JP2007022872A - 透水性コンクリート部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高強度、特に曲げ強度が高く、しかも安価な透水性コンクリート部材を提供すること。
【解決手段】 連続空隙7を有する多孔質コンクリートからなる表層2と、貫通孔3が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層4とを、一体化してなる透水性コンクリート部材であって、前記ポリマーセメントモルタルは、セメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、消泡剤とを少なくとも含むものであることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、透水性舗装板、排水溝やマンホールの蓋などの透水型コンクリート製品、或いは浸透型コンクリート製品に用いることができる透水性コンクリート部材に関し、特に、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層とを有する透水性コンクリート部材に関するものである。
近年、総合的な治水対策の観点から、「水循環」というキーワードが導入され、雨水貯留浸透施設等の普及が強力に押し進められている。
この雨水貯留浸透施設は、例えば公園、道路の地下等に大規模な貯水槽を構築し、該貯水槽に集中豪雨時等における雨水を一旦貯留し、その後、該貯水槽から徐々に地下に水を浸透させることによって、集中豪雨時における洪水の制御、河川の平常時流量の確保、更には、ヒートアイランド現象の低減、地下水の涵養等を図るものである。
上記雨水貯留浸透施設等の構築に際しては、透水性を有する高強度の部材が必要となる。例えば、貯水槽の上部を覆い、その上方に公園、道路等を形成する蓋材には、雨水を下方の貯水槽に通過させると共に、上方からの荷重に耐える強度が必要となる。また、貯水槽自体を構築する部材も、一旦は雨水を貯留する作用を求められるが、その後は徐々に地下に水を浸透させる作用を要求されることから、透水性を有する高強度の部材で構築することが望ましい。
透水性を有する高強度の部材としては、特許文献1に開示された透水性ブロック、或いは特許文献2に開示されたプレキャストコンクリート舗装版等がある。
特許文献1に開示された透水性ブロックは、表層と基層との層状構成を有し、表層は、空隙率が25〜50%の範囲内にあり、骨材粒は平均粒径が0.5〜2mmの範囲内にあると共に最大寸法及び平均粒径において基層の骨材粒よりも小さく、基層は、空隙率が10%以上であると共に表層よりも低い空隙率を有し、かつ、骨材粒の平均粒径が1.5〜2.5mmの範囲内にあることを特徴とするものであり、その曲げ強度は30kgf/cm2(約3N/mm2)以上(実施例の10個平均は62.3kgf/cm2)とされている。
また、特許文献2に開示されたプレキャストコンクリート舗装版は、透水性多孔質コンクリート層と非透水性コンクリート基層とからなる2層構造プレキャストコンクリート舗装版であって、透水性多孔質コンクリート層の配合組成を工夫し、該透水性多孔質コンクリート層の空隙率、透水係数、曲げ強度を、それぞれ、10〜25%、10-2cm/sec、3N/mm2 以上としたことを特徴とするものであり、非透水性コンクリート基層には、該コンクリート基層を貫通して上記透水性多孔質コンクリート層に達する導水路を形成することも開示されている。
特開2001−146703号公報 特開2001−164502号公報
ここで、上記特許文献1或いは特許文献2に記載された部材は、いずれも透水性を有する道路舗装への使用を想定しており、突き固めた路盤上等に載置されることから、3N/mm2 以上の曲げ強度を有していれば、強度的には充分であると考えられるが、上記した雨水貯留浸透施設における貯水槽の上部を覆う蓋材等として使用される場合には、両端支持状態となるため、強度、特に曲げ強度の更に高い部材が必要となる。
また、上記特許文献1の技術にあっては、基層材料を型に入れて加圧成形した後、その上方に表層材料を入れて加圧成形し、得られた成形体を焼成して製造することとしているため、その製造工程は複雑であり、また燃料コストもかかることから、高価となる。また、特許文献2の技術にあっても、透水性多孔質コンクリート層の強度を上げるため、原料に特殊な混和材(有機ポリマー等)や混和剤(増粘剤、高性能減水剤等)を添加しており、コストが高くつく。
本発明は、上述した背景技術が有する実情に鑑みて成されたものであって、その目的は、高強度、特に曲げ強度が高く、しかも安価な透水性コンクリート部材を提供することにある。
