JP3777346B2 - 吊り具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は給電用ケーブル等の被吊り物をレールに吊り下げるための吊り具に関する。
【0002】
【従来の技術】
電源に対して接離する方向への移動が可能な電動ホイスト、天井走行クレーンは工場の比較的高い箇所に設置されたレールに移動自在に支持されている。また、この電動ホイスト、天井走行クレーンに給電するための給電用ケーブルは一対の転動輪を有する複数の吊り具にレールの長手方向へ伸縮自在に吊り下げられている。
【0003】
この吊り具は、レールの幅方向端部に接触する転動輪を有し、左右に離隔する一対の吊り部材と、各吊り部材を支持する支持体と、各吊り部材を支持体に固定する固定部材とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、前記レールは電動ホイスト等の種類によって大きさ、特に幅寸法が異なるため、このレールの大きさが異なる場合においてもレールに支持することができるように構成された吊り具が知られている。この吊り具は、その長手方向の両端部に嵌合孔及び該嵌合孔の中心と直交する方向へ貫通し、小ねじが挿入される貫通孔を有する略角筒形の支持体と、前記嵌合孔に移動可能に嵌合される角軸部及び該角軸部に凹設され、前記小ねじが挿入される長孔を有する一対の吊り部材とを備えている。尚、長孔の長手方向一端は開放され、この開放端から前記小ねじが挿脱される。
【0005】
このように構成された吊り具は、小ねじを弛緩することにより吊り部材を嵌合孔から抜き出すことができるため、吊り具をレールの端部からレールに支持することができない状況の現場であっても、吊り部材の一方を支持体の嵌合孔から抜き出し、レールの途中で該レールの幅方向側方から前記一方の吊り部材を支持体の嵌合孔に挿入することができる。即ち、レールの途中で吊り具をレールに支持することができる。また、小ねじを弛緩した状態で吊り部材の支持体に対する移動量を調整することにより、転動輪間距離を調整することができ、この調整状態で前記小ねじを緊締することにより一対の吊り部材を支持体に固定することができる。
【0006】
【特許文献1】
実公昭50−31534号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、転動輪間距離を調整することができるように構成された吊り具を、比較的高い箇所に設置されたレールに支持する場合、支持体から抜き出された一方の吊り部材と、支持体に嵌合支持されている他方の吊り部材とを、レールの下方から腕を延ばしてレールの幅方向両側に置き、一方の吊り部材を支持体の嵌合孔に挿入し、両方の吊り部材を移動させつつ各吊り部材の支持体に対する移動量を調整(転動輪間距離の調整)し、一対の転動輪をレールの適正位置に接触させ、この状態で小ねじを緊締することにより、吊り部材を支持体に固定し、吊り具をレールに支持している。
【0008】
ところが、転動輪間距離を調整することができるように構成された吊り具にあっては、吊り部材を支持体に対して移動させつつ転動輪間距離を正確に調整することが難しく、吊り具のレールへの支持作業性が悪かった。しかも、転動輪間距離を調整した状態で小ねじにより一方の吊り部材を固定する際に、他方の吊り部材が移動して転動輪間距離が狂うことがあり、改善策が要望されていた。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、各吊り部材を転動輪間の距離が長くなる位置と前記距離が短くなる位置とに停止させる停止手段を設けることにより、比較的高い箇所に設置されたレールの下方から腕を延ばして転動輪間距離を調整しつつ吊り具をレールに支持する場合においても、レールへの支持作業を簡易に行うことができる吊り具を提供することを目的とする。
【0010】
また、停止手段は吊り部材が移動する方向と交差する方向への動作が可能な停止部材と、転動輪間の距離が長くなる位置で停止部材に当接する第1の当接部、及び転動輪間の距離が短くなる位置で停止部材に当接する第2の当接部とを有する構成とすることにより、転動輪間距離の調整が行い易い吊り具を提供することを目的とする。
【0011】
また、停止部材は吊り部材に回動可能に保持された軸部、及び該軸部の回動により前記第1又は第2の当接部に当接する凸部を有する構成とし、支持体は第1及び第2の当接部に連なり、前記凸部が挿入される連通路を有する構成とすることにより、転動輪間距離の調整が行い易い吊り具を提供することを目的とする。
