JP3777113B2 - 積層構造を有するマイクロ流体デバイス及びその製造方法 - Google Patents

積層構造を有するマイクロ流体デバイス及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ流体デバイス即ち内部に微小な流体流路を有するマイクロデバイス、例えば、化学、生化学、又は物理化学等の広い分野で用いられる、微小反応デバイス(マイクロ・リアクター)や、集積型DNA分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイスとして有用な、内部に微小な空洞を有し、例えば部材中に流路、反応槽、電気泳動カラム、膜分離機構、及びセンサーなどの構造が形成された微小分析デバイス、マイクロアレイ製造用ノズルやスポッタなどのマイクロ流体デバイス、の製造方法、及びそれにより得られるマイクロ流体デバイスに関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明はエネルギー線硬化性樹脂層が接着剤を介して積層され接着された構造を有し、該エネルギー線硬化性樹脂層が層内に樹脂の欠損部を有し、複数の樹脂層が積層され、該欠損部が各層を貫通して互いに連絡した、細い毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイス、更に反応槽となるべき空間、ダイヤフラム式バルブ及び弁構造などを有するマイクロ流体デバイスに関する。
【0003】
【従来の技術】
シリコン、石英、ガラス、重合体などの基材に、エッチング法により細い溝を形成して、液体流路や分離用ゲルチャンネルとすることが知られており(例えば、アール・エム・マコーミック等、「アナリティカル・ケミストリー」、第2626頁、第69巻、1997年)、操作中の液体の蒸発防止などを目的として、ガラス板などのカバーをネジ止め、融着、接着等により固定して用いることが知られている。
【0004】
しかしながら、ネジ止めなどによる密着では、積層された基材間や基材とカバーとの間への液体の漏洩が生じがちであったし、融着は長時間を要して極めて生産性の悪いものであった。更にこのような素材や製法では、連続した3層以上の層に流路その他の空隙部が形成された多層構造のマイクロ流体デバイスを形成することは困難であり、特に、破損しやすい薄い層が多層積層されたマイクロ流体デバイスを製造することは相当に困難であった。
【0005】
また、「サイエンス(SCIENCE)」誌(第288巻、113頁、2000年)には、注型法にて表面に溝を有するシリコンゴム製の部材を形成し、2つの該部材でシリコンゴムシートを挟んで接着することによって、立体交差する毛細管状の流路を形成する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、この2つの流路は独立した流路であり、各層を貫通して互いに連絡した、細い毛細管状の流路を形成することは出来なかった。特に、自立出来ないほどに薄い、欠損部を有する層を、欠損部の位置を合わせて積層して、多層構造のマイクロ流体デバイスを工業的に製造することは殆ど不可能なほど困難であり、複雑な反応・分析工程を実施可能なマイクロ流体デバイスを作製することは出来なかった。更に、シリコンゴムは生化学物質の吸着が多いため用途が限定されることや、シリコンゴムを硬化させるのに長時間を要し、生産性が著しく低いという欠点もあった。
【0007】
一方、活性エネルギー線硬化性樹脂で形成されたマイクロ流体デバイスは、エネルギー線硬化性樹脂を半硬化させた状態で他の部材と接触させ、その状態で活性エネルギー線を再照射して完全に硬化させる方法によって、接着剤を使用することなく接着可能であり、極めて高い生産性で製造可能である。
【0008】
しかし、この方法によっても、それぞれ欠損部を有する自立出来ないほどに薄い多数のシートを、微小な欠損部の位置を合わせて積層することは、工業的に実施困難であった。特に、樹脂層の欠損部が長い線状、曲線状、多数の線状などである場合には、該シートの取扱が更に困難となり、このような層を貫通して互いに連絡した毛細管状の流路を形成する方法は知られていなかった。また、それぞれ欠損部を有する自立出来ないほどに薄いエネルギー線硬化性樹脂から成るシートを、微小な欠損部の位置を合わせて3層以上積層されたマイクロ流体デバイスは知られていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、破損しやすい非常に薄い層の欠損部として形成された微細な毛細管状の空洞を有するマイクロ流体デバイスの製造方法、特に立体的に形成された複雑な流路を有するマイクロ流体デバイスの生産性の高い製造方法を提供すること、並びに、複数の樹脂層が積層され、微細な毛細管状の空洞が各層を貫通して互いに連絡し、立体交差している微細な毛細管状の流路、反応槽となるべき空間、ダイヤフラム式バルブ、及び弁構造などを有する多機能なマイクロ流体デバイスを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、塗工支持体上にエネルギー線硬化性組成物から成る、欠損部を有する硬化塗膜を形成し、該硬化塗膜を接着剤を介して他の部材に積層して接着した後、支持体を除去して該硬化塗膜を他の部材上に転写することにより、そして、必要に応じてこの操作を複数回実施することにより、内部に空洞が形成されたマイクロ流体デバイス、特に複数の層が連続して積層され、該複数の層の欠損部が互いに連絡した空洞を形成しているマイクロ流体デバイスを容易に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の工程を含む、欠損部を有する樹脂層(X)を1層以上有し、該樹脂層が他の部材又は他の樹脂層(X)と積層されて接着剤により接着され、欠損部が空洞を形成している、積層構造を有するマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。
【0012】
(i)塗工支持体に、活性エネルギー線重合性化合物(a)を含有するエネルギー線硬化性組成物(x)を塗工する、未硬化塗膜を形成する工程(i)、
(ii)欠損部と成すべき部分以外の未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化させ、硬化塗膜を形成する工程(ii)、
【0013】
(iii)硬化塗膜から非照射部分の未硬化の組成物(x)を除去し、塗膜の欠損部を有する硬化塗膜を得る工程(iii)、
(iv)欠損部を有する硬化塗膜を他の部材(J)に接着剤を介して積層して樹脂層(X)と成す工程(iv)、
【0014】
(v)接着剤を硬化させ、樹脂層(X)を部材(J)に接着する工程(v)
(vi)塗工支持体を樹脂層(X)から除去することにより、樹脂層(X)を部材(J)に転写する工程(vi)、及び、
vii )工程 (i) (vi) を行った後に、樹脂層 (X) が積層された部材 (J) を工程 (iv) における部材 (J) の代わりに用いて、工程 (i) (vi) を繰り返すことにより、樹脂層 (X) を複数積層する工程 (vii)
【0015】
本発明は、接着剤がエネルギー線硬化性の接着剤であり、接着剤の硬化が活性エネルギー線照射によるものであるマイクロ流体デバイスの製造方法や、工程(vi)における塗工支持体の除去が剥離であるマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。
【0016】
本発明は、複数の樹脂層(X)を、その欠損部の少なくとも一部が重なり合うように積層することにより、積層体中に複数の樹脂層(X)の欠損部が連結した空洞を形成するマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。
本発明は、部材(J)が該欠損部を有する部材であり、部材(J)の欠損部と樹脂層(X)の欠損部の少なくと一部が重なり合うように、部材(J)と樹脂層(X)とを積層することにより、積層体中に、部材(J)の欠損部と樹脂層(X)の欠損部が連結した空洞を形成するマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。
【0017】
本発明は、樹脂層(X)が、「引張弾性率×厚み」の値が、3×10-4〜1×10-1 MPa・mの範囲にあるマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。本発明は、活性エネルギー線重合性化合物(a)が、一分子中に2つ以上の活性エネルギー線重合性官能基を有する化合物であるマイクロ流体デバイスの製造方法を提供する。
【0018】
更に、本発明は、欠損部を有する部材(J')と、層の一部に欠損部を有し、該欠損部の最小幅が、1〜1000μmである、エネルギー線硬化性樹脂層(X')の2つ以上の層とが積層されて接着剤により接着され、部材中の少なくとも2つ以上の欠損部が連結して空洞を形成している、積層構造を有し、異なる樹脂層 (X') 内に形成された複数の流路、又は枝分かれした流路が樹脂層 (X') を隔てて立体交差しているマイクロ流体デバイスを提供する。
【0019】
本発明は、部材(J')及び2つ以上の樹脂層(X')から選ばれる1つ以上の部材が、部材の積層面に平行方向に設けられた、1つ以上の線状の空洞を有する、マイクロ流体デバイスや、欠損部を有する樹脂層(X')の厚さが、5〜1000μmであるマイクロ流体デバイスを提供する
【0020】
本発明は、部材(J')、又は部材(J')に積層された2つ以上の樹脂層(X')の部材(J')と対極にある樹脂層(X')が、ダイヤフラムとなる部材(K')と積層され、欠損部以外の部分で接着剤により接着されており、部材(K')に隣接する部材の欠損部が部材(K')と積層されることで空洞となり、部材(K')に隣接する部材の部材(K')の裏面に隣接する部材の空洞のダイヤフラムの対向面に、該空洞への流入口又は流出口、又はその両者となる各孔状の欠損部が形成されており、流入口、流出口の少なくとも一方の周がダイヤフラムに接しておらず、ダイヤフラムを変形させて、該流入口、又は流出口の少なくとも一方の周に接することによって流路を閉鎖しうる、マイクロ流体デバイスを提供する。
【0021】
本発明は、エネルギー線硬化性樹脂層(X')が、エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線重合性化合物と共重合可能な両親媒性の活性エネルギー線重合性化合物を含有するマイクロ流体デバイスや、空洞の一部、又は全部が流体の流路であるマイクロ流体デバイスを提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、樹脂の欠損部を有する樹脂層[以下、このような樹脂層を「樹脂層(X)」と称する]の単独、あるいは、同一又は異なる形状の流路を有する2つ以上の樹脂層(X)が他の部材に積層・接着され、樹脂層(X)が他の部材又は他の樹脂層(X)と積層・接着されることにより該欠損部が空洞を形成しているマイクロ流体デバイスの製造方法に関する。なお、後述の本発明のマイクロ流体デバイスの項で述べる「樹脂層(X')」は、本「樹脂層(X)」の特殊な形状の物であり、「樹脂層(X)」に含まれる。
【0023】
本発明の製造方法で用いられる塗工支持体は、エネルギー線硬化性組成物(x)(以下、単に「組成物(x)」と略記することもある)をその上に塗工することが可能であり、且つ、組成物(x)を硬化させた後に除去できるものである。なお、本発明においては、塗工には注型を含めるものとし、塗膜は注型物を含むものとする。
【0024】
塗工支持体の形状は特に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、シート状(フィルム状、リボン状、ベルト状を含む。以下同じ)、板状、ロール状(大きなロールを塗工支持体とし、塗工、硬化、積層、及び剥離等の工程を、ロールが1周する間に行うもの)、その他複雑な形状の成型物や鋳型等であり得るが、エネルギー線硬化性組成物(x)をその上に塗工し易く、また、活性エネルギー線を照射し易いと言う観点から、接着すべき面が平面状または2次曲面状の形状であること、特に可撓性のあるシート状であることが好ましい。また、生産性の面から、ロール状であることも好ましい。
【0025】
塗工支持体はまた、升目、図面、位置合わせ記号などが印刷されていても良い。塗工支持体の素材は、上記の条件が満たされれば特に制約はなく、例えば、重合体(ポリマー);ガラス;石英の如き結晶;セラミック;シリコンの如き半導体;金属などが挙げられるが、これらの中でも、重合体及び金属が特に好ましい。
【0026】
塗工支持体に使用する重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、また、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良い。生産性の面から、塗工支持体に使用する重合体は、熱可塑性重合体又はエネルギー線硬化性重合体であることが好ましい。
【0027】
塗工支持体の除去が剥離によるものである場合には、多くの種類のエネルギー線硬化性組成物(x)に対して溶解しにくく、その硬化物からの剥離が容易であるものとして、ポリオレフィン系重合体、塩素含有重合体、フッ素含有重合体、ポリチオエーテル系重合体、ポリエーテルケトン系重合体、ポリエステル系重合体が好ましく用いられる。
【0028】
塗工支持体は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体その他の複合体であっても良い。更に、塗工支持体は、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0029】
塗工支持体はまた、重合体の場合もそれ以外の素材の場合も、表面処理されていて良い。表面処理は、組成物(x)による溶解防止を目的としたもの、組成物(x)の硬化物からの剥離の容易化を目的としたもの、組成物(x)の濡れ性向上を目的としたもの、組成物(x)の浸入を防止ものなどであり得る。
【0030】
塗工支持体の表面処理方法は任意であり、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理、スルホン化処理、フッ素化処理、シランカップリング剤等によるプライマー処理、表面グラフト重合、界面活性剤や離型剤等の塗布、ラビングやサンドブラストなどの物理的処理等が挙げられる。
