JP3772565B2 - 車両の危険運転判定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の危険運転判定装置に関し、特に車両の走行安定度が低下した時に危険運転と判定する装置に関するものである。
近年、社会的に安全意識が高まり、交通事故を未然に防ぐ安全装置が望まれるようになって来ており、居眠りや疲労、よそ見等の危険運転は、重大事故の主要因の一つである。これらの危険運転を検知できれば、事故発生を未然に防ぐことができるので、多くの研究機関や自動車会社ではこれらの危険運転判定装置の研究に取り組んでいる。
【0002】
【従来の技術】
従来の危険運転判定装置としては、車両の走行安定度が低下した状態を判定することで運転者の危険状態を間接的に推定するものが知られている。その一例として、本発明者らによる特開平10−100734号公報又は特願平10−11427号に示す如く、車両が左右にフラフラすること無く、如何に安定して走行しているか(以後、蛇行度合いと呼ぶ)を判定する走行安定度低下判定手段が用いられる。
【0003】
このような走行安定度低下判定手段を備えた車両の危険運転判定装置では、車両の蛇行度合いを求め、これを正常時に期待される蛇行度合いの基準値(閾値)と比較することで走行安定度が高いか低いかを判断している。すなわち、蛇行度合いが大きい時を走行安定度の低い状態、逆に蛇行度合いが小さい時を走行安定度の高い状態と判定している。
【0004】
蛇行度合いは、(1)車両のヨー方向の角速度の変化、横加速度の変化又はステアリングホイールの回転角の変化、あるいは(2)車両の走行軌跡から蛇行の偏差量そのものにより求めることができる。
このような車両の危険運転判定装置の作動原理を、ヨー方向角速度検出手段の場合を例として以下に説明する。
【0005】
図5に示すヨー方向角速度検出手段10で検出された信号成分の一例が図6(1)に示されている。この検出信号には、蛇行度合いを表す情報以外にもカーブ路走行中か直線路走行中かの情報が含まれている。
したがって、先ず周波数フィルタ等を用いて、検出手段10で検出された信号成分から比較的低い周波数帯に存在するカーブ路成分を除外する必要がある。このように必要な周波数成分のみを走行安定度低下判定手段20中で抽出した信号が同図(2)に示されている。
【0006】
その上で、判定手段20は、抽出した信号の瞬間的な振幅(危険運転時は振幅大)や、変化の頻度(単位時間内の変曲点の数;危険運転時は頻度小)、あるいは所定の単位時間内での標準偏差(危険運転時は大)、あるいは絶対値の積分値(同図の黒色で塗り潰した部分の面積)等で蛇行度合いを求める。
【0007】
そして、判定手段20は、該蛇行度合いを、予め設定した閾値と比較することで、車両の走行安定度の低下を判定する。なお、設定する閾値は、運転開始後、所定の作動条件を満たした後の学習区間において、蛇行度合いを基に計算される。例えば、蛇行度合い×2を閾値として設定することができる。
【0008】
ここで、所定の作動条件とは、例えば運転開始後10分経過後、車速50km/h以上等である。すなわち、運転開始後の早期段階で運転者が居眠り等の危険運転の状態に陥ることは考えにくいので、この段階を学習区間として蛇行度合いから閾値を算出すればよい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の走行安定度低下判定手段を、車両の危険運転判定装置としてそのまま実際の車両に装着すると、問題が発生する場合がある。これは、学習区間での走行状態が通常とは著しく異なる場合、学習された閾値が通常より低かったり、高かったりするために生じるものである。すなわち、学習された閾値が通常期待される値よりも低い場合は、警報が出やすくなり、誤報の恐れが増す。逆に、学習された閾値が通常期待される値よりも高い場合は、警報が出にくくなり、肝心の所で警報が漏れたり遅れる恐れがある。
【0010】
誤報の回数が多くなり過ぎると装置に対する信頼感が著しく低下し、肝心の場面で警報の意味を持たなくなる恐れがある。したがって、誤報の回数削減は、危険運転判定装置の精度向上のために必要不可欠である。
ここで、誤報の頻度が高くなる原因として、学習区間における走行状態が非常に安定しているために学習した閾値が低くなる場合について説明する。
【0011】
これは、東京湾アクアラインに代表される海底トンネルのような、路面が平滑な直線路であり、無風であり、しかも、景色に目を奪われて脇見をすることもない等の条件が揃っている道路を走行しているときが丁度学習区間であった場合に生じる現象である。
【0012】
しかしながら、海底トンネルのような条件の道路を走行する場合、通常路に比べて車線中央を正確にトレースすることが容易であるので、蛇行度合いが比較的小さくなる。したがって、学習区間における走行条件がこのように特殊な場合は学習された閾値が低くなり、この閾値の状態で通常路に出た場合には、危険運転でなくても警報が発せられてしまう可能性が高くなる。
【0013】
一方、閾値が高いために逆に警報が出難くなる原因としては、路面の凹凸やうねりの大きい道路などを走行しているときが丁度学習区間であった場合のように、学習区間における走行状況が不安定な場合が考えられる。
図7は上記のような様々な蛇行度合いの度数分布を示しており、海底トンネル走行時▲1▼、通常路の走行時(平常時)▲2▼、凸凹路(路面の凹凸やうねりの大きい道路)走行時▲3▼、そして危険運転時▲4▼の順にピークが蛇行度合いの大きい方にずれている。例えば、学習区間が通常路の走行時▲2▼であれば、学習された閾値よりも大きな蛇行度合いが検出された場合に危険運転と判断すればよい。
【0014】
ところが、学習区間が海底トンネル走行時▲1▼である場合は、学習された閾値が通常路の走行時▲2▼に学習された場合よりも低くなるため、閾値Dminに設定されてしまい、通常路の走行時▲2▼に誤報が発せられる可能性が高い。逆に、学習区間が凸凹路走行時▲3▼の場合は、閾値Dmaxに設定されてしまい、危険運転時▲4▼でも警報が発せられない可能性が高い。
