JP3778831B2 - 水性コンタクト型接着剤による接着方法 - Google Patents
水性コンタクト型接着剤による接着方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、速硬化性の水性コンタクト型接着剤による接着方法に関し、より詳細には、1液タイプの速硬化性の水性コンタクト型接着剤による接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接着剤は、被着体と貼り合わせる際、接着強度が発現するまで仮押さえ・圧締等の作業が必要となるため、初期接着強度に優れ長時間の仮押さえ・圧締が不要な接着剤が望まれている。その問題を解決する接着剤として代表的なものとしてコンタクト型接着剤が挙げられる。コンタクト型接着剤は接着剤を被着体の表面(一方の被着体の片面、または両方の被着体におけるそれぞれの片面)に塗布し、所定の時間放置してコンタクト性が発現した時点で該被着体における接着剤の塗布面を他の被着体に貼り合わせるだけで、直ちに有効な接着強度が発現するため、作業性に優れるものである。このようなコンタクト性を示す接着剤として代表的なものに、溶剤型クロロプレン系接着剤などの有機溶剤を含有する有機溶剤系接着剤があるが、これらは有機溶剤を大量に含有しているため、作業者に対する毒性や環境問題などの欠点を有している。そこで、このような毒性や環境問題を解決するため、水性接着剤があるが、水性接着剤は水分が被着体に吸収されて接着強度を発現するため、少なくとも一方の被着体が多孔質である必要があり、さらに接着する際に仮押さえ・圧締が必要となる。
【0003】
これらの問題を解決するために、クロロプレンラテックスを用いた水性コンタクト型接着剤が提案されているが、コンタクト性が低く、さらには硬化後の耐水性、耐熱性に劣るという欠点がある。しかも、コンタクト性の発現が水の乾燥速度に依存するため、使用範囲が制限されるという欠点もある。
【0004】
また、無溶剤型接着剤としてウレタン系、変成シリコン系接着剤などが挙げられるが、反応型であるため、仮押さえや圧締を必要としている。さらにまた、無溶剤のコンタクト型接着剤としてアクリル骨格を有する変成シリコン系接着剤が提案されているが、コンタクト性はゴム系接着剤と比較して弱く、しかも貼り合わせ可能時間が短く、立ち上がりが遅く、さらには高粘度であるために作業性が低い等の欠点を有している。なお、ホットメルト型接着剤も初期接着強度の点で優れているが、加熱を必要とするため、一般的に使用することができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、初期接着強度が高く、接着に際して仮押さえ・圧締を必要とせず、接着の作業性が良好であり、しかも人体や環境に対して安全性が高い水性コンタクト型接着剤による接着方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、被着体が非多孔質同士であっても接着が可能な水性コンタクト型接着剤による接着方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、さらにまた、コンタクト性が優れ、硬化後の耐水性及び耐熱性が良好な水性コンタクト型接着剤による接着方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のウレタンプレポリマー組成物からなる水性コンタクト型接着剤を用いて、特定の方法により被着体同士を接着させると、水分をある程度保持している状態でも凝集力が発現するので、接着に際して仮押さえ・圧締を行わなくても良好に且つ容易に接着させることができるとともに、人体や環境に対して安全性が高く、また、硬化後には優れた耐水性及び耐熱性が発揮され、しかも、被着体が非多孔質同士であっても接着させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなり、該(A)成分であるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーにおけるアニオン性基が(B)成分である塩基性化合物により中和され、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的又は全体的に(C)成分である水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタンプレポリマー組成物からなる水性シリル化ウレタン系コンタクト型接着剤を、貼り合わせる被着体(I,II)のうち少なくとも何れか一方の被着体の表面に塗布して、所定時間経過後、該水性コンタクト型接着剤による粘着性が発現している状態で、該被着体(I)及び/又は被着体(II)に形成された水性コンタクト型接着剤による接着剤層を介して、被着体(I,II)同士を貼り合わせて貼着させることを特徴とする水性コンタクト型接着剤による接着方法である。
(A)アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)、アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、および第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー
(B)塩基性化合物
(C)水
【0008】
本発明では、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)が、アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)、アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)及びポリイソシアネート化合物(A3)の反応により得られるアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0009】
本発明において、塩基性化合物(B)の割合は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基に対して例えば50〜120モル%である。また、水(C)の使用量は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して例えば65〜900質量部である。
【0010】
また、アニオン性基としてはカルボキシル基であることが好ましい。アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)としては、ジメチロールアルカン酸であることが好ましい。さらにまた、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)が、少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A5)との反応生成物であってもよい。
【0011】
本発明では、被着体(I,II)としては、同一又は異なって、多孔質体または非多孔質体を用いることができる。
【0012】
なお、本発明では、コンタクト型接着剤には、貼り合わせる2つの被着体における両被着体の貼着面に塗布して2つの被着体を貼り合わせる接着剤だけでなく、貼り合わせる2つの被着体における何れか一方の被着体の貼着面に塗布して2つの被着体を貼り合わせる接着剤も含まれる。すなわち、本発明では、コンタクト型接着剤とは、貼り合わせる被着体のうち少なくとも何れか一方の貼着面に塗布して2つの被着体を貼り合わせる接着剤のことを意味している。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)は、アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)、アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)及び第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)の反応により得られる。
【0014】
[アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)]
アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)(以下、「ポリオール(A1)」と称する場合がある)は、分子内にアニオン性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリオール(A1)としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。ポリオール(A1)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
ポリオール(A1)において、多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ソルビトールなどが含まれる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0018】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。具体的には、多価アルコールとホスゲンとの反応物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。また、環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0019】
ポリオレフィンポリオールは、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。
【0020】
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなど]が好適に用いられる。
