JP3774160B2 - 多孔質構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築または構築等の構造体、特に透水性や断熱性等を持たせるために内部に空隙を有する多孔質構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート、モルタル、石膏等からなる建築用または構築用等の多孔質構造体に透水性や断熱性等が要求される場合には、例えばポーラスコンクリートのように構造体内部に空隙を有するものが用いられている。このポーラスコンクリートは、例えば貧配合すなわち砂や砂利等の骨材に対するセメントの配合割合を少なくすることによって内部に空隙を形成したり、或いは、起泡・発泡・空気連行等の手段により内部に空隙を形成するものである。
【0003】
しかし、上記のような貧配合にすると、図12に示すように骨材Bに、固化したセメントペーストCが付着していない部分が生じ、著しい強度低下が生じるのは避けられない。また、空隙Aの状態は、材料の配合、練混ぜ方法、温度等により、逐一変わってくるので、工場生産等でブロックに形成する場合には比較的問題は少ないが、現場施工では品質管理が非常に難しいという不都合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、工場生産はもとより現場施工においても品質管理が容易で、しかも必要な強度を良好に得ることのできる多孔質構造体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明による多孔質構造体は、以下の構成としたものである。即ち、トンネルの二次覆工コンクリートの背面と地山との間に配置される多孔質構造体であって、上記多孔質構造体を構成するコンクリート等の基材中に混入した水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材を、水溶解または熱溶解により収縮または消失させて形成してなる空隙を上記構造体内に有し、上記空隙によって前記地山から浸透してきた水を上 記構造体内で順次移動させて下方に排出し得るように構成したことを特徴とする。
【0006】
また本発明による他の多孔質構造体は、法面の風化防止コンクリートの背面と地山との間に配置される多孔質構造体であって、上記多孔質構造体を構成するコンクリート等の基材中に混入した水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材を、水溶解または熱溶解により収縮または消失させて形成してなる空隙を上記構造体内に有し、上記空隙によって前記地山からの湧水を上記構造体内で移動させて下方に排出し得るように構成したことを特徴とする。
【0007】
上記の水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材としては、例えばゼラチンや膠などのコラーゲンを用いることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す実施形態に基づいて本発明による多孔質構造体を具体的に説明する。
【0009】
図1はトンネル坑壁面Wにいわゆる一次覆工として施工される吹付けコンクリートの代わりに本発明による多孔質構造体を施工したものである。図において、1は本発明による多孔質構造体で、該構造体1内にはコンクリート等の基材中に混入した水溶性や熱溶解性を有する空隙形成材を、水溶解や熱溶解により収縮または消失させて形成した多数の空隙が設けられている。図中、2はゴム等よりなる防水シートや防水コンクリート等で形成した止水材、3は二次覆工コンクリート、Gは地山である。
【0010】
上記の構造体1を施工するに当たっては、砂や砂利等の骨材に適当量のセメントと水とを混合したコンクリート等の基材に、水溶性や熱溶解性を有する空隙形成材を適当量加えて混練するもので、上記の基材としては、コンクリートのほかにモルタル、石膏、アスファルト等を用いることができる。
【0011】
また上記の空隙形成材としては、例えばゼラチンや膠などのコラーゲンからなる水溶性もしくは熱溶解性材料を用いることができ、その空隙形成材の性状は、粒状、繊維状、紐状、ロープ状、カプセル状、メッシュ状等その他適宜である。求められる空隙の特性に応じた形で空隙形成材の形状を適宜選択することにより、任意の形状の空隙を多孔質構造体内に形成することができる。
【0012】
なお粉末状の空隙形成材にあっては、粒状、繊維状、紐状等に成形して用いるとよく、例えば粉末状のゼラチン10などにあっては、それを図2(a)のような撹拌容器S内の熱湯b中に投入して撹拌混合した後、同図(b)のように所定形状の成形型F内に入れてブロック状に成形する。次いで、ゼリー状に固まったら同図(c)のように棒状に切り分け、それを図に省略した冷蔵庫等で冷却・乾燥させれば同図(d)のような繊維状の空隙形成材11が得られる。
【0013】
