JP3774659B2 - パス切替え装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パスの切替えにより異なる品種の製品を同一のプラントで製造可能なパス切替え装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の品種を製造するプラントは、例えば入側設備、出側設備等のように、複数の品種の製造に共通して使用する要素設備と、各品種をそれぞれ製造するために必要な固有設備とを併せ持っている。ここで、鋼板を各品種ごとに製造する場合においては、各品種ごとに使用する設備の選択を、主としてパス切替えによって行っている。このパス切替え作業は、通常人手を介して行われており、パス切替えに時間がかかると共に生産性を阻害するという問題があった。
そこで、例えば特開平5−31518号公報に、短時間かつ自動的にプロセスラインの切替えが可能な鋼板のプロセスラインが提案されている。これは、パス切替えのための鋼板切断、及び溶接場所が横方向となった通板路を使用した場合、即ち切断後の鋼板が重力の影響により落下する可能性が無い場合についてのものであり、不使用通板路の鋼板を無張力状態で待機させ、パス切替え時にそれらの両端を再度溶接接合してパス切替えを実施する装置である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したパス切替え装置には、以下の問題がある。
切断後の鋼板が重力の影響で落下する可能性がある場合、即ち竪型の通板路に切断後の鋼板を待機させる場合には、鋼板を無張力状態で待機させることは非常に危険である。そこで、安全性を考慮して、鋼板に予め例えばロープ(スレッチングロープ)の一端側を接続した後、この竪型の通板路から鋼板を引抜くことで、竪型の通板路に沿ってロープを移動させ、竪型の通板路にロープを配置している。これにより、竪型の通板路へのパス切替え時においては、予め竪型の通板路に配置されたロープの一端側に引抜いた鋼板の端部、又は出側設備へと送板される鋼板の上流側端部を接続し、ロープの他端側(鋼板が接続されていない側)を引っ張ることで、再度竪型の通板路に沿って鋼板を移動させ、鋼板のスレッチング(搬送)を実施していた。このため、竪型の通板路の全長が長くなるほど、また高さが高くなるほどスレッチングに長時間要することとなるので、パス切替え作業が長時間となり非効率であった。
【0004】
また、横方向のパス切替えの場合を含めて、切断後の鋼板を接合する場合、不使用通板路に待機する鋼板の長さに溶接作業用の余長を取る必要が有るが、鋼板を無張力状態で保持する関係上、待機時において鋼板に折れ曲がり等が発生する可能性がある。このため、例えば折れ曲がった部分の切除を行った場合、接合時に必要な長さを確保できない可能性があり、またその部分の補修を行う場合、溶接作業やスレッチング作業に手間がかかり、非効率であった。
更に、溶接接合は、主として重ね合わせ溶接で実施するが、鋼板を無張力状態で保持するので、鋼板を重ね合わせる際に発生し易い鋼板端部の折れ曲がりを防止したり、鋼板のセンター合わせ等に時間を要するため、非効率であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、竪型の通板路を有する設備に使用し、短時間にパス切替えを行うと共に、作業性が良好で、しかも効率の良いパス切替え装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う第1の発明に係るパス切替え装置は、板材の送板を行う竪型の第1の通板路、及び第1の通板路より低い位置にある第2の通板路を有する設備に使用し、板材の通板方向を切替えるため、第1の通板路と第2の通板路の分岐点近傍及び合流点近傍に、板材を切断する切断手段をそれぞれ配し、第2の通板路に板材を送板する場合には、両切断手段により板材から切り離された滞留材の部分を第1の通板路に滞留させるパス切替え装置であって、第1の通板路の板材上昇路に沿って設けられ、滞留材を固定する把持手段と、第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、滞留材の一端部を巻付ける巻取り手段と、第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、滞留材の下流側に位置する切断後の板材の後端と、巻取り手段より巻解いた滞留材の先端とを接合するための溶接手段と、第1の通板路の板材上昇路の最下点近傍に設けられ、滞留材の上流側に位置する切断後の板材の先端と、巻取り手段より巻解いた滞留材の後端とを接合するための溶接手段とを有する。