【0031】
塗工支持体は、エネルギー線硬化性組成物(x)の塗工厚みが薄い場合には、組成物(x)により濡れるものであるか、又は、はじく力が弱いものであることが好ましい。即ち、使用する組成物(x)との接触角が90度以下であることが好ましく、45度以下であることが更に好ましく、25度以下であることが更に好ましく、0度であることが最も好ましい。
【0032】
塗工支持体が表面エネルギーの低い素材、例えば、ポリオレフィン、フッ素系重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の場合には、塗工支持体の接着面の表面処理により、使用する組成物(x)との接触角を小さくすることが好ましい。
【0033】
しかしながら、表面処理によって、硬化させたエネルギー線硬化性組成物(x)が剥離不可能なほど強固に接着することのないよう処理の程度を調節する必要がある。濡れ性を向上させるための表面処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸又はアルカリ処理、スルホン化処理、プライマー処理、界面活性剤の塗布、が好ましい。
【0034】
一方、塗工支持体が、接着性が良く、エネルギー線硬化性組成物(x)硬化物の剥離が困難な素材で形成されている場合には、フッ素処理、フッ素系やシリコン系の剥離剤の塗布、表面グラフト法による親水基や疎水基の導入、などの表面処理が好ましい。また、塗工支持体が、紙、不織布、編織布などの多孔質体である場合には、組成物(x)の侵入を防止するためにフッ素系化合物処理やコーティングによる表面非多孔質化を行うことが好ましい。また濡れ性の制御は、表面処理の他に、塗工支持体にブレンドする改質剤の選択によっても行うことができる。
【0035】
塗工支持体に含有させることができる改質剤としては、例えば、シリコンオイルやフッ素置換炭化水素などの疎水化剤(撥水剤);水溶性重合体、界面活性剤、シリカゲルなどの無機粉末、などの親水化剤;ジオクチルフタレートなどの可塑剤、が挙げられる。塗工支持体に含有させることができる着色剤としては、任意の染料や顔料、蛍光性の染料や顔料、紫外線吸収剤が挙げられる。塗工支持体に含有させることができる強化材としては、例えば、クレイなどの無機粉末、有機や無機の繊維や織物が挙げられる。
【0036】
本発明で使用する活性エネルギー線重合性化合物(a)[以下、単に「化合物(a)」と略称する場合もある]は、活性エネルギー線によって重合し硬化するものであれば、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等の任意のものであってよい。化合物(a)は、重合開始剤の非存在下で重合するものに限らず、重合開始剤の存在下でのみ活性エネルギー線により重合するものも使用することができる。
【0037】
化合物(a)は、付加重合性の化合物であることが、重合速度が高いため好ましく、活性エネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重結合を有するものが好ましく、中でも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物が好ましい。
【0038】
更に、化合物(a)は、硬化後の強度が高い点で、重合して架橋重合体を形成する化合物であることが好ましい。そのために、1分子中に2つ以上の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下「1分子中に2つ以上の重合性の炭素−炭素二重結合を有する」ことを「多官能」と称することがある)であることが更に好ましい。
【0039】
化合物(a)として、好ましく使用できる多官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ヒドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、
【0040】
ビス(アクロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレンビスアクリルアミドの如き2官能モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートの如き3官能モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの如き4官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの如き6官能モノマー等が挙げられる。
【0041】
また、化合物(a)として、重合性オリゴマー(プレポリマーを含む。以下同じ)を用いることもでき、例えば、重量平均分子量が500〜50000のものが挙げられる。そのような重合性オリゴマーしては、例えば、エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0042】
マレイミド系の化合物(a)としては、例えば、4,4′−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミド、N,N′−m−フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N′−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N′−ジフェニルエーテルジマレイミド、N,N′−ジフェニルスルホンジマレイミド、
【0043】
1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、4,4′−イソプロピリデンジフェニル=ジシアナート・N,N′−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミド等の2官能マレイミド;N−(9−アクリジニル)マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド基以外の重合性官能基とを有するマレイミド等が挙げられる。マレイミド系のモノマーは、ビニルモノマー、ビニルエーテル類、アクリル系モノマー等の重合性炭素・炭素二重結合を有する化合物と共重合させることもできる。
【0044】
これらの化合物(a)は、単独で用いることも、2種類以上を混合して用いることもできる。また、活性エネルギー線重合性化合物(a)は、粘度の調節、接着性や半硬化状態での粘着性を増すなどの目的で、多官能モノマーと単官能モノマーの混合物とすることもできる。
【0045】
単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、
【0046】
ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチレノキサイド変性フタル酸アクリレート、w−カルゴキシアプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルオキシプロピリヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート、
【0047】
塩素置換アルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダエトキシ(メタ)アクリレート、スルホン酸−2−メチルプロパン−2−アクリルアミド、燐酸エステル基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸エステル基含有(メタ)アクリレート、シラノ基含有(メタ)アクリレート、((ジ)アルキル)アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級((ジ)アルキル)アンモニウム基含有(メタ)アクリレート、(N−アルキル)アクリルアミド、(N、N−ジアルキル)アクリルアミド、アクロロイルモリホリン等が挙げられる。
【0048】
単官能マレイミド系モノマーとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミドの如きN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベンジルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフェニル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、
【0049】
2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6−メチルフェニル)マレイミドの如きN−(置換又は非置換フェニル)マレイミド;N−ベンジル−2,3−ジクロロマレイミド、N−(4′−フルオロフェニル)−2,3−ジクロロマレイミドの如きハロゲンを有するマレイミド;ヒドロキシフェニルマレイミドの如き水酸基を有するマレイミド;N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレイミド;
【0050】
N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコキシル基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレイミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有するマレイミド等が挙げられる。
【0051】
組成物(x)に後述の両親媒性の化合物(b)を添加する場合には、化合物(a)は疎水性の化合物(a)を使用することが好ましい。疎水性の化合物(a)とは、その単独重合体が、60度以上の水との接触角を示すものを言う。疎水性の化合物(a)としては、化合物(a)として上に例示した化合物の中から選択使用できるが、例示した化合物の殆どは疎水性の化合物(a)である。
【0052】
組成物(x)は、活性エネルギー線の照射により硬化樹脂となるものであり、必須成分として化合物(a)を含有する。組成物(x)は化合物(a)単独を含むものであってもよく、複数種の化合物(a)の混合物でもよい。組成物(x)には、必要に応じて他の成分を添加することが出来る。組成物(x)に添加しうる他の成分としては、化合物(a)と共重合性の化合物、活性エネルギー線重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、増粘剤、改質剤、着色剤、溶剤を挙げることができる。
【0053】
組成物(x)に添加しうる、化合物(a)と共重合性の化合物は、両親媒性化合物、親水性化合物、疎水性化合物などであり得る。組成物(x)に添加しうる、化合物(a)と共重合性の親水性化合物は、分子内に親水基を有し、親水性の重合体を与えるものである。
【0054】
このような化合物としては、例えば、ビニルピロリドン;N置換または非置換」アクリルアミド;アクリル酸;ポリエチレングリコール基含有(メタ)アクリレート;水酸基含有(メタ)アクリレート;アミノ基含有(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有(メタ)アクリレート;燐酸基含有(メタ)アクリレート;スルホン基含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0055】
組成物(x)に添加しうる、化合物(a)と共重合性の疎水性化合物は、分子内に疎水基を有し、疎水性の重合体を与えるものである。このような化合物としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート;フッ素含有(メタ)アクリレート;(アルキル置換)シロキサン基含有(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0056】
組成物(x)に添加しうる、化合物(a)と共重合性の両親媒性の化合物[以下、このような化合物を「両親媒性化合物(b)」又は、単に「化合物(b)」と称する]は、1分子中に1個以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。両親媒性の化合物(b)はその単独重合体が架橋重合体となるものであっても、架橋重合体と成らない物であっても良いが、架橋重合体と成らない物であることが、効果が高く好ましい。
【0057】
また、両親媒性の化合物(b)は、疎水性の化合物(a)と均一に相溶するものである。この場合の「相溶する」とは、巨視的に相分離しないことを言い、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0058】
本発明で言う、両親媒性の化合物とは、分子中に親水基と疎水基を有し、水、疎水性溶媒の両者とそれぞれ相溶する化合物を言う。この場合においても、相溶とは巨視的に相分離しないことを言い、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。両親媒性の化合物(b)は、0℃において、水に対する溶解度が0.5重量%以上で、且つ25℃のシクロヘキサン:トルエン=5:1(重量比)混合溶媒に対する溶解度が25重量%以上であることが好ましい。
【0059】
ここで言う溶解度、例えば、溶解度が0.5重量%以上であるとは、少なくとも0.5重量%の化合物が溶解可能であることを言うのであって、0.5重量%の化合物は溶媒に溶解しないものの、該化合物中にごくわずかの溶媒が溶解可能であるものは含まない。水に対する溶解度、あるいはシクロヘキサン:トルエン=5:1(重量比)混合溶媒に対する溶解度の少なくとも一方がこれらの値より低い化合物を使用すると、高い表面親水性と耐水性の両者を満足することが困難となる。
【0060】
両親媒性の化合物(b)は、特にノニオン性親水基、特にポリエーテル系の親水基を有する場合には、親水性と疎水性のバランスが、グリフィンのHLB(エイチ・エル・ビー) 値にして10〜16の範囲にあるものが好ましく、11〜15の範囲にあるものが更に好ましい。この範囲外では、高い親水性と耐水性に優れた成形物を得ることが困難であるか、それを得るための化合物の組み合わせや混合比が極めて限定されたものとなり、成形物の性能が不安定となりがちである。
【0061】
