JP3777220B2 - 車両用多機能シート - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートクッションを子供用シートやアームレストに兼用する車両用多機能シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
左側シート及び右側シート間に配置した中央シートのシートクッションの前半部分を昇降可能に支持し、このシートクッションをアームレストとして利用するものが、実開昭58−68153号公報及び実開昭57−5055号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記実開昭58−68153号公報及び実開昭57−5055号公報に記載された昇降可能なシートクッションを、アームレストとして使用するだけでなく子供用シート及びアームレストに兼用することが考えられる。
【0004】
このような場合、シートバックをリクライニングさせようとすると、上昇位置にあるシートクッションの後端にシートバックの下部前面が干渉し、シートバックを自由にリクライニグさせることができなくなったり、シートクッションとシートバックとの間に隙間が発生して外観が低下する問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、昇降可能なシートクッションを備えた車両用多機能シートにおいて、隙間の発生による外観の低下を回避しながらシートバックの自由なリクライニングを可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、前部シートクッション及び後部シートクッションに2分割されたシートクッションと、このシートクッションの後端に支点を介してリクライニング可能に枢支されたシートバックとを備えてなり、前部シートクッションが昇降機構を介して昇降自在に支持された車両用多機能シートであって、昇降機構が、上昇位置にある前部シートクッションの前後動を許容する前後動許容手段と、シートバックのリクライニング角の変化に追随して前部シートクッションを前後動させるべく、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させる付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、前記昇降機構が、一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能な前部リンク及び後部リンクを備えており、前記付勢手段が前記リンクを起立方向に付勢するスプリングであることを特徴とする。
【0008】
また請求項3に記載された発明は、請求項2の構成に加えて、前記前後動許容手段が、一端が前部リンクに枢支されて他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動可能なロックバーを備えており、前部シートクッションが上昇位置にあるときに該前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形を構成し、ロックバーの他端の前記摺動に伴う前記三角形の変形によって前部シートクッションの前後動を許容することを特徴とする。
【0009】
また請求項4に記載された発明は、請求項3の構成に加えて、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制して該摺動可能範囲の両端で前記三角形を固定することにより、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制することを特徴とする。
【0010】
また請求項5に記載された発明は、請求項3の構成に加えて、後部リンクが略中央部で屈折可能であることを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1の構成によれば、前部シートクッションを上昇させて子供用シート又はアームレストとして使用する場合に、前部シートクッション及びシートバック間に隙間を発生させることなく、且つ前部シートクッション及びシートバックを干渉させることなく、シートバックを自由にリクライニングさせることができる。
【0012】
請求項2の構成によれば、一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能なリンクをスプリングで起立方向に付勢することにより、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させてリクライニング角の変化に追随させることができる。
【0013】
請求項3の構成によれば、上昇位置にある前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形が構成され、ロックバーの他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動する際に前記三角形が変形することにより、前部シートクッションの前後動が許容される。
【0014】
請求項4の構成によれば、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制すると、その規制範囲の両端で前記三角形が固定されるため、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制することができる。
【0015】
請求項5の構成によれば、後部リンクが略中央部で屈折するため、前部シートクッションの昇降や前後動が許容される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図21は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両の前部シートの斜視図、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図2の3部拡大図(シートクッションの下降状態)、図4は図3の4−4線矢視図、図5は昇降機構の分解斜視図、図6はシートクッションの上昇状態を示す図、図7はシートクッションの後退状態を示す図、図8は昇降機構の斜視図(シートクッションの下降状態)、図9は昇降機構の斜視図(シートクッションの上昇状態)、図10はシートクッションの上昇時の作用説明図、図11はシートクッションの下降時の作用説明図、図12はシートバックのリクライニング角を示す図、図13は作用説明図(リクライニング角0°の状態)、図14は作用説明図(リクライニング角10°の状態)、図15は作用説明図(リクライニング角−5°の状態)、図16はシートクッションを子供用シートとして使用する状態を示す図、図17はシートクッションをアームレストとして使用する状態を示す図、図18はシートクッションを物入れとして使用する状態を示す図、図19は前部リンクのスプリングの作用説明図、図20は後部リンクのスプリングの作用説明図、図21は後部リンクの作用説明図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、車両の車室前部には運転者席としての右側シートSR と、助手席としての左側シートSL と、両シートSL ,SR 間に挟まれた中央シートSC とが左右方向に並設される。左側シートSL 及び右側シートSR は、それぞれシートクッション1L ,1R 、シートバック2L ,2R 及びヘッドレスト3L ,3R から構成される。中央シートSC はシートクッション1C ,シートバック2C 及びヘッドレスト3C から構成されており、シートクッション1C は前側の前部シートクッション4及び後側の後部シートクッション5に2分割される。