このように、竪型の通板路(第1の通板路)の板材上昇路に沿って滞留材を固定する把持手段を設けているので、竪型の通板路に待機させる滞留材の重力の影響による落下を防止することが可能となる。また、竪型の通板路の板材下降路出側に巻取り手段を設けているので、滞留材の形状を崩すことなく、竪型の通板路に待機する滞留材の長さを自由に設定することが可能となる。そして、板材下降路出側に溶接手段を設けているので、滞留材を把持手段で挟持した状態で、例えば滞留材を折り曲げることなく接合することが可能となる。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係るパス切替え装置は、板材の送板を行う竪型の第1の通板路、及び第1の通板路より低い位置にある第2の通板路を有する設備に使用し、板材の通板方向を切替えるため、第1の通板路と第2の通板路の分岐点近傍及び合流点近傍に、板材を切断する切断手段をそれぞれ配し、第2の通板路に板材を送板する場合には、両切断手段により板材から切り離された滞留材の部分を第1の通板路に滞留させるパス切替え装置であって、第1の通板路の板材上昇路及び板材下降路に沿ってそれぞれ設けられ、滞留材をそれぞれ固定する第1、第2の把持手段と、第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、滞留材の一端部を巻付ける巻取り手段と、第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、滞留材の下流側に位置する切断後の板材の後端と、巻取り手段より巻解いた滞留材の先端とを接合するための溶接手段と、第1の通板路の板材上昇路の最下点近傍に設けられ、滞留材の上流側に位置する切断後の板材の先端と、巻取り手段より巻解いた滞留材の後端とを接合するための溶接手段とを有する。このように、竪型の通板路(第1の通板路)の板材上昇路及び板材下降路に沿って滞留材を固定する第1、第2の把持手段を設けているので、竪型の通板路に待機させる滞留材の重力の影響による落下を、確実に防止することが可能となる。また、竪型の通板路の板材下降路出側に巻取り手段を設けているので、滞留材の形状を崩すことなく、竪型の通板路に待機する滞留材の長さを自由に設定することが可能となる。そして、板材下降路出側に溶接手段を設けているので、滞留材を把持手段で挟持した状態で、例えば滞留材を折り曲げることなく接合することが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係るパス切替え装置を適用した溶融金属めっき設備の説明図、図2は同パス切替え装置を適用した溶融金属めっき設備の部分拡大図、図3(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用したクランプの平面図、正面図、図4(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用した巻取りドラムの正断面図、側面図、図5(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用した溶接手段の正面図、側断面図、図6は鋼板の送板を竪型の通板路から横型の通板路へ変更する場合の接合方法の説明図、図7(A)、(B)はそれぞれ鋼板の送板を横型の通板路から竪型の通板路へ変更する場合の接合方法の説明図である。
【0008】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るパス切替え装置10は、板材の一例である鋼板(厚みが、例えば0.4〜2.3mm程度)の送板を行う竪型の通板路(第1の通板路)11、及び竪型の通板路11より低い位置にある通板路(第2の通板路)12を有する設備の一例である溶融金属めっき設備13に使用するものである。このパス切替え装置10は、鋼板の通板方向を切替えるため、竪型の通板路11と通板路12の分岐点X及び合流点Yにそれぞれ配置されたロール14の近傍(上流側)、及びロール15の近傍(下流側)に、鋼板を切断する切断手段の一例である切断機(図示しない)をそれぞれ配し、竪型の通板路11から切替えて通板路12に鋼板を送板する場合には、両切断機により鋼板から切り離された滞留材の部分を竪型の通板路11に滞留させるものである。以下、詳しく説明する。
【0009】
