JP3777677B2 - 絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜とその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素膜の表面処理に関し、特に、電子デバイスに用いるためにフッ素化された絶縁性の表面パターンを有する炭素膜とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド膜またはダイヤモンド状炭素膜の表面は、その表面の炭素原子のダングリングボンドが水素原子で終端している場合にp型の導電性を示す。したがって、近年はこのような水素終端した表面領域を含む炭素膜を用いて電子デバイスを形成することが試みられている。ところで、炭素膜の表面に集積回路を形成するためには、水素終端した表面領域であるp型導電性領域の他に回路素子分離のための絶縁性表面領域をも形成する必要がある。
【0003】
このように、炭素膜の表面に導電性領域と絶縁性領域との2種類の領域を形成する方法の一例が、応用物理学会1994年秋季学術講演会予稿集20p−P−9において中村らによって提案されている。中村らによれば、まずMPCVD法によって形成された炭素膜を空冷して、その表面全体が絶縁化される。そして、炭素膜の絶縁化された表面上に、RFスパッタ法でSiO2 膜が部分的に形成される。そのSiO2 膜をマスクとして、たとえば35Torrの圧力下の水素プラズマ中で800℃にて2分間炭素膜を処理することによって、炭素膜表面にp型導電性の水素終端領域が形成される。
【0004】
炭素膜の表面に導電性領域と絶縁性領域を形成する方法のもう1つの例が、応用物理学会1995年秋季学術講演会予稿集29p−A−12において外園らによって提案されている。外園らによれば、まず全表面が水素終端された炭素膜が用意され、その炭素膜表面上に所定のパターンのAuマスクが形成される。この炭素膜表面をAr+ イオンで照射することによって、Auマスクで覆われていない表面領域が絶縁化される。このとき、Ar+ イオンの照射条件としては、たとえば30keVの加速電圧と1.7×1014ions/cm2 のドーズ量が用いられる。なお、Auマスクはそのまま金属導電領域として利用することができ、また、Auマスクの全部または一部が除去された領域はp型導電性領域として利用することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の中村らによる先行技術においては、炭素膜表面上にSiO2 マスクを形成するために、処理されるべき各炭素膜ごとにCVD法,フォトリソグラフィ法,さらにエッチングなどの多くの工程を必要とし、手間がかかる。
【0006】
外園らの技術においても、炭素膜表面上にAuマスクを形成するために、各炭素膜ごとに蒸着,フォトリソグラフィ,さらにエッチングなどの多くの工程を必要とする。また、Auマスクの周縁部におけるイオンの回り込みやイオン衝撃による2次電子などの影響によって、絶縁化表面パターンの周縁部がぼやけやすい。さらに、イオン衝撃によって炭素膜が損傷を受けることもある。
【0007】
以上のような先行技術における課題に鑑み、本発明は、簡略かつ高精度に形成され得る微細な絶縁性表面パターンを含む炭素膜とその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜は、フッ素原子で覆われた第1の絶縁性表面パターンと;水素原子,酸素原子,水酸基,および金属原子から選択された1種によって覆われた第2の表面パターンとを含むことを特徴としている。
【0009】
このような本発明の第1の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜においては、フッ素原子で覆われた第1の表面パターンによって撥水性で極めて安定な絶縁表面を得ることができる。また、第2の表面パターンが水素原子で覆われている場合には、その第2の表面パターンは集積回路におけるp型導電領域として利用することができる。さらに、第2の表面パターンが酸素原子もしくは水酸基によって覆われている場合には、これらの酸素原子や水酸基は親水性であるので、その第2の表面パターン上に無電界めっきによって金属層パターンを形成することができ、そのような金属パターンは集積回路における電気配線パターンとして利用することができる。
【0010】