【0012】
また、各吊り部材は前記軸部を挿入するための凹部が設けられた2つの半体と、各半体を接合する接合部材とを有する構成とし、各半体の凹部の間で前記軸部を保持したことにより、停止部材の保持構造を簡単にできるとともに、停止部材を特別に保持する作業を省略できる吊り具を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、前記凸部を、その長手方向が軸部の軸心と直交する矩形部分を有する構造とすることにより、停止部材を約90度回し操作することにより、転動輪間距離を調整することができる吊り具を提供することを目的とする。
【0014】
また、各吊り部材は各転動輪の前記レールと反対側周面を半周以上に亘って覆う湾曲覆い部を有し、該湾曲覆い部の湾曲方向両端に、各吊り部材が各転動輪の軸心を中心として揺動したときに湾曲覆い部のレールとの接触を禁止する接触禁止手段を有する構成とすることにより、吊り具が転動輪の軸心を中心として揺動した際に湾曲覆い部がレールに接触するのを禁止することができる吊り具を提供することを目的とする。
【0015】
また、接触禁止手段を、湾曲覆い部の湾曲方向両端を転動輪の軸心に対して傾斜させる傾斜面とすることにより、接触禁止手段を設けたことによるコストの増加を低減できる吊り具を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る吊り具は、レールに接触する転動輪を有する一対の吊り部材と、各吊り部材を前記転動輪間の距離が長短となる方向への移動を可能に支持する支持体と、各吊り部材を支持体に固定する固定部材とを備えた吊り具において、前記支持体は、前記距離が長い外側の2位置夫々に配された第1の当接部、及び前記距離が短い内側の2位置夫々に配された第2の当接部を有しており、前記吊り部材の夫々は、前記第1の当接部より外側から移動することが可能であり、且つ該吊り部材に回動可能に保持され、回動中心からの長さが長短に異なる第1及び第2の被当接部を有し、保持された位置で回動操作することにより第1及び第2の被当接部の一方が前記第1の当接部に当接し、他方が前記第2の当接部に当接して前記距離が長い位置と距離が短い位置とに前記吊り部材を停止させる停止部材を備えることを特徴とする。
【0017】
第1発明にあっては、一対の吊り部材の固定手段による固定を解除した状態で各吊り部材を移動させるとき、各吊り部材を転動輪間距離が長い位置と短い位置とに停止させることができるため、各吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置に正確に停止させることができ、この停止状態で固定手段を操作することにより各吊り部材を支持体に固定することができる。従って、比較的高い箇所に設置されたレールの下方から腕を延ばして転動輪間距離を調整しつつ吊り部材をレールに支持する場合においても、レールへの支持作業を簡易に行うことができる。
また、停止部材を動作させ、吊り部材を移動させることにより、停止部材を第1又は第2の当接部に当接させることができるため、停止部材の動作位置を確認しつつ吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置へ正確に移動させることができ、転動輪間距離の調整が行い易い。
【0020】
発明に係る吊り具は、前記停止部材は前記吊り部材に回動可能に保持された軸部を有し、該軸部の一端に前記第1及び第2の被当接部を有することを特徴とする。
【0021】
発明にあっては、軸部を中心として停止部材を回動させることができるため、この停止部材を回動操作することにより、凸部と第1の当接部との当接を解除し、この状態で吊り部材を移動させることにより、凸部を連通路に挿入させることができるとともに、該凸部を第2の当接部に当接させることができるため、停止部材の回動位置を確認しつつ吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置へ正確に移動させることができ、転動輪間距離の調整が行い易い。
第3発明に係る吊り具は、前記第1及び第2の被当接部はその長手方向が前記軸部の軸心と直交する矩形をなすことを特徴とする。