上記した目的を達成するため、本発明に係る透水性コンクリート部材は、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層とを、一体化してなる透水性コンクリート部材であって、好ましくは、前記ポリマーセメントモルタルが、セメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、消泡剤を少なくとも含むものとする。
ここで、上記本発明において、強度、特に曲げ強度の発現性の観点から、上記ポリマーエマルジョンとしてポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを使用すること、また、上記セメントとして早強ポルトランドセメントを使用することは、いずれも好ましい実施の形態である。
また、上記本発明において、透水性の観点から、上記多孔質コンクリートからなる表層の連続空隙率を10〜40%とすること、また、上記ポリマーセメントモルタルからなる基層の貫通孔の開口面積率を0.5〜50%とすることは、いずれも好ましい実施の形態である。
さらに、上記ポリマーセメントモルタルとして自己流動性を有するものを使用することは、製造の容易性や多孔質コンクリートの表層との接着性の観点から好ましい。
上記した本発明に係る透水性コンクリート部材によれば、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層が、ポリマーセメントモルタルからなる高強度、特に高曲げ強度の基層によって支持・補強された格好となっているため、普通コンクリートを基層としたものに比して、優れた曲げ強度特性を発揮する。また、本発明に係る透水性コンクリート部材は、ポリマーセメントモルタルからなる基層によって、その全体としての強度が確保されるため、表層部を構成する多孔質コンクリートとして、特殊な混和材や混和剤が添加された、特別に高強度で、高価なものを使用する必要はなく、また、ポリマーセメントモルタルを用いた基層は、通常のポリマーセメントモルタル製品の製法に準じて製造できるため、全体を低コストにて製造することができる。さらに、本発明に係る透水性コンクリート部材は、表層が連続空隙を有する多孔質コンクリートであり、基層には貫通孔が形成されているため、充分な透水性能を発揮する。
以下、上記した本発明に係る透水性コンクリート部材の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る透水性コンクリート部材1は、図1に示すとおり、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層2と、貫通孔3が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層4とが、一体的に結合された構造となっている。
上記連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層2は、例えば5〜40mm程度の砕石等の粗骨材からなる骨材5を、セメントペースト6で被覆すると共に骨材同士を該セメントペーストで接着して硬化させ、骨材同士の間隙に連続空隙7を形成したものであり、必要に応じて顔料が添加される。骨材5は、直径が同程度の軽石、セラミック骨材、レンガ屑、軽量骨材等を使用しても良い。セメントペースト6は、微粒や細粒の骨材を含むものであっても良い。また、ポリマーセメントペーストであっても良い。更に、セメントにシリカフューム、水ガラス、その他強度増進材を混和しておくことは好ましい。
多孔質コンクリートからなる表層2の連続空隙率は、10〜40%が適当であり、更には15〜35%が好ましい。
これは、10%に満たない連続空隙率のものである場合には、充分の透水性能(例えば、透水係数が1×10-2cm/sec以上)が得られないためであり、逆に連続空隙率が40%を超えると、外観、強度、さらには車両走行性等において不都合が生じるためである。
なお、上記「連続空隙率」は、下記の式(1)により算出した値である。

連続空隙率(%)=〔(V0 −V1 )/V0 〕×100 ・・・ 式(1)

ここに、V0 :試供体の見かけの体積(cm3
1 :骨材と結合材との独立空隙との体積(cm3)=(A−C)/γw :試供体を常温の水中に24時間放置した後の水中重量(g)
A :水中重量を測定した試供体を布に包み、90分間放置した後の同試供体 の重量(g) ※これは「表乾重量」と呼ばれる。
γw :常温の水の密度(≒1.0g/cm3
また、上記連続空隙における各々の孔径は、2〜10mmが好ましい。
これは、連続空隙の孔の径が小さ過ぎると、目詰まりが生じ易く、逆に大き過ぎると、透水性と強度のバランスが悪くなる。
上記した連続空隙の空隙率や孔の大きさは、粗骨材の径、粗骨材の量、セメントペーストの量等によって、適宜調節できる。