【0015】
上記の如く学習した閾値が低いために生じる誤報の回数を減らす方法として、閾値算出のために蛇行度合いに乗じる乗数を一律に大きくすることによって、閾値を高くする方法が考えられるが、これでは通常の学習区間が得られた場合にも、閾値が大きくなってしまい、警報が漏れたり、遅れたりするため、安全上問題がある。
【0016】
また、学習区間が海底トンネル走行時や凸凹路走行時のように特殊な走行条件の場合にだけ、閾値算出のための乗数を大きくすることも考えられるが、この場合は学習区間における走行条件が特殊であるか否かを何らかの別手段で認識しなければならず、コストアップにつながる可能性がある。
【0017】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑み、車両の走行安定度を判定する車両の危険運転判定装置において、学習区間における走行条件に関らず、適切な閾値を得ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
〔1〕上記の目的を達成するため、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最低値未満であるときは再学習を行い、該閾値が該最低値以上であるときは該閾値を採択することを特徴としている。
【0019】
すなわち、該走行安定度低下判定手段は、学習区間において学習した閾値を最低値と比較し、該閾値が該最低値未満であるときは該閾値を採択せず、再学習を行なう。これにより、学習区間における走行条件が特殊である等の原因で閾値が低過ぎる値に設定されることを避けることができ、このような低い閾値に起因する誤報を削減することが可能となる。
【0020】
〔2〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最高値を上回るときは再学習を行い、該閾値が該最高値以下であるときは該閾値を採択することを特徴としている。
【0021】
すなわち、該走行安定度低下判定手段は、学習区間において学習した閾値を最高値と比較し、該閾値が該最高値を上回るときは該閾値を採択せず、再学習を行なう。これにより、学習区間における走行条件が特殊である等の原因で閾値が高過ぎる値に設定されることを避けることができ、このような高い閾値に起因する誤報を削減することが可能となる。
【0022】
〔3〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該走行安定度低下判定手段は、該再学習の回数が所定回数に達したとき、該閾値を採択することができる。
例えば本発明〔1〕の場合、該走行安定度低下判定手段は再学習を行なった回数をカウントし、所定回数に達したときは、このときの閾値が該所定値未満であっても再学習は行なわず、該閾値を採択することができる。
【0023】
これにより、該所定値未満の閾値が適正な閾値である場合に、該閾値を採択する事が可能となる。
これは、学習した閾値が低過ぎることの原因が学習区間に一時的な特殊条件が重なったことである場合は、再学習を行なうことによって適正な閾値を得ることが可能であるはずだが、再学習を複数回行なっても閾値が該所定値以上の値にならないならば、別の原因が考えられるためである。例えば、運転者がより高度な運転技術を持った運転者に交代した場合などは、該所定値未満であっても学習した閾値が適正であると見做すことができる。
【0024】
〔4〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該所定の値を、過去に採択された閾値を基に設定してもよい。
すなわち、該所定の値を固定値とするのではなく、過去に採択された閾値を基に平均値、ばらつきを考慮する等の方法により算出して設定してもよい。これにより、運転者の運転傾向に適した値を得る事ができる。
【0025】
〔5〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該学習区間が、車両の運転開始後であって、所定時間経過時、所定車速への到達時、及び所定車速以上の状態が所定時間継続した時のいずれかの時点以後の区間とすることができる。
【0026】
すなわち、車両の運転開始後、学習を開始する前に所定の作動条件が成立するまで待機する。例えば、時間が10分経過する、時速50km/h以上になる、あるいは、時速50km/h以上が10分間継続する等である。このような作動条件が成立するまで待機するのは、車両の運転開始直後の学習区間として不適当な区間で学習することを避けるためである。
【0027】
〔6〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該閾値の学習が、該学習区間内の走行安定度の平均値に所定値を乗じた値、該平均値に標準偏差の所定数倍の値を加えた値、及び該走行安定度の最大値に所定の値を加えた値のいずれかとすることができる。
【0028】
〔7〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該車両挙動検出手段が、車両のヨー方向角速度検出手段、横加速度検出手段、及びステアリングホイールの回転角検出手段のいずれかであればよい。
【0029】
〔8〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該車両挙動検出手段を車両の走行軌跡測定手段とすることができる。
〔9〕なお、上記本発明〔8〕において、該走行軌跡測定手段が、画像信号入力手段、磁気信号入力手段、及び電波信号入力手段のいずれかの入力手段と、該入力手段で検出された信号から車両の走行軌跡を求める信号処理手段とによって構成することができる。
【0030】
