JP3772485B2 - 電動式ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源として車輪を制動するモータ駆動式ディスクブレーキを備えた電動式ブレーキ装置に関するものであり、特に、モータの駆動力(駆動トルクを含む)の割に大きな車輪制動力を得る技術の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記電動式ブレーキ装置においては、モータの駆動力の割に大きな車輪制動力を発生させたいという要望がある。この要望を満たす一従来装置が実開平5−22234号公報に記載されている。この従来装置においては、モータと摩擦パッドとの間に、モータの駆動力を倍力して摩擦パッドに付与する倍力機構が設けられるとともに、その倍力機構が、減速機構とねじ機構とが直列に接続された構造とされている。しかし、この従来装置には、大きな車輪制動力を発生させるためにモータおよび倍力機構にかかる負担が大きく、そのため、それらモータおよび倍力機構が大形化し易く、その結果、モータ駆動式ディスクブレーキが大形化し易いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その課題は、車輪制動時に摩擦パッドに発生する摩擦力を有効に利用することにより、モータ駆動式ディスクブレーキの大形化を回避しつつ、モータの駆動力の割に大きな車輪制動力を発生させ得る電動式ブレーキ装置を提供することにある。
【0004】
この課題は下記態様の電動式ブレーキ装置によって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。
【0005】
(1) モータを駆動源として車輪を制動するモータ駆動式ディスクブレーキであって、(a) 摩擦面を備えて車輪と共に回転するディスクロータと、(b)そのディスクロータに前記摩擦面において接触させられてディスクロータの回転を抑制する摩擦パッドと、(c)その摩擦パッドを少なくとも前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持するパッド支持機構と、(d)モータおよび加圧部材を備え、モータの駆動力により加圧部材を介して前記摩擦パッドを前記ディスクロータに向かって加圧するパッド加圧機構と、(e)前記ディスクロータと前記摩擦パッドとの間に発生する摩擦力によりその摩擦力を増加させるセルフサーボ機構とを有するモータ駆動式ディスクブレーキと、
前記モータを制御するモータ制御装置と
前記車輪と路面との間に発生する制動力が予め定められた第1設定値より小さい状態で、前記セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の発生を阻止するセルフサーボ効果発生阻止機構と
を含むことを特徴とする電動式ブレーキ装置〔請求項1〕。
このブレーキ装置においては、セルフサーボ機構により、摩擦パッドに、モータの同じ駆動力の下においてセルフサーボ機構がない場合におけるより大きな摩擦力が付与される。したがって、このブレーキ装置によれば、摩擦パッドの摩擦力を利用しないでモータの駆動力のみを利用して摩擦パッドをディスクロータに押圧する前記従来装置に比較して、モータにかかる負担が軽減されてモータの小形化が容易となる。その結果、モータ駆動式ディスクブレーキの小形化も容易となり、よって、そのモータ駆動式ディスクブレーキの車体への搭載し易さも向上する。
このブレーキ装置の用途は、常用ブレーキとしたり、駐車ブレーキとすることができ、また、常用ブレーキのうち、アンチロック制御,トラクション制御等、自動ブレーキにも使用することができる。
このブレーキ装置において「モータ」は、巻線型モータとしたり、超音波モータとしたりすることができる。超音波モータは、非通電状態における静止保持トルクが巻線型モータに比較して大きいことから、このブレーキ装置を駐車ブレーキ装置として使用する場合に、「モータ」を超音波モータとすれば、駐車のための制動力を少ない電力で確保し得る。
このブレーキ装置は例えば、摩擦パッドがディスクロータを両側から挟んで一対設けられる場合に、それら一対の摩擦パッドの一方に発生した摩擦力により同じ摩擦パッドのセルフサーボ効果を発生させる形態で実施したり、一方の摩擦パッドに発生した摩擦力により異なる摩擦パッドのセルフサーボ効果を発生させる形態で実施することができる。
一方、セルフサーボ効果は、モータ駆動力の割りに大きな摩擦力を摩擦パッドに発生させ得るという利点を有する反面、モータ駆動力のみかけ上の倍力率(ゲイン,増幅率)、すなわち、実摩擦力をモータ駆動力で割り算した値が大きくなり、そのため、モータ駆動力に対する実摩擦力すなわち実車輪制動力の応答性が過敏になり易く、また、実摩擦力がモータ駆動力に対して非線形で増加する傾向があり、また、摩擦パッドの摩擦係数の変動の影響を受け易いという欠点を有する。そして、この欠点は、ブレーキの効きの不安定化につながり易い。一方、セルフサーボ効果は、その必要性がブレーキ操作状態において常に高いわけではなく、通常ブレーキ操作時には低い一方、急ブレーキ操作時には高い。また、通常ブレーキ操作時には、ブレーキの効きの安定化を優先すべきである一方、急ブレーキ操作時には、実車輪制動力の極大化のためにブレーキの効きの極大化を優先すべきである。
以上の事情に鑑み、本項に記載のブレーキ装置は、必要の有無に応じてセルフサーボ効果を選択的に発生させることを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置においては、車輪と路面との間に発生する車輪制動力が第1設定値より小さい状態で、セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の発生が阻止される。
したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ効果の発生が不適当である状態、すなわち、要求される車輪制動力が小さい通常ブレーキ操作時に、セルフサーボ効果が発生せず、よって、ブレーキの効きが不安定にならずに済み、一方、要求される車輪制動力が大きい急ブレーキ操作時に、セルフサーボ効果が発生し、ブレーキの効きが増加して、モータ駆動力の割りに大きな車輪制動力が発生する。
このブレーキ装置において「第1設定値」は、ブレーキ操作力が通常使用範囲(通常ブレーキ操作時におけるブレーキ操作力の変化範囲)の上限値にあるときに車輪制動力が取ることが予想される値としたり、車体減速度が0.5〜0.6Gであるときに車輪制動力が取ることが予想される値とすることができる。
また、このブレーキ装置において「セルフサーボ効果発生阻止機構」は、摩擦力により摩擦パッドがディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させる構造を有する場合に、摩擦パッドの連れ回りを機械的に阻止する形式(電気信号を使用しない形式)としたり、電気的に阻止する形式(電気信号を使用する形式)とすることができる。
(2) 前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させる構造を有し、前記セルフサーボ効果発生阻止機構が、前記摩擦力による前記摩擦パッドの連れ回りを阻止する機構を含む (1) 項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項2〕。
(3)前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させる構造を有するものであり、前記セルフサーボ効果発生阻止機構が、弾性力により前記摩擦パッドの連れ回りを阻止する弾性部材を含む(1) または (2) に記載の電動式ブレーキ装置。
(4)前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させるとともにその連れ回り量に応じた大きさでセルフサーボ効果を発生させる構造を有するものであり、前記弾性部材が、弾性力が弾性変形量の増加に対して増加する状態で使用されるものである(3) に記載の電動式ブレーキ装置。
前項に記載のブレーキ装置における「弾性部材」は例えば、弾性変形量とはほぼ無関係に一定の弾性力を摩擦パッドに付与する状態で使用される。この場合には、その一定の弾性力の設定により、摩擦パッドの連れ回り開始時期すなわちセルフサーボ効果の発生開始時期を制御可能である。これに対して、「弾性部材」を、弾性力を弾性変形量の増加に対して増加する状態で使用する場合には、「弾性部材」により、セルフサーボ効果の発生開始時期のみならず、セルフサーボ状態においてセルフサーボ効果の増加勾配(前述の、モータ駆動力のみかけ上の倍力率に対応する)をも制御可能となる。そして、「弾性部材」の弾性力と弾性変形量との関係すなわち弾性係数を適正化すれば、(a)「弾性部材」から摩擦パッドに付与する力を小さくして摩擦パッドの連れ回り開始を容易にすることにより、セルフサーボ効果の発生開始を容易にすることと、(b)セルフサーボ効果の発生状態で、「弾性部材」から摩擦パッドに付与する力を大きくして摩擦パッドの連れ回り速度の過大化を抑制することにより、セルフサーボ効果の増加勾配の過大化を防止することとの両立を容易に実現し得る。
以上の知見に基づき、本項に記載のブレーキ装置においては、弾性部材が、弾性力が弾性変形量の増加に対して増加する状態で使用される。
したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ効果の発生開始時期のみならず、セルフサーボ効果の発生状態においてセルフサーボ効果の増加勾配をも制御可能となる。また、セルフサーボ効果の減少勾配も制御可能となる。
ところで、例えば、摩擦パッドをくさびとして機能させてセルフサーボ効果を発生させるくさび型セルフサーボ機構を採用する場合であって、「弾性部材」を弾性変形量とはほぼ無関係に一定の弾性力を摩擦パッドに付与する状態で使用する場合には、ブレーキ操作の解除時に、車輪制動力の減少勾配が過大になる可能性がある。その理由は後に発明の実施の形態の欄において説明する。そして、セルフサーボ効果の発生状態において「弾性部材」の弾性力を大きくすることが、車輪制動力の減少勾配の過大化を防止するのに有効であり、このことをセルフサーボ効果の発生開始の容易化と両立させるために、本項に記載のブレーキ装置が有効である。
(5)前記弾性部材が、弾性力が弾性変形量の増加に対して線型で増加する状態で使用される(4)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(6)前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させるとともにその連れ回り量に応じた大きさでセルフサーボ効果を発生させる構造を有するものであり、前記セルフサーボ効果発生阻止機構が、弾性力により前記摩擦パッドの連れ回りを阻止する弾性部材であって、弾性力が弾性変形量の増加に対して非線型で増加する状態で使用されるものを含む(1) または (2)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項3〕。
このブレーキ装置によれば、前項に記載のブレーキ装置におけるより、一つの弾性部材に対する種々の要求を同時に満たすことが容易となる。
(7)前記弾性部材が、前記弾性変形量の増加に対する前記弾性力の増加率が弾性変形量が大きい場合において小さい場合におけるより大きい状態で使用される(6)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項4〕。
弾性部材を、弾性変形量の増加に対する弾性力の増加率(弾性係数)が弾性変形量が大きい場合において小さい場合におけるより大きくなるように設計すれば、セルフサーボ効果の発生開始を容易にすることと、セルフサーボ状態においてセルフサーボ効果の増加勾配の過大化を防止することとの両立をより容易に図り得る。また、くさび型セルフサーボ機構を採用する場合には、さらにセルフサーボ効果の減少勾配の早期過大化の防止との両立もより容易に図り得る。
(8)前記パッド加圧機構が、前記モータの駆動力により前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧する第1押圧力を発生させる第1押圧装置を含み、前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧する第2押圧力を発生させる第2押圧装置を含む(1) ないし (7) のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項19〕
このブレーキ装置において「第1および第2押圧力」はそれぞれ、互いに異なる経路に沿って加圧部材から摩擦パッドに伝達される態様としたり、同じ経路に沿って伝達される態様とすることができる。
(9)前記摩擦パッドが、前記ディスクロータを両側から挟んで一対設けられ、前記パッド加圧装置およびセルフサーボ機構が、前記一対の摩擦パッドの少なくとも一方に対応して設けられたレバーを含み、そのレバーが、(a) 前記ディスクロータの回転軸線と交差する第1回動軸線の回りに回動可能に固定部材と連結された第1連結部と、(b) 車体が前方向と後方向とのうち予め定められた第1方向に走行するときに前記一対の摩擦パッドのうち対応する対応摩擦パッドに発生する前記摩擦力を受ける第1受け部と、(c) 前記対応摩擦パッドに背後から係合して力を付与する係合部とを有するとともに、それら第1連結部,第1受け部および係合部間の相対位置関係が、第1受け部が前記対応摩擦パッドから受けた摩擦力により、係合部がディスクロータに接近する向きのモーメントが当該レバーに発生するように予め設定された(1) ないし (8) のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、レバーを主体とした構造によりセルフサーボ機能を実現し得る。
このブレーキ装置を実施するための一形態においては、レバーにおける力点(第1受け部),支点(第1連結部)および作用点(係合部)間の相対位置関係(レバー比)が、摩擦パッドに発生した摩擦力が倍力された力が摩擦パッドに付与されるように予め設定される。そして、この形態によれば、セルフサーボ機能が効果的に実現される。別の形態においては、レバーに、モータの駆動力が入力される入力部が設けられる。そして、この形態によれば、共通のレバーにより、モータの駆動力に基づく力の摩擦パッドへの付与と、摩擦パッドに発生した摩擦力に基づく力の摩擦パッドへの付与とが一緒に行われるため、別々の部材によりそれら2種類の力の付与を行う場合に比較して、モータ駆動式ディスクブレーキの小形化を容易に行い得る。