本発明においては、上記多孔質コンクリートからなる表層2としては、従来より存在する、いわゆるポーラスコンクリートを広く使用することができる。
これに対し、本発明に係る基層4を形成するポリマーセメントモルタルとしては、セメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、消泡剤を少なくとも含むものであることが好ましい。
上記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の何れでも良いが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましく、気中養生の場合は普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントが、蒸気養生の場合は早強ポルトランドセメントが特に好ましい。
また、本発明のポリマーセメントモルタルに用いる骨材は、上記したように細骨材である。この細骨材は、特に限定されるものではなく、通常コンクリート製品に使用される細骨材であれば良い。例えば、静岡県小笠産陸砂(表乾密度2.60g/cm3)が例示される。また、細骨材の粒径は0.15〜5mmが好ましい。
なお、骨材の60重量%以下であれば、粒径5〜20mmの粗骨材を含ませておいても良い。また、骨材の配合量は、セメント100重量部に対して100〜300重量部が好ましい。
また、本発明のポリマーセメントモルタルに用いるポリマーエマルジョンとしては、曲げ強度の発現性の観点から、アクリル系エマルジョンとアクリル−スチレン系エマルジョンが好ましく、アクリル系エマルジョンがより好ましい。該アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体を含む単量体組成物を乳化重合して得ることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートが好ましい。
上記ポリマーエマルジョンの好ましい粒子径は、50〜400nmであり、さらに好ましくは100〜200nmである。また、ポリマーエマルジョンの固形分としては、30〜70質量%であることが好ましく、さらに好ましくは45〜70質量%である。さらに、ポリマーエマルジョンの粘度は、200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましい。
これは、粒子径が400nm以上になると、セメント粒子間の充填効果やボールベアリング効果が低減されるため、本発明の目的である高曲げ強度のポリマーセメントモルタルからなる基層をつくる観点から適用されない。また、固形分が30質量%より小さいと、ポリマーエマルジョンに含まれる水量と細骨材に付着する表面水量だけで、ポリマーセメントモルタルの単位水量を上回る恐れがあるため、現実的ではない。さらに、粘度が200mPa・s以上になると、練り上がりのポリマーセメントモルタルは粘性が高く、型枠への充填効果が悪くなり、均一なポリマーセメントモルタルからなる基層4が得られないため好ましくない。
また、上記ポリマーエマルジョンの配合量は、セメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で5〜22質量部が好ましく、8〜14質量部がより好ましい。
これは、ポリマーエマルジョンの配合量がセメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で5質量部未満では、流動性が低下し、曲げ強度が低下するので、好ましくない。一方、ポリマーエマルジョンの配合量がセメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で22質量部を超えると、ポリマーの補強効果による曲げ強度の増加分よりも、セメント硬化体の占める量の減少による曲げ強度の低下分のほうが大きくなるため、ポリマーセメントモルタル複合体としての曲げ強度が低下し始めるため好ましくない。
本発明のポリマーセメントモルタルに用いる高性能減水剤としては、通常コンクリートに用いられる高性能AE減水剤でない高性能減水剤であれば何でも良いが、減水効果の高いものが望ましい。例えば、ポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤が例示される。この高性能減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して1〜3質量部が好ましい。
