JP3776349B2 - コイル成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、線材をコイリングするコイル成形装置に関する。特に、帯板状の平角線の線材をコイリングするのに好適なコイル成形装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
従来、帯板状の平角線の線材をコイリングするためのコイル成形装置として図7に示す装置がある(特開2001−86711)。
図7に示されるコイル成形装置は、治具としてのマンドレル80と、ガイド装置82としての複数のローラ84、86、88、90を備える。マンドレル80は線材である平角線92をコイリングする最終形状と略同一の外周面形状とされた立方体形状となっている。ガイド装置82はマンドレル80へ巻かれた平角線92を上方から押さえる上部ローラ84、側方から押さえる側部ローラ86、下方から押さえる下部ローラ88、90から成っている。上部ローラ84と側部ローラ86は固定状態で配置される。2個の下部ローラ88、90はマンドレル80の側部の両端位置に配置されマンドレル80の動きに連動して移動する。マンドレル80は平角線92を巻き付けるために前後左右上下方向(図7のX,Y,Z方向)に自在に移動できるようになっている。
【0003】
上述した従来装置におけるコイリング方法は、立方体形状のマンドレル80の外周面へ平角線92を巻き付けることにより行われる。平角線92の巻き付けは上部ローラ84と側部ローラ86により案内されながら行われる。上部ローラ84と側部ローラ86は固定された位置状態にあるため、巻き付けはマンドレル80がX,Y,Z方向に移動することによりその外周面に巻き付けられる。この際、下部ローラ88、90は巻き付けられた平角線がずれないように下方の両側で支えている。このようにして三次元形状のコイル成形が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のコイル成形装置では、そのコイリングはコイリングされる最終形状と略同一の外周面形状とされた立方体形状となっているマンドレルに巻き付けて行われる。このため、成形されたコイルはコイリング終了後、巻き付けたマンドレルから取り外さなければならず、そのための取り外し工程を必要とすると言う問題点があった。
この発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたものであって、この発明が解決しようとする課題は、コイリングされる線材の曲げ加工のみを行う治具としたコイル成形装置とすることにより、治具としてのマンドレルからの取り外し工程を不要とすることにある。加えて、線材が成形装置にスムーズに供給できるようにすると共に、その供給時に線材が傷付けられたり、線材の皮膜が剥離されることを防止ないしは極力少なくすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る帯板状の平角線の線材をコイリングするためのコイル成形装置は、上述した課題を解決するため次の手段をとる。
先ず、第1の発明としてのコイル成形装置は、平角線の線材を所望の形状にコイリングするための曲げ外形形状とした軸部を備えた治具と、この治具の軸部の外周位置に線材の略形状寸法を置いて曲げ加工すべき所定の範囲回動可能とされたローラとから成り、前記治具はその軸部の側部位置でコイリングすべき線材を上下方向から保持する円板形状に形成されたフランジ部位を備え、このフランジ部位は平角線の線材を保持する幅が変動可能と構成されており、この保持する幅はフランジ部位間に平角線の線材を挿入して供給するときは平角線の線材の形状寸法より幅広とされ、曲げ加工時には平角線の線材の略形状寸法とされ、その結果、曲げ加工時には軸部と円板形状のフランジ部とで形成される空間の大きさが平角線の線材の略断面形状とされており、前記ローラは円板形状のフランジ部位の外周に沿って自転しながら公転回転するように配置されており、平角線の線材をこの治具のフランジ部位を備えた軸部とローラとの間に位置させてローラの回動移動により平角線の線材を曲げ加工してコイリングを行うことを特徴とする。
この第1の発明によれば、治具のフランジ部位を備えた軸部とローラにより平角線の線材が曲げ加工され、この曲げ加工が繰返し行われてコイリングされる。したがって、成形されたコイルは治具等に巻き付けられることがなく、そのままの状態で次工程に供給することができる。