図1に示すように、溶融金属めっき設備13の上流側には、入側設備16が有するペイオフリール17、溶接機18、入側洗浄装置19、入側ループカー20、焼鈍炉21が、また溶融金属めっき設備13の下流側には、出側設備22が有すする水冷槽23、スキンパスミル24、後処理装置25、出側ループカー26、トリマー27、検査室28、テンションリール29がそれぞれ配置されており、この入側設備16及び出側設備22が、複数の品種の鋼板を製造する場合に、共通して使用される要素設備となっている。ここで、このペイオフリール17は鋼板の払出しを行い、溶接機18は先行鋼板の後端と後行鋼板の前端とを接続し、溶融金属めっき設備13へ鋼板を連続的に送板させるものである。また、入側及び出側ループカー20、26は、それぞれ溶融金属めっき設備13へ供給される鋼板、及び溶融金属めっき設備13から排出される鋼板を一時停止させることなく、連続的に搬送可能とするバッファである。そして、テンションリール29は製造した鋼板を巻取り回収するものである。
【0010】
図2に示すように、溶融金属めっき設備13には、高さが例えば50〜60m程度の竪型の通板路11(図2中の実線)と、竪型の通板路11より低い位置(例えば、10〜20m程度の高さ)にある通板路12(図2中の点線)とが備えられている。この竪型の通板路11には、鋼板上昇路(板材上昇路の一例)30と鋼板下降路(板材下降路の一例)31とがあり、鋼板上昇路30の最下点には、溶融金属の一例である亜鉛のポット32が配置されている。これにより、溶融金属めっき設備13の上流側に配置された焼鈍炉21から送板された鋼板は、一度下降させられポット32に投入されて、亜鉛めっきが連続的に行われる。そして、めっき終了後の鋼板は、鋼板上昇路30に沿って上昇した後、鋼板下降路31に沿って下降して、溶融金属めっき設備13の下流側に配置された水冷槽23に送板されている。一方、通板路12はバイパスであり、焼鈍炉21から送板された鋼板を、ポット32内を通過させることなく水冷槽23に送板するもので、竪型の通板路11に対して横型の通板路12となっている。
従って、焼鈍炉21の下流側に竪型の通板路11と通板路12の分岐点Xが、水冷槽23の上流側に竪型の通板路11と通板路12の合流点Yがそれぞれ存在し、しかも竪型の通板路11の鋼板上昇路30の途中に、竪型の通板路11と通板路12との交差点Zがある。
【0011】
パス切替え装置10は、竪型の通板路11の鋼板上昇路30の途中、即ち交差点Zの直上に、竪型の通板路11に待機する滞留材を固定するクランプ(第1の把持手段の一例)33を、また、竪型の通板路11の鋼板下降路31の上側に、竪型の通板路11に待機する滞留材を固定するクランプ(第2の把持手段の一例)34を、それぞれ鋼板上昇路30、及び鋼板下降路31に沿って配置している。このクランプ33、34は同様の構成となっており、クランプ33は、図3(A)、(B)に示すように、竪型の通板路11を送板される鋼板を挿通可能な矩形状の開口部35が中央部に備えられ、この開口部35を通過する鋼板(滞留材)の両側に、シリンダを有する駆動部36によって水平方向に往復運動可能とした押圧部37がそれぞれ備えられている。
【0012】
従って、使用にあっては、駆動部36によって押圧部37を滞留材側に移動(図3中の点線)させることで、滞留材を表裏両側から挟み込むことが可能であり、挟み付ける力としては、例えば電力、空気圧、油圧等の動力を用いたり、回転軸に接続されたハンドル等を人力で回すことにより加えることができる。なお、滞留材と接触する押圧部37の突出面は、滞留材を固定するために必要な静止摩擦力が確保できればどのような構造でも構わない。しかし、再度溶接した後に行う、竪型の通板路11における滞留材のスレッチング(搬送)時の作業性を考慮すると、滞留材に曲げ等の塑性変形を加えることがない構造、例えば、接触面積を大きくしたり、また突出面の曲率半径を大きくすることで、滞留材に対する局部的な接触を防止することが望ましい。
なお、例えば滞留材の重量を考慮して、クランプ34を設置することなく、クランプ33のみを設置し使用することも可能である。
【0013】
また、パス切替え装置10は、竪型の通板路11の鋼板下降路31出側、即ち合流点Yの上方に、滞留材の先端(一端)部を巻付ける巻取りドラム(巻取り手段の一例)38を備えている。
図4(A)、(B)に示すように、巻取りドラム38は、載置台39と、載置台39の両側にそれぞれ設けられた支持台40、41と、この支持台40、41に軸心42が回転可能に固定された略円柱状であるドラム43と、軸心42を回転駆動するモータ44とを有している。なお、このドラム43の幅方向中央部には縮径部45があり、ここにフック(掛止部)46が配置されている。
