JP3774798B2 - ラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車外音の低減性能とウエット性能の両立を図ることができるラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラジアルタイヤにおいて、タイヤ外周のトレッド踏面部に設けられるトレッドパターンは、操縦性能や走行性能および騒音等に大きな影響を与えるため、従来から数多くの種類が考えられている。
【0003】
その一つとして、図3に示すパターン、すなわちタイヤ周方向に連なる複数本の主溝(11)と、この主溝(11)と交叉して横方向に延びるスリットと称する横溝(12)と有し、さらに最外側の主溝(11)より外方のショルダー部(13)においてバットレス部(14)から該ショルダー部(13)に延びて閉塞形で終端するノッチと称する切欠溝(15)を有するパターンが知られている。このパターンにおける前記切欠溝(15)は、トレッド踏面部の接地端(P)付近あるいは該接地端(P)よりごく僅かに内方で終端しているのが普通である。(16)はその閉塞端(17)から内方に延びるさらに細溝のサイプを示す。
【0004】
従来より、前記のトレッドパターンを有するタイヤにおいて、車外音の低減を図るには、主溝の溝幅や深さあるいはショルダー部の横溝の溝幅や深さを減少させればよいことはわかっている。
【0005】
しかし、主溝や横溝を浅くすると、それだけタイヤの摩耗による溝の消滅が早くなる。また溝幅を減少させると、ウエット路面走行性能、特にハイドロプレーニングに対する性能が低下することになる。
【0006】
一方、ウエット路面の走行性能を向上させるために、主溝および横溝の溝幅や深さを増し、溝による排水性をよくするのは、タイヤ剛性や強度上の問題や車外騒音の問題が生じることになる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、車外音を悪化させることなく、ハイドロプレーニング性能等のウエット路面走行性能を向上でき、また主溝や横溝の溝幅を狭くして車外音の低減性能を向上させた場合にも、ウエット路面走行性能を悪化させることがなく、ひいてはウエット路面走行性能の向上と車外音低減の両立を図ることが容易に可能なラジアルタイヤを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、トレッド踏面部にタイヤ周方向に連なる複数本の主溝と、該主溝と同深さで交叉して延びる横溝とを有し、最外側の主溝より外方のショルダー部においては、前記最外側の主溝からタイヤ外側のバットレス部に延びる横溝と共に、前記バットレス部から該ショルダー部内方に延びて閉塞形で終端する多数の切欠溝を有するトレッドパターンを備えたラジアルタイヤにおいて、前記切欠溝の溝深さを主溝よりやや浅くするとともに、半数以上の切欠溝については、トレッド踏面部の接地端(P)から閉塞端までの長さ(L)を、該接地端(P)から最外側の主溝までの距離(K)の50〜90%に設定してなることを特徴とする。
【0009】
このラジアルタイヤによれば、ショルダー部において従来よりも内方にまで延びている閉塞形の切欠溝のために、ウエット路面走行時における排水性が良くなり、主溝や横溝の溝幅や深さを増加させずとも、すなわち車外音を悪化させるおそれなく、ウエット路面走行性能を向上できる。また、車外音を低減させるべく主溝やショルダー部の横溝の溝幅を狭くした場合、これよるウエット路面走行性能の悪化を、前記の切欠溝の排水性により補うことができ、結果として、車外音低減とウエット性能向上の両立を図ることができる。
【0010】
例えば、タイヤ幅が145〜225mmのサイズのタイヤにおいては、本来は6〜10mmとされる主溝の溝幅をこれより狭く4〜8mmに設定しておくことができる。これにより同サイズ、同パターンのタイヤにおいて、従来よりも車外音を低減できて、しかもウエット路面走行性能を向上できることになる。
【0011】
なお、前記切欠溝の接地端(P)から閉塞端までの長さ(L)が、接地端(P)から最外側の主溝までの距離(K)の50%未満であると、ハイドロプレーニングに対する性能、すなわちウエット路面走行性能の向上が殆ど見られない。また前記長さ(L)が前記距離(K)の90%を越えると、ハイドロプレーニングに対する性能は良くなるが、ショルダー部のブロック剛性が低下する等の他の性能に問題が生じるおそれがある。そのため前記長さ(L)を、前記距離(K)の50〜90%の範囲に設定しておくのがよい。
