JP3775773B2 - 硬化触媒、樹脂組成物、樹脂封止型半導体装置、およびコーティング材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂等、カチオン重合性化合物の硬化に用いられる硬化触媒およびこの硬化触媒を含有する樹脂組成物に関する。また本発明は、かかる樹脂組成物を用いた樹脂封止型半導体装置、こうした樹脂組成物を含有するコーティング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エポキシ樹脂は、優れた電気絶縁性、機械的強度、接着性、耐水性等の特徴を有するために、自動車や缶類の塗装分野、封止材や積層板等の電気分野、土木・建築、接着剤分野等、広い範囲で用いられている。従来、エポキシ樹脂は、硬化剤としてアミン化合物やカルボン酸無水物を混入した2液系で広く利用されている。しかしながら、これらの硬化剤を用いた2液系は、使用する直前に成分を混合しなければならないために操作が煩雑である。また低温での保存および輸送を余儀なくされたり、製造後には一定期間内に使い終わらなければならないなどの制約がある。そこで長年、常温で一液保存が可能なエポキシ樹脂組成物が望まれており、その方法も多数検討されている。
【0003】
従来、酸触媒あるいは塩基触媒で硬化反応が促進される熱硬化性組成物においては、貯蔵安定性を改善する目的で、これら触媒の潜在化が物理的手法や化学的手法を用いて検討されている。例えば、物理的手法としては、例えば有機フォスフィン化合物をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル(特開平6−73163号公報)にしたり、ゼオライトのような空孔を有する化合物に吸着させて、一液保存性を達成する方法がある。しかしながら、これら触媒系は潜在性が不十分であり、不均一系であるために含浸などの加工法に使えないなど用途が限定されてしまう。また、硬化樹脂が不均一になりやすいなどの欠点を有している。
【0004】
一方、化学的手法としては、酸触媒の活性を一時的に抑制し、加熱硬化時にこれを開裂させることによって再び活性を示す、いわゆる熱潜在性触媒を用いる方法が広く検討されている。このような熱潜在性触媒としては、例えば、酸−塩基の中和反応を利用して活性プロトンをブロックしたものや、アルコール類とのエステル化反応を利用して活性プロトンをブロックしたものが知られている(特公昭52−770号公報)。また、オニウム塩の熱分解により活性なベンジルカチオンを生成する熱潜在性酸触媒としては、ベンジルスルホニウム塩型やベンジルピリジニウム塩型のものが知られている(特開昭62−192427号公報)。さらに、市販されている熱潜在性酸触媒としては、ルイス酸である三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体が挙げられる。
【0005】
しかしながら、酸−塩基の中和反応を利用したものや、アルコール類とのエステル化反応を利用したものは、適度な解離温度と触媒自身の熱安定性とを両立した熱潜在性酸触媒を得ることが困難である。また、ベンジルスルホニウム塩型やベンジルピリジニウム塩型のものは、比較的貯蔵安定性に優れるものの十分ではなく、特に反応性の高い脂環式エポキシ類には貯蔵安定性は悪い。さらに、市販されている三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体では、全般に解離温度が高すぎる傾向を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の触媒を用いた場合には、触媒を硬化性樹脂成分としてのエポキシ樹脂と混合した直後から、たとえ室温であっても反応が徐々に進行する。すなわち、このようなエポキシ樹脂組成物は、単に保存しておくだけでも反応が進行し、硬化してしまう。そのため、エポキシ樹脂組成物の保存期間はある限られた期間に限定されてしまい、その期間内に使用してしまわなければならない。
【0007】
また、従来の触媒による硬化反応はイオン反応によって起こるため、反応後のイオン性触媒が硬化樹脂中に残存し、樹脂の電気絶縁性を大きく低下させるという問題点がある。
【0008】
一方、カチオン重合性ビニル化合物のカチオン重合触媒としては、BF3 、AlCl3 、AlRCl2 などのルイス酸などが知られているものの、こうした重合触媒は、室温程度の温度でさえ反応が生じて、貯蔵安定性は極めて悪い。また、重合反応がうまく制御できず、重合度も小さい。ビニル化合物を重合させるには、通常、適切な溶媒に溶解したモノマーを所定の極低温まで冷却した後に、触媒を投入して重合させる。しかしながら、重合反応を工業的に低温域で行うには操作が煩雑であり、また費用もかかるのでよい方法とはいえない。
【0009】
本発明は、樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物の硬化触媒であって、室温より高い所定の温度以上では速やかに反応して樹脂を硬化させるものの、室温程度では反応があまり進行せず、しない硬化触媒を提供することを目的とする。
【0010】
また、この発明は、室温程度では硬化反応が進行せずに高い保存安定性を保持し、かつ室温より高い所定の温度以上では速やかに硬化し、さらに電気絶縁性および機械的強度の優れた硬化物を得ることが可能な、作業性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、貯蔵安定性、流動性および充填性に優れたエポキシ樹脂組成物で封止され、高い耐熱衝撃性および耐湿信頼性を有する樹脂封止型半導体装置を提供することを目的とする。
【0012】
またさらに本発明は、上述したような硬化触媒を含有し、貯蔵安定性に優れ、硬化後には高い硬度特性を示すコーティング材を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、下記一般式(II−1)で表される化合物、(II−2)で表される化合物、および(II−3)で表される化合物からなる群から選択される有機金属化合物と、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサン、フェノール化合物、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、および光照射によりシラノールを発生することが可能なケイ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化触媒を提供する。
【化3】
(上記一般式中、R21、R22、R23およびR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基である。ただし、1つの配位子中においてR21、R22、R23およびR 24 の炭素数が16以上であるものを少なくとも1つ以上含むものとする。Mは、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ba、Ca、Ce、Pb、Mg、SnおよびVからなる群から選択され、nは2〜4の整数である。)
【0023】
さらに本発明は、前述の硬化触媒とカチオン重合性樹脂成分とを含有する樹脂組成物を提供する。
【0024】
またさらに本発明は、半導体素子と、この半導体素子を封止する樹脂層とを具備し、前記樹脂層は、前述の樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置を提供する。
【0025】
またさらに本発明は、前述の硬化触媒を含有するコーティング材を提供する。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1の硬化触媒は、カチオン重合触媒成分および有機金属化合物の少なくとも1種を含有する。かつ、これらの少なくとも1種は、加熱、冷却によって可逆的に溶解、析出を行うことが可能であるという特性を有している。本発明において、加熱とは室温以上、具体的には40℃以上から硬化温度までを意味し、冷却とは硬化温度以下、具体的には80℃以下、好ましくは60℃以下の温度範囲を意味する。また、析出とは、触媒がエポキシ樹脂中においてコロイドやミセル、結晶等の形態をとることを意味し、触媒の活性部位がエポキシ樹脂や硬化剤等から隔離されている状態であればよい。さらに触媒の潜在性が貯蔵安定性試験等により確認できれば、それらの大きさはいかなるものでもよいが、好ましくはそれらの触媒の平均粒径が0.1μm以上のものが確認できればよい。溶解とは、上述したような形態をとる触媒が一部分でも溶解すればよいとし、例えば、エポキシ樹脂中で析出した触媒を樹脂ごとガラス板状に採取し、次いで加熱しながら顕微鏡で観測することにより析出して濁っている触媒が溶解して透明になればよい。さらに、エポキシ樹脂中の触媒の溶解に由来する吸熱ピークがDSC(示差走査熱量測定)等において確認されればなおよい。
【0028】
第1の硬化触媒に配合されるカチオン重合触媒成分としては、例えば炭素数10以上の置換もしくは非置換の炭化水素、あるいは炭素数10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する環状有機構造を分子内に1つ以上有する化合物が挙げられる。炭素数は16以上がより好ましい。これらの炭化水素、環状有機構造は置換基として存在してもよいし、配位子を構成する一部として存在してもよい。また環状有機構造としては、芳香族、複素芳香族、縮合芳香族、縮合複素芳香族等が挙げられる。
【0029】
カチオン重合触媒成分のカチオンとなる元素としては、例えば、S、I、Fe、N、O、P、Mg、Mn、およびSi等を挙げることができる。
【0030】
具体的に説明する。カチオン重合触媒成分としては、例えば、下記一般式(I−1)で表されるスルホニウム塩、下記一般式(I−2)で表されるヨードニウム塩、下記一般式(I−3)で表される鉄芳香族化合物等のオニウム塩;下記一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物、および下記一般式(I−5)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
オニウム塩としては、上記の他、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ピロリウム塩、ピリリウム塩、キノリウム塩、アニリウム塩、ピリジウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンゾチアゾリウム化合物塩、ベンジルピリジウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等を用いてもよい。
【0032】
【化27】
【0033】
上記一般式中、R11、R12およびR13は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する環状有機構造を分子内に一つ以上有する。より具体的には、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R1 −COO、R2 −SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここで、R1 およびR2 は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基を示す。
【0034】
【化28】
【0035】
上記一般式中、R14、R15、R16、R17は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する環状有機構造を分子内に1つ以上有する。より具体的には、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。p、qおよびrは0〜3の整数で、p+q+rは3以下である。
【0036】
【化29】
【0037】
上記一般式中、Ar1 は置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基であり、R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する環状有機構造を分子内に1つ以上有する。kは1ないし7の整数、nは1ないし7の整数をそれぞれ示す。
【0038】
前記一般式において、R11〜R18として導入される炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘオウタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコサン等の分岐あるいは直鎖状の置換基やコレステロール等のステロイド骨格を有する化合物を用いることができる。
【0039】
また、上述した炭化水素基は、F,Si,O,N,S等のヘテロ原子が含有されていてもよい。
【0040】
前記一般式中において、R11〜R18として導入される置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、クロロベンジル基、ジクロロベンジル基、トリクロロベンジル基、ニトロベンジル基、ジニトロベンジル基、トリニトロベンジル基、ナフチルメチル基;ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニル基のような2ないし3個のベンゼン環が縮合してなる縮合芳香環基;フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミタゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、トリアゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピラニル、チイニル、ピリジニル、ピペリジニル、オキサジニル、モルホリニル、チアジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニルおよびトリアジニル基のような単環式複素芳香環基;ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、キサンテニル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノキサジニル、チアントレニル、インドリジニル、キノリジニル、キヌクリジニル、ナフチリジニル、プリニルおよびプテリジニル基のような縮合複素芳香環基;および水素原子が1つもしくはそれ以上の置換基で置換されたそれらの基を挙げることができる。
【0041】
これらの置換された芳香族基または複素芳香族基の置換基としては、炭素数が1以上の有機基を挙げることができ、複数存在する場合には、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
前記一般式(I−1)で表されるスルホニウム塩としては、例えば、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(p−オクタデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、(p−オクタデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、p−オクタデシルオキシベンジルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−オクタデシルオキシフェニル)シンナミルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(4−オクタデシルオキシフェニル)(3−メチル−2−ブテニル)メチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−オクタデシルオキシフェニル−(α−ナフチルメチル)メチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−オクタデシルオキシフェニル−9−フルオレニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−オクタデシルオキシフェニルメチル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、o−ニトロベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、α−フェニルベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、α−メチルベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、および4−オクタデシルオキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0043】
上述したスルホニウム塩のアニオン部分をなすヘキサフルオロアンチモネートをヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、テトラフルオロボレート、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン、およびトリフルオロメタンスルホネート、パークロレート、ハロゲン、R1 −COO、R2 −SO3 よりなる群から選択されたアニオンに変換した化合物もまた、本発明の硬化触媒成分として用いることができる。R1 およびR2 は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基を示す。
【0044】
さらに、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルテトラフルオロボレート、およびベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルトリフルオロメタンスルホネート等を用いることもできる。
【0045】
前記一般式(I−2)で表されるヨードニウム塩としては、例えば、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルヨードニウムテトラフルオロボレート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)ヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、(p−オクタデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、(p−ヘキサデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルエチルヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、およびp−オクタデシルオキシベンジルテトラメチレンヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−オクタデシルオキシフェニル)シンナミルメチルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(4−オクタデシルオキシフェニル)(3−メチル−2−ブテニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−オクタデシルオキシフェニル−(α−ナフチルメチル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−オクタデシルオキシフェニル−9−フルオレニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−オクタデシルオキシフェニルメチル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、o−ニトロベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、α−フェニルベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、α−メチルベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−オクタデシルオキシフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、および4−オクタデシルオキシフェニルメチルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0046】
