり、100%のときはそれぞれの内層部材の強度と一致する。そして、その間の複合インプラント材について、0.2%耐力および引張強さは fill ratio にほぼ比例していることがわかる。つまり、内層部に高強度部材を用いることにより複合インプラント材の全体の強度を大きくすることができる。
【0040】
【発明の効果】
上記の発明の詳細な説明及び実施例に示すように、本発明は生体内での耐食性に優れた生体用インプラント材を提供する。すなわち、骨代替材料及び骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性及び生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることのできる歯科、整形外科などの分野において有用なインプラント材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面に不働態皮膜が形成されていない実施例1および比較例1の各試料の動電位分極曲線である。
【図2】 陽極酸化により、表面に不働態皮膜を形成した実施例2および比較例2の各試料の動電位分極曲線である。
【図3】 本発明で内層部にSUS316Lを用いた場合の引張試験の結果である。
【図4】 本発明で内層部にCo−Cr−Mo合金を用いた場合の引張試験の結果である。
【図5】 本発明で内層部にTi−6Al−4V合金を用いた場合の引張試験の結果である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内での生体適合性および耐食性に優れた生体用複合インプラント材に関する。特に、骨代替材料および骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性および生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることの出来る歯科、整形外科などの分野において有用なインプラント材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、整形外科あるいは口腔外科の分野などにおいて、人体の骨や歯根等がその機能を低下もしくは損失した場合、人工骨や人工歯根などを生体に埋め込むことが行われている。特に、骨損傷に至った場合には、損傷を受けた箇所に人工骨を埋設したり、骨が回復するまで補強または固定したりする。また、脊椎手術などでは人工骨の移植などが行われている。
【0003】
一般に、このような人工骨、関節材またはこれらの骨補強材料としては強度に優れているステンレス鋼やコバルト−クロム系合金材料が多く使用されていた。しかし、ステンレス鋼やコバルト−クロム系合金は人体に有害な元素を含有しており、人工関節置換手術後に悪性腫瘍の合併をみたという報告が少なからずある。このように最近生体内における毒性のある金属イオンの溶出が問題視されてきた。
【0004】
ステンレス鋼は、表面に耐食性の高い酸化被膜(=耐食性被膜、不働態膜)を形成し、一般に耐食性材料と言われているが、生体内のような酸素分圧の低く、種々の塩化物が存在する高腐食環境下では孔食や腐食疲労などを起こして破壊しやすくなる。また、手術や使用中のステンレス鋼自体の傷の発生などによって表面の耐食性被膜が部分的に破壊された場合、通常、大気中ならばその不働態膜が急速に再生するのであるが、体内では酸素分圧が低いため、長期にわたって生地が露出し、ステンレス鋼の主要添加成分元素であるニッケルなどの金属イオンが溶出していることが確認されている。金属ニッケル自身はアレルギーまたは発癌性物質としての毒性を持つという報告がなされている。
【0005】
そこで耐食性を増すために、表面に人工的に耐食性被膜を形成することも行われているが、手術中あるいは体内中で何らかの原因で破壊されると耐食性被膜が再生せず、ガルバニック腐食が発生し、金属イオンの溶出がより起こりやすくなるという危険性がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、生体用インプラント材として要求される主な性質をまとめると、以下のようになる。
【0007】
▲1▼生体適合性
細胞毒性を示さないことまたはそれ自体毒性を持たないこと
金属イオンとなって溶出しないこと
生体組織との適合性が良いこと
発癌性および抗原性がないこと
代謝以上を起こさないこと
血液凝固または溶血を起こさないこと
生体内劣化や分解が起こらないこと
吸着性や沈澱物を生じないこと
【0008】
▲2▼機械的性質
適度な静的(引張り、圧縮、曲げ、剪断)強度および延性をもつこと
十分な疲労強度をもつこと
機械加工性に優れていること
【0009】
特に、生体適合性の問題があることから、毒性を持つ金属又はそれを成分として含有する合金材料を用いることが忌避されるようになってきた。
このようなことからステンレス鋼やコバルト−クロム系合金材料に替わる材料として、生体適合性および耐食性に優れかつ軽量であるチタンが着目されるようになってきている。
【0010】