〔10〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該走行安定度は、該信号成分の瞬間的な振幅、変化の頻度、所定の単位時間内での標準偏差、及び絶対値の積分値のいずれかの値で示すことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る車両の危険運転判定装置における車両挙動検出手段がヨー方向角速度検出手段10である場合の実施例を示したブロック図である。また、走行安定度低下判定手段20は、ヨー方向角速度検出手段10に接続され検出手段10からのデジタル検出信号及びその他各種検出信号11を取り込む入力回路21と、この入力回路21に接続されROM23,RAM24,及びカウンタ25と協動して演算処理を行うCPU22と、CPU22に接続され外部の警報器30に接続された出力回路27とで構成されている。
【0032】
また、図2は、図1に示した走行安定度低下判定手段20による演算処理フローの実施例を示したものである。この演算処理フローはROM23に格納されたプログラムにより実行される。以下、図1及び2を参照して、この実施例の動作を説明する。
【0033】
RAM24には、4つの閾値D,D1,D2,及びD3の領域が確保されている。まず、CPU22は該プログラムに従い、現在の閾値D、1つ前の閾値D1、及び2つ前の閾値D2を、閾値D1、閾値D2、及び3つ前の閾値D3にそれぞれ代入して過去の閾値を更新する。次に、閾値の最低値Dmin(これ以下には設定することが好ましくない値)及び最高値Dmax(これ以上には設定することが好ましくない値)を算出する(ステップS1)。
【0034】
この閾値の最低値Dmin及び最高値Dmaxの算出は過去の閾値D1、D2、及びD3の平均値にそれぞれ例えば0.8及び1.2を乗ずる等の方法で行う。
次に、カウンタ25,26のカウント値CNT1,CNT2及びこれから算出する閾値Dをそれぞれ“0"にクリアしておく(ステップS2)。
【0035】
以下、ステップS3〜S14で構成される学習モード及びステップS3〜S6とステップS15〜S17で構成される監視モードについて説明する。
まず、学習モードでは、入力回路21を介してヨー方向角速度検出手段10のデジタル検出信号及び作動条件成立の判定用各種検出信号11を読み込む(ステップS3)。
【0036】
ここで、所定の作動条件が成立するか否か判断する(ステップS4)。所定の作動条件とは、例えば、車両の運転開始後、時間が10分経過する、車速が50km/h以上になる、あるいは車速が50km/h以上の状態が10分間継続するなどの条件である。
【0037】
作動条件が成立しない場合はステップS3に戻り同じ動作を繰り返す。成立する場合はステップS5に移り、蛇行度合いd(t)を算出する。
蛇行度合いd(t)を算出するには、まず、ヨー方向角速度検出手段10の検出されたヨー方向角速度信号の微小時間的な偏差(以後単に、ヨーレートの偏差と呼ぶ)に着目する。ヨーレートの偏差とは、図6(2)に示した如く検出信号(同図(1))からカーブ路成分を除外したもので、周波数フィルタ等を用いて得る事ができる。本実施例ではこの周波数フィルタをプログラムによりデジタルフィルタ処理している(図示せず)。
【0038】
なお、蛇行度合いd(t)は、ヨーレートの偏差信号の瞬間的な振幅、変化の頻度、所定の単位時間内での標準偏差、あるいは絶対値の積分値等で表すことができる。
次に、閾値D=0であるかどうかを判定する(ステップS6)。最初は閾値D=0であるので、学習値d(T)を算出する(ステップS7)。この学習値d(T)は所定の学習所要時間T(例えば10分間)の学習区間における蛇行度合いd(t)の平均値に所定数(例えば2)を乗じたり、d(t)の平均値に標準偏差σの何倍かを加えたり、d(t)の最大値に所定の値を加えたりして算出する。
【0039】
次に、学習所要時間Tに基づく学習値d(T)の算出が完了したか否かをステップS8で判定し、完了していない場合はステップS3に戻り学習モードを繰り返す。完了した場合はステップS9に移り、学習値d(T)と閾値の最低値Dminを比較する。
d(T)<Dminである場合は、通常期待される値を下回る学習値であることから、学習区間における走行条件が特殊であったものと見做す。ここで、カウンタ25のカウント値CNT1を“1"だけインクリメントする(ステップS10)。
【0040】
次に、カウント値CNT1<3且つカウント値CNT2<4であることが確認できれば(ステップS11)、ステップS3に戻り学習モードを繰り返す。なお、本実施例では閾値の最低値Dminを下回る回数を3に、閾値の最高値Dmaxを上回る回数を4に設定している。
【0041】
d(T)≧Dminである場合は、ステップS12に移り、学習値d(T)を閾値の最高値Dmaxと比較する。
d(T)>Dmaxである場合は、通常期待される値を上回る学習値であることから、学習区間における走行条件が特殊であったものと見做す。ここで、カウンタ26のカウント値CNT2を“1"だけインクリメントする(ステップS13)。
【0042】
次に、カウント値CNT1<3且つカウント値CNT2<4であることが確認できれば(ステップS11)、ステップS3に戻り学習モードを繰り返す。
d(T)≧Dminである場合は、通常期待される範囲内の学習値が得られたことになるので、学習値d(T)を閾値Dとして採択することができる(ステップS14)。
【0043】
ステップS11においてカウント値CNT1≧3またはカウント値CNT2≧4である場合は、学習値d(T)が通常期待される範囲内にはないものの、学習値を閾値として採択することが適切であると判断できるので、ステップ14に移り、学習値d(T)を閾値Dとして採択する。
【0044】
ステップS14においては閾値Dが決定するので、ステップS15に移る。
ステップS15では、蛇行度合いd(t)と閾値Dとを比較し、d(t)≧Dであれば、走行安定度が低下していると判定して警報出力をONにし(ステップS16)、そうでない場合は走行安定度は低下していないと判定して警報出力をOFFにする(ステップS17)。