両親媒性の化合物(b)が有する親水基は任意であり、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、フォスフォニウム基の如きカチオン基;スルホン基、燐酸基、カルボニル基の如きアニオン基;水酸基、ポリエチレングリコール基などのポリエーテル基、アミド基の如きノニオン基;アミノ酸基の如き両性イオン基であってよい。親水基として、好ましいのは、ポリエーテル基、特に好ましくは繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物である。
【0062】
両親媒性の化合物(b)の疎水基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、シロキサン基などが挙げられる。両親媒性の化合物(b)は、疎水基として、炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を含むことが好ましい。炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキルフェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0063】
両親媒性の化合物(b)は、親水基として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、且つ、疎水基として炭素原子数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。更に好ましく使用できる両親媒性の化合物(b)として、一般式(1)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0064】
一般式(1)
CH2=CR1COO(R2O)n−φ−R3
(式中、R1は水素、ハロゲン原子又は低級アルキル基を表わし、R2は炭素数1〜3のアルキレン基を表わし、nは6〜20の整数、φはフェニレン基、R3は炭素数6〜20のアルキル基を表わす)
【0065】
ここで、R3はより具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、又はペンタデシル基であり、好ましくはノニル基又はドデシル基である。一般式(1)において、nの数が大きいほど、R3の炭素原子数も大きいことが好ましい。
【0066】
n数とR3の炭素数の関係はグリフィンのエイチ・エル・ビー(HLB)値にして10〜16の範囲にあることが好ましく、11〜15の範囲にあることが特に好ましい。これらの両親媒性の化合物(b)の中でも、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0067】
組成物(x)に添加することができる活性エネルギー線重合開始剤は、本発明で使用する活性エネルギー線に対して活性であり、化合物(a)を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤であって良い。活性エネルギー線重合開始剤は、使用する活性エネルギー線が光線である場合に特に有効である。
【0068】
そのような光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4、4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類;
【0069】
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;N−アジドスルフォニルフェニルマレイミド等のアジドなどが挙げられる。また、マレイミド系化合物などの重合性光重合開始剤を挙げることができる。
【0070】
組成物(x)に光重合開始剤を混合使用する場合の使用量は、非重合性光重合開始剤の場合、0.005〜20重量%の範囲が好ましく、0.1〜5重量%の範囲が特に好ましい。光重合開始剤は重合性のもの、例えば、活性エネルギー線重合性化合物(a)として例示した多官能や単官能のマレイミド系モノマーであっても良い。この場合の使用量は、上記に限られない。
【0071】
組成物(x)に添加することができる重合遅延剤としては、例えば活性エネルギー線重合性化合物(a)がアクリロイル基含有化合物の場合には、スチレン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、p−オクチルスチレン、p−(4−ペンチルシクロヘキシル)スチレン、p−フェニルスチレン、 p−(p−エトキシフェニル)フェニルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、4,4′−ジビニルビフェニル、2−ビニルナフタレン等の、使用する活性エネルギー線重合性化合物(a)より重合速度の低いビニル系モノマーを挙げることができる。
【0072】
組成物(x)に添加することができる重合禁止剤としては、例えば活性エネルギー線重合性化合物(a)が重合性の炭素−炭素二重結合含有化合物の場合には、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン等のハイドロキノン誘導体;ブチルヒドロキシトルエン、tert−ブチルフェノール、ジオクチルフェノールなどのヒンダントフェノール類等が挙げられる。
【0073】
活性エネルギー線として光線を使用する場合には、パターニング精度を向上させるために、重合遅延剤及び/又は重合禁止剤と光重合開始剤を併用することが好ましい。また、組成物(x)に添加することができる増粘剤としては、例えば、ポリスチレンなどの鎖状重合体が挙げられる。
【0074】
組成物(x)に添加することができる改質剤としては、例えば、撥水剤や剥離剤として機能するシリコンオイルやフッ素置換炭化水素などの疎水性化合物;親水化剤や吸着抑制剤として機能するポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの水溶性重合体;濡れ性向上剤、離型剤、吸着抑制剤として機能する、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤が挙げられる。組成物(x)に必要に応じて混合使用することができる着色剤としては、任意の染料や顔料、蛍光色素、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0075】
組成物(x)に添加することの出来る溶剤としては、組成物(x)の各成分を溶解して均一な溶液とするものであれば任意であり、揮発性の溶剤であることが好ましい。組成物(x)の粘度が高い場合、特に薄く塗工する場合などには、組成物(x)に溶剤を添加することが好ましい。該溶剤は、塗工後、或いはその後の任意の工程で揮発除去される。
【0076】
本発明の製造方法は、塗工支持体上に化合物(a)を含有する組成物(x)を塗工して未硬化の塗膜を形成する。この工程を「工程(i)」と称する。塗膜の厚さは任意であるが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上が更に好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。これより薄いと製造が困難となる。
【0077】
塗膜の厚みはまた、1000μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。これより厚いと本発明の効果が減じる。塗膜の厚みは、硬化時の収縮などにより若干変化するが、樹脂層(X)となる層の厚みと概ね一致する。塗工部位は任意であり、塗工支持体の全面であっても、部分的であってもよい。又逆に、後述の部材(J)と積層する部分以外の部分にも塗工されていてもよい。
【0078】
塗工支持体に組成物(x)を塗工する方法としては、塗工支持体の上に塗工できる任意の塗工方法を用いることができ、例えば、スピンコート法、ローラーコート法、流延法、ディッピング法、スプレー法、バーコーター法、X−Yアプリケータ法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、ノズルからの押し出しや注型などが挙げられる。また、組成物(x)を特に薄く塗工する場合には、組成物(x)に溶剤を含有させて塗工した後、該溶剤を揮発させる方法を採用することもできる。
【0079】
組成物(x)の未硬化の塗工物に、欠損部とすべき部分を除いて活性エネルギー線を照射して、照射部分の組成物(x)を硬化させる一方、組成物(x)の活性エネルギー線非照射部を未硬化部分として残す(以後、この操作を「パターニング露光」若しくは単に「露光」と称する場合もある)。この工程を硬化塗膜を形成する工程(ii)と称する。照射の角度は任意であり、必ずしも塗膜面に直角でなくても良い。
【0080】
ここで言う「硬化」とは、組成物(x)が後の工程を実施することが可能な程度に硬化することを言い、完全硬化に限らず、重合可能な官能基が残存している不完全硬化も含む。組成物(x)の種類や接着剤との組み合わせによっては、不完全硬化とすることが接着力が向上し好ましい。
【0081】
パターニング露光におけるパターンの形状、即ち欠損部とする部分の形状は、用途目的に応じて任意に設定できる。例えば、流路、連絡路、流入出口、貯液槽、反応槽、液−液接触部、クロマトグラフィーや電気泳動の展開路、検出部、バルブ室、弁の周囲部分、ポンプ室、加圧タンク、減圧タンク、圧力検出部等として用いられる空間、センサー埋め込み部として使用する空間などとして使用する空洞状の欠損部の全部又は一部とすることが出来る。
【0082】
欠損部とする形状が、塗膜の面内において線状である場合には、直線、ジグザグ、渦巻き、馬蹄形その他の形状であってよい。また、貯液槽や反応槽等として使用する場合には、円形や矩形であって良い。更に、欠損部とする形状は、該塗膜層の表裏を連絡する微小な貫通孔であっても良い。該欠損部は、塗膜の外周部、即ちマイクロ流体デバイスの外周部に連絡していてもしていなくても良い。
【0083】
欠損部を、塗膜表面から見て線状とする場合には、欠損部即ち未硬化部は、幅5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。これより狭い幅の欠損部は接着剤によって閉塞しやすくなる。未硬化部の幅は1000μm以下であることが好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。これより未硬化部の幅が広いと、本発明の効果が減じる。勿論好ましい幅は形成される空隙の用途目的によって異なる。欠損部は、異なる幅の部分が混在していて良い。
【0084】
溝の幅/深さ比は任意であるが、0.2〜10の範囲が好ましく、0.5〜5の範囲が更に好ましい。露光によって形成される未硬化部の寸法は、活性エネルギー線非照射部の寸法と必ずしも同じではなく、活性エネルギー線非照射部の寸法より大きくなる場合もあるし小さくなる場合もある。
【0085】
未硬化部の寸法は、活性エネルギー線の種類や照射量、化合物(a)の反応性、活性エネルギー線重合開始剤の種類や添加量、重合禁止剤や遅延剤の添加量等により変化しうる。しかし、変化の度合いはそれほど大きなものでなく、せいぜい1/2〜2倍程度である。未硬化部の断面形状は、矩形(角の丸まった矩形を含む。以下同じ)、台形(角の丸まった台形を含む。以下同じ)、半円形等の任意の形状であってよい。
【0086】
本発明に用いることのできる活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、レーザー光線、放射光の如き光線;エックス線、ガンマ線、放射光の如き電離放射線;電子線、イオンビーム、ベータ線、重粒子線の如き粒子線が挙げられる。これらの中でも、取扱性や硬化速度の面から紫外線及び可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。硬化速度を速め、硬化を完全に行う目的で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で行うことが好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素気流中、二酸化炭素気流中、アルゴン気流中、真空又は減圧雰囲気が好ましい。
【0087】
欠損部とする部分以外の部分に活性エネルギー線を照射する方法は任意であり、例えば、照射不要部分をマスキングして照射する、あるいはレーザーなどの活性エネルギー線のビームを走査する等のフォトリソグラフィーの手法が利用できる。
【0088】
本発明の製法においては、露光後、非照射部分の未硬化の組成物(x)を除去し、樹脂の欠損部とする(以後、この操作を「現像」と称する場合がある)。この工程を「工程(iii)」と称する。未硬化の組成物(x)の除去方法は任意であり、例えば、圧縮空気などによる吹き飛ばし、ろ紙などによる吸収、水などの非溶剤の液体流による洗い流し、溶剤洗浄、揮発、分解等の方法が利用できる。
【0089】
これらの中で、非溶剤の液体流による洗い流し又は溶剤洗浄が好ましい。現像によって組成物(x)の未硬化部が欠損部になる。形成される欠損部の形状・寸法は、組成物(x)の未硬化部の形状・寸法と概ね同じであるが、完全に一致するわけではない。例えば、圧縮空気などによる吹き飛ばしや非溶剤の液体流による洗い流しでは、溶剤洗浄に比べて欠損部の幅が狭くなりがちであるし、非照射部分の未硬化組成物(x)が完全に除去されず、欠損部の底が丸くなりがちであるし、欠損部の底が塗工支持体表面に届いていない場合もあり得る。
【0090】
工程(iii)の後に、組成物(x)の硬化塗膜を部材(J)と接着剤を介して積層し、該硬化塗膜を樹脂層(X)と成す。この工程を「工程(iv)」と称する。なお、本発明に於いては、例えば樹脂層(X)と部材(J)を「積層される」とは、接着剤を介して積層することを意味し、また、樹脂層や部材が互いに「隣接する」とは、接着剤を介して隣接することを意味する。
【0091】
接着剤が両部材を接着している部位は、樹脂層(X)や部材(J)に形成された欠損部を閉塞することが無く、かつ、該欠損部が不必要にデバイス外部や他の欠損部と連絡することがなければ、その位置や形状は任意であるが、欠損部以外の全面であることが好ましい。接着剤は、部材(J)の欠損部や樹脂層(X)となる塗膜の欠損部を閉塞するものでなければ、欠損部の内側をコートしていてもよい。