【0012】
また前記長さの切欠溝を半数以上としたのは、これより少ないと、ハイドロプレーニングに対する性能向上の効果が小さくなるからである。前記の効果から、前記の長さに形成する切欠溝の数は多いほうがよく、全部の切欠溝を前記長さ範囲に形成しておくのが特に好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例を図面に基いて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係るラジアルタイヤのトレッドパターンを略示する展開図であり、図2はショルダー部における閉塞形の切欠溝に沿う拡大断面図である。なお、タイヤの内部構造は、例えばカーカスの外側にベルト層を配した一般的なラジアル構造をなすものであり、ここでは図示説明を省略する。
【0015】
タイヤ外周のトレッド踏面部のトレッドパターンは、図1に示すように、タイヤ周方向にストレート状あるいはジグザグ状(図示せず)に連なる複数本(図の場合は4本)の主溝(1)と、これらの主溝(1)と同深さで交叉して、例えばタイヤ軸方向に平行あるいは斜めに延びるスリットと称する横溝(2)とを有している。さらに最外側の主溝(1)より外側のショルダー部(3)には、前記最外側の主溝(1)からタイヤ外側のバットレス部(4)に延びる前記横溝(2)と共に、これとは別に、タイヤ外側のバットレス部(4)から該ショルダー部(3)の内方に延びて閉塞形で終端するノッチと称する切欠溝(5)を有している。(6)は閉塞端(7)から内方に延びたさらに細溝のサイプを示している。
【0016】
図の場合、前記ショルダー部(3)における切欠溝(5)と横溝(2)とは、タイヤ周方向全周にわたって一定間隔毎に1:1の割合で交互に配されているが、これに限らず、切欠溝(5)の配置割合を横溝(2)より多くすることもできる。この切欠溝(5)は、通常横溝(2)と平行に形成されるが、若干角度を持たせて形成するとも、タイヤ軸方向に平行に形成しておくこともある。
【0017】
前記の半数以上(図の場合は全数)の切欠溝(5)は、トレッド踏面部の接地端(P)から切欠溝の閉塞端(7)までの長さ(L)を、該接地端(P)から最外側の主溝(1)の外側端までの距離(K)の50〜90%の範囲のものに設定されている。
【0018】
この切欠溝(5)の溝幅は横溝(2)と同程度に形成され、また切欠溝(5)の深さは主溝(1)よりやや浅く、例えば主溝(1)に形成される摩耗検知インジケータの高さ等を考慮して1.6mm程度浅く形成される。
【0019】
なお前記主溝(1)については、従来の同サイズ、同一パターンのタイヤの主溝と、溝幅(W)および溝深さを同じにしておくこともできるが、車外音の低減を図る場合には、前記溝幅(W)を従来よりも10〜35%程度狭く形成される。例えば、タイヤ幅が145〜225mmのサイズのタイヤにおいて、主溝(1)の溝幅(W)が6〜10mmであったものは、2mm程度少なくして6〜8mmに設定される。
【0020】
また横溝(2)の溝深さは主溝(1)と同じであるが、その溝幅については、主溝(1)の溝幅(W)の2/3以下に設定され、特に車外音低減を図る場合には、前記同様に、従来の同サイズ、同一パターンのタイヤに比して10〜35%程度狭く、例えば従来3〜6mmの溝幅のものは、2〜5mmの溝幅に設定される。
【0021】
上記したトレッドパターンを有するラジアルタイヤであると、ショルダー部(3)においてバットレス部(4)から該ショルダー部(3)内方に延びている切欠溝(5)の効果で、ウエット路面走行時のトレッド接地面内の排水性、特にショルダー部(3)の排水性が向上し、ハイドロプレーニングに対する性能、つまりウエット路面走行性能が向上する。
【0022】
そのため前記のように、主溝(1)および横溝(2)の溝幅を、同サイズ、同パターンの従来タイヤの場合よりも狭くして、車外音を低減するようにした場合において、溝幅が狭くなることによる排水性の低下を前記切欠溝(5)を長くしたことによって十分に補うことができ、以て車外音低減とウエット路面走行性能向上の両立を図ることができる。