第3発明にあっては、矩形部分の長辺側面を第1の当接部に当接させることにより転動輪間距離が長い位置に調整でき、この状態から停止部材を約90度回し、短辺側面を第2の当接部に当接させることにより転動輪間距離が短い位置に調整できる。
【0022】
第4発明に係る吊り具は、各吊り部材は前記軸部を挿入するための凹部が設けられた2つの半体と、各半体を接合する接合部材とを有してなり、各半体の凹部の間で前記軸部を保持してあることを特徴とする。
【0023】
第4発明にあっては、停止部材の軸部を半体の凹部に挿入した状態で半体を接合部材で接合することにより、前記停止部材を吊り部材に保持することができるため、停止部材の保持構造が簡単であり、しかも、停止部材を特別に保持する作業を省略でき、吊り具の加工及び組付け作業性を向上できる。
【0026】
発明に係る吊り具は、各吊り部材は各転動輪の前記レールと反対側周面を半周以上に亘って覆う湾曲覆い部を有しており、該湾曲覆い部の湾曲方向両端に、各吊り部材が各転動輪の軸心を中心として揺動したときに湾曲覆い部のレールとの接触を禁止する接触禁止手段を有することを特徴とする。
【0027】
発明にあっては、複数の吊り具がレールに支持されている状態で隣合う吊り具の転動輪同士が当接するのを防ぐことができるため、吊り具同士が近接する場合においても吊り具の良好な移動性を保つことができる。また、転動輪を覆う湾曲覆い部の湾曲方向両端には接触禁止手段が設けられているため、1つの吊り具が転動輪の軸心を中心として揺動した際に湾曲覆い部がレールに接触するのを禁止することができ、吊り具の良好な移動性を保つことができる。
【0028】
発明に係る吊り具は、前記接触禁止手段は前記湾曲覆い部の湾曲方向両端を前記転動輪の軸心に対して傾斜する傾斜面であることを特徴とする。
【0029】
発明にあっては、吊り部材を例えば成形する際に傾斜面を成形することができるため、接触禁止手段を特別に加工する必要がなく、接触禁止手段を設けたことによるコストの増加を低減できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係る吊り具の構成を示す正面図、図2は吊り具の構成を示す拡大断面図、図3は吊り具の構成を示す拡大底面図、図4は停止部材の構成を示す拡大斜視図、図5はレールに対して吊り具が傾斜した状態を示す一部切欠側面図である。
【0031】
この吊り具は、工場の比較的高い箇所に設置されたレールAに移動自在に支持される電動ホイスト等の移動式電気機器に接続された給電用のケーブルを前記レールAに吊り下げるもので、前記レールAの幅方向端部に接触する転動輪1をその長手方向の上部に有する一対の吊り部材2,2と、各吊り部材2,2の下部を前記転動輪1,1間の距離(以下転動輪間距離と言う)Hが長短となる方向への移動を可能に支持する支持体3と、各吊り部材2,2を前記転動輪間距離Hが長くなる位置と前記転動輪間距離Hが短くなる位置とに停止させる停止手段4,4と、各吊り部材2,2を支持体3に固定する固定部材としての2本の小ねじ5,5と、前記支持体3の長手方向中央部に垂設され、前記ケーブルを挾持する挾持部材6とを備えている。
【0032】
支持体3は、その長手方向が前記レールAの幅方向となる角筒部31と、該角筒部31の上部に突設され、軸受孔32a,32aを有する一対の軸受凸部32,32と、角筒部31の下部に凹設された支持孔33と、該支持孔33の両側に穿設された一対の接合用孔34,34とを備える。
【0033】
角筒部31の両端部には角形の嵌合孔35,35と、該嵌合孔35,35の中心と直交する方向へ貫通し、前記小ねじ5,5が挿入される貫通孔36,36と、嵌合孔35,35内でその長手方向が嵌合孔35,35の中心方向となるように突設された案内凸部37,37とが設けられている。また、角筒部31の両端下部は各吊り部材2,2に保持される停止部材41,41に当接する第1の当接部42,42とし、この第1の当接部42,42と角筒部31の長手方向へ離隔した位置に、前記停止部材41,41に当接する第2の当接部43,43を設けてある。
【0034】
第1の当接部42,42と第2の当接部43,43とは前記停止部材41,41が挿入される連通路44,44により連通している。換言すれば、連通路44,44の端が第2の当接部43,43になっている。さらに、角筒部31の両端は上面側の長さが短くなるように傾斜しており、吊り部材2,2の下部を嵌合孔35,35に挿入する際に、吊り部材2,2の下部を嵌合孔35,35内の下面で支えることができるようにしてある。 また、角筒部31の長手方向中央部における両側部には挿通孔を有する突片38,38が設けられている。