上述したヨードニウム塩のアニオン部分をなすヘキサフルオロアンチモネートをヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、テトラフルオロボレート、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン、およびトリフルオロメタンスルホネート、パークロレート、ハロゲン、R1 −COO、R2 −SO3 よりなる群から選択されたアニオンに変換した化合物もまた、本発明の硬化触媒成分として用いることができる。R1 およびR2 は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基を示す。
【0047】
さらに、以下に示すようなオニウム塩を用いることができる。
【0048】
ピリリウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0049】
【化30】
【0050】
上記一般式中、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基である。Rはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基も含む。また、nは1〜5の整数である。
【0051】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0052】
前記一般式で表されるピリリウム塩としては、2,6−ジメチル−4−オクタデシルオキシフェニルピリリウムヘキサフルオロアンチモネート、2,6−ジメチル−3−(4−オクタデシルオキシフェニル)プロピルピリリウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。
【0053】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合は、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0054】
ベンジルスルホニウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0055】
【化31】
【0056】
上記一般式中、R1、R2、R3、R4およびR5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基である。R4はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基も含む。また、nは1〜5の整数である。
【0057】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0058】
前記一般式で表されるベンジルホスホニウム塩としては、ベンジルトリス(4−オクタデシルオキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、α−フェニルベンジルトリス(4−オクタデシルオキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。
【0059】
上述したベンジルホスホニウム塩のアニオン部分をなすヘキサフルオロアンチモネートをヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、テトラフルオロボレート、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン、およびトリフルオロメタンスルホネート、パークロレート、ハロゲン、R1−COO、R2−SO3よりなる群から選択されたアニオンに変換した化合物もまた、本発明の硬化触媒成分として用いることができる。R1およびR2はアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されててもよいアルキル基もしくはフェニル基を示す。
【0060】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0061】
ベンジルアンモニウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0062】
【化32】
【0063】
前記一般式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基あるいは複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。さらに、R5、R6は、両方とも水素原子、一方が水素原子で他方がアルキル基もしくはハロゲン原子であるか、または両方がアルキル基もしくはハロゲン原子である。R5、R6が両方とも水素原子の場合には、R1、R2、R3のうち少なくとも一つは芳香族基あるいは複素芳香族基であることが望ましい。ただし、R4はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基を含む。nは1〜5の整数である。
【0064】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0065】
前記一般式で表されるベンジルアンモニウム塩としては、N−(p−オクタデシルオキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−(p−オクタデシルオキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムヘキサフルオロホスフェート、N−(p−オクタデシルオキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムテトラフルオロボレート、N−(α−メチル−p−オクタデシルオキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(α−メチル−p−オクタデシルオキシベンジル)−N,N−ジメチルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0066】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0067】
上記ベンジルアンモニウム塩のなかで、R1、R2、R3の一つが置換あるいは無置換のフェニル基で表されるアニリニウム塩が、R1、R2、R3の残りの2個の少なくとも1つが窒素原子のβ位の炭素に置換基を有するアルキル基を有するものもまた、有効である。
【0068】
ベンジルピリジニウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0069】
【化33】
【0070】
上記一般式中、R1、R2、R3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。ただし、R1はシアノ基、R2はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基も含む。nは1〜5の整数であり、mは1〜7の整数である。
【0071】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0072】
前記一般式で表されるベンジルピリジニウム塩(A)としては、1−(p−オクタデシルオキシベンジル)−4−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(p−オクタデシルオキシベンジル)−4−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(p−オクタデシルオキシベンジル)−4−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0073】
前記一般式で露わ和されるベンジルピリジニウム塩(B)としては、α−ナフチルメチル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、α−ナフチルメチルー(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、α−ナフチルメチル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0074】
前記一般式で表されるベンジルピリジニウム塩(C)としては、シンナミル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、2−ブテニル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、シンナミル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、シンナミル−(4−オクタデシルオキシ)ピリジニウム テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0075】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0076】
ベンゾチアゾリウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0077】
【化34】
【0078】
上記一般式中、R1、R2、R3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を一つ以上有する。R1、R2はニトロ基を含む。R4は水素原子あるいは芳香族基あるいは複素芳香族基、nは1〜5の整数、mは1〜4の整数である。チアゾリウム環のS原子がO原子で置換されていてもよい。
【0079】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0080】
また、下記一般式で表される化合物を用いてもよい。
【0081】
【化35】
【0082】
上記一般式中、R1、R2、R3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を一つ以上有する。R1、R2はニトロ基を含む。nは1〜5の整数、mは1〜4の整数である。チアゾリウム環のS原子がO原子で置換されていてもよい。
【0083】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0084】
前記一般式で表されるベンゾチアゾリウム塩としては、3−(p−オクタデシルオキシベンジル)ベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−(p−オクタデシルオキシベンジル)−2−メチルチオベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−(p−オクタデシルオキシベンジル)ベンゾチアゾリウムヘキサフルオロホスフェート、3−(p−オクタデシルオキシベンジル)ベンゾチアゾリウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0085】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0086】
キノリニウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0087】
【化36】
【0088】
上記一般式中、R1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を一つ以上有する。R2は芳香族基あるいは複素芳香族基で置換されたアルキル基およびエチレンやアセチレン等の不飽和結合で置換されているアルキル基の群より選ばれた基である。nは1〜7の整数である。
【0089】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0090】
前記一般式で表されるキノリニウム塩としてはN−ベンジル−(5−オクタデシルオキシ)キノリニウム ヘキサフルオロアンチモネート、N−(1−ナフチルメチル)−5−オクタデシルオキシキノリニウム ヘキサフルオロアンチモネート、N−シンナミル−5−オクタデシルオキシキノリニウム ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0091】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0092】
ピロリニウム塩としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0093】
【化37】
【0094】
上記一般式中、R1、R2、R3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を一つ以上有する。R4は水素原子またはアルキル基である。nは1〜7の整数である。
【0095】
XはSbF6 、AsF6 、PF6 、BF4 、少なくとも1個のフッ素原子が水酸基で置換されたこれらアニオン誘導体、およびCF3 SO3 、ClO4 、ハロゲン原子、R−COO、R−SO3 よりなる群から選択されたアニオンを示す。ここでRは、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基である。
【0096】
前記一般式で表されるピロリニウム塩としては、N−(4−オクタデシルオキシベンジル−N−メチルピロリニウム ヘキサフルオロアンチモネート、N−ベンジル−N−4−オクタデシルオキシフェニルピロリニウム ヘキサフルオロアンチモネート、N−(4−オクタデシルオキシベンジル−N−メチルピロリニウム ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0097】
配合量は、組成物のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0098】
前記一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)シラノール、トリス(p−オクタデシルオキシフェニル)シラノール、トリス(p−ドコシルオキシフェニル)シラノール、トリス(m−ヘキサデシルオキシフェニル)シラノール、トリス(m−オクタデシルオキシフェニル)シラノール、トリス(m−ドコシルオキシフェニル)シラノール、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(p−オクタデシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(p−ドコシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(m−ヘキサデシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(m−オクタデシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(m−ドコシルオキシフェニル)シランジオール、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)メチルシラノール、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)エチルシラノール、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)プロピルシラノール、ビス(m−ヘキサデシルオキシフェニル)メチルシラノール、ビス(m−ヘキサデシルオキシフェニル)エチルシラノール、ビス(m−ヘキサデシルオキシフェニル)プロピルシラノール、トリス(6−ヘキサデシルオキシナフチル)シラノール、トリス(6−オクタデシルオキシナフチル)シラノール、トリス(6−ドコシルオキシナフチル)シラノール、ビス(6−ヘキサデシルオキシナフチル)シランジオール、ビス(6−オクタデシルオキシナフチル)シランジオール、および、ビス(6−ドコシルオキシナフチル)シランジオール等が挙げられる。
【0099】
さらに、上記一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物は、水酸基の代わりに加水分解性基で置換されていてもよい。あるいは、上記一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物は、光照射によりシラノールを発生することが可能な置換基が導入されていてもよい。いずれの場合も、本発明の第1の硬化触媒の1成分として用いることができる。
【0100】
ここで、「加水分解性基」とは、ケイ素に直接結合する残基であって、水の存在下において一定温度以上で加水分解して下記化学式で表されるシラノール性水酸基を生成する残基である。
【0101】
【化38】
【0102】
このような基としては、例えば、炭素原子数1〜5個のアルコキシル基;フェノキシ基、トリルオキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基、ベンジルオキシ基、パラクロルフェノキシ基等のアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェニルアセトキシ基、ホルミルオキシ基等のアシロキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等の炭素原子数2〜12個のアルケニルオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;次式で表わされる基を挙げることができる。
【0103】
【化39】
【0104】
(式中、R´およびR″は同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜5個のアルキル基を表わす)
一方、光照射によってシラノールを生じる置換基を有するケイ素化合物としては、ペルオキシシラノ基、o−ニトロベンジルオキシ基、α−ケトシリル基のいずれかを有するケイ素化合物が好ましい。
【0105】
上記ペルオキシシラノ基を有するケイ素化合物は、下記一般式(SI−PO)で表わすことができる。