また、本発明のポリマーセメントモルタルに用いる消泡剤としては、シリコーン系エマルジョンや特殊非イオン界面活性剤が例示される。一般に、セメントモルタル中にポリマーエマルジョンを混入すると気泡が発生し、必要以上の空気(気泡)連行を伴うため、緻密な高強度ポリマーセメントモルタル硬化体をつくるには、適当な消泡剤を添加する必要がある。消泡剤の添加方法としては、予めポリマーエマルジョンの製造時に添加しても良く、ポリマーエマルジョンの製造時に添加せずポリマーセメントモルタル練り混ぜ時に添加しても良く、また、ポリマーエマルジョンの製造時に一部添加し、ポリマーセメントモルタル練り混ぜ時にさらに添加することもできる。
上記消泡剤の配合量は、ポリマーエマルジョン100質量部に対して0.5〜7質量部が好ましい。
これは、消泡剤の配合量がポリマーエマルジョン100質量部に対して0.5質量部未満では、ポリマーセメントモルタルの連行気泡を充分に消すことができず、その結果、曲げ強度が低下するので好ましくない。一方、消泡剤の配合量がポリマーエマルジョン100質量部に対して7質量部を超えて配合しても、連行気泡の大部分がすでに消されているため、あまり効果がなく、不経済になるためである。
本発明のポリマーセメントモルタルには、必要に応じて、高炉スラグ粉末、無水石膏、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、珪石粉末から選ばれる1種以上の粉末を更に添加しても良い。また、本発明のポリマーセメントモルタルは、成形性の観点から自己流動性を有するものであることが好ましく、この自己流動性は、主にポリマーエマルジョンと高性能減水剤の併用によって付与することができる。なお、本発明においては、細孔にも毛細現象によってモルタルが入り込む程度の自己流動性があることが好ましく、JIS R 5201−1997に規定されているフロー試験(0打)によるフロー値で表せば、230mm以上であることが好ましい。
上記ポリマーセメントモルタルにより形成される基層4には、貫通孔3が形成される。この貫通孔3は、ポリマーセメントモルタルからなる基層4の板面を上下方向に貫通するものであれば、その形状は問わない。
上記貫通孔3のポリマーセメントモルタルからなる基層4の水平横断面に対する開口面積率は、0.5〜50%が適当であり、更には2〜30%が好ましい。また、貫通孔3の1個当たりの開口面積は、20cm2以上であり、かつ基層4の水平横断面積の50%以下であることが適当であり、更には50cm2以上であり、かつ基層4の水平横断面積の30%以下であることが好ましい。
これは、前記開口面積率が0.5%に満たない場合には、充分な透水性能(例えば、透水係数が1×10-2cm/sec以上)が得られないためであり、逆に開口面積率が50%を超えると、ポリマーセメントモルタルからなる基層4の強度が低下するので好ましくない。また、前記貫通孔3の1個当たりの開口面積が20cm2に満たない小さなものである場合には、形成すべき貫通孔3の数が増え、成形し難くなると共に、貫通孔が詰まり易くなるために好ましくない。また開口面積が基層4の水平横断面積の50%を超えると、ポリマーセメントモルタルからなる基層4の強度が低下するので好ましくない。
次に、上記した本発明に係る透水性コンクリート部材1における、多孔質コンクリートからなる表層2と、ポリマーセメントモルタルからなる基層4の厚さについてであるが、これは、本発明に係る透水性コンクリート部材1の使用目的によって大きく相違し、一概に好ましい範囲を規定できないが、例えば、貯水槽の蓋材として使用する場合には、前記表層2の厚さは、20〜300mmが適当であり、更には60〜200mmが好ましく、また、前記基層4の厚さは、20〜400mmが適当であり、更には40〜300mmが好ましい。
即ち、本発明の透水性コンクリート部材を用いて貯水槽の蓋を構築する場合、蓋に作用する荷重やコンクリート部材自身の耐久性、更には施工性から、同コンクリート部材の全厚みは、100〜500mmであることが好ましい。その内、強度的な観点から、前記基層4の厚さは、40〜300mmが適当であり、残りの厚さ部分が、前記表層2の好ましい厚さとなる。
また、本発明に係る透水性コンクリート部材1の形状寸法、特に平面寸法に関しても、その使用目的等によって大きく相違し、一概に好ましい範囲を規定できない。しかし、その平面寸法が、あまりに小さすぎると、曲げ強度が強い特徴が十分に発揮されない。逆にあまりに大きすぎると、設計荷重を満たすために、部材厚が増え、重量は重くなり、施工効率が低下する。よって、一応好ましい範囲は存在する。具体的には、平面寸法が、縦横共に30〜500cm程度の矩形内に収まるようなものであることが好ましく、更には50〜400cm程度の矩形内に収まるようなものであることが好ましい。