【0014】
このように構成することで、竪型の通板路11に待機した滞留材の下流側の一端に、紐部材(例えば、ワイヤ、ロープ等)を接続し、この紐部材の一端をドラム43のフック46に接続する。これにより、滞留材はドラム43に間接的に接続されるので、モータ44によってドラム43を回転させることで、紐部材をドラム43表面に位置させることなく、縮径部45の窪み内に巻取る。従って、紐部材と巻取る滞留材とを接触させることなく、ドラム43に滞留材を巻付けることができるので、滞留材の形状の崩れを防止できる。また、滞留材の下流側の一端を、直接ドラム43に接続し、モータ44によってドラム43を回転させることで、滞留材の一部を巻付けることも可能である。
なお、ドラム43の径(本実施の形態では、滞留材(鋼板)の厚みに応じて、例えば60〜80cm程度)は、滞留材の巻取り、巻解きの際に、滞留材が座屈することの無い径とする。
【0015】
そして、パス切替え装置10は、竪型の通板路11の鋼板下降路31出側に設けられ、滞留材の下流側に位置する切断後の鋼板の後端と、巻取りドラム38より巻解いた滞留材の先端とを接合するための溶接手段47を有している。なお、ポット32近傍には、溶接手段47と略同様の構成の溶接手段48が配置されている。
図5(A)、(B)に示すように、溶接手段47には、鋼板の後端と滞留材の前端をそれぞれ載置可能な、略鏡面対称となった溶接台49、50と、溶接台50の側部から上方向に伸ばしたポール(棒材)51に、片持ちでロール(パスラインロール)52が備えられたスレッチング部53と、溶接台49、50上にそれぞれ固定された鋼板と滞留材との接合を行う溶接機(図示しない)とを有している。
【0016】
この溶接台49、50には、鋼板及び滞留材の幅方向の移動を行うサイドガイド54と、サイドガイド54で移動させた鋼板及び滞留材を溶接台49、50上にそれぞれ固定する一対の固定部55とがそれぞれ備えられており、サイドガイド54のハンドル56と、固定部55のハンドル57が溶接台49、50の側部にそれぞれ設けられている。なお、このサイドガイド54と固定部55は、それぞれが鋼板及び滞留材の突合せ方向にシフト可能な構成となっており、鋼板及び滞留材に任意の重ね合わせ代を持たせることができる。これにより、鋼板と滞留材とを、溶接台49、50上において、それぞれサイドガイド54により無理なくセンター合わせして突合せ、固定部55で固定することが可能となり、簡単に溶接接合することが可能となる。
【0017】
また、スレッチング部53に設けられたポール51は、軸周りに90度以上回転可能な構造となっている。従ってロール52は、通常は溶接台50の上方で、滞留材の幅方向と平行に配置されているが、必要に応じて(例えば、スレッチング部53を使用しない場合、溶接終了後の滞留材を溶接台50から外す場合等)ポール51を回転させることで、ロール52の投影面が溶接台50の外部に出るようになっている。これにより、突合せる滞留材を、捩じ曲げることなくロール52によって溶接台50まで導入することができ、かつ、溶接後の滞留材と干渉させることなく滞留材を溶接台50の上部から退避させることができる。
なお、スレッチング部53は、溶接手段47の配置場所や、溶接台49、50に導入される滞留材や鋼板の導入方向に応じて、溶接台49に設けることも、また各溶接台49、50にそれぞれ設けることも可能である。ここで、溶接手段48は、スレッチング部53が溶接台49に設けられたものである。
【0018】
次に、本発明の一実施の形態に係るパス切替え装置を用いたパス切替え方法について、前記したパス切替え装置10を参照しながら、まず、鋼板の送板を溶融金属めっき設備13の竪型の通板路11から通板路12へ切替える場合について説明する。
竪型の通板路11に送板されている鋼板の送板を停止した後、竪型の通板路11と通板路12の分岐点X及び合流点Yにそれぞれ配置されたロール14の上流側、及びロール15の下流側にある各切断機により、鋼板を各場所でそれぞれ切断する。このとき、竪型の通板路11と通板路12とは、前記した交差点Zを有しているため、竪型の通板路11に滞留材が放置されていれば、通板路12に鋼板を送板した場合、交差点Zで滞留材と接触する。そこで、滞留材の下流側端部を、巻取りドラム38のドラム43に固定し、滞留材の上流側端部が、交差点Zの下流側、即ち直上に移動するまで、滞留材の一部をドラム43に巻取る。