【0021】
なお、ポリオレフィンポリオールやポリアクリルポリオールにおいて、分子内にヒドロキシル基を導入するために、オレフィンや(メタ)アクリレートの共重合成分として、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど]を用いることができる。
【0022】
ポリオール(A1)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
【0023】
なお、本発明では、ポリオール(A1)とともに、アニオン性基を有していないポリチオール化合物や、アニオン性基を有していないポリアミン化合物を併用することができる。
【0024】
[アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)]
アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)(以下、「ポリオール(A2)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1つのアニオン性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリオール(A2)において、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、中でもカルボキシル基が最適である。ポリオール(A2)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
ポリオール(A2)としては、例えば、前記ポリオール(A1)の項で例示のポリオールにカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオールなどが挙げられる。本発明では、ポリオール(A2)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオールが好ましく、特に、下記式(1)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
(HO)XL(COOH)Y (1)
(但し、式(1)において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である。)
【0026】
前記式(1)において、Lの炭化水素部位としては、脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、X,Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、Yが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。
【0027】
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
【0028】
なお、本発明では、ポリオール(A2)とともに、アニオン性基を有するポリチオール化合物や、アニオン性基を有するポリアミン化合物を併用することができる。
【0029】
[ポリイソシアネート化合物(A3)]
ポリイソシアネート化合物(A3)(以下、「ポリイソシアネート(A3)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート(A3)には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネート(A3)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネ−ト、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネ−ト、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α´−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
ポリイソシアネート(A3)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α´−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。なお、ポリイソシアネート(A3)として、脂肪族ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートを用いると、変色の少ない樹脂を得ることができる。
【0035】
なお、本発明では、ポリイソシアネート(A3)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる
【0036】
また、本発明では、ポリイソシアネート(A3)とともに、ジイソチオシアネート系化合物(例えば、フェニルジイソチオシアネートなど)を併用することができる。
【0037】
[第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)]
第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン(A4)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基(無置換アミノ基又はモノ置換アミノ基)を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)は、第3級アミノ基を1つ以上含有していてもよい。アミノ基含有アルコキシシラン(A4)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
アミノ基含有アルコキシシラン(A4)において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基を好適に用いることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。このようなアルコキシ基は、通常、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)のケイ素原子に結合しており、その数は、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)である。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)のケイ素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
【0039】
また、アミノ基において、第2級アミノ基や第3級アミノ基は、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第2級アミノ基や第3級アミノ基を形成していてもよい。なお、該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。さらに、アミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基など)は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)は、例えば、アミノアルキル基の形態としてアミノ基を含有していてもよい。このようなアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、1−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等のアミノ−C1-3アルキル基や、これに対応する第2級アミノ基(置換基として炭化水素基を1つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)又は第3級アミノ基(置換基として炭化水素基を2つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)などが挙げられる。なお、第2級アミノ基や第3級アミノ基における窒素原子に置換している炭化水素基などの置換基が、さらにアミノ基を有していてもよい。すなわち、例えば、N−アミノアルキル−アミノアルキル基、N−[N−(アミノアルキル)アミノアルキル]アミノアルキル基の形態であってもよい。このように、本発明では、複数のアミノ基が直鎖上に点在する形態で、アミノ基を複数含有することができる。
【0040】
なお、第1級アミノ基とともに、第2級アミノ基を有していてもよい。第1級又は第2級アミノ基の数は、特に制限されないが、通常、1又は2個である。
【0041】
より具体的には、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)としては、例えば、下記式(2a)で表される第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシラン、下記式(2b)で表される第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシラン、下記式(2c)で表される第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランを好適に用いることができる。
【0042】
【化1】
(式(2a)〜(2c)において、R1、R2は、同一又は異なって、アルキル基を示し、R3、R4はそれぞれアルキレン基を示し、R5はアリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。また、mは1〜3の整数である。なお、式(2b)におけるR3及びR4のアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0043】