組成物(x)の硬化塗膜を部材(J)と接着剤を介して積層する方法は任意であり、樹脂層(X)への全面又は一部への塗布、部材(J)への全面または一部への塗布、その両者への塗布であり得る。塗布方法も樹脂層(X)となる塗膜の形成方法と同様であるが、薄い接着剤層を形成可能なスピンコート法や、溶剤の使用が好ましい。
【0092】
接着剤層の厚みは、欠損部が空洞と成された際に該空洞が閉塞することがなければ任意であるが、本発明の構成からして、樹脂層(X)に比べて十分に薄い物であり、樹脂層(X)の厚みの1/10以下であることが好ましく、1/30以下であることがさらに好ましい。接着剤層の厚みの下限は、樹脂層(X)が部材(J)と接着しておれば任意であり、特に限定することを要しないし、また、非常に薄い場合には測定困難である。接着剤層の厚みの下限は、例えば0.5nm程度であり得る。
【0093】
接着剤は任意であり、例えばエネルギー線硬化性の接着剤、エポキシ系などの熱硬化性の接着剤、溶剤型接着剤、シアノアクリレートなどの水分硬化型接着剤、等が使用できるが、エネルギー線硬化性の接着剤が生産性が高く好ましい。エネルギー線硬化性の接着剤は、本発明で使用するエネルギー線硬化性組成物(x)を使用することが出来る。但し、該接着剤は樹脂層(X)に使用するエネルギー線硬化性組成物(x)と同じ組成である必要はない。
接着剤は、また、粘度が1000mPa/s以上であることが好ましい。このような粘度の高い接着剤を使用することにより、樹脂層(X)と部材(J)を積層した状態で接着剤を硬化させるに当たり、接着剤層が粘着性を示すため、圧迫状態を保持する必要が無くなる。この際、塗布時に揮発性溶剤を使用することが好ましい。
【0094】
本発明に於いては、樹脂層(X)の硬度は任意であり、従来法でも形成可能な1 MPa・m以上の場合は勿論、従来法では製造が困難な、自立不能なほどに薄く柔軟な層であっても容易に製造可能である。例えば、樹脂層(X)は、「引張弾性率×厚み」の値が1×10-5〜1×10-1 MPa・mの範囲にあり得るし、1×10-4〜3×10-2 MPa・mであり得る。更に、3×10-4〜1×10-2 MPa・mの範囲であり得る。
【0095】
本発明で製造されるマイクロ流体デバイスの樹脂層(X)の一部に、部材(J)と接着剤を介して接触していながら接着していない部分を形成することが出来る。この場合には、接着剤としてエネルギー線硬化性の接着剤を使用し、工程(iv)に於ける接着剤の塗布と積層との間において、接着剤塗膜の一部に選択的に活性エネルギー線を照射して接着剤を部分的に硬化させ、その後、他の部材と積層し、未硬化部分の接着剤を硬化させることによって、他の部材と接着する。この時、接着剤の部分硬化の度合いは、他の部材と積層した状態で、他の部分の接着剤を硬化させても、該被照射部分が他の部材と接着しない程度であれば任意である。
【0096】
即ち、該部分硬化を施す場合、接着剤が樹脂層(X)又は部材(J)の一方に塗布されている場合には、該塗布された接着剤層に部分硬化を施す。接着剤が樹脂層(X)と部材(J)の両方に塗布されている場合には、両部材の接着剤層の合わさる部分に部分硬化を施す。
組成物(x)の硬化塗膜と部材(J)との積層は、用途、目的に応じた形態であってよく、必ずしも全面である必要はない。
【0097】
部材(J)の形状は特に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、シート状、板状、塗膜状、棒状、チューブ状、その他複雑な形状の成型物などであり得るが、成形し易く、組成物(x)半硬化塗膜を積層・接着し易いといった面から、接着すべき面が平面状又は2次曲面状であることが好ましく、シート状又は板状であることが特に好ましい。なお、後述の部材(J')は、部材(J)の中の特定の形状を有するものである。
【0098】
部材(J)の素材は、本発明の製造方法で組成物(x)と接着可能なものであれば特に制約はない。部材(J)の素材として使用可能なものとしては、例えば、重合体、ガラス、石英の如き結晶、セラミック、シリコンの如き半導体、金属などが挙げられるが、これらの中でも、易成形性、高生産性、低価格などの点から重合体(ポリマー)が特に好ましい。
【0099】
部材(J)は支持体上に形成されたものであってもよい。この場合の支持体の素材は任意であり、例えば、重合体、ガラス、セラミック、金属、半導体などであって良い。支持体の形状も任意であり、例えば、板状物、シート状物、塗膜、棒状物、紙、布、不織布、多孔質体、射出成型品等であって良い。該支持体は、本マイクロ流体デバイスと一体化されるものであっても、形成後に除去されるものであっても良い。複数のマイクロ流体デバイスを1つの部材(J)上に形成することも可能であるし、製造後、これらを切断して複数のマイクロ流体デバイスとすることも可能である。
【0100】
部材(J)に使用する重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、また、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良い。生産性の面から、部材(J)に使用する重合体は、熱可塑性重合体又はエネルギー線硬化性の架橋重合体であることが好ましい。
【0101】
部材(J)に使用できる重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の如きスチレン系重合体;ポルスルホン、ポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルの如き(メタ)アクリル系重合体;ポリマレイミド系重合体;ビスフェノールA系ポリカーボネート、ビスフェノールF系ポリカーボネート、ビスフェノールZ系ポリカーボネートなどのポリカーボネート系重合体;
【0102】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1の如きポリオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き塩素含有重合体;酢酸セルロース、メチルセルロースの如きセルロース系重合体;ポリウレタン系重合体;ポリアミド系重合体;ポリイミド系重合体;ポリ−2,6−ジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイドの如きポリエーテル系又はポリチオエーテル系重合体;ポリエーテルエーテルケトンの如きポリエーテルケトン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートの如きポリエステル系重合体;エポキシ樹脂;ウレア樹脂;フェノール樹脂;ポリ四フッ化エチレン、PFA(四フッ化エチレンとパーフロロアルコキシエチレンの共重合体)などのフッ素系重合体、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系重合体;本発明で使用するエネルギー線硬化性組成物(X)の硬化物、等が挙げられる。
【0103】
これらの中でも、接着性が良好な点などから、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリエステル系重合体が好ましい。また部材(J)は、エネルギー線硬化性樹脂の硬化物であることも好ましい。部材(J)は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体その他の複合体であっても良い。更に、部材(J)は、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0104】
部材(J)に含有させることができる改質剤としては、例えば、シリコンオイルやフッ素置換炭化水素などの疎水化剤(撥水剤);水溶性重合体、界面活性剤、シリカゲルなどの無機粉末、などの親水化剤が挙げられる。部材(J)に含有させることができる着色剤としては、任意の染料や顔料、蛍光性の染料や顔料、紫外線吸収剤が挙げられる。部材(J)に含有させることができる強化材としては、例えば、クレイなどの無機粉末、有機や無機の繊維が挙げられる。
【0105】
部材(J)が接着性の低い素材、例えば、ポリオレフィン、フッ素系重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の場合には、部材(J)の接着面の表面処理やプライマーの使用により、接着性を賦与或いは向上させることが好ましい。また、部材(J)の表面にエネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線照射により半硬化させた層を形成し、これを部材(J)とすることも樹脂層(X)との接着性向上の為に好ましく、接着性の観点からは、接着する樹脂層(X)と同様のエネルギー線硬化性組成物を用いることが更に好ましい。
【0106】
また、本発明のマイクロ流体デバイスの使用に当たって、接着性を向上させる目的の他に、タンパク質などの溶質のデバイス表面への吸着を抑制する目的で、部材(J)の表面を親水化することも好ましい。
【0107】
部材(J)は、表面に溝などの凹状の欠損部や部材を貫通する欠損部や表面に開口した空洞状の欠損部を有する部材、欠損部を有しない部材、層内に欠損部を有しない組成物(x)硬化樹脂層、又は分離膜などであってよいし、これらの複合体でも良い。又、部材(J)は、その上に樹脂層(X)を積層して形成した後に除去可能なものであっても良い。さらに、部材(J)は、単独の樹脂層(X)、積層された複数の樹脂層(X)、又は樹脂層(X)が他の部材に積層された部材であり得る。部材(J)が有しうる欠損部の形状については、後述の部材(J’)が必須構成要件として有する欠損部と同様である。
【0108】
工程(iv)の後、接着剤を硬化させて、部材(J)と樹脂層(X)を接着する。この工程を「工程(v)」と称する。硬化方法は、接着剤の種類に応じた方法を採ることが出来る。接着剤がエネルギー線硬化性のものである場合には、活性エネルギー線照射により硬化させる。使用する活性エネルギー線については、工程(ii)に於いて、樹脂層(X)となる硬化塗膜を形成する際に用いた活性エネルギー線と同様のものを用いることが出来る。
工程(v)の後、部材(J)に接着された樹脂層(X)から塗工支持体を除去することにより、樹脂層(X)を部材(J)に転写する。この工程を「工程(vi)」と称する。除去方法は任意であり、剥離、分解、溶融、揮発などであり得る。
【0109】
剥離による除去は、引張りによる剥離、刃による剥離、水流などの液体流による剥離、圧空などによる気体流による剥離、水への浸漬などによる自然剥離、膨潤による剥離など任意であり、剥離を容易にするため、温度条件を変えることも好ましい。
【0110】
また、塗工支持体の素材と組成物(x)の組み合わせを選択し、未硬化塗膜や半硬化塗膜の状態では付着性であり、完全硬化後は接着力が低くなる組み合わせを選択することで容易となる。剥離による除去は、生産性が高い点で好ましく、樹脂層(X)の引張り弾性率が0.1〜10GPaであるように比較的剛性が高い場合に好ましい方法である。
【0111】
樹脂層(X)は、層内にパターニング露光と現像によって形成された樹脂の欠損部を有し、該欠損部は、接着剤によって閉塞されることが無いよう、該層を接着剤を介して部材(J)と積層することにより、また必要に応じて、樹脂層(X)の上にさらに他の部材(K)を接着剤を介して積層して、部材(J)と他の部材(K)とで樹脂層(X)を挟持することにより、流路その他として使用される空洞を構成することができる。空洞は、マイクロ流体デバイスの外部に連絡しているものであっても連絡していないものであっても良い。なお、後述の樹脂層(X')は、樹脂層(X)の中の特定の形状を有するものである。
【0112】
部材(J)上に樹脂層(X)を積層した後、樹脂層(X)が積層された部材(J)を工程(iv)における部材(J)の代わりに用いて、樹脂層(X)の形成工程、即ち、工程(i)〜(vi)なる一連の工程を繰り返すことによって、樹脂層(X)を複数層積層することができる。連続する2つの樹脂層(X)の形状は同じであっても異なっていても良く、また、厚みや、樹脂層(X)を構成する組成物(x)の種類が異なっていても良い。また、接着剤の種類や塗工部位が異なっていても良いし、その度ごとに塗工支持体の除去方法が異なっていても良い。
【0113】
また、上記と同様にして、樹脂層(X)の上に他の部材を介して他の樹脂層(X)を積層しても良いし、部材(J)上に樹脂層(X)が形成された部材を形成し、それを複数枚張り合わせることも可能である。
【0114】
形成された樹脂層(X)の上に他の部材(K)を接着することが好ましい。接着方法は任意であるが、部材(K)素材にエネルギー線硬化性組成物を用い、半硬化させた状態で樹脂層(X)に接触させ、活性エネルギー線を再照射して接着する方法、接着剤により接着する方法、部材(K)の表面を溶融又は溶解させて接着する方法、が好ましい。欠損部を形成しないこと以外は樹脂層(X)と同様の方法で形成することも好ましい。なお、後述の部材(K')は、部材(K)の特定形状のものである。
【0115】
連続した3層以上の部材の欠損部を連結させることによって、空洞状の流路の立体交差が可能になり、断面積や断面形状が異なる空洞の形成が可能となり、また、組成や硬度の異なる素材で弁などの構造を形成することが可能となり、マイクロ流体デバイスに複雑な機能を持たせることが可能になる。このような形態は、部材を貫通する欠損部、部材表面の凹状の欠損部、部材表面にその一部が開口した空洞状の欠損部から選ばれる1以上の欠損部を有する部材(J)、及び部材(J)と同様の構造を有する部材(K)を使用した、部材(J)−樹脂層(X)−部材(K)積層体であり得る。この時、部材(K)は樹脂層(X)と同じ素材・構造であって良いし、樹脂層(X)は複数層であって良いし、部材(J)も樹脂層(X) と同じ素材・構造であって良い。
【0116】
部材(K)の形状や寸法は、部材(J)と同様であり、部材を貫通する欠損部を有する部材、表面に溝状などの凹状の欠損部を有する部材、部材表面にその一部が開口した空洞状の欠損部を有する部材、欠損部を有しない部材、本発明で言う樹脂層(X)と同様の方法で形成され、同様の素材・構造を有する樹脂層、層内に欠損部を有しない組成物(x)の硬化樹脂層、分離膜など、及びこれらの複合体であり得る。部材(K)の代わりに、任意の部材上に樹脂層(X)が積層された部材を用いることも出来る。
【0117】