更に、本発明に係る透水性コンクリート部材1の強度、特に曲げ強度は、構成する表層と基層のそれぞれの強度や厚み、基層部分の開口面積率などによって違い、また用途や使用目的によっても好ましい値が異なるので、一概には言えない。しかし、表層部のポーラスコンクリートの曲げ強度補強材として使う基層部材料の曲げ強度は、少なくとも表層部のポーラスコンクリートの曲げ強度よりも高いものであることは言うまでもない。一般に、表層に使用されるポーラスコンクリートの曲げ強度は5N/mm2未満であることを考えると、基層部に使うポリマーセメントモルタルの曲げ強度は、少なくとも5N/mm2以上であり、好ましくは10N/mm2以上であり、特に好ましくは15N/mm2以上である。従来の普通コンクリートによる基層部のように、基層部の曲げ強度が5N/mm2程度であると、十分な補強効果が期待できない。基層部の曲げ強度が高ければ高いほど、同一荷重を受ける場合の必要な基層部の厚みが薄くなり、部材も軽量にできるため、メリットが大きい。
次に、上記した本発明に係る透水性コンクリート部材の製造方法の一例を示す。
先ず、連続空隙を有する表層2を構成する多孔質コンクリート板Aを製造する。この多孔質コンクリート板Aは、何ら限定される製造方法はなく、公知のポーラスコンクリート成形体の製法を広く採用できる。なお、多孔質コンクリート板Aの底部には、後述するように円筒状突起Tが嵌まり込む切欠溝Mが設けられる。
続いて、基層4を形成するポリマーセメントモルタルPを調整する。
このポリマーセメントモルタルPの配合組成は、例えば、次のものとする。
・ポルトランドセメント:630〜1070kg/m3
・細骨材:1070〜1260kg/m3
・ポリマーエマルジョン:固形分(有効成分)換算で60〜140kg/m3
・高性能減水剤:5〜20kg/m3
・消泡剤:3〜14kg/m3
・水:150〜190kg/m3(但し、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤およ び消泡剤中の水分含む。)
上記配合組成になるように各材料を計量し、先ずポルトランドセメントと細骨材とをミキサーに投入・攪拌(空練り)し、更にポリマーエマルジョン、水、高性能減水剤、消泡剤を加えて練り混ぜ、ポリマーセメントモルタルPを調整する。
得られたポリマーセメントモルタルPを、図2に示したように、貫通孔を形成するための円筒状突起Tが複数植設された型枠Kに流し込み、その直後に、予め製造しておいた上記多孔質コンクリート板Aを、前記円筒状突起Tの先端に多孔質コンクリート板Aの下面の切欠溝Mが嵌まるように設置する。そして、ポリマーセメントモルタルPの上面から1〜5cmの深さまで多孔質コンクリート板Aの下面が沈み込むように上方から鋼板Zを介して多孔質コンクリート板Aの上面を押圧し、多孔質コンクリート板AとポリマーセメントモルタルPとの接合層が1〜5cmとなるようにセットし、蒸気養生する。その後、脱型することにより、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層2と、貫通孔3が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層4とが、一体的に結合された本発明に係る透水性コンクリート部材1が得られる。
なお、円筒条突起Tは、少なくとも上端部が中空円筒状になっており、上方からの押圧により、中空円筒の上壁部が多孔質コンクリート板Aの底部に形成された切欠溝Mに嵌まり込むような構造になっている。また、養生は、蒸気養生以外の養生方法でも製造できるが、好ましくは蒸気養生が良く、特に、セメントとして早強ポルトランドセメントを用いた場合には、蒸気養生がより好ましい。
以上、詳述した本発明に係る透水性コンクリート部材の使用用途としては、透水性が要求されるU型溝、ボックスカルバート、マンホールなどの上下水道関連のコンクリート製品、透水性舗装板、更には、大型の雨水貯留浸透施設の蓋材、貯水槽自体の壁材に使用できる。
−実施例1,2−
・連続空隙を有する多孔質コンクリート板の製造
ゼロスランプの表1に示した配合組成のコンクリートを、各々図3に示した型枠k内に供給し、振動加圧した後、直ちに脱型し、養生することによって、連続空隙を有する配合1、及び配合2の多孔質コンクリート板を製造した。
なお、型枠kの底部には、図3に示すように、多孔質コンクリート板の底部に切欠溝(図2に示す円筒状突起Tの一部を嵌め込む切欠溝)Mを形成するために、円筒状突起Tの位置に対応させて円筒状小突起tが設けられている。また、コンクリートを型枠内に供給した後の振動数は7000rpm、振動加速度は25G(1G:地表面における重力加速度)、振動加圧時間は5秒とした。養生は、気中養生で行った。
Figure 2007022872
上記製法により製造した連続空隙を有する多孔質コンクリート板の形状寸法、及び諸特性は、次ぎのものであった。
・外形寸法:縦100cm、横100cm、厚さ10cm(配合1),
縦100cm、横100cm、厚さ8cm(配合2)