ここで、滞留材を、竪型の通板路11の最上点に位置するロール58、59に掛けた状態で、滞留材の上流側端部及び中央部を、クランプ33、34でそれぞれ挟持し、竪型の通板路11に待機させる。
【0019】
そして、分岐点Xの上流側に位置する駆動ロールを正転することで、滞留材の上流側に位置する鋼板の先端を、ロール14、ロール60、交差点Z、ロール61とそれぞれ通過させ、通板路12を通って溶接手段47まで送板し、溶接台50上で位置合わせを行った後固定する(図6中の一点鎖線)。このとき、合流点Yの下流側に位置する駆動ロールを逆転することで、滞留材の下流側に位置する鋼板の後端を、溶接手段47まで搬送し溶接台49上で位置合わせを行った後固定する(図6中の二点鎖線)。
それぞれの溶接台49、50に固定した鋼板を、必要に応じて突合せ、又は重ね合わせた後、溶接機を用いて接合を行うことで、竪型の通板路11から通板路12への通板方向の切替えが行われ、鋼板を連続的に通板路12に送板することが可能となる。
【0020】
続いて、鋼板の送板を溶融金属めっき設備13の通板路12から竪型の通板路11へ切替える場合について、図7を参照しながら説明する。
通板路12を送板されている鋼板の送板を停止した後、竪型の通板路11と通板路12の分岐点Xの上流側に配置された切断機により、鋼板を切断する。ここで、合流点Yの下流側に位置する駆動ロールを正転することで、切断された上流側の鋼板の先端部を、ロール14、ロール60、交差点Z、ロール61とそれぞれ通過させ、溶接手段47まで搬送し、溶接台49上で位置合わせを行った後固定する(図7(A)の二点鎖線)。一方、分岐点Xの上流側に位置する駆動ロールを正転することで、切断された下流側の鋼板の先端部を、ロール14、ロール62とそれぞれ通過させ、ポット32内を通過させることなく溶接手段48まで搬送し、溶接手段48の溶接台50上で位置合わせを行った後固定する(図7(B)の二点鎖線)。
【0021】
そして、巻取りドラム38に一部が巻き取られていた滞留材を、ドラム43を逆転させることで巻解き、滞留材の上流側端部を鋼板上昇路30のガイド63、64、65に沿って下降させる。このとき、滞留材の端部が鋼板上昇路30に沿って略真直ぐに下降するように、滞留材の下流側端部に予め例えばおもりを装着しておくことが好ましい。
このとき、巻取りドラム38の作動時間を調節し、ドラム43から巻解く滞留材の長さを調整しつつ、滞留材の後端、即ち上流側端部を、図7(B)に示すように、スレッチング部53のロール52を介して溶接手段48まで搬送し、溶接台49上で位置合わせを行った後固定する(図7(B)の一点鎖線)。なお、溶接台49上で固定された滞留材は、クランプ33、34で固定されている。
このように、スレッチング部53のロール52によって、滞留材を溶接台49上まで誘導するので、滞留材の折れ曲がりを防止できる。
溶接台49、50にそれぞれ固定した滞留材及び鋼板を、必要に応じて突合せ、又は重ね合わせして、溶接機を用いて接合を行った後、スレッチング部53のロール52を溶接台49から退避させ、溶接手段48の固定台49、50から接合した鋼板を外す。なお、溶接手段48で接合した鋼板をポット32内の溶融亜鉛の中に沈める場合、ポット32に配置されるロール66を予め取外し、接合した鋼板をポット32内に沈めた後、再度ロール66の取付けを行う。そして、鋼板をポット32の直上にあるガイド67で送板可能に固定する。
【0022】
次に、滞留材を巻取りドラム38から完全に巻解き、この滞留材の先端、即ち下流側端部を、スレッチング部53のロール52を介して溶接手段47まで搬送し、溶接台50上で位置合わせを行った後固定する(図7(A)の一点鎖線)。なお、溶接台50上で固定された滞留材は、クランプ33、34で固定されている。
このように、スレッチング部53のロール52によって、滞留材を溶接台50上まで誘導するので、滞留材の折れ曲がりを防止できる。
そして、溶接台49、50にそれぞれ固定した鋼板及び滞留材を、必要に応じて突合せ、又は重ね合わせして、溶接機を用いて接合を行った後、スレッチング部53のロール52を溶接台50から退避させ、溶接手段47の固定台49、50から接合した鋼板を外す。
【0023】
上記の方法により、通板路12から竪型の通板路11への通板方向の切替えが行われ、鋼板を連続的に竪型の通板路11に送板可能とした後、鋼板のめっき処理を連続的に行う。
なお、この鋼板中の滞留材部分は、鋼板が通板路12を送板されているときに放置されているため、製品として使用しないことが好ましい。