樹脂層(X)は、活性エネルギー線重合性化合物(a)の選択や組成物(x)の各成分の配合により、目的の硬度に形成することが出来る。樹脂層(X)の引張弾性率は、例えば0.01GPa〜10GPa、好ましくは0.05GPa〜3GPaとすることが出来る。
【0118】
本発明のマイクロ流体デバイス製造方法は、樹脂層(X)に弁となる構造を形成することにより、逆止弁を有するマイクロ流体デバイスやポンプ機能を有するマイクロ流体デバイスを製造することを可能とする。弁となる構造は、その一部が固定されたシート状であることが、製造が容易であり好ましい。その一部が固定されたシート状とは、例えば舌状、1以上の部分で固定された円や矩形などであり得る。
【0119】
本発明の製造方法においては、本発明の工程(ii)において、弁と成る部分を残してその周囲を欠損部とする形状に露光することにより、その一部が固定されたシート状の弁を形成することが出来る。例えば、舌状の弁となる構造を形成するには、馬蹄形の欠損部を形成すべく露光すればよい。
【0120】
そして、弁の形成された樹脂層(X)の一方の側には弁より小さな面積の孔状の欠損部を有する部材(J)、部材(K)又は樹脂層(X)を、孔状の欠損部を弁に合わせて積層し、樹脂層(X)の他方の側には弁が可動出来るように、弁より大きな空洞となる欠損部を有する部材(J)、部材(K)又は樹脂層(X)を積層すること、或いは何も積層しないこと、によって逆止弁を形成することが出来る。
【0121】
樹脂層(X)を、他の部材や樹脂層、例えば上記の、弁より小さな面積の孔状の欠損部を有する部材(J)、部材(K)又は樹脂層(X)と接着する際に、弁の部分も隣接する部材と接着されてしまうことを避けるために、マスキングなどにより、接着しない部分に接着剤を塗布しない方法、該部分の接着剤を払拭などにより除去する方法、該部分の接着剤を予め硬化させて非接着性としてから両部材を接着する方法、等の方法を採ることが出来る。これらの中で、本発明の工程(iv)において積層する前に、接着剤層に活性エネルギー線を照射して、該部分が接着しない程度に硬化を進める方法が好ましい。
【0122】
弁が形成される樹脂層(X)は、柔軟な素材で形成することが好ましく、該層に積層される層や部材より低い引張弾性率の素材で形成することが好ましい。弁が形成される樹脂層(X)に使用する素材の好ましい引張弾性率は1MPa〜1GPa、更に好ましくは10〜500MPa、更に好ましくは50〜300MPaである。この範囲より低いと強度や繰り返し耐久性に劣るものとなりがちであり、これより高いと閉時に漏洩が生じがちとなる。
【0123】
本発明の製造方法においては、弁を有するマイクロ流体デバイスを作製する場合と同様に、可動なダイヤフラムを有するマイクロ流体デバイスを製造する場合においても、ダイヤフラムが隣接する部材、即ち、樹脂層(X)、部材(J)又は部材(K)と接着されてしまうことを避けるために、弁の場合と同様の方法を採ることが出来る。例えば、ダイヤフラムに樹脂層(X)が隣接する場合には、工程(iv)において、積層する前に非接着とすべき部分の接着剤層に活性エネルギー線を照射して、該部分が接着しない程度に硬化を進めることができる。
【0124】
このような方法で製造することのできるダイヤフラムを有するマイクロ流体デバイスの例としては、ダイヤフラム式ポンプ機構、チェックバルブ機構、ダイヤフラム式開閉バルブ機構、ダイヤフラム式流量調節バルブ機構などを有するマイクロ流体デバイスを挙げることができる。
【0125】
形成したマイクロ流体デバイスは、穿孔、切断などの後加工することも可能である。また、本発明のマイクロ流体デバイスは全体が微小な大きさである為、一枚の樹脂層に多数の部材を同時に作成することが生産効率、並びに各部材の細部の精度の良い位置決めに有用である。即ち、複数の微小なマイクロ流体デバイスを一枚の露光現像版上に作成することにより、再現性良く、且つ高い精度の寸法安定性を有して多数のマイクロ流体デバイスを一度に生産することができる。
【0126】
本発明のマイクロ流体デバイスは、欠損部を有する部材(J')と、層の一部に層の表裏を貫通する欠損部を有し、該欠損部の最小幅が、1〜1000μmである、エネルギー線硬化性樹脂層(X')の1つ以上の層と、欠損部を有する(K')とが接着剤を介して積層されて接着され、部材中の少なくとも2つ以上の欠損部が連結して空洞を形成している、積層構造を有するマイクロ流体デバイスである。
【0127】
欠損部を有する部材(J')は、部材を貫通する欠損部、部材表面の凹状の欠損部、部材表面にその一部が開口した空洞状の欠損部から選ばれる1以上の欠損部を有する部材であり、それ以外は、本発明の製造方法で使用した部材(J)と同様であり、部材(J)の特定形状のものである。
【0128】
部材を貫通する欠損部は、例えば部材を直角または斜めに貫通している任意の形状の孔であり得る。孔は断面形状や寸法が変化していても良い。部材表面の凹状の欠損部の形状は、例えば表面に形成された溝や穴であり得る。部材表面にその一部が開口している空洞状の欠損部は、例えば、部材表面にその一端又は両端が開口している毛細管状の流路、部材表面にその面積より小な開口部を有する空洞、等であり得る。
【0129】
部材(J’)が有するこれらの欠損部は、一つの連続した欠損部であっても良いし、複数の独立した欠損部であっても良い。複数の独立した欠損部は、他の層や部材と積層されたときに連絡して一つの毛細管状の流路となるものであっても良いし、複数の毛細管状の流路となるものであっても良い。
【0130】
欠損部を有する部材(K')もまた、部材(J’)の場合と同様に、部材を貫通する欠損部、部材表面の凹状の欠損部、部材表面にその一部が開口した空洞状の欠損部から選ばれる1以上の欠損部を有する部材であり、それ以外は、本発明の製造方法で使用した部材(K)と同様であり、部材(K)の特定形状のものである。
【0131】
部材を貫通する欠損の位置、形状、寸法は、該欠損部が樹脂層(X')に連結できる面に開口していること以外は任意である。部材を貫通する欠損部の形状は、例えば丸孔、角孔、スリット状、円錐状、角錐状、樽状、ネジ孔、その他複雑な形状の欠損部であり得る。
【0132】
部材(J')の欠損部は樹脂層(X')の欠損部に比べて大きな孔であり得る、部材(J')表面に形成された凹状の欠損部の寸法形状は、後述のような、本発明マイクロ流体デバイス内に形成される空洞の形状・寸法と同様である。
欠損部を有する部材(J')、部材(K')の製造方法は任意であり、例えば、射出成形、溶融レプリカ法、溶液キャスト法、エネルギー線硬化性組成物を用いたフォトリソグラフ法、又はエネルギー線硬化性組成物を用いたキャスト成型法などにより製造できる。また、部材(J')は、本発明で言う樹脂層(X')と同じ素材・形状の樹脂層であり得るし、本発明で言う樹脂層(X')が複数層積層・接着された構造物であり得るし、本発明で言う樹脂層(X')が他の部材に積層・接着された積層物であり得る。
【0133】
本発明のマイクロ流体デバイスは、部材(J')、1つ以上の樹脂層(X')、部材(K')の積層体であり、樹脂層(X')は1以上であり、用途、目的にもよるが1〜8であることが好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
【0134】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいては、樹脂層(X')に形成された欠損部は、本発明の製造方法における樹脂層(X)と異なり、該樹脂層の表裏を貫通していて、該樹脂層が他の樹脂層(X')又は貫通孔や凹部を有する部材と接着剤を介して積層・接着されることでこれらの層や部材を連絡した空洞を形成している。樹脂層(X')については、該樹脂層に形成された欠損部が該樹脂層の表裏を貫通していること以外は、本発明の製造方法における樹脂層(X)と同様である。
【0135】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいては、部材(J')、1層以上の樹脂層(X')、及び部材(K’)に形成された各欠損部は、少なくとも隣り合った2層の欠損部同士が連絡して空洞を形成している。好ましくは連続した3層以上の欠損部が互いに連絡して空洞を形成している。即ち、部材(J')、1以上の樹脂層(X')、部材(K’)を隣り合う部材と接着している接着剤層は、該部材の欠損部を埋めることなく、従って、空洞を閉塞していない。
【0136】
また、更に好ましくは、部材(J')、1層以上の樹脂層(X')、及び部材(K’)に形成された欠損部が、これらの層の少なくとも2層、好ましくは3層、更に好ましくは4層に形成されていて、これらの欠損部が各層の面に平行な方向に形成された線状であるものである。「線状」の詳細については、樹脂層(X)に形成される線状の欠損部に関する記述と同様である。このような欠損部を有すマイクロ流体デバイスは、特に、各層が柔軟で薄い物である場合には、従来法では製造が実質的に不可能であり、知られていなかった。
【0137】
接着剤層の厚みは任意であるが、本発明の構成からして、樹脂層(X')に比べて十分に薄い物であり、樹脂層(X')の厚みの1/10以下であることが好ましい。接着剤層の厚みの下限は、樹脂層(X')が部材(J')と接着しておれば任意であり、特に限定することを要しないし、また、非常に薄い場合には測定困難である。樹脂層(X')の厚みは、例えば0.5nm程度であり得る。
【0138】
本発明のマイクロ流体デバイスに更に他の部材、例えば欠損部を有する部材を積層・接着することも可能である。また、2つ以上の本発明のマイクロ流体デバイスを、表面に開口した空洞同士が連絡するようにして接着して、新たなマイクロ流体デバイスとすることも可能であるし、貫通孔や凹部を有しない部材を挟んで積層・接着して、空洞部が互いに連絡していない複数の部分から成るマイクロ流体デバイスとすることも可能である。
【0139】
このような例としては、マイクロ流体デバイスがダイヤフラム式ポンプ機構やダイヤフラム式バルブ機構を有するような、ダイヤフラム構造を有するデバイスであり、貫通孔や凹部を有しない部材がダイヤフラムを形成しているマイクロ流体デバイスを例示することが出来る。貫通孔や凹部を有しない部材はエネルギー線硬化性樹脂で形成されていることが、層間接着性が高くまた生産性も高いため、好ましい。また、このような部材は、多孔質膜、透析膜、気体分離膜などであり得る。
【0140】
本発明のマイクロ流体デバイスにおける空洞は、例えば、流路、連絡路、流入出口、貯液槽、反応槽、液−液接触部、クロマトグラフィーや電気泳動の展開路、検出部、バルブなどの流体の流路;加圧タンク、減圧タンク、圧力検出部などの空間;センサー埋め込み部として使用でき、用途目的に応じて空洞の形状を任意に設定できる。
【0141】
異なる樹脂層(X')内に形成された複数の流路或いは枝分かれした流路が、樹脂層(X')を隔てて立体交差していることが、流路を平面内に形成しなければならない制約から解放され、複雑なデバイスを構成出来るため好ましい。
【0142】
また、本発明においては、空洞がバルブ室、即ち、その容積や断面積が変化することによって流路の開閉や流量調節を行う空洞、であり得る。バルブの種類は任意であり、例えばチェックバルブ(常時閉であり、一定以上の圧力が掛かると開となるバルブ)、逆止弁(一方向には常時開であり、逆方向には常時閉であるバルブ)、開閉バルブ、流量調節バルブなどであり得る。また、ポンプ機構を構成するバルブであり得る。
【0143】
バルブが弁を有する場合には、弁の形状は任意であり、例えば、舌状などの、その一部が固定されたシート状(フィルム状、リボン状などを含む、以下同じ);空洞に閉じこめられた球状、円錐状、砲弾状、板状などの独立した塊状物などであり得る。弁となる構造は、その一部が固定されたシート状であることが、製造が容易であり好ましい。
【0144】
その一部が固定されたシート状とは、例えば舌状、2以上の部分で固定された円や矩形などであり得る。本発明のマイクロ流体デバイスにおいては、樹脂層(X')の一部に、弁と成る部分の周囲を欠損部として、その一部が固定されたシート状の弁を形成することが出来る。
【0145】
例えば、欠損部が馬蹄形であることにより、舌状の弁となる構造が得られる。そして、弁が形成された樹脂層(X')の一方の側には弁より小さな面積の孔状の欠損部が弁に合わせて積層されており、他方の側には弁が可動出来るように、弁より大きな空洞が形成されていることによって逆止弁やチェックバルブとして機能し得る。
【0146】
弁を有する樹脂層(X')は、柔軟な素材で形成されていることが好ましく、該樹脂層を挟持する層や部材より低い引張弾性率の素材で形成されていることが好ましい。弁を有する樹脂層(X')として使用される素材の好ましい引張弾性率は1MPa〜1GPa、更に好ましくは10〜500MPa、更に好ましくは50〜300MPaである。この範囲より低いと強度や繰り返し耐久性に劣るものとなりがちであり、これより高いと閉時に漏洩が生じがちとなる。
【0147】
また、本発明はダイヤフラム式のバルブ機構を有するマイクロ流体デバイスを提供する。ダイヤフラム式バルブ機構の好ましい第1の例は、樹脂層(X')が、一方の側がダイヤフラムとなる樹脂層、他の側が欠損部を有する他の部材と接着剤を介して積層されており、樹脂層(X')の欠損部が積層されることで空洞となり、樹脂層(X')に隣接して積層された他の部材が、該空洞への流入口又は流出口、またはその両者となる孔状の欠損部を有し、流入口、流出口の少なくとも一方が、樹脂層(X')を隔ててダイヤフラムの対向面に形成されていて、その周がダイヤフラムに接しておらず、ダイヤフラムを変形させて、該流入口、流出口の少なくとも一方の周に接することによって流路を閉鎖しうる構造を有するものである。
【0148】
他の部材の所定の位置に形成された孔状の欠損部が、流入口又は流出口のいずれかである場合には、他方は、樹脂層(X')に形成された線状の欠損部とダイヤフラムとなる樹脂層とで形成された毛細管状の流路、あるいは、他の部材)に形成された溝状の欠損部と樹脂層(X')とで形成された毛細管状の流路などであり得る。
【0149】
このような構造のバルブとして、常時開のダイヤフラム式バルブを挙げることができる。ダイヤフラムととなる樹脂層、樹脂層(X')及び他の部材が接着されて積層された構造は、本発明の製造方法によって製造することができる。
【0150】