本発明の第2の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法は、炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガスに接触させてフッ素化し;酸素と水素から選択された一方の元素を含むガス雰囲気中に炭素膜を配置し;光マスクを介して250nm〜0.1nmの範囲内の波長の光を所定のパターンで炭素膜の表面に照射することによって、その所定のパターン内でフッ素元素を選択された水素または酸素で置換することを特徴としている。
【0011】
このような本発明の第2の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法においては、高精度の光マスクを介して所定の短波長の光を炭素膜の表面に照射することによって、炭素膜の表面と強固に結合しているフッ素原子を水素原子または酸素原子と置換することができる。したがって、この置換反応において炭素膜を高温にする必要がないので、炭素膜の熱的損傷を防止することができる。また、反応原子中の電子を波長の短い光を用いて励起するので、光マスクを用いたパターニングにおける回折効果が小さく、空間選択性の高い高精度のフッ素化表面パターンを得ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法は、炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガス中に接触させてフッ素化し;炭素膜の表面を水の薄膜層で覆い;光マスクと水の薄膜層を介して250nm〜100nmおよび1nm〜0.1nmの範囲内に含まれる波長の光を所定のパターンで炭素膜の表面に照射することによって、所定のパターン内でフッ素元素を酸素と水酸基の少なくとも一方で置換することを特徴としている。
【0013】
このような本発明の第3の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法においては、炭素膜表面上のフッ素原子が光照射の下に酸素原子もしくは水酸基と置換され得る。したがって、炭素膜は雰囲気調整し得る真空容器内に配置する必要がなく、炭素膜上のフッ素原子の一部をより簡便に酸素原子もしくは水酸基と置換することができる。なお、このような本発明の第3の実施の態様によって得られる炭素膜上のフッ素化された表面パターンの微細な精度は本発明の第2の態様による方法の場合と同様であることが容易に理解されよう。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの実施の形態においては、まず炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素化される。この炭素膜は、ダイヤモンド膜やダイヤモンド構造を含むダイヤモンド状炭素膜であることが望ましい。炭素膜の表面をフッ素化させるには、炭素膜をフッ素ガス中に一定時間保持すればよい。このフッ素化反応は低温でも進行するが、炭素膜を200℃〜300℃の温度に加熱すれば反応速度が高められる。
【0015】
炭素膜の表面における炭素原子のダングリングボンドがフッ素原子で終端された場合、それらのフッ素原子は炭素膜表面上で極めて安定に存在し得る。特に、ダイヤモンド膜またはダイヤモンド状炭素膜の表面がフッ素化された場合、そのフッ素化表面は非常に安定な撥水性の絶縁表面になる。このとき、炭素膜表面が絶縁性になるためには、表面におけるすべての炭素原子がフッ素原子に覆われる必要がなく、それらの炭素原子の50%以上がフッ素原子によって覆われれば十分な絶縁性が得られる。
【0016】
以上のことから、炭素膜表面をフッ素化することによって、容易にその炭素膜表面を安定な絶縁性表面にし得ることが理解されよう。しかし、このことは、逆に言えば、炭素膜表面上のフッ素原子を熱的に脱離させたり他の原子もしくは分子と置換することによって絶縁性フッ素化表面をパターン化することが困難であることを意味する。たとえば、炭素膜表面上のフッ素原子を熱エネルギによる活性化によって水素原子と置換するには、500℃以上の温度が必要である(たとえば、JNDF第9回ダイヤモンドシンポジウム講演要旨集,1995,第64頁下から第4行〜第3行参照)。したがって、500℃以上の温度における熱プロセスによって炭素膜の絶縁性フッ素化表面から所定の領域中のフッ素原子を除去して絶縁性表面をパターン化することは困難である。そこで、本発明においては、光照射による原子の活性化を利用して炭素膜表面上のフッ素原子を他の原子もしくは分子で置換することによって、絶縁性フッ素化表面をパターン化することを意図している。なお、本願明細書においては、光とは可視光のみならず紫外線やX線などをも含む意味で用いられている。
【0017】