(10)前記パッド加圧機構およびセルフサーボ機構が、前記レバーを前記一対の摩擦パッドに対応して一対含むとともに、さらに、それら一対のレバーを前記ディスクロータを跨いで互いに連結する一対のリンクを含み、それら一対のリンクが、2本のリンクが互いに、前記第1回動軸線と平行な第2回動軸線の回りに回動可能に連結された構成を有し、各リンクが、(d) 前記第2回動軸線と平行な第3回動軸線の回りに回動可能に、前記一対のレバーのうち対応する対応レバーと連結された第2連結部と、(e) 前記車体が前方向と後方向とのうち前記第1方向とは異なる第2方向に走行するときに前記対応摩擦パッドに発生する前記摩擦力を受ける第2受け部とを有するとともに、それら第2連結部および第2受け部と前記第1連結部および係合部間の相対位置関係が、第2受け部が前記対応摩擦パッドから受けた摩擦力により、係合部がディスクロータに接近する向きのモーメントが前記対応レバーに発生するように予め設定された(9) 項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、車体が前進する際のみならず後退する際にもセルフサーボ機能を実現し得、車体の前進時であるか後退時であるかを問わず、大きな車輪制動力を発生させ得る。
(11)さらに、前記モータの駆動力の変化に対する前記セルフサーボ効果の変化勾配を機械的に制御する勾配制御機構を含む(1) ないし(10)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項5〕。
上述のように、セルフサーボ状態においてはセルフサーボ効果の変化勾配が過大化し易いが、このブレーキ装置によれば、勾配制御機構により機械的にセルフサーボ効果の変化勾配を制御し得るため、セルフサーボ効果の変化勾配の過大化を防止し得る。
このブレーキ装置において「勾配制御機構」の一態様は、上記弾性部材を用い、かつ、それの弾性係数を適正化することによりセルフサーボ効果の増加勾配を制御するものであり、別の態様は、摩擦パッドの加圧部材との接触面を用い、かつ、その接触面の、摩擦面に対する傾斜角を適正化することによりセルフサーボ効果の増加勾配を制御するものであり、さらに別の態様は、上記弾性部材を用い、かつ、それの弾性係数を適正化することによりセルフサーボ効果の減少勾配を制御するものである。
(12)前記パッド支持機構が、固定部材を含み、かつ、その固定部材が、前記摩擦パッドを前記ディスクロータの回転方向における両側から挟む一対の部分を含み、前記弾性部材が、一端部が、前記摩擦パッドの前記ディスクロータの回転方向における両端部のうち車体前進時に摩擦パッドがディスクロータに連れ回る側に位置する連れ回り側端部に連携させられる一方、他端部が、前記一対の部分のうち前記連れ回り側端部に近いものに連携させられるものである(1)ないし(11)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「固定部材」は例えば、車体に位置固定に取り付けられるマウンティングブラケットである。また、「一対の部分」は例えば、車体前進時と車体後退時とに摩擦力により摩擦パッドのディスクロータの回転方向における両端部の一方と他方とからそれぞれ作用する力を受ける一対の受け部である。
(13)前記パッド支持機構が、固定部材を含み、かつ、その固定部材が、前記摩擦パッドの前記ディスクロータの回転方向における両側から挟む一対の部分を含み、前記弾性部材が、一端部が、前記摩擦パッドの前記ディスクロータの回転方向における両端部のうち車体前進時に摩擦パッドがディスクロータに連れ回る側に位置する連れ回り側端部に連携させられる一方、他端部が、前記一対の部分のうち前記連れ回り側端部から遠いものに連携させられるものである(1)ないし(11)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項6〕。
このブレーキ装置においては、前項に記載のブレーキ装置(以下、「先のブレーキ装置」という)におけると同様に、弾性部材の一端部は摩擦パッド、他端部は固定部材の一対の部分に連携させられるが、先のブレーキ装置に比較して、弾性部材をディスクブレーキに容易に搭載可能となる。
具体的に説明すれば、先のブレーキ装置においては、弾性部材の一端部が、摩擦パッドの連れ回り側端部に連携させられる一方、他端部が、固定部材の一対の部分のうち連れ回り側端部に近いものに連携させられる。そのため、弾性部材を棒状または板状とする場合に、弾性部材の両端部間の距離が短いにもかかわらず十分な弾性圧縮量を確保するために、弾性部材の形状を概して、一対のアーム部が狭い空間を隔てて並んだU字状とすることが必要となる。その結果、弾性部材をディスクブレーキに搭載するために、弾性部材搭載のためのスペースをディスクブレーキにあえて設けることが必要となり、ディスクブレーキが大形化し易い。
これに対して、本項に記載のブレーキ装置においては、弾性部材の一端部は、先のブレーキ装置におけると同様に、摩擦パッドの連れ回り側端部に連携させられる一方、他端部は、先のブレーキ装置におけるとは異なり、固定部材の一対の部分のうち連れ回り側端部から遠いものに連携させられる。そのため、弾性部材を棒状または板状とする場合に、弾性部材の両端部間の距離が長いために、弾性部材を上記の場合におけるような形状とすることが不可欠ではなくなり、弾性部材搭載のためのスペースをディスクブレーキにあえて設けることも不可欠ではなくなる。ディスクブレーキに既存の空間を有効に利用して搭載可能となるのである。
したがって、このブレーキ装置によれば、先のブレーキ装置に比較して、弾性部材をディスクブレーキに容易に搭載可能となるのである。
このブレーキ装置において「弾性部材」は棒状または板状で真っ直ぐに延びる形状を主体としたり、円弧状に延びる形状を主体としたり、波状で真っ直ぐにまたは曲がって延びる形状を主体とすることができる。
(14)前記摩擦パッドが、前記ディスクロータを両側から挟んで一対設けられ、前記パッド加圧機構が、(a) 前記ディスクロータを跨いで前記一対の摩擦パッドに係合するとともに前記摩擦面と交差する方向に移動可能なキャリパボデーであって、一方の摩擦パッドをディスクロータに押圧するための押圧部と、他方の摩擦パッドに係合するリアクション部とが形成されているキャリパボデーと、(b) 前記押圧部に前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持された加圧ロッドであって、前記モータの駆動力により作動させられるものとを含み、前記加圧部材が、前記一方の摩擦パッドについては前記キャリパボデー、前記他方の摩擦パッドについては前記加圧ロッドであり、前記パッド支持機構が、(a) 固定部材と、(b) その固定部材のうち前記他方の摩擦パッドを前記ディスクロータの回転方向において両側から挟む一対の部分を互いに連結するブリッジ部を含み、前記弾性部材が、そのブリッジ部と概して平行に配置されている(13)項に記載の電動式ブレーキ装置。
ディスクブレーキは一般に、上記ブリッジ部を含むように構成され、弾性部材は、そのブリッジ部と概して平行に配置される形態で実施可能である。
ただし、ブリッジ部を設けることはディスクブレーキにとって不可欠なことではない。そのため、ブリッジ部を省略する一方、本来であればブリッジ部が設けられるべき位置に弾性部材を配置可能であり、このようにすれば、弾性部材の搭載のために新たな空間を確保せずに済む。
(15)さらに、前記車輪と路面との間に発生する制動力が予め定められた第2設定値を超えようとする状態で、前記セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の増加を阻止するセルフサーボ効果増加阻止機構を含む(1)ないし(14)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項7〕。
セルフサーボ機能を実現し得る電動式ブレーキ装置においては、摩擦パッドの摩擦力によりその摩擦力が増加させられるため、適当な時期にセルフサーボ効果の増加を積極的に、または機械的に制限することが、セルフサーボ効果の過大化を防止する上において望ましい。セルフサーボ効果が過大となると、例えば、前述のように、摩擦パッドのくさび効果を利用してセルフサーボ効果を発生させる形式のディスクブレーキにおいては、摩擦パッドがディスクロータと加圧部材との間に過大な力で挟まれ、加圧部材の摩擦パッドへの食い込み量が過大となり、ブレーキ操作の解除時に摩擦パッドが素早く戻らない等の不都合が生じる可能性がある。
以上の事情に鑑み、本項に記載のブレーキ装置は、セルフサーボ効果の過大化を防止し得ることを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置においては、車輪と路面との間に発生する制動力が第2設定値を超えようとする状態で、セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の増加が阻止される。
したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ効果の過大化を防止し得る。その結果、例えば、摩擦パッドのくさび効果を利用してセルフサーボ効果を発生させる形式のディスクブレーキにおいては、加圧部材の摩擦パッドへの食い込み量が過大とならずに済み、ブレーキ操作の解除時に摩擦パッドが素早く戻らない等の不都合を回避し得る。
このブレーキ装置において「増加を阻止する」とは、増加を完全に阻止して一切許容しない場合と、部分的に阻止して部分的に許容する場合との双方を含む。
また、このブレーキ装置において「セルフサーボ効果増加阻止機構」は、摩擦パッドのさらなる連れ回りを阻止することにより、セルフサーボ効果の増加を阻止する態様とすることができる。この態様においては、摩擦パッドのさらなる連れ回りは、機械的に阻止する形式(電気信号を使用しない形式)としたり、電気的に阻止する形式(電気信号を使用する形式)とすることができる。
(16)前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させるとともにその連れ回り量に応じた大きさでセルフサーボ効果を発生させる構造を有するものであり、前記セルフサーボ効果増加阻止機構が、その摩擦パッドを固定部材に当接させることによって摩擦パッドのさらなる連れ回りを阻止するストッパ構造を有するものである(15)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「固定部材」は例えば、車体に位置固定に取り付けられるマウンティングブラケットである。
(17)さらに、前記モータの温度上昇を抑制する温度上昇抑制手段を含む(1)ないし(16)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項8〕。
モータを駆動源とする電動式ブレーキ装置においては、摩擦パッドとディスクロータとの摩擦熱によりモータの温度が上昇したり、モータ自身のコイルの発熱によってモータの温度が上昇する可能性がある。また、モータの温度(特に、コイルの温度)が上昇すると、その作動が不安定になる可能性がある。
以上の事情を背景として、本項に記載のブレーキ装置は、熱に対する信頼性を向上させることを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置においては、温度上昇抑制手段により、モータの温度上昇が抑制される。
したがって、このブレーキ装置によれば、モータの作動がそれの温度上昇によって不安定にならずに済み、モータを駆動源とする電動式ブレーキ装置の熱に対する信頼性を向上させ得る。
(18)前記温度上昇抑制手段が、前記モータから前記摩擦パッドに力が伝達される力伝達系に設けられ、摩擦パッドと前記ディスクロータとの間に発生する摩擦熱が前記力伝達系を経てモータに伝達されることを抑制する伝熱抑制部材を含む(17)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項9〕。
このブレーキ装置によれば、簡単な熱対策によってモータの温度上昇を抑制し得る。
(19)前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ること許容するとともに、その連れ回り状態において摩擦パッドをディスクロータと前記加圧部材との間においてくさびとして機能させることにより、セルフサーボ効果を発生させるくさび型である(1)ないし(18)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項10〕。
このブレーキ装置によれば、摩擦パッドのくさび効果を利用してセルフサーボ機能を実現可能となる。
このブレーキ装置において「加圧部材」は、摩擦パッドがディスクロータを両側から挟んで一対設けられるとともに、それら一対の摩擦パッドに対してモータが1個だけ、それら一対の摩擦パッドの一方の側に配置される場合に、それら一対の摩擦パッドのうちモータが配置された側に位置するものにそのモータの駆動力を伝達する部材を意味する用語であると解釈することができ、また、その部材と、モータの駆動力を反対側の摩擦パッドに伝達する部材との双方を含む用語であると解釈することもできる。
(20)さらに、前記摩擦パッドと前記加圧部材との間の摩擦を低減させる摩擦低減手段を含む(19)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項11〕。
このブレーキ装置においては、摩擦低減手段により摩擦パッドと加圧部材との間の摩擦が低減させられる。
したがって、このブレーキ装置によれば、摩擦パッドの連れ回りが加圧部材との摩擦によって阻害されることが防止され、よって、セルフサーボ効果を効率よく発生させ得る。
このブレーキ装置において「摩擦低減手段」は、摩擦パッドと加圧部材との間に設けられ、少なくとも1個のボール,ローラ等、転動体を転動可能に保持してそれら摩擦パッドと加圧部材とを互いに当接させるスラストベアリング機構を含む態様としたり、摩擦パッドの加圧部材との接触面と、加圧部材のうち摩擦パッドとの接触面との少なくとも一方に低摩擦材料が付着された態様としたり、それら2つの接触面の少なくとも一方に、複数本の溝または突条が互いに平行に並んだ凹凸形状が形成された態様とすることができる。
(21)前記摩擦パッドの前記加圧部材との接触面が、摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回るにつれて前記摩擦面との距離が増加する向きにその摩擦面に対して傾斜した斜面を含み、前記セルフサーボ機構がその斜面を含む(19)または(20)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置において「斜面」は、ディスクロータの摩擦面に対して傾斜するものであるため、「摩擦パッドの加圧部材との接触面」が「斜面」を含むか否かは、摩擦パッドのみとの関係において判断すべきではなく、ディスクロータの摩擦面との関係において判断すべきである。以下、摩擦パッドが、表面においてディスクロータに接触させられるべき摩擦材の裏面に裏金の表面が固着された構造を有する場合を例に取り、具体的に説明する。