前記式(2a)〜(2c)において、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。また、R5において、アリール基としてはフェニル基を好適に用いることができ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基を好適に用いることができ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基を好適に用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。
【0044】
さらに具体的には、前記式(2a)で表される第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0045】
前記式(2b)で表される第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。
【0046】
また、前記式(2c)で表される第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニル−β−アミノエチルトリエトキシシラン等のN−フェニル−β−アミノエチルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシランや、これらに対応するN−フェニルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランの他、さらに、上記の置換基がフェニル基である第2級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランに対応するN−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン(例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノメチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシランなど)や、N−アルキルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0047】
本発明では、商品名「KBM6063」、同「X−12−896」、同「KBM576」、同「X−12−565」、同「X−12−580」、同「X−12−5263」、同「X−12−666」、同「KBM6123」、同「X−12−575」、同「X−12−577」、同「X−12−563B」、同「X−12−730」、同「X−12−562」、同「X−12−5202」、同「X−12−5204」、同「KBE9703」(以上、信越化学工業社製)なども用いることができる。従って、N−(5−アミノペンチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β[N−β(アミノエチル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピルアミノ)エタン、ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピル)アミン、N−β(アミノエチル)−β(4−アミノメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン及びこれらに対応する炭化水素基(アルキル基やアルキレン基など)の炭素数が異なるアルコキシシラン系化合物などや、第1級又は第2級アミノ基とともに他の基(スチレン性不飽和基、オレフィン性不飽和基、カルボキシル基など)を有するアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともに塩の形態(塩酸塩など)を有しているアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともにアルコキシシリル基を複数有しているアルコキシシラン系化合物も用いることができる。
【0048】
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)としては、反応のし易さ、広く市販され入手のし易さなどの点から、第1級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシラン(A4)としては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、第2級アミノ基のみを有するアミノ基含有アルコキシシラン(A4)としては、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
【0049】
さらにまた、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)としては、前記に例示のような少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「第1級アミノ基含有アルコキシシラン」と称する場合がある)と、不飽和カルボン酸エステル(A5)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)」と称する場合がある)であってもよい。このようなエステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)において、不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、不飽和カルボン酸のカルボン酸基(カルボキシル基)のうち少なくとも1つ(好ましくはすべて)がエステルの形態となっている化合物であれば、特に制限されない。不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、不飽和1価カルボン酸エステルであってもよく、不飽和多価カルボン酸エステル(例えば、不飽和2価カルボン酸エステルなど)であってもよい。不飽和カルボン酸エステル(A5)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子に直接カルボキシル基又はそのエステル(例えば、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)が結合している化合物が好適である。このような化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0051】
不飽和カルボン酸エステル(A5)において、エステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエステル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などが挙げられる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0052】
不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、前記例示の不飽和カルボン酸エステルの中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(以下、これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。また、マレイン酸ジエステルには、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸2−エチルヘキシル、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジオクタデシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどが含まれる。
【0053】
より具体的には、第1級アミノ基含有アルコキシシランと、不飽和カルボン酸エステル(A5)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物[エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)]としては、不飽和カルボン酸エステル(A5)の炭素−炭素二重結合におけるβ位の炭素原子が、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子に少なくとも結合した化合物等が挙げられる。すなわち、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子が、不飽和カルボン酸エステル(A5)の不飽和結合(炭素−炭素二重結合)に対してマイケル付加反応を行うことにより得られる化合物である。該反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。また、反応に際しては加熱や加圧を行ってもよい。
【0054】
具体的には、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2a)で表される第1級アミノ基のみを有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A5)が下記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(4)で表すことができる。
【0055】
【化2】
(式(3)において、R6、R8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R7はアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す、R9は水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基を示す。)
【0056】
【化3】
(式(4)において、R1〜R3、R6〜R9およびmは前記に同じ。)
【0057】