図1は、全表面がフッ素化によって絶縁性にされた炭素膜をパターニングする方法の一例を説明するための概略的な断面図である。図1の方法において、真空チャンバ1内の試料ステージ2上に炭素膜3がセットされる。炭素膜3上には所定のパターンを有する光マスク4が配置され、その光マスク4はマスクフレーム4aによって支持されている。なお、光マスク4はマスクフレーム4aなしに直接炭素膜3上に配置されてもよいことは言うまでもない。
【0018】
真空チャンバ1は、窓膜5によって封止されている。窓膜5として、必要に応じて、特定の波長の光を選択するためのフィルタ膜を用いてもよい。真空チャンバは、まず排気弁6を介して真空にされる。その後、水素原子または酸素原子を含むガスがガス導入弁7を介して導入される。そして、炭素膜3の表面には光マスク4を介して光8が照射される。光8は原子中の電子を励起することによって原子を活性化し、化学反応を促進させる。そのために、光8として、250nm〜0.1nmの範囲内の短い波長を有する光が用いられる。このような短い波長範囲の光は紫外線やX線に相当するが、シンクロトロン放射光を用いれば、このような波長範囲の任意の波長を有する光を利用することができる。光8としてシンクロトロン放射光を用いる場合、通常はシンクロトロン装置の真空を維持するために真空弁9が設けられる。しかし、場合によっては、窓膜5と真空弁9のいずれか一方を省略することも可能である。
【0019】
図1の真空チャンバ1内に水素原子を含むガスが導入されている場合、炭素膜3のフッ素化された表面のうち、光マスク4を介して光8が照射された領域のみにおいてフッ素原子が水素原子に置換される。そして、炭素膜の水素化された表面はp型導電性領域になり、残存するフッ素化表面領域が絶縁性表面パターンとして残される。
【0020】
このとき、置換反応は原子を熱的に活性化させて行なわれるのではなく、光によって原子中の電子を励起することによって行なわれるので、炭素膜が熱的損傷を受けることがない。また、フッ素化表面のパターニングは微細で高精度の光マスクを通過した光によって行なわれ、しかも回折効果の小さな短波長の光によって行なわれるので、微細で高精度の絶縁性表面パターンの形成が可能となる。
【0021】
ところで、図1の真空チャンバ1内に酸素ガスを含むガスが導入されている場合、光マスク4を介して光8が照射された領域の表面は、フッ素原子と置換した酸素原子で終端することになる。このように酸素原子で終端した表面は親水性であり、他方、フッ素化表面パターンは撥水性であるので、親水性表面領域上のみにおいて無電界めっきによって容易に金属膜パターンを形成することができる。
【0022】
以上のようにして得られた微細で高精度のフッ素化表面の絶縁性パターンおよび水素化表面のp型導電性パターンもしくは金属化された導電配線パターンを含む炭素膜を用いて、その表面上にTFT等を含む高密度の集積回路を形成することが可能となる。
【0023】
図2は、全表面がフッ素化によって絶縁性にされた炭素膜をパターニングする方法のもう1つの例を説明するための概略的な断面図である。図2の方法においては、試料ステージ2上に炭素膜3がセットされる。炭素膜3上には水の薄膜層10が付与され、その水の薄膜層10上には押さえシートもしくは板11が被せられる。そして、光マスク4が押さえシートもしくは板11上に配置される。このような状態において、窓膜5と光マスク4を介して光8が炭素膜3の表面に照射される。
【0024】
このとき、光8として、好ましくは250nm〜100nmおよび1nm〜0.1nmの波長範囲に含まれる波長を有する光が用いられる。なぜならば、100nm〜1nmの範囲内の波長を有する光を十分透過できる窓膜がないためである。また、炭素膜3が大気中に配置されている場合には、大気中の酸素によって吸収されにくい180nmより大きな波長を有する光を用いることが好ましい。なお、炭素膜3をたとえばヘリウム雰囲気中に配置すれば、酸素による光の吸収を考慮する必要はない。
【0025】
250nm〜100nmの波長の光8が用いられる場合、そのような光に対して高い透過性を有するシリカガラス,LiF,またはポリイミドなどが押さえシートもしくは板11および窓膜5として用いることができる。他方、1nm〜0.1nmの範囲内の波長の光8が用いられる場合、そのような波長の光に対して良好な透過性を有するベリリウムが押さえシートもしくは板11や窓膜5として用いることができる。
【0026】
図2に示されているように光8が炭素膜3に照射される場合、炭素膜3の表面において光8による原子の活性化によって、フッ素原子が酸素原子もしくは水酸基と置換される。こうして、酸素原子もしくは水酸基によって覆われた炭素膜表面は浸水性表面となり、残存するフッ素化表面領域が撥水性の絶縁表面パターンとして残される。したがって、その親水性表面領域上のみにおいて無電界めっきによって容易に金属膜パターンを形成することができる。