【0106】
【化40】
【0107】
(式中、R41,R42およびR43は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。R44は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基またはアラルキル基を表わし、p、q、rは各々0〜3整数であり、かつ1≦p+q+r≦3である。)
上記一般式において、R41,R42およびR43として導入され得る置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基としては、前記一般式(I−1)〜(I−5)のR11〜R18に導入され得る基として列挙したものが挙げられる。
【0108】
また、上記一般式において、R44として導入され得るハロゲン原子としては、例えば、塩素および臭素原子を、炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、 tert-ブチル、n−ペンチル、イソペンチルおよびネオペンチル基を、炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、sec-ブトキシ、 tert-ブトキシおよびn−ペンチルオキシ基を、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルおよびアントラニル基を、アラルキル基としては、例えば、ベンジルおよびフェネチル基を、それぞれ挙げることができる。なお、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0109】
ペルオキシシラノ基を有するケイ素化合物の具体的な例としては、下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0110】
【化41】
【0111】
【化42】
【0112】
【化43】
【0113】
前記o−ニトロベンジルオキシ基を有するケイ素化合物は、下記一般式(SI−NB)で表わすことができる。
【0114】
【化44】
【0115】
(式中、R45、R46およびR47は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。R48は水素原子、炭素数1〜10の非置換もしくは置換アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を表わし、R49、R50、R51およびR52は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、アセチル基、アリル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、非置換もしくは置換アリール基またはアリールオキシ基を表わし、p、qおよびrはそれぞれ0〜3の整数であって、かつ0≦p+q+r≦3である)
上記一般式において、R45、R46およびR47として導入され得る置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基としては、前記一般式(I−1)〜(I−5)のR11〜R18に導入され得る基として列挙したものが挙げられる。
【0116】
上記一般式において、炭素数1〜10(または炭素数1〜5)の非置換もしくは置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、 tert-ブチル基、n−ペンチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基およびシアノメチル基が挙げられ、炭素数1〜10(または炭素数1〜5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基およびn−ブトキシ基が挙げられる。非置換もしくは置換アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基およびp−トリフルオロメチルフェニル基が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
【0117】
前記o−ニトロベンジルオキシ基を有するケイ素化合物の具体的な例としては、例えば、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(o−ニトロベンジルオキシ)メチルシラン、ビニルメチル(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、t−ブチルメチル(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ビス(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ビス(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、メチル(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ビス(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、t−ブチル(p−ヘキサデシルオキシフェニル)ビス(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(3,4,5−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(4,5,6−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(5−メチル−4−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(4,5−ジメチル−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、およびトリス(p−ヘキサデシルオキシフェニル)(2,6−ジニトロベンジルオキシ)シラン等を挙げることができる。
【0118】
前記α−ケトシリル基を有するケイ素化合物は、下記一般式(SI−KS)で表すことができる。
【0119】
【化45】
【0120】
(式中、R53、R54およびR55は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基である。ただし、炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する。R56は、水素原子、ビニル基、アリル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アリール基またはアリールオキシ基を表わし、p、q、rはそれぞれ0〜3の整数であって、かつ1≦p+q+r≦3である)
上記一般式において、R53、R54およびR55として導入され得る置換もしくは非置換の炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基としては、前記一般式(I−1)〜(I−5)のR11〜R18に導入され得る基として列挙したものが挙げられる。
【0121】
また上記一般式において、R56として導入され得る炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、 tert-ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基およびn−オクチル基を、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、 tert-ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基およびn−オクチルオキシ基を、アリール基としては、例えば、フェニル基およびナフチル基を、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基およびナフチルオキシ基を、それぞれ挙げることができる。なお、これらの基は、場合によってはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、およびメトキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0122】
前記α−ケトシリル基を有するケイ素化合物のより具体的な例としては、下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0123】
【化46】
【0124】
上記光照射によってシラノールを発生するケイ素化合物は、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられ、その添加配合量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して通常0.001〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。配合量が0.001重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがあるまた、20重量%を越えて用いることは可能ではあるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0125】
前記一般式(I−5)で表される化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンモノオクタデシルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−オクタデシルオキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドモノオクタデシルエーテル、(4−ヒドロキシフェニル)オクタデシルスルホン、4.4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルモノオクタデシルエーテル、およびビス(2−(6−ヒドロキシフェニル))スルホンモノオクタデシルエーテルなどが挙げられる。
【0126】
上記化合物は、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられ、その添加量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがあり、また20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分が物性に悪影響を与えるおそれがある。
【0127】
上述したようなカチオン重合触媒成分のうち、一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物および一般式(I−5)で表される化合物は、一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)で表される金属化合物と組み合わせて用いられ、この場合には成分の少なくとも一成分が加熱と冷却過程において溶解、析出を可逆的に繰り返せばよく、他方の成分はその限りでない。したがって、この場合において、上記一般式(I−4)、(I−5)で表される化合物、および一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)で表される有機金属化合物は、必ずしも炭素数が10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する必要はない。
【0128】
具体的には、一般式(I−4)で表される有機ケイ素化合物としては、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノールなどが挙げられ、一般式(I−5)で表される化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、シアノフェノール、ニトロフェノール、2,2−ジヒドロキシフェニルプロパン、カテコール、P、P’−ビフェノール、レゾルシノールなどが挙げられる。また一般式(I−3)で表される鉄芳香族化合物としては、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒデート)アルミニウム等の構造が簡単な化合物が挙げられる。
【0129】
また、一般式(I−1)で表されるスルホニウム塩、および一般式(I−2)で表されるヨードニウム塩は、前述の一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)で表される有機金属化合物と組み合わせて用いることもできる。この場合、金属化合物は上述したように、必ずしも炭素数10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基、あるいは炭素数10以上の置換もしくは非置換の炭化水素基を有する芳香族基または複素芳香族基を1つ以上有する必要はない。
【0130】
上述したような一般式(I−1)で表されるスルホニウム塩、(I−2)で表されるヨードニウム塩、および(I−3)で表される鉄芳香族化合物は、熱に対して活性を上げるのみならず、光、電子線などの放射線に対しても活性を有している。すなわち、熱または電子線で励起されたこれらスルホニウム塩、ヨードニウム塩および鉄芳香族化合物は、カチオン重合性物質の重合を進行させる硬化触媒であり、こうした触媒とカチオン重合性物質とを配合して本発明の樹脂組成物が調製される。
【0131】
また、本発明においてカチオン重合性物質がビニル化合物などの場合には、重合反応に際して通常、触媒、モノマーなどに不活性な溶媒を用いた溶液重合法が行われるが、場合によっては塊状重合法も行われる。溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタンのような脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンのような脂環式炭化水素類、石油エーテル、リグロインのような炭化水素混合物類、クロルベンゼン、ジクロルエタンのようなハロゲン化炭化水素類などが使用でき、また、これらビニル化合物の重合反応は常圧または加圧下で行われ、反応温度は20℃以上の温度、好ましくは工業的に加熱が容易な60〜150℃である。
【0132】
また、本発明において重合触媒として使用されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、および鉄芳香族化合物は、室温下でカチオン重合反応を開始しないため、必要に応じて予めモノマーと触媒とを一液化して保存しておくことも可能である。
【0133】
本発明に使用されるスルホニウム塩、ヨードニウム塩、および鉄芳香族化合物は、樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部未満の場合には充分な重合物が得られない。一方、20重量部を越える添加量では、重合後の物性において好ましいものが得られず、コスト面においても好ましくない。
【0134】
次に、本発明の第1の硬化触媒の他の成分である有機金属化合物について、詳細に説明する。配合され得る有機金属化合物の代表的なものとしては、下記一般式(II−1)、(II−2)および(II−3)で表される化合物が挙げられる。
【0135】
【化47】
【0136】
(上記一般式中、R2 1、R22、R23およびR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換もしくは非置換の炭化水素基である。ただし、1つの配位子中においてR21、R22、R23およびR24の炭素数が16以上であるものを少なくとも1つ以上含むものとする。Mは、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ba、Ca、Ce、Pb、Mg、Sn、およびVからなる群から選択され、nは2〜4の整数である。)
前記一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)で表される化合物としては、例えば、トリス(オクタデシルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(ヘキサデシルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(オクタデシルアセチルアセテート)アルミニウム、および下記化学式で表わされる化合物が挙げられる。
【0137】
【化4】
【0138】
【化5】
【0139】
【化50】
【0140】
さらに、上述した化学式におけるアルミニウムを、Ti,Cr、Zr,Mn、Fe、Co、Ni、Cu、ZrまたはZn原子に変更したキレート化合物もまた、本発明の第1の硬化触媒の成分として用いることができる。
【0141】
なお、上述した一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)で表される化合物においては、金属原子(M)の結合手が全て配位子と結合している必要はなく、配位子の代わりに1個のアルコキシ基、フェノキシ基、アシロキシ基と結合していてもよい。また、全ての結合手がこれらの基と結合していてもよい。
【0142】
これらの有機金属化合物は、組成物中に1種または2種以上が混合して用いられ、その添加量は、組成物中のエポキシ樹脂等の樹脂に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。配合量が0.01重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分が物性に悪影響を与える場合があり、好ましくない。これらの有機金属化合物を用いた場合には、硬化後の樹脂中にイオン性物質を残留させることがほとんどない。
【0143】
有機金属化合物は、次のような他の成分と組み合わせて、本発明の硬化触媒を構成する。有機金属化合物と混合して用い得る化合物としては、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサンおよびフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0144】
以下に、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサンおよびフェノール化合物等について詳細に説明する。
【0145】
なお、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、または光照射によりシラノールを発生することが可能なケイ素化合物もまた、上述したような有機金属化合物と組み合わせて第1の硬化触媒を得ることができる。
【0146】
ここで、「加水分解性基」とは、一般式(I−4)に導入され得る基としてすでに説明したようなケイ素に直接結合する残基であり、前述と同様の基が挙げられる。
【0147】
用い得るオルガノシランは、下記一般式(S−1)で表わすことができる。
【0148】
【化51】
【0149】