【0023】
下記表1は、図1および図3のトレッドパターンでタイヤサイズが165SR13のタイヤ、下記表2は、同パターンでタイヤサイズが195/65R15のタイヤ、下記表3は、同パターンでタイヤサイズが215/60R16のタイヤについて、それぞれショルダー部(3)(13)における切欠溝(5)(15)の形態を異にして、実車走行テストによる車外音の測定結果と、ウエット路面走行テストによるハイドロプレーニングの発生速度とを示したものである。
【0024】
表1〜表3の各表において、タイプA〜Cは比較例であって、タイプAは従来のタイヤを、タイプBは従来タイヤにおいて主溝と横溝の幅を狭くしただけのものを示し、タイプCは主溝と横溝の幅を狭くしてさらに切欠溝の接地端(P)からの長さ(L)を、接地端から主溝までの距離(K)の45%にしたものを示している。タイプD〜Fは本発明の実施例に相当し、それぞれ主溝および横溝の溝幅を狭くしてかつ切欠溝(5)の前記長さ(L)を前記距離(K)の50〜90%の範囲にしたものを示している。それぞれ主溝と横溝の深さは8.0mm、切欠溝の深さは6.4mmである。
【0025】
なお、車外音の測定は、速度53km/hでの走行しているときの、運転席側の窓外の車外音を測定した。
【0026】
【表1】
【表2】
【表3】
。
【0027】
上記の表1〜表3によれば、単に主溝および横溝の溝幅を狭くしただけのタイプBについては、車外音の低減には効果があるものの、ハイドロプレーニングに対する性能が悪化した。また主溝および横溝の溝幅を狭くしてショルダー部の切欠溝の長さ(L)を距離(K)の45%にしたタイプCについても、車外音低減およびハイドロプレーニングに対する性能向上の効果はみられない。
【0028】
これに対し、本発明の実施例であるタイプD〜Fのいずれの場合も、ハイドロプレーニングに対する性能を低下させずに、車外音を低下させることができた。したがって、本発明のようにショルダー部における内方端閉塞形の切欠溝を設定することにより、ウエット路面走行性能を低下させずに、主溝および横溝の溝幅を狭くして車外音低減を図ることが可能なものとなった。
【0029】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、ショルダー部の端部閉塞形の切欠溝の長さを従来よりも内方に向って長くしたことにより、車外音低減の効果を悪化させることなくウエット性能を向上させることができる。したがって主溝あるいは横溝の幅を狭くして車外音低減を図った場合にも、ウエット路面走行時の排水性を前記切欠溝の効果で補うことができ、以てウエット路面走行性能を低下させることなく車外音低減を図ることができ、車外音低減とウエット路面走行性能の向上との両立を図ることが容易に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態のタイヤパターンを例示する展開平面図である。
【図2】同上のショルダー部の拡大断面図である。
【図3】従来のタイヤパターンの展開平面図である。
【符号の説明】
(1) 主溝
(2) 横溝
(3) ショルダー部
(4) バットレス部
(5) 切欠溝
(7) 閉塞端部
(P) 接地端
(K) 接地端から最外側の主溝までの距離
(L) 切欠溝の接地端からの長さ
Claims (2)
- トレッド踏面部にタイヤ周方向に連なる複数本の主溝と、該主溝と同深さで交叉して延びる横溝とを有し、最外側の主溝より外方のショルダー部においては、前記最外側の主溝からタイヤ外側のバットレス部に延びる横溝と共に、前記バットレス部からショルダー部内方に延びて閉塞形で終端する多数の切欠溝を有してなるトレッドパターンを備えたラジアルタイヤであって、
前記切欠溝の溝深さを前記主溝よりやや浅くするとともに、半数以上の切欠溝については、トレッド踏面部の接地端(P)から閉塞端までの長さ(L)を、該接地端(P)から最外側の主溝までの距離(K)の50〜90%に設定してなることを特徴とするラジアルタイヤ。 - タイヤ幅が145〜225mmのサイズのタイヤにおいて、主溝の溝幅を4〜8mmに設定してなる請求項1に記載のラジアルタイヤ。
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