このように、通板路12から竪型の通板路11へパスの切替えを行うことにより、竪型の通板路11の全部に渡って鋼板をスレッチングする必要が無くなるため、作業時間を例えば従来の1/3程度とすることができ、作業効率が良好となることが分かる。
【0024】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、前記実施の形態においては、パス切替え装置を、竪型の通板路と、この竪型の通板路より低い位置にある通板路とを有する溶融金属めっき設備に使用した場合について説明した。しかし、竪型の通板路と、この竪型の通板路より低い位置にある通板路とを有していれば、他の設備、例えば他の板材製造設備、化学工場の製造設備、食品の製造設備等に適用することも可能である。
【0025】
また、前記実施の形態においては、パス切替え装置を、竪型の通板路と、この竪型の通板路より低い位置にある通板路とが1本ずつ備えられた設備に使用した場合について説明した。しかし、パス切替え装置を、竪型の通板路が複数備えられた設備に使用し、各竪型の通板路にそれぞれ滞留材を待機させて置くことも可能であり、また複数の通板路が備えられた設備に使用することも可能である。なお、このとき、竪型の通板路に必要なパス切替え装置の各手段は、竪型の通板路の本数に応じて増やす必要がある。これにより、竪型の通板路を使用する場合に、その都度鋼板を送板していく必要が無くなるので、作業効率が良好になり経済的である。
また、前記実施の形態においては、パス切替え装置を、竪型の通板路と低い位置にある通板路とが交差した設備に使用した場合について説明したが、交差しない設備に使用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】
請求項1記載のパス切替え装置においては、竪型の通板路の板材上昇路に沿って滞留材を固定する把持手段を設けているので、竪型の通板路に待機させる滞留材の重力の影響による落下を防止することが可能となる。このため、安全性を考慮して、予め通板路から滞留材を引抜く必要が無く、しかも接合時において再度竪型の通板路に沿って滞留材を移動させる必要が無くなるので、パス切替え作業が短時間となり効率的である。また、例えば滞留材における折れ曲がりの発生を防止できるので、溶接作業やスレッチング作業を効率的に行うことができ、経済的である。
そして、竪型の通板路の板材下降路出側に巻取り手段を設けているので、滞留材の形状を崩すことなく、竪型の通板路に待機する滞留材の長さを自由に設定することが可能となる。従って、待機時において発生し易い、例えば滞留材の折れ曲がりを防止できると共に、溶接作業時における滞留材の長さも自由に設定できるので、滞留材の接合部の補修や切除を行うことなく、しかも溶接作業用の余長も確保でき、作業性が良好である。
更に、板材下降路出側に溶接手段を設け、滞留材を把持手段で挟持した状態で、例えば滞留材を折り曲げることなく接合できるので、溶接に必要な作業時間の短縮を図ることができ作業性が良好である。
【0027】
請求項2記載のパス切替え装置においては、竪型の通板路の板材上昇路及び板材下降路に沿って滞留材を固定する第1、第2の把持手段を設けているので、竪型の通板路に待機させる滞留材の重力の影響による落下を、確実に防止することが可能となる。このため、安全性を考慮して、予め通板路から滞留材を引抜く必要が無く、しかも接合時において再度通板路に沿って滞留材を移動させる必要が無くなるので、パス切替え作業が短時間となり効率的である。また、例えば滞留材における折れ曲がりの発生を防止できるので、溶接作業やスレッチング作業を効率的に行うことができ、経済的である。
そして、竪型の通板路の板材下降路出側に巻取り手段を設けているので、滞留材の形状を崩すことなく、竪型の通板路に待機する滞留材の長さを自由に設定することが可能となる。従って、待機時において発生し易い、例えば滞留材の折れ曲がりを防止できると共に、溶接作業時における滞留材の長さも自由に設定できるので、滞留材の接合部の補修や切除を行うことなく、しかも溶接作業用の余長も確保でき、作業性が良好である。
更に、通板路の出側に溶接手段を設け、滞留材を把持手段で挟持した状態で、例えば滞留材を折り曲げることなく接合できるので、溶接に必要な作業時間の短縮を図ることができ作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパス切替え装置を適用した溶融金属めっき設備の説明図である。