(式中、R1 は水酸基または前記加水分解性基を意味し、X1 、X2 およびX3 は同一であっても異なっていてもよく、各々、炭素原子数1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、パラメトキシフェニル基、パラクロルフェニル基、パラニトロフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、パラメトキシベンジル基、パラメチルベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;またはアセチル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等のアシル基を表わし、p、qおよびrは各々0〜3の整数であって、p+q+rは3以下である)
前記オルガノシランのうち、第1の硬化触媒においてより好ましいものの具体例としては、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、ジフェニル(メチル)シラノール、フェニル(ビニル)シランジオール、トリ(パラメトキシフェニル)シラノール、トリアセチルシラノール、ジフェニル(エチル)シラノール、ジフェニル(プロピル)シラノール、トリ(パラニトロフェニル)シラノール、フェニルジビニルシラノール、2−ブテニルジフェニルシラノール、ジ(2−ペンテニル)フェニルシラノール、フェニルジプロピルシラノール、パラメチルベンジルジメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリメチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリブチルシラノール、トリイソブチルシラノールのようなシラノール類を挙げることができる。また、加水分解性基を有するオルガノシランの具体例としては、トリフェニル(メトキシ)シラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニル(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)メトキシシラン、フェニル(ビニル)(メチル)(メトキシ)シラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリ(パラメトキシフェニル)メトキシシラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、ジフェニル(エチル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(プロピル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)(アセトキシ)シラン、ジフェニルジプロピオニルオキシシラン、ジフェニル(メチル)(トリフェニルアセトキシ)シラン、トリ(パラニトロフェニル)(メトキシ)シラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、フェニルジビニル(プロポキシ)シラン、2−ブテニルジフェニル(メトキシ)シラン、ジ(2−ペンテニル)(フェニル)(エトキシ)シラン、フェニルジプロピル(メトキシ)シラン、トリ(パラメトキシフェニル)(エトキシ)シラン、パラメチルベンジルトリメトキシシラン、トリフルオロアセチルトリメトキシシラン、ジ(パラクロルフェニル)ジエトキシシラン、トリエチル(メトキシ)シラン、トリメチル(メトキシ)シラン、トリプロピル(メトキシ)シラン、トリブチル(エトキシ)シラン、トリイソブチル(アセトキシ)シラン、および下記化学式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0150】
【化52】
【0151】
さらに、前記例の他に、水酸基と加水分解性基との両方を有するオルガノシランも勿論用いることができる。
【0152】
上述したようなケイ素原子に直接結合した水酸基または加水分解性基を有するオルガノシランは、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられる。その配合量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して、通常0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。配合量が0.001%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量部を超えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくない。
【0153】
本発明の第1の硬化触媒に好適に用いることができるオルガノシロキサンは、下記式(S−2)で表わされる二官能性単位および/または下記式(S−3)で表わされる三官能性単位からなる、分岐を有することもある直鎖状または環状のシロキサンであり、場合によっては下記式(S−4)で表わされる四官能性単位を含んでいてもよい。さらに、このオルガノシロキサンは、シロキサン鎖が末端を有する場合には、下記式(S−5)で表わされる一官能性単位によって封じられたものであり、特に、構成単位の少なくとも1つが水酸基または加水分解性基を少なくとも1つ含む。
【0154】
【化53】
【0155】
(式中、Y1 、Y2 、Y3 、Y4 、Y5 およびY6 は同一であっても異なっていてもよく、各々、水酸基もしくは加水分解性基;炭素原子数1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、パラメトキシフェニル基、パラクロルフェニル基、パラシアノフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、パラメトキシベンジル基、パラメチルベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等のアシル基を表わす)
前記オルガノシロキサンのうち、重合度が50以下で、水酸基および/または加水分解性基の当量が1000以下のものがより好ましく、さらには当量が50〜500であるものが好ましい。
【0156】
このような好ましいオルガノシロキサンの具体例としては、水酸基を有するものとして、1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルテトラシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタフェニルテトラシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1,1,5,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラ(ジメチルフェニル)ジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサエチルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタプロピルテトラシロキサン、1,3,5−トリヒドロキシ−3−エチル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジ−p−トリルトリシロキサン、および下記化学式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0157】
【化54】
【0158】
また、SH6018(トーレシリコーン(株)製:水酸基当量400、分子量1600のメチルフェニルポリシロキサン)などの商品名で入手し得るシリコーン樹脂も用いることができる。
【0159】
一般に、下記一般式で表わされるポリシロキサンも使用することができる。
【0160】
【化55】
【0161】
(上記一般式中、R61、R62、R63、R64、R65およびR66は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水酸基もしくは加水分解性基;炭素原子数1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、パラメトキシフェニル基、パラクロルフェニル基、パラシアノフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、パラメトキシベンジル基、パラメチルベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等のアシル基を表わす)
上述したようなケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサンは、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられる。その配合量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して、通常0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。配合量が0.001%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量部を超えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくない。
【0162】
配合され得る光照射によってシラノールを生ずるケイ素化合物としては、ペルオキシシラノ基、o−ニトロベンジルオキシ基、α−ケトシリル基のいずれかを有するケイ素化合物が好ましい。
【0163】
ペルオキシシラノ基を有するケイ素化合物は、一般式(I−4)においてすでに説明したような一般式(SI−PO)で表される化合物である。ただし、この場合には、前記一般式中のR41,R42,およびR43としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基またはアラルキル基が導入される。これらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0164】
ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基等としては、R44に導入され得る基として列挙したものが挙げられる。
【0165】
ペルオキシシラノ基を有するケイ素化合物の具体的な例としては、下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0166】
【化56】
【0167】
【化57】
【0168】
【化58】
【0169】
前記o−ニトロベンジルオキシ基を有するケイ素化合物は、一般式(I−4)においてすでに説明したような一般式(SI−NB)で表される化合物である。ただしこの場合には、R45,R46,およびR47としては、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、アリールオキシ基またはシロキシ基が導入される。これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0170】
ハロゲン原子としては、例えば塩素原子および臭素原子を、炭素数1〜10の置換もしくは非置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、 tert-ブチル基、n−ペンチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基およびシアノメチル基が挙げられ、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基およびn−ブトキシ基が挙げられる。非置換もしくは置換アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基およびp−トリフルオロメチルフェニル基が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
【0171】
また、前記o−ニトロベンジルオキシ基を有するケイ素化合物は、o−ニトロベンジルオキシ基を末端基とし、主鎖が次式で表わされる基からなる化合物であってもよい。
【0172】
【化59】
【0173】
(式中、sは1以上の整数を表わし、R67およびR68は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、非置換もしくは置換アリール基、アリールオキシ基またはシロキシ基を表わし、X4 は酸素原子、アルキレン基またはアリールジイル基を表わす)
前記o−ニトロベンジルオキシ基を有するケイ素化合物の具体的な例としては、トリメチル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジメチルフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルメチル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビニルメチルフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、t−ブチルメチルフェニル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリエチル(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリ(2−クロロエチル)−o−ニトロベンジルオキシシラン、トリ(p−トリフルオロメチルフェニル−o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリメチル[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン、ジメチルフェニル[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン、メチルフェニルジ[α−(o−ニトロフェニル)−o−ニトロベンジルオキシ]シラン、トリフェニル(α−エチル−o−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリメチル(3−メチル−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジメチルフェニル(3,4,5−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリフェニル(4,5,6−トリメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルメチル(5−メチル−4−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリフェニル(4,5−ジメチル−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビニルメチルフェニル(4,5−ジクロロ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、トリフェニル(2,6−ジニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルメチル(2,4−ジニトロベンジルオキシ)シラン、トリフェニル(3−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビニルメチルフェニル(3,4−ジメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジメチルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、メチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ビニルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、t−ブチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジエチルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、2−クロロエチルフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルジ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルジ(3−メトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルジ(3,4−ジメトキシ−2−ニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルジ(2,6−ジニトロベンジルオキシ)シラン、ジフェニルジ(2,4−ジニトロベンジルオキシ)シラン、メチルトリ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、フェニルトリ(o−ニトロベンジルオキシ)シラン、p−ビス(o−ニトロベンジルオキシジメチルシリル)ベンゼン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ(o−ニトロベンジルオキシ)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−1,5−ジ(o−ニトロベンジルオキシ)トリシロキサン、およびSiCl含有シリコーン樹脂とo−ニトロベンジルアルコールとの反応により生成するケイ素化合物を挙げることができる。
【0174】
前記α−ケトシリル基を有するケイ素化合物は、一般式(I−4)においてすでに説明したような一般式(SI−KS)で表される化合物である。ただしこの場合には、前記一般式中のR53、R54およびR55としては、水素原子、ビニル基、アリル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アリール基またはアリルオキシ基が導入される。これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0175】
R53、R54およびR55に導入され得る炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基等としては、R56に導入され得る基として列挙したものが挙げられる。
【0176】
α−ケトシリル基を有するケイ素化合物の具体的な例としては、下記化学式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0177】
【化60】
【0178】
上述したような光照射によってシラノールを発生するケイ素化合物は、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられ、その配合量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して通常0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。配合量が0.001重量%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量%を越えて用いることは可能ではあるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくはない。
【0179】