【0035】
このように構成された支持体3は左右方向の中央で接合される合成樹脂製の半体3a,3aからなる。この半体3a,3aは等形状に成形されており、半体3a,3aを、接合用孔34,34に挿通される接合部材としての小ねじ(接合部材)7,7によって接合することにより、前記軸受孔32a,32a、嵌合孔35,35、支持孔33及び連通路44,44を形成することができるとともに、軸体8を介して前記軸受孔32a,32aに転動輪9を支持することができ、さらに、支持孔33に挾持部材6を回動自在に支持することができる。また、突片38,38の挿通孔に吊り環10,10が挿通支持されている。尚、転動輪9はレールAに対して吊り具が上方へ押し上げられる際にレールAの下面に当接し、吊り具のレールAに対する傾きを防ぎ、吊り具の姿勢を保つものである。
【0036】
停止手段4,4は前記停止部材41,41と第1及び第2の当接部42,42、43,43とを有する。停止部材41,41はその軸心が上下となり、各吊り部材2,2に回動可能に保持された軸部41a,41aと、該軸部41a,41aの一端に連なり軸部41a,41aの回動により前記第1の当接部42,42又は第2の当接部43,43に当接する凸部41b,41bと、軸部41a,41aの他端に連なる鍔部41c,41cとを有する。
【0037】
凸部41b,41bはその長手方向が前記軸部41a,41aの軸心と直交する矩形体からなり、この凸部41b,41bの長辺側面を第1の当接部42,42に当接させることにより転動輪間距離Hが長い位置に調整でき、この状態から停止部材41,41を約90度回し、短辺側面を第2の当接部43,43に当接させることにより転動輪間距離Hが短い位置に調整できるようにしてある。尚、凸部41b,41bは矩形体である他、第1及び第2の当接部42,42、43,43と当接する側を矩形部分とし、この矩形部分に対し軸部41a,41aと反対側に摘み部分を突設した構成としてもよく、凸部41b,41bの形状は特に制限されない。
【0038】
吊り部材2,2は、その長手方向が上下となる角柱部21,21と、該角柱部21,21の上部に前記角筒部31と平行的な軸心を有する軸体11,11を介して転動自在に支持された転動輪1,1と、角柱部21,21の下部から直角に屈曲し、前記嵌合孔35,35に移動可能に嵌合される角軸部22,22とを備える。
【0039】
この角軸部22には前記小ねじ5,5及び案内凸部37,37が挿入される長孔23,23が角軸部22,22の端縁から角柱部21,21の近傍にかけて設けられている。また、角柱部21,21の下部にはその軸心が上下となり、前記停止部材41,41の軸部41a,41aを回動可能に保持する保持孔24,24が設けられている。また、角柱部21,21の途中には軸受孔25a,25aを有する凹所25が設けられており、該凹所25に配置される転動輪12,12が軸体13,13を介して前記軸受孔25a,25aに支持されている。また、角柱部21,21の上部及び下部には接合用孔26,26が設けられている。
【0040】
角柱部21,21の上部には軸体11,11を介して前記転動輪1,1を回転自在に支持する軸受孔27,27と、前記転動輪1,1のレールAと反対側周面を半周以上に亘って覆い、上方が凸となるように略C字形に湾曲する湾曲覆い部28,28とが設けられている。
【0041】
湾曲覆い部28,28は、転動輪1,1のレールA側部分を露出させ、このレール側部分に対して上側の反レール側部分を半周以上に亘って覆うことにより、レールAに複数の吊り具が支持された際、隣合う吊り具の転動輪1,1同士が接触することを禁止するようにしてある。また、湾曲覆い部28,28の湾曲方向両端には、各吊り部材2,2が各転動輪1,1の軸心を中心として揺動したときに湾曲覆い部28,28のレールAとの接触を禁止する接触禁止手段14,14が設けられている。この接触禁止手段14,14は、湾曲覆い部28,28の湾曲方向両端を前記転動輪1,1の軸心に対して傾斜、換言すれば、周面がテーパ面である転動輪1の周面と平行的に傾斜させた傾斜面14a,14aにより構成されている。尚、接触禁止手段14,14は傾斜面14a,14aとする他、転動輪1,1の半周を超えた位置で転動輪1,1の軸心と平行的となるようにしてもよく、接触禁止手段14,14の形状は特に制限されない。
【0042】