また、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2b)で表される第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A5)が前記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(5a)又は下記式(5b)で表すことができる。
【0058】
【化4】
(式(5a)及び(5b)において、R1〜R4、R6〜R9およびmは前記に同じ。)
【0059】
前記式(3)、(4)、(5a)および(5b)において、R1〜R4およびmは前記と同様である。具体的には、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。
【0060】
また、R6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。R7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基が挙げられる。また、R7のアリール基としては、フェニル基が挙げられ、R7のシクロアルキル基としてはシクロヘキシル基などが挙げられる。R8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が挙げられる。さらにまた、R9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。また、R9のアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基において、アルキル基部位、アリール基部位、シクロアルキル基部位としては、前記R7で例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0061】
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)としては、少なくとも第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)を含有しているアルコキシシラン化合物[なかでも、前記式(4)、前記式(5a)や前記式(5b)で表されるようなエステル変成アルコキシシラン(A4-5)]が好適である。
【0062】
[アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)]
前述のように、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)、ポリイソシアネート(A3)、およびアミノ基含有アルコキシシラン(A4)の反応生成物であり、分子内にポリオール(A2)に由来するアニオン性基と、主鎖の末端にアミノ基含有アルコキシシラン(A4)に由来するアルコキシシリル基とを有するウレタンプレポリマーである。アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0063】
より具体的には、前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーは、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であり、該反応は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて行うことができる。該アニオン性基含有ウレタンプレポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。
【0064】
なお、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)を混合又は反応する際には、反応促進のために重合触媒を用いることができる。また、反応又は混合は溶媒中で行うことができる。
【0065】
また、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。該反応により、前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基がアルコキシシリル化されて、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製することができる。
【0066】
混合又は反応に際しては、前述のように重合触媒を加えることができる。重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。より具体的には、重合触媒としては、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などが挙げられる。有機錫化合物には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどが含まれる。また、金属錯体としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。さらに、アミン化合物等の塩基性化合物には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などが含まれる。さらにまた、有機燐酸化合物としては、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
【0067】
また、混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。
【0068】
なお、混合に際しては、各成分の混合順序は問わない。しかし、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)を効率よく得るためには、まず、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)の混合物に、ポリイソシアネート(A3)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを調製した後に、該反応混合液にアミノ基含有アルコキシシラン(A4)を加えて反応させることにより、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製することが好ましい。
【0069】
本発明において、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)、ポリイソシアネート(A3)、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)の各成分の割合は特に制限されない。例えば、ポリイソシアネート(A3)と、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)との割合としては、ポリイソシアネート(A3)におけるイソシアネート基/ポリオール(A1)及びポリオール(A2)におけるヒドロキシル基(NCO/OH)(当量比)が、1より大きく1.5以下(好ましくは1.02〜1.3、さらに好ましくは1.04〜1.2)となるような範囲から選択することができる。該NCO/OHの比が大きすぎると(例えば、1.5(当量比)を越えると)、水性コンタクト型接着剤の安定性が低下するとともに、コンタクト性も低下する。一方、該NCO/OHの比が小さすぎると(例えば、1以下(当量比)であると)、シリル基を導入することができなくなり、また、水性コンタクト型接着剤のコンタクト性が低下する。
【0070】
あるいは、ポリイソシアネート(A3)は、アニオン性基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の含有量が、0.05〜2.0質量%(好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。イソシアネート基の含有量は、多すぎても(例えば、2.0質量%を越えても)、少なすぎても(例えば、0.05質量%未満であっても)、水性コンタクト型接着剤のコンタクト性が低下する。
【0071】
また、ポリオール(A2)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基の含有量が、0.2〜3.0質量%(好ましくは0.5〜2.5質量%、さらに好ましくは0.8〜2.0質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。該アニオン性基の含有量が多すぎると(例えば、3.0質量%を越えると)、水性コンタクト型接着剤の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、硬化後の耐水性も低下する。一方、該アニオン性基の含有量が少なすぎると(例えば、0.2質量%未満であると)、水性コンタクト型接着剤中の樹脂成分の分散安定性が低下する。
【0072】
さらにまた、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のケイ素原子の含有量が、0.05〜1.0質量%(好ましくは0.1〜0.8質量%、さらに好ましくは0.2〜0.6質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。該ケイ素含有量が多すぎると(例えば、1.0質量%を越えると)、水性コンタクト型接着剤のコンタクト性が低下し、一方、少なすぎると(例えば、0.05質量%未満であると)、水性コンタクト型接着剤のコンタクト性が低下する。
【0073】