また、フランジ部位へ平角線の線材を供給するときは、そのフランジ部位の線材を保持する幅は、平角線の線材の形状寸法より幅広とされている。このため、平角線の線材の供給に当っての摩擦抵抗は少なく、その供給はスムーズに行われる。また、幅が充分とられていることにより、平角線の線材の供給時に線材が傷ついたり、平角線の線材の皮膜が剥離されることを防止ないしは少なくすることができる。しかし、曲げ加工するときは、フランジ部位の平角線の線材を保持する幅は線材の略形状寸法とされる。このため、その加工において平角線の線材の形状を膨大化することが阻止されて、自己の形状を略維持したままの状態で加工が行われる。
【0007】
更に、第の発明としてのコイル成形装置は、上述した第の発明において、フランジ部位は上側フランジ部位と下側フランジ部位とから成り、下側フランジ部位は基台部位に固定され、上側フランジ部位は下側フランジ部位に対して上下動可能に構成されていることを特徴とする。
この第の発明によれば、フランジ部位の線材を保持する幅の変動は、上側フランジ部位を上下動させることにより行うことができる。したがって、上側フランジ部位の動作を操作するのみで行うことが出来る。
【0008】
更に、第の発明としてのコイル成形装置は、上述した第の発明又はの発明において、治具とローラへの線材の供給方向前方位置には高さ合わせ板状部材が配置されており、この高さ合わせ板状部材は治具とローラ間への線材の供給時には線材の供給高さ位置より下降した位置とされ、コイリング時には略線材の供給高さ位置とされることを特徴とする。
この第の発明によれば、治具とローラへの線材の供給方向前方位置には高さ合わせ板状部材が配置される。この種の高さ合わせ板状部材が配置されないときには、この発明によりコイリングされたコイルは自重により垂れ下がる現象が生ずる。この垂れ下がりはコイリングが進み成形巻数が増加するについて顕著となる。
しかし、この発明の場合には、高さ合わせ板状部材が配置され、そのコイリング時には略線材の供給高さ位置とされているため、コイリング時におけるコイルの垂れ下がりを防止することができ、治具とローラによる曲げ加工をスムーズに行うことができる。
なお、治具とローラ間への線材の供給時には、高さ合わせ板状部材は線材の供給高さ位置より下降した位置とされる。このため、その線材の供給時にコイリングされたコイルと高さ合わせ板状部材との移動接触抵抗がないか、ないしは減少した状態となっているため、線材の供給はスムーズに行われる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、この発明に係るコイル成形装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図6はこの実施の形態のコイル成形装置によってコイリングされた銅コイル10がトランスに適用された斜視図を示す。トランスはコイリングされた2個の銅コイル10がコア12に並列に取り付けられて構成される。この銅コイル10を形成する線材は帯板状の平角線20が用いられている。そして、銅コイル10は長方形状にコイリングされており、平角線の平坦面が重ねられた積層状態として形成されている。なお、銅コイル10は上述したトランスの他にモータ等に適用することができる。
なお、この実施の形態の説明において、線材としての帯板状の平角線における、コイリングの際に重ねられる平坦面側の大きさの形状寸法を幅寸法と称し、その平坦面に対する厚さ方向の形状寸法を高さ寸法と称する。
【0010】
図1〜図4は上述した銅コイル10を成形するためのコイル成形装置を示す。この実施の形態のコイル成形装置は、送り部A、清掃部B、矯正部C、供給部D、保持部E、コイリング部Fから構成されている。なお、送り部Aと清掃部Bは図示の都合上、これらの図からは省略されている。
送り部Aは、ボビンに巻かれた線材としての平角線を、ボビンから巻き解いて送り出す部分である。ボビンはモータ等により回転されて平角線を送り出す。モータの回転は送り出した平角線の弛み量を検知して行われる。弛み量が少なくなるとモータを回転させて平角線を送り出す。
清掃部Bは、送り出された平角線をコイリングするに先立って平角線に付着している異物等を取り除く部分である。清掃部Bは送り出された平角線を上下から挟む状態で2個の清掃部材が配置されており、この清掃部材間を通過させることにより異物等が取り除かれる。
【0011】