【0027】
さらに、図2に示された方法において、水の層10として昇温された湯を用いるか、または水の層10がホウ酸,過酸化水素水,もしくはアンモニア水を含む溶液を用いることで炭素膜表面上のフッ素原子を水との反応によって酸素原子もしくは水酸基と置換する反応を促進させることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、簡易かつ高精度に形成され得る絶縁性の微細な表面パターンを含む炭素膜とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により炭素膜表面上に絶縁性フッ素化表面パターンを形成する方法の一例を示す概略的な断面図である。
【図2】本発明により炭素膜表面上に絶縁性フッ素化表面パターンを形成するもう1つの例を示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバ
2 試料ステージ
3 炭素膜
4 光マスク
4a マスクフレーム
5 窓膜
6 排気弁
7 ガス導入弁
8 照射光
9 真空弁
10 水の薄膜層
11 押さえシートもしくは板
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素膜の表面処理に関し、特に、電子デバイスに用いるためにフッ素化された絶縁性の表面パターンを有する炭素膜とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド膜またはダイヤモンド状炭素膜の表面は、その表面の炭素原子のダングリングボンドが水素原子で終端している場合にp型の導電性を示す。したがって、近年はこのような水素終端した表面領域を含む炭素膜を用いて電子デバイスを形成することが試みられている。ところで、炭素膜の表面に集積回路を形成するためには、水素終端した表面領域であるp型導電性領域の他に回路素子分離のための絶縁性表面領域をも形成する必要がある。
【0003】
このように、炭素膜の表面に導電性領域と絶縁性領域との2種類の領域を形成する方法の一例が、応用物理学会1994年秋季学術講演会予稿集20p−P−9において中村らによって提案されている。中村らによれば、まずMPCVD法によって形成された炭素膜を空冷して、その表面全体が絶縁化される。そして、炭素膜の絶縁化された表面上に、RFスパッタ法でSiO2 膜が部分的に形成される。そのSiO2 膜をマスクとして、たとえば35Torrの圧力下の水素プラズマ中で800℃にて2分間炭素膜を処理することによって、炭素膜表面にp型導電性の水素終端領域が形成される。
【0004】
炭素膜の表面に導電性領域と絶縁性領域を形成する方法のもう1つの例が、応用物理学会1995年秋季学術講演会予稿集29p−A−12において外園らによって提案されている。外園らによれば、まず全表面が水素終端された炭素膜が用意され、その炭素膜表面上に所定のパターンのAuマスクが形成される。この炭素膜表面をAr+ イオンで照射することによって、Auマスクで覆われていない表面領域が絶縁化される。このとき、Ar+ イオンの照射条件としては、たとえば30keVの加速電圧と1.7×1014ions/cm2 のドーズ量が用いられる。なお、Auマスクはそのまま金属導電領域として利用することができ、また、Auマスクの全部または一部が除去された領域はp型導電性領域として利用することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の中村らによる先行技術においては、炭素膜表面上にSiO2 マスクを形成するために、処理されるべき各炭素膜ごとにCVD法,フォトリソグラフィ法,さらにエッチングなどの多くの工程を必要とし、手間がかかる。
【0006】
外園らの技術においても、炭素膜表面上にAuマスクを形成するために、各炭素膜ごとに蒸着,フォトリソグラフィ,さらにエッチングなどの多くの工程を必要とする。また、Auマスクの周縁部におけるイオンの回り込みやイオン衝撃による2次電子などの影響によって、絶縁化表面パターンの周縁部がぼやけやすい。さらに、イオン衝撃によって炭素膜が損傷を受けることもある。
【0007】
以上のような先行技術における課題に鑑み、本発明は、簡略かつ高精度に形成され得る微細な絶縁性表面パターンを含む炭素膜とその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜は、フッ素原子で覆われた第1の絶縁性表面パターンと;水素原子,酸素原子,水酸基,および金属原子から選択された1種によって覆われた第2の表面パターンとを含むことを特徴としている。
【0009】