また前記の基材と空隙形成材とは、例えば図3に示すようなミキサーM等に投入して混練した後、ホッパーH等からポンプP等により施工位置に順次圧送供給してトンネル坑壁面Wに打設もしくは吹き付けて構造体1を形成し、次いで、その表面に前記止水材2と二次覆工コンクリート3とを施工するものである。
【0014】
上記のようにして形成した構造体1の中には空隙形成材が混入しており、その空隙形成材を水溶解や熱溶解する。例えば、前記の基材としてコンクリートやモルタルもしくは石膏等を用い、空隙形成材としてゼラチンや膠などのコラーゲンからなる水溶性および熱溶解性材料を用いた場合には、上記基材中の水分やトンネル壁面から上記構造体内に浸透してくる水分、およびコンクリート中のセメント等の水和反応による熱で空隙形成材料を分解することができる。
【0015
このようにして構造体1中の空隙形成材を分解することによって、その空隙形成材が収縮または消失した箇所に空隙が形成されるもので、例えば粒状もしくはカプセル状等の空隙形成材を用いた場合には、図4(a)のように気泡状の多数の空隙Aが各々独立に分散した状態に形成され、繊維状もしくはロープ状等の空隙形成材を用いた場合には、同図(b)のように空隙Aが略線状で且つ隣接する部分が互いに連通した状態に形成される。図中、Bは骨材、Cは固化したセメントペーストである。
【0016
上記のようにして構造体1内に形成された空隙Aによって、構造体1の透水性や断熱性等を増大させることができる。すなわち、上記のようなコンクリートやモルタル等の基材で形成した構造体1は、それ自体多少の透水性を有するものであるが、その構造体1内に形成された空隙Aによって、それがたとえ上記図4(a)のように各々独立に分散した状態にあっても、それらの空隙によって水の流れが助長され、透水性を高めることが可能となり、また同図(b)のように空隙Aが互いに連通したものにあっては更に透水性を向上させることができる。
【0017
それによって、例えば地山G内から坑壁面Wに水が浸透してきた場合には、先ず、上記構造体1がそれを吸収し、その構造体1内に吸収された水は、前記止水材2によって二次覆工3側には浸透することなく、上記構造体1内を下方に向かって順次移動しながら排出されるものである。
【0018
上記実施形態は一次覆工を形成する際のコンクリート中に空隙形成材を混入させたが、例えばロープ状またはメッシュ状等の空隙形成材をトンネル坑壁面に設置してからコンクリートを打設もしくは吹き付けてもよい。図5はその一例を示すもので、同図(a)のようにトンネル坑壁面Wにメッシュ状の空隙形成材11を配置してからコンクリート等の基材を吹付けることによって同図(b)のように構造体1を形成し、その上に止水材2と二次覆工3とを施したものである。
【0019
上記の空隙形成材11をトンネル坑壁面Wに配置する際には、必要に応じて図に省略した治具等で固定するとよく、また、その治具による上記トンネル坑壁面Wに対する空隙形成材の配置位置すなわち坑壁面Wからの離間距離等を調整すれば、上記構造体1内の厚さ方向の所望の位置に空隙形成材11を設置することができる。
【0020
上記のようにして構造体1内に配設された空隙形成材11は、上記実施形態と同様に水溶解や熱溶解し、それによって空隙を形成するもので、本実施形態においてはメッシュ状の空隙形成材を用いたことによって、図6に示すようにメッシュ状の互いに連通した空隙Gを形成することができる。他の構成は前記実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0021
以上のようにトンネル坑壁面Wに一次覆工として施工される吹付けコンクリートの代わりに本発明による構造体1を施工することによって施工の効率化と構造の簡略化を図ることができる。すなわち、従来のトンネルの防水施工においては、吹付けコンクリートで坑壁面を覆ってから所定厚さの不織布等よりなる緩衝層を敷設し、その上に防水シートや防水コンクリート等の止水材を施工していたが、本発明では坑壁面Wに上記のような構造体1を形成するだけで、透水性とともに強度も確保されるので、上記のような吹付けコンクリートが必ずしも必要なくなり、上記構造体1の上に直接防水シートや防水コンクリート等の止水材2を施工することができる。
【0022
また、従来の透水性緩衝材の透水係数は一般に10−1レベルであり、季節的要因等で湧水が多くなると排水能力が不足する場合があるが、本発明においては空隙形成材の配合割合を適宜調整することにより透水係数を任意にコントロールできるので、必要に応じて上記構造体1に高い排水性を付与することができる。
【0023
以上の実施形態はトンネル坑壁面に施工する場合を例示したが、他の建築もしくは構築構造体にも適用可能である。図7は崖等の地山法面に適用したもので、例えば同図のように地山Gの法面に本発明による多孔質構造体1を施工した後、風化防止コンクリート5を施工すれば、地山Gからの湧水を上記多孔質構造体1で全面的に排水することができる。
【0024
