JP3775126B2 - 高炉の改修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高炉の改修方法に関し、特に炉底部の改修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高炉の改修には、炉体の解体、炉内耐火物の築炉、冷却装置据付等の多くの工事が伴い、高炉の改修には約3〜4ヶ月の長期間を要し、生産量の確保の面から、最短で高炉の改修を行うことが強く求められている。
【0003】
さらに、高炉の稼動基数は減少傾向に有り、単基高炉稼動を行っている製鉄所も多く、短期に改修を行うことが、一層強く求められている実状にある。
高炉のシャフト部は、耐火物の吹付けやステーブ等の冷却装置の交換を休風で行える補修技術が確立しており、特に問題がない。
【0004】
しかし、炉底部は、補修技術がなく、高炉の炉命を決めるネック部位となっている。これまでにも種々の炉底部を分離する方法、あるいは、解体撤去する方法が提案されている。
しかしながら、これらの改修方法は、何れも現実的な方法とは言えず、実施が困難である。
【0005】
例えば、特開平5−222420号公報には、炉底部と高炉基礎部との間に、圧縮ガスの流体膜を形成し、流体膜を介して、油圧ジャッキにより炉底部を水平に保持した状態で、移動抵抗を小さくして、炉底部を分離・撤去する高炉改修方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この改修方法は、流体膜を形成させる流体浮上装置、および、炉底部を水平に保持する油圧ジャッキを、どのように炉底部に設置するかが開示されておらず、実際に適用することは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容易に短期間に炉底部を分離・撤去できる高炉改修方法を提供することにある。
【0008】
【発明が解決するための手段】
発明者らは、炉底部を分離・撤去する現実的に適用可能な手段を検討し、炉底部を流体圧を利用して上昇させる機構(以下、流体圧リフト機構という)に着目し、以下の知見を得た。
【0009】
(A)図1(a)、(b)は、流体圧リフト機構の原理を説明するための概念図で、図1(a)は流体圧をかけない場合、図1(b)は流体圧をかけた場合である。
【0010】
同図(b)に示す上部フレーム21と下部フレーム22との間に可撓性のある密閉された偏平ホース状のエアーバッグ23(以下、単にエアーバッグという)を挿入し、圧力Pの流体を導入する操作を行うと、圧力Pの値に応じて上昇力Fが生じ、上部フレーム21の上昇ストロークSを制御することができる。
【0011】
例えば、内径φ165mmのエアーバッグ23に、圧力7kg/cm2のエアーを導入し、エアーバッグ23と上部フレーム21との接触幅Bが10cmになったとき、エアーバッグ23長さ1m(100cm)当たりの上昇力は7.0トン(10cm×100cm×7kg/cm2=7000kg)となる。
【0012】
炉底部の重量を4000トンとした場合に、圧力7kg/cm2のエアーで炉底部を上昇させるには、エアーバッグの延べ長さを約570m(4000トン/7トン/m=570m)とすればよいことになる。
従って、前記上フレーム21の上部に炉底部が存在するように配置することが可能であれば、圧力7kg/cm2のエアーで炉底部を上昇することができる。
【0013】
(B)上部フレームと下部フレームとの間に可撓性のあるエアーバッグを挿入した構成からなる流体圧リフト機構を下記の方法で組み込むことにより、炉底部を任意な場所に容易に移動できる。
【0014】
(a)炉底部直下の高炉基礎部に、流体圧リフト機構を保持するための複数個の貫通孔を穿つ。複数個の貫通孔は、互いに平行にして水平方向に穿つ。
(b)貫通孔の位置で高炉基礎部を水平方向に切断して、炉底部と高炉基礎部とを切り離す。
【0015】
(c)貫通孔に、移動手段を備えた流体圧リフト機構を設置する。