・連続空隙率:25.2%(配合1),18.2%(配合2)
・曲げ強度:3.9N/mm2(配合1),4.7N/mm2(配合2)
・圧縮強度:18.1N/mm2(配合1),24.1N/mm2(配合2)
なお、連続空隙率は、前記した式(1)により求めた値である。曲げ強度及び圧縮強度は、多孔質コンクリート板から切り出した10×10×40cm、及び直径10×高さ20cmの供試体を用いて、各々JIS A 1106−1999、及びJIS A 1108−1999に記載された試験方法に準拠して求めた値である。
・ポリマーセメントモルタルの調整及び透水性コンクリート部材の製造
表2に示した配合組成になるように各材料を計量し、先ず早強ポルトランドセメント、シリカフューム、細骨材とを2軸ミキサー(IHI社製:DAM60)に投入・攪拌(空練り)し、更にポリマーエマルジョン、水、高性能減水剤、消泡剤を加えて練り混ぜ、配合A、及び配合Bのポリマーセメントモルタルを調整した。
Figure 2007022872
なお、シリカフュームは、電融ジルコニアを製造する際に発生する微粉末(密度2.24g/cm3、比表面積12m2/g)を、細骨材は、静岡県小笠郡浜岡町産陸砂(表乾密度2.60g/cm3、FM2.75)を用いた。また、ポリマーエマルジョンは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(固形分50%)を、高性能減水剤は、ポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤を、消泡剤は、特殊非イオン界面活性剤を、各々用いた。
得られた配合A,配合Bのポリマーセメントモルタルを、図2に示したように貫通孔を形成するための円筒状突起Tが植設された型枠α,型枠βに各々流し込み、その上に、予め製造しておいた上記配合1,配合2の多孔質コンクリート板を各々設置する。そして、前記円筒状突起Tの先端に多孔質コンクリート板の底部に形成した切欠溝Mを嵌め込み、ポリマーセメントモルタルPの上面から2cmの深さまで多孔質コンクリート板の下面が沈み込むように上方から鋼板を介して多孔質コンクリート板を押圧し、多孔質コンクリート板とポリマーセメントモルタルとの接合層が2cmとなるようにセットし、蒸気養生後、脱型することにより、連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層とが、一体的に結合された、縦100cm、横100cm、厚さ20cm(この内、実施例1は、表層の厚さ約8cm,基層の厚さ約10cm,結合層の厚さ約2cm、実施例2は、表層の厚さ約6cm,基層の厚さ約12cm,結合層の厚さ約2cm)の実施例1,実施例2に係る透水性コンクリート部材を各々製造した。
なお、蒸気養生の条件は、20℃で前置き2時間とし、20℃/時で昇温させ、65℃で3時間保持し、その後自然放冷させた。また、型枠は、図4に示したように、基層に、1個の開口面積が176.6cm2の貫通孔が、4個等間隔で配置され、得られる開口面積率が7.1%となるよう円筒状突起Tが植設された型枠αと、図5に示したように、基層に、1個の開口面積が880cm2の貫通長孔が、3個等間隔で配置され、得られる開口面積率が26.4%となるよう円筒状突起Tが植設された型枠βとを用いた。また、4×4×16cmに成形した供試体について、JIS A 1171−2000に記載された試験方法に準拠して実施した配合A,配合Bのポリマーセメントモルタルの曲げ強度、及び圧縮強度を測定したところ、その値は次のものであった。
・曲げ強度:15.3N/mm2(配合A),18.2N/mm2(配合B)
・圧縮強度:78.0N/mm2(配合A),83.2N/mm2(配合B)
−比較例1−
基層を形成する材料として、表3に示した配合組成の普通コンクリートを用いた以外は、上記実施例1と同様の製法によって、連続空隙を有する配合1の多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成された配合Cの普通コンクリートからなる基層とからなる、縦100cm、横100cm、厚さ20cm(この内、表層の厚さ約8cm,基層の厚さ約10cm,結合層の厚さ約2cm)の比較例1に係る透水性コンクリート部材を製造した。
Figure 2007022872
なお、粗骨材は、茨城県岩瀬町産硬質砂岩砕2005(表乾密度2.66g/cm3)を、細骨材は、静岡県小笠郡浜岡町産陸砂(表乾密度2.60g/cm3、FM2.75)を用いた。また、高性能減水剤は、ナフタリンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩を用いた。また、上記と同様の条件で10×10×40cm、及び直径10×高さ20cmに成形した供試体について、JIS A 1106−1999、JIS A 1108−1999に記載された試験方法に準拠して実施した配合Cの普通コンクリートの曲げ強度、及び圧縮強度は、4.9N/mm2、及び41.7N/mm2であった。