【0019】
中央シートSC のシートバック2C は前方に倒伏可能であり、後述するようにアームレスト及び幼児用バスケットとして使用することができる。また中央シートSC のシートクッション1C の前部シートクッション4は、後部シートクッション5の前側に連なる下降位置と、その後端が後部シートクッション5の前端に重なり合う上昇位置との間を昇降可能である。中央シートSC の前部シートクッション4を下降させれば大人用シートとして使用することができ、また前部シートクッション4を上昇させればアームレスト又は子供用シートとして使用することができる。
【0020】
次に、図3〜図20に基づいて中央シートSC のシートクッション1C の前部シートクッション4を昇降させる昇降機構25の構造を説明する。
【0021】
図3、図4、図5、図8及び図9に示すように、車室の床面に前後摺動自在に設けたスライダ26上にシートベース27が固設されており、シートベース27の後部に後部シートクッション5が固定され、シートベース27の前部に前記昇降機構25を介して前部シートクッション4が昇降自在に支持される。インナパイプ28の右端がシートベース27の右側前端にボルト29で固定されるとともに、インナパイプ28の左端に溶接したブラケット30がシートベース27の左側前端にボルト31,31で固定される。インナパイプ28の外周に回転自在に嵌合するアウタパイプ32に、左右一対の前部リンク33,33が溶接される。シートベース27にコ字状のストッパアーム34が固定されており、このストッパアーム34に当接可能なストッパ部331 ,331 が前記一対の前部リンク33,33の後端に形成される。
【0022】
クッションベース35の下面にロックブラケット43が複数本のボルト44…で固定される。ロックブラケット43の左右両側面に前後方向に延びる長孔431 ,431 が形成されており、この長孔431 ,431 に左右の前部リンク33,33の先端間に架設したピン45が嵌合する。左右の前部リンク33,33の基端とロックブラケット43の前端間に一対のスプリング46,46が張設されており、このスプリング46,46の弾発力で前部リンク33,33が起立する方向に付勢される。
【0023】
即ち、前部リンク33が僅かに起立した状態を示す図19から明らかなように、引張スプリング46の弾発力Fによってロックブラケット43にピン45回りのモーメントMが作用し、このモーメントMによって前部リンク33とロックブラケット43との成す角度αが増加しようとする。しかしながら、後端を後部リンク39に拘束されてたロックブラケット43は水平姿勢に保って昇降するだけなので、前記角度αの増加に伴って前部リンク33がインナパイプ28を中心に矢印A方向に起立する。このようにして、スプリング46の弾発力によって前部リンク33が起立方向に付勢される。
【0024】
略中央部をピン38で連結された2枚の板体よりなる後部リンク39の後端がピン40でシートベース27に枢支され、その後部リンク39の前端がピン41でロックブラケット43の後端に枢支される。後部リンク39はスプリング42の弾発力によって起立する方向に付勢される。詳しく説明すると、後部リンク39は略中央部で屈曲可能であり、スプリング42は、前部シートクッション4が下降位置にあるとき、その一端が屈曲点(ピン38)より前方で後部リンク38に係止されるとともに、後ろ上がりの状態で他端がシートベース27に係止されている。
【0025】
従って、図20(A)に示すように、ロックブラケット43(即ち、前部シートクッション4)が下降位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させるとともに、前記弾発力fの成分f1 はロックブラケット43の後端を上向きに付勢する。また図20(B)に示すように、ロックブラケット43が中間位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させ、図20(C)に示すように、ロックブラケット43が上昇位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させるとともに、前記弾発力fの成分f2 はロックブラケット43の後端を後方に付勢し、分力f3 はロックブラケット43の後端を下方に付勢する。
【0026】
従って、前部シートクッション4が上昇する過程においてスプリング42は前部シートクッション4の後部を分力f1 で上昇させるように付勢し、上昇の最終段階において前部シートクッション4の後部を分力f2 でシートバック2C の前面に当接させるとともに、分力f3 で後部シートクッション5の上面に当接させる。
【0027】
また、後述するように、本実施例ではシートバック2C のリクライニングに伴い前部シートクッション4は後部シートクッション5に沿うように前後に移動する。このとき、図21に示すようにピン40とピン41との距離(D1 及びD2 参照)は変化するが、後部リンク39が屈曲可能であるため、前記距離の変化分が吸収されて後部シートクッション5との間に隙間が発生することがない。
【0028】
前部シートクッション4は、物入れとして使用する容器351 を内蔵したクッションベース35と、そのクッションベース35の前端にピン36で開閉自在に枢支されたクッション37とから構成される。
【0029】
ロックブラケット43の下面にスライドピース47が前後摺動自在に支持される。即ち、スライドピース47に前後方向に延びる左右一対の長孔471 ,471 が形成されており、この長孔471 ,471 を貫通するガイドピン48,48がロックブラケット43を貫通してクッションベース35に螺入される。スライドピース47はロックブラケット43との間に張設したスプリング49によって後方に付勢されており、前記長孔471 ,471 の前端がガイドピン48,48に当接する。
【0030】
スライドピース47の前端にレバー50がピン51で枢支される。レバー50はスライドピース47に引かれて後方に付勢されており、ピン51の後上方に形成した支点部502 がロックブラケット43の前端面に当接している。従って、レバー50に指を掛けて上方に引くと、前記支点部502 を中心にしてピン51が前方に引かれ、スライドピース47が長孔471 ,471 の範囲内でスプリング49を引き延ばしながらロックブラケット43に対して前方にスライドする。
【0031】
スライドピース47の左右後端にはロック爪472 ,472 が形成されており、このロック爪472 ,472 が係合可能な下降位置用ロックピン52,52が左右の前部リンク33,33に設けられる。左右の前部リンク33,33間に架設したピン53にロックバー54が枢支されており、このロックバー54はスプリング55によって図10(B)の矢印a方向に付勢される。ロックバー54に設けた上昇位置用ロックピン56が係合可能なロック爪433 がロックブラケット43の下面に突設されるとともに、スライドピース47の左右後端に上昇位置用ロックピン56に当接可能な山形のカム473 ,473 が下向きに形成される。
【0032】
而して、前部シートクッション4が図3に示す下降位置にあるとき、スライドピース47に形成したロック爪472 ,472 が前部リンク33,33に設けた下降位置用ロックピン52,52の下側に係合し、これによりスプリング46,46の弾発力による前部リンク33,33の起立が規制される。このとき、前部リンク33,33の後端に形成したストッパ部331 ,331 がストッパアーム34に係合することにより、シートクッション1C に座った乗員の体重が支持される。