チタン材料は、純チタンとチタン合金に大きく分けられる。
純チタンは酸素量によって強度が変化し、ISO規格では不純物の低いものからGrade1〜4に分けられて規定されている。
上記に示すISO規格の純チタンは、他のインプラント材と比較して、耐食性に優れているという利点があるが、それでも体内において腐食し、溶出することが知られている。我々は不純物を減少させることにより、耐食性をより向上させることができることを見いだした(特願平7−228634号)。(この超高純度チタンを以下ではUP−Tiとする)
しかしながら、純チタンとUP−Tiは、チタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金に比べ機械的強度が劣ると言われており、高強度が必要とされる部分には敬遠されている。
【0011】
一方、チタン合金は、V、Mo、Fe、Crなどのβ安定化元素の増加に従い室温までβ相が存在するようになるが、このβ相の有無によってα型、α−β型及びβ型の3種に分類される。このようなチタン合金の中でも医療用としてTi−6Al−4Vが知られている。これはアメリカASTMおよびISO規格に外科用インプラント材料として規定されているものである。このようなチタン合金は、機械的強度の点では優れているが、しかし、この合金は単独で用いると強い細胞毒性を示すと言われているVが含まれているため、その危険性を指摘する研究者もおり、このためVフリーの生体用チタン合金の開発も行われているが、根本的な解決には至っていないのが現状である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記のような問題につき鋭意試験および研究の結果、本発明者らは、骨代替材料および骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性および生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることのできる歯科、整形外科などの分野において有用な複合インプラント材を見いだし、本発明に至った。
【0013】
チタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金に比べて、純チタンは上記のように、機械的強度が劣るという問題点を残している。本発明においては表層部を生体適合性および耐食性に優れたUP−Tiとし、内層部をチタン合金、ステンレス鋼またはコバルト−クロム系合金とすることにより、インプラント材として機械的強度の向上をもたらし、かつ生体適合性および耐食性が純チタンと同等であるインプラント材を提供する。即ち、本発明は、純チタンと同様の生体適合性および耐食性に優れ、かつ強度の高い生体用複合インプラント材を提供するものである。
【0014】
本第1の発明は、酸素を主成分とするガス成分の総量が10〜4000ppm、鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限が100ppm、残部チタンからなる外層部と、チタン合金、ステンレス鋼又はコバルト−クロム系合金から選択した一種または二種以上の合金の内層部から形成されていることを特徴とする生体用複合インプラント材に関する。
【0015】
次に第2の発明は、陽極酸化、加熱酸化又は溶融塩酸化などにより、外層部表面に酸化皮膜が形成されていることを特徴とする上記第1に記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0016】
次に第3の発明は、外層部のガス成分として含有される水素量の上限が50ppm、窒素量の上限が200ppm、炭素量の上限が400ppmであることを特徴とする上記第1乃至2のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0017】
次に第4及び5の発明は、外層部のガス成分として含有される水素量の上限がそれぞれ30ppm及び20ppmであることを特徴とする上記第1乃至3のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0018】
次に第6、7及び8の発明は、外層部のガス成分として含有される窒素量の上限がそれぞれ100ppm、50ppmおよび20ppmであることを特徴とする上記第1乃至5のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0019】
次に第9、10及び11の発明は、外層部のガス成分として含有される炭素量の上限がそれぞれ200ppm、100ppm及び50ppmであることを特徴とする上記第1乃至8のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0020】
次に第12及び13の発明は、外層部の鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限がそれぞれ50ppm及び20ppmであることを特徴とする上記第1乃至11のいずれかに記載の生体用複合インプラント材に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細およびその作用について説明する。