このように構成された吊り部材2,2は左右方向の中央で接合される合成樹脂製の半体2a,2aからなる。この半体2a,2aは等形状に成形されており、半体2a,2aを、接合用孔26,26に挿通される接合部材としてのピン15,15によって接合することにより、前記保持孔24,24及び軸受孔25a,25a、27,27を形成することができるとともに、保持孔24,24に前記停止部材41,41を保持することができ、さらに、軸体11,11を介して前記軸受孔27,27に転動輪1,1を支持することができ、また、軸体13,13を介して前記軸受孔25a,25aに転動輪12,12を支持することができる。ところで、前記保持孔24,24は、各半体2a,2aに成形された凹部24a,24aからなり、各半体2a,2aを接合することにより円形の保持孔24,24となる。尚、転動輪12,12は吊り具がレールAの幅方向一端側又は他端側へ寄った際にレールAの幅方向一端部又は他端部に接触し、吊り具の移動抵抗を小さくするものである。
【0043】
軸部41a,41aの保持孔24,24への保持は、軸部41a,41aを半体2a,2aの凹部24a,24aに挿入した状態で半体2a,2aを接合することにより、鍔部41c,41cが保持孔24,24の孔縁部分で係止され、軸部41a,41aを回動自在に保持することができる。
【0044】
図6は使用状態を示す斜視図、図7は転動輪間距離を短くした状態の拡大断面図、図8は転動輪間距離を短くした状態の拡大底面図である。
以上のように構成された吊り具は、各吊り部材2,2の角軸部22,22が支持体3の嵌合孔35,35に挿入され、小ねじ5,5の緊締により各吊り部材2,2が支持体3に固定されている。尚、貫通孔36,36の一端部には小ねじ5,5に螺合するナットが保持されている。
【0045】
このように吊り部材2,2が支持体3に固定されている吊り具を、比較的高い箇所に設置されたレールAに支持する場合、前記小ねじ5,5を弛緩し、各吊り部材2,2を支持体3に対して移動可能とした状態で吊り部材2,2の一方を嵌合孔35,35から抜き出し、この一方の吊り部材2と、支持体3に嵌合支持されている他方の吊り部材2とを、レールAの下方から腕を延ばしてレールAの幅方向両側に置き、一方の吊り部材2を支持体3の嵌合孔35に挿入し、レールAの大きさに対応して各吊り部材2,2を移動させることになる。この際、停止部材41,41の凸部41b,41bが第1の当接部42,42と当接する位置にあり、レールAに対して転動輪間距離Hが長いとき、凸部41b,41bを摘んで両方の停止部材41,41を約90度回動させた状態で各吊り部材2,2を接近する方向へ移動させることにより、凸部41b,41bが連通路44,44に入り、該連通路44,44の端に設けられている第2の当接部43,43に凸部41b,41bが当接し、各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが短くなる位置に正確に停止させることができ、この状態で小ねじ5,5を緊締することにより、各吊り部材2,2を固定することができる。
【0046】
また、前記した際に停止部材41,41の凸部41b,41bが連通路44,44内の第2の当接部43,43と当接する位置にあり、レールAに対して転動輪間距離Hが短いとき、各吊り部材2,2を離隔する方向へ移動させて凸部41b,41bを連通路44,44から抜き出し、凸部41b,41bを摘んで両方の停止部材41,41を約90度回動させた状態で各吊り部材2,2を接近する方向へ移動させることにより、第1の当接部42,42に凸部41b,41bが当接し、各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが長くなる位置に正確に停止させることができ、この状態で小ねじ5,5を緊締することにより、各吊り部材2,2を固定することができる。
ところで、レールAは幅寸法が最小の75mmから25mmの間隔で最大の300mmまであるが、本発明によれば、25mm間隔の2種類のレール、例えばレール幅が100mm,125mmのレールに対して転動輪間距離Hの正確な調整を簡易に行うことができる。
【0047】
しかも、停止部材41,41の凸部41b,41bは吊り具の下部にあり、吊り具の下方から作業者が凸部41b,41bを直接動作させて停止部材41,41の位置を確認することができるため、転動輪間距離Hの正確な調整を簡易に行うことができる。従って、比較的高い箇所に設置されたレールAの下方から腕を延ばして転動輪間距離Hを調整しつつ吊り部材2,2をレールAに支持する場合においても、レールAへの支持作業を簡易に行うことができ、作業能率を向上できる。