【0045】
以降は監視モードに入る。この監視モードにおいては、閾値学習モードで学習値d(T)を閾値Dとして採択した後であるので、ステップS6は常にD=d(T)(≠0)であるため、ステップ15に進み、ステップS16またはS17の後、ステップS3に戻り、監視モードの処理を繰り返すこととなる。なお、ステップS4における作動条件は、車両の運転開始後一度成立してしまった後は、常に成立している状態になるので、ステップS3〜S6が上述と同様に実行される。
【0046】
なお、ヨー方向角度検出手段10を使用する代わりに横加速度検出手段またはステアリングホイールの回転角検出手段を用いてもよい。この場合、ヨーレートの代わりに車両の横加速度またはステアリングホイールの回転角の微少時間的変化を用いて上記と同様の処理を行えばよい。
【0047】
図3は、本発明に係る危険運転判定装置の第2の実施例を示している。この実施例では、第1の実施例と異なり、車両挙動検出手段として車両の走行軌跡測定手段40を用いている。走行軌跡測定手段40は、画像信号入力手段、磁気信号入力手段、及び電波信号入力手段のいずれかの信号入力手段50と、該信号入力手段50で検出された信号から車両の走行軌跡を求める信号処理手段60とによって構成することができる。
【0048】
信号入力手段50が画像信号入力手段である場合、信号入力手段50は、車両が走行する道路上の車線を含む画像を取込む。該取込んだ画像を信号処理手段60で処理し、車線の位置を特定する。図4に示す如く、車両中心Oと車線中心Lとの相対位置偏差Iを求め、この偏差Iに基づいて車両の走行軌跡を求めることができる。
【0049】
また、信号入力手段50が磁気信号入力手段である場合は、予め道路に連続して設置された磁気コイル等の信号を該信号入力手段50が検知し、信号処理手段60で車両と磁気コイルとの相対位置を連続的に求めることによって車両の走行軌跡を求めることができる。
【0050】
また、信号入力手段50が電波信号入力手段である場合は、GPSの衛星の信号を該信号入力手段50が検知し、ナビゲーションシステムで周知の如く位置検出するのと同様に、車両の位置を検出して、車両の走行軌跡を求めることができる。信号処理手段60は、この走行軌跡に基づいて例えばヨー方向角速度を求めて走行安定度低下判定手段20に与える。以降の判定手段20の処理は第1の実施例と同じである。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る車両の危険運転判定装置によれば、走行安定度低下判定手段を、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最低値未満または最高値を上回るときのみ再学習を行い、それ以外のときは該閾値を採択するように構成したので、学習区間における走行条件に関らず、適切な閾値を得、以って正確な警報を与えることが可能となる。また、好ましくは走行安定度低下判定手段が、再学習が所定の回数以上になったとき該閾値を採択するように構成したので、適切な閾値を得、以って正確な警報を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の危険運転判定装置の第1の実施例を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る車両の危険運転判定装置の走行安定度低下判定手段における動作手順例を示したフローチャート図である。
【図3】本発明に係る車両の危険運転判定装置の第2の実施例を示したブロック図である。
【図4】一般的な画像信号から車両の走行軌跡の求めかたを説明するための図である。
【図5】従来例による車両の危険運転判定装置の原理を示したブロック図である。
【図6】本発明及び従来例に係る車両の危険運転判定装置における一検出手段によって検出された信号例を示した波形図である。
【図7】一般的な蛇行度合いの度数分布図である。
【符号の簡単な説明】
10 ヨー方向角速度検出手段 11 各種検出信号
20 走行安定度低下判定手段 21 入力回路
22 CPU 23 ROM
24 RAM 25,26 カウンタ
27 出力回路 30 警報器
40 走行軌跡測定手段
50 信号入力手段(画像信号入力手段/磁気信号入力手段/電波信号入力手段)
60 信号処理手段
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の危険運転判定装置に関し、特に車両の走行安定度が低下した時に危険運転と判定する装置に関するものである。
近年、社会的に安全意識が高まり、交通事故を未然に防ぐ安全装置が望まれるようになって来ており、居眠りや疲労、よそ見等の危険運転は、重大事故の主要因の一つである。これらの危険運転を検知できれば、事故発生を未然に防ぐことができるので、多くの研究機関や自動車会社ではこれらの危険運転判定装置の研究に取り組んでいる。
【0002】
【従来の技術】
従来の危険運転判定装置としては、車両の走行安定度が低下した状態を判定することで運転者の危険状態を間接的に推定するものが知られている。その一例として、本発明者らによる特開平10−100734号公報又は特願平10−11427号に示す如く、車両が左右にフラフラすること無く、如何に安定して走行しているか(以後、蛇行度合いと呼ぶ)を判定する走行安定度低下判定手段が用いられる。
【0003】
このような走行安定度低下判定手段を備えた車両の危険運転判定装置では、車両の蛇行度合いを求め、これを正常時に期待される蛇行度合いの基準値(閾値)と比較することで走行安定度が高いか低いかを判断している。すなわち、蛇行度合いが大きい時を走行安定度の低い状態、逆に蛇行度合いが小さい時を走行安定度の高い状態と判定している。
【0004】
蛇行度合いは、(1)車両のヨー方向の角速度の変化、横加速度の変化又はステアリングホイールの回転角の変化、あるいは(2)車両の走行軌跡から蛇行の偏差量そのものにより求めることができる。