まず、本発明の生体用複合インプラント材の外層部に含まれるガス成分等の限定理由などについて詳細に説明する。
【0022】
酸素(O)を主成分とするガス成分:本発明において、酸素を主成分とするガス成分の総量を10〜4000ppmとする。不働態化皮膜(酸化膜)の迅速な形成のために、チタンに含有される合金元素や不純物元素の量を極力制限する必要があるが、強度の低下は否めない。酸素量を調節することによって大きく強度の維持を図ることができる。チタン中の酸素の存在は不働態化皮膜(酸化膜)形成には影響を与えることはなく、最低10ppm以上含有させることが望ましい。酸素量の増加に伴って強度も向上するが、4000ppmを越えると加工性が悪くなるため、上限を4000ppmとする。
【0023】
生体用チタン製インプラント材の表面には、陽極酸化、加熱酸化または溶融塩酸化などにより、予め酸化膜を形成することができる。これによって、均一かつ緻密な酸化膜により耐食性を著しく向上させることができる。前記酸素を主成分とするガス成分の総量10〜4000ppmの中には、この表面酸化膜に含まれる酸素量は除く。
【0024】
水素(H):本発明において、水素は50ppm以下とする。均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味から、むしろ妨害要因となるので、極力少ない方が良い。この水素は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下とする。
【0025】
窒素(N):本発明において、窒素は200ppm以下とする。窒素が200ppmを越えると、均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味からむしろ妨害要因となるので、極力少なくすることが必要である。この窒素は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とする。さらに好ましくは20ppm以下とする。
【0026】
炭素(C):本発明において、炭素は400ppm以下とする。炭素はTi中に侵入型固溶体元素として存在し、Tiの強度を増加させる働きがあるが、400ppmを越えると均一かつ緻密な酸化皮膜を迅速に形成するという意味から、むしろ妨害要因となるので、極力少なくすることが必要である。この炭素は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下とする。さらに好ましくは50ppm以下とする。
【0027】
ガス成分以外の成分:本発明において、ガス成分以外の成分含有量は100ppm以下とする。生体用インプラント材として、不働態皮膜(酸化皮膜)を均一かつ緻密に形成するためには、ガス成分以外の成分含有量を極力低減する必要がある。特に長い年月体内に埋め込まれる骨代替品などについては、酸化皮膜が何らかの原因で破壊されたとしても、体内で再び皮膜が迅速に再生されるような材料であることが必要である。本発明のチタン製インプラント材は、体内における低酸素分圧下においても酸化皮膜をより迅速に形成することができる。好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下とする。
【0028】
次に本発明の生体用複合インプラント材の内層部について説明する。
内層部には前述した通りチタン合金、ステンレス鋼又はコバルト−クロム系合金等の機械的強度の優れた材料を用いる。それにより、純チタンと同様の生体適合性および耐食性に優れた利点を持ち、かつインプラント材として十分な強度を有する生体用複合インプラント材を提供することができる。
【0029】
本発明において、外層のチタンはクラッド、メッキ、イオンプレーティングもしくは溶射等により形成することができる。その後、密着性を向上させるために拡散接合を行っても良い。
クラッド−拡散接合の場合は、HIPもしくはCIP、圧延或いは鍛造等により冷間加工後熱処理を行うことにより或いは熱間において上記加工法を行うことにより複合材料とすることができる。
【0030】
【実施例】
生体用インプラント材として好適な本発明の実施例を、クラッド材として使用しないUP−Ti単独、鉄などのガス成分以外の成分含有量が上限を越えているCP−Ti単独、およびステンレス(SUS316L)単独のものを比較例として対比して説明する。
【0031】
(実施例1および比較例1)
本発明の生体用複合インプラント材は以下のようにして作製した。
成分調整を行ったチタン材を電子ビーム溶解法により溶解鋳造した後、パイプ形状に加工した。このパイプ形状のUP−Tiにステンレス(SUS316L)棒を挿入し、真空中でパイプの両端の電子ビーム溶接を行った。次にそれをHIPにより拡散接合を行い、クラッド材とした。さらに圧延加工を行い、φ5mmの丸棒とした(試料1)。