【0048】
また、停止部材41,41の軸部41a,41aは、凹部24a,24aを有する半体2a,2aの接合により離脱しないように保持することができるため、停止部材41,41の保持構造が簡単であり、停止部材41,41を特別に保持する作業を省略でき、吊り具の加工及び組付け作業性を向上できる。
【0049】
以上のようにレールAに支持された複数の吊り具は、その両端部が吊り環10に結合されるリンクチェン等の連結索16により連結される(図6参照)。そして、各吊り具の挾持部材6に、レールAに移動自在に支持された電動ホイスト等の移動式電気機器Bに接続された給電用のケーブルCを挾持し(図6参照)、該ケーブルCを吊り下げる。このケーブルCは図6のように線形である他、帯形であってもよい。この帯形のケーブルCを用いる際には、挾持部材6として帯形ケーブル用の挾持部材を用いる。
【0050】
複数の吊り具がケーブルCを支持した状態で移動式電気機器BがレールA上を移動し、ケーブルCの長さが短くなることにより、隣合う吊り具同士が近接した場合、各吊り具の湾曲覆い部28,28同士が接触することになり、吊り具の良好な移動性を保つことができる。また、湾曲覆い部28,28の湾曲方向両端には接触禁止手段14,14としての傾斜面14a,14aが設けられているため、移動式電気機器Bが移動する際の力がケーブルCから吊り具に伝わり、図5のようにレールAに対して1つの吊り具が転動輪1,1の軸心を中心として揺動したとき、湾曲覆い部28,28がレールAに接触するのを傾斜面14a,14aによって禁止することができ、吊り具の良好な移動性を保つことができる。
【0051】
実施の形態2
図9は吊り具の実施の形態2の構成を示す要部の拡大底面図である。
この実施の形態2の吊り具は、転動輪間距離Hが長短となる位置の2段階で調整する構成に代えて、転動輪間距離Hが長短となる位置及び中となる位置の3段階で調整する構成としたものである。
【0052】
この実施の形態2において、吊り部材2,2は実施の形態1と同じであるが、支持体3は、第1及び第2の当接部42,42、43,43の間、換言すれば連通路44,44の途中に、転動輪間距離Hが中となる位置で停止部材41,41の凸部41b,41bに当接する第3の当接部45,45を設けてある。この第3の当接部45,45は前記連通路44,44の途中を広幅の凹所44a,44aとし、この凹所44a,44a内で軸部41a,41aを中心として凸部41b,41bを回動させることにより、該凸部41b,41bを第3の当接部45,45に当接させることができるようにしてある。
【0053】
実施の形態2にあっては、レールAに対して転動輪間距離Hが長いとき、停止部材41,41の凸部41b,41bが第1の当接部42,42と当接する位置にある(図9のa参照)。この状態からレールAに対して転動輪間距離Hが中のとき、凸部41b,41bを摘んで両方の停止部材41,41を約90度回動させた状態で各吊り部材2,2を接近する方向へ移動させ、凸部41b,41bが凹所44a,44aへ入った際に、該凸部41b,41bを摘んで両方の停止部材41,41を約90度回動させることにより、第3の当接部45,45に凸部41b,41bが当接し(図9のb参照)、各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが短くなる位置に正確に停止させることができ、この状態で小ねじ5,5を緊締することにより、各吊り部材2,2を固定することができる。
【0054】
図9の(b) の状態からレールAに対して転動輪間距離Hが短のとき、凸部41b,41bを摘んで両方の停止部材41,41を約90度回動させた状態で各吊り部材2,2を接近する方向へ移動させることにより、凸部41b,41bが連通路44,44に入り、該連通路44,44の端に設けられている第2の当接部43,43に凸部41b,41bが当接し、各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが短くなる位置に正確に停止させることができ、この状態で小ねじ5,5を緊締することにより、各吊り部材2,2を固定することができる。
【0055】