このような車両の危険運転判定装置の作動原理を、ヨー方向角速度検出手段の場合を例として以下に説明する。
【0005】
図5に示すヨー方向角速度検出手段10で検出された信号成分の一例が図6(1)に示されている。この検出信号には、蛇行度合いを表す情報以外にもカーブ路走行中か直線路走行中かの情報が含まれている。
したがって、先ず周波数フィルタ等を用いて、検出手段10で検出された信号成分から比較的低い周波数帯に存在するカーブ路成分を除外する必要がある。このように必要な周波数成分のみを走行安定度低下判定手段20中で抽出した信号が同図(2)に示されている。
【0006】
その上で、判定手段20は、抽出した信号の瞬間的な振幅(危険運転時は振幅大)や、変化の頻度(単位時間内の変曲点の数;危険運転時は頻度小)、あるいは所定の単位時間内での標準偏差(危険運転時は大)、あるいは絶対値の積分値(同図の黒色で塗り潰した部分の面積)等で蛇行度合いを求める。
【0007】
そして、判定手段20は、該蛇行度合いを、予め設定した閾値と比較することで、車両の走行安定度の低下を判定する。なお、設定する閾値は、運転開始後、所定の作動条件を満たした後の学習区間において、蛇行度合いを基に計算される。例えば、蛇行度合い×2を閾値として設定することができる。
【0008】
ここで、所定の作動条件とは、例えば運転開始後10分経過後、車速50km/h以上等である。すなわち、運転開始後の早期段階で運転者が居眠り等の危険運転の状態に陥ることは考えにくいので、この段階を学習区間として蛇行度合いから閾値を算出すればよい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の走行安定度低下判定手段を、車両の危険運転判定装置としてそのまま実際の車両に装着すると、問題が発生する場合がある。これは、学習区間での走行状態が通常とは著しく異なる場合、学習された閾値が通常より低かったり、高かったりするために生じるものである。すなわち、学習された閾値が通常期待される値よりも低い場合は、警報が出やすくなり、誤報の恐れが増す。逆に、学習された閾値が通常期待される値よりも高い場合は、警報が出にくくなり、肝心の所で警報が漏れたり遅れる恐れがある。
【0010】
誤報の回数が多くなり過ぎると装置に対する信頼感が著しく低下し、肝心の場面で警報の意味を持たなくなる恐れがある。したがって、誤報の回数削減は、危険運転判定装置の精度向上のために必要不可欠である。
ここで、誤報の頻度が高くなる原因として、学習区間における走行状態が非常に安定しているために学習した閾値が低くなる場合について説明する。
【0011】
これは、東京湾アクアラインに代表される海底トンネルのような、路面が平滑な直線路であり、無風であり、しかも、景色に目を奪われて脇見をすることもない等の条件が揃っている道路を走行しているときが丁度学習区間であった場合に生じる現象である。
【0012】
しかしながら、海底トンネルのような条件の道路を走行する場合、通常路に比べて車線中央を正確にトレースすることが容易であるので、蛇行度合いが比較的小さくなる。したがって、学習区間における走行条件がこのように特殊な場合は学習された閾値が低くなり、この閾値の状態で通常路に出た場合には、危険運転でなくても警報が発せられてしまう可能性が高くなる。
【0013】
一方、閾値が高いために逆に警報が出難くなる原因としては、路面の凹凸やうねりの大きい道路などを走行しているときが丁度学習区間であった場合のように、学習区間における走行状況が不安定な場合が考えられる。
図7は上記のような様々な蛇行度合いの度数分布を示しており、海底トンネル走行時▲1▼、通常路の走行時(平常時)▲2▼、凸凹路(路面の凹凸やうねりの大きい道路)走行時▲3▼、そして危険運転時▲4▼の順にピークが蛇行度合いの大きい方にずれている。例えば、学習区間が通常路の走行時▲2▼であれば、学習された閾値よりも大きな蛇行度合いが検出された場合に危険運転と判断すればよい。
【0014】
ところが、学習区間が海底トンネル走行時▲1▼である場合は、学習された閾値が通常路の走行時▲2▼に学習された場合よりも低くなるため、閾値Dminに設定されてしまい、通常路の走行時▲2▼に誤報が発せられる可能性が高い。逆に、学習区間が凸凹路走行時▲3▼の場合は、閾値Dmaxに設定されてしまい、危険運転時▲4▼でも警報が発せられない可能性が高い。
【0015】
上記の如く学習した閾値が低いために生じる誤報の回数を減らす方法として、閾値算出のために蛇行度合いに乗じる乗数を一律に大きくすることによって、閾値を高くする方法が考えられるが、これでは通常の学習区間が得られた場合にも、閾値が大きくなってしまい、警報が漏れたり、遅れたりするため、安全上問題がある。
【0016】
また、学習区間が海底トンネル走行時や凸凹路走行時のように特殊な走行条件の場合にだけ、閾値算出のための乗数を大きくすることも考えられるが、この場合は学習区間における走行条件が特殊であるか否かを何らかの別手段で認識しなければならず、コストアップにつながる可能性がある。
【0017】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑み、車両の走行安定度を判定する車両の危険運転判定装置において、学習区間における走行条件に関らず、適切な閾値を得ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
〔1〕上記の目的を達成するため、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最低値未満であるときは再学習を行い、該閾値が該最低値以上であるときは該閾値を採択することを特徴としている。
【0019】