矯正部Cは図2に良く示されている。矯正部Cは送り出された平角線20がボビンに巻かれていたときに付いた癖を取り除くための部分である。矯正部Cは複数のローラ16a〜16c、18a〜18dが交互に上下に配置されて構成されている。上側のローラ16a〜16cと下側のローラ18a〜18dは、送り出された平角線20がその間を直線状態で通過するように配置されている。これにより平角線20はこのローラ間を通過することにより、ボビンに巻かれていたときに付けられた曲げ癖などが取り除かれて、直線状態に矯正された平角線状態として次に送られる。
【0012】
供給部Dは図2及び図3に良く示されている。供給部Dは直線状態に矯正された平角線を規定量づつ後述するコイリング部Fに供給する役割を果たす部分である。供給部Dは可動部D1と線材供給保持部D2とから構成されている。線材供給保持部D2は平角線20をコイリング部Fに供給するとき平角線を挟持する役割を果たす。
このため線材供給保持部D2は、図2に良く示される様に、上側挟持部材22aと下側挟持部材22bとで構成されており、上側挟持部材22aはエアーシリンダ24により上下動されるようになっている。エアーシリンダ24により上側挟持部材22aが下方位置とされることにより下側挟持部材22bと協働して平角線20を挟持し、一体状態となって後述する可動部D1の作動により供給方向に移動し、平角線を規定量だけ送る。エアーシリンダ24により上側挟持部材22aが上方位置とされることにより平角線20の挟持状態が解かれ、平角線20とは無関係に線材供給保持部D2は可動部D1の作動により移動可能となる。すなわち、規定量だけ平角線20を供給して線材供給保持部D2を元の作動位置に戻すときにはこの状態で行われる。なお、図2の状態は上側挟持部材22aが下方位置の状態を示している。
【0013】
可動部D1は2個のエアーシリンダ26、28で構成されている。第1のエアーシリンダ26と第2のエアーシリンダ28は直列状態に配列されて基台部位14に取り付けられている。そして、線材供給保持部D2に第2のエアーシリンダ28の出力部材が連結して構成されている。したがって、第1のエアーシリンダ26と第2のエアーシリンダ28のそれぞれの作動ストロークが合算されて線材供給保持部D2を移動することになる。なお、第1のエアーシリンダ26の作動ストロークは図6に示す長方形状の銅コイル10の短辺10aの長さのストロークに設定されている。第2のエアーシリンダ28の作動ストロークは銅コイル10の長辺10bの長さのストロークとするために第1のエアーシリンダ26の作動ストロークでは不足する分のストロークを作動ストロークに設定されている。すなわち、長辺10bの長さから短辺10aの長さを引いた長さを作動ストロークに設定されている。
【0014】
この供給部Dにより、銅コイル10の短辺部分をコイリングするために平角線20を供給移動するときには、第1のエアーシリンダ26のみを作動させればよく、長辺部分をコイリングするために平角線20を供給移動するときは、第1のエアーシリンダ26と第2のエアーシリンダ28の両方を作動させることになる。この第1と第2のエアーシリンダ26、28の両方を作動させるときは、同時に作動させても良いが、好ましくは第1のエアーシリンダ26の作動終了後に第2のエアーシリンダ28を作動させるのが良い。かかる作動とする事により、短辺部分をコイリングするために供給移動する移動速度と、長辺部分をコイリングするために供給移動する移動速度を一緒にすることができる。
なお、銅コイル10の短辺部分と長辺部分のコイリングは順次繰返し行われることから、第1のエアーシリンダ26のみの作動と、第1と第2のエアーシリンダ26、28の両方の作動も、順次繰返し行われる様に制御されるようになっている。
【0015】
次に、保持部Eも図2及び図3に良く示されている。保持部Eは後述するコイリング部Fに送られた平角線20が、送られた後の位置状態を確実に保持するための役割を果たす部分である。保持部Eは、上側保持部材30aと下側保持部材30bとで構成されており、上側保持部材30aはエアーシリンダ32により上下動されるようになっている。この供給部Eは全体としては基台部位14に対して移動できない固定状態として取り付けられている。そして、エアーシリンダ32により上側保持部材30aが下方位置とされることにより下側保持部材30bとの間で平角線20はその位置状態を保持されるように機能する。エアーシリンダ32により上側保持部材30aが上方位置とされることにより平角線20の保持状態が解かれ、平角線20は保持部Eとは関係なく移動可能となる。