このような本発明の第1の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜においては、フッ素原子で覆われた第1の表面パターンによって撥水性で極めて安定な絶縁表面を得ることができる。また、第2の表面パターンが水素原子で覆われている場合には、その第2の表面パターンは集積回路におけるp型導電領域として利用することができる。さらに、第2の表面パターンが酸素原子もしくは水酸基によって覆われている場合には、これらの酸素原子や水酸基は親水性であるので、その第2の表面パターン上に無電界めっきによって金属層パターンを形成することができ、そのような金属パターンは集積回路における電気配線パターンとして利用することができる。
【0010】
本発明の第2の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法は、炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガスに接触させてフッ素化し;酸素と水素から選択された一方の元素を含むガス雰囲気中に炭素膜を配置し;光マスクを介して250nm〜0.1nmの範囲内の波長の光を所定のパターンで炭素膜の表面に照射することによって、その所定のパターン内でフッ素元素を選択された水素または酸素で置換することを特徴としている。
【0011】
このような本発明の第2の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法においては、高精度の光マスクを介して所定の短波長の光を炭素膜の表面に照射することによって、炭素膜の表面と強固に結合しているフッ素原子を水素原子または酸素原子と置換することができる。したがって、この置換反応において炭素膜を高温にする必要がないので、炭素膜の熱的損傷を防止することができる。また、反応原子中の電子を波長の短い光を用いて励起するので、光マスクを用いたパターニングにおける回折効果が小さく、空間選択性の高い高精度のフッ素化表面パターンを得ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法は、炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガス中に接触させてフッ素化し;炭素膜の表面を水の薄膜層で覆い;光マスクと水の薄膜層を介して250nm〜100nmおよび1nm〜0.1nmの範囲内に含まれる波長の光を所定のパターンで炭素膜の表面に照射することによって、所定のパターン内でフッ素元素を酸素と水酸基の少なくとも一方で置換することを特徴としている。
【0013】
このような本発明の第3の態様による絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法においては、炭素膜表面上のフッ素原子が光照射の下に酸素原子もしくは水酸基と置換され得る。したがって、炭素膜は雰囲気調整し得る真空容器内に配置する必要がなく、炭素膜上のフッ素原子の一部をより簡便に酸素原子もしくは水酸基と置換することができる。なお、このような本発明の第3の実施の態様によって得られる炭素膜上のフッ素化された表面パターンの微細な精度は本発明の第2の態様による方法の場合と同様であることが容易に理解されよう。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの実施の形態においては、まず炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素化される。この炭素膜は、ダイヤモンド膜やダイヤモンド構造を含むダイヤモンド状炭素膜であることが望ましい。炭素膜の表面をフッ素化させるには、炭素膜をフッ素ガス中に一定時間保持すればよい。このフッ素化反応は低温でも進行するが、炭素膜を200℃〜300℃の温度に加熱すれば反応速度が高められる。
【0015】
炭素膜の表面における炭素原子のダングリングボンドがフッ素原子で終端された場合、それらのフッ素原子は炭素膜表面上で極めて安定に存在し得る。特に、ダイヤモンド膜またはダイヤモンド状炭素膜の表面がフッ素化された場合、そのフッ素化表面は非常に安定な撥水性の絶縁表面になる。このとき、炭素膜表面が絶縁性になるためには、表面におけるすべての炭素原子がフッ素原子に覆われる必要がなく、それらの炭素原子の50%以上がフッ素原子によって覆われれば十分な絶縁性が得られる。
【0016】