比較例としてはUP−Ti単独(試料2)、CP−Ti単独(試料3)および市販のステンレス(SUS316L)単独(試料3)で同様のφ5mmの丸棒としたものを用いた。
【0032】
〔化学分析値〕
実施例および比較例の化学成分の分析値を表1に示す。
表1に試料1〜試料4の化学分析値を示す。なお、試料1については、外層部分の分析値である。また、表面の酸化皮膜部分は含まれない。
試料1すなわち本発明の実施例は、試料2すなわちUP−Ti単独のものと同じ化学成分組成であり、生体適合性に悪影響を与える可能性のある金属成分の含有量が極めて小さくなっている。また、ガス成分も十分に低減されている。
これに対して、試料3(CP−Ti)は、Feの含有量が高く、0.03重量%(300ppm)含有されている。
また、試料4(SUS316L)では、Fe,Ni,Crの他Mo,Mn等の金属も多く含まれている。
【0033】
【表1】
【0034】
〔耐食性試験(動電位分極曲線)〕
実施例および比較例の各試料について、動電位分極曲線を測定し、耐食性の評価を行った。実施例については、外層部を測定面とした。試料1〜試料3は、測定面を耐水研磨紙により#600まで研磨後、弗酸−過酸化水素水−水からなる研磨液により化学研磨を行い、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。また、試料4(SUS316L単独)は、測定面を鏡面までバフにより仕上げた後、試料1〜3と同様に、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。
測定条件は次の通りである。
電解液:Arにより脱酸素したハンク氏液、液温:310K
参照極:Ag/AgCl、対極:Pt、電位掃引速度:40mV/min
以上の結果を図1に示す。
【0035】
〔耐食性の試験の結果〕
試料1(UP−Ti/SUS316L、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)、試料4(SUS316L単独)とも初期の表面に不働態皮膜が存在していない状態の動電位分極曲線である。図1から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に自然浸漬電位が試料3(CP−Ti)より貴な側にあり、かつ耐食性皮膜形成で試料3よりも電流値が低くなっている。これより本発明の実施例である複合インプラント材は、UP−Ti同様耐食性が高いことがわかる。
試料4のステンレス(SUS316L)は、電流値がすぐに立ち上がるため、耐食性は実施例、UP−Ti、およびCP−Tiのいずれよりも悪い。
さらに、同図1から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に、分極初期において電流の立上がりが鋭く、酸化皮膜の形成が迅速である。これは、体内で酸化皮膜の破壊があっても、酸化皮膜の再形成が他の耐食性材料に比べ速いことを意味し、生体用インプラント材として好適であるという優れた特徴を有していることがわかる。
【0036】
(実施例2および比較例2)
実施例1及び比較例1と同一の工程で、試料1(UP−Ti/SUS316L)、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)および試料4(SUS316L単独)の原試料を作製し、測定面を仕上げ、さらに以下の表面処理を行い、試料とした。化学成分は実施例1および比較例1と同一である。異なる点は、事前に陽極酸化により酸化皮膜を形成した点である。
試料1〜試料3は、シュウ酸−硫酸浴中でSUS304を陰極とし陽極酸化を行った。この時の酸化電圧は6.5Vである。陽極酸化後、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。試料4は、ASTM F−86の方法に従い、硝酸中に30分浸漬し、純水で洗浄後、大気に直接触れないようにして測定液中に浸漬した。
測定条件は次の通りである。
電解液:Arにより脱酸素したハンク氏液、液温:310K
参照極:Ag/AgCl、対極:Pt、電位掃引速度:40mV/min
以上の結果を図2に示す。
【0037】
〔耐食性の試験の結果〕
試料1(UP−Ti/SUS316L、試料2(UP−Ti単独)、試料3(CP−Ti単独)、試料4(SUS316L単独)とも表面に不働態皮膜を形成した状態の動電位分極曲線である。図2から明らかなように、本発明の実施例である試料1は、試料2(UP−Ti単独)と同様に自然浸漬電位が試料3(CP−Ti)より貴な側にあり、かつ耐食性皮膜形成で試料3よりも電流値が低くなっている。これより本発明の実施例である複合インプラント材は、UP−Ti同様耐食性が高いことがわかる。
試料4のステンレス(SUS316L)は、試料1〜3よりも貴な側にあるが、電流値が急速に立ち上がるため、耐食性は実施例、UP−Ti、およびCP−Tiのいずれよりも悪い。
以上から明かなように、本発明の複合インプラント材はCP−Tiおよびステンレス(SUS316L)に比較して、耐食性が著しく高く、また酸化皮膜の形成が迅速であることがわかる。