不飽和カルボン酸エステル(A5)の使用量は、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)のうち第1級アミノ基含有アルコキシシランにおける第1級アミノ基及び第2級アミノ基と等モル量であることが望ましいが、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおける第1級アミノ基及び第2級アミノ基1モルに対して0.8〜2モル程度の範囲から選択することができる。なお、不飽和カルボン酸エステルは、少なくとも第2級アミノ基が残存するような条件で反応させて用いることができる。
【0074】
[塩基性化合物(B)]
塩基性化合物(B)としては、塩基性無機化合物であってもよく、塩基性有機化合物であってもよい。塩基性化合物(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩などのアルカリ金属化合物や、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などのアルカリ土類金属化合物の他、アンモニアを好適に用いることができる。
【0075】
一方、塩基性有機化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、塩基性含窒素複素環化合物などのアミン系化合物を好適に用いることができる。脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリs−ブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリイソペンタノールアミン、トリヘキサノールアミンなどのトリアルコールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミンなどのジアルコールアミン;メタノールアミン、エタノールアミンなどのモノアルコールアミンなどの他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。芳香族アミンには、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどが含まれる。塩基性含窒素複素環化合物としては、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジンなどの環状アミンの他、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。
【0076】
本発明では、塩基性化合物(B)としては、アンモニアやアミン系化合物を好適に用いることができる。アミン系化合物の中でも、トリアルキルアミンやトリアルコールアミンなどの第三級アミン化合物が好適である。
【0077】
[水(C)]
本発明では、水(C)としては、イオン交換水や純水などを用いることができる。
【0078】
[水性コンタクト型接着剤]
本発明において、水性コンタクト型接着剤は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)と、水(C)とからなっている。具体的には、水性コンタクト型接着剤は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)、塩基性化合物(B)及び水(C)の混合により、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)及び水(C)とが反応した反応生成物を含む反応組成物である。アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)との反応としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)におけるアニオン性基が塩基性化合物(B)により部分的に又は全体的に中和される中和反応が挙げられる。すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)との反応により、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)におけるアニオン性基が塩となっている。
【0079】
一方、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水(C)との反応としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基が水(C)により加水分解される加水分解反応が挙げられる。すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水(C)との反応により、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的にシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている。すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基のうち少なくとも1つのアルコキシル基が水(C)との加水分解反応の影響を受けている。なお、シラノール基とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するケイ素原子からなる基のことを意味しており、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0080】
従って、前記アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)及び水(C)とが反応した反応生成物としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)におけるアニオン性基が塩基性化合物(B)により中和されてアニオン性基の塩となっており、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水(C)により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタンプレポリマーが挙げられる。すなわち、本発明では、水性コンタクト型接着剤は前記水性シラノール化ウレタンプレポリマーを含む反応組成物(水性シラノール化ウレタンプレポリマー組成物)からなる水性シリル化ウレタン系接着剤である。
【0081】
このように、本発明では、水性コンタクト型接着剤は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)と、塩基性化合物(B)と、水(C)とを混合して調製することができ、その混合の順序は特に制限されない。本発明における水性コンタクト型接着剤としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)に、塩基性化合物(B)及び水(C)を配合して、望ましくは激しい攪拌などを行って、中和反応や加水分解反応等の反応を促進させることにより、水溶液又は水分散液として、調製することができる。
【0082】
なお、本発明では、塩基性化合物(B)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製する際に予め用いることができる。具体的には、例えば、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物と、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)とを反応させる際に、塩基性化合物(B)を加えることにより、塩基性化合物(B)の存在下、前記反応を行うことができる。
【0083】
本発明では、塩基性化合物(B)の使用量としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基に対して50〜120モル%(好ましくは80〜110モル%)程度の範囲から選択することができる。
【0084】
また、本発明では、水(C)の使用量としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して65〜900質量部(好ましくは100〜400質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0085】
本発明では、水性コンタクト型接着剤において、その水酸基価(OHV)としては、特に制限されず、例えば、60〜300mg−KOH/g(好ましくは80〜250mg−KOH/g)程度の範囲から選択することができる。また、カルボキシル基などのアニオン性基の中和率は、特に制限されないが、例えば、80%以上(好ましくは90〜100%)であることが望ましい。さらにまた、樹脂分としては、特に制限されないが、例えば、10〜60質量%(好ましくは20〜50質量%)程度の範囲から選択することができる。
【0086】
なお、本発明では、水性コンタクト型接着剤としては、有機溶剤を全く含まない完全に水性である水性コンタクト型接着剤の形態であってもよい。従来の水性コンタクト型接着剤として市販されているものには若干有機溶剤が含まれているのが実情ではあるが、本発明における水性コンタクト型接着剤では有機溶剤が全く含まれていなくてもよい。なお、水性コンタクト型接着剤には、その水溶液又は水分散液の粘度調整等のために、ケトン類、低級アルコールなどの親水性の有機溶剤(水溶性有機溶剤)が含まれていてもよい。該有機溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、ケトン類には、アセトンなどが含まれる。また、低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール。s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン等の多価アルコールなどが挙げられる。また、水溶性有機溶剤としては、プロピレンカーボネート;ジメチルカーボネート;トリメチルホスフェート;ポリオキシエチレンのジエーテル、ジエステル或いはジアリルエーテル類;グリコールのジエーテル或いはジアセテート類;1,3−ジオキソラン;N−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。このような有機溶剤の使用量としては、調整する粘度の大きさ等により適宜選択することができ、例えば、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して0〜100質量部(好ましくは1〜50質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0087】