用い得るフェノール化合物としては、例えば、下記一般式(Ph−1)で表されるものが挙げられる。
【0180】
【化61】
【0181】
(上記一般式(Ph−1)中、Ar2 は置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基を表わし、nは1〜10の整数である。)
前記一般式(Ph−1)において、Ar2 で表わされる置換もしくは非置換の芳香族基または複素芳香族基としては、前記一般式(I−1)〜(I−5)のR11〜R18に導入され得るとして列挙したような基を挙げることができる。これらの置換された芳香族基または複素芳香族基の置換基としては、炭素数が1以上の有機基を挙げることができ、複数存在する場合には、各々同一であっても異なっていてもよい。このような置換基の具体的な例としては、以下に示す有機基を挙げることができる。
【0182】
【化62】
【0183】
【化63】
【0184】
前記一般式(Ph−1)で表わされる化合物のより具体的な例としては、以下に示す化合物を挙げることができる。
【0185】
【化64】
【0186】
【化65】
【0187】
【化66】
【0188】
【化67】
【0189】
これらのフェノール化合物は、単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。
【0190】
本発明の第1の硬化触媒において上述したようなフェノール化合物を配合する場合には、その配合量は、樹脂に対して0.1〜50重量%程度とすることが好ましい。0.1重量%未満の場合には、硬化反応を十分に進行させることが困難となる。一方、50重量%を越えると、コスト高や硬化物の機械的強度が低下する傾向にある。
【0191】
ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物としては、炭素原子数1〜5個のアルコキシル基;フェノキシ基、トリルオキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基、ベンジルオキシ基、パラクロルフェノキシ基等のアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェニルアセトキシ基、ホルミルオキシ基等のアシロキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等の炭素原子数2〜12個のアルケニルオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;次式で表わされる基を有する有機ケイ素化合物を挙げることができる。
【0192】
【化68】
【0193】
(式中、R´およびR″は同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数1〜5個のアルキル基を表わす)
上述したようなケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物は、組成物中に1種もしくは2種以上が混合して用いられる。その配合量は、組成物中のエポキシ樹脂に対して、通常0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。配合量が0.001%未満である場合には、硬化が不十分になるおそれがある。また、20重量部を超えて用いることは可能であるが、コスト高や触媒成分の分解生成物が問題となる場合があり、好ましくない。
【0208】
次に、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は、上述したような本発明の硬化触媒とエポキシ樹脂とを含有する。
【0209】
以下、エポキシ樹脂を例に挙げて詳細に説明する。用いられ得るエポキシ樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、ノボラック化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのそれぞれの水酸基のオルト位にアリル基を有するジアリルビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらの化合物の中では、硬化物の柔軟性を維持するためにビスフェノールAを用いて得られたエポキシ樹脂が好ましい。さらには、分子量が300〜5000であり、エポキシ当量が150〜2500であるものが好ましい。
【0210】
また、この発明による樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂として、脂環式エポキシ化合物を用いることもできる。脂環式エポキシ化合物は、環が直接エポキシ化された脂環式化合物であり、例えば、次に示す構造式で表わされるものを挙げることができる。
【0211】
【化72】
【0212】
上記一般式中、Rは、アルキル基、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、またはスピロ環を含む有機基であり、2またはこれ以上のエポキシ化された環を結合する。また、nは1またはこれ以上の整数である。
【0213】
脂環式エポキシ化合物のより具体的な例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0214】
【化73】
【0215】
例えば、チッソノックス221(商品名、チッソ社)などとして市販されている。脂環式エポキシ化合物のエポキシ当量に特に制限はないが、硬化速度増進の観点からはエポキシ当量は200以下であることが好ましい。
【0216】
さらに、この発明による樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂として、分子内にエポキシ基と不飽和二重結合を有するエポキシ化合物を用いることもできる。このエポキシ化合物におけるエポキシ基としては、例えば、次式に示す基を挙げることができる。
【0217】
【化74】
【0218】
また、このエポキシ化合物における不飽和二重結合を有する基としては、例えば、次式で示される基を挙げることができる。
【0219】
【化75】
【0220】
【化76】
【0221】
このエポキシ化合物の一分子中に存在する前記エポキシ基および不飽和二重結合の数は、それぞれ1以上であれば幾つであってもよいが、2〜5個の範囲にあることが好ましい。また、エポキシ基および不飽和二重結合を有する基が複数存在する場合には、それらが必ずしも同一である必要はなく、2種以上が混在していてもよい。
【0222】
なお、前記エポキシ基および不飽和二重結合を有する基は、場合により、炭素原子に結合している水素原子が、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子または炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、 tert-ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびドデシル基等を挙げることができる。
【0223】
前記エポキシ基および不飽和二重結合を有するエポキシ化合物は、用途に応じて任意にその構造が選択される。所望の構造を有するエポキシ化合物は、例えば、不飽和カルボン酸と通常のエポキシ化合物とを、塩化コリン等の触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0224】
ここで使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸およびこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシ化合物としては、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するものであればいかなるものでもよく、一官能性エポキシ化合物および多官能性エポキシ化合物のいずれであってもよい。
【0225】
前記一官能性エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0226】
また、前記多官能性エポキシ化合物は、一般にエポキシ樹脂として知られているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ等の含複素環エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;プロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール−ポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂;芳香族、脂肪族もしくは脂環式のカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;o−アリル−フェノールノボラック化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ビスフェノールAのそれぞれの水酸基の0−位にアリル基を有するジアリルビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0227】
前記エポキシ基および不飽和二重結合を有するエポキシ化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物を挙げることができる。
【0228】
【化77】
【0229】
【化78】
【0230】
【化79】
【0231】
並びに、上記式中のアクリル基:−COOCH=CH2 が、
メタクリル基:−COOC(CH3 )=CH2 に変換されている化合物。
【0232】
本発明による樹脂組成物には、さらに、メタクリル樹脂、アクリル樹脂などの不飽和二重結合を有する化合物を目的に応じて任意に配合することができる。また、高温での機械的強度を増加させるために、マレイミド類を配合することもできる。このようなマレイミド類としては、下記一般式
【0233】
【化80】
【0234】
(式中、Xはアルキレン基、シクロアルキレン基、単環式もしくは多環式のアリレーン基のような2価の炭化水素基、または−CH2 −、−CO−、−SO2 −もしくは−CONH−のような2価の原子団によって結合された2価の炭化水素基である)
で表わされる N,N’−置換ビスマレイミド、または下記一般式
【0235】
【化81】
【0236】
(式中、nは1〜5)
で表わされるポリ(フェニルメチレン)ポリマレイミドを挙げることができる。より具体的には、例えば、N,N’−フェニレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−オキシ−ジ−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’−p−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチル)メチレン−ジ−p−フェニレンビスマレイミド、ポリ(フェニルメチレン)ポリマレイミド、2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン−N,N’−ビスマレイミド、ビス(4−フェノキシフェニル)スルホン−N,N’−ビスマレイミド、1,4−ビス(4−フェノキシ)ベンゼン−N,N’−ビスマレイミド、1,3−ビス(4−フェノキシ)ベンゼン−N,N’−ビスマレイミド、1,3−ビス(3−フェノキシ)ベンゼン−N,N’−ビスマレイミドを挙げることができる。
【0237】
マレイミド類は、エポキシ樹脂等の樹脂に対して1〜70重量%の範囲で配合することが好ましい。配合量が70重量%を越えると、硬化物が脆くなって硬化特性が劣化する傾向にあり、1重量%未満ではマレイミドを配合した効果が十分発揮されない。
【0238】
この発明による樹脂組成物には、目的に応じて無機充填剤を添加することもできる。用いることができる無機充填剤は、一般に樹脂と複合可能であるものであれば特に限定されず、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウムを挙げることができる。
【0239】
また、無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体中40〜90体積%の範囲にあることが好ましい。配合割合が40体積%未満では熱膨張率が大きくなって熱応力が高くなり、90体積%を越えると樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。
【0240】
本発明の樹脂組成物は、光増感剤を配合して硬化をさらに促進することもできる。光増感剤は、前記化合物の光増感が可能なものであれば特に限定されず、使用する化合物の種類や光源等に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、芳香族炭化水素およびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステルおよびその誘導体、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾイン並びにベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素含有化合物並びにアミン類を光増感剤として用いることができる。
【0241】
より具体的には、芳香族炭化水素およびその誘導体の例として、ベンゼン、ベンゼン−d6、トルエン、p−キシレン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、ビフェニル、フルオレン、p−テルフェニル、アセナフテン、p−クアテルフェニル、トリフェニレン、フェナントレン、アズレン、フルオランテン、クリセン、ピレン、1,2−ベンズピレン、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、9.10−ジブロモアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ペリレン、テトラセンおよびペンタセンを挙げることができる。
【0242】
ベンゾフェノンおよびその誘導体の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジメチルベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンを挙げることができる。
【0243】
o−ベンゾイル安息香酸エステルおよびその誘導体の例としては、o−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、o−ベンゾイル安息香酸エチルエステル、o−ベンゾイル安息香酸フェニルエステルおよび下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0244】
【化82】
【0245】
アセトフェノンおよびその誘導体の例としては、アセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−メチルアセトフェノンおよび3−メトキシアセトフェノンを挙げることができる。
【0246】
ベンゾイン並びにベンゾインエーテルおよびその誘導体の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾイントリフェニルシリルエーテルおよび下記化学式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0247】
【化83】
【0248】
キサントンおよびその誘導体の例としては、キサントン、2,4−ジメチルキサントンおよび2,4−ジクロロキサントンを挙げることができる。
【0249】
チオキサントンおよびその誘導体の例としては、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントンおよび2,4−ジクロロチオキサントンを挙げることができる。
【0250】
ジスルフィド化合物の例としては、下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0251】
【化84】
【0252】
(ここで、Etはエチル基を表わし、以下、同様に略記する)
キノン系化合物の例としては、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、5,12−ナフタセンジオンおよび2,7−ピレンジオンを挙げることができる。
【0253】
ハロゲン化炭化水素含有化合物の例としては、四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、四臭化炭素および下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0254】
【化85】
【0255】
【化86】
【0256】
アミン類の例としては、ジフェニルアミン、カルバゾール、トリフェニルアミンおよび下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0257】
【化87】
【0258】
さらに、上記以外の光増感剤の具体例として、プロピオフェノン、アントロン、ベンズアルデヒド、ブチロフェノン、2−ナフチルフェニルケトン、2−ナフトアルデヒド、2−アセトナフトン、1−ナフチルフェニルケトン、1−アセトナフトン、1−ナフトアルデヒド、フルオレノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、ベンズニトリル、アセトン、ビアセチル、アクリジンオレンジ、アクリジン、ローダミンB、エオシン、フルオレセインおよび下記式で表わされる化合物を挙げることができる。
【0259】
【化88】
【0260】
これらの光増感剤は、1種もしくは2種以上で使用することが可能であり、その配合量は、樹脂に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。配合量が0.001重量%未満である場合には、光増感剤を添加した効果が十分に発揮されず、10重量%を越えると硬化物の機械的強度が低下する傾向にある。
【0261】
なお、本発明の樹脂組成物においては、酸無水物、フェノール類、芳香族アミン化合物、およびシアネートエステル化合物等の硬化剤がさらに配合され得る。
【0262】
硬化剤として用いることができる酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、クロレンディック酸無水物、ドデシル無水コハク酸、メチル無水コハク酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、および無水マレイン酸を挙げることができる。
【0263】
これらの酸無水物の配合量は、その当量がエポキシ樹脂の当量の0.1倍ないし1.1倍に相当する量であることが好ましい。酸無水物の当量が1.1倍を越えると、未反応の酸無水物が系中に取り残されて硬化物の特性を低下させるおそれがあり、0.1倍未満である場合には、酸無水物を添加した効果が十分に発揮されない。
【0264】
また、硬化剤として用いることができるフェノール類の具体例としては、例えば、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、およびポリビニルフェノールを挙げることができる。