この例においては、摩擦パッドは裏金の裏面において加圧部材と接触することになる。すなわち、この場合には、裏金の裏面が「接触面」となるのである。そして、このような摩擦パッドに対して、摩擦材の板厚を摩擦パッドの連れ回り方向において均一とする一方、裏金の板厚を摩擦パッドの連れ回り方向において不均一とすれば、裏金の裏面に、摩擦材に対して傾斜する斜面が形成されることになる。摩擦パッド単体で見た場合に斜面であると認識される面が裏金の裏面に形成されることになるのである。そして、摩擦材の板厚を均一とする一方、裏金の板厚を不均一とした場合には、摩擦材に対して傾斜する斜面は、ディスクロータに対して傾斜する斜面でもあるため、この場合には、「接触面」に「斜面」が形成されていると容易に判断することができる。
これに対して、裏金の板厚を摩擦パッドの連れ回り方向において均一とする一方、摩擦材の板厚を不均一とした場合には、摩擦材の表面に、裏金に対して傾斜する斜面が形成されることになる。摩擦パッド単体で見た場合に斜面であると認識される面が摩擦材の表面、すなわち、「接触面」でない面に形成されることになるのである。しかしながら、この摩擦パッドをディスクロータの摩擦面との関係において見れば、摩擦面に対する斜面は、この場合にも、裏金の裏面、すなわち、「接触面」に形成されている。すなわち、摩擦材または裏金のいずれかの板厚を不均一にすることによって斜面を形成する場合、板厚が不均一とされる対象が裏金であるか摩擦材であるかを問わず、必ず「接触面」に「斜面」が形成されることになるのである。
(22)前記摩擦パッドの前記加圧部材との接触面が摩擦パッドの連れ回り方向において前記摩擦面に対して傾斜させられるとともにその傾斜角が摩擦パッドの連れ回り方向において変化する斜面を含み、前記セルフサーボ機構がその斜面を含む (19)または(20)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項12〕。
くさび型セルフサーボ機構は、摩擦パッドの加圧部材との接触面全体が斜面とされ、かつ、その斜面の勾配が摩擦パッドの連れ回り方向において変化しない形態で実施可能である。一方、くさび型セルフサーボ機構においては、斜面の勾配が緩やかであるほど、摩擦パッドの連れ回りが行われ易い。摩擦パッドがディスクロータに連れ回るために打ち勝つべき力が小さくて済むからである。また、くさび型セルフサーボ機構においては、斜面の勾配が急であるほど、摩擦パッドに発生する摩擦力すなわち車輪制動力の増加勾配が急になる。セルフサーボ効果の増加勾配に急になるのである。したがって、摩擦パッドの接触面全体を勾配が一定の斜面とした場合には、摩擦パッドの連れ回りが容易には開始されないためにセルフサーボ効果の発生が容易には開始されないとともに、セルフサーボ機構の作用状態(以下、「セルフサーボ状態」ともいう)においてセルフサーボ効果が過大になり易い。すなわち、斜面の勾配を一定とした場合には、セルフサーボ効果の発生開始の容易化と、セルフサーボ効果の増加勾配の過大化防止との両立が困難となるのである。
以上の事情を背景にして、本項に記載のブレーキ装置は、それらの両立を容易にすることを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置においては、摩擦パッドの加圧部材との接触面が摩擦パッドの連れ回り方向において摩擦面に対して傾斜させられる斜面を含み、その斜面の傾斜角が、摩擦パッドの連れ回り方向において変化する。
したがって、このブレーキ装置によれば、摩擦パッドの接触面のうち、セルフサーボ効果の発生開始時期に関与する部分と、セルフサーボ効果に実質的に関与する部分と、セルフサーボ効果の増加勾配の過大化防止に関与する部分との間で、摩擦面に対する傾斜角を互いに異ならせることが可能となり、よって、セルフサーボ効果の発生開始の容易化と、セルフサーボ効果の増加勾配の過大化防止との両立が容易となる。
このブレーキ装置において「接触面」は、その全体を摩擦面に対して傾斜した「斜面」としたり、その一部のみを「斜面」としたりすることができる。全体を「斜面」とする場合には、接触面の摩擦面に対する傾斜角が摩擦パッドの連れ回り方向において変化するという要求を満たすために、「斜面」を例えば、一曲面により構成したり、互いに連結された複数の曲面で構成したり、互いに連結された複数の平面により構成したりすることが必要となる。例えば、一つの部分円筒面により構成したり、互いに勾配が異なる複数の斜面を互いに連結することにより構成したり、複数の部分円筒面を互いに連結することにより構成したりすることが必要となるのである。これに対して、一部のみを「斜面」とする場合には、「接触面」に摩擦面に平行な部分、すなわち、傾斜角が0であって、「斜面」における傾斜角とは異なる部分が存在することから、たとえ「斜面」を一平面により構成しても、「接触面」全体としては、それの傾斜角が摩擦パッドの連れ回り方向において変化することになる。
また、このブレーキ装置における「傾斜角」は、前記(11)項における「勾配制御機構」として機能すると考えることができる。
(23)前記接触面が、前記摩擦パッドの連れ回り方向とは逆向きの方向において、第1部分と、その第1部分におけるより傾斜角が大きい第2部分と、その第2部分におけるより傾斜角が小さい第3部分とがそれらの順に並んで構成されている(22)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、摩擦パッドとディスクロータとの間の摩擦力が増加するにつれて、加圧部材は摩擦パッドの接触面上を、第1部分,第2部分および第3部分にそれらの順に接触することになる。セルフサーボ効果の発生開始時に第1部分と接触し、その後第2部分と接触し、続いて第3部分と接触するのである。そして、第1部分の傾斜角が第2部分におけるより小さくされているため、摩擦パッドの連れ回り開始が容易となり、セルフサーボ効果の発生開始が容易となる。また、第2部分の傾斜角が第1部分におけるより大きくされているため、十分なセルフサーボ効果が発生する。また、第3部分の傾斜角が第2部分におけるより小さくされているため、セルフサーボ効果の増加勾配の過大化が防止される。
このブレーキ装置において「第1部分」の傾斜角は、0とすることができる。また、「第3部分」の傾斜角は、第1部分の傾斜角と等しくしたり、0とすることができる。
(24)前記摩擦パッドが、前記ディスクロータを両側から挟んで一対設けられ、それら一対の摩擦パッドのうちの一方である第1摩擦パッドは、前記ディスクロータに連れ回り可能なものであり、他方である第2摩擦パッドは連れ回り不能なものであり、前記パッド加圧機構が、(a) 前記ディスクロータを跨いで前記一対の摩擦パッドに係合するとともに前記摩擦面と交差する方向に移動可能なキャリパボデーであって、前記第1摩擦パッドをディスクロータに押圧するための押圧部と、前記第2摩擦パッドに係合するリアクション部とが形成されているキャリパボデーと、(b) 前記押圧部に前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持された加圧ロッドであって、前記モータの駆動力により作動させられるものとを含み、前記加圧部材が、前記第1摩擦パッドについては前記加圧ロッド、前記第2摩擦パッドについては前記キャリパポデーである(6) (7),(19)ないし(24)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(25)前記摩擦パッドが、前記ディスクロータを両側から挟んで一対設けられ、それら一対の摩擦パッドのうちの一方である第1摩擦パッドは、前記ディスクロータに連れ回り可能なものであり、他方である第2摩擦パッドは連れ回り不能なものであり、前記パッド加圧機構が、(a) 前記ディスクロータを跨いで前記一対の摩擦パッドに係合するとともに前記摩擦面と交差する方向に移動可能なキャリパボデーであって、前記第2摩擦パッドをディスクロータに押圧するための押圧部と、前記第1摩擦パッドに係合するリアクション部とが形成されているキャリパボデーと、(b) 前記押圧部に前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持された加圧ロッドであって、前記モータの駆動力により作動させられるものとを含み、前記加圧部材が、前記第1摩擦パッドについては前記キャリパボデー、前記第2摩擦パッドについては前記加圧ロッドである(6) (7) (19)ないし(24)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項13〕。
前記くさび型セルフサーボ機構は、前項に記載されているように、加圧ロッドが一対の摩擦パッドのうちディスクロータに連れ回る第1摩擦パッドに接触させられる態様で実施可能である。しかし、この態様においては、セルフサーボ状態において第1摩擦パッドがディスクロータに連れ回ると、第1摩擦パッドと加圧ロッドとの接触部にすべりが発生する。このすべりにより、加圧ロッドにそれの円滑な作動を妨げる向きの力や、加圧ロッドを予定外に変形させる向きの力が付与される可能性がある。
これに対して、本項に記載のブレーキ装置においては、加圧ロッドが、一対の摩擦パッドのうちディスクロータに連れ回らない第2摩擦パッドに接触させられており、セルフサーボ状態において加圧ロッドと第2摩擦パッドとの接触部にすべりが発生せずに済む。
したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ機構の正常作動を常時保証し得る。
(26)前記モータが、非通電状態では静止し、第1の通電状態では正回転し、第2の通電状態では逆回転するものであり、前記パッド加圧機構が、前記モータの正回転により前記加圧部材に前記摩擦パッドを前記ディスクロータに向かって加圧させるものであり、前記モータ制御装置が、前記モータを、前記摩擦パッドの加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御するものであり、当該電動式ブレーキ装置が、さらに、前記セルフサーボ機構の作用状態において前記加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、前記摩擦パッドからの反力に抗して前記加圧部材をロックさせることにより、加圧力実際値の増加量が不足することを防止する増加量不足防止機構を含む(1)ないし(25)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置〔請求項14〕。
セルフサーボ機構の作用状態(以下、単に「セルフサーボ状態」ともいう)においては、本来、モータが第1の通電状態にあれば、セルフサーボ機構の作用によって摩擦パッドの摩擦力に生じる効果(以下、「セルフサーボ効果」という)が正常な勾配で増加し、加圧力実際値も正常な勾配で増加するはずである。しかし、本発明者らは、セルフサーボ効果がある程度大きくなり、加圧力実際値もある程度大きくなると、セルフサーボ効果も加圧力実際値もそれ以上増加しなくなるという問題があることに気がついた。
この問題が発生する理由は次のように考えられる。
すなわち、加圧力実際値が増加すれば、摩擦パッドから加圧部材を経てモータに入力される反力も増加する。これに対して、モータが出力し得る駆動トルクに限界があり、そのため、摩擦パッドから入力される反力が駆動トルクの限界を超えようとする場合には、モータはそれの駆動トルクではその反力に対抗することができない。そのため、セルフサーボ効果がある程度大きくなり、反力もある程度大きくなった場合には、それらセルフサーボ効果および反力がさらに増加しようとしても、摩擦パッドからの反力によってモータが逆回転させられて加圧部材が摩擦パッドによって押し戻されてしまい、セルフサーボ効果も加圧力実際値もそれ以上増加しなくなるのである。
ところで、本発明者らはまた、セルフサーボ機構を備えたディスクブレーキには、セルフサーボ状態においては、加圧部材を摩擦パッドに接近する向きに前進させることができなくても同じ位置に保持することさえできれば、摩擦パッドがくさびとして機能して加圧力実際値が増加させられるという特性があることにも気がついた。
以上の知見に基づき、本項に記載のブレーキ装置は、セルフサーボ機構の上記のような特性を利用することにより、セルフサーボ状態において加圧力実際値が正常に増加しなくなることがあるという問題を解決することを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置によれば、増加量不足防止機構により、セルフサーボ状態において加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、加圧力実際値の増加量(時間的増加量)が不足することが防止される。
このブレーキ装置において「モータ」は、超音波モータとしたり、DCモータとしたり、他のモータとすることができる。
また、このブレーキ装置において「モータ制御装置」は、指令値に基づいて一方的にモータを制御するオープンループ制御式としたり、センサにより検出された実際値と指令値との比較によってモータを制御するフィードバック制御式とすることができる。
また、このブレーキ装置において「増加量不足防止機構」は、加圧部材を機械的にロックさせる形式としたり、電磁的にまたは電気的にロックさせる形式とすることができる。
(27)前記モータ超音波モータとされるとともに、前記モータ制御装置、前記セルフサーボ機構の作用状態において前記加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、前記超音波モータを非通電状態としてその超音波モータに静止保持トルクを発生させ、その発生させられた静止保持トルクによって前記加圧部材のロックを行う静止保持トルク発生手段を含むものとされることにより、前記増加量不足防止機構が構成されている(26)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項15〕。
超音波モータには、それの静止時(非通電時)において発生し得る保持トルクの方が、駆動時(通電時)において発生し得る駆動トルクより大きいという特性があることが既に知られている。
また、前述のように、本発明者らは、セルフサーボ機構を備えたディスクブレーキには、セルフサーボ状態においては、モータを正回転させることができなくても同じ回転位置に保持することさえできれば、摩擦パッドがくさびとして機能して加圧力実際値が増加させられるという特性があることに気がついた。