また、水性コンタクト型接着剤には、濡れ性改質親水性溶剤が含まれていてもよい。該濡れ性改質親水性溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0088】
本発明では、水性コンタクト型接着剤には、充填材、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー(エマルジョンタッキファイヤーなど)、カップリング剤(チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤などの各種添加剤又は成分、溶剤などが含まれていてもよい。例えば、充填材としては、炭酸カルシウムや各種処理が施された炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。また、可塑剤には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステルなどが含まれる。タッキファイヤーとしては、例えば、安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペンフェノール、石油系樹脂等のエマルジョンタッキファイヤーなどが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤などを用いることができる。なお、溶剤としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)、塩基性化合物(B)及び水(C)からなる水性コンタクト型接着剤と相溶性がいいものであれば特に制限されず、いずれの溶剤を用いてもよい。
【0089】
このような水性コンタクト型接着剤は、初期接着強度が高いので、接着に際して仮押さえ・圧締を必要としない。従って、被着体同士を接着させる作業性が良好であり、複数の被着体を容易に貼り合わせることが可能である。具体的には、本発明では、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)、塩基性化合物(B)及び水(C)からなる水性コンタクト型接着剤を、貼り合わせる被着体(I,II)のうち少なくとも何れか一方の被着体の表面に塗布して、所定時間経過後、水性コンタクト型接着剤による粘着性が発現している状態で、該被着体(I)及び/又は被着体(II)に形成された水性コンタクト型接着剤による接着剤層を介して、被着体(I,II)同士を貼り合わせて貼着させることができる。
【0090】
なお、前記貼り合わせに際して、被着体(I,II)のうち少なくとも一方の被着体の貼着させる表面(貼着面)、すなわち、一方の被着体の貼着面または両方の被着体におけるそれぞれの貼着面に水性コンタクト型接着剤を塗布した後、所定時間放置することにより、水性コンタクト型接着剤の粘着性を発現させることができる。そのため、両被着体(I,II)のうち少なくとも一方の被着体の貼着面に水性コンタクト型接着剤を塗布した後、所定時間経過させてから、該貼着面上に形成されている接着剤層を介して、両被着体の貼着面同士を貼り合わせている。この所定時間は、接着剤の塗布量、温度や湿度などに応じて適宜選択することができる。なお、放置時間が長すぎると、水性コンタクト型接着剤の粘着性が低下して、もはや被着体同士を貼り合わせることができなくなるので、水性コンタクト型接着剤の粘着性が発現している間に、被着体同士を貼り合わせることが重要である。
【0091】
なお、水性コンタクト型接着剤を被着体の塗布面に塗布した後に放置する際の乾燥条件としては、自然乾燥条件および強制乾燥条件のいずれであってもよい。強制乾燥条件を採用することにより、接着剤を塗布した後に放置する時間を短縮させることができる。このように強制乾燥条件での温度を適宜選択して、放置時間をコントロールすることができる。
【0092】
貼り合わせる被着体(I,II)としては、同一の素材からなる被着体であってもよく、異なる素材からなる被着体であってもよい。また、被着体(I,II)はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。さらにまた、被着体(I,II)の素材としては、多孔質材料、非多孔質材料のいずれであってもよい。具体的には、被着体(I,II)の素材としては、例えば、木材、合板、チップボード、パーチクルボード、ハードボードなどの木質材料;スレート板、珪カル板、モルタル、タイルなどの無機質材料;メラミン樹脂化粧板、ベークライト板、発泡スチロール、各種プラスチックフィルム又はシート(例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム又はシート、ポリエステル系フィルム又はシート、ポリオレフィン系フィルム又はシート等)などのプラスチック材料;天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等のゴム材料;段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材料の他、加工紙(例えば、防湿紙などの表面処理された加工紙など)などの難接着紙材料、ガラス材料、金属材料(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅など)などが挙げられる。また、ポリ塩化ビニル製の長尺のシート(長尺塩ビシート)や、リノリウムなどの化学系床材や壁材となる建築材料なども挙げられる。このように、幅広い材料からなる被着体に対して適用することができる。従って、例えば、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材などにおける木材の貼り合わせや、縁貼り、ホゾ、ダボ、トメ、ハギ、角木などを用いた木材の組み立てなどの木材工業における木材の接着、段ボール、合紙、紙管、紙の製袋などの紙加工などで利用することができる。また、各種プラスチックフィルム又はシートなどのプラスチック材料、ゴム材料やリノリウムの貼り合わせや、ガラス材料や金属材料からなる被着体同士の貼り合わせにも利用することができる。
【0093】
本発明の水性コンタクト型接着剤による接着方法では、前述のように、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)、塩基性化合物(B)及び水(C)からなる水性コンタクト型接着剤を用いているので、該接着剤が硬化する硬化速度の水の乾燥速度への依存性が従来のものよりも少なく、初期接着強度が高くなっている。これは、水性コンタクト型接着剤を塗布した後、該接着剤中の水が蒸発して減少すると、接着剤中の水性シラノール化ウレタンプレポリマーにおけるシラノール基が縮合反応を起こすことにより、硬化(架橋)が生じるからである。すなわち、接着剤中の水性シラノール化ウレタンプレポリマーにおけるシラノール基の縮合反応のみが硬化に関与しているためであると思われる。
【0094】
また、水の減少により架橋反応が進行しており、この架橋反応は水がある程度存在していても進行し、水を保持したままでも、凝集力を発現することが可能である。そのため、初期接着強度が高い。
【0095】
さらにまた、硬化速度が速く、初期接着強度が高くなっていることには、水性化するために水性シラノール化ウレタンプレポリマーの分子内に導入されたイオンセンター(カルボン酸塩等のアニオン性基の塩)が、シラノール基間における縮合反応の促進触媒として機能していることも関係していると思われる。
【0096】
なお、水性コンタクト型接着剤において、水中であるにもかかわらず、水性シラノール化ウレタンプレポリマーのシラノール基が安定に存在している理由は定かではないが、例えば、シラノール基が、系中に多量に存在する水分子により保護されて、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているため、及び/又は、シラノール基が、アミノ基含有アルコキシシラン(A4)に由来する第2級アミノ基や第3級アミノ基の窒素原子に結合している置換基(例えば、不飽和カルボン酸エステル(A5)に由来する長鎖の置換基又はそのエステル部位など)により保護され、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているためであると思われる。従って、本発明では、水性コンタクト型接着剤は、1液架橋型タイプの水性接着剤であるにもかかわらず、接着剤の安定性が優れているとともに、硬化速度が速い。
【0097】
このように、本発明の水性コンタクト型接着剤による接着方法では、特定の水性コンタクト型接着剤を用いているので、初期接着強度が高く、被着体同士を貼り合わせる際に仮押さえ・圧締を行う必要がなく、接着の作業性が優れている。特に、有機溶剤を全く含まない完全な水性であっても、初期接着強度が優れており、被着体同士の貼着に際して仮押さえや圧締が必要ではない。
【0098】
しかも、水性であるので(特に、有機溶剤を全く含まない完全な水性であってもよいので)、取り扱い性や作業性が優れており、人体や環境に対して安全性が高い。さらには、被着体としては、従来のように、少なくとも一方が多孔質である必要はなく、非多孔質同士であっても、接着させることができる。また、コンタクト性が優れているだけでなく、接着剤が硬化した後の接着剤部位の耐水性及び耐熱性も良好である。
【0099】