また、図9の(a) の状態からレールAに対して転動輪間距離Hが短のとき、図9の(b) の操作を省略することにより各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが短くなる位置に停止させることができる。
このように実施の形態2によれば、25mm間隔の3種類のレール、例えばレール幅が100mm,125mm,150mmのレールに対して転動輪間距離Hの正確な調整を簡易に行うことができる。
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
【0056】
実施の形態3
図10は吊り具の実施の形態3の構成を示す要部の拡大底面図である。
この実施の形態3の吊り具は、実施の形態1のように停止部材41,41を回動操作することなく、各吊り部材2,2の移動操作により停止部材41,41を自動的に動作させるようにしたものである。
【0057】
実施の形態3において、停止部材41,41は球体又は球面部を有するピンからなり、この停止部材41,41を付勢するコイルバネ等の弾性体46,46と、前記停止部材41,41とが吊り部材2,2の保持孔24,24に収容されており、球体の一部又はピンの球面部が保持孔24,24から吊り部材2,2の外側へ突出している。
【0058】
支持体3の角筒部31の下部には、前記停止部材41,41の突出部分(球体の一部又はピンの球面部)が当接する凹形の第1及び第2の当接部42,42、43,43と、各当接部42,42、43,43を上下に貫通し停止部材41,41の当接部42,42又は当接部43,43への当接状態を支持体3の外側から見るための覗き孔42a,42a、43a,43aとが設けられている。
【0059】
実施の形態3にあっては、弾性体46,46の付勢力により停止部材41,41が付勢され、該停止部材41,41の一部が保持孔24,24から外側へ突出して第1の当接部42,42又は第2の当接部43,43に当接するため、停止部材41,41を操作することなく、吊り部材2,2を移動操作することにより、各吊り部材2,2を転動輪間距離Hが長くなる位置、及び短くなる位置に正確に停止させることができ、しかも、この停止部材41,41の当接部42,42、43,43との当接状態を覗き孔42a,42a、43a,43aから確認することができる。
【0060】
尚、支持体3には前記覗き孔42a,42a、43a,43aに連なる連通孔を設け、各停止部材41,41には前記覗き孔42a,42a、43a,43aから外方へ突出する凸部を突設することにより、第1及び第2の当接部42,42、43,43に対する停止部材41,41の位置を見やすくすることができる。
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
【0061】
尚、本発明に係る吊り具は、レールAに支持される電動ホイスト等の移動式電気機器Bに接続された給電用のケーブルを吊り下げる吊り具として用いる他、工場等に設置された機器に接続された給電用ケーブル等の被吊り物をレールに吊り下げる吊り具として用いてもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように第1発明によれば、各吊り部材を転動輪間の距離が長くなる位置と前記距離が短くなる位置とに停止させる停止手段を備えているため、各吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置に正確に停止させることができる。従って、比較的高い箇所に設置されたレールの下方から腕を延ばして転動輪間距離を調整しつつ吊り部材をレールに支持する場合においても、レールへの支持作業を簡易に行うことができる。
また、停止部材を動作させ、吊り部材を移動させることにより、停止部材を第1又は第2の当接部に当接させることができるため、停止部材の動作位置を確認しつつ吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置へ正確に移動させることができ、転動輪間距離の調整が行い易い。
【0064】
発明によれば、停止部材の回動位置を確認しつつ吊り部材を転動輪間距離が長い位置又は短い位置へ正確に移動させることができ、転動輪間距離の調整が行い易い。
第3発明によれば、矩形部分の長辺側面を第1の当接部に当接させることにより転動輪間距離が長い位置に調整でき、この状態から停止部材を約90度回し、短辺側面を第2の当接部に当接させることにより転動輪間距離が短い位置に調整できる。