そこで、本項に記載のブレーキ装置においては、それら超音波モータの特性とセルフサーボ機構を備えたディスクブレーキの特性との双方に着目し、セルフサーボ状態において加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、超音波モータの静止保持トルクによって加圧力実際値が増加させられる。
したがって、このブレーキ装置によれば、超音波モータの駆動トルクによってでは加圧力実際値を増加させ得ない場合に、静止保持トルクによって加圧力実際値が増加させられるため、超音波モータの駆動トルクの割りに大きな車輪制動力を発生させ得る。そして、このブレーキ装置によれば、例えば、超音波モータの小形軽量化が可能となり、ひいては、ディスクブレーキの小形軽量化も可能となる。
さらに、このブレーキ装置によれば、超音波モータを非通電状態にする期間を設けることによって加圧力実際値が増加させられるため、超音波モータによる電力消費量を節減し得る。
このブレーキ装置において「超音波モータ」は、進行波式としたり、定在波式とすることができる。
(28)前記静止保持トルク発生手段が、前記超音波モータの第1の通電状態において、前記加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったことに応じて、超音波モータを非通電状態にする増加量不足時制御手段を含む(27)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項16〕。
このブレーキ装置においては、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったことに応じて超音波モータが非通電状態にされる。したがって、このブレーキ装置によれば、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回る可能性が生じたことに応じて超音波モータを非通電状態にする態様で前項に記載の電動式ブレーキ装置を実施する場合に比較して、超音波モータが無駄に非通電状態にさせられずに済み、超音波モータの作動応答性すなわちディスクブレーキの制御応答性を容易に向上させ得る。
このブレーキ装置において「第1基準増加量」は例えば、超音波モータが第1の通電状態にあり、かつ、超音波モータがそれの駆動トルクで摩擦パッドからの反力に対抗し得る状態において、加圧力実際値の増加量がとることが予想される正常値としたり、その正常値より小さい値、例えば、0とすることができる。ここに、「第1基準増加量」を0とした場合には、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値が減少したことに応じて超音波モータが非通電状態にされることになる。
(29)前記増加量不足時制御手段が、(a) 前記加圧力実際値に関連する量を検出する加圧力関連量センサと、(b) その加圧力関連量センサの出力信号に基づき、前記加圧力実際値の増加量を検出する増加量検出手段とを含む(28)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、結果的に、加圧力関連量センサの出力信号に基づき、超音波モータを第1の通電状態から非通電状態に切り換える時期が決定されることとなる。したがって、このブレーキ装置によれば、非通電状態への切換時期を、加圧力実際値との関係において精度よく決定し得る。
このブレーキ装置において「加圧力関連量センサ」は例えば、加圧力実際値を直接に検出する加圧力センサとしたり、加圧力関連量のうち加圧力実際値を除くものを検出するセンサとすることができる。ここに、加圧力関連量のうち加圧力実際値を除くものには、例えば、摩擦パッドとディスクロータとの間の摩擦力,車輪制動力,車体減速度等を選ぶことができる。
(30)前記モータ制御装置が、さらに、前記増加量不足時制御手段により前記超音波モータが非通電状態にされた後において、前記加圧力実際値の増加量が第2基準増加量を下回ったことに応じて、超音波モータを第1の通電状態にする第1制御手段を含む(29)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、加圧力実際値が正常に増加しない場合がある。超音波モータの静止保持トルクを利用して加圧力実際値を増加させるためには、加圧部材と摩擦パッドとの間に予定外の隙間が生じないことが必要であるが、何らかの理由により、そのような隙間が生じてしまう場合が考えられ、そのような事態を想定し、このブレーキ装置においては、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、加圧力実際値の増加量が第2基準増加量を下回った場合には、超音波モータが第1の通電状態にされ、それにより、超音波モータが正回転させられて加圧部材と摩擦パッドとの間の予定外の隙間が消滅させられ、セルフサーボ機構によって加圧力実際値が正常に増加する状態とされる。
したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ機構の適正作動が保証される。
このブレーキ装置において「第2基準増加量」は例えば、セルフサーボ機構が正常に作動する状態において加圧力実際値の増加量がとることが予想される正常値としたり、その正常値より小さい値、例えば、0とすることができる。また、この「第2基準増加量」は、前記第1基準増加量と等しい値としたり、異なる値とすることができる。
(31)前記モータ制御装置が、さらに、前記増加量不足時制御手段により前記超音波モータが非通電状態にされた後において、前記加圧力実際値の増加量とは無関係に、超音波モータが非通電状態にされたときから設定時間が経過したことに応じて、超音波モータを第1の通電状態にする第2制御手段を含む(29)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、超音波モータが非通電状態にされたときから設定時間が経過したことに応じて、超音波モータが第1の通電状態にされる。したがって、このブレーキ装置によれば、上記のように、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、加圧部材と摩擦パッドとの間に予定外の隙間が生じれば、その予定外の隙間が消滅させられ、セルフサーボ機構の適正作動が保証される。
また、このブレーキ装置においては、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、加圧力実際値の増加量とは無関係に、超音波モータが第1の通電状態にされる。したがって、このブレーキ装置によれば、前項に記載の電動式ブレーキ装置とは異なり、加圧力実際値の増加量の検出が不要となり、電動式ブレーキ装置の設計(特に、ソフトウェアの設計)が容易になる。
なお、本項に記載のブレーキ装置においては、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた後、超音波モータを非通電状態にし続けることが加圧力実際値を正常に増加させるために必要である場合であっても、超音波モータが第1の通電状態にされてしまう。しかし、この場合には、その後、前記増加量不足時制御手段により、超音波モータが非通電状態にされ、それにより、加圧力実際値が超音波モータの静止保持トルクによって増加させられることになるため、不都合はない。
このブレーキ装置において「設定時間」は例えば、超音波モータによる摩擦パッドの加圧制御があるコンピュータプログラムがコンピュータにより一定または可変の制御周期で実行されることによって実現される場合、その制御周期とすることができる。すなわち、「第2制御手段」は例えば、コンピュータプログラムのある回の実行において、加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったために超音波モータが非通電状態にされた場合に、コンピュータプログラムの次回の実行において、超音波モータを第1の通電状態にする態様とすることができるのである。
(32)前記静止保持トルク発生手段が、前記セルフサーボ機構の作用開始に応じて、前記超音波モータを非通電状態にするサーボ開始時制御手段を含む(27)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項17〕。
このブレーキ装置においては、超音波モータの第1の通電状態において、加圧力実際値の増加量が前記第1基準増加量を下回ったか否かを問わず、セルフサーボ機構の作用開始に応じて、超音波モータが非通電状態にされる。
したがって、このブレーキ装置によれば、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回る手前から、超音波モータを非通電状態にして超音波モータの静止保持トルクを利用可能となる。
(33)前記サーボ開始時制御手段が、(a) 前記加圧力実際値に関連する量を検出する加圧力関連量センサと、(b) その加圧力関連量センサの出力信号に基づき、前記超音波モータの第1の通電状態において前記加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えるという条件を含む少なくとも一つの条件が同時に成立した場合に、前記セルフサーボ機構の作用が開始されたと判定するセルフサーボ状態判定手段とを含む(32)項に記載の電動式ブレーキ装置〔請求項18〕。
このブレーキ装置においては、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値が時間と共に増加する勾配すなわち増加量が、セルフサーボ機構の作用状態において非作用状態におけるより大きくなるという知見に基づき、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えるという条件を含む少なくとも一つの条件が同時に成立した場合に、セルフサーボ機構の作動が開始されたと判定されて、超音波モータが非通電状態にされる。
このブレーキ装置において「加圧力関連量センサ」は、前記(29)項に記載のブレーキ装置におけると同様に考えることができる。
また、「第3基準増加量」は例えば、セルフサーボ機構の作用状態において加圧力実際値の増加量がとることが予想される正常値としたり、その正常値より小さい値とすることができる。
(34)前記少なくとも一つの条件が、前記超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えるという条件以外の条件として、加圧力実際値が判定加圧力を超えるという条件を含む(33)項に記載の電動式ブレーキ装置。
後述のように、セルフサーボ機構が前記セルフサーボ効果発生阻止機構を有し、加圧力実際値が基準加圧力以上となったときにセルフサーボ機構の作用が開始されるように当該ブレーキ装置が設計される場合があり、この場合には、その基準加圧力と等しいかまたはそれより大きい値として判定加圧力を設定し、加圧力実際値が判定加圧力を超えるという条件を上記「少なくとも一つの条件」に含めることができる。
このようにする場合には、超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えれば直ちにセルフサーボ機構の作用が開始されたと判定する場合に比較して、セルフサーボ状態の判定精度が向上する。
(35)前記増加量不足防止機構が、前記モータと加圧部材との間に設けられ、モータの側から加圧部材の側へのトルク伝達は行うがその逆向きのトルク伝達は行わないことにより、前記加圧部材のロックを行うトルク伝達機構を含む(26)ないし(34)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、セルフサーボ状態において、摩擦パッドから加圧部材に入力された反力がモータの駆動トルクに勝ろうとしても、トルク伝達機構により、トルク伝達が加圧部材の側からモータの側へ向かう向きには行われない。したがって、このブレーキ装置によれば、セルフサーボ状態においてトルク伝達機構により、摩擦パッドからの反力に抗して加圧部材がロックされるため、モータが逆回転させられずに済む。
このブレーキ装置において「モータ」は、前記超音波モータとしたり、DCモータとしたり、他のモータとすることができる。
(36)前記パッド加圧機構が、さらに、前記モータと加圧部材との間に設けられ、モータと共に回転する回転部材と加圧部材と共に直線運動する移動部材とを備えて回転部材の回転運動を移動部材の直線運動に変換する運動変換機構を含み、前記トルク伝達機構が、前記モータと回転部材との間に設けられ、トルク伝達をモータから回転部材へ向かう向きには行うがその逆向きには行わない機構を含む(35)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(37)前記パッド加圧機構が、さらに、前記モータと加圧部材との間に設けられ、モータと共に回転する回転部材と加圧部材と共に直線運動する移動部材とを備えて回転部材の回転運動を移動部材の直線運動に変換する運動変換機構を含み、前記トルク伝達機構が、前記モータと回転部材との間に設けられ、モータと共に回転するウォームと回転部材と共に回転するウォームホイールとがかみ合うウォームギヤを含む(35)または(36)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、トルク伝達機構を簡単な構造で実現し得る。
(38)前記モータ制御装置が、前記トルク伝達機構が前記逆向きのトルク伝達を阻止する状態において、前記モータを非通電状態にする逆向きトルク伝達阻止時制御手段を含む(35)ないし(37)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、トルク伝達機構が加圧部材の側からモータの側へのトルク伝達を阻止する状態、すなわち、モータを通電状態にすることが必要でない状態において、モータが非通電状態にされるため、モータによる無駄な電力消費が防止される。
(39)前記逆向きトルク伝達阻止時制御手段が、前記セルフサーボ機構の作用開始に応じて、前記モータを非通電状態にするサーボ開始時制御手段を含む(38)項に記載の電動式ブレーキ装置。
このブレーキ装置においては、セルフサーボ状態においてモータが非通電状態にされる。一方、セルフサーボ状態においては、トルク伝達機構が加圧部材の側からモータの側へのトルク伝達を阻止する状態、すなわち、モータを通電状態にすることが不要である状態にある可能性が高い。したがって、このブレーキ装置によれば、モータによる無駄な電力消費が防止される。