(d)移動手段の構成は、例えば、転動コロと転動コロの回転を支える剛性の有る平板であればよい。
【0016】
(e)流体圧リフト機構を使用して、炉底部を上昇させると、高炉基礎部と炉底部とは、分離され、水平方向への移動手段である転動コロを使って牽引すれば、小さな牽引力で容易に水平方向に移動できる。
【0017】
(f)移動先に、炉底部を搬送できる搬送台を設置して置けば、搬送台を動かすことで、任意な場所に移動でき、炉底部の改修作業を開始できる。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記のとおりである。
(1)高炉炉体から、炉底部を分離し、この分離した炉底部を据付け場所から移動させて除去する一方、新しく組立てた炉底部を前記据付け場所に搬入して炉底部を更新する方法において、
(a)炉底部直下の高炉基礎部に、複数個の貫通孔を水平方向に穿ち、
(b)前記貫通孔の内部に形成される空間が存在する位置で前記高炉基礎部を水平方向に切断して、炉底部と高炉基礎部とを切り離し、
(c)前記貫通孔に、移動手段を備えた流体圧リフト機構を設置し、該流体圧リフト機構の流体圧を上昇させることにより炉底部を上昇させ、
(d)前記移動手段を利用して、炉底部を水平方向に引出すことを特徴とする高炉の改修方法。
【0018】
(2)移動手段が、転動コロであることを特徴とする上記(1)に記載の高炉の改修方法。
(3)貫通孔の位置で高炉基礎部を水平に切断する手段が、ワイヤーソーであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高炉の改修方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
高炉炉体と炉底部の分離方法を簡単に説明する。
図2は、高炉炉体と炉底部の分離方法の一例を概念的に示す縦断面図である。
【0020】
図2に示すように、炉体櫓1の梁2に設置した油圧ジャッキ4を炉体支持ブラケット3に懸架しておいて、斜線で示す炉底部5の炉底部上面部分6を水平方向に切断し、高炉基礎部9の上に据え付けられた炉底部5を高炉炉体20と切り離し、縁切りする。
【0021】
高炉炉体と炉底部5との切り離し距離は100mm程度であれば、炉底部の移動操作に支障がない。切り離し距離は油圧ジャッキ4を使用して調整できる。
次に、本発明を実施する方法について説明する。
【0022】
図3(a)、(b)は、炉底部と高炉基礎部との分離方法の一例を概念的に示す断面図で、図3(a)は、高炉基礎部付近の横断面図であり、図3(b)は、高炉基礎部付近の縦断面図である。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、炉底部5の直下の高炉基礎部9の水平方向に、貫通孔7を穿つ。
【0024】
貫通孔7の方向は、炉底部の引き出す方位を基に決めればよい。
貫通孔7の径は、設置する流体圧リフト機構の大きさに合わせて適宜決定すればよい。
【0025】
貫通孔7を穿つ手段は、例えば、コアボーリング装置が使用できる。
貫通孔7の数は、設定した貫通孔7の径および流体圧リフト機構による荷重負荷から適宜決定すればよい。
【0026】
図4は、貫通孔の位置で高炉基礎部をワイヤーソーを使用して水平方向に切断する方法を示す概念図である。
図4に示すように、複数箇所の貫通孔7をまたいだ状態でワイヤーソー8を通し、水平方向に切断することができる。
【0027】
複数箇所の貫通孔7をまたいだ状態のワイヤーソー8を1ユニットとして、複数ユニット(同図では、5ユニット)を同時に稼働することで貫通孔7および高炉基礎部9を効率よく水平方向に切断することができる。
【0028】
なお、同図に示す斜線部は、ワイヤーソー8による切断面を示す。
ワイヤーソーを使用することの利点は、鉄筋コンクリート構造の高炉基礎部9を、水平方向に、容易に切断することができることにある。
【0029】