【0065】
第4発明によれば、停止部材の軸部を半体の凹部に挿入した状態で半体を接合部材で接合することにより、前記停止部材を吊り部材に保持することができるため、停止部材の保持構造が簡単であり、しかも、停止部材を特別に保持する作業を省略でき、吊り具の加工及び組付け作業性を向上できる。
【0067】
発明によれば、複数の吊り具がレールに支持されている状態で隣合う吊り具の転動輪同士が当接するのを防ぐことができるため、吊り具同士が近接する場合においても吊り具の良好な移動性を保つことができ、しかも、1つの吊り具が転動輪の軸心を中心として揺動した際に湾曲覆い部がレールに接触するのを禁止することができ、吊り具の良好な移動性を保つことができる。
【0068】
発明によれば、吊り部材を例えば成形する際に傾斜面を成形することができるため、接触禁止手段を特別に加工する必要がなく、接触禁止手段を設けたことによるコストの増加を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吊り具の構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る吊り具の構成を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る吊り具の構成を示す拡大底面図である。
【図4】本発明に係る吊り具の停止部材の構成を示す拡大斜視図である。
【図5】レールに対して吊り具が傾斜した状態を示す一部切欠側面図である。
【図6】本発明に係る吊り具の使用状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る吊り具の転動輪間距離を短くした状態の拡大断面図である。
【図8】本発明に係る吊り具の転動輪間距離を短くした状態の拡大底面図である。
【図9】本発明に係る吊り具の実施の形態2の構成を示す要部の拡大底面図である。
【図10】本発明に係る吊り具の実施の形態3の構成を示す要部の拡大底面図である。
【符号の説明】
1 転動輪
2 吊り部材
2a 半体
24 保持孔
24a 凹部
28 湾曲覆い部
3 支持体
4 停止手段
41 停止部材
41a 軸部
41b 凸部
42 第1の当接部
43 第2の当接部
44 連通路
5 小ねじ(固定部材)
7 小ねじ(接合部材)
14 接触禁止手段
14a 傾斜面
15 ピン(接合部材)
A レール
H 転動輪間距離

Claims (6)

  1. レールに接触する転動輪を有する一対の吊り部材と、各吊り部材を前記転動輪間の距離が長短となる方向への移動を可能に支持する支持体と、各吊り部材を支持体に固定する固定部材とを備えた吊り具において、前記支持体は、前記距離が長い外側の2位置夫々に配された第1の当接部、及び前記距離が短い内側の2位置夫々に配された第2の当接部を有しており、前記吊り部材の夫々は、前記第1の当接部より外側から移動することが可能であり、且つ該吊り部材に回動可能に保持され、回動中心からの長さが長短に異なる第1及び第2の被当接部を有し、保持された位置で回動操作することにより第1及び第2の被当接部の一方が前記第1の当接部に当接し、他方が前記第2の当接部に当接して前記距離が長い位置と距離が短い位置とに前記吊り部材を停止させる停止部材を備えることを特徴とする吊り具。
  2. 前記停止部材は前記吊り部材に回動可能に保持された軸部を有し、該軸部の一端に前記第1及び第2の被当接部を有する請求項1記載の吊り具。
  3. 前記第1及び第2の被当接部はその長手方向が前記軸部の軸心と直交する矩形をなす請求項1又は2記載の吊り具。
  4. 各吊り部材は前記軸部を挿入するための凹部が設けられた2つの半体と、各半体を接合する接合部材とを有してなり、各半体の凹部の間で前記軸部を保持してある請求項記載の吊り具。
  5. 各吊り部材は各転動輪の前記レールと反対側周面を半周以上に亘って覆う湾曲覆い部を有しており、該湾曲覆い部の湾曲方向両端に、各吊り部材が各転動輪の軸心を中心として揺動したときに湾曲覆い部のレールとの接触を禁止する接触禁止手段を有する請求項1乃至の何れか一つに記載の吊り具。
  6. 前記接触禁止手段は前記湾曲覆い部の湾曲方向両端を前記転動輪の軸心に対して傾斜する傾斜面である請求項記載の吊り具。
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