したがって、この保持部Eは供給部Dによって平角線20がコイリング部Fに送られるときには保持状態が解かれた状態にあって、自由に送ることができる。そして、規定量だけ送られた状態で保持状態とされ確実に保持される。これにより後述のコイリング部Fによるコイリング中に平角線20がずれたり、戻ったりすることが阻止される。
【0016】
最後に、コイリング部Fについて詳述する。コイリング部Fの全体は図2〜図4に良く示されている。図2は正面図、図3は平面図、図4は側面図である。コイリング部Fの主要部が図1に示されている。図1は図4の側面図の要部を抽出して拡大して示した図である。
先ず、図1を参照して、コイリング部Fの基本構成を説明する。コイリング部Fの基本構成はマンドレル40とローラ部50からなっている。マンドレル40はこの発明の治具に対応するものであり、軸部42とフランジ部44からなっている。軸部42は線材としての平角線20を所望の形状にコイリングするための内周部材であり、その外形形状はコイリングするに適した円形状として形成されている。
フランジ部44は、軸部42の側部位置でコイリングする平角線20を上下方向から保持するための部分であり、上側フランジ部位44aと下側フランジ部位44bとからなっている。この上側フランジ部位44aと下側フランジ部位44bは円板形状で形成されている。軸部42と下側フランジ部位44bとは一体に形成されており、その柱状部47が基台部位14にボルト38により取り付けられて固定されている。軸部42の軸方向の長さ寸法は平角線20の高さ寸法と略同じ寸法とされている。正確には平角線20のコイリング成形の関係上、平角線20の高さ寸法よりわずか大きい長さ寸法として形成されている。
フランジ部位44の、図1で見て、径方向の長さ寸法は、平角線20の幅寸法と略同じ寸法で形成されている。すなわち、図1の状態で示される軸部42とフランジ部位44とで形成される空間Sの大きさは、平角線20の断面形状と略一致している。
【0017】
上側フランジ部位44aは、図1で見て、上下動可能に構成されている。上側フランジ部位44aは一体に構成された軸45を介してエアーシリンダ46に連結されている。軸45は軸部42と下側フランジ部位44bとを一体に形成した柱状部47の中心を貫通した状態で配置されている。これにより、エアーシリンダ46の作動により上側フランジ部位44aは上下動する。
図1の図示状態は上側フランジ部位44aが下方に位置した状態を示しており、この状態にて平角線20をコイリングするための曲げ加工が行われる。この状態では上側フランジ部位44aの下面は軸部42の上面と当接した状態にある。エアーシリンダ46により上側フランジ部位44aを上方へ動作させて当接状態を充分に離間させた状態が上方に位置した状態である。この上方に位置した状態でこのフランジ部位44間へ平角線20が挿入されて供給されてくる。上方に位置した状態ではフランジ部位間の空間Sは平角線20の断面形状よりその上下方向が大きくなっているため、平角線20の供給に際してフランジ部位44との摩擦抵抗があまり生じることなくスムーズに供給が行われる。また、このためフランジ部位44によって平角線20が傷つけられたり、その皮膜を剥離されるようなことが防止ないしは減少する。
【0018】
ローラ部50は、図1に示すように、ローラ52を備える。ローラ52は円形のフランジ部位44の外周に沿って自転しながら公転回転するように配置される。フランジ部位44の径方向の長さ寸法は、平角線20の幅寸法と同じ寸法で形成されているため、軸部42に対してローラ52の配置される位置は平角線20の幅寸法だけ置いた位置状態となっている。したがって、ローラ52はフランジ部位44間に挿入された平角線20をコイリングするための外周部材として機能するように配置されている。
ローラ52は支持軸54にベアリング55を介して回転自在すなわち自転可能に支承されている。支持軸54はその下方位置で回動部材56に固定的に取り付けられている。回動部材56は下側フランジ部位44bを形成する柱状部47の外周にベアリング49を介して回動自在に支承されている。この回動部材56の回動によりローラ52はフランジ部位44の外周を公転回動する。公転回動する範囲は平角線20をコイリングするために必要とされる範囲である。
【0019】