すなわち、該走行安定度低下判定手段は、学習区間において学習した閾値を最低値と比較し、該閾値が該最低値未満であるときは該閾値を採択せず、再学習を行なう。これにより、学習区間における走行条件が特殊である等の原因で閾値が低過ぎる値に設定されることを避けることができ、このような低い閾値に起因する誤報を削減することが可能となる。
【0020】
〔2〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最高値を上回るときは再学習を行い、該閾値が該最高値以下であるときは該閾値を採択することを特徴としている。
【0021】
すなわち、該走行安定度低下判定手段は、学習区間において学習した閾値を最高値と比較し、該閾値が該最高値を上回るときは該閾値を採択せず、再学習を行なう。これにより、学習区間における走行条件が特殊である等の原因で閾値が高過ぎる値に設定されることを避けることができ、このような高い閾値に起因する誤報を削減することが可能となる。
【0022】
〔3〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該走行安定度低下判定手段は、該再学習の回数が所定回数に達したとき、該閾値を採択することができる。
例えば本発明〔1〕の場合、該走行安定度低下判定手段は再学習を行なった回数をカウントし、所定回数に達したときは、このときの閾値が該所定値未満であっても再学習は行なわず、該閾値を採択することができる。
【0023】
これにより、該所定値未満の閾値が適正な閾値である場合に、該閾値を採択する事が可能となる。
これは、学習した閾値が低過ぎることの原因が学習区間に一時的な特殊条件が重なったことである場合は、再学習を行なうことによって適正な閾値を得ることが可能であるはずだが、再学習を複数回行なっても閾値が該所定値以上の値にならないならば、別の原因が考えられるためである。例えば、運転者がより高度な運転技術を持った運転者に交代した場合などは、該所定値未満であっても学習した閾値が適正であると見做すことができる。
【0024】
〔4〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該所定の値を、過去に採択された閾値を基に設定してもよい。
すなわち、該所定の値を固定値とするのではなく、過去に採択された閾値を基に平均値、ばらつきを考慮する等の方法により算出して設定してもよい。これにより、運転者の運転傾向に適した値を得る事ができる。
【0025】
〔5〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該学習区間が、車両の運転開始後であって、所定時間経過時、所定車速への到達時、及び所定車速以上の状態が所定時間継続した時のいずれかの時点以後の区間とすることができる。
【0026】
すなわち、車両の運転開始後、学習を開始する前に所定の作動条件が成立するまで待機する。例えば、時間が10分経過する、時速50km/h以上になる、あるいは、時速50km/h以上が10分間継続する等である。このような作動条件が成立するまで待機するのは、車両の運転開始直後の学習区間として不適当な区間で学習することを避けるためである。
【0027】
〔6〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該閾値の学習が、該学習区間内の走行安定度の平均値に所定値を乗じた値、該平均値に標準偏差の所定数倍の値を加えた値、及び該走行安定度の最大値に所定の値を加えた値のいずれかとすることができる。
【0028】
〔7〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該車両挙動検出手段が、車両のヨー方向角速度検出手段、横加速度検出手段、及びステアリングホイールの回転角検出手段のいずれかであればよい。
【0029】
〔8〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該車両挙動検出手段を車両の走行軌跡測定手段とすることができる。
〔9〕なお、上記本発明〔8〕において、該走行軌跡測定手段が、画像信号入力手段、磁気信号入力手段、及び電波信号入力手段のいずれかの入力手段と、該入力手段で検出された信号から車両の走行軌跡を求める信号処理手段とによって構成することができる。
【0030】
〔10〕また、本発明に係る車両の危険運転判定装置は、上記本発明〔1〕または〔2〕において、該走行安定度は、該信号成分の瞬間的な振幅、変化の頻度、所定の単位時間内での標準偏差、及び絶対値の積分値のいずれかの値で示すことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る車両の危険運転判定装置における車両挙動検出手段がヨー方向角速度検出手段10である場合の実施例を示したブロック図である。また、走行安定度低下判定手段20は、ヨー方向角速度検出手段10に接続され検出手段10からのデジタル検出信号及びその他各種検出信号11を取り込む入力回路21と、この入力回路21に接続されROM23,RAM24,及びカウンタ25と協動して演算処理を行うCPU22と、CPU22に接続され外部の警報器30に接続された出力回路27とで構成されている。
【0032】
また、図2は、図1に示した走行安定度低下判定手段20による演算処理フローの実施例を示したものである。この演算処理フローはROM23に格納されたプログラムにより実行される。以下、図1及び2を参照して、この実施例の動作を説明する。
【0033】
RAM24には、4つの閾値D,D1,D2,及びD3の領域が確保されている。まず、CPU22は該プログラムに従い、現在の閾値D、1つ前の閾値D1、及び2つ前の閾値D2を、閾値D1、閾値D2、及び3つ前の閾値D3にそれぞれ代入して過去の閾値を更新する。次に、閾値の最低値Dmin(これ以下には設定することが好ましくない値)及び最高値Dmax(これ以上には設定することが好ましくない値)を算出する(ステップS1)。
【0034】