また、本発明では、被着体同士の接着に際して加熱を必要とせず、さらには接着剤が低粘度であるので、作業性が一層優れている。
【0100】
従って、本発明の接着方法は、例えば、水性プロファイルマシンやラッピングマシンにおける接着に対して好適に用いることができる。
【0101】
また、本発明の接着方法は、ポリ塩化ビニル等のプラスチック製、天然ゴムやシリコンゴム等のゴム製の他、リノリウム製などの化学系床材の施工、コルクタイルの施工、幅木の施工などのような初期コンタクト性が要求される内装工事の施工に好適に利用することができる。特に、本発明では、有機溶剤を完全に含んでいない水性コンタクト型接着剤を利用することにより、人体等への安全性を顕著に高めることができるので、有機溶剤の使用を控える傾向にある内装工事において、本発明の水性コンタクト型接着剤による接着方法は極めて好適である。
【0102】
【発明の効果】
本発明の接着方法では、特定の水性コンタクト型接着剤を用いているので、接着に際して仮押さえや圧締を行わずに、被着体同士を接着させており、接着の作業性が良好である。しかも人体や環境に対して優れた安全性で、接着の作業を行うことができる。さらには、被着体同士が非多孔質であっても強固に接着させることができる。また、硬化後の耐水性及び耐熱性も優れている。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
【0104】
[アニオン性基非含有ポリオール化合物]
(1)商品名「NS2471」[旭電化工業社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g;「ポリオール(A1-1)」と称する場合がある]
(2)商品名「PTMG2000」[三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g;「ポリオール(A1-2)」と称する場合がある]
(3)商品名「スミフェン3600」[住化バイエルウレタン社製、ポリプロピレングリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g;「ポリオール(A1-3)」と称する場合がある]
(4)商品名「プラクセル220EC」[ダイセル化学工業社製、ポリカーボネート系ジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g;「ポリオール(A1-4)」と称する場合がある]
【0105】
[アニオン性基含有ポリオール化合物]
(1)2,2−ジメチロールブタン酸[水酸基価:758.1mg−KOH/g;「ポリオール(A2-1)」と称する場合がある]
【0106】
[ポリイソシアネート化合物]
(1)イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%、IPDI;「ポリイソシアネート(A3-1)」と称する場合がある]
【0107】
[第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物]
(1)商品名「KBM602」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)」と称する場合がある]
(2)商品名「KBM903」[信越化学工業社製、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-2)」と称する場合がある]
(3)商品名「KBM573」[信越化学工業社製、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-3)」と称する場合がある]
【0108】
[不飽和カルボン酸エステル]
(1)2−エチルヘキシルアクリレート[「カルボン酸エステル(A5-1)」と称する場合がある]
(2)マレイン酸ジメチル[「カルボン酸エステル(A5-2)」と称する場合がある]
【0109】
[塩基性化合物]
(1)トリエチルアミン
【0110】
[水]
(1)イオン交換水(脱イオン水)
【0111】
(調製例1)
アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1):1モルに対して、カルボン酸エステル(A5-1):2モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて反応生成物[「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a)」と称する場合がある]を得た。
【0112】
(調製例2)
アミノ基含有アルコキシシラン(A4-2):1モルに対して、カルボン酸エステル(A5-1):1モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて反応生成物[「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-b)」と称する場合がある]を得た。
【0113】
(調製例3)
アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1):1モルに対して、カルボン酸エステル(A5-2):2モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて反応生成物[「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-c)」と称する場合がある]を得た。
【0114】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び攪拌装置の付いた4つ口フラスコに、ポリオール(A1-1):100部、ポリオール(A2-1):8部、ポリイソシアネート(A3-1):26部及びアセトン:120部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下6時間反応を行い、残存イソシアネート基が0.8%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの反応混合物全量に、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a):14.7部を配合して混合した後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
次に、カルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン:5.5部を配合し、高速攪拌下、脱イオン水:213部加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、45〜50℃でアセトンを留去した後、脱イオン水により固形分を42%に調整した水性シラノール化ウレタン系樹脂組成物(接着剤)を得た。
【0115】
(実施例2〜9)
表1に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、実施例2〜9に係る水性シラノール化ウレタン系樹脂組成物(接着剤)を得た。
【0116】
(比較例1)
接着剤として、市販の溶剤型クロロプレン系接着剤(商品名「ボンドG17」コニシ社製)を用いた。
【0117】
(比較例2)
接着剤として、市販の水性クロロプレン系接着剤(商品名「ボンド水性G」コニシ社製)を用いた。
【0118】
(比較例3)
接着剤として、市販の変成シリコン系接着剤(商品名「セメダインスーパーX」セメダイン社製)を用いた。
【0119】
なお、実施例1〜9に係る水性シラノール化ウレタン系樹脂組成物に関する各種の特性や割合などについて、表2に示した。表2において、「OHV(mg−KOH/g)」は、水性シラノール化ウレタン系樹脂組成物からなる接着剤の水酸基価(mg−KOH/g)を示している。「NCO/OH(当量比)」は、ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基と、アニオン性基非含有ポリオール化合物及びアニオン性基含有ポリオール化合物におけるヒドロキシル基との割合(NCO/OH)(当量比)を示している。「NCOの割合(%)」は、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基(NCO)の含有量(%)を示している。「カルボキシル基含有率(%)」は、カルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基(COOH)の含有率(%)を示している。「シリル化率(%)」は、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物との反応率(%)を示している。「中和率(%)」は、カルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基がトリエチルアミンにより中和されて塩となった割合(%)を示している。「樹脂分(%)」は、水性シラノール化ウレタン系樹脂組成物からなる接着剤中の水性シラノール化ウレタン系樹脂の割合(%)を示している。「Si含有率(%)」は、水性シラノール化ウレタン系樹脂中のケイ素原子(Si)の含有率(%)を示している。「アセトン使用量(g)」は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させる際に溶媒として用いたアセトンの使用量(g)を示している。
【0120】
【表1】
【0121】
(評価)
実施例1〜9及び比較例1〜3に係る接着剤について、下記のコンタクト性の評価方法、貼り合わせ可能時間の測定方法、耐水性の評価方法臭気の有無の測定・評価を行って、コンタクト性、貼り合わせ可能時間、耐水性および臭気の有無を評価した。なお、評価結果は表2に示した。
【0122】
[コンタクト性の評価方法]