【0033】
この状態からレバー50の前端を上方に引くと、図10(A)に示すように、スライドピース47がスプリング49に抗してロックブラケット43に対して前方にスライドし、ロック爪472 ,472 が下降位置用ロックピン52の下面を乗り越えて前方に離脱する。その結果、図10(B)に示すように、スプリング46,46で付勢された前部リンク33,33及びスプリング42で付勢された後部リンク39が起立し、前部シートクッション4を上昇させる。前部シートクッション4の上昇過程で、スプリング55で矢印a方向に付勢されたロックバー54が起立し、その上昇位置用ロックピン56がスライドピース47のカム473 ,473 を乗り越えて前方に移動し、ロックブラケット43の下面に設けたロック爪433 の前面に係合する。
【0034】
前部シートクッション4が図6に示す上昇位置にあるとき、前部シートクッション4の後端は後部シートクッション5の前端に乗り上げ、これにより前部シートクッション4の後部に加わる下向きの荷重が支持される。また前部シートクッション4の前部に加わる下向きの荷重は、略鉛直姿勢に起立した前部リンク33,33によって支持される。更に前部シートクッション4を前方に移動させようとする荷重は、ロックブラケット43、前部リンク33,33及びロックバー54が三角形を構成することにより支持される。
【0035】
而して、前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、図16に示すように、その上面に子供を座らせて子供用シートとして使用することができ、また図17に示すように、右側シートSR 又は左側シートSL に座った乗員のアームレストとしても使用することができる。更に図18に示すように、前部シートクッション4の蓋体を構成するクッション37をピン38回りに前方に回動させれば、容器351 の内部空間に物品の出し入れを行うことができる。更にまた、前記クッション37の裏面にナビゲーションシステム57やオーディオシステムを設ければ、クッション37を開いてナビゲーションシステム57やオーディオシステムの操作を行うことができ、またクッション37を閉じればそれらを前部シートクッション4の内部に収納することができる。
【0036】
次に、前部シートクッション4を上昇させた状態でシートバック2C のリクライニング角を変化させた場合の作用について説明する。
【0037】
図12に示すように、シートバック2C が鉛直線から25°後傾した位置がノーマル位置であり、ノーマル位置からシートバック2C を10°後傾させると最後傾位置になり、ノーマル位置からシートバック2C を5°前傾させると最前傾位置になる。従って、シートバック2C は15°の範囲に亘って前後揺動可能である。
【0038】
シートバック2C が前記ノーマル位置であるとき、図13に示すように前部リンク33,33は僅かに後傾しており、前部リンク33,33に設けたピン45がロックブラケット43に設けた長孔431 ,431 の後端に当接するとともに、ロックバー54に設けたピン56がロックブラケット43のロック爪433 の前面にA点において係合している。
【0039】
シートバック2C が前記ノーマル位置から図14に示す最後傾位置に向けて後方に傾倒すると、スプリング46,46の弾発力で前部リンク33,33が後方に揺動し、前部シートクッション4はシートバック2C に追従して後方に移動する。このとき、ロックブラケット43のロック爪433 の前面に当接していたロックバー54のピン56が、ロック爪433 から離間して前方に移動することにより、即ち前記ピン56が設けられたロックバー54の後端がロックブラケット43の下面に沿って矢印B方向にスライドすることにより、ピン45、ピン53及び上昇位置用ロックピン56が形成する三角形の形状が変化して前部リンク33,33の後方への揺動を許容する(図7参照)。そして、シートバック2C が図14に示す最後傾位置に達すると、ピン45がロックバー54にC点において当接するため、前部リンク33,33はそれ以上後方に揺動できなくなり、その位置が前部シートクッション4の最後方位置となる。
【0040】
一方、シートバック2C が前記ノーマル位置から図15に示す最前傾位置に向けて前方に傾倒すると、シートバック2C に押圧された前部シートクッション4は、スプリング46,46の弾発力に抗して前部リンク33,33を前方に揺動させながらシートバック2C と共に前方に移動する。このとき、前部リンク33,33のピン45がロックブラケット43の長孔431 ,431 の後端から前端に向けてスライドすることにより、ピン45、ピン53及び上昇位置用ロックピン56が形成する三角形の形状が変化して前部リンク33,33の前方への揺動を許容する。そして、シートバック2C が最前傾位置に達すると、図15に示すようにピン45が長孔431 ,431 の前端に当接するため、前部リンク33,33はそれ以上前方に揺動できなくなり、その位置が前部シートクッション4の最前方位置となる。
【0041】
図13〜図15から明らかなように、前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、該前部シートクッション4の後方変位量は前部リンク33の起立角である角度θに比例して増加し、この角度θは前部リンク33とロックブラケット43との成す角度αに比例する。ピン45とピン56との距離をLとすると、ピン56がロックブラケット43の下面に沿って前後に移動するに伴い、前記距離Lが変化する。
【0042】
即ち、シートバック2C が図14に示す最後傾位置にロックされたとき、ピン56は前方にスライドして角度α及びθは最大の状態に、且つ距離Lは最小の状態に固定される。一方、シートバック2C が図15に示す最前傾位置にロックされたとき、ピン56は後方にスライドして角度α及びθは最小の状態に、且つ距離Lは最大の状態に固定される。前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、ロックレバー54が前部リンク33に対して中央より上方で連結されているので、ロックレバー54の長さが短くても、角度αは鈍角になって前部リンク33の起立角である角度θは90°近くになるため、最小限の長さのロックブラケット54及び前部リンク33で充分な上昇量を得ることができ、また機構の小型化が図れる。
【0043】
また、前部シートクッション4の後部を支持する後部リンク39が略中央部で屈曲可能な2枚の板体から構成されており、その後部リンク39は前部リンク33との間に平行リンク機構を構成していないので、後部シートクッション5の形状や昇降機構6の構造に特別の考慮を払わなくとも、前部シートクッション4の後端と後部シートクッション5の前端との干渉を回避しながら前部シートクッション4をスムーズに昇降させることができ、且つ上昇時に後部シートクッション5との間に隙間を空けることなく前後動が可能となる。
【0044】
而して、上昇位置にある前部シートクッション4がシートバック2C のリクライニング範囲内で前後移動可能であるため、前部シートクッション4と干渉することなくシートバック2C のリクライニング角を自由に変化させることができるばかりか、前部シートクッション4及びシートバック2C 間に隙間が発生するのを防止して座り心地や外観を向上させることができる。また、後部リンク39が略中央部で屈曲可能であるため、上昇位置にある前部シートクッション4に子供の体重が加わったとき、前部シートクッション4の後端下面を後部シートクッション5の前端上面に当接させ、前部シートクッション4に加わる荷重の一部を後部シートクッション5に支持させて昇降機構6の負荷を軽減することができる。
【0045】