以上のことから、炭素膜表面をフッ素化することによって、容易にその炭素膜表面を安定な絶縁性表面にし得ることが理解されよう。しかし、このことは、逆に言えば、炭素膜表面上のフッ素原子を熱的に脱離させたり他の原子もしくは分子と置換することによって絶縁性フッ素化表面をパターン化することが困難であることを意味する。たとえば、炭素膜表面上のフッ素原子を熱エネルギによる活性化によって水素原子と置換するには、500℃以上の温度が必要である(たとえば、JNDF第9回ダイヤモンドシンポジウム講演要旨集,1995,第64頁下から第4行〜第3行参照)。したがって、500℃以上の温度における熱プロセスによって炭素膜の絶縁性フッ素化表面から所定の領域中のフッ素原子を除去して絶縁性表面をパターン化することは困難である。そこで、本発明においては、光照射による原子の活性化を利用して炭素膜表面上のフッ素原子を他の原子もしくは分子で置換することによって、絶縁性フッ素化表面をパターン化することを意図している。なお、本願明細書においては、光とは可視光のみならず紫外線やX線などをも含む意味で用いられている。
【0017】
図1は、全表面がフッ素化によって絶縁性にされた炭素膜をパターニングする方法の一例を説明するための概略的な断面図である。図1の方法において、真空チャンバ1内の試料ステージ2上に炭素膜3がセットされる。炭素膜3上には所定のパターンを有する光マスク4が配置され、その光マスク4はマスクフレーム4aによって支持されている。なお、光マスク4はマスクフレーム4aなしに直接炭素膜3上に配置されてもよいことは言うまでもない。
【0018】
真空チャンバ1は、窓膜5によって封止されている。窓膜5として、必要に応じて、特定の波長の光を選択するためのフィルタ膜を用いてもよい。真空チャンバは、まず排気弁6を介して真空にされる。その後、水素原子または酸素原子を含むガスがガス導入弁7を介して導入される。そして、炭素膜3の表面には光マスク4を介して光8が照射される。光8は原子中の電子を励起することによって原子を活性化し、化学反応を促進させる。そのために、光8として、250nm〜0.1nmの範囲内の短い波長を有する光が用いられる。このような短い波長範囲の光は紫外線やX線に相当するが、シンクロトロン放射光を用いれば、このような波長範囲の任意の波長を有する光を利用することができる。光8としてシンクロトロン放射光を用いる場合、通常はシンクロトロン装置の真空を維持するために真空弁9が設けられる。しかし、場合によっては、窓膜5と真空弁9のいずれか一方を省略することも可能である。
【0019】
図1の真空チャンバ1内に水素原子を含むガスが導入されている場合、炭素膜3のフッ素化された表面のうち、光マスク4を介して光8が照射された領域のみにおいてフッ素原子が水素原子に置換される。そして、炭素膜の水素化された表面はp型導電性領域になり、残存するフッ素化表面領域が絶縁性表面パターンとして残される。
【0020】
このとき、置換反応は原子を熱的に活性化させて行なわれるのではなく、光によって原子中の電子を励起することによって行なわれるので、炭素膜が熱的損傷を受けることがない。また、フッ素化表面のパターニングは微細で高精度の光マスクを通過した光によって行なわれ、しかも回折効果の小さな短波長の光によって行なわれるので、微細で高精度の絶縁性表面パターンの形成が可能となる。
【0021】
ところで、図1の真空チャンバ1内に酸素ガスを含むガスが導入されている場合、光マスク4を介して光8が照射された領域の表面は、フッ素原子と置換した酸素原子で終端することになる。このように酸素原子で終端した表面は親水性であり、他方、フッ素化表面パターンは撥水性であるので、親水性表面領域上のみにおいて無電界めっきによって容易に金属膜パターンを形成することができる。
【0022】
以上のようにして得られた微細で高精度のフッ素化表面の絶縁性パターンおよび水素化表面のp型導電性パターンもしくは金属化された導電配線パターンを含む炭素膜を用いて、その表面上にTFT等を含む高密度の集積回路を形成することが可能となる。
【0023】
図2は、全表面がフッ素化によって絶縁性にされた炭素膜をパターニングする方法のもう1つの例を説明するための概略的な断面図である。図2の方法においては、試料ステージ2上に炭素膜3がセットされる。炭素膜3上には水の薄膜層10が付与され、その水の薄膜層10上には押さえシートもしくは板11が被せられる。そして、光マスク4が押さえシートもしくは板11上に配置される。このような状態において、窓膜5と光マスク4を介して光8が炭素膜3の表面に照射される。
【0024】
このとき、光8として、好ましくは250nm〜100nmおよび1nm〜0.1nmの波長範囲に含まれる波長を有する光が用いられる。なぜならば、100nm〜1nmの範囲内の波長を有する光を十分透過できる窓膜がないためである。また、炭素膜3が大気中に配置されている場合には、大気中の酸素によって吸収されにくい180nmより大きな波長を有する光を用いることが好ましい。なお、炭素膜3をたとえばヘリウム雰囲気中に配置すれば、酸素による光の吸収を考慮する必要はない。