被着体として、アサダ材/アサダ材(それぞれ、100mm×25mm×5mm)を用い、接着剤を両方の被着体の片面に塗布(塗布量:約80g/m2)し、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下、所定の時間放置した後、塗布した面同士を貼り合わせて、該貼り合わせ後、直ちに引張剪断試験(JIS K 6850に準じる)を行って、初期接着強度を測定し、下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
○:接着強度が100mN/mm2以上である
△:接着強度が50〜100mN/mm2である
×:接着強度が50mN/mm2未満である
××:接着剤層の層間剥離が60%以上である
【0123】
[貼り合わせ可能時間の測定方法]
上記コンタクト性の評価が○又は△である時間の範囲を求めた。
【0124】
[耐水性の評価方法]
被着体として、アサダ材/アサダ材(それぞれ、100mm×25mm×5mm)を用い、接着剤を両方の被着体の片面に塗布(塗布量:約80g/m2)し、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下で、前記コンタクト性の評価方法又は貼り合わせ可能時間の測定方法により求められた貼り合わせ可能時間放置した後、貼り合わせ、該貼着された被着体を温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下で7日間養生させた。該7日間養生後の貼着されている被着体について、引張剪断試験(JIS K 6850に準じる)を行って、接着強度を求め、該接着強度を常態接着強度とした。
また、7日間養生後の貼着されている被着体を、温度:20℃の水中に24時間放置した後、引張剪断試験(JIS K 6850に準じる)を行って、接着強度を求め、該接着強度を求め、下記の評価基準により耐水性を評価した。
(評価基準)
○:水中に放置後の接着強度が常態接着強度の50%以上の大きさである。
×:水中に放置後の接着強度が常態接着強度の50%未満の大きさである。
【0125】
[臭気の有無]
接着剤を臭って、臭気の有無を感覚により評価した。
【0126】
【表2】
【0127】
表2から明らかなように、本発明に相当する実施例1〜9の水性接着剤を用いて、被着体同士を貼り合わせると、該水性接着剤は初期接着強度が大きいので、容易に貼り合わせることができ、貼り合わせの作業性が優れている。
【0128】
また、特定の水性コンタクト型接着剤であるので、人体や環境に対して安全性が高い。
【0129】
一方、比較例1では、溶剤型クロロプレン系接着剤を用いているので、溶剤臭があった。また、比較例2では、耐水性が低い。比較例3では、貼り合わせ可能時間が短いため作業性が低く、しかも僅かに溶剤臭が感じられた。
【0130】
さらにまた、実施例1、2で得られた接着剤を、ポリ塩化ビニル製シートの片面に塗布量が約80g/m2となるように塗布し、70℃で45秒乾燥後、MDFをハンドロールを用いて圧着し、直ちに剥離強度をJIS K 6854−2に準じて測定したところ、いずれの接着剤も5N/25mm以上の剥離強度を有しており、充分な初期の収まり性を示した。
【0131】
さらに、実施例1、2で得られた接着剤について、両被着体とも非多孔質である亜鉛メッキ鋼板/亜鉛メッキ鋼板に対するコンタクト性を、前記コンタクト性の評価試験に準じて(被着体として亜鉛メッキ鋼板/亜鉛メッキ鋼板を用いたこと以外は同様である)評価したところ、アサダ材/アサダ材を貼り合わせた場合と同等の結果が得られた。
【0132】
従って、被着体が、少なくとも何れか一方が多孔質である必要はなく、非多孔質同士であっても貼り合わせが可能である。
【0133】
さらにまた、実施例4で得られた接着剤を、スレート板の片面に塗布量が約300g/m2となるように塗布し、23℃且つ55%RHの条件下で15分間放置した後、コルクタイルをハンドロールを用いてスレート板に圧着したところ、ズレ、浮きが認められず、良好な収まり性を示した。
【0134】
また、実施例4で得られた接着剤を、ソフト幅木およびプラスターボードのそれぞれの片面に塗布量が約200g/m2となるように塗布し、23℃且つ55%RHの条件下で15分間放置した後、両者の貼り合わせを行ったところ、ズレ、浮きが認められず、良好な収まり性を示した。
【0135】
さらに、実施例4で得られた接着剤を、化粧ケイ酸カルシウム板およびプラスターボードのそれぞれの片面に塗布量が約200g/m2となるように塗布し、ドライヤーを用いて5分間強制乾燥を行った後、両者の貼り合わせを行い直ちに引き剥がしたところ、プラスターボードが破壊し、良好な収まり性を示した。しかも、強制乾燥を行うことにより、現場施工においても工程の短縮を図ることが可能となっている。
【0136】
このように、各種の内装工事の施工においても、本発明の接着方法を優れた作業性で、人体等に悪影響を与えることなく利用することができる。また、強制乾燥を利用することにより、施工時間の短縮を図ることも可能であり、より一層作業性を向上させることができる。
Claims (11)
- 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなり、該(A)成分であるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーにおけるアニオン性基が(B)成分である塩基性化合物により中和され、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的又は全体的に(C)成分である水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタンプレポリマー組成物からなる水性シリル化ウレタン系コンタクト型接着剤を、貼り合わせる被着体(I,II)のうち少なくとも何れか一方の被着体の表面に塗布して、所定時間経過後、該水性コンタクト型接着剤による粘着性が発現している状態で、該被着体(I)及び/又は被着体(II)に形成された水性コンタクト型接着剤による接着剤層を介して、被着体(I,II)同士を貼り合わせて貼着させることを特徴とする水性コンタクト型接着剤による接着方法。
(A)アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)、アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、および第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー
(B)塩基性化合物
(C)水 - アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)が、アニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)、アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)及びポリイソシアネート化合物(A3)の反応により得られるアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーである請求項1記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- アニオン性基がカルボキシル基である請求項1又は2記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- アニオン性基含有ポリオール化合物(A2)が、ジメチロールアルカン酸である請求項1〜3の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- 第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4)が、少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A5)との反応生成物である請求項1〜4の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- 塩基性化合物(B)の割合が、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基に対して50〜120モル%である請求項1〜5の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- 水(C)の使用量が、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して65〜900質量部である請求項1〜6の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- ポリイソシアネート(A3)と、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)との割合としては、ポリイソシアネート(A3)におけるイソシアネート基/ポリオール(A1)及びポリオール(A2)におけるヒドロキシル基(NCO/OH)(当量比)が1より大きく1.5以下となるような割合である請求項1〜7の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基の含有量が、0.2〜3.0質量%である請求項1〜8の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマー(A)中のケイ素原子の含有量が、0.05〜1質量%である請求項1〜9の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
- 被着体(I,II)が、同一又は異なって、多孔質体または非多孔質体である請求項1〜10の何れかの項に記載の水性コンタクト型接着剤による接着方法。
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