【図2】同パス切替え装置を適用した溶融金属めっき設備の部分拡大図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用したクランプの平面図、正面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用した巻取りドラムの正断面図、側面図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ同パス切替え装置に使用した溶接手段の正面図、側断面図である。
【図6】鋼板の送板を竪型の通板路から横型の通板路へ変更する場合の接合方法の説明図である。
【図7】(A)、(B)はそれぞれ鋼板の送板を横型の通板路から竪型の通板路へ変更する場合の接合方法の説明図である。
【符号の説明】
10:パス切替え装置、11:竪型の通板路(第1の通板路)、12:通板路(第2の通板路)、13:溶融金属めっき設備(設備)、14:ロール、15:ロール、16:入側設備、17:ペイオフリール、18:溶接機、19:入側洗浄装置、20:入側ループカー、21:焼鈍炉、22:出側設備、23:水冷槽、24:スキンパスミル、25:後処理装置、26:出側ループカー、27:トリマー、28:検査室、29:テンションリール、30:鋼板上昇路(板材上昇路)、31:鋼板下降路(板材下降路)、32:ポット、33:クランプ(第1の把持手段)、34:クランプ(第2の把持手段)、35:開口部、36:駆動部、37:押圧部、38:巻取りドラム(巻取り手段)、39:載置台、40、41:支持台、42:軸心、43:ドラム、44:モータ、45:縮径部、46:フック、47、48:溶接手段、49、50:溶接台、51:ポール、52:ロール、53:スレッチング部、54:サイドガイド、55:固定部、56、57:ハンドル、58〜62:ロール、63〜65:ガイド、66:ロール、67:ガイド

Claims (2)

  1. 板材の送板を行う竪型の第1の通板路、及び該第1の通板路より低い位置にある第2の通板路を有する設備に使用し、前記板材の通板方向を切替えるため、前記第1の通板路と前記第2の通板路の分岐点近傍及び合流点近傍に、前記板材を切断する切断手段をそれぞれ配し、前記第2の通板路に前記板材を送板する場合には、前記両切断手段により前記板材から切り離された滞留材の部分を前記第1の通板路に滞留させるパス切替え装置であって、
    前記第1の通板路の板材上昇路に沿って設けられ、前記滞留材を固定する把持手段と、
    前記第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、前記滞留材の一端部を巻付ける巻取り手段と、
    前記第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、前記滞留材の下流側に位置する切断後の板材の後端と、前記巻取り手段より巻解いた前記滞留材の先端とを接合するための溶接手段と
    前記第1の通板路の板材上昇路の最下点近傍に設けられ、前記滞留材の上流側に位置する切断後の板材の先端と、前記巻取り手段より巻解いた前記滞留材の後端とを接合するための溶接手段とを有することを特徴とするパス切替え装置。
  2. 板材の送板を行う竪型の第1の通板路、及び該第1の通板路より低い位置にある第2の通板路を有する設備に使用し、前記板材の通板方向を切替えるため、前記第1の通板路と前記第2の通板路の分岐点近傍及び合流点近傍に、前記板材を切断する切断手段をそれぞれ配し、前記第2の通板路に前記板材を送板する場合には、前記両切断手段により前記板材から切り離された滞留材の部分を前記第1の通板路に滞留させるパス切替え装置であって、
    前記第1の通板路の板材上昇路及び板材下降路に沿ってそれぞれ設けられ、前記滞留材をそれぞれ固定する第1、第2の把持手段と、
    前記第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、前記滞留材の一端部を巻付ける巻取り手段と、
    前記第1の通板路の板材下降路出側に設けられ、前記滞留材の下流側に位置する切断後の板材の後端と、前記巻取り手段より巻解いた前記滞留材の先端とを接合するための溶接手段と
    前記第1の通板路の板材上昇路の最下点近傍に設けられ、前記滞留材の上流側に位置する切断後の板材の先端と、前記巻取り手段より巻解いた前記滞留材の後端とを接合するための溶接手段とを有することを特徴とするパス切替え装置。
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