−曲げ試験−
実施例1,2(実施例1:表層に配合1の多孔質コンクリート、基層に配合Aのポリマーセメントモルタル、型枠に型枠αを使用 実施例2:表層に配合2の多孔質コンクリート、基層に配合Bのポリマーセメントモルタル、型枠に型枠βを使用)及び比較例1(表層に配合1の多孔質コンクリート、基層に配合Cの普通コンクリート、型枠に型枠αを使用)で製造した各々の透水性コンクリート部材について、スパンを70cmとし、載荷速度をJIS A 1106−1999に準拠し、中央載荷方法によって曲げ破壊荷重を各々測定した。なお、実施例2の透水性コンクリート部材については、図6に示した載荷方法で行った。
その測定結果を、表4に示す。
Figure 2007022872
−透水試験−
実施例1,2で製造した透水性コンクリート部材、及び比較例1で製造した透水性コンクリート部材について、JIS A 1218−1998で規定されている透水試験方法を参考にして装置を作製し、透水係数を測定した。
その測定結果を、表5に示す。
Figure 2007022872
−評 価−
実施例1及び実施例2の透水性コンクリート部材は、基層が普通コンクリートで作成された比較例1の透水性コンクリート部材に比して、いずれも3倍程度の曲げ破壊荷重を有するものであった。また、実施例1及び実施例2の透水性コンクリート部材は、充分な透水性能を有するものであった。このことから、本発明に係る透水性コンクリート部材は、強い曲げ荷重が掛かると考えられる、例えば、大型貯水槽等の蓋材として好適に用いることができる。
本発明に係る透水性コンクリート部材の構造を模式的に表した断面図である。 本発明に係る透水性コンクリート部材の製造方法の一例を模式的に表した断面図である。 多孔質コンクリート板を製造する型枠の一例を示した概念的な断面図である。 実施例1の透水性コンクリート部材の製造に使用した型枠を示した概念的な平面図である。 実施例2の透水性コンクリート部材の製造に使用した型枠を示した概念的な平面図である。 実施例2の透水性コンクリート部材の曲げ破壊荷重試験の載荷方法を概念的に示した側面図である。
1 透水性コンクリート部材
2 多孔質コンクリートからなる表層
3 貫通孔
4 ポリマーセメントモルタルからなる基層
5 骨材
6 セメントペースト
7 連続空隙
A 多孔質コンクリート板
M 切欠溝
P ポリマーセメントモルタル
T 貫通孔を形成するための円筒状突起
K 型枠
Z 鋼板
10 雨水貯留浸透施設
11 蓋材
12 壁材
t 切欠溝を形成するための円筒状小突起

Claims (7)

  1. 連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層とを、一体化してなることを特徴とする、透水性コンクリート部材。
  2. 連続空隙を有する多孔質コンクリートからなる表層と、貫通孔が形成されたポリマーセメントモルタルからなる基層とを、一体化してなる透水性コンクリート部材であって、
    前記ポリマーセメントモルタルは、セメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、消泡剤とを少なくとも含むものであることを特徴とする、透水性コンクリート部材。
  3. 上記ポリマーエマルジョンが、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーであることを特徴とする、請求項2に記載の透水性コンクリート部材。
  4. 上記セメントが、早強ポルトランドセメントであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の透水性コンクリート部材。
  5. 上記多孔質コンクリートからなる表層の連続空隙率が、10〜40%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透水性コンクリート部材。
  6. 上記ポリマーセメントモルタルからなる基層の貫通孔の開口面積率が、0.5〜50%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の透水性コンクリート部材。
  7. 上記ポリマーセメントモルタルが、自己流動性を有するものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の透水性コンクリート部材。
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