回動部材56の下部には歯車58がボルト60により一体的に取り付けられている。この歯車58は、図4に良く示されるように、別の歯車62と噛合っており、歯車62は下方に配置されたモータ64と回転連結されている。モータ64と歯車62の回転連結は回転軸部材66、68を介して行われている。モータ64は支柱70により基台部位14に取り付けられている。また、回転軸部材66は円筒状部材71にベアリングを介して回転自在に支承されている。円筒状部材71はボルト72により上方の基台部位14に取り付けられて固定されている。回転軸部材68は回転軸部材66とモータ64を繋ぐ部材として配置されている。
このため、モータ64の反時計廻り方向の回転により歯車62も同じ方向に回転し、この歯車62と噛合っている歯車58及びこの歯車58と一体的とされている回動部材56が逆に時計廻り方向に回転する。これにより回動部材56に支持軸54を介して取り付けられているローラ52が時計廻り方向に公転する。この公転はフランジ部位44の外周にローラ52の外周が当接して行われ、ローラ52が自転しながら行われる。このローラ52の時計廻り方向の公転時に平角線20のコイリング加工が行われる。
逆に、モータ64の時計廻り方向の回転によりローラ52は反時計廻り方向に公転する。この反時計廻りの公転はコイリング加工を終了してローラ52の位置を元のコイリング加工する開始位置に戻すときに行われる。このようにモータ64の回転を制御することによりローラ52の公転方向が制御される。
なお、ローラ52の公転する範囲は、平角線20を曲げ加工するために必要とする範囲とされている。図6に示すこの実施の形態の銅コイル10は短辺10aと長辺10bが直角に曲げられているため、これに対応して公転の回動範囲も直角に相当する範囲とされている。詳細には、曲げ加工後のスプリングバックを考慮して直角よりわずか多めに公転範囲が定められている。
【0020】
次に、高さ合わせ板状部材74について説明する。図3に良く示されるように、高さ合わせ板状部材74は前述したコイリング加工するためのマンドレル40とローラ部50の前方位置に配置されている。ここで前方位置とは平角線20の供給方向に対してである。図4に良く示されるように、高さ合わせ板状部材74が配置される高さ位置は前述したマンドレル40のフランジ部位44と略同じ高さ位置とされている。そして、図4で見て上下方向の高さ方向に、上方位置と下方位置の2位置を上下動可能に配置されている。
上下動はエアーシリンダ75により行われるようになっている。エアーシリンダ75は基台部位14に取り付けられており、そのピストン部材76が高さ合わせ板状部材74の取付台座77と結合されて、エアーシリンダ75の作動により高さ合わせ板状部材74が上下動するようになっている。
高さ合わせ板状部材74の上方位置は、下側フランジ部位44bの高さ位置と略同一高さ位置とされている。この位置は平角線20をフランジ部位44間に供給する高さ位置と同じ位置である。そして、平角線20のコイリング加工はこの高さ位置状態で行われる。図4の図示状態はこの高さ位置状態を示している。高さ合わせ板状部材74の下方位置は、下側フランジ部位44bの高さ位置より少し下降した位置である。この位置は平角線20をフランジ部位44間に供給する高さ位置より少し下降した位置である。そして、平角線20のコイリング部Fへの供給はこの高さ位置状態で行われる。
【0021】
なお、コイリング加工を終了した銅コイル10はカッタにより切断されるようになっている。カッタは、図2に良く示されている様に、上刃カッタ78と下刃カッタ79とから成っている。下刃カッタ79はその上方端が平角線20の供給高さ位置と略同じ高さ位置に配置されている。詳細には平角線20の供給時の摩擦抵抗を少なくするためにわずか低い位置として配置されている。この下刃カッタ79の位置に対応して上刃カッタ78が上方位置に配置されている。
【0022】
上述した構成よりなるコイリング部Fによるコイリング加工を次に説明する。先ず、図5の(A)に示すように、軸部42に対して平角線20を銅コイル10の長辺に相当する規定量の長さだけ供給方向である前方に送り出す。この供給時には上側フランジ部位44aは上方に位置した状態にあり、その供給がスムーズに行えるようになっている。また、前方の高さ合わせ板状部材74も下方位置にあり、平角線20の供給がスムーズに行えるようになっている。