【0038】
次に、本発明の生体用複合インプラント材を用いて以下のような引張試験を行った。
〔引張試験〕(0.2%耐力、引張強さの測定)
試料として、外層部にUP−Tiを用いて内層部に、▲1▼ステンレス(SUS316L)を用いたもの、▲2▼Co−Cr−Mo合金を用いたもの、▲3▼Ti−6Al−4V合金を用いたものの3種類を作製した。そして内層部の fill ratio (内層部断面積/clad全体の断面積)が0%、25%、50%、75%、100%のものについてそれぞれ引張強さおよび0.2%耐力を測定した。
測定条件は、標点間距離:50mm、引張速度:5mm/min、標点間の直径:5.0mmとした。
【0039】
〔引張試験の結果〕
図3〜5に、上記の引張強さおよび0.2%耐力の測定結果を示す。
fill ratio が0%のときは外層部のUP−Tiの強度であり、100%のときはそれぞれの内層部材の強度と一致する。そして、その間の複合インプラント材について、0.2%耐力および引張強さは fill ratio にほぼ比例していることがわかる。つまり、内層部に高強度部材を用いることにより複合インプラント材の全体の強度を大きくすることができる。
【0040】
【発明の効果】
上記の発明の詳細な説明及び実施例に示すように、本発明は生体内での耐食性に優れた生体用インプラント材を提供する。すなわち、骨代替材料及び骨補強材料としての十分な強度を持ち、かつ生体適合性及び生体内での耐食性に優れ、骨組織との固定力を増大させることのできる歯科、整形外科などの分野において有用なインプラント材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面に不働態皮膜が形成されていない実施例1および比較例1の各試料の動電位分極曲線である。
【図2】 陽極酸化により、表面に不働態皮膜を形成した実施例2および比較例2の各試料の動電位分極曲線である。
【図3】 本発明で内層部にSUS316Lを用いた場合の引張試験の結果である。
【図4】 本発明で内層部にCo−Cr−Mo合金を用いた場合の引張試験の結果である。
【図5】 本発明で内層部にTi−6Al−4V合金を用いた場合の引張試験の結果である。
Claims (13)
- 酸素を主成分とするガス成分の総量が10〜4000ppm、鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限が100ppm、残部チタンからなる外層部と、チタン合金、ステンレス鋼又はコバルト−クロム系合金から選択した一種または二種以上の合金の内層部から形成されていることを特徴とする生体用複合インプラント材。
- 陽極酸化、加熱酸化又は溶融塩酸化などにより、外層部表面に酸化皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される水素量の上限が50ppm、窒素量の上限が200ppm、炭素量の上限が400ppmであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される水素量の上限が30ppmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される水素量の上限が20ppmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される窒素量の上限が100ppmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される窒素量の上限が50ppmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される窒素量の上限が20ppmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される炭素量の上限が200ppmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される炭素量の上限が100ppmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部のガス成分として含有される炭素量の上限が50ppmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部の鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限が50ppmであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
- 外層部の鉄などのガス成分以外の成分含有量の上限が20ppmであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の生体用複合インプラント材。
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