本発明のマイクロ流体デバイスは、また、欠損部を有する部材(J')と、層の一部に欠損部を有し、該欠損部の最小幅が1〜1000μmである、エネルギー線硬化性樹脂層(X')の1つ以上の層と、ダイヤフラムとなす部材(K'')とが接着剤を介して積層され、部材(K'')が隣接して積層された他の部材と接着剤を介して接触しているが接着していない部分を有し、該部分がダイヤフラムとなる、部材(J')と樹脂層(X')中の少なくとも2つ以上の欠損部が連結して空洞を形成している、積層構造を有するマイクロ流体デバイスとすることも可能である。
【0151】
即ち、部材(J')、1層以上の樹脂層(X')、及びダイヤフラムを構成する部材(K'')の積層体から成り、部材(K'')が隣接して積層された他の部材と接着剤を介して接触しているが接着していない部分を形成し、該部分をダイヤフラムとすることが出来る。
【0152】
部材(J')と樹脂層(X')については、上述の、部材(J')、樹脂層(X')と同様であり、部材(K’)の代わりに、ダイヤフラムとなる部材(K’’)を用いること以外は、前記の部材(J')、樹脂層(X')、部材(K’)から成るマイクロ流体デバイスと同様である。部材(K'')はその一部がダイヤフラムを構成する部材であり、欠損部を有する必要がないこと以外は部材(K')と同様である。
【0153】
部材(K'')は、該部材に積層された他の部材と接着剤を介して接触しているが、接着していない部分を有し、部材(K'')の該非接着部分がダイヤフラムとなる。即ち、ダイヤフラムを変形させると該非接着部分が空洞と成りうる。
【0154】
本発明のダイヤフラム式バルブ機構の好ましい第2の例は、上記の構造を採っている上に、樹脂層(X')が、該空洞となりうる部部への流入口又は流出口、またはその両者となる孔状の欠損部を有し、該流入口又は流出口の少なくとも一方がダイヤフラムの対向面に形成されていて、その周がダイヤフラムに接しておらず、ダイヤフラムの変形により、流路が閉となることを特徴とするものである。
【0155】
樹脂層(X')の所定の位置に形成された孔状の欠損部が、流入口又は流出口のいずれかである場合には、他方は、樹脂層(X')の線状の欠損部とダイヤフラムでもって形成された流路の、該空洞となる部分への接続口して形成できる。
【0156】
部材(J')には、流入口、又は、流出口、又はその両者に接続された流路となる欠損部を形成できる。部材(J')、樹脂層(X')及び部材(K')が接着されて積層された構造は、本発明の製造方法によって製造することができる。このような構造の用途として、常時閉のダイヤフラム式バルブ、チェックバルブ、逆止弁、ダイヤフラム式ポンプを挙げることができる。
【0157】
上記第1の例、第2の例のいずれにおいても、ダイヤフラムの厚みは、好ましくは1〜500μm、更に好ましくは5〜200μmである。ダイヤフラムの厚みは空洞部の寸法により最適値が異なり、空洞の面積が小さいほど薄くすることが好ましい。しかしながら、この範囲未満では製造が困難となり、この範囲を越えると、マイクロでデバイスとしてのメリットが低下する。
【0158】
また、ダイヤフラムは、引張弾性率が好ましくは1〜700MPa、更に好ましくは10MPa〜300MPaの範囲にある素材で形成されている。ダイヤフラムの直径や素材の硬度にもよるが、これより小さいと、製造が困難となったり、開状態を維持することが困難と成り、また、この範囲を超えると、開閉が困難となる。
【0159】
ダイヤフラムを構成する素材は、JIS K−7127により測定された破断伸び率が、好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上のものである。破断伸びの上限は、自ずと限界はあろうが、高いことそれ自身による不都合は無い為、上限を設けることは要せず、例えば、400%でありうる。本発明においては、JIS K−7127による引張試験で2〜5%という低い破断伸び率を示す素材であっても、本発明の使用方法においては破壊しにくく、上記試験による破断伸び率以上の歪みを与えても破壊することなく使用可能である。
【0160】
ダイヤフラムを変形させる方法は任意であり、例えばダイヤフラムの反対側に形成した空洞への、流体の圧入や減圧などの圧力変化、機械的な圧迫又は吸引などでありうる。
【0161】
本発明は、複数の層、特に3層以上の層に一部が流路として使用される空洞が形成された多層構造のマイクロ流体デバイスを提供することができる。また、微細な弁や、薄く柔軟なダイヤフラムの形成や、これらの目的位置への接着が容易であり、バルブやポンプ機構を有するマイクロ流体デバイスを提供できる。更に、各層の間や層と他の部材との間からの液体の漏洩がないデバイスが得られる。更に、両親媒性の重合性化合物を用いることにより、生体成分の吸着や損失がなく再現性に優れるケミカルデバイスが得られる。これらにより、複雑な工程の反応・分析が可能なマイクロ流体デバイスを提供できる。
【0162】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、各々「重量部」及び「重量%」を表わす。また、接着剤層は樹脂層に勘定せず、図示もしない。
【0163】
[活性エネルギー線照射]
200Wメタルハライドランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が100mW/cm2の紫外線を、室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0164】
[組成物(x)の調製]
〔組成物(x-1)の調製〕
活性エネルギー線重合性化合物(a)として、平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)30部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬株式会社製の「カヤラッドHDDA」)45部、
【0165】
両親媒性化合物(b)として、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」)25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュアー184」)5部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.1部を混合して、エネルギー線硬化性組成物(x-1)を調製した。なお、エネルギー線硬化性組成物(x-1)の紫外線硬化物は、引張弾性率が560MPa、水との接触角が12度であった。
【0166】
〔組成物(x-1')の調製〕
光重合開始剤の量が2部であること、及び重合遅延剤を含有しないこと以外は組成物(x-1)と同様の組成の組成物(x-1')を調製した。なお、エネルギー線硬化性組成物(x-1')の紫外線硬化物は、引張弾性率が580MPa、水との接触角が12度であった。
【0167】
〔組成物(x-2)の調製〕
エネルギー線硬化性化合物(a)として、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量250)マレイミドカプリエート(特開平11−124403号公報の合成例13に記載の方法によって合成した)75部、両親媒性化合物(b)として、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」)25部、重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.01部を混合して、エネルギー線硬化性組成物(x-2)を調製した。なお、エネルギー線硬化性組成物(x-2)の紫外線硬化物は、引張弾性率が610MPa、水との接触角が19度であった。
【0168】
〔組成物(x-2')の調製〕
重合遅延剤を含有しないこと以外は組成物(x-2)と同様の組成の組成物(x-2')を調製した。なお、エネルギー線硬化性組成物(x-2')の紫外線硬化物は、引張弾性率が630MPa、水との接触角が19度であった。
【0169】
〔組成物(x-3)の調製〕
活性エネルギー線重合性化合物(a)として、平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)30部、ω−テトラデカンジオールジアクリレートとω−ペンタデカンジオールジアクリレートを主成分とするアルキルジアクリレート(ソマール株式会社製の「サートマーC2000」)45部、
【0170】
及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」)25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュアー184」)5部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.1部を混合して、エネルギー線硬化性組成物(x-3)を調製した。なお、エネルギー線硬化性組成物(x-3)の紫外線硬化物は、引張弾性率が160MPa、水との接触角が14度であった。
【0171】
[実施例1]
本実施例では、塗工支持体を剥離により除去する製造方法について述べる。
【0172】
〔工程(i)〕
塗工支持体(1)として、片面がコロナ放電処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンシート(二村化学株式会社製、OPPシート)を5cm×5cmに切断して使用し、このコロナ処理面側に、127μmのバーコーターを用いて組成物(x-1)を塗工し、塗膜(2)を形成した。
【0173】
〔工程(ii)〕
次いで、窒素雰囲気中で、非露光部幅100μm、非露光部長30mmのフォトマスクを通して、図1に示した非露光部(3)以外の部分に紫外線を10秒間照射する露光を行って硬化させた。
【0174】
〔工程(iii)〕
硬化塗膜に水道蛇口から出た流水に当てて、非露光部(3)の未硬化の組成物(x-1)を洗浄除去することにより、塗工支持体(1)の上に、欠損部(3)を有する硬化塗膜(2)を形成した。
【0175】
〔部材(J-1)の作製〕
塗工支持体(1)の代わりにポリスチレン(大日本インキ化学工業株式会社製の「ディックスチレンXC−520」)からなる5cm×5cm×厚さ3mmの板状の基材(4)を使用したこと、組成物(x-1)の代わりに、組成物(x-1')を使用したこと、及び、露光に当たりフォトマスクを使用しなかったこと以外は、上記の硬化塗膜(2)の作製と同様にして、基材(4)の表面に組成物(x-1')の硬化塗膜(5)が形成された部材(J-1)を作製した。
【0176】
〔工程(iv)〕
部材(J-1)の硬化塗膜(5)面に、組成物(x-1')の5%アセトン溶液をスピンコート法で塗布し、40℃にて10分間熱風乾燥して、未硬化の接着剤塗膜(図示せず)を形成した。次いで、部材(J-1)の接着剤塗膜の上に、塗工支持体(1)上に形成された欠損部を有する硬化塗膜(2)を積層して密着させ、硬化塗膜(2)を樹脂層(X-1)(2’)とした。
【0177】
〔工程(v)〕
その積層体に、露光に用いたと同じ紫外線をフォトマスク無しで5秒間照射して、樹脂層(X-1)(2’)を部材(J-1)の樹脂層(5)と接着した。この時、接着剤層は十分薄く、接着剤によって欠損部(3)が閉塞することはなかった。
【0178】
〔工程(vi)〕
次いで、この4層積層物(接着剤層は勘定しない)から塗工支持体(1)を剥離し、部材(J-1)の樹脂層(5)の上に樹脂層(X-1)(2’)、即ち、欠損部(3)を有する組成物(x-1)の硬化物層が転写され、欠損部(3)以外の部分で接着されたマイクロ流体デバイス(D-1)前駆体を作製した。
【0179】
〔部材(K-1)の接着〕
部材(J-1)と同様にして部材(K-1)(6)を作製し、これに接着剤を塗布して樹脂層(X-1)(2’)の部材(J-1)と反対側の表面に密着させ、紫外線をフォトマスク無しで30秒間照射して、部材(K-1)(6)を樹脂層(X-1)(2)表面に接着し、樹脂層(X-1)(2)の欠損部(3)を空洞(3’)と成した。
【0180】
〔その他の構造の形成〕
その後、毛細管状の空洞(3′)の両端部において、部材(K-1)(6)及び接着剤層(図示せず)に、ドリルにて直径1.6mmの孔を穿ち、直径1.6mmのステンレスパイプをエポキシ樹脂にて接着して流入口(8)及び流出口(9)を形成することにより、図2及び図3に示したような、内部に毛細管状の空洞(3′)を有するマイクロ流体デバイス(D-1)を作製した。
【0181】
〔漏洩試験〕
マイクロ流体デバイス(D-1)の流入口(8)から水を注入し、流出口(9)を閉じて、空洞内に0.1MPaの圧力を掛けた状態で1時間放置したが、水の漏洩は認められなかった。
【0182】
〔空洞部の観察〕
マイクロ流体デバイス(D-1)を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、毛細管状の空洞(3′)の断面は矩形であり、幅95μm、高さ60μmであった。又、接着剤層の厚みはどちらも約1.5μmであった。
【0183】
[実施例2]
本実施例では、表面に凹状の欠損部を有する部材(J)を使用した本発明の製造方法について述べる。
【0184】
〔部材(J)の作製〕
5cm×5cm×厚さ3mmのポリスチレン(大日本インキ化学工業株式会社製の「ディックスチレンXC−520」)製の板とシリコンウェハー製の鋳型をガラス板に挟み、バネ式のクランプで止めて120℃の熱風炉中で約2時間加熱し、室温で冷却後、剥離することにより、溝の寸法が幅50μm、深さ25μmであること以外は実施例1と同様の形状と長さの溝状の凹部をポリスチレン板の表面に形成し、部材(J-2)とした。
【0185】
〔硬化塗膜の形成〕
露光のパターンが、部材(J-2)に形成された溝の両端部に相当する位置にそれぞれ直径300μmの孔が形成される形状であること以外は、実施例1と同様にして、塗工支持体の上に、2つの穴状の欠損部を有する硬化塗膜を形成した〔工程(i)、(ii)、(iii)〕。
【0186】
〔樹脂層(X-2)の作製〕
実施例1と同様にしてエネルギー線硬化性の接着剤を塗布し、部材(J-2)の溝形成面に、相互の位置を合わせて、塗工支持体上に形成された硬化塗膜を密着させて樹脂層(X-1)(2’)となし〔工程(iv)〕、その状態で、紫外線をフォトマスク無しで10秒間照射して、接着剤を硬化させて部材(J-2)と樹脂層(X-2)を接着した〔工程(v)〕。この時、接着剤によって、部材(J-1)及び樹脂層(X-2)の欠損部が閉塞することはなかった。次いで、この3層積層物(接着剤層は勘定せず)から塗工支持体を剥離し〔工程(vi)〕、部材(J-2)表面に樹脂層(X-2)、即ち、流入口及び流出口となる欠損部を有する、組成物(x-1)の硬化物の層が接着された、図2及び図3の空洞と同様の形状の空洞を有するマイクロ流体デバイス(D-2)前駆体を作製した。