この閾値の最低値Dmin及び最高値Dmaxの算出は過去の閾値D1、D2、及びD3の平均値にそれぞれ例えば0.8及び1.2を乗ずる等の方法で行う。
次に、カウンタ25,26のカウント値CNT1,CNT2及びこれから算出する閾値Dをそれぞれ“0"にクリアしておく(ステップS2)。
【0035】
以下、ステップS3〜S14で構成される学習モード及びステップS3〜S6とステップS15〜S17で構成される監視モードについて説明する。
まず、学習モードでは、入力回路21を介してヨー方向角速度検出手段10のデジタル検出信号及び作動条件成立の判定用各種検出信号11を読み込む(ステップS3)。
【0036】
ここで、所定の作動条件が成立するか否か判断する(ステップS4)。所定の作動条件とは、例えば、車両の運転開始後、時間が10分経過する、車速が50km/h以上になる、あるいは車速が50km/h以上の状態が10分間継続するなどの条件である。
【0037】
作動条件が成立しない場合はステップS3に戻り同じ動作を繰り返す。成立する場合はステップS5に移り、蛇行度合いd(t)を算出する。
蛇行度合いd(t)を算出するには、まず、ヨー方向角速度検出手段10の検出されたヨー方向角速度信号の微小時間的な偏差(以後単に、ヨーレートの偏差と呼ぶ)に着目する。ヨーレートの偏差とは、図6(2)に示した如く検出信号(同図(1))からカーブ路成分を除外したもので、周波数フィルタ等を用いて得る事ができる。本実施例ではこの周波数フィルタをプログラムによりデジタルフィルタ処理している(図示せず)。
【0038】
なお、蛇行度合いd(t)は、ヨーレートの偏差信号の瞬間的な振幅、変化の頻度、所定の単位時間内での標準偏差、あるいは絶対値の積分値等で表すことができる。
次に、閾値D=0であるかどうかを判定する(ステップS6)。最初は閾値D=0であるので、学習値d(T)を算出する(ステップS7)。この学習値d(T)は所定の学習所要時間T(例えば10分間)の学習区間における蛇行度合いd(t)の平均値に所定数(例えば2)を乗じたり、d(t)の平均値に標準偏差σの何倍かを加えたり、d(t)の最大値に所定の値を加えたりして算出する。
【0039】
次に、学習所要時間Tに基づく学習値d(T)の算出が完了したか否かをステップS8で判定し、完了していない場合はステップS3に戻り学習モードを繰り返す。完了した場合はステップS9に移り、学習値d(T)と閾値の最低値Dminを比較する。
d(T)<Dminである場合は、通常期待される値を下回る学習値であることから、学習区間における走行条件が特殊であったものと見做す。ここで、カウンタ25のカウント値CNT1を“1"だけインクリメントする(ステップS10)。
【0040】
次に、カウント値CNT1<3且つカウント値CNT2<4であることが確認できれば(ステップS11)、ステップS3に戻り学習モードを繰り返す。なお、本実施例では閾値の最低値Dminを下回る回数を3に、閾値の最高値Dmaxを上回る回数を4に設定している。
【0041】
d(T)≧Dminである場合は、ステップS12に移り、学習値d(T)を閾値の最高値Dmaxと比較する。
d(T)>Dmaxである場合は、通常期待される値を上回る学習値であることから、学習区間における走行条件が特殊であったものと見做す。ここで、カウンタ26のカウント値CNT2を“1"だけインクリメントする(ステップS13)。
【0042】
次に、カウント値CNT1<3且つカウント値CNT2<4であることが確認できれば(ステップS11)、ステップS3に戻り学習モードを繰り返す。
d(T)≧Dminである場合は、通常期待される範囲内の学習値が得られたことになるので、学習値d(T)を閾値Dとして採択することができる(ステップS14)。
【0043】
ステップS11においてカウント値CNT1≧3またはカウント値CNT2≧4である場合は、学習値d(T)が通常期待される範囲内にはないものの、学習値を閾値として採択することが適切であると判断できるので、ステップ14に移り、学習値d(T)を閾値Dとして採択する。
【0044】
ステップS14においては閾値Dが決定するので、ステップS15に移る。
ステップS15では、蛇行度合いd(t)と閾値Dとを比較し、d(t)≧Dであれば、走行安定度が低下していると判定して警報出力をONにし(ステップS16)、そうでない場合は走行安定度は低下していないと判定して警報出力をOFFにする(ステップS17)。
【0045】
以降は監視モードに入る。この監視モードにおいては、閾値学習モードで学習値d(T)を閾値Dとして採択した後であるので、ステップS6は常にD=d(T)(≠0)であるため、ステップ15に進み、ステップS16またはS17の後、ステップS3に戻り、監視モードの処理を繰り返すこととなる。なお、ステップS4における作動条件は、車両の運転開始後一度成立してしまった後は、常に成立している状態になるので、ステップS3〜S6が上述と同様に実行される。
【0046】
なお、ヨー方向角度検出手段10を使用する代わりに横加速度検出手段またはステアリングホイールの回転角検出手段を用いてもよい。この場合、ヨーレートの代わりに車両の横加速度またはステアリングホイールの回転角の微少時間的変化を用いて上記と同様の処理を行えばよい。
【0047】
図3は、本発明に係る危険運転判定装置の第2の実施例を示している。この実施例では、第1の実施例と異なり、車両挙動検出手段として車両の走行軌跡測定手段40を用いている。走行軌跡測定手段40は、画像信号入力手段、磁気信号入力手段、及び電波信号入力手段のいずれかの信号入力手段50と、該信号入力手段50で検出された信号から車両の走行軌跡を求める信号処理手段60とによって構成することができる。
【0048】
信号入力手段50が画像信号入力手段である場合、信号入力手段50は、車両が走行する道路上の車線を含む画像を取込む。該取込んだ画像を信号処理手段60で処理し、車線の位置を特定する。図4に示す如く、車両中心Oと車線中心Lとの相対位置偏差Iを求め、この偏差Iに基づいて車両の走行軌跡を求めることができる。