従来は上記のような地山法面に風化防止コンクリート5を直接吹付けていたので、その背面で水みちが形成され、地盤が流れて、時間の経過とともに吹付けコンクリート5の背面に空洞が生じたり、表層すべり等が発生するおそれがあったが、上記のような構造体1を形成すると、それによって表層地盤を押えながら湧水を排出して、長期にわたって法面を安定的に防護することができる。
【0025
なお、本発明による多孔質構造体1は、現場施工する場合に限らず、例えば工場等で予めパネル状もしくはブロック状その他所望形状に成形してから現場施工することもできる。
【0026
【実施例】
基材としてプレミックスモルタルを用い、それに空隙形成材11としてゼラチン粉末を前記図2の要領で繊維状に形成したものを複数種類の混入率で混ぜて直径50mm、高さ100mmの円柱状の多孔質構造体1を作製して諸特性を調べた。その結果および参考例として既存の植生用および舗装用ポーラスコンクリートと気泡コンクリートの特性を下記表1に示す。
【0027
【表1】
Figure 0003774160
【0028
なお上記表1中の値は各混入率毎に複数回測定した平均値であり、また圧縮強度は材令9日の値である。さらに上記の測定値に基づいて、混入率との関係を示すグラフを図〜図11に示す。
【0029
空隙形成材11としてゼラチンや膠などのコラーゲンからなる水溶性もしくは熱溶解性材料を用いた場合には、これがコンクリート等の基材から流出した場合にも、地盤や河川等の環境に悪影響を及ぼす懸念がなく、従って、求められる透水性に応じた任意の配合量を安心して混入することができる。
【0030
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明による多孔質構造体は、上記の構成であるから、基材と空隙形成材との混練時には空隙形成材が未分解状態で粒状、繊維状、紐状、ロープ状、カプセル状、メッシュ状等の様態を呈し、また、その混入量、混入形態を任意に設定することができる。従って、出来上がり透水性硬化材料の内部に形成される空隙量、配置状態を目的に応じた所望のものにすることができる。特に、空隙形成材の混練、配置は現場においても出来るため、工場生産する場合だけでなく現場打設、吹き付け等により多孔質構造体を作る場合にも、品質管理が容易である。
【0031
また、構造体内部において空隙形成材が配置していた部分に空隙が形成されるので、骨材はその周囲が確実に基材のペーストによって覆われた状態となり、骨材間の連結が切れた形となることがない。よって、材料の強度低下は、必要最低限に抑えられ、必要強度を良好に維持できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による構造体をトンネル坑壁面に形成した例の斜視図。
【図2】 粉末状の空隙形成材を繊維状に形成する場合の一例を示す説明図。
【図3】 基材と空隙形成材とを混練して供給する装置構成の一例を示す説明図。
【図4】 (a)および(b)は構造体の一部の拡大図。
【図5】 本発明による構造体をトンネル坑壁面に形成した他の例の斜視図。
【図6】 構造体の一部の拡大図。
【図7】 本発明による多孔質構造体を崖等の法面に適用した例の説明図。
【図】 実施例における空隙形成材の混入率と単位体積重量との関係を示すグラフ。
【図】 実施例における空隙形成材の混入率と空隙率との関係を示すグラフ。
【図10】 実施例における空隙形成材の混入率と透水係数との関係を示すグラフ。
【図11】 実施例における空隙形成材の混入率と圧縮強度との関係を示すグラフ。
【図12】 従来のポーラスコンクリートの一部の拡大図。
【符号の説明】
1 構造体
2 止水材
3 二次覆工
G 地山
W トンネル坑壁面

Claims (3)

  1. トンネルの二次覆工コンクリートの背面と地山との間に配置される多孔質構造体であって、
    上記多孔質構造体を構成するコンクリート等の基材中に混入した水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材を、水溶解または熱溶解により収縮または消失させて形成してなる空隙を上記構造体内に有し、
    上記空隙によって前記地山から浸透してきた水を上記構造体内で順次移動させて下方に排出し得るように構成したことを特徴とする多孔質構造体。
  2. 法面の風化防止コンクリートの背面と地山との間に配置される多孔質構造体であって、
    上記多孔質構造体を構成するコンクリート等の基材中に混入した水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材を、水溶解または熱溶解により収縮または消失させて形成してなる空隙を上記構造体内に有し、
    上記空隙によって前記地山からの湧水を上記構造体内で移動させて下方に排出し得るように構成したことを特徴とする多孔質構造体
  3. 前記の水溶性または熱溶解性を有する空隙形成材として、ゼラチンや膠などのコラーゲンを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質構造体
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