平角線20が規定量だけ供給されたことが検知されると、エアーシリンダ32が作動して保持部Eにより平角線20の位置状態を確実に保持する。また、エアーシリンダ46が作動して上側フランジ部位44aを下方に位置した状態として、供給された平角線20をフランジ部位44間に保持する。更に、エアーシリンダ75が作動して高さ合わせ板状部材74を上方位置とする。この状態でモータ64も起動して反時計廻り方向に回転させ、ローラ52を時計廻り方向に公転回動させてコイリング加工を行う。すなわち、内周部材である軸部42と外周部材であるローラ52により平角線20は規制されて曲げ加工が行われる。この曲げ加工においてローラ52は自転しながら行われるので、平角線20の当接面に傷付けることがない。
また、このコイリング加工のための曲げ加工は、平角線20と略同一断面状態の空間とされたフランジ部位44間に平角線20が挿入されて行われる。このため、その曲げ加工において平角線20の断面積が異常に膨大化することが阻止され、均一化した形状状態の銅コイル10として成形される。コイリング加工した状態が図5(A)の一点鎖線状態で示した状態である。
【0023】
図5(A)の一点鎖線状態にコイリング加工したら、先ず、モータ64を起動して時計廻り方向に回転させ、ローラ52を反時計廻り方向に公転回動させて元の作動位置に戻す。次に、保持部Eによる平角線20の保持状態を解いて、図5(B)に示すように、図5(A)の一点鎖線状態から銅コイル10の短辺10aに相当する規定量の長さだけ供給方向である前方に送り出す。そして、再度この状態で保持部Eにより平角線20を保持して、前述と同様にして軸部42とローラ52により曲げ加工を行いコイリングする。その加工を終了した状態が一点鎖線で示した状態である。
更に、図5(C)に示すように、図5(B)の一点鎖線状態から銅コイル10の長辺に相当する規定量の長さだけ前方に送り出す。そして、同様にして曲げ加工を行いコイリングする。その加工を終了した状態が一点鎖線で示した状態である。以上で一巻分のコイリングが行われたことになる。以上のコイリングを所定巻数だけ繰り返し行うことにより、長方形状に形成される銅コイル10のコイリングが終わる。なお、銅コイル10は平角線20の平坦面が重ねられた状態で巻かれている。
所定巻数分のコイリングが終了したときに、上刃カッタ78と下刃カッタ79とで平角線20を切断して、この成形装置から取り出す。この取り出しは、従来装置のようにマンドレルに巻かれていることがないので、簡単に取り出すことができる。
なお、カッタによる切断は、図6に示すように、銅コイル10の両端の端部において行われ、通常のコイリングする部分よりわずか突出した長さ部分で行われる。このため、最初及び最後のコイリング加工におけるコイリング部Fへの供給量は長辺10bより所定量だけ長くして行われるようになっている。
【0024】
上述した平角線20のコイリングにおいて、コイリング部Fの前方位置に高さ合わせ板状部材74が配置され、上方位置とされていることにより、コイリングされた銅コイル10部分は自重により垂れ下がることがないため、その曲げ加工において捩じりなどの異常な外力が加わることなく行うことができる。しかし、平角線20が送られるときは高さ合わせ板状部材74は下方位置にあるため、摩擦抵抗があまりなくスムーズに行うことができる。
なお、図7に示す従来の装置においては、マンドレル80はコイリング加工に際して、水平方向の回転のほか、前後左右にも移動させる必要があったり、ガイド装置82として多数のローラを必要とするものであるため、装置が複雑になると言う問題があった。これに対して、上述した実施の形態では軸部42に対して1個のローラ52を自転させながら公転回動させるのみであるので、装置が簡単となる効果がある。
【0025】
以上この発明に係るコイル成形装置の実施の形態について説明したが、この発明は以上の実施の形態に限定されることなく、その他種々の実施の形態が考えられるものである。
例えば、前述の実施の形態では線材が帯板状の平角線である場合について説明したが、線材の断面形状は正四角形、丸型、菱形など各種考えられるものである。
また、線材を保持するフランジ部位44間の幅の変動を上側フランジ部位44aを上下動させることにより行っているが、下側フランジ部位44bを上下動させたり、あるいは、上側と下側の両方のフランジ部位44a、44bを上下動させる事によっても良い。