(40)前記サーボ開始時制御手段が、(a)前記加圧力実際値に関連する量を検出する加圧力関連量センサと、(b)その加圧力関連量センサの出力信号に基づき、前記モータの第1の通電状態において前記加圧力実際値の増加量が第2基準増加量を超えるという条件を含む少なくとも一つの条件が同時に成立した場合に、前記セルフサーボ機構の作動が開始されたと判定するセルフサーボ状態判定手段とを含む(39)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(41)前記モータ制御装置が、(a)運転操作に関連する情報を検出する運転操作関連情報センサと、車両の状態に関連する情報を検出する車両状態関連情報センサと、車輪の状態に関連する情報を検出する車輪状態関連情報センサとの少なくとも一つを含む関連情報センサと、(b)その関連情報センサの出力信号に基づいて前記加圧力指令値を決定する加圧力指令値決定手段と、(c)その決定された加圧力指令値に基づいて前記モータを、加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御するコントローラとを含む(1)ないし(40)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(42)前記モータ制御装置が、(a)主ブレーキ操作時に前記モータを制御して前記モータ駆動式ディスクブレーキを作動させる主ブレーキ用モータ制御装置と、(b)駐車ブレーキ操作時に前記モータを制御して前記モータ駆動式ディスクブレーキを作動させる駐車ブレーキ用モータ制御装置とを含む(1)ないし(40)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(43)前記主ブレーキ用モータ制御装置が、(a)運転操作に関連する情報を検出する運転操作関連情報センサと、車両の状態に関連する情報を検出する車両状態関連情報センサと、車輪の状態に関連する情報を検出する車輪状態関連情報センサとの少なくとも一つを含む関連情報センサと、(b)その関連情報センサの出力信号に基づいて前記加圧力指令値を決定する加圧力指令値決定手段と、(c)その決定された加圧力指令値に基づいて前記モータを、加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御する主ブレーキコントローラとを含む(42)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(44)前記駐車ブレーキ用モータ制御装置が、(a)車両を停止状態に保持することが必要である場合に運転者により操作される駐車ブレーキ操作部材と、(b)その駐車ブレーキ操作部材の操作を検出する駐車ブレーキ操作センサと、(c)その駐車ブレーキ操作センサの出力信号に基づいて前記加圧力指令値を、車両を停止状態に保持するために前記モータにより発生させることが必要である高さに決定する加圧力指令値決定手段と、(d)その決定された加圧力指令値に基づいて前記モータを、加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御する駐車ブレーキコントローラとを含む(42)項に記載の電動式ブレーキ装置。
(45)さらに、前記モータによる前記摩擦パッドの加圧力の実際値を直接に検出する加圧力センサを含み、かつ、前記加圧力センサと接続された状態で前記モータ制御装置に設けられ、前記モータ駆動式ディスクブレーキの非作用時に前記加圧部材が前記摩擦パッドから退避させられる位置を制御する退避位置制御手段であって、加圧力センサの出力信号に基づいて加圧部材が摩擦パッドとの押圧を開始したかまたは終了した位置を検出し、その検出位置から設定距離だけ摩擦パッドから離間する向きに離れた退避位置まで加圧部材が移動するように前記モータを作動させ、加圧部材がその退避位置に到達したならばモータを非通電状態にする退避位置制御手段を含む(1)ないし(44)項のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
(46)モータを駆動源として車輪を制動するモータ駆動式ディスクブレーキであって、(a) 摩擦面を備えて車輪と共に回転するディスクロータと、(b)そのディスクロータに前記摩擦面において接触させられてディスクロータの回転を抑制する摩擦パッドと、(c)その摩擦パッドを少なくとも前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持するパッド支持機構と、(d)モータおよび加圧部材を備え、モータの駆動力により加圧部材を介して前記摩擦パッドを前記ディスクロータに向かって加圧するパッド加圧機構であって、前記モータが、非通電状態では静止させられ、第1の通電状態では摩擦パッドを加圧するために正回転させられ、第2の通電状態では摩擦パッドを摩擦面から離間させるために逆回転させられるパッド加圧機構とを有するモータ駆動式ディスクブレーキと、
前記モータによる前記摩擦パッドの加圧力の実際値を直接に検出する加圧力センサと、
その加圧力センサと前記モータとに接続され、前記加圧力の指令値に基づいてモータを、加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御するモータ制御装置と
を含む電動式ブレーキ装置において、
前記加圧力センサと接続された状態で前記モータ制御装置に設けられ、前記モータ駆動式ディスクブレーキの非作用時に前記加圧部材が前記摩擦パッドから退避させられる位置を制御する退避位置制御手段であって、加圧力センサの出力信号に基づいて加圧部材が摩擦パッドとの押圧を開始したかまたは終了した位置を検出し、その検出位置から設定距離だけ摩擦パッドから離間する向きに離れた退避位置まで加圧部材が移動するように前記モータを作動させ、加圧部材がその退避位置に到達したならばモータを非通電状態にする退避位置制御手段を設けたことを特徴とするモータ駆動式ディスクブレーキを備えた電動式ブレーキ装置。
前項および本項に記載のブレーキ装置においては、加圧力センサの出力信号に基づいて加圧部材が摩擦パッドとの押圧を開始したかまたは終了した位置が検出され、その検出位置から設定距離だけ摩擦パッドから離間する向きに離れた退避位置まで加圧部材が移動するようにモータが作動させられる。
したがって、このブレーキ装置によれば、摩擦パッドの実際の板厚を考慮して加圧部材の退避位置に制御されるため、ディスクブレーキの非作用状態において、摩擦パッドがディスクロータに接近し過ぎてディスクロータによる引きずりを生じたり、摩擦パッドがディスクロータから離間し過ぎてディスクブレーキの効き遅れを生じたりすることが防止される。
また、このブレーキ装置においては、加圧力実際値を検出する加圧力センサによって加圧部材の位置が検出されるため、加圧力実際値と加圧部材の位置とを別個のセンサにより検出することが不要となり、当該ブレーキ装置におけるセンサの数を削減可能となる。
また、このブレーキ装置においては、加圧部材が摩擦パッドとの押圧を開始したかまたは終了した位置を基準として加圧部材の退避位置が決定されるため、加圧部材を最大加圧力でディスクロータに押圧された位置を基準として加圧部材の退避位置を決定する場合に比較して、加圧部材の退避位置が、摩擦パッドの弾性変形量の個体ばらつきの影響を受けずに済む。
(47)車輪に設けられた、(1)ないし(46)項のいずれかに記載のモータ駆動式ディスクブレーキと、
前記車輪の制動力を検出する制動力センサと、
少なくともその制動力センサにより検出された車輪の制動力に基づき、車輪の実制動力が目標制動力となるように前記モータを制御するモータ制御装置と
を含むことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
モータを駆動源とする電動式ブレーキ装置においては、摩擦パッドとディスクロータとの間の摩擦係数の変動等にもかかわらず車輪制動力の大きさを正しく制御するために、摩擦パッドの実摩擦力すなわち車輪の実制動力に基づいてモータを制御することが望ましい。
以上の事情に鑑み、本項に記載のブレーキ装置は、車輪の実制動力をフィードバックすることにより、摩擦パッドとディスクロータとの間の摩擦係数の変動等にもかかわらず目標制動力を精度よく実現することを課題としてなされたものである。
そして、このブレーキ装置によれば、実制動力を監視しつつモータが制御される。したがって、このブレーキ装置によれば、摩擦パッドとディスクロータとの間の摩擦係数の変動にもかかわらず目標制動力を精度よく実現し得る。
このブレーキ装置において「制動力センサ」は例えば、各車輪のモータ駆動式ディスクブレーキの構成部材であって各車輪の制動力に応じた歪みが発生するもののその歪みを検出する形式とすることができる。
また、このブレーキ装置において「モータ制御装置」は例えば、ブレーキ操作中、セルフサーボ効果の発生状態であるか不発生状態であるかを問わず、実制動力に基づいてモータのフィードバック制御を行う態様としたり、セルフサーボ効果の発生状態でのみモータのフィードバック制御を行う態様としたり、セルフサーボ効果の不発生状態でのみモータのフィードバック制御を行う態様とすることができる。
(48)摩擦面を有して車輪と共に回転するディスクロータと、
そのディスクロータに前記摩擦面において接触させられてディスクロータの回転を抑制する摩擦パッドと、
モータの駆動力により前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧する押圧装置と
を含むモータ駆動式ディスクブレーキにおいて、
前記押圧装置を、さらに、レバーを含み、かつ、そのレバーを、(a)前記ディスクロータの回転軸線と交差する回動軸線の回りに回動可能に固定部材と連結された連結部と、(b) 前記モータの駆動力が入力される入力部と、(c)前記摩擦パッドに背後から係合して前記押圧力を付与する係合部とを有するとともに、それら連結部,入力部および係合部間の相対位置関係が、前記モータの駆動力が倍力されて前記摩擦パッドに作用するように予め設定されたモータ駆動式ディスクブレーキ。
このディスクブレーキは、モータと摩擦パッドとの間の倍力機構の構造を簡単にすることにより、構造複雑化を回避しつつ、モータの駆動力の割に大きな車輪制動力を発生させることを課題としてなされたものである。
そして、このディスクブレーキにおいては、モータの駆動力がレバーを主体とする簡単な構造によって倍力されて摩擦パッドに伝達される。したがって、このディスクブレーキによれば、モータの駆動力の割に大きな車輪制動力を発生させるために構造が複雑にならずに済む。
このディスクブレーキは、前記(17)項に記載の温度上昇抑制手段や、(18)項に記載の伝熱抑制部材を使用し得る。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
本発明の第1実施形態は、各車輪毎にモータ駆動式ディスクブレーキを備えた4輪自動車用の電動式ブレーキ装置である。図1には、一つの車輪に設けられるディスクブレーキ10が代表的に示されるとともに、ブレーキ装置全体が系統図として示されている。
【0008】
ディスクブレーキ10はディスクロータ11を備えており、ディスクロータ11は車輪と共に回転する。ディスクロータ11の両面はそれぞれ摩擦面12とされ、それら摩擦面12に対向して一対の摩擦パッド14,14が配設されている。各摩擦パッド14は、摩擦材18と、その背面に固着された鋼製の裏板20とを備えている。
【0009】
ディスクロータ11の近傍には、車体に位置固定に取り付けられた固定部材26がディスクロータ11を跨いで配設されている。ディスクロータ11の両側には一対のレバー30,30がディスクロータ11および一対の摩擦パッド14,14を隔てて互いに対向する状態で配設されている。
【0010】
各レバー30は、それの前端部(図において右側の端部)において固定部材26に、ディスクロータ11の回転軸線(図において上下方向に延びる直線)と立体交差(交差の一例である)する第1回動軸線L1(図2参照)の回りに回動可能に連結されている。固定部材26には、ディスクロータ11を隔てて互いに対向する一対の連結部32,32がそれぞれ形成されている。各連結部32は、図2に示すように、固定部材26の本体部から車体後方に空間34を隔てて延びる一対の延出部36,36として形成されている。各レバー30の前端部に第1連結部40が形成されており、この第1連結部40は、空間34内において一対の延出部36,36に僅かな隙間を残して回動可能に配置されている。それら一対の延出部32,32と第1連結部40とは、それらを同時に貫通する連結部材としてのボルト42により互いに連結されている。
【0011】
各レバー30の中間部には、図1に示すように、各摩擦パッド14の裏板20の裏面に係合する係合部44が形成されている。さらに、各レバー30の前端部には、図2に示すように、裏板20のうち車体前側(摩擦パッド14のトレーリング側、すなわち、ディスクロータ11の回出側の一例)を向いた部分である係合凹部46を、車体後側(摩擦パッド14のリーディング側、すなわち、ディスクロータ11の回入側の一例)を向いた面において受ける第1受け部50も形成されている。
【0012】
一対のレバー30,30は、図1に示すように、係合部44と後端部(図において左側の端部)との間の部分において、一対のリンク54,54により連結されている。一対のリンク54,54はピン56により互いに、第1回動軸線L1と平行な第2回動軸線L2の回りに回動可能に連結されている。各リンク54のうちピン56とは反対側の端部がピン60により各レバー30の第2連結部62と、第2回動軸線L2と平行な第3回動軸線L3の回りに回動可能に連結されている。各リンク54の中間部には、各摩擦パッド14の裏板20のうち車体後側を向いた部分である係合凹部66を、車体前側を向いた面において受ける第2受け部68が形成されている。一対のリンク54,54の機能については後述する。
【0013】
以上要するに、各摩擦パッド14は各レバー30と、それの車体前側の部分においては第1受け部50、車体後側の部分においては第2受け部68によりそれぞれ係合しているのである。そして、各摩擦パッド14はそれら受け部50,68により、ディスクロータ11の摩擦面12に対する接近と離間とが可能な状態で支持されている。
【0014】
一対のレバー30,30の後端部には第1押圧装置70が配設されている。第1押圧装置70は、モータとしての超音波モータ72と、その超音波モータ72の回転軸74の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構76とを備えている。
【0015】
超音波モータ72は、よく知られているように、ステータに超音波振動を与えて表面波を生じさせるとともに、ステータとロータとの間に働く摩擦力によってロータを回転させるものである。ロータは付勢手段によってステータに押し付けられ、両者の間に必要な摩擦力が得られるようになっており、電圧が印加されない状態でもステータとロータとの間には一定の摩擦力が生じている。このように構成された超音波モータ72は、一対のレバー30,30の一方(図において下側のレバー)の後端部に設定された入力部77に固定的に取り付けられ、これに対し、運動変換機構76は、他方のレバー30(図において上側のレバー)の後端部に設定された入力部78に設けられている。
【0016】