【0265】
これらフェノール類の配合量は、その当量がエポキシ樹脂の当量の0.1倍ないし1.1倍に相当する量であることが好ましい。フェノール類の当量が1.1倍を越えると、未反応のフェノール類が系中に取り残されて硬化物の特性を低下させるおそれがあり、0.1倍未満である場合には、フェノール類を添加した効果が十分に発揮されない。
【0266】
さらに、硬化剤として用いることができる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−キシリレンジアミン、1,1−ビス(p−アミノフェニル)フラタン、p−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ジピリジル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,5−ビス(m−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(m−アミノフェニル)チアゾロ(4,5−d)チアゾール、5,5’−ジ(m−アミノフェニル)−2,2’−ビス(1,3,4−オキサジアゾリル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(p−アミノフェニル)−2,2’−ジチアゾール、m−ビス(4−p−アミノフェニル−2−チアゾリル)ベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、N,N’−ビス(4−アミノベンジル)−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを挙げることができる。
【0267】
これらの芳香族アミン化合物の配合量は、その当量がエポキシ当量の0.1倍ないし1.1倍に相当する量であることが好ましい。アミン化合物の当量が1.1倍を越えると、未反応のアミン化合物が系中に取り残されて硬化物の特性が低下するおそれがあり、0.1倍未満である場合には、アミン化合物を添加した効果が十分に発揮されない。
【0268】
硬化剤として用いることができるシアネートエステル化合物としては、フェノールノボラックシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、エチリデンビス−4,4−フェニレンジシアネート、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、テトラフルオロメチルビスフェノールFジシアネート、テトラオルトメチルビスフェノールAジシアネート等を挙げることができる。また、これらのシアネートエステル化合物から誘導されるシアネート基が50%以下重合したシアネートエステルからなる群から選択された少なくとも1種のシアネートエステル化合物類も使用できる。
【0269】
シアネートエステル化合物が、エチリデン−4,4−フェニレンジシアネートおよび該シアネートエステル化合物から誘導されるシアネート基が50%以下重合したシアネートエステルは常温で液状であるために、低粘度の硬化剤として好適に用いることができる。したがって、液状エポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
【0270】
シアネートエステル化合物の配合量は、液状エポキシ樹脂とシアネートエステル化合物との合計量に対して、0.30〜0.70であることが望ましい。シアン酸エステル基は、加熱すると単独では3量化してトリアジン環を形成し、耐熱性に優れた硬化物を与えるものの、金属やプリント配線基板等への接着性が充分でなく、また高温高湿下での吸水率が大きく耐湿性も充分でなかった。このような欠点は、エポキシ樹脂と組み合わせて硬化させることにより改善させることができる。シアネートエステル化合物の配合割合が0.70を越えるとガラス転移温度に代表される耐熱性が低下し、冷熱サイクルテストでの信頼性が低下するので好ましくなく、一方、0.30未満の場合には金属、有機基板への接着性が低下するとともに、PCT試験での耐湿信頼性が低下するので好ましくない。
【0271】
本発明の樹脂組成物は、加熱処理や放射線照射によって重合硬化させることができ、場合によっては、加熱と放射線照射とを併用することも可能である。また、重合時には、必要に応じて溶媒を用いることもできる。
【0272】
特に本発明による樹脂組成物が、前記光照射により酸や酸性物質を発生する化合物あるいは光増感剤など、光の照射により硬化を促進する化合物を含有する場合には、樹脂組成物を硬化する際に放射線を照射する。この放射線の波長は含有される化合物や組成物の組成によって異なるが、通常180〜700nmであり、とりわけ波長250〜400nmの紫外線が最も効率よい。
【0273】
また、光源としては、通常光硬化用に使用されているものであればいかなるものでもよく、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハロゲンランプ、キセノン−水銀ランプ、キセノンランプ、水素放電管、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウム放電管、ネオン放電管、アルゴン放電管、He−Neレーザー、Arイオンレーザー、N2 レーザー、Cdイオンレーザー、He−Cdレーザーおよび色素レーザーを挙げることができる。さらに、電子線を照射することによっても本発明の樹脂組成物を重合、硬化させることができる。硬化の際には、これらの光源からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上が適宜使用される。
【0274】
この発明による硬化触媒は、通常60ないし250℃で活性化する。したがって、この硬化触媒を含有するこの発明による樹脂組成物の硬化は、上記温度範囲で数分から数時間かけて行なわれる。
【0275】
本発明の樹脂組成物は、樹脂中において加熱により均一に溶解し、さらに冷却過程において析出するという特性を有する硬化触媒が配合されている。本発明の硬化触媒は、室温においては、活性部位が遮蔽された状態にあるので触媒活性は発現しない。
【0276】
例えば、有機金属化合物と特定のオルガノシラン等とを含有する第1の硬化触媒が配合されたエポキシ樹脂組成物が硬化する際には、まず、有機金属化合物が熱により上述したような形態が崩れて、エポキシ樹脂に完全に溶解する。こうして活性部位が出現し、次いで、特定のオルガノシラン等の化合物やフェノール化合物と相互作用することによりエポキシ基が重合する。
【0277】
また、第1のカチオン重合触媒を配合してなるエポキシ樹脂組成物の場合は、熱により上述したような形態が崩れてエポキシ樹脂に完全に溶解する。次いで、150℃付近でカチオン重合触媒からプロトンなどのカチオン種が発生してエポキシ基の重合が開始される。
【0279】
このように本発明の硬化触媒は、いずれも、室温温度では活性部位が遮断されている状態なので触媒活性は発現せず、反応は全く進行しない。しかしながら、熱によりいったん溶解すると、反応は速やかに進行する。このため、前述の硬化触媒には潜在性が生じる。したがって、本発明の硬化触媒は高い保存安定性と優れた硬化特性とを兼ね備えている。すなわち、本発明による硬化触媒は、室温程度での樹脂組成物の保存安定性を高めて長期間の保存を可能とし、かつ樹脂の電気絶縁性を劣化させることがない。
【0280】
また、かかる硬化触媒を含有する本発明の樹脂組成物は、高い保存安定性、優れた硬化特性に加えて、硬化後の電気絶縁性および機械的強度に優れるという特性を有している。
【0281】
また、カチオン重合性ビニル化合物を含有する組成物においては、従来困難であったモノマーと触媒との一液化保存、さらには室温以上でのカチオン重合反応を可能にし、かつ、簡単な加熱で実用性のある重合度の高い重合体を得ることが可能になった。
【0282】
なお、本発明の樹脂組成物において液状のエポキシ樹脂を用い、硬化触媒としては、前記一般式(II−1)〜(II−3)で表される有機金属化合物と特定のオルガノシランやフェノール化合物等とを含有する硬化触媒を配合した場合には、樹脂封止型半導体装置の製造に好適に使用し得る液状エポキシ樹脂組成物が得られる。すなわち、前記一般式(II−1)〜(II−3)で表される有機金属化合物と、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサンおよびフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物とを含む硬化触媒を含有する液状エポキシ樹脂組成物である。各成分の配合量等は、すでに説明したとおりである。
【0283】
さらに、この液状エポキシ樹脂組成物には無機充填剤が必須成分として配合される。また、上述したような硬化剤を配合して液状エポキシ樹脂組成物を調製することもできるが、酸無水物を用いることが最も好ましい。
【0284】
無機充填剤としては、得られる液状エポキシ樹脂組成物の粘性、流動性、充填性を充分考慮した無機充填剤であれば、いずれのものであってもよく特に限定されるものではない。
【0285】
従って、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、雲母、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、およびその他のものを使用することができ、またこれらのものは1種または2種(同種または異種を問わない)以上混合して使用することができる。特に、溶融シリカ、結晶性シリカが好ましい。
【0286】
無機充填剤の形状としては、破砕状、球状、亜球状、繊維状、鱗ペン状、およびその他の形状のものを使用することができ、これらの形状は1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0287】
これらのうち、特に液状エポキシ樹脂組成物の細部間隙への充填性を考慮して、平均粒径10μm以下であって、球状、亜球状の充填剤が特に好ましい。
【0288】
なお、耐クラック性の補強効果を狙って、繊維状のものも使用することができる。
【0289】
繊維状の無機充填剤としては、チタニア、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネシア、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、α−アルミナ、クリソタイル、ワラストナイト、およびその他のウィスカー類、Eガラス繊維、シリカアルミナ繊維、シリカガラス繊維、およびその他の非晶質繊維、炭化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、γ−アルミナ繊維、α−アルミナ繊維、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、およびその他の結晶性繊維、およびその他の繊維を使用することができる。これらの繊維は、1種または2種(同種または異種を問わない)以上混合して使用することが可能である。上述した無機充填剤のなかでも、酸性あるいは中性のものが好ましく使用される。
【0290】
繊維状無機充填剤としては、平均繊維径5μm以下、最大繊維長10μm以下のものが細部への充填性の点で好ましい。
【0291】
無機充填剤は、液状エポキシ樹脂組成物の総量に対して30重量%以上80重量%以下の範囲で使用することができる。無機充填剤の配合量が30重量%未満では硬化物の熱膨張率が大きくなって耐熱衝撃性が不十分となる。一方、80重量%を越えると、樹脂封止用エポキシ樹脂組成物の流動性が不十分となり間隙への充填性が低下して、未充填などの発生原因となる。
【0292】
上述したように、本発明において使用され得る無機充填剤には、その他の無機充填剤を併用することができるが、液状エポキシ樹脂組成物の流動性や貯蔵安定性、半導体素子と基板との間の間隙への充填性を損なわないように、その配合量等を決定することが望まれる。
【0293】
上述した成分に加えて、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、さらに以下に示すような任意の成分を配合させてもよい。
【0294】
(1)熱可塑性樹脂、ゴム成分、各種オリゴマー、およびその他のもの
耐クラック性を向上させるために、本発明の液状エポキシ樹脂組成物の弾性率を下げる目的などで添加されるものである。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム、およびその他のものがある。
【0295】
(2)各種プラスチック粉末、例えば各種エンジニアリングプラスチック粉末およびその他のもの
低応力性を付与するために添加されるものである。低応力性を付与する上記成分の最大粒径は、10μm以下で、好ましくは、5μm以下である。本発明の液状エポキシ樹脂組成物中の各成分の粒子サイズより大きい場合には、充填時に未充填が発生してしまう。
【0296】
(3)さらに必要に応じて、シランカップリング剤、およびその他のフィラー表面処理剤、接着性付与剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸やその金属塩、酸アミド類、パラフィン類、およびその他の離型剤、カーボンブラック、二酸化チタン、およびその他の顔料、ハロゲン化合物、リン化合物、およびその他の難燃化剤、三酸化アンチモン、およびその他の難燃化剤、シリコーン化合物、有機ゴム、およびその他の低応力付与剤、ハイドロタルサイト類、およびその他のイオン捕捉剤、石油樹脂、ロジン、テルペン、インデン樹脂、およびその他の粘着性付与剤、およびその他の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0297】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、所定の原料を用いて通常よく知られている方法により製造することができる。
より具体的には、本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、原料である各成分を所定量用意して、万能混合機、同芯二軸ミキサーなどの混合機に供給して混合撹拌する方法、あるいは予め混合させた後、さらに三本ロール、ボールミル、らいかい機、ホモジナイザーを用いてフィラー成分と樹脂成分とを均一に混合する方法、およびこれらの方法の一種または二種以上を組み合わせて使用することによって得ることができる。
【0298】
得られる本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、60℃における粘度が200ポイズ以下が好ましく、100ポイズ以下であることが特に好ましい。
【0299】
200ポイズを越えると、フリップ・チップ接続されたチップと基板との間の間隙への充填性が悪くなって、半導体装置の成形性が低下するおそれがある。
【0300】
なお、得られた本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、半導体素子の樹脂封止用の組成物として使用されるだけでなく、他の用途においても使用することができるものである。
【0301】
典型的には、精密電子部品、精密電気部品、自動車部品、航空宇宙材料、摺動材料、耐熱積層板、マウント剤、注型材料分野、耐熱接着剤、耐熱塗料、およびその他の分野においても使用することが可能である。
【0302】
上述したように製造された本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、半導体樹脂封止用の機械の一部であるディスペンサーに充填され、BGA、CSP、COG、およびCORやマルチ・チップ・モジュール、およびその他のもの、フリップ・チップ接続によってチップ半導体素子を基板上に接続してなる半導体装置の樹脂封止用に有効に使用される。
【0303】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、典型的には、上記のようにフリップ・チップ接続されたチップと基板との間の間隙にディスペンサーに充填されている液状エポキシ樹脂組成物を一定量吐出させて充填した後、約120〜180℃の温度で約0.5〜10時間加熱して硬化させるなどの一般的な樹脂封止法によって、容易に製造することができる。
【0304】
なお、本発明の液状エポキシ樹脂組成物によって樹脂封止される半導体素子(チップ)は、例えば、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、IC、LSI、超LSI、CCD、RAM、DRAM、ROM、およびその他の素子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0305】
さらに、本発明による樹脂封止型半導体装置は、パソコン、電子演算機、制御機械、液晶ディスプレイ、カード、電卓、時計、電子体温計、テープレコーダ、VTR、小型およびその他のものの機械、電子機器、家電製品、およびその他のものの製造に用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。本発明の樹脂組成物が光透過性を有する場合には、これを用いてLEDデバイス等の光半導体装置を製造することもできる。
【0306】
本発明の樹脂組成物は、半導体素子封止用以外の種々の用途にも応用することが可能である。具体的には、電気絶縁材料、接着剤、プリント基板、積層板、塗料として、さらには金属表面や木製品、ゴムやプラスチック等の表面のコーティング材等として、本発明の樹脂組成物を好ましく使用することができる。
【0307】
【発明の実施の形態】
例I
例(I−1〜I−30)
下記表1ないし表3に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物を、同じく表1ないし表3に示す配合量で混合することにより調製した。なお、表中の配合量は重量部で示されており、後続の表においても同様である。
【0308】
得られた各組成物について、ゲル化時間(例I−1〜I−30のいずれも150℃)、室温での保存安定性、および硬化後の機械的強度を測定した。この際、室温での保存安定性としては組成物の粘度が2倍になるまでの時間を測定し、硬化後の機械的強度としては室温における曲げ強度を測定した。さらに、曲げ強度の測定は、例I−1〜I−6では120℃1時間、150℃1時間、例I−7〜I−12およびI−30では80℃1時間、150℃1時間、例I−13〜I−16、I−21〜I−24では200℃、2時間硬化物を、例I−7〜I−12,I−17〜I−20,I−25〜I−28では200℃、20分硬化物を、例I−29では120℃1時間、150℃1時間を、それぞれ用いて行なった。結果を下記表4にまとめる。
【0309】
なお、以下略称で示される各成分の詳細は以下の通りである。
【0310】
EP1:エピコート 828 エピビスタイプエポキシ樹脂油化シェル社製、エポキシ当量190〜210
EP2:セロキサイド2021 脂環式エポキシ樹脂ダイセル化学工業社製、エポキシ当量145
【0311】
【化89】
【0312】
【化90】
【0313】
【化91】
【0314】
【化92】
【0315】
【表1】
【0316】
【表2】
【0317】
【表3】
【0318】
【表4】
【0319】
比較例I−1〜I−8