【0025】
250nm〜100nmの波長の光8が用いられる場合、そのような光に対して高い透過性を有するシリカガラス,LiF,またはポリイミドなどが押さえシートもしくは板11および窓膜5として用いることができる。他方、1nm〜0.1nmの範囲内の波長の光8が用いられる場合、そのような波長の光に対して良好な透過性を有するベリリウムが押さえシートもしくは板11や窓膜5として用いることができる。
【0026】
図2に示されているように光8が炭素膜3に照射される場合、炭素膜3の表面において光8による原子の活性化によって、フッ素原子が酸素原子もしくは水酸基と置換される。こうして、酸素原子もしくは水酸基によって覆われた炭素膜表面は浸水性表面となり、残存するフッ素化表面領域が撥水性の絶縁表面パターンとして残される。したがって、その親水性表面領域上のみにおいて無電界めっきによって容易に金属膜パターンを形成することができる。
【0027】
さらに、図2に示された方法において、水の層10として昇温された湯を用いるか、または水の層10がホウ酸,過酸化水素水,もしくはアンモニア水を含む溶液を用いることで炭素膜表面上のフッ素原子を水との反応によって酸素原子もしくは水酸基と置換する反応を促進させることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、簡易かつ高精度に形成され得る絶縁性の微細な表面パターンを含む炭素膜とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により炭素膜表面上に絶縁性フッ素化表面パターンを形成する方法の一例を示す概略的な断面図である。
【図2】本発明により炭素膜表面上に絶縁性フッ素化表面パターンを形成するもう1つの例を示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバ
2 試料ステージ
3 炭素膜
4 光マスク
4a マスクフレーム
5 窓膜
6 排気弁
7 ガス導入弁
8 照射光
9 真空弁
10 水の薄膜層
11 押さえシートもしくは板
Claims (8)
- フッ素原子で覆われた第1の絶縁性表面パターンと、
水素原子,酸素原子,水酸基,および金属原子から選択された1種によって覆われた第2の表面パターンと
を含むことを特徴とする絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜。 - 前記第1の絶縁性表面パターン内では表面炭素原子の50%以上がフッ素原子によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の炭素膜。
- 前記炭素膜はダイヤモンド構造を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の炭素膜。
- 炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガスに接触させてフッ素化し、
酸素と水素から選択された一方の元素を含むガス雰囲気中に前記炭素膜を配置し、
光マスクを介して250nm〜0.1nmの範囲内の波長の光を所定のパターンで前記炭素膜の表面に照射することによって、前記所定のパターン内で前記フッ素元素を前記選択された元素で置換することを特徴とする絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法。 - 炭素膜の全表面を絶縁性にするためにフッ素を含むガス中に接触させてフッ素化し、
前記炭素膜の表面を水の層で覆い、
光マスクと前記水の層を介して250nm〜100nmおよび1nm〜0.1nmの範囲内に含まれる波長の光を所定のパターンで前記炭素膜の表面に照射することによって、前記所定のパターン内で前記フッ素元素を酸素と水酸基の少なくとも一方で置換することを特徴とする絶縁性のフッ素化表面パターンを有する炭素膜の製造方法。 - 前記水は昇温されていることを特徴とする請求項5に記載の炭素膜の製造方法。
- 前記水はホウ酸,過酸化水素水,およびアンモニアから選択された1つを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の炭素膜の製造方法。
- 酸素と水酸基の少なくとも一方によってフッ素が置換された前記所定パターン上に無電界めっきによって金属膜を形成することを特徴とする請求項4から7のいずれかの項に記載の炭素膜の製造方法。
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