ワイヤーソーを使用した場合における切断手順は、以下の通りである。
▲1▼スチールワイヤーに鉄筋コンクリート切削用のダイヤモンドビーズを一定間隔に嵌合する。
【0030】
▲2▼ワイヤーソーを被切断体に巻き付け、エンドレス状にする。
▲3▼ワイヤーソー駆動機により張力を与えながら、毎秒25〜30mの速度で循環走行させることにより被切断体の内部の鉄骨・鉄筋を含めて迅速に切断する。
ワイヤーソーは、大型鉄筋コンクリート構造物の切断に広く施工実績があり、施工能力が高く、切断面の精度が高く後処理も容易であり、適用対象物の制約がないという特徴がある。
【0031】
ワイヤーソーの他に、水平方向に切断する手段としては、高圧ウォータージェットによる方法等も使用できる。
以下に、貫通孔に、転動コロ等の移動手段を備えた流体圧リフト機構を挿入する方法を、概念図を基に説明する。
【0032】
図5は、貫通孔に、移動手段を備えた流体圧リフト機構を組み込む方法を説明するための概念図である。
図5に示すように、貫通孔7の孔径dより小さい径の半割りパイプ10の内側の上下に、パイプの曲率に沿った半月状の上部金物ブロック11および下部金物ブロック12を取り付け、上部金物ブロック11のフラット下面13に高さ調整用のスペーサー24を介装して上部フレーム21を固定する。
【0033】
上部フレーム21と下部フレーム22の間に、エアーバック23を挿入する。
エアーバック23の材質は、耐圧性の合成ゴムを使用することが望ましく、特に、ネオプレンゴムが望ましい。
【0034】
さらに、下部フレームの下面に転動コロ14のフレーム15を固定し、半月状の下部金物ブロック12のフラット上面16は、転動コロ14のコロ面が接触するようにする。
【0035】
半割りパイプ10を用いた理由は、上部フレーム、エアーバックおよび下部フレームからなる流体圧リフト機構には、上下に大きな負荷荷重が作用するため、流体圧リフト機構下部の転動コロ14が貫通孔7のコンクリートに、めり込まないようにするためである。
【0036】
さらに、貫通孔内に段差があっても、半月状の上部金物ブロック11および下部金物ブロック12を介して、転動コロ14を支えるフラット上面16を安定した状態に保持するためである。
【0037】
以下に、炉底部を水平状態で上昇させて、高炉基礎部と分離する方法を説明する。
図6(a)、(b)は、流体圧リフト機構によって炉底部を上昇する方法を模式的に示す概念図で、図6(a)は正面断面図であり、図6(b)は、図6(a)のa−a断面視図である。
【0038】
図6(a)に示すエアーバッグ23に、例えば、圧力7kg/cm2程度のエアーを導入すると、炉底部を上昇できる上昇力Fが作用し、上部フレーム21がストロークSで上昇して、炉底部5と高炉基礎部9とが図中に示す隙間Cを形成し分離される。
【0039】
エアーバッグに導入するガス圧は、上昇力Fおよびエアーバッグの総延長長さの設定により、適宜決められる。
ガス圧は、コンプレッサーを使用して調整できる。
【0040】
7kg/cm2を超えるガス圧を必要とする場合は、窒素ボンベとアキュムレータ等組み合わせてガス圧を確保するのが好ましい。
また、使用流体として、圧縮性流体である気体に替わり、非圧縮性流体である液体を使用することができる。
【0041】
例えば、液体として水を使用し水圧を所定圧にすることで、気体のガス圧を利用するのと同じ上昇力Fを得ることができる。
隙間Cを形成して炉底部5と高炉基礎部9とが分離されと、図6(b)に示す流体圧リフト機構に組み込まれた横方向への移動手段である転動コロ14によって、水平方向に比較的小さな牽引力で移動することができる。
【0042】
炉底部5を水平方向に引出すには、複数のウインチ等を一斉作動できるシステムを適用すればよい。
例えば、炉底部重量を4000トンと仮定した場合における牽引力は、転動コロ14の転がり摩擦係数μ1:0.05の条件で4000トン×0.05=200トンとなり、これを10個所に分散させて牽引を行うと、1個所当りの牽引力は、20トンであり、特別に大きな牽引力を必要としないため、前記のウインチ、油圧シリンダー等の牽引装置が使用できる。