下記表5に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物を、同じく表5に示す配合量で混合することにより調製した。ここで、化合物A6、A7、B2、B4、C2およびC3は、長い置換基を有さない化合物であり、加熱、冷却により可逆的に溶解と析出とを行うことができない。
【0320】
【表5】
【0321】
得られた各組成物について、ゲル化時間(比較例I−1〜I−4では150℃、比較例I−5〜I−8では150℃)、室温での保存安定性、および硬化後の機械的強度を測定した。この際、室温での保存安定性としては組成物の粘度が2倍になるまでの時間を測定し、硬化後の機械的強度としては室温における曲げ強度を測定した。さらに、曲げ強度の測定は、比較例I−1,I−2では120℃1時間、150℃1時間、比較例I−3,I−4では80℃1時間、150℃1時間、比較例I−5,I−7では200℃、2時間硬化物を、比較例I−6,I−8では200℃、20分の硬化物をそれぞれ用いて行った。得られた結果を下記表6にまとめる。
【0322】
【表6】
【0323】
表4および表6に示される結果から明らかなように、(例I−1〜I−30)のエポキシ樹脂組成物は、高温で速やかに硬化する硬化特性はそのままに、室温では12ヶ月以上と従来のエポキシ樹脂組成物(比較例I−1〜I−8)をはるかに凌ぐ高い保存安定性を有している。
【0324】
さらに(例I−1〜I−30)のエポキシ樹脂組成物は、硬化後も良好な機械的強度を示している。
【0325】
例I−31
EP1 100g、酸無水物硬化剤として下記化学式で表わされる化合物(AA1)80g、B1 5gおよびC1 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0326】
【化93】
【0327】
その結果、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。また、組成物を室温で1ヶ月放置しても、粘度の上昇は初期値の2倍程度であった。
【0328】
比較例I−9
硬化触媒B1をB2に変更した以外は、上述の例I−31と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の曲げ強度および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0329】
その結果、曲げ強度は14kg/mm2 であった。また、組成物を室温で1ヶ月後放置したところ、粘度は初期値の10倍以上に上昇していた。
【0330】
例I−32
EP1 100g、酸無水物硬化剤として前記化学式で表される化合物(AA1)80g、およびC1 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の曲げ強度および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0331】
その結果、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。組成物を室温で1週間放置しても、粘度の上昇は初期値の2倍程度であった。
【0332】
比較例I−10
硬化触媒C1をC2に変更した以外は、上述の例I−32と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0333】
その結果、曲げ強度は14kg/mm2 であった。この組成物を室温で一ヶ月放置したところ、粘度は初期値の10倍以上に上昇していた。
【0334】
例I−33
EP1 100g、芳香族アミン硬化剤として下記化学式で表される化合物(DAM)20gおよびC1 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0335】
【化94】
【0336】
その結果、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。組成物を室温で1週間放置しても、粘度の上昇は初期値の2倍程度であった。
【0337】
比較例I−11硬化触媒C1をC2に変更した以外は、上述の例I−33と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0338】
その結果、曲げ強度は14kg/mm2 であった。この組成物を室温で放置したところ、1週間後にはゲル化していた。
【0339】
例I−34
EP1 100g、芳香族アミン硬化剤として前記化学式で表される化合物(DAM)20g、B1 5gおよびC1 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0340】
その結果、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。組成物を室温で1週間放置しても、粘度の上昇は初期値の2倍程度であった。
【0341】
比較例I−12
硬化触媒C1をC2に、B1をB2に変更した以外は、上述の例I−34と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の曲げ強度および組成物の保存安定性を測定した。
【0342】
その結果、曲げ強度は14kg/mm2 であった。この組成物を室温で放置したところ、1週間後にはゲル化していた。
【0343】
以上の結果から明らかなように、本発明の硬化触媒を用いることにより、機械的強度を損なうことなくエポキシ樹脂組成物の保存安定性を大幅に向上させることができた。
【0344】
例I−35
硬化触媒としての化合物A2 1gをEP1 100gに加えて混合物を調製し、厚さ0.5mmの板上に塗布した。これを60℃で加熱した後、紫外線ランプ(80W/cm高圧水銀灯)を10cmの距離から2分間照射した。照射後、樹脂は完全にゲル化した。
【0345】
また、この混合物は、室温で6ヶ月放置した際にも増粘は確認されなかった。
【0346】
比較例I−13
硬化触媒をA6に変更した以外は、上述の例I−35と同様にして混合物を調製した。これに紫外線ランプ(80W/cm高圧水銀灯)を10cmの距離から2分間照射したところ、照射後には樹脂は完全にゲル化した。
【0347】
また、この混合物は室温で1ヶ月放置したところ、粘度は初期値の10倍以上に増加していた。
【0348】
例II
例II−1〜II−24
下記表7および表8に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物を、同じく表7おおよび表8に示す配合量で混合することにより調製した。なお、表中の配合量は重量部で示されており、後続の表においても同様である。得られた各組成物について、150℃でのゲル化時間、室温での保存安定性、硬化後の機械的強度並びに硬化後の電気絶縁性を測定した。この際、室温での保存安定性としては組成物の粘度が2倍になるまでの時間を測定し、硬化後の機械的強度としては室温における曲げ強度を測定した。さらに、体積抵抗率および曲げ強度の測定は、例II−1〜II−12では200℃、2時間硬化物を、例II−13〜II−24では200℃、20分硬化物をそれぞれ用いて行なった。結果を下記表9にまとめる。
【0349】
なお、以下略称で示される各成分の詳細は以下の通りである。
【0350】
【化95】
【0351】
【化96】
【0352】
【化97】
【0353】
【化98】
【0354】
なお、EP1およびEP2は、前述の例Iで用いたものと同様のエポキシ樹脂である。
【0355】
【表7】
【0356】
【表8】
【0357】
【表9】
【0358】
比較例II−1〜II−3
下記表10に示す組成を有するエポキシ樹脂組成物を、同じく表10に示す配合量で混合することにより調製した。ここで、化合物Al5、Al6およびAl7は、側鎖の短い配位子を有するものである。
【0359】
【表10】
【0360】
得られた各組成物について、例II−1〜II−24と同様の方法で200℃でのゲル化時間と室温での保存安定性を測定した。結果を下記表11に示す。
【0361】
【表11】
【0362】
表9および表11から明らかなように、(例 II −1〜 II −24)のエポキシ樹脂組成物は、高温で速やかに硬化する硬化特性はそのままに、室温では従来のエポキシ樹脂組成物(比較例II−1〜II−3)をはるかに凌ぐ高い保存安定性を有している。中心金属がアルミニウムであるAl1〜Al4を用いた場合、さらに水酸基を有する化合物としてフェノール化合物を用いた場合には、特に高い保存安定性を有している。
【0363】
また、(例 II −1〜 II −24)のエポキシ樹脂組成物は、硬化後も良好な機械的強度および電気絶縁性を示す。
【0364】
例II−25
EP1 100g、酸無水物硬化剤として前記化学式で表わされる化合物(AA1) 80g、OH1 5gおよびAl1 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性および曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0365】
その結果、200℃での体積抵抗率は8×1011Ω・cmであり、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。また、組成物を室温で1ヶ月放置しても、粘度上昇は初期値の2倍程度であった。
【0366】
比較例II−4
硬化触媒をAl5に変更した以外は、上述の例II−25と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の電気絶縁性および曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0367】
その結果、200℃での体積抵抗率は8×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。また、組成物を室温で1ヶ月後放置したところ、粘度は初期値の10倍以上に上昇していた。
【0368】
例II−26
EP1 100g、OH1 5g、芳香族アミン硬化剤として前記化学式で表される化合物(DAM)20gおよびAl2 2gを混合して組成物を調製し、この組成物を200℃で2時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性および曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0369】
その結果、200℃での体積抵抗率は8×1011Ω・cmであり、曲げ強度は室温で14kg/mm2 であった。組成物を室温で1週間放置しても、粘度上昇は初期値の2倍程度であった。
【0370】
比較例II−5
硬化触媒をAl5に変更した以外は、上述の例II−26と同様にして組成物を調製し、得られた硬化物の電気絶縁性および曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0371】
その結果、200℃での体積抵抗率は8×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。この組成物を室温で放置したところ、1週間後にはゲル化していた。
【0372】
例II−27
Ep1 100g、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、BGR−556、OH当量103)51gおよびP1 1gを混合して組成物を調製し、この組成物を180℃で8時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性、曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0373】
その結果、200℃での体積抵抗率は7×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。また、この組成物は室温で1ヶ月放置しても、粘度の上昇は2倍程度であった。
【0374】
比較例II−6
Ep1 100g、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、BGR−556、OH当量103)51gおよびP2 1gを混合して組成物を調製し、この組成物を180℃で8時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性、曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0375】
その結果、200℃での体積抵抗率は7×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。しかしながら、組成物を室温で1ヶ月放置したところ、ゲル化していた。
【0376】
以上の結果から明らかなように、本発明の硬化触媒を用いることにより、電気特性と機械的強度とを損なうことなく、エポキシ樹脂組成物の保存安定性を大幅に向上させることができた。
【0377】
例II−28
Ep1 100g、酸無水物硬化剤としてAA1 100gおよびN1 0.3gを混合して組成物を調製し、この組成物を150℃で4時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性、曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0378】
その結果、200℃での体積抵抗率は7×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。また、組成物を室温で1ヶ月放置しても、粘度の上昇は2倍程度であった。また、JISK−6911−1970に準拠して、硬化物と未硬化樹脂とのそれぞれの比重により収縮率を求めたところ、0.1%であった。
【0379】
比較例II−7
Ep1 100g、酸無水物硬化剤としてAA1 100gおよびN2 0.3gを混合して組成物を調製し、この組成物を150℃で4時間加熱して硬化物を作製した。得られた硬化物の電気絶縁性、曲げ強度、および組成物の貯蔵安定性を測定した。
【0380】
その結果、200℃での体積抵抗率は7×1011Ωcmであり、曲げ強度は14kg/mm2 であった。しかしながら、組成物を室温で1ヶ月放置したところ、粘度の上昇は4倍であった。さらに、前述と同様にして収縮率を測定したところ、0.25%であった。
【0381】
以上の結果から明らかなように、本発明の硬化触媒を用いることにより、電気特性と機械的強度とを損なうことなく、エポキシ樹脂組成物の保存安定性を大幅に向上させることができた。さらに、成形体の収縮率を低減することができるので、寸法安定性に優れた樹脂組成物を与えることができた。
【0382】
例 III
本例においては、液状エポキシ樹脂組成物を調製し、これを用いて半導体素子を封止して樹脂封止型半導体装置を製造して、その特性を調べた。
【0383】
まず、液状エポキシ樹脂組成物の調製に用いる成分を以下に示す。
【0384】
【0385】
【化99】
【0386】
NN1:マイクロカプセル(イミダゾール系、旭化成社製、HX−3088,反応開始温度87℃)
NN2:三フッ化ホウ素モノエチルアミン塩(東京化成社製)
BS:ブレンステッド酸の脂肪族スルホニウム塩(旭電化工業社製、オプトンCP−66)
PN1:MEH−8005 フェノールノボラック樹脂水酸基当量 135,粘度47.4ポイズ(25℃)
AN:MH−700 酸無水物酸無水物当量166,粘度0.62ポイズ(25℃)
F1:球状シリカ、平均粒径3.3μm、最大粒径15μm
F2:球状シリカ、平均粒径1.5μm、最大粒径5μm
なお、OH1,OH3,およびAl1は、前述の例IIで用いたものと同様の化合物である。
【0387】
下記表12ないし表15に示す組成にしたがって上記各成分を配合し、万能混合機により充分混合した後、三本ロールを用いて10分間混練(回転数100rpm、室温)して、例 III−1〜 III−15、および比較例 III−1〜 III−10の液状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0388】
【表12】
【0389】
【表13】
【0390】
【表14】
【0391】
【表15】
【0392】
得られた例 III−1〜 III−15、および比較例 III−1〜 III−10のエポキシ樹脂組成物について下記の特性について測定し、その結果を下記表16ないし23にまとめる。
【0393】
なお、粘度以外の他の特性測定においては、例 III−1〜 III−3, III−7, III−9, III−11, III−15および比較例 III−1〜 III−3, III−7, III−9では150℃で15時間の熱処理を行ってエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより試験片を得、例 III−4〜 III−6, III−8および比較例 III−4〜 III−6では150℃で2時間の熱処理を行ってエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより試験片を得た。また、例 III−10, III−12および比較例 III−8, III−10では、120℃で2時間、150℃で8時間、例 III−13,III−14では、120℃1時間、150℃2時間の熱処理を行ってエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより試験片を得た。各特性は、それぞれ以下のようにして測定した。
【0394】
粘度:東機産業社製のE型粘度計を用いて、温度25℃で測定した。
【0395】
ガラス転移温度および熱膨張率:
セイコー電子社製のTMAを用いて、試験片を測定した。
【0396】
曲げ強度および曲げ弾性率:
JIS K−6911の手法に従い、試験片を測定した。
【0397】
貯蔵安定性:
上記液状エポキシ樹脂組成物について、製造直後の粘度と1ヶ月経過後の粘度とを測定して、製造直後に対する1ヶ月後の粘度増加倍率を算出した。なお、保存温度は30℃であり、粘度測定はともに東機産業社製のE型粘度計を用いて、回転数6rpm、温度25℃で測定した。
【0398】
また、プラスチック基板とチップとをバンプ接続(ハンダバンプを100個)させてテスト用半導体素子(12mm×12mmチップ)を得た。このテスト用半導体素子において、プラスチック基板とチップとの間の間隙は50μmであった。上記例 III−1〜 III−15、比較例 III−1〜 III−10の各液状エポキシ樹脂組成物をディスペンサーに供給して、このテスト用半導体素子の間隙に液状エポキシ樹脂組成物を一定量吐出させることにより樹脂封止した。この際、基板温度は80℃とした。
【0399】
完全に樹脂封止した後に、試験片を得たのと同様の熱処理時間でそれぞれを硬化させた。硬化処理後、得られた樹脂封止型半導体装置について、下記条件下でイニシャル不良チェックを行った後、冷熱サイクルテスト、耐湿信頼性テストを実施して、その結果を下記表16〜23にまとめる。
【0400】
【表16】
【0401】
【表17】
【0402】
【表18】
【0403】
【表19】
【0404】
【表20】
【0405】
【表21】
【0406】
【表22】
【0407】
【表23】
【0408】
なお、イニシャル不良チェックは、半導体素子を基板に実装した後、冷熱サイクルテスト、耐湿信頼性評価を行う前にするものであって、デバイスのオープン不良チェックと動作チェックとを調べるものである。