【0049】
また、信号入力手段50が磁気信号入力手段である場合は、予め道路に連続して設置された磁気コイル等の信号を該信号入力手段50が検知し、信号処理手段60で車両と磁気コイルとの相対位置を連続的に求めることによって車両の走行軌跡を求めることができる。
【0050】
また、信号入力手段50が電波信号入力手段である場合は、GPSの衛星の信号を該信号入力手段50が検知し、ナビゲーションシステムで周知の如く位置検出するのと同様に、車両の位置を検出して、車両の走行軌跡を求めることができる。信号処理手段60は、この走行軌跡に基づいて例えばヨー方向角速度を求めて走行安定度低下判定手段20に与える。以降の判定手段20の処理は第1の実施例と同じである。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る車両の危険運転判定装置によれば、走行安定度低下判定手段を、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最低値未満または最高値を上回るときのみ再学習を行い、それ以外のときは該閾値を採択するように構成したので、学習区間における走行条件に関らず、適切な閾値を得、以って正確な警報を与えることが可能となる。また、好ましくは走行安定度低下判定手段が、再学習が所定の回数以上になったとき該閾値を採択するように構成したので、適切な閾値を得、以って正確な警報を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の危険運転判定装置の第1の実施例を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る車両の危険運転判定装置の走行安定度低下判定手段における動作手順例を示したフローチャート図である。
【図3】本発明に係る車両の危険運転判定装置の第2の実施例を示したブロック図である。
【図4】一般的な画像信号から車両の走行軌跡の求めかたを説明するための図である。
【図5】従来例による車両の危険運転判定装置の原理を示したブロック図である。
【図6】本発明及び従来例に係る車両の危険運転判定装置における一検出手段によって検出された信号例を示した波形図である。
【図7】一般的な蛇行度合いの度数分布図である。
【符号の簡単な説明】
10 ヨー方向角速度検出手段 11 各種検出信号
20 走行安定度低下判定手段 21 入力回路
22 CPU 23 ROM
24 RAM 25,26 カウンタ
27 出力回路 30 警報器
40 走行軌跡測定手段
50 信号入力手段(画像信号入力手段/磁気信号入力手段/電波信号入力手段)
60 信号処理手段
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
Claims (10)
- 車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、
該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最低値未満であるときは再学習を行い、該閾値が該最低値以上であるときは該閾値を採択することを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 車両挙動検出手段によって検出された車両挙動の検出信号から車両の走行安定度を走行安定度低下判定手段が判定する車両の危険運転判定装置において、
該走行安定度低下判定手段は、学習区間における車両の走行安定度を基に、危険運転判定用閾値の学習を行い、該閾値が最高値を上回るときは再学習を行い、該閾値が該最高値以下であるときは該閾値を採択することを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該走行安定度低下判定手段は、該再学習の回数が所定回数に達したとき、該閾値を採択することを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該所定の値が、過去に採択された閾値を基に設定されることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該学習区間が、車両の運転開始後であって、所定時間経過時、所定車速への到達時、及び所定車速以上の状態が所定時間継続した時のいずれかの時点以後の区間であることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該閾値が、該学習区間内の走行安定度の平均値に所定値を乗じた値、該平均値に標準偏差の所定数倍の値を加えた値、及び該走行安定度の最大値に所定の値を加えた値のいずれかであることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該車両挙動検出手段が車両のヨー方向角速度検出手段、横加速度検出手段、及びステアリングホイールの回転角検出手段のいずれかであることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該車両挙動検出手段が車両の走行軌跡測定手段であることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項8において、
該走行軌跡測定手段が、画像信号入力手段、磁気信号入力手段、及び電波信号入力手段のいずれかの信号入力手段と、該いずれかの信号入力手段で検出された信号から車両の走行軌跡を求める信号処理手段とによって構成されることを特徴とした車両の危険運転判定装置。 - 請求項1または2において、
該走行安定度が、該信号成分の瞬間的な振幅、変化の頻度、所定の単位時間内での標準偏差、及び絶対値の積分値のいずれかの値で示されることを特徴とした車両の危険運転判定装置。
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