【0043】
図7(a)、(b)は、炉底部を搬送台まで、牽引する方法を模式的に示した概念図で、図7(a)は、炉底部と搬送台との関係を示す立面図であり、図7(b)は、炉底部と搬送台との関係を示す平面断面図である。
【0044】
同図(b)に示すように、搬送台17に、フラット上面16と同レベルの軌道18を敷設しておくことで、流体圧リフト機構に備えた転動コロを牽引装置19により引出すことにより、炉底部5を、高炉基礎部9(位置:I)より、高炉基礎部脇に待機した搬送台17(位置:II)に積載することができる。
【0045】
また、フラット上面16と同一レベルの定盤を、所定の場所まで敷設しておくことでも、所定の場所に移動することができる。
上記の移動の際に使用する転動コロは、例えば、超重量物の運搬等に幅広く採用されているチルタンクやタフコロ(いずれも商品名)等が使用できる。
【0046】
これらの転動コロは、積載能力のわりに全高が低く、小型で、複数ローラーにより荷重を受けるため、ローラー径のわりに転がり摩擦係数μが小さい特徴がある。
【0047】
【発明の効果】
本発明により、容易に、例えば、7日以内という短期間に、炉底部を分離・撤去できるのであって、直ちに実用化可能な技術であり、その意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】流体圧リフト機構の原理を説明するための概念図である。
【図2】高炉炉体と炉底部の分離方法の一例を概念的に示す縦断面図である。
【図3】炉底部と高炉基礎部との分離方法の一例を概念的に示す断面図で、図3(a)は、高炉基礎部付近の横断面図であり、図3(b)は、高炉基礎部付近の縦断面図である。
【図4】貫通孔の位置で高炉基礎部をワイヤーソーを使用して水平方向に切断する方法を示す概念図である。
【図5】貫通孔に、移動手段を備えた流体圧リフト機構を挿入する方法を説明するための概念図である。
【図6】流体圧リフト機構によって炉底部を上昇する方法を模式的に示す概念図で、図6(a)は正面断面図であり、図6(b)は、図6(a)のa−a断面視図である。
【図7】炉底部を搬送台まで、牽引する方法を模式的に示した概念図で、図7(a)は、炉底部と搬送台の関係を示す立面図であり、図7(b)は、下部金物ブロックのフラット上面と軌道との関係を示す平面断面図である。
【符号の説明】
1:炉体櫓
2:梁
3:炉体支持ブラケット
4:油圧ジャッキ
5:炉底部
6:炉底部上面部分
7:貫通孔
8:ワイヤーソー
9:高炉基礎部
10:半割りパイプ
11:上部金物ブロック
12:下部金物ブロック
13:フラット下面
14:転動コロ
15:フレーム
16:フラット上面
17:搬送台
18:軌道
19:牽引装置
20:高炉炉体
21:上部フレーム
22:下部フレーム
23:エアーバック
24:スペーサー
Claims (3)
- 高炉炉体から、炉底部を分離し、この分離した炉底部を据付け場所から移動させて除去する一方、新しく組立てた炉底部を前記据付け場所に搬入して炉底部を更新する方法において、
(a)炉底部直下の高炉基礎部に、複数個の貫通孔を水平方向に穿ち、
(b)前記貫通孔の内部に形成される空間が存在する位置で前記高炉基礎部を水平方向に切断して、炉底部と高炉基礎部とを切り離し、
(c)前記貫通孔に、移動手段を備えた流体圧リフト機構を設置し、該流体圧リフト機構の流体圧を上昇させることにより炉底部を上昇させ、
(d)前記移動手段を利用して、炉底部を水平方向に引出すことを特徴とする高炉の改修方法。 - 移動手段が、転動コロであることを特徴とする請求項1記載の高炉の改修方法。
- 貫通孔の位置で高炉基礎部を水平に切断する手段が、ワイヤーソーであることを特徴とする請求項1または2に記載の高炉の改修方法。
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