【0409】
耐熱衝撃性は、得られた樹脂封止型半導体装置について、冷熱サイクル試験(TCT試験)を行って評価した。この試験は、得られた樹脂封止型半導体装置を、−65℃で30分間冷却した後、室温で5分間放置し、さらに150℃で30分間加熱するという冷熱サイクルを繰り返して行った後、デバイスの動作チェックを行って不良発生率を調べるものである。
【0410】
耐湿信頼性は、得られた樹脂封止型半導体装置について、プレッシャークッカー試験(PCT試験)を行って評価した。この試験は、得られた樹脂封止型半導体装置を、121℃、2気圧の飽和水蒸気雰囲気中に放置して不良発生率を調べることにより行った。
【0411】
さらに、図1に示すようにガラスバンプを有したガラスチップを用いて、ガラスバンプの先端にエポキシ樹脂系の接着剤を塗布してガラス基板に圧着固定し、テスト用ガラス製半導体素子(12mm×12mmチップ)を作製した。得られたテスト用ガラス製半導体素子において、ガラス基板とガラスチップとの間の間隙の距離は30μmであった。続いて、前述の例 III−1〜 III−15、比較例 III−1〜 III−10の各液状エポキシ樹脂組成物を用いて、ガラス基板とガラスチップとの間の間隙に充填して図2に示すような樹脂封止型ガラス製半導体装置を試作した。
【0412】
得られた樹脂封止型ガラス製半導体装置の充填性を評価するために、以下のような測定、評価を行い、得られた結果を前記表16〜23にまとめた。
【0413】
注入樹脂の外観:
樹脂封止型ガラス製半導体装置に充填された液状エポキシ樹脂組成物の均一性を顕微鏡観察により観察した。均一の場合には(○)で評価した。
【0414】
ボイドの発生の有無:
樹脂封止型ガラス製半導体装置に充填された液状エポキシ樹脂組成物の内部にボイドが発生しているか否かの有無を、超音波探傷装置により観察した。発生していない場合には(○)とした。
【0415】
フローマークの発生の有無:
樹脂封止型カラス製半導体装置に充填された液状エポキシ樹脂組成物にフローマークが発生しているか否かの有無を、目視により観察した。発生していない場合には(○)とした。
【0416】
充填時間の測定:
上述の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、ガラス基板とガラスチップとの間隙(30μm)に充填している際に充填量が15μmに到達するまでの時間(min)を測定した。
【0417】
剥離箇所の発生の有無:
樹脂封止型ガラス製半導体装置に剥離個所が発生しているか否かの有無を、顕微鏡観察、超音波探傷装置により観察した。発生していない場合には(○)とした。
【0418】
接着性:
接着性は、樹脂封止型ガラス製半導体装置内部のガラスチップとガラス基板との界面へのインクの侵入距離(mm)を測定することにより評価した。
【0419】
具体的には、試験用樹脂封止型ガラス製半導体装置をプレッシャークッカーに収容し、レッドインクを入れて温度128℃、2.5気圧雰囲気中で処理した。その後、水洗浄して水分を拭き取り、ガラスチップ−ガラス基板の層間へのインクの侵入を顕微鏡を用いて観察し測定した。
【0420】
(例 III −1〜 III −15)の液状エポキシ樹脂組成物は、新規な潜在性の硬化触媒が配合されているので、従来型の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合に比較して貯蔵安定性に優れていることがわかる。マイクロカプセル型の触媒(比較例 III−1)の場合には、エピビスタイプのエポキシ樹脂に対する潜在性は充分であるものの、脂環式エポキシ樹脂に対しては全く反応しない。しかしながら、本発明の潜在性触媒はそのようなことはなく、いずれのタイプのエポキシ樹脂も硬化させることができる。
【0421】
(例 III −1〜 III −15)の液状エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を樹脂封止してなる半導体装置は、イニシャルチェックの不良率が0%であり、また冷熱サイクルテスト、耐湿信頼性テストにおける不良個数は全くない。したがって、比較例と比べて、優れた耐熱衝撃性、耐湿信頼性を有していることがわかる。
【0422】
(例 III −1〜 III −15)の液状エポキシ樹脂組成物を用いてガラスチップを樹脂封止してなる樹脂封止型ガラス製半導体装置は、比較例に比べて充填したエポキシ樹脂組成物の外観が良好であり、また、ボイド、フローマーク、および剥離個所の発生が見られない。さらに充填時間が短く接着性が優れており、成型安定性、充填性、および耐湿信頼性の全てに優れていることがわかる。
【0423】
次に、硬化剤としてシアネートエステル化合物を配合して、下記表24に示す処方で例 III−16〜 III−20および比較例 III−11〜 III−12の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0424】
用いた成分を以下に示す。
【0425】
CE1:エチリデン−4,4−フェニレンジシアネート
Al10:アルミニウム トリス(エチルアセトアセテート)
これ以外の成分は、上で用いたものと同様である。
【0426】
【表24】
【0427】
得られた例 III−16〜 III−20、および比較例 III−11〜 III−12の液状エポキシ樹脂組成物について、上述と同様の一般的な特性を測定し、その結果を下記表25〜26にまとめる。
【0428】
なお、粘度以外の他の特性測定においては、例 III−16〜 III−20および比較例 III−11〜 III−12のいずれも、120℃で1時間、165℃で2時間の熱処理を行ってエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより試験片を得た。
【0429】
また、前述と同様のテスト用ガラス製半導体素子を作製し、ガラス基板とガラスチップとの間の間隙に各液状エポキシ樹脂組成物を充填して樹脂封止型ガラス製半導体装置を製造した。得られた樹脂封止型ガラス製半導体装置の充填性について、前述と同様の測定、評価を行い、得られた結果を下記表25〜26にまとめる。
【0430】
【表25】
【0431】
【表26】
【0432】
(例 III −16〜 III −20)の液状エポキシ樹脂組成物は、新規な潜在性の硬化触媒が配合されているので、従来型の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合と比較して、貯蔵安定性に優れていることがわかる。
【0433】
また、(例 III −16〜 III −20)液状エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を樹脂封止してなる半導体装置は、イニシャルチェックの不良率が0%であり、また冷熱サイクルテスト、耐湿信頼性テストにおける不良個数は全くない。したがって、比較例と比べて、優れた耐熱衝撃性、耐湿信頼性を有していることがわかる。
【0434】
(例 III −16〜 III −20)液状エポキシ樹脂組成物を用いてガラスチップを樹脂封止してなる樹脂封止型ガラス製半導体装置は、比較例に比べて充填したエポキシ樹脂組成物の外観が良好であり、また、ボイド、フローマーク、および剥離個所の発生が見られない。さらに充填時間が短く接着性が優れており、成型安定性、充填性、および耐湿信頼性の全てに優れていることがわかる。
【0435】
例IV
本例においては、本発明のエポキシ樹脂組成物を含有するコーティング材について説明する。ここで用いる各成分は、前述の例 IIIで用いたものと同様の化合物である。
【0436】
例IV−1
EP4 80g、エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学工業社製、商品名PB3600、エポキシ当量200、オキシラン酸素濃度8重量%、1,4−結合が50%以上の液状ポリブタジエンをエポキシ化したもの)20g、硬化触媒としてOH1 5gおよびAl1 1gを使用した。これらの樹脂をブチルアルコールの希釈溶液に溶解して、樹脂分が80%のエポキシ樹脂組成物の溶液を調製した。
【0437】
得られたエポキシ樹脂組成物の溶液を基材(トタン板、50×150×0.3mm)にバーコーターにて50μmの厚さに塗布し、その後オーブンにて120℃、20分間で硬化させてエポキシ樹脂組成物の硬化物からなるコーティング材を形成した。
【0438】
エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を調べ、その硬化物の外観を目視により観察した。さらに、硬化物に対してラビングテスト、鉛筆硬度、衝撃試験を行って、得られた結果を下記表27にまとめる。
【0439】
なお、各試験方法は次のとおりである。
【0440】
ラビングテスト:
キシレン/100回、無傷を○、傷が認められた場合を△、擦った部分が全て白濁した場合は×とした。
【0441】
鉛筆硬度試験:JIS K5400にしたがって測定した。
【0442】
衝撃試験:
JIS K5400にしたがってデュポン式衝撃変形試験機により測定した。表中の数値の単位は(cm)である。
【0443】
例IV−2
可撓性成分としてのエポキシ化ポリブタジエンを脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、商品名セロキサイド2081、エポキシ当量200)に変更した以外は、上述の例IV−1と同様の手法によりエポキシ樹脂組成物を得、これを用いてコーティング材を形成した。組成物およびその硬化物について同様の評価を行って、得られた結果を下記表27にまとめる。
【0444】
例IV−3
硬化触媒をA9 1gに変更した以外は、上述の例IV−1と同様の手法によりエポキシ樹脂組成物を得、これを用いてコーティング材を形成した。組成物およびその硬化物について同様の評価を行って、得られた結果を下記表27にまとめる。
【0445】
比較例IV−1
硬化触媒をアルミニウムイソプロポキシド1gに変更した以外は、上述の例IV−1と同様の手法によりエポキシ樹脂組成物を得、これを用いてコーティング材を形成した。組成物およびその硬化物について同様の評価を行った。得られた結果を下記表27にまとめる。
【0447】
【表27】
【0448】
表27に示されるように、(例 IV −1〜 IV −3)のエポキシ樹脂組成物は、全て12ヶ月以上という優れた貯蔵安定性を有している。さらに、こうした樹脂組成物を硬化させてなるコーティング材は、ラビングテスト、鉛筆硬度および衝撃試験のいずれにおいても、従来の触媒あるいは硬化剤を用いた比較例IV−1の組成物を用いて形成されたものと同等以上の特性を示している。
【0449】
例V
本例においては、光透過性を有するエポキシ樹脂組成物を調製し、これを用いて光半導体装置を製造して、その特性を調べた。各エポキシ樹脂組成物の調製に用いられる各成分の略称は、前述の例 IIIで説明したものと同様である。
【0450】
例V−1
EP3 60g、脂環式固形エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、商品名EHPE3150、エポキシ当量185、軟化点85℃)40g、硬化触媒としてOH1 5gおよびAl1 1gを使用して、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0451】
例V−2
硬化触媒をA9 1gに変更した以外は上述の例V−1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0452】
例V−3
EP3 30g、脂環式固形エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、EHPE3150)25g、硬化剤(酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名:リカシッドMH−700、分子量168、新日本理化製)45g、硬化触媒としてOH1 5gおよびAl1 1gを使用してエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0453】
例V−4
EP4 50g、脂環式固形エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、EHPE3150)25g、硬化触媒としてOH1 5gおよびAl1 1gを使用してエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0456】
得られた例V−1〜V−4のエポキシ樹脂組成物について、温度150℃、圧力70kg/cm2、5分間の成形条件でトランスファー成形を行って硬化物を作製した。この硬化物を150℃、4時間の条件でアフターキュアすることにより試験片を作製して、以下の試験を行い、その結果を下記表28にまとめる。
【0457】
光透過性:
10×50×1mmの試験片を作製し、吸光光度計を用いて、500nm、589nm、および700nmにおける光透過度を測定した。
【0458】
成形性:
トランスファー成形により4×10×100mm試験片を作製する際、試験片中にクラックが入る程度を3段階で評価した。評価基準は次のとおりとした。
A:クラックなし
B:クラックが発生した
C:金型離型の際に試験片に割れ、欠けが発生した
ガラス転移温度および熱膨張係数:
TMAにより、昇温速度5℃/minで測定した。
【0459】
保存安定性:
エポキシ樹脂組成物を30℃の温度下で一定期間経過後の溶融粘度が2倍となるまでの日数とした。
【0460】
ゲル化時間:
150℃の熱板上にエポキシ樹脂組成物を配置し、溶融した組成物がゲル化し始めるまでの時間を測定した。
【0461】
【表28】
【0462】
表28に示されるように、(例V−1〜V−4)のエポキシ樹脂組成物は、全て3ヶ月以上の保存安定性を有しており、これらは成形性、硬化性、熱膨張率、および光透過率のいずれにおいても良好である。これに対して、比較例V−1〜V−2のエポキシ樹脂組成物では、保存安定性が不十分であることがわかる。
【0463】
さらに、例V−1の光透過性エポキシ樹脂組成物を用いて、LEDデバイスを作製した。図3にその断面図を示す。図中、11は発光素子(ガリウムヒ素ダイオード)、12はエポキシ樹脂をモールド成形した透過性の樹脂、13はガラスエポキシ基材、14はリード線、15は電極である。このLEDデバイスは、光透過性に優れ、高い信頼性を有するものであった。
【0464】
【発明の効果】
この発明による硬化触媒は、室温程度の温度では触媒活性が現われず、熱によりその活性を発現する。したがって、この硬化触媒は、樹脂組成物に配合することにより、樹脂組成物の室温より高い所定の温度以上での優れた硬化特性を維持するとともに、樹脂組成物に室温での高い保存安定性を付与する。すなわち、この硬化触媒を含有する樹脂組成物は、室温では反応が進行せずに長期に亘り安定であり、加熱により速やかに反応して硬化する。
【0465】
また、この発明による樹脂組成物は、上記硬化触媒を含有しており、室温程度では反応が進行せずに長期に亘る保存が可能な高い保存安定性を有しており、しかも室温より高い所定の温度以上の温度では反応が速やかに進行して硬化する。さらに、硬化後にイオン性物質が残存することなく、硬化物の電気絶縁性および機械的強度に優れている。
【0466】
特に、樹脂や硬化触媒として特定の成分を配合した場合には、保存安定性に加えて、流動性、充填性、耐熱衝撃性および耐湿信頼性に優れた液状樹脂組成物が得られる。かかる樹脂組成物は、半導体素子と基板との間の間隙に充填する際の作業性に優れているので、この樹脂組成物で半導体素子を封止することによって、電子機器の高密度実装化、高集積化、半導体デバイスの高密度化、動作の高速化、高ピンカウント化、およびパッケージの小型化、薄型化に対応することが可能な樹脂封止型半導体装置が提供される。
【0467】
またさらに本発明によれば、上述したような樹脂組成物を含有し、貯蔵安定性に優れ、硬化後には高い硬度特性を示すコーティング材が提供される。
【0468】
本発明の樹脂組成物は、半導体素子封止用およびコーティング材等、多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液状エポキシ樹脂組成物により樹脂封止する前のガラスバンプを有したガラスチップの断面図。
【図2】本発明の液状エポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止した樹脂封止型ガラス製半導体装置の概略図。
【図3】実施例で使用したLEDデバイスの縦断面図。
【符号の説明】
1…本発明の液状エポキシ樹脂組成物の硬化物
2…ガラスバンプ
3…ガラスチップ
4…エポキシ樹脂接着剤
5…ガラス基板
11…発光素子
12…透明性樹脂
13…ガラスエポキシ基材
14…リード線
15…電極
Claims (7)
- 下記一般式(II−1)で表される化合物、(II−2)で表される化合物、および(II−3)で表される化合物からなる群から選択される有機金属化合物と、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサン、フェノール化合物、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、および光照射によりシラノールを発生することが可能なケイ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化触媒。
- 下記一般式(II−1)で表される化合物、(II−2)で表される化合物、および(II−3)で表される化合物からなる群から選択される有機金属化合物と、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシラン、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するオルガノシロキサン、フェノール化合物、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、および光照射によりシラノールを発生することが可能なケイ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有するエポキシ樹脂用硬化触媒と、
エポキシ樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
- 無機充填材をさらに含有する請求項2に記載の樹脂組成物。
- 光増感剤をさらに含有する請求項2ないし3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 酸無水物、フェノール類、芳香族アミン化合物、およびシアネートエステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤をさらに含有する請求項2ないし4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 半導体素子と、この半導体素子を封止する樹脂層とを具備し、前記樹脂層は請求項2ないし5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
- 請求項1に記載の硬化触媒を含有することを特徴とするコーティング材。
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