さて、上昇位置にある前部シートクッション4を下降させるべく、レバー50の前端を上方に引いてスライドピース47を前方にスライドさせると、図11(C)に示すように、スライドピースのカム473 ,473 に上昇位置用ロックピン56を押圧されてロックバー54が矢印b方向に揺動し、上昇位置用ロックピン56とロックブラケット43に設けたロック爪433 との係合が解除される。この状態で前部シートクッション4を下方に押圧すると、前部リンク33,33及び後部リンク39が倒伏して前部シートクッション4の下降を許容する。
【0046】
図11(D)に示すように前部シートクッション4を更に押し下げると、やがてスライドピース47のロック爪472 ,472 が前部リンク33,33の下降位置用ロックピン52,52の下面に係合し、前部シートクッション4が下降位置にロックされる(図3参照)。
【0047】
上述したように、通常は大人用シートとして使用される中央シートSC のシートバック2C をアームレスト又は幼児用バスケットとして使用し、且つそのシートクッション1C をアームレスト又は子供用シートとして使用することが可能となるので、中央シートSC の汎用性を高めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、実施例では車両の前部シートについて説明したが、本発明を後部シートに対して適用することも可能である(図21参照)。また、実施例では前部シートクッション4をアームレスト及び子供用シートに兼用しているが、その一方としてのみ使用することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載された発明によれば、昇降機構が上昇位置にある前部シートクッションの前後動を許容する前後動許容手段と、シートバックのリクライニング角の変化に追随して前部シートクッションを前後動させるべく、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させる付勢手段とを備えたことにより、上昇位置にある前部シートクッションと干渉することなくシートバックを自由にリクライニングさせ、前部シートクッションとシートバックとの間に隙間が発生するのを防止して座り心地や外観の低下を回避することができる。
【0051】
また請求項2に記載された発明によれば、昇降機構が一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能なリンクを備えており、付勢手段がリンクを起立方向に付勢するスプリングであるので、スプリングの付勢力で前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させてリクライニング角の変化に追随させることができる。
【0052】
また請求項3に記載された発明によれば、前後動許容手段が、一端が前部リンクに枢支されて他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動可能なロックバーを備えており、前部シートクッションが上昇位置にあるときに該前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形を構成し、ロックバーの他端の前記摺動に伴う前記三角形の変形によって前部シートクッションの前後動を許容するので、前部シートクッションをリクライニング角の変化に自由に追随させることができる。
【0053】
また請求項4に記載された発明によれば、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制して該摺動可能範囲の両端で前記三角形を固定することにより、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制するので、前部シートクッションの前後方向の過剰な動きを防止することができる。
【0054】
また請求項5に記載された発明によれば、後部リンクが略中央部で屈折可能であるため、上昇位置にある前部シートクッションが常に後部シートクッションに当接し、前部シートクッションに作用する後方荷重が後部シートクッションに伝達されるため、前部シートクッションの昇降機構に要求される剛性が減少して軽量化が可能となる。しかも前部シートクッションの昇降機構は平行リンク機構を構成しないため、下降位置における前部リンク及び後部リンクの干渉がなくなって小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両の前部シートの斜視図
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図2の3部拡大図(シートクッションの下降状態)
【図4】図3の4−4線矢視図
【図5】昇降機構の分解斜視図
【図6】シートクッションの上昇状態を示す図
【図7】シートクッションの後退状態を示す図
【図8】昇降機構の斜視図(シートクッションの下降状態)
【図9】昇降機構の斜視図(シートクッションの上昇状態)
【図10】シートクッションの上昇時の作用説明図
【図11】シートクッションの下降時の作用説明図
【図12】シートバックのリクライニング角を示す図
【図13】作用説明図(リクライニング角0°の状態)
【図14】作用説明図(リクライニング角10°の状態)
【図15】作用説明図(リクライニング角−5°の状態)
【図16】シートクッションを子供用シートとして使用する状態を示す図
【図17】シートクッションをアームレストとして使用する状態を示す図
【図18】シートクッションを物入れとして使用する状態を示す図
【図19】前部リンクのスプリングの作用説明図
【図20】後部リンクのスプリングの作用説明図
【図21】後部リンクの作用説明図
【図22】本発明を後部シートに適用した実施例を示す図
【符号の説明】
SL 左側シート
SR 右側シート
SC 中央シート
1C シートクッション
2C シートバック
4 前部シートクッション
5 後部シートクッション
6 リクライニングピン(支点)
25 昇降機構
27 シートベース(固定部)
33 前部リンク(リンク)
39 後部リンク(リンク)
42 スプリング(付勢手段)
46 スプリング(付勢手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートクッションを子供用シートやアームレストに兼用する車両用多機能シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
左側シート及び右側シート間に配置した中央シートのシートクッションの前半部分を昇降可能に支持し、このシートクッションをアームレストとして利用するものが、実開昭58−68153号公報及び実開昭57−5055号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記実開昭58−68153号公報及び実開昭57−5055号公報に記載された昇降可能なシートクッションを、アームレストとして使用するだけでなく子供用シート及びアームレストに兼用することが考えられる。
【0004】