〔部材(K-2)の作製〕
【0187】
部材(J-2)の欠損部の両端部に相当する位置から始まる、図11に類似した形状の二本の直線状の欠損部(図示せず)を部材(X-1)と同様にして形成したこと以外は部材(J-1)と同様にして部材(K-2)を作製し、実施例1と同様にして部材(k-2)を接着した。その後、流入口(8)及び流出口(9)を部材(k-2)の二つの欠損部(図示せず)の各端部に設けたこと以外は実施例1と同様にしてマイクロ流体デバイス(D-2)を得た。
【0188】
[実施例3]
本実施例では、組成物(x)としてマレイミド樹脂を使用した本発明のマイクロ流体デバイスを、塗工支持体の剥離により除去する製法で製造する方法について述べる。 組成物(x)として組成物(x-1)の代わりに組成物(x-2)を用いたこと、及び組成物(x-1')の代わりに組成物(x-2')を用いたこと、以外は実施例1と同様にして、樹脂層(X)がマレイミド樹脂で形成されていること以外は実施例1と同様の構造のマイクロ流体デバイス(D-3)を作製した。
【0189】
[実施例4]
本実施例では、樹脂層(X')が3層積層され、内部に立体交差する流路を有するマイクロ流体デバイス及びその製法について述べる。
【0190】
〔部材(J'-4-1)の形成〕
実施例1と全く同様にして、基材(35)の表面に、欠損部のない組成物(x-1')硬化樹脂層(36)が形成された部材(J'-4-1)を作製した。
【0191】
〔樹脂層(X'-4-1)の形成〕
非露光部が、図4に示されたように、幅100μm、長さ30mmの非露光部(33)と、幅100μm、長さ14mmの2本の直線が2mmの間をあけて、非露光部(33)に直角な方向に直線状に配列された非露光部(34)であることこと以外は実施例1と同様にして、塗工支持体(31)の上に、塗膜の欠損部(33)、(34)を有する硬化塗膜(32)を形成し、実施例1と同様にして部材(J'-4-1)(35)と接着し、塗工支持体(31)を剥離することにより部材(J'-4-1)(35)上に転写して、欠損部(33′)、(34′)を有する樹脂層(X'-4-1)(32’)を形成し、これを部材(J'-4-2)とした。
【0192】
〔樹脂層(X'-4-2)の形成〕
部材(J'-4-1)の代わり部材(J'-4-2)を使用したこと、非露光部(38)が、図8に示された層間連絡路として機能する欠損部(38′)となる直径300μm、間隔2mmの2つの円形部分であること、及び、接着剤を樹脂層(X'-4-2)をなる塗膜上に塗布したこと以外は樹脂層(X'-4-1)の形成と同様にして、塗膜の欠損部(38)を有する硬化塗膜(37)を部材(J'-4-2)の樹脂層(X'-4-1)の上に転写して、欠損部(38′)を有する樹脂層(X'-4-2)(37’)を形成し、部材(J'-4-3)とした。
【0193】
〔樹脂層(X'-4-3)の形成〕
部材(J'-4-1)の代わりに部材(J'-4-3)を使用したこと、非露光部(40)の形状が、図8における2つの欠損部(34′)を層間連絡路(38′)を経て連絡する欠損部(40′)となる、幅100μm、長さ2mmの線状であること、及び、接着剤を樹脂層(X'-4-3)をなる塗膜上に塗布したこと以外は樹脂層(X'-4-1)の形成と同様にして、塗膜の欠損部(40)を有する硬化塗膜(39)を樹脂層(X'-4-2)の上に転写し、欠損部(40′)を有する樹脂層(X'-4-3)を形成した。
【0194】
〔部材(K-4)の接着〕
樹脂層(X-1)の代わりに樹脂層(X'-4-3)に接着したこと以外は、実施例1における部材(K-1)と同様の部材(K-4)(41)を実施例1と同様にして接着した。
【0195】
〔流入出部の形成〕
樹脂層(X'-4-1)の欠損部(33′)の両端部において、基材(35)及び樹脂層(36)にドリルにて直径1.6mmの孔を穿ち、直径1.6mmのステンレスパイプを接着して、樹脂層(X'-4-1)の欠損部(33′)に連絡する流入部(43)及び流出部(44)を形成した。また、樹脂層(X'-4-1)の欠損部(34′)の両端部において、基材(35)及び樹脂層(36)に、ドリルにて直径1.6mmの孔を穿ち、直径1.6mmのステンレスパイプを接着して、樹脂層(X'-4-1)の欠損部(34′)に連絡する流入部(45)及び流出部(46)を形成して、マイクロ流体デバイス(D-4)を作製した。
【0196】
〔通水試験〕
流入部(45)から導入した染料着色水は、欠損部(34′)、(38′)、(40′)、(38′)、及び(34′)を経て液体流出部(46)から流出し、これとは別に流入部(43)から導入した蒸留水は、欠損部(33′)を通って、染料着色水と混じることなく流出部(44)から流出した。即ち、独立した2本の流路が立体交差していることが確認された。
【0197】
[実施例5]
本実施例では、ダイヤフラム式バルブ機能を有するマイクロ流体デバイスの製法について述べる。
【0198】
〔部材(J-5-1)の形成〕
実施例1で作製した部材(J-1)と全く同様にして、ポリスチレン製の基材(54)上に欠損部を有しない樹脂層(55)が形成された部材(J-5-1)を作製した。
【0199】
〔樹脂層(X-5-1)の形成〕
非露光部の幅が異なること以外は実施例1における樹脂層(X-1)の形成と同様にして、部材(J-5-1)の表面に、欠損部(53’)の幅が約200μmである樹脂層(X-5-1)(52)を形成し、部材(J-5-2)とした。
【0200】
〔中間層の形成〕
部材(J-1)の代わりに部材(J-5-2)を使用したこと、組成物(x-1)の代わりに組成物(x-3)を使用したこと、エネルギー線硬化性接着剤として組成物(x-3)を使用したこと、及び露光がフォトマスクを使用しない全面照射であること、以外は実施例1における樹脂層(X-1)の形成と同様にして、欠損部を有しない中間層(56)を樹脂層(X-5-1)の上に形成した。
【0201】
〔樹脂層(X-5-2)の形成〕
部材(J-1)の代わり部材(J-5-3)を使用したこと、非露光部の形状が、図9に示された欠損部(58’)を形成するような、中心部に直径1mmの円形部分と、これに接続された長さ15mm、幅200μmの直線状部分から成るパターンであること、以外は実施例1における樹脂層(X-1)の形成と同様にして、中間層(56)の上に樹脂層(X-5-2)(57)を形成し、部材(J-5-4)とした。
【0202】
〔部材(K-5)の接着〕
樹脂層(X-1)の代わりに樹脂層(X-5-2)に接着したこと以外は、実施例1における部材(K-1)の接着と同様にして、部材(K-1)と同じ部材(K-5)(59)を接着剤にて部材(J-5-4)に接着した。
【0203】
〔流入出口の形成〕
樹脂層(X-5-1)の欠損部(53’)の両端部において、部材(J-5-1)に、ドリルにて直径5.1mmの孔を穿ち、外径5mmの塩化ビニル管をエポキシ系接着剤にて接着して、樹脂層(X-5-1)の欠損部(53’)に連絡する液体流入部(61)及び液体流出部(62)を形成した。
【0204】
また、樹脂層(X-5-2)(57)の欠損部(58’)の外側端部において、部材(K-5)の基材(59)及び樹脂層(60)に、ドリルにて直径1.6mmの孔を穿ち、外径1.6mmのステンレス管をエポキシ系接着剤にて接着して、樹脂層(X-5-2)(57)の欠損部(58’)に連絡する気体導入部(63)を形成して、マイクロ流体デバイス(D-5)を作製した。ここで、中間層(56)の一部はダイヤフラムを構成する。作製されたマイクロ流体デバイスの平面図の模式図を図9に、図9中のA部における断面図の模式図を図10に示す。
【0205】
〔流量調節試験〕
液体流入部(61)から圧力約10kPaで水を導入し、大気に解放した液体流出部(62)から流出させた状態で、気体導入部(63)から0.5MPaの圧力の窒素を導入したところ、水の流量は殆どゼロになった。また、窒素圧を変化させることによって水の流量を調節することができた。即ち、開閉バルブ及び流量調節バルブとして作動することを確認した。
【0206】
[実施例6]
本実施例では、樹脂層(X')がそれぞれ表面に溝を有する部材(J')及び部材(K')に挟持された形状の本発明のマイクロ流体デバイスを本発明の製造方法によって製造する例について述べる。
【0207】
〔部材(J'-6)の作製〕
実施例2と同様の溶融レプリカ法で、実施例5におけるポリスチレン板(54)、欠損部のない樹脂層(5)、及び、図4に示された3本の直線状の欠損部を有する樹脂層(X-1)が積層された形状と同様の形状である、凹部を有する部材を作製し、部材(J'-6)を作製した。
【0208】
〔樹脂層(X')前駆体の作製〕
欠損部とする形状が、図5に示された2つの孔状の欠損部(38)と同形状であること、以外は実施例2の工程(i)、(ii)及び(iii)と同様にして硬化塗膜を形成した。
【0209】
塗工支持体上に作製された硬化塗膜を実施例1の樹脂層(X-1)と同様にして部材(J'-6)に積層し接着した後、流水を当てることにより塗工支持体を剥離し、部材(J'-6)に積層された樹脂層(X'-6)を形成した(工程(iv)、(v))。
【0210】
〔部材(K')の作製〕
部材表面の凹状の欠損部の形状が、図6に示された欠損部と同じ形状であること以外は、部材(J'-6)と同様にして部材(K'-6)を作製した。
【0211】
〔部材(K')の積層と接着〕
樹脂層(X'-6)の上に、接着剤を塗布した部材(K'-6)を積層し、紫外線を40秒間照射して、部材(K'-6)を樹脂層(X'-6)に接着した。
【0212】
〔その他の構造の形成〕
その後、実施例1と同様にして、各流路の端部にステンレスパイプを接着して流入部及び流出部を形成することにより、図7及び図8に示したマイクロ流体デバイス(D-4)と同様の流路構造を有するマイクロ流体デバイス(D-6)とした。
【0213】
[実施例7]
本実施例では、表面に溝を有する部材(J')に、樹脂層(X')が2層積層された形状の本発明のマイクロ流体デバイスを本発明の製造方法により製造する例について述べる。
【0214】
〔部材(J'-7)〕
部材(J')として、実施例6の部材(J'-6)と同じものを用い、部材(J'-7-1)、とした。
【0215】
〔部材(J'-7-1)−樹脂層(X'-7-1)積層体の作製〕
実施例6と全く同様にして、実施例6における部材(J'-6)、樹脂層(X'-6)積層体と全く同じ部材を作製し、部材(J'-7-1)と樹脂層(X'-7-1)の積層体とした。
【0216】
〔樹脂層(X'-7-2)の形成〕
部材(J'-7-1)と樹脂層(X'-7-1)の積層体を部材(J'-7-2)として部材(J'-7-1)の代わりに用い、欠損部の形状が実施例6の部材(K'-6)の凹状の欠損部と同形状であること以外は同様の操作によって樹脂層(X'-7-1)の上に樹脂層(X'-7-2)を積層・接着し、部材(J'-7-3)とした。
【0217】
〔部材(K'-7)の積層と接着〕
部材(K'-7)として実施例6で用いたポリスチレン板をそのまま用い、これに接着剤を塗布して樹脂層(X'-7-2)に積層し、その状態で紫外線を40秒間照射して、部材(J'-7-3)と部材(K'-7)を接着した。
【0218】
〔その他の構造の形成〕
その後、実施例1と同様にして、各流路の端部にステンレスパイプを接着して流入部及び流出部を形成することにより、図7及び図8に示したマイクロ流体デバイス(D-4)と同様の流路構造を有するマイクロ流体デバイス(D-7)とした。
【0219】
[実施例8]
本実施例では、弁を有し、ポンプとして機能する本発明のマイクロ流体デバイスを、本発明の製造方法により作製する例について述べる。
【0220】
〔部材(J'-8-1)の作製〕
ポリスチレン(大日本インキ化学工業株式会社製の「ディックスチレンXC−520」)からなる5cm×5cm×厚さ3mmの板を基材(71)としてこれに組成物(x-1')を塗布し、フォトマスク無しで紫外線を1秒間照射して欠損部の無い硬化塗膜(72)を形成した。
【0221】
更にその上に組成物(x-1)を塗布し、フォトマスクを用いて図11に示された、欠損部(74)と成す部分以外の部分に紫外線を10秒間照射し、未照射部分の未硬化の組成物(x-1)をメタノールにて除去して該塗膜の欠損部として表面に幅100μm、間隔0.6mmを置いて直列に並んだ長さ10mmの2本の凹状の欠損部(74)、(74’)が形成された樹脂層(73)を形成した。この積層体の凹状の欠損部(74)、(74’)の両端部において直径3mmの貫通孔(75)、(75’)を穿ち、部材(J'-8-1)とした。
【0222】
〔樹脂層(X'-8-1)の形成〕
欠損部と成す形状が、図12に示されたように、中心間距離が1mmで設けられた直径100μmと600μmの2つの孔状(77)、(77’)であること以外は、実施例1と同様にして、塗工支持体の剥離法によって部材(J'-8-1)の上に上記形状の欠損部を有する樹脂層(X'-8-1)(76)を積層・接着して、これを部材(J'-8-2)とした。
【0223】
〔樹脂層(X'-8-2)の形成〕
組成物(x)として組成物(x-3)を使用したこと、及び欠損部と成す形状が、図13に示されたように、芯間距離1mmで設けられた、長さ、幅共に400μmの舌状の弁(80)、(80’)と成す部分の周囲の幅100μmの馬蹄形(79)、(79’)であること以外は、実施例6と同様にして、塗工支持体(図示せず)上に硬化塗膜を形成し、スピンコート法によってエネルギー線硬化性組成物(x-3)の5%アセトン溶液を接着剤として塗布した。
【0224】
次いで、フォトマスクを用いて、馬蹄形の欠損部(79)、(79’)で囲まれた舌状の弁(80)、(80’)と成す部分のみにさらに紫外線を20秒間照射し、照射部分の接着剤を硬化させ、他の部分は未硬化状態にとどめた。これを実施例6と同様にして、部材(J'-8-2)の上に積層し、塗工支持体を剥離によって除去して、部材(J'-8-3)とした。
【0225】
〔樹脂層(X'-8-3)の形成〕
部材(J'-8-3)の樹脂層(X'-8-2)の上に、大小の2つの孔(82)、(82’)の位置を樹脂層(X'-8-1)(76)の孔(77)、(77’)とは逆にして積層したこと以外は樹脂層(X'-8-1)(76)と同様の方法で、図12に示された樹脂層(X'-8-3)(81)を作製して積層・接着し、これを部材(J'-8-4)とした。
【0226】
〔樹脂層(X'-8-4)の形成〕
欠損部(84)の形状が、図14に示された様な、長さ1.5mm、幅700μmの直線状であること以外は、樹脂層(X'-8-1)(76)と同様にして、樹脂層(X'-8-4)(83)を部材(J'-8-4)の樹脂層(X'-8-3)(81)の上に積層・接着し、これを部材(J'-8-5)とした。
【0227】
〔中間層の形成〕
部材(J'-5-2)の代わりに部材(J'-8-5)を使用したこと以外は実施例5における中間層(56)の形成と同様にして、樹脂層(X'-8-4)の上に、柔軟な素材で形成された欠損部を有しない中間層(85)(ダイヤフラム層)を積層・接着した。
【0228】
〔部材(K'-8)の作製と接着〕
凹状の欠損部(88)の形状が図16に示したように、長さ1.5mm、幅700μmの直線と、長さ10mm、幅300μmの直線から成るT字型であること、及び部材を貫通する孔状の欠損部(89)が、幅300μmの凹状の欠損部の端に1カ所設けられていること以外は部材(J'-8-1)と同様の部材(K'-8)を部材(J'-8-1)と同様の方法で作製した。即ち、部材(K'-8)は、ポリスチレン製の基材(86)と欠損部(88)を有する樹脂層(87)の積層体として形成されている。
【0229】
次いで中間層が積層された部材(J'-8-5)に接着剤を塗布し、その上に部材(K'-8)を、該部材の欠損部(88)を中間層(85)を隔てて樹脂層(X'-8-4)の欠損部(84)に相対する位置に合わせて積層し、紫外線を30秒間照射することによって中間層(85)に接着し、中間層(85)をダイヤフラムと成した。また、この紫外線照射によって、その他の樹脂層も十分に硬化させた。
【0230】
〔流入出部の形成〕
部材(J'-8)及び部材(K'-8)に設けられた孔(75)、(75’)、(89)に、外径3mmの塩化ビニル管をエポキシ系接着剤にて接着して、液体流入部(90)、液体流出部(91)、及び気体導入部(92)を形成して、マイクロ流体デバイス(D-8)を作製した。作製されたマイクロ流体デバイスの平面図の模式図を図17に、立面図の模式図を図18に示す。
【0231】
〔送液試験〕
液体流入部(90)から水を導入したところ、水は大気に解放した液体流出部(91)から流出した。逆に、液体流出部(91)に水を導入しても液体流入部(90)からは流出しなかった。次いで、気体導入部(92)に0.5MPaの圧力の窒素を間欠的に導入したところ、水は液体流入部(90)から吸い込まれ、液体流出部(91)から流出した。即ち、本マイクロ流体デバイスはポンプとして作動した。
【0232】
[実施例9]
本実施例では、ダイヤフラムが隣接する部材と接しているが接着していない構造を有する、ダイヤフラム式バルブ機能を有するマイクロ流体デバイス及びその製造方法の例について述べる。
【0233】
〔マイクロ流体デバイスの作製〕
樹脂層(X-5-1)の非照射部分の形状が、液体流入部(61)液体流出部(62)に相当する2つの孔状であること、樹脂層(X-5-1)の非照射部分の未硬化樹脂の除去の後で中間層(56)を積層する前に、実施例5における樹脂層(X-5-1)の非照射部分に相当する部分の接着剤に紫外線を照射して、該部分を硬化させたこと、中間層(56)のダイヤフラムとなる部分即ち、実施例5の空洞(53’)の形状に紫外線を照射し、照射部分の接着剤を硬化させたこと、及び、中間層(56)が本発明のマイクロ流体デバイスに於ける部材(K’’)に相当すること以外は実施例5と同様の方法で、実施例5の空洞(53’)の厚みがゼロであること以外は、実施例5で作製したものと同様のマイクロ流体デバイスを作製した。
【0234】
〔通水試験〕
液体流入部(61)から圧力約5kPaで水を導入したが、水は大気に解放した液体流出部(62)から流出しなかった。圧力を15kPaまで上昇させたところ、水は液体流出部(62)から流出した。この状態で、気体導入部(63)から0.5MPaの圧力の窒素を導入したところ、水の流量はゼロになった。また、窒素圧を変化させることによって水の流量を調節することができた。即ち、チェックバルブ、開閉バルブ及び流量調節バルブとして作動することを確認した。
【0235】
【発明の効果】
本発明は、破損しやすい非常に薄い層の欠損部として形成された微細な毛細管状の空洞を有するマイクロ流体デバイスの製造方法、特に立体的に形成された複雑な流路を有するマイクロ流体デバイスの生産性の高い製造方法を提供し、また、複数の樹脂層が積層され、微細な毛細管状の空洞が各層を貫通して互いに連絡し、立体交差している微細な毛細管状の流路や反応層となるべき空間や、弁構造、ダイヤフラム、バルブ機構、及びポンプ機構などを有する多機能なマイクロ流体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1及び実施例3で使用した塗工支持体と樹脂層(X-1)を、表面に垂直な方向から見た平面図の模式図である。
【図2】 実施例1及び実施例3で作製した本発明のマイクロ流体デバイスの平面図の模式図である。
【図3】 実施例1及び実施例3で作製したマイクロ流体デバイスの立面図の模式図である。但し、接着剤層は省略してある。
【図4】 実施例4で使用した塗工支持体と樹脂層(X'-4-1)の平面図の模式図である。
【図5】 実施例4で使用した塗工支持体と樹脂層(X'-4-2)の平面図の模式図である。
【図6】 実施例4で使用した塗工支持体と樹脂層(X'-4-3)の平面図の模式図である。
【図7】 実施例4で作製したマイクロ流体デバイスの平面図の模式図である。
【図8】 実施例4で作製したマイクロ流体デバイスの、図7のA部における断面の模式図である。但し、接着剤層は省略してある。
【図9】 実施例5で作製したマイクロ流体デバイスの平面図の模式図である。
【図10】 実施例5で作製したマイクロ流体デバイスの、図9のA部での断面図の模式図である。但し、接着剤層は省略してある。
【図11】 実施例8で作製した部材(J'-8-1)を、欠損部が形成された表面に垂直な方向から見た平面図の模式図である。
【図12】 実施例8で作製した樹脂層(X'-8-1)及び樹脂層(X'-8-3)の平面図の模式図である。
【図13】 実施例8で作製した樹脂層(X'-8-2)の平面図の模式図である。
【図14】 実施例8で作製した樹脂層(X'-8-4)の平面図の模式図である。
【図15】 実施例8で作製した中間層(ダイヤフラム層)の平面図である。
【図16】 実施例8で作製した部材(K'-8)を、欠損部が形成された表面に垂直な方向から見た平面図の模式図である。
【図17】 実施例8で作製したマイクロ流体デバイスの部分拡大図を含む平面図の模式図である。
【図18】 実施例8で作製したマイクロ流体デバイスの、図17のA部での断面図の模式図である。但し、接着剤層は省略してある。
【符号の説明】
1 塗工支持体
2 塗膜、硬化塗膜
2′ 樹脂層(X-1)前駆体、樹脂層(X-1)
3 非露光部、硬化塗膜の欠損部
3′ 空洞
4 部材(J-1)の基材
5 部材(J-1)の樹脂層
6 部材(K-1)の基材
8 流入部
9 流出部
31 塗工支持体
32 樹脂層(X'-4-1)
33 非露光部、硬化塗膜の欠損部
33′ 欠損部、流路
34 非露光部、硬化塗膜の欠損部
34′ 欠損部、流路
35 部材(J-4)の基材
36 部材(J-4)の塗膜、樹脂層
37 樹脂層(X'-4-2)
38 非露光部、塗膜の欠損部
38′ 欠損部、層間連絡路
39 樹脂層(X'-4-3)
40 非露光部、塗膜の欠損部
40′ 欠損部、流路
41 部材(K-4)の基材
42 部材(K-4)の樹脂層
43 流入部
44 流出部
45 流入部
46 流出部
52 樹脂層(X'-5-1)
53’ 欠損部、流路
54 部材(J-5)の基材
55 部材(J-5)の樹脂層
56 中間層
57 樹脂層(X'-5-2)
58’ 欠損部、流路
59 部材(K-5)の基材
60 部材(K-5)の樹脂層
61 液体流入部
62 液体流出部
63 気体導入部
71 部材(J'-7-1)の基材
72 部材(J'-7-1)中の欠損部のない樹脂層
73 部材(J'-7-1)中の欠損部を有する樹脂層
74 部材(J'-7-1)の凹状の欠損部
75、75’ 部材(J'-7-1)の貫通孔、流路
76 樹脂層(X'-8-1)
77、77’ 孔状の欠損部
78 樹脂層(X'-8-2)
79、79’ 馬蹄形の欠損部
80、80’ 弁
81 樹脂層(X'-8-3)
82、82’ 孔状の欠損部
83 樹脂層(X'-8-4)
84 欠損部
85 中間層
86 部材(K'-7)の基材
87 部材(K'-7)の樹脂層
88 部材(K'-7)の凹状の欠損部
89 部材(K'-7)の孔状の欠損部
90 液体流入部
91 液体流出部
92 気体導入部

Claims (12)

  1. 下記の工程を含む、欠損部を有する樹脂層(X)を1層以上有し、該樹脂層が他の部材又は他の樹脂層(X)と積層されて接着剤により接着され、欠損部が他の部材又は他の樹脂層との間で空洞を形成している、積層構造を有するマイクロ流体デバイスの製造方法。
    (i)塗工支持体に、活性エネルギー線重合性化合物(a)を含有するエネルギー線硬化性組成物(x)を塗工する、未硬化塗膜を形成する工程(i)、
    (ii)欠損部と成すべき部分以外の未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化させ、硬化塗膜を形成する工程(ii)、
    (iii)硬化塗膜から非照射部分の未硬化の組成物(x)を除去し、塗膜の欠損部を有する硬化塗膜を得る工程(iii)、
    (iv)欠損部を有する硬化塗膜を他の部材(J)に接着剤を介して積層して樹脂層(X)と成す工程(iv)、
    (v)接着剤を硬化させ、樹脂層(X)を部材(J)に接着する工程(v)、
    vi 塗工支持体を樹脂層(X)から除去することにより、樹脂層(X)を部材(J)に転写する工程(vi)、及び、
    vii )工程 (i) (vi) を行った後に、樹脂層 (X) が積層された部材 (J) を工程 (iv) における部材 (J) の代わりに用いて、工程 (i) (vi) を繰り返すことにより、樹脂層 (X) を複数積層する工程( vii )。
  2. 接着剤がエネルギー線硬化性の接着剤であり、接着剤の硬化が活性エネルギー線照射によるものである請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
  3. 複数の樹脂層(X)を、その欠損部の少なくとも一部が重なり合うように積層することにより、積層体中に複数の樹脂層(X)の欠損部が連結した空洞を形成する請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
  4. 部材(J)が該部材を貫通する欠損部、部材表面の凹状の欠損部、部材表面にその一部が開口した空洞状の欠損部から選ばれる1つ以上の欠損部を有する部材であり、部材(J)の欠損部と樹脂層(X)の欠損部の少なくとも一部が重なり合うように、部材(J)と樹脂層(X)とを積層することにより、積層体中に、部材(J)の欠損部と樹脂層(X)の欠損部が連結した空洞を形成する請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
  5. 樹脂層(X)が、「引張弾性率×厚み」の値が、1×10-5〜1×10-1MPa・mの範囲にある請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
  6. エネルギー線硬化性組成物(x)が、単独重合体が60度以上の水との接触角を示す疎水性の活性エネルギー線重合性化合物(a)と、これと共重合しうる両親媒性の重合性化合物(b)を含有するものである請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法。
  7. 欠損部を有する部材(J')と、層の一部に欠損部を有し、該欠損部の最小幅が、1〜1000μmである、エネルギー線硬化性樹脂層(X')の2つ以上の層とが積層されて接着剤により接着され、部材中の少なくとも2つ以上の欠損部が連結して空洞を形成している、積層構造を有し、
    空洞の一部が流体の流路であり、異なる樹脂層 (X') 内に形成された複数の流路、又は枝分かれした流路が樹脂層 (X') を隔てて立体交差しているマイクロ流体デバイス。
  8. 部材(J')及び2つ以上の樹脂層(X')から選ばれる1つ以上の部材が、部材の積層面に平行方向に設けられた、1つ以上の線状の空洞を有する、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
  9. 欠損部を有する樹脂層(X')の厚さが、5〜1000μmである請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
  10. 空洞の一部が流体の流路であり、異なる樹脂層(X')内に形成された複数の流路、又は枝分かれした流路が樹脂層(X')を隔てて立体交差している請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
  11. 部材(J')、又は部材(J')に積層された2つ以上の樹脂層(X')の部材(J')と対極にある樹脂層(X')が、ダイヤフラムとなる部材(K')と積層され、欠損部以外の部分で接着剤により接着されており、部材(K')に隣接する部材の欠損部が部材(K')と積層されることで空洞となり、部材(K')に隣接する部材の部材(K')の裏面に隣接する部材の空洞のダイヤフラムの対向面に、該空洞への流入口又は流出口、又はその両者となる各孔状の欠損部が形成されており、流入口、流出口の少なくとも一方の周がダイヤフラムに接しておらず、ダイヤフラムを変形させて、該流入口、又は流出口の少なくとも一方の周に接することによって流路を閉鎖しうる、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
  12. エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線重合性化合物と共重合可能な両親媒性の活性エネルギー線重合性化合物を含有する請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
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