運動変換機構76は、図3に示すように、回転軸74と共に回転するおねじ80にめねじ82が螺合されたねじ機構とされている。めねじ82は球関節継手84を介してレバー30の後端部に取り付けられている。一対のレバー30,30の相対回動に伴ってそれらの一対の後端部の相対位置関係が変化するからであり、具体的には、めねじ82がボール90にそれの中心を貫通して形成されるとともに、レバー30の後端部にソケット92が形成され、ボール90がソケット92に摺動可能に嵌合されているのである。ソケット92には、超音波モータ72の側の部分には球面92aが形成されているが、反対側の部分にはボール90をソケット92内に挿入するための穴92bが形成されており、挿入後、ボール90の離脱防止のため、離脱防止手段としてのCリング94がレバー30に固定される。また、穴92bの開口部はカバー96によって閉塞される。カバー96とボール90の外面とソケット92の内面とによって確定された空間にグリスが封入されることにより、ボール90とソケット92との摺動がスムーズに行われるようにされている。
【0017】
したがって、本実施形態においては、図1に示すように、超音波モータ72が、一対のレバー30,30をそれらの後端部において接近する向きに回動させる向きに回転させられれば、一対のレバー30,30が一対の係合部44,44が互いに接近する向き、すなわち、各係合部44がディスクロータ11の摩擦面12に接近する向きに回動させられる。その結果、一対の摩擦パッド14,14が互いに接近させられてディスクロータ11に押圧され、それによって、各摩擦パッド14とディスクロータ11との間に摩擦力が発生し、ディスクロータ11の回転が抑制されて車輪が制動される。
【0018】
この状態から超音波モータ72が逆回転させられれば、一対のレバー30,30がそれらの後端部が互いに離間する向きに回動させられ、一対の係合部44,44が互いに離間させられる。その結果、各摩擦パッド14がディスクロータ11から離間させられ、車輪の制動力が減少させられる。
【0019】
車体前進中に車輪の制動が行われれば、各摩擦パッド14に前向き摩擦力が発生し、この前向き摩擦力が第1受け部50に伝達されれば、各レバー30に、係合部44がディスクロータ11に接近する向きのモーメントが発生させられる。一方、車体後退中に車輪の制動が行われれば、各摩擦パッド14に後向き摩擦力が発生し、この後向き摩擦力が第2受け部68に伝達されれば、一対のリンク54,54がピン56の回りに一対のピン60,60が互いに接近する向きに回動させられ、その結果、各レバー30に、係合部44がディスクロータ11に接近する向きのモーメントが発生させられる。
【0020】
したがって、本実施形態においては、車体が前進するか後退するかを問わず、車輪の制動が行われれば、各レバー30に、係合部44がディスクロータ11に接近する向きのモーメントが発生させられ、係合部44から摩擦パッド14に、その摩擦力に基づく第2押圧力が付与され、みかけ上、超音波モータ72の駆動力に基づく第1押圧力が倍力され、セルフサーボ効果が発生するのである。
【0021】
すなわち、本実施形態においては、一対のレバー30,30と一対のリンク54,54とによって第2押圧装置98が構成され、また、一対のレバー30,30は、前記第1押圧装置70の一構成要素としても機能するようになっているのである。
【0022】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、一対のレバー30の一対の第1受け部50および一対の第2受け部68が互いに共同して「パッド支持機構」の一例を構成し、また、一対のレバーが「加圧部材」の一例を構成し、また、超音波モータ72と一対のレバー30,30と運動変換機構76とが互いに共同して「パッド加圧機構」の一例を構成し、また、第2押圧装置98が「セルフサーボ機構」の一例を構成しているのである。
【0023】
超音波モータ72はモータ制御装置としてのコントローラ100によって制御される。コントローラ100は、概略的に説明すれば、各車輪の実制動力Fを監視しつつ、ブレーキ操作量fに応じた目標制動力F* が各車輪に発生するように各車輪のディスクブレーキ10における超音波モータ72を制御するブレーキ制御を行う。すなわち、このブレーキ制御は、図4に示すように、フィードバック制御系を構成しているのである。
【0024】
このブレーキ制御を実行するため、コントローラ100には、図1に示すように、ブレーキ操作量センサとしての踏力センサ102が接続されている。踏力センサ102は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル104が運転者によって踏み込まれた踏力fを検出し、それに応じた信号を出力する。また、コントローラ100には、超音波モータ72に電力を供給するための電源装置106も接続されている。電源装置106は例えば、車両に搭載されたバッテリである。さらに、コントローラ100には、各車輪毎に設けられ、各車輪に実際に発生した制動力Fを検出する制動力センサ110も接続されている。制動力センサ110は例えば、各車輪のディスクブレーキ10の構成部材のうち各車輪に発生した制動力Fに応じた歪みが発生する部材(例えば、図1に示すレバー30)に装着された歪みゲージを主体として構成される。
【0025】
図5には、コントローラ100の構成が機能ブロック図で示されている。コントローラ100は、(a) 踏力センサ102の出力信号に基づいて踏力fをブレーキ操作量として演算するブレーキ操作量演算手段120と、(b) 演算されたブレーキ操作量としての踏力fに基づいて各車輪の目標制動力F* を演算する目標制動力演算手段122と、(c) 制動力センサ110の出力信号に基づいて各車輪の実制動力Fを演算する実制動力演算手段124と、(d) 各車輪における実制動力Fと目標制動力F* との偏差ΔFに基づいて実制動力Fが目標制動力F* となるために各車輪の超音波モータ72に出力することが適当な駆動信号を演算する駆動信号演算手段126と、(e) 演算された駆動信号を各車輪の超音波モータ72に出力する駆動信号出力手段128とを備えている。
【0026】
コントローラ100は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されており、記憶媒体としてのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンがCPUによりRAMを使用しつつ実行されることにより、上記ブレーキ制御が実行される。
【0027】
図6には、上記ブレーキ制御ルーチンがフローチャートで表されている。本ルーチンは車両のエンジンのイグニションスイッチがONに操作された後、一定の周期で繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、踏力センサ102の出力信号に基づいて現在の踏力fが演算される。次に、S2において、演算された踏力fに基づいて各車輪の目標制動力F* が演算される。ROMに、踏力fと左右前輪の合計制動力Ff と左右後輪の合計制動力Fr との関係がテーブル,マップ,関数式等で記憶されている。その関係の一例が図7にグラフで表されている。この関係に従い、まず、踏力fに対応する左右前輪の目標合計制動力Ff * が求められ、それの半値がそれぞれ左前輪の目標制動力Ffl* および右前輪の目標制動力Ffr* として求められる。さらに、左右前輪の目標合計制動力Ff * に対応する左右後輪の目標合計制動力Fr * が求められ、同様に、それの半値がそれぞれ左後輪の目標制動力Frl* および右後輪の目標制動力Frr* として求められる。
【0028】
その後、S3において、各車輪の制動力センサ110の出力信号に基づいて各車輪の実制動力Ffl,Ffr,Frl,Frrがそれぞれ演算される。続いて、S4において、各車輪の実制動力Fと目標制動力F* との偏差ΔFに基づき、実制動力Fが目標制動力F* となるために各車輪の超音波モータ72に供給することが適当な駆動信号が演算される。各車輪の超音波モータ72の駆動信号は例えば、PID動作の下に例えば次の式に基づいて演算することができる。
K・[ΔF+(t/Ti )・ΣΔF+(Td /t)・ΔΔF]
ただし、
K :比例係数(定数)
ΔF:各車輪の目標制動力F* から実制動力Fを引き算した偏差
t :サンプリング時間(本ルーチンの実行周期。定数)
Ti :積分時間(定数)
Td :微分時間(定数)
ΔΔF:偏差ΔFの時間微分値である偏差微分
【0029】
その後、S5において、演算された各車輪の駆動信号が各車輪の超音波モータ72に出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0030】
したがって、本実施形態によれば、以下のようないくつかの効果が得られる。すなわち、車輪に制動力を発生させるために作動液を使用せずに済むため、マスタシリンダ,ブレーキブースタ,ブレーキチューブ,ブレーキホース,Pバルブ,電磁液圧制御弁,ポンプ,リザーバ等、圧力関連部品が不要となり、ブレーキ装置の組付性が向上するとともに、ブレーキ装置の大幅な小形軽量化が図られ、車両重量の軽減および客室スペースの増加が図られる。また、作動液の交換やエア抜き作業が不要となり、ブレーキ装置のメンテナンス性が向上する。また、マスタシリンダによってディスクブレーキ10を作動させる場合には、マスタシリンダのピストン径によってブレーキ操作力とブレーキ操作ストロークとの関係がほぼ一義的に決定されてしまうが、本実施形態によれば、ブレーキ操作力とブレーキ操作ストロークとの関係を自由に設定でき、その関係を自由に設定できる。また、もちろん、ベーパロックという現象が発生する余地はない。
【0031】
さらに次のような効果も得られる。すなわち、本実施形態によれば、超音波モータ72から摩擦パッド14までの力伝達系がレバー30を主体とした部品点数の少ない簡単な構造となるため、目標制動力の変化に素早く応答して実制動力を変化させることができる。また、セルフサーボ機能が発揮されることにより、実制動力の応答性は一層向上する。また、電気自動車において各車輪について回生ブレーキと併用される摩擦ブレーキとしてディスクブレーキ10が使用される場合には、各車輪に発生する制動力のうち摩擦ブレーキによって各車輪に発生させられる分を自由に制御可能となり、回生ブレーキによって各車輪に発生させられる分が車輪の回転速度等に依存するにもかかわらず、ブレーキ操作量に正確に対応した大きさの合計制動力が各車輪に発生し、その結果、電気自動車における回生ブレーキと摩擦ブレーキとの協調制御の設計が容易になる。
【0032】
本実施形態には種々の変更を加えることができる。例えば、図3においては、ボール90のソケット92からの離脱がCリング94によって阻止されるようになっているが、例えば、図8に示すように、ボール90との摺動面を増加させることや、ボール90とカバー96との間の空間を減少させることなどに好適な形状を有する押さえリング130をCリング94に代えて使用するという変更を加えることができる。また、その押さえリング130の材質を合成樹脂、例えば、自己潤滑性の優れたナイロンとしてボール90の摺動抵抗を低減させるという変更を加えることもできる。また、同図に示すように、押さえリング130をソケット92に摺動可能に嵌合するとともに、その押さえリング130の背面にカバー96を係合させ、かつ、そのカバー96に弾性を付与することにより、押さえリング130と弾性を有するカバー96との共同によってボール90をソケット92に弾性支持し、これにより、ソケット90の振動を低減させるという変更を加えることもできる。
【0033】
次に、第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は先の第1実施形態と共通する要素が多く、異なるのはセルフサーボ機構のみであるため、そのセルフサーボ機構についてのみ詳細に説明し、他の要素については説明を省略する。
【0034】
第1実施形態においては、前述の説明から明らかなように、ディスクブレーキ10の作用時に摩擦パッド14に、ディスクロータ11の回転方向に発生した力がレバー30によりその摩擦パッド14自身に戻されることにより、セルフサーボ効果が発生させられる。これに対して、本実施形態においては、図9に示すように、超音波モータ72の駆動力Fにより運動変換機構を介してまたは直接に直線方向に駆動される駆動部材140と摩擦パッド14の裏板20とが各斜面142,144によって係合させられ、それにより、摩擦パッド14のくさび効果によって摩擦パッド14のセルフサーボ効果が発生させられる。
【0035】
すなわち、本実施形態においては、駆動部材140が「加圧部材」の一例を構成し、超音波モータ72と駆動部材140とが互いに共同して「パッド加圧機構」の一例を構成し、また、摩擦パッド14をくさびとして機能させるために摩擦パッド14に形成された斜面144が「セルフサーボ機構」の一例を構成しているのである。
【0036】
次に、第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。また、本実施形態は、摩擦パッド14のくさび効果を利用してセルフサーボ効果を発生させる点で先の第2実施形態と共通する。
【0037】
本実施形態は、各輪毎にディスクブレーキ150が設けられるとともに、4輪に共通にコントローラ100,踏力センサ102および電源装置106が設けられた4輪自動車用のブレーキ装置である。各ディスクブレーキ150は制動力センサ110を備えており、その制動力センサ110はコントローラ100に接続されている。
【0038】
ディスクブレーキ150は、車体に位置固定に取り付けられた固定部材としてのマウンティングブラケット152を備えている。マウンティングブラケット152は、(a) 一対の摩擦パッド14a,14bをディスクロータ11を両側から挟む位置においてディスクロータ11の回転軸線に沿って移動可能に支持する部分と、(b) ディスクロータ11との摩擦により各摩擦パッド14a,14bに、ディスクロータ11の回転方向に発生する力を受ける部分(受け部材)とを備えている。
【0039】
図11には、一対の摩擦パッド14a,14bのうち車体取り付け状態で外側(図10において上側)に位置するアウタパッド14aがマウンティングブラケット152により支持される様子が示されている。図において矢印Xは、車体前進時にディスクロータ11が回転する前進回転方向を示している。アウタパッド14aのその前進回転方向における前端面156と後端面158とからそれぞれ係合凸部160,162が突出させられており、それに対応してマウンティングブラケット152に係合凹部164,166がディスクロータ11の回転軸線に沿って延びる状態で形成されている。そして、アウタパッド14aは係合凸部160,162においてマウンティングブラケット152の係合凹部164,166にディスクロータ11の回転軸線に沿って摺動可能に嵌合されている。ただし、互いに対応する係合凸部160と係合凹部164、および係合凸部162と係合凹部166は、ディスクロータ11の回転軸線からアウタパッド14aに向かう方向において変位可能に嵌合させられており、それにもかかわらずアウタパッド14aがマウンティングブラケット152内においてみだりに動くことがないように、スプリング168によりアウタパッド14aがディスクロータ11の回転軸線から離間する向きに付勢されている。また、アウタパッド14aは、マウンティングブラケット152により、ディスクロータ11との連れ回りが実質的に阻止される状態で支持されている。