このような場合、シートバックをリクライニングさせようとすると、上昇位置にあるシートクッションの後端にシートバックの下部前面が干渉し、シートバックを自由にリクライニグさせることができなくなったり、シートクッションとシートバックとの間に隙間が発生して外観が低下する問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、昇降可能なシートクッションを備えた車両用多機能シートにおいて、隙間の発生による外観の低下を回避しながらシートバックの自由なリクライニングを可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、前部シートクッション及び後部シートクッションに2分割されたシートクッションと、このシートクッションの後端に支点を介してリクライニング可能に枢支されたシートバックとを備えてなり、前部シートクッションが昇降機構を介して昇降自在に支持された車両用多機能シートであって、昇降機構が、上昇位置にある前部シートクッションの前後動を許容する前後動許容手段と、シートバックのリクライニング角の変化に追随して前部シートクッションを前後動させるべく、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させる付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、前記昇降機構が、一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能な前部リンク及び後部リンクを備えており、前記付勢手段が前記リンクを起立方向に付勢するスプリングであることを特徴とする。
【0008】
また請求項3に記載された発明は、請求項2の構成に加えて、前記前後動許容手段が、一端が前部リンクに枢支されて他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動可能なロックバーを備えており、前部シートクッションが上昇位置にあるときに該前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形を構成し、ロックバーの他端の前記摺動に伴う前記三角形の変形によって前部シートクッションの前後動を許容することを特徴とする。
【0009】
また請求項4に記載された発明は、請求項3の構成に加えて、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制して該摺動可能範囲の両端で前記三角形を固定することにより、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制することを特徴とする。
【0010】
また請求項5に記載された発明は、請求項3の構成に加えて、後部リンクが略中央部で屈折可能であることを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1の構成によれば、前部シートクッションを上昇させて子供用シート又はアームレストとして使用する場合に、前部シートクッション及びシートバック間に隙間を発生させることなく、且つ前部シートクッション及びシートバックを干渉させることなく、シートバックを自由にリクライニングさせることができる。
【0012】
請求項2の構成によれば、一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能なリンクをスプリングで起立方向に付勢することにより、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させてリクライニング角の変化に追随させることができる。
【0013】
請求項3の構成によれば、上昇位置にある前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形が構成され、ロックバーの他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動する際に前記三角形が変形することにより、前部シートクッションの前後動が許容される。
【0014】
請求項4の構成によれば、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制すると、その規制範囲の両端で前記三角形が固定されるため、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制することができる。
【0015】
請求項5の構成によれば、後部リンクが略中央部で屈折するため、前部シートクッションの昇降や前後動が許容される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図21は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両の前部シートの斜視図、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図2の3部拡大図(シートクッションの下降状態)、図4は図3の4−4線矢視図、図5は昇降機構の分解斜視図、図6はシートクッションの上昇状態を示す図、図7はシートクッションの後退状態を示す図、図8は昇降機構の斜視図(シートクッションの下降状態)、図9は昇降機構の斜視図(シートクッションの上昇状態)、図10はシートクッションの上昇時の作用説明図、図11はシートクッションの下降時の作用説明図、図12はシートバックのリクライニング角を示す図、図13は作用説明図(リクライニング角0°の状態)、図14は作用説明図(リクライニング角10°の状態)、図15は作用説明図(リクライニング角−5°の状態)、図16はシートクッションを子供用シートとして使用する状態を示す図、図17はシートクッションをアームレストとして使用する状態を示す図、図18はシートクッションを物入れとして使用する状態を示す図、図19は前部リンクのスプリングの作用説明図、図20は後部リンクのスプリングの作用説明図、図21は後部リンクの作用説明図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、車両の車室前部には運転者席としての右側シートSR と、助手席としての左側シートSL と、両シートSL ,SR 間に挟まれた中央シートSC とが左右方向に並設される。左側シートSL 及び右側シートSR は、それぞれシートクッション1L ,1R 、シートバック2L ,2R 及びヘッドレスト3L ,3R から構成される。中央シートSC はシートクッション1C ,シートバック2C 及びヘッドレスト3C から構成されており、シートクッション1C は前側の前部シートクッション4及び後側の後部シートクッション5に2分割される。
【0019】
中央シートSC のシートバック2C は前方に倒伏可能であり、後述するようにアームレスト及び幼児用バスケットとして使用することができる。また中央シートSC のシートクッション1C の前部シートクッション4は、後部シートクッション5の前側に連なる下降位置と、その後端が後部シートクッション5の前端に重なり合う上昇位置との間を昇降可能である。中央シートSC の前部シートクッション4を下降させれば大人用シートとして使用することができ、また前部シートクッション4を上昇させればアームレスト又は子供用シートとして使用することができる。
【0020】
次に、図3〜図20に基づいて中央シートSC のシートクッション1C の前部シートクッション4を昇降させる昇降機構25の構造を説明する。
【0021】
図3、図4、図5、図8及び図9に示すように、車室の床面に前後摺動自在に設けたスライダ26上にシートベース27が固設されており、シートベース27の後部に後部シートクッション5が固定され、シートベース27の前部に前記昇降機構25を介して前部シートクッション4が昇降自在に支持される。インナパイプ28の右端がシートベース27の右側前端にボルト29で固定されるとともに、インナパイプ28の左端に溶接したブラケット30がシートベース27の左側前端にボルト31,31で固定される。インナパイプ28の外周に回転自在に嵌合するアウタパイプ32に、左右一対の前部リンク33,33が溶接される。シートベース27にコ字状のストッパアーム34が固定されており、このストッパアーム34に当接可能なストッパ部331 ,331 が前記一対の前部リンク33,33の後端に形成される。
【0022】
クッションベース35の下面にロックブラケット43が複数本のボルト44…で固定される。ロックブラケット43の左右両側面に前後方向に延びる長孔431 ,431 が形成されており、この長孔431 ,431 に左右の前部リンク33,33の先端間に架設したピン45が嵌合する。左右の前部リンク33,33の基端とロックブラケット43の前端間に一対のスプリング46,46が張設されており、このスプリング46,46の弾発力で前部リンク33,33が起立する方向に付勢される。
【0023】
即ち、前部リンク33が僅かに起立した状態を示す図19から明らかなように、引張スプリング46の弾発力Fによってロックブラケット43にピン45回りのモーメントMが作用し、このモーメントMによって前部リンク33とロックブラケット43との成す角度αが増加しようとする。しかしながら、後端を後部リンク39に拘束されてたロックブラケット43は水平姿勢に保って昇降するだけなので、前記角度αの増加に伴って前部リンク33がインナパイプ28を中心に矢印A方向に起立する。このようにして、スプリング46の弾発力によって前部リンク33が起立方向に付勢される。
【0024】
略中央部をピン38で連結された2枚の板体よりなる後部リンク39の後端がピン40でシートベース27に枢支され、その後部リンク39の前端がピン41でロックブラケット43の後端に枢支される。後部リンク39はスプリング42の弾発力によって起立する方向に付勢される。詳しく説明すると、後部リンク39は略中央部で屈曲可能であり、スプリング42は、前部シートクッション4が下降位置にあるとき、その一端が屈曲点(ピン38)より前方で後部リンク38に係止されるとともに、後ろ上がりの状態で他端がシートベース27に係止されている。
【0025】
従って、図20(A)に示すように、ロックブラケット43(即ち、前部シートクッション4)が下降位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させるとともに、前記弾発力fの成分f1 はロックブラケット43の後端を上向きに付勢する。また図20(B)に示すように、ロックブラケット43が中間位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させ、図20(C)に示すように、ロックブラケット43が上昇位置にあるとき、引張スプリング42の弾発力fは後部リンク39を時計回りに付勢するメーメントmを発生させるとともに、前記弾発力fの成分f2 はロックブラケット43の後端を後方に付勢し、分力f3 はロックブラケット43の後端を下方に付勢する。
【0026】
従って、前部シートクッション4が上昇する過程においてスプリング42は前部シートクッション4の後部を分力f1 で上昇させるように付勢し、上昇の最終段階において前部シートクッション4の後部を分力f2 でシートバック2C の前面に当接させるとともに、分力f3 で後部シートクッション5の上面に当接させる。
【0027】
また、後述するように、本実施例ではシートバック2C のリクライニングに伴い前部シートクッション4は後部シートクッション5に沿うように前後に移動する。このとき、図21に示すようにピン40とピン41との距離(D1 及びD2 参照)は変化するが、後部リンク39が屈曲可能であるため、前記距離の変化分が吸収されて後部シートクッション5との間に隙間が発生することがない。
【0028】
前部シートクッション4は、物入れとして使用する容器351 を内蔵したクッションベース35と、そのクッションベース35の前端にピン36で開閉自在に枢支されたクッション37とから構成される。
【0029】
ロックブラケット43の下面にスライドピース47が前後摺動自在に支持される。即ち、スライドピース47に前後方向に延びる左右一対の長孔471 ,471 が形成されており、この長孔471 ,471 を貫通するガイドピン48,48がロックブラケット43を貫通してクッションベース35に螺入される。スライドピース47はロックブラケット43との間に張設したスプリング49によって後方に付勢されており、前記長孔471 ,471 の前端がガイドピン48,48に当接する。
【0030】
スライドピース47の前端にレバー50がピン51で枢支される。レバー50はスライドピース47に引かれて後方に付勢されており、ピン51の後上方に形成した支点部502 がロックブラケット43の前端面に当接している。従って、レバー50に指を掛けて上方に引くと、前記支点部502 を中心にしてピン51が前方に引かれ、スライドピース47が長孔471 ,471 の範囲内でスプリング49を引き延ばしながらロックブラケット43に対して前方にスライドする。
【0031】
スライドピース47の左右後端にはロック爪472 ,472 が形成されており、このロック爪472 ,472 が係合可能な下降位置用ロックピン52,52が左右の前部リンク33,33に設けられる。左右の前部リンク33,33間に架設したピン53にロックバー54が枢支されており、このロックバー54はスプリング55によって図10(B)の矢印a方向に付勢される。ロックバー54に設けた上昇位置用ロックピン56が係合可能なロック爪433 がロックブラケット43の下面に突設されるとともに、スライドピース47の左右後端に上昇位置用ロックピン56に当接可能な山形のカム473 ,473 が下向きに形成される。
【0032】
而して、前部シートクッション4が図3に示す下降位置にあるとき、スライドピース47に形成したロック爪472 ,472 が前部リンク33,33に設けた下降位置用ロックピン52,52の下側に係合し、これによりスプリング46,46の弾発力による前部リンク33,33の起立が規制される。このとき、前部リンク33,33の後端に形成したストッパ部331 ,331 がストッパアーム34に係合することにより、シートクッション1C に座った乗員の体重が支持される。
【0033】
この状態からレバー50の前端を上方に引くと、図10(A)に示すように、スライドピース47がスプリング49に抗してロックブラケット43に対して前方にスライドし、ロック爪472 ,472 が下降位置用ロックピン52の下面を乗り越えて前方に離脱する。その結果、図10(B)に示すように、スプリング46,46で付勢された前部リンク33,33及びスプリング42で付勢された後部リンク39が起立し、前部シートクッション4を上昇させる。前部シートクッション4の上昇過程で、スプリング55で矢印a方向に付勢されたロックバー54が起立し、その上昇位置用ロックピン56がスライドピース47のカム473 ,473 を乗り越えて前方に移動し、ロックブラケット43の下面に設けたロック爪433 の前面に係合する。
【0034】
前部シートクッション4が図6に示す上昇位置にあるとき、前部シートクッション4の後端は後部シートクッション5の前端に乗り上げ、これにより前部シートクッション4の後部に加わる下向きの荷重が支持される。また前部シートクッション4の前部に加わる下向きの荷重は、略鉛直姿勢に起立した前部リンク33,33によって支持される。更に前部シートクッション4を前方に移動させようとする荷重は、ロックブラケット43、前部リンク33,33及びロックバー54が三角形を構成することにより支持される。
【0035】
而して、前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、図16に示すように、その上面に子供を座らせて子供用シートとして使用することができ、また図17に示すように、右側シートSR 又は左側シートSL に座った乗員のアームレストとしても使用することができる。更に図18に示すように、前部シートクッション4の蓋体を構成するクッション37をピン38回りに前方に回動させれば、容器351 の内部空間に物品の出し入れを行うことができる。更にまた、前記クッション37の裏面にナビゲーションシステム57やオーディオシステムを設ければ、クッション37を開いてナビゲーションシステム57やオーディオシステムの操作を行うことができ、またクッション37を閉じればそれらを前部シートクッション4の内部に収納することができる。
【0036】
次に、前部シートクッション4を上昇させた状態でシートバック2C のリクライニング角を変化させた場合の作用について説明する。
【0037】
図12に示すように、シートバック2C が鉛直線から25°後傾した位置がノーマル位置であり、ノーマル位置からシートバック2C を10°後傾させると最後傾位置になり、ノーマル位置からシートバック2C を5°前傾させると最前傾位置になる。従って、シートバック2C は15°の範囲に亘って前後揺動可能である。
【0038】
シートバック2C が前記ノーマル位置であるとき、図13に示すように前部リンク33,33は僅かに後傾しており、前部リンク33,33に設けたピン45がロックブラケット43に設けた長孔431 ,431 の後端に当接するとともに、ロックバー54に設けたピン56がロックブラケット43のロック爪433 の前面にA点において係合している。
【0039】
シートバック2C が前記ノーマル位置から図14に示す最後傾位置に向けて後方に傾倒すると、スプリング46,46の弾発力で前部リンク33,33が後方に揺動し、前部シートクッション4はシートバック2C に追従して後方に移動する。このとき、ロックブラケット43のロック爪433 の前面に当接していたロックバー54のピン56が、ロック爪433 から離間して前方に移動することにより、即ち前記ピン56が設けられたロックバー54の後端がロックブラケット43の下面に沿って矢印B方向にスライドすることにより、ピン45、ピン53及び上昇位置用ロックピン56が形成する三角形の形状が変化して前部リンク33,33の後方への揺動を許容する(図7参照)。そして、シートバック2C が図14に示す最後傾位置に達すると、ピン45がロックバー54にC点において当接するため、前部リンク33,33はそれ以上後方に揺動できなくなり、その位置が前部シートクッション4の最後方位置となる。
【0040】
一方、シートバック2C が前記ノーマル位置から図15に示す最前傾位置に向けて前方に傾倒すると、シートバック2C に押圧された前部シートクッション4は、スプリング46,46の弾発力に抗して前部リンク33,33を前方に揺動させながらシートバック2C と共に前方に移動する。このとき、前部リンク33,33のピン45がロックブラケット43の長孔431 ,431 の後端から前端に向けてスライドすることにより、ピン45、ピン53及び上昇位置用ロックピン56が形成する三角形の形状が変化して前部リンク33,33の前方への揺動を許容する。そして、シートバック2C が最前傾位置に達すると、図15に示すようにピン45が長孔431 ,431 の前端に当接するため、前部リンク33,33はそれ以上前方に揺動できなくなり、その位置が前部シートクッション4の最前方位置となる。
【0041】
図13〜図15から明らかなように、前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、該前部シートクッション4の後方変位量は前部リンク33の起立角である角度θに比例して増加し、この角度θは前部リンク33とロックブラケット43との成す角度αに比例する。ピン45とピン56との距離をLとすると、ピン56がロックブラケット43の下面に沿って前後に移動するに伴い、前記距離Lが変化する。
【0042】
即ち、シートバック2C が図14に示す最後傾位置にロックされたとき、ピン56は前方にスライドして角度α及びθは最大の状態に、且つ距離Lは最小の状態に固定される。一方、シートバック2C が図15に示す最前傾位置にロックされたとき、ピン56は後方にスライドして角度α及びθは最小の状態に、且つ距離Lは最大の状態に固定される。前部シートクッション4が上昇位置にあるとき、ロックレバー54が前部リンク33に対して中央より上方で連結されているので、ロックレバー54の長さが短くても、角度αは鈍角になって前部リンク33の起立角である角度θは90°近くになるため、最小限の長さのロックブラケット54及び前部リンク33で充分な上昇量を得ることができ、また機構の小型化が図れる。
【0043】
また、前部シートクッション4の後部を支持する後部リンク39が略中央部で屈曲可能な2枚の板体から構成されており、その後部リンク39は前部リンク33との間に平行リンク機構を構成していないので、後部シートクッション5の形状や昇降機構6の構造に特別の考慮を払わなくとも、前部シートクッション4の後端と後部シートクッション5の前端との干渉を回避しながら前部シートクッション4をスムーズに昇降させることができ、且つ上昇時に後部シートクッション5との間に隙間を空けることなく前後動が可能となる。
【0044】
而して、上昇位置にある前部シートクッション4がシートバック2C のリクライニング範囲内で前後移動可能であるため、前部シートクッション4と干渉することなくシートバック2C のリクライニング角を自由に変化させることができるばかりか、前部シートクッション4及びシートバック2C 間に隙間が発生するのを防止して座り心地や外観を向上させることができる。また、後部リンク39が略中央部で屈曲可能であるため、上昇位置にある前部シートクッション4に子供の体重が加わったとき、前部シートクッション4の後端下面を後部シートクッション5の前端上面に当接させ、前部シートクッション4に加わる荷重の一部を後部シートクッション5に支持させて昇降機構6の負荷を軽減することができる。
【0045】
さて、上昇位置にある前部シートクッション4を下降させるべく、レバー50の前端を上方に引いてスライドピース47を前方にスライドさせると、図11(C)に示すように、スライドピースのカム473 ,473 に上昇位置用ロックピン56を押圧されてロックバー54が矢印b方向に揺動し、上昇位置用ロックピン56とロックブラケット43に設けたロック爪433 との係合が解除される。この状態で前部シートクッション4を下方に押圧すると、前部リンク33,33及び後部リンク39が倒伏して前部シートクッション4の下降を許容する。
【0046】
図11(D)に示すように前部シートクッション4を更に押し下げると、やがてスライドピース47のロック爪472 ,472 が前部リンク33,33の下降位置用ロックピン52,52の下面に係合し、前部シートクッション4が下降位置にロックされる(図3参照)。
【0047】
上述したように、通常は大人用シートとして使用される中央シートSC のシートバック2C をアームレスト又は幼児用バスケットとして使用し、且つそのシートクッション1C をアームレスト又は子供用シートとして使用することが可能となるので、中央シートSC の汎用性を高めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、実施例では車両の前部シートについて説明したが、本発明を後部シートに対して適用することも可能である(図21参照)。また、実施例では前部シートクッション4をアームレスト及び子供用シートに兼用しているが、その一方としてのみ使用することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載された発明によれば、昇降機構が上昇位置にある前部シートクッションの前後動を許容する前後動許容手段と、シートバックのリクライニング角の変化に追随して前部シートクッションを前後動させるべく、前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させる付勢手段とを備えたことにより、上昇位置にある前部シートクッションと干渉することなくシートバックを自由にリクライニングさせ、前部シートクッションとシートバックとの間に隙間が発生するのを防止して座り心地や外観の低下を回避することができる。
【0051】
また請求項2に記載された発明によれば、昇降機構が一端が固定部に枢支されて他端が前部シートクッションに枢支された起立・倒伏可能なリンクを備えており、付勢手段がリンクを起立方向に付勢するスプリングであるので、スプリングの付勢力で前部シートクッションの後端をシートバックの下部前面に当接させてリクライニング角の変化に追随させることができる。
【0052】
また請求項3に記載された発明によれば、前後動許容手段が、一端が前部リンクに枢支されて他端が前部シートクッションの下面に沿って摺動可能なロックバーを備えており、前部シートクッションが上昇位置にあるときに該前部シートクッション、前部リンク及びロックバーによって三角形を構成し、ロックバーの他端の前記摺動に伴う前記三角形の変形によって前部シートクッションの前後動を許容するので、前部シートクッションをリクライニング角の変化に自由に追随させることができる。
【0053】
また請求項4に記載された発明によれば、ロックバーの他端の摺動可能範囲を規制して該摺動可能範囲の両端で前記三角形を固定することにより、前部シートクッションの前後動可能範囲を規制するので、前部シートクッションの前後方向の過剰な動きを防止することができる。
【0054】
また請求項5に記載された発明によれば、後部リンクが略中央部で屈折可能であるため、上昇位置にある前部シートクッションが常に後部シートクッションに当接し、前部シートクッションに作用する後方荷重が後部シートクッションに伝達されるため、前部シートクッションの昇降機構に要求される剛性が減少して軽量化が可能となる。しかも前部シートクッションの昇降機構は平行リンク機構を構成しないため、下降位置における前部リンク及び後部リンクの干渉がなくなって小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両の前部シートの斜視図
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図2の3部拡大図(シートクッションの下降状態)
【図4】図3の4−4線矢視図
【図5】昇降機構の分解斜視図
【図6】シートクッションの上昇状態を示す図
【図7】シートクッションの後退状態を示す図
【図8】昇降機構の斜視図(シートクッションの下降状態)
【図9】昇降機構の斜視図(シートクッションの上昇状態)
【図10】シートクッションの上昇時の作用説明図
【図11】シートクッションの下降時の作用説明図
【図12】シートバックのリクライニング角を示す図
【図13】作用説明図(リクライニング角0°の状態)
【図14】作用説明図(リクライニング角10°の状態)
【図15】作用説明図(リクライニング角−5°の状態)
【図16】シートクッションを子供用シートとして使用する状態を示す図
【図17】シートクッションをアームレストとして使用する状態を示す図
【図18】シートクッションを物入れとして使用する状態を示す図
【図19】前部リンクのスプリングの作用説明図
【図20】後部リンクのスプリングの作用説明図
【図21】後部リンクの作用説明図
【図22】本発明を後部シートに適用した実施例を示す図
【符号の説明】
SL 左側シート
SR 右側シート
SC 中央シート
1C シートクッション
2C シートバック
4 前部シートクッション
5 後部シートクッション
6 リクライニングピン(支点)
25 昇降機構
27 シートベース(固定部)
33 前部リンク(リンク)
39 後部リンク(リンク)
42 スプリング(付勢手段)
46 スプリング(付勢手段)
Claims (5)
- 前部シートクッション(4)及び後部シートクッション(5)に2分割されたシートクッション(1C )と、このシートクッション(1C )の後端に支点(6)を介してリクライニング可能に枢支されたシートバック(2C )とを備えてなり、前部シートクッション(4)が昇降機構(25)を介して昇降自在に支持された車両用多機能シートであって、
昇降機構(25)が、上昇位置にある前部シートクッション(4)の前後動を許容する前後動許容手段と、シートバック(2C )のリクライニング角の変化に追随して前部シートクッション(4)を前後動させるべく、前部シートクッション(4)の後端をシートバック(2C )の下部前面に当接させる付勢手段(42,46)とを備えたことを特徴とする車両用多機能シート。 - 前記昇降機構(25)が、一端が固定部(27)に枢支されて他端が前部シートクッション(4)の下面に枢支された起立・倒伏可能な前部リンク(33)及び後部リンク(39)を備えており、前記付勢手段(42,46)が前記リンク(33,39)を起立方向に付勢するスプリングであることを特徴とする、請求項1記載の車両用多機能シート。
- 前記前後動許容手段が、一端が前部リンク(33)に枢支されて他端が前部シートクッション(4)の下面に沿って摺動可能なロックバー(54)を備えており、前部シートクッション(4)が上昇位置にあるときに該前部シートクッション(4)、前部リンク(33)及びロックバー(54)によって三角形を構成し、ロックバー(54)の他端の前記摺動に伴う前記三角形の変形によって前部シートクッション(4)の前後動を許容することを特徴とする、請求項2記載の車両用多機能シート。
- ロックバー(54)の他端の摺動可能範囲を規制して該摺動可能範囲の両端で前記三角形を固定することにより、前部シートクッション(4)の前後動可能範囲を規制することを特徴とする、請求項3記載の車両用多機能シート。
- 後部リンク(39)が略中央部で屈折可能であることを特徴とする、請求項3記載の車両用多機能シート。
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JP16635896A Expired - Fee Related JP3777220B2 (ja) | 1995-07-19 | 1996-06-26 | 車両用多機能シート |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3777220B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
GB2422097B (en) * | 2005-01-12 | 2008-10-15 | Autoliv Dev | Improvements in or relating to an adjustable seat |
-
1996
- 1996-06-26 JP JP16635896A patent/JP3777220B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
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JPH0986249A (ja) | 1997-03-31 |
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