また、前述の実施の形態では、ローラ52によるコイリング加工後、ローラ52を元の作動位置に戻さなければ、平角線20をコイリング部Fに供給できない構成となっている。これを、コイリング加工後、ローラ52を下方に移動させて元の作動位置に戻す構成とすることにより、そのローラ52を戻す動作中にも平角線20をコイリング部Fに供給することができ、生産性を向上させることができる。
【0026】
【発明の効果】
この発明に係るコイル成形装置によれば、治具の軸部とローラにより線材が曲げ加工され、この曲げ加工が繰返し行われてコイリングされるため、成形されたコイルは治具等に巻き付けられることがなく、治具としてのマンドレル等からの取り外し工程を不要とすることができる。
加えて、線材をフランジ部位へ供給する際に、そのフランジ部位の線材を保持する幅を、線材の形状寸法より幅広とする場合には、線材の供給に当っての摩擦抵抗は少なく、その供給はスムーズに行うことができる。また、その供給時に線材が傷付けられたり、線材の皮膜が剥離されることを極力少なくすることができる。
また、治具とローラへの線材の供給方向前方位置に高さ合わせ板状部材を配置して、その高さ位置を変えることにより、線材の供給時にその線材の供給を容易に行うことができたり、コイリング時におけるコイルの垂れ下がりを防止したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置のコイリング部の主要部の側面図である。
【図2】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置の平面図である。
【図4】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置の側面図である。
【図5】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置によりコイリングされる過程を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態に係るコイル成形装置によりコイリングされた銅コイルがトランスに適用された場合を示す斜視図である。
【図7】従来のコイル成形装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
14 基台部位
20 平角線(線材)
40 マンドレル(治具)
42 軸部
44 フランジ部位
44a 上側フランジ部位
44b 下側フランジ部位
52 ローラ
74 高さ合わせ板状部材

Claims (3)

  1. 帯板状の平角線の線材をコイリングするコイル成形装置であって、
    平角線の線材を所望の形状にコイリングするための曲げ外形形状とした軸部を備えた治具と、この治具の軸部の外周位置に線材の略形状寸法を置いて曲げ加工すべき所定の範囲回動可能とされたローラとから成り、
    前記治具はその軸部の側部位置でコイリングすべき線材を上下方向から保持する円板形状に形成されたフランジ部位を備え、このフランジ部位は平角線の線材を保持する幅が変動可能と構成されており、この保持する幅はフランジ部位間に平角線の線材を挿入して供給するときは平角線の線材の形状寸法より幅広とされ、曲げ加工時には平角線の線材の略形状寸法とされ、その結果、曲げ加工時には軸部と円板形状のフランジ部とで形成される空間の大きさが平角線の線材の略断面形状とされており、
    前記ローラは円板形状のフランジ部位の外周に沿って自転しながら公転回転するように配置されており、
    平角線の線材をこの治具のフランジ部位を備えた軸部とローラとの間に位置させてローラの回動移動により平角線の線材を曲げ加工してコイリングを行うことを特徴とするコイル成形装置。
  2. 請求項1に記載のコイル成形装置であって、
    前記フランジ部位は上側フランジ部位と下側フランジ部位とから成り、下側フランジ部位は基台部位に固定され、上側フランジ部位は下側フランジ部位に対して上下動可能に構成されていることを特徴とするコイル成形装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のコイル成形装置であって、
    前記治具とローラへの線材の供給方向前方位置には高さ合わせ板状部材が配置されており、この高さ合わせ板状部材は治具とローラ間への線材の供給時には線材の供給高さ位置より下降した位置とされ、コイリング時には略線材の供給高さ位置とされることを特徴とするコイル成形装置。
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