【0040】
図12には、一対の摩擦パッド14a,14bのうち車体取付け状態で内側(図10において下側)のインナパッド14bがマウンティングブラケット152により支持される様子が示されている。アウタパッド14aと同様に、インナパッド14bの前端面170と後端面172とからそれぞれ係合凸部174,176が突出させられており、それに対応してマウンティングブラケット152に係合凹部178,180がディスクロータ11の回転軸線に沿って延びる状態で形成されている。そして、インナパッド14bは係合凸部174,176においてマウンティングブラケット152の係合凹部178,180にディスクロータ11の回転軸線に沿って摺動可能に嵌合されている。また、アウタパッド14aと同様に、インナパッド14bがスプリング182によりマウンティングブラケット152内においてみだりに動くことがないようにされている。
【0041】
インナパッド14bは、アウタパッド14aとは異なり、マウンティングブラケット152により、ディスクロータ11との連れ回りが積極的に許容される状態で支持されている。図12において矢印Yは、インナパッド14bの連れ回り方向を示している。インナパッド14bの前側の係合凸部174がマウンティングブラケット152との間に、連れ回り方向において大きな隙間が残るようにマウンティングブラケット152に取り付けられているのである。
【0042】
ただし、インナパッド14bの連れ回りは、常に許容されるのではなく、インナパッド14bとディスクロータ11との間に発生した摩擦力が設定値より小さい状態では阻止され、設定値以上になった状態ではじめて許容されるようになっている。このような連れ回り制御を実現するため、本実施形態においては、係合凸部174が、スプリング184を介してマウンティングブラケット152に係合させられるとともに、それら係合凸部174とスプリング184との間に、係合凸部174と共に移動可能な移動部材186が設けられ、さらに、その移動部材186の係合凸部174への接近限度を規制するストッパ188が設けられている。インナパッド14bの摩擦力が設定値より小さい状態では、スプリング184が弾性変形せずにインナパッド14bの連れ回りが阻止され、設定値以上となった状態ではじめてスプリング184が弾性変形してインナパッド14bの連れ回りが許容されるのである。また、本実施形態においては、インナパッド14bの連れ回り量が設定値となったときにマウンティングブラケット152に当接するストッパ190が移動部材186に設けられている。これにより、インナパッド14bの連れ回り限度が規制され、ひいては、セルフサーボ効果の限度が規制される。
【0043】
ディスクブレーキ150はさらに、図10に示すように、ディスクロータ11の回転軸線方向には移動可能、ディスクロータ11の回転方向には移動不能なキャリパボデー202を備えている。
【0044】
キャリパボデー202は、図11および図12に二点鎖線で示すように、ディスクロータ11の回転軸線に平行に延びる姿勢で車体に取り付けられた複数本のピン204に摺動可能に嵌合されている。キャリパボデー202は、図10に示すように、ディスクロータ11を跨き、一対の摩擦パッド14a,14bを背後から挟む姿勢で複数本のピン204に取り付けられている。具体的には、キャリパボデー202は、(a) アウタパッド14aに背後から係合するリアクション部206と、(b) インナパッド14bに背後において近接する押圧部208と、(c) それらリアクション部206と押圧部208とを互いに連結する連結部210とを含むように構成されている。
【0045】
押圧部208においては、モータとしての超音波モータ212が運動変換機構としてのボールねじ機構214を介して加圧ロッド216に同軸に連結されている。加圧ロッド216は一軸線を有するとともに、押圧部208により、その軸線回りに回転不能かつその軸線方向に移動可能に支持されている。したがって、超音波モータ212の回転軸218が回転すればその回転運動がボールねじ機構214によって加圧ロッド216の直線運動に変換される。それにより、加圧ロッド216がそれの軸線に沿って前後に移動させられ、その移動に基づいてインナパッド14bがディスクロータ11の一側の摩擦面12に押圧されるとともに、インナパッド14bからの反力がキャリパボデー202を介してアウタパッド14aに伝達されることにより、アウタパッド14aもディスクロータ11に反対側の摩擦面12において押圧される。
【0046】
すなわち、本実施形態においては、キャリパボデー202が「加圧部材」の一例を構成し、また、そのキャリパボデー202と超音波モータ212とボールねじ機構214と加圧ロッド216とが互いに共同して「パッド加圧機構」の一例を構成しているのである。
【0047】
アウタパッド14aにおいては、裏板20の板厚が均一とされているが、インナパッド14bにおいては、それの連れ回り方向Yにおいて後側から前側にたどるにつれて板厚が漸減するようにされている。インナパッド14aの裏板20の背面が、ディスクロータ11の摩擦面12に対する斜面220とされ、それにより、加圧ロッド216の前端面がその斜面220においてインナパッド14bと接触させられているのである。さらに、その斜面220と加圧ロッド216の前端面とはそれらの面に沿って相対移動可能とされている。したがって、インナパッド14bの連れ回りが行われる状態では、インナパッド14bがディスクロータ11と加圧ロッド216との間においてくさびとして機能し、それにより、インナパッド14bにセルフサーボ効果が発生する。なお、本実施形態においては、加圧ロッド216の軸線が斜面220と直角とされている。
【0048】
本実施形態においては、加圧ロッド216の前端面において複数のボール222(ローラ等でも可)が加圧ロッド216の軸線回りの一円周に沿ってほぼ等間隔で保持されるとともに、各ボール222が転動可能に保持されている。インナパッド14bの裏板20と加圧ロッド216とがスラストベアリング224により互いに接触させられているのであり、それらインナパッド14bと加圧ロッド216との間の摩擦が低減されている。すなわち、本実施形態においては、スラストベアリング224が「摩擦低減手段」の一例を構成しているのである。なお、摩擦の低減は例えば、加圧ロッド216のうち少なくとも斜面220と接触する部分の材質を、金属より耐摩耗性,耐蝕性,摺動性のよい材質(例えば、窒化珪素,炭化珪素等、耐摩耗性のよいセラミックスや、自己潤滑性のよいポリアミド樹脂,自己潤滑性がよく、かつ、耐摩耗性がよいために加圧ロッド216の防錆性を向上させるふっ素樹脂)とすることによって実現することもできる。
【0049】
また、本実施形態においては、ボール222の材質が、金属より断熱性のよい材質(例えば、窒化珪素,炭化珪素等、断熱性のよいセラミックス)とされている。超音波モータ212からインナパッド14bに力が伝達される力伝達系の途中に、そのように断熱性のよいボール222が設けられ、それにより、インナパッド14bとディスクロータ11との間に発生する摩擦熱が力伝達系を経て超音波モータ212に伝達されることが抑制され、それにより、超音波モータ212の温度上昇が抑制される。すなわち、本実施形態においては、断熱性のよいボール222が「温度上昇抑制手段」の一例および「伝熱抑制部材」の一例を構成しているのである。なお、温度上昇の抑制は例えば、加圧ロッド216の材質を、金属より断熱性のよい材質とすることによって実現することもできる。
【0050】
次に作動を説明する。
運転者によりブレーキペダル104が踏み込まれ、それに伴って超音波モータ212が回転させられて加圧ロッド216が非作動位置から前進させられれば、インナパッド14bがディスクロータ11に押圧される。それにより、それらインナパッド14bとディスクロータ11との間に摩擦力が発生するとともに、アウタパッド14aとディスクロータ11との間にも摩擦力が発生し、その結果、車輪が制動される。
【0051】
インナパッド14bの摩擦力が設定値より低く、スプリング184の設定荷重に打ち勝つことができない状態では、スプリング184によってインナパッド14bの連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果の発生が阻止される。したがって、ディスクブレーキ150の効き当初,弱いブレーキ操作状態等であるためにインナパッド14bの摩擦力が小さい状態では、超音波モータ212の駆動のみにより車輪が制動される。
【0052】
これに対して、ブレーキペダル104がさらに強く踏み込まれたため、インナパッド14bの摩擦力が設定値以上となり、スプリング184の設定荷重に打ち勝つことができる状態となれば、スプリング184によってインナパッド14bの連れ回りが許容される。インナパッド14bがディスクロータ11に連れ回れば、それに伴って斜面220が一体的に移動し、その結果、ディスクロータ11の摩擦面12と斜面220との距離が増加する。それにより、インナパッド14bがディスクロータ11と加圧ロッド216とにより板厚方向に強く圧縮され、その結果、インナパッド14bが大きな力でディスクロータ11に押圧される。
【0053】
すなわち、ブレーキペダル104が強く(例えば、車体に0.3ないし0.6G程度の減速度が発生する程度に)踏み込まれたためにインナパッド14bの摩擦力が大きくなった状態では、ディスクロータ11と加圧ロッド216との間においてインナパッド14bがくさびとして機能し、それにより、インナパッド14bにセルフサーボ効果が発生し、その結果、超音波モータ212の駆動とセルフサーボ効果との双方により車輪が制動される。
【0054】
なお、セルフサーボ機能によってインナパッド14bとディスクロータ11との押圧力が増加すれば、それに伴って加圧ロッド216の軸力が増加し、ひいては、超音波モータ212の回転軸218の回転トルクも増加する。これに対して、本実施形態においては、ボールねじ機構214の逆効率を通常より小さくすることと、モータの中で保持トルクが大きい超音波モータ212を採用することとの双方により、超音波モータ212の逆転が防止され、セルフサーボ機能が確実に実現される。
【0055】
インナパッド14bの摩擦力がさらに増加してストッパ190がマウンティングブラケット152と当接すれば、インナパッド14bの更なる連れ回りが阻止され、セルフサーボ効果の増加が阻止される。したがって、インナパッド14bの連れ回り量が過大となり、インナパッド14bの裏板20への加圧ロッド216の食い込み量が過大となって、裏板20が弾性回復不能に局部的に凹まされることが防止される。その結果、ブレーキ操作の解除に伴って加圧ロッド216が作動位置から非作動位置に戻るにもかかわらずインナパッド14bが連れ回り位置から初期位置に戻らないためにいわゆるブレーキの引きずりが発生することが防止される。
【0056】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、インナパッド14bをくさびとして機能させるために、マウンティングブラケット152にインナパッド14bをディスクロータ11に連れ回り可能に支持させるとともに、インナパッド14bに斜面220を形成することにより、「セルフサーボ機構」の一例を構成し、また、スプリング184が「セルフサーボ効果発生阻止機構」の一例および「弾性部材」の一例を構成し、また、ストッパ190が「セルフサーボ効果増加阻止機構」の一例を構成しているのである。
【0057】
また、本実施形態においては、インナパッド14bのみが「対象摩擦パッド」とされている。また、マウンティングブラケット152のうち、一対の摩擦パッド14a,14bを、インナパッド14bにおいてアウタパッド14aにおけるより、各摩擦パッド14の前端部とマウンティングブラケット152との間の隙間が大きくなるように、すなわち、インナッド14bとマウンティングブラケット152との間の隙間が、マウンティングブラケット152がインナパッド14bをディスクロータ11の回転軸線に沿って摺動可能に支持するために必要な摺動隙間より大きくなるように支持する部分が「連れ回り許容機構」を構成している。
【0058】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、モータの駆動力の割に大きな車輪制動力が実現されるという利点と、車輪制動力を不安定化させ易いという欠点とを併せ持つセルフサーボ機能が、すべての制動状態において一律に実現されるのではなく、欠点が実質的に問題にならずに利点のみを享受し得る特定の制動状態においてのみ選択的に実現されるため、セルフサーボ機能を実現可能なディスクブレーキを備えたブレーキ装置において、車輪制動力の不安定化なしで車輪制動力の増大が可能になるという効果が得られる。
【0059】
次に、第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は先の第3実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素については詳細に説明する。
【0060】
本実施形態の特徴は、ディスクブレーキ230が超音波モータ212を積極的に冷却することによってそれの温度上昇を抑制する冷却装置232を備えていることにある。超音波モータ212の温度上昇の原因には、一対の摩擦パッド14a,14bとディスクロータ11との摩擦熱の他に、超音波モータ212のコイルの発熱もあり、摩擦熱の超音波モータ212への伝達のみ抑制しても、十分な温度上昇抑制効果が得られない場合があり、このような場合に本実施形態が有効となる。
【0061】
冷却装置232は、本実施形態においては、水冷式とされており、超音波モータ212のハウジングを外側から覆うジャケット234を備えている。ジャケット234には、冷却液としての水(他の液体でも可)を導く通路236が形成されている。その通路236には水がポンプ238によって循環させられるようになっている。ポンプ238はモータ240によって駆動され、モータ240は前記コントローラ100によりその始動・停止が制御される。冷却装置232はまた、水を蓄えるタンク242も備えている。図14には、冷却装置232の要部のみが取り出されて拡大して示されている。すなわち、本実施形態においては、冷却装置232が「温度上昇抑制手段」の一例を構成しているのである。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、超音波モータ212が積極的に冷却されるため、超音波モータ212の温度上昇が効果的に抑制され、温度上昇に起因した超音波モータ212の異常を確実に回避可能となる。
【0063】
なお、本実施形態においては、冷却装置232が水冷式とされているが、電動モータに風を当てる冷却ファンと、それを回転させるモータとを含む空冷式とすることができる。なお、空冷式の冷却装置は、広範囲にわたって冷却を行うように設計することが容易であるため、ディスクブレーキ230のうち超音波モータ212のみならず、熱源である一対の摩擦パッド14a,14bやディスクロータ11をも冷却するようにすることが望ましい。
【0064】
次に、第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第4実施形態と共通する要素が大きいため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0065】
第4実施形態においては、ディスクロータ11の制動を行う超音波モータ212の冷却が別のモータ240によって行われるが、本実施形態においては、冷却されるべき超音波モータ212自身によってその冷却が行われる。具体的には、図15に示すように、超音波モータ212が、伝達制御装置250を介してディスクブレーキ230と、超音波モータ212を駆動源としてポンプまたはファンを作動させ、それにより、超音波モータ212に向かう液体または気体の流れを生起させる冷却装置252とに接続されている。伝達制御装置250は、超音波モータ212によってディスクロータ11を制動することが必要である場合には、超音波モータ212の駆動力をディスクブレーキ230に伝達する一方、その必要がない場合の少なくとも一時期には、超音波モータ212の駆動力を冷却装置252に伝達する構成とされている。
【0066】
一連のブレーキ操作においては普通、ブレーキペダル104の踏込みが連続的に行われるのではなく断続的に行われ、よって、踏込み状態とその解除状態(非踏込み状態)とが交互に繰り返される。一方、超音波モータ212の温度を上昇させる原因は、ブレーキペダル104の踏込み状態に発生し、また、ブレーキペダル104の解除状態では、超音波モータ212の駆動力を別の用途に利用可能である。したがって、一連のブレーキ操作において、各回の踏込み状態では超音波モータ212を本来の用途である車輪制動に利用し、各回の解除状態では超音波モータ212を別の用途の一例である冷却に利用することが可能である。そして、そのようにすれば、一連のブレーキ操作中、超音波モータ212が時期的に分散して冷却されるため、一連のブレーキ操作の終了毎に超音波モータ212を時期的に集中して冷却する場合に比較して、一連のブレーキ操作中に超音波モータ212の温度上昇が効果的に抑制される。
【0067】
以上の知見に基づき、本実施形態においては、伝達制御装置250が、ブレーキペダル104の踏込み状態(例えば、ブレーキ操作を検出するブレーキスイッチがONされた状態)では、超音波モータ212の駆動力をディスクブレーキ230に伝達し、これに対して、ブレーキペダル104の非踏込み状態(例えば、ブレーキスイッチがOFFされている状態)では、超音波モータ212の駆動力を冷却装置252に伝達する構成とされている。すなわち、本実施形態においては、超音波モータ212と伝達制御装置250と冷却装置252とが互いに共同して「温度上昇抑制手段」の一例を構成しているのである。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、ディスクロータ11の制動を行う超音波モータ212が効果的に冷却されて、その超音波モータ212の作動が安定するとともに、ブレーキ装置に使用するモータの数が減少し、装置コストを容易に削減可能となるという効果が得られる。
【0069】
なお付言すれば、以上説明したいくつかのモータ冷却技術は、モータを駆動源とするがセルフサーボ機能を実現しないディスクブレーキにも適用可能である。
【0070】
さらに付言すれば、以上説明したすべての実施形態においては、摩擦パッドの摩擦力をディスクロータへの押圧力に変換して同じ摩擦パッドに付与するセルフサーボ作用が、押圧力がモータから摩擦パッドに伝達される力伝達系において行われ、これに対して、摩擦パッドの連れ回り制御、すなわち、セルフサーボ作用の許可・禁止が、摩擦パッドと受け部材とにおいて行われる。すなわち、セルフサーボ作用と連れ回り制御とがディスクブレーキにおいて互いに異なる部位において実現されるのである。したがって、いずれの実施形態においても、セルフサーボ作用と連れ回り制御とを同じ部位において実現する場合に比較して、それらセルフサーボ作用と連れ回り制御とを簡単な構造で確実に実現可能となる。
【0071】
次に、第6〜第8実施形態を説明する。ただし、それら実施形態は、先の第3実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0072】
先の第3実施形態においては、制動力センサ110が、インナパッド14bからマウンティングブラケット152に入力される力を制動力として検出する形式とされている。これに対して、第6実施形態においては、図16に示すように、制動力センサ260が、加圧ロッド216の途中に配置されてインナパッド14bから加圧ロッド216に入力される力を制動力関連量として検出する形式として設けられている。また、第7実施形態においては、図17に示すように、制動力センサ262が、超音波モータ212のうち加圧ロッド216とは反対側の部分とキャリパボデー202とに挟まれて配置されてインナパッド14bから加圧ロッド216を経て超音波モータ212に入力される力を制動力関連量として検出する形式として設けられている。また、第8実施形態においては、図18に示すように、加圧ロッド216の先端部に取り付けられ、概して球面状を成す凸面でインナパッド14bの背面に接触することにより、インナパッド14bから加圧ロッド216に入力される力を制動力関連量として検出する形式として設けられている。
【0073】
次に、第9実施形態を説明する。
図19には、本実施形態である4輪車両用ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキ(以下、単に「ディスクブレーキ」という)310が示されている。このディスクブレーキ310は、車両に各輪毎にホイールブレーキとして設けられるが、図には、一つのディスクブレーキ310が代表的に示されている。
【0074】
ディスクブレーキ310は、車輪と共に回転する回転体としてのディスクロータ312を備えている。ディスクロータ312の両面はそれぞれ摩擦面314とされ、それら摩擦面314に対向して一対の摩擦パッド320a,320bが配設されている。各摩擦パッド320は、前面において各摩擦面314と接触する摩擦材322を備えるとともに、その摩擦材322の背面に鋼製の裏板324の前面が固着された構造とされている。
【0075】
ディスクブレーキ310は、パッド支持機構326とセルフサーボ機構327とパッド加圧機構328とを備えている。
【0076】
まず、パッド支持機構326を説明する。
ディスクブレーキ310は、図20に示すように、マウンティングブラケット330を備えている。マウンティングブラケット330は、ディスクロータ312を跨ぐ状態で車体に位置固定に取り付けられている。マウンティングブラケット330は、(a) 一対の摩擦パッド320a,320bをディスクロータ312を両側から挟む位置において摩擦面314と交差する方向に移動可能に支持する部分と、(b) 各摩擦パッド320とディスクロータ312との接触時に各摩擦パッド320に発生する摩擦力を受ける部分(受け部材)とを備えている。図において「X」は、車体前進時に、ディスクロータ312のうちマウンティングブラケット330を通過する部分が回転するロータ回転方向を表し、一方、「Y」は、各摩擦パッド320が移動可能な、摩擦面314と交差するパッド移動方向を表している。マウンティングブラケット330は車体に、図2を符号が正立する向きに見た場合に図において上側となる部分が車体前側、右側となる部分が車体外側、左側となる部分が車体内側にそれぞれ位置するように取り付けられている。したがって、一対の摩擦パッド320,320のうち、図において右側のものがアウタパッド320a、左側のものがインナパッド320bである。
【0077】
次に、セルフサーボ機構327を説明する。
このセルフサーボ機構327は、インナパッド320bをくさびとして機能させることにより、インナパッド320bにセルフサーボ効果を発生させるものである。そのため、インナパット320bが、マウンティングブラケット330により、先の第3実施形態におけると同様な構造により、ディスクロータ312に連れ回ることが積極的に許容される状態で支持されている。図において「Z」は、車体前進時にインナパッド320bが連れ回るパッド連れ回り方向を表している。インナパッド320bをくさび形状とするために、本実施形態においては、摩擦材322の板厚がパッド連れ回り方向Zにおいてそれの開始側から終了側に向かって漸減するようになっている。その結果、摩擦材322の前面に、板厚が均一である裏板324に対して傾斜した斜面334が形成されている。この斜面334を対向する摩擦面314に接触させると、裏板324の背面がその摩擦面314に対して傾斜することになる。このように傾斜した裏板324に対して後述の加圧ロッドを直角に係合させるために、マウンティングブラケット330が車体に、設計基準線L1がディスクロータ312の回転軸線L2に対して、マウンティングブラケット330のうち車体内側の部分が車体前側にずれる向きに傾斜する姿勢で取り付けられている。設計基準線L1は、一対の摩擦パッド320,320の両中心を通過して各摩擦パッド320の移動方向と平行に延びる一直線であり、また、一対の摩擦パッド320a,320bに背後から係合するキャリパボデー336がマウンティングブラケット330にピンスライド構造により摺動可能に取り付けられる際のその摺動方向に平行な直線でもある。
【0078】
アウタパッド320aは、セルフサーボ効果を発生させる対象ではないため、くさび形状とすることが不可欠ではない。しかし、上述のように、マウンティングブラケット330をインナパッド320bの裏板324に追従するように回転軸線L2に対して傾斜させると、それに伴って、キャリパボデー326も同様に傾斜するため、そのキャリパボデー326の傾斜に追従するようにアウタパッド320aもくさび形状とされている。ただし、インナパッド320bにおけるとは異なり、摩擦材322の板厚がロータ回転方向Xにおいてそれの開始側から終了側に向かって漸増するようになっている。これにより、キャリパボデー326の傾斜にもかかわらずアウタパッド320aがそれの摩擦材322の前面において隙間なく対向する摩擦面314に接触することになる。
【0079】
上記のように、インナパッド320bは、マウンティングブラケット330により、ディスクロータ310に連れ回ることが積極的に許容される状態で支持されているが、アウタパッド320aは、連れ回りが実質的に阻止される状態で支持されている。
【0080】
ただし、インナパッド320bの連れ回りは常時許容されるわけではなく、そのインナパッド320bの摩擦力が基準値に達するまでは阻止されるように設計されている。具体的には、インナパッド320bとマウンティングブラケット330とが弾性的制御機構340を介して連携させられている。その弾性的制御機構340は、インナパッド320bから入力される入力荷重が基準値に達しないうちは、弾性変形せずにインナパッド320bとマウンティングブラケット330とのパッド連れ回り方向Zにおける相対移動を阻止し、それにより、インナパッド320bの連れ回りを阻止し、一方、その入力荷重が基準値を超えた後には、弾性変形してその相対移動を許容し、それにより、インナパッド320bの連れ回りを許容する機構とされている。
【0081】
弾性的制御機構340は、種々の形式を採用可能であるが、本実施形態においては、図21に取り出して示されているように、(a) U字形状を成して一対のアームを有する弾性部材342と、(b) その弾性部材342の弾性変形量を変化させることによって弾性部材342の初期荷重を調節する調節機構344とを含む構造とされている。「初期荷重」は、インナパッド320bが弾性部材342の弾性力に抗してパッド連れ回り方向Zに移動し始めるときの上記入力荷重に等しい荷重をいう。弾性部材342は、それの一対のアームが車体左右方向に延びる姿勢で配置されるとともに、一方のアームにおいてマウンティングブラケット330に連携させられ、他方のアームにおいてインナパッド320bに連携させられている。調節機構344は、パッド連れ回り方向Zにほぼ平行に延びて弾性部材342の一対のアームを互いに接近可能かつ離間不能に連結する長さ調節ボルトを含み、弾性部材342の弾性変形量を変化させることによって弾性部材342の初期荷重を調節する。
【0082】
図4には、別の形式である弾性的制御機構350が示されている。この弾性的制御機構350は、(a) 複数枚の皿ばねが同軸に重ね合わせられて構成された弾性機構352と、(b) その弾性機構352の弾性力をインナパッド320bに伝達する伝達機構354と、(c) その弾性力を調節する調節機構356とを備えている。伝達機構354は、図21におけると同様に、U字形状を成して弾性を有するとともに、それの一対のアームが車体左右方向に延びる姿勢で配置され、かつ、一方のアームにおいてマウンティングブラケット330に連携させられ、他方のアームにおいてインナパッド320bに連携させられている。しかし、この弾性的制御機構350においては、インナパッド320bに力を付与するのは弾性機構352であり、伝達機構354はその弾性機構352により発生させられた力をインナパッド320bに伝達することが目的とされている。したがって、伝達機構354は、それに形状が類似する前記弾性部材342におけるほどには大形化せずに済む。また、調整機構356は、図21におけると同様に長さ調節ボルトを含み、弾性機構352における皿ばねの弾性変形量を変化させることによって弾性機構352の初期荷重を調節する。
【0083】
なお、本実施形態においては、図20に示すように、インナパッド320bにつき、摩擦材322の板厚がロータ回転方向Xに漸減するのに対して、裏板324の板厚が均一とされ、それにより、斜面334が摩擦材322の側に形成されているが、これとは逆に、摩擦材322の板厚が均一とされのに対して、裏板324の板厚がロータ回転方向Xに漸減し、それにより、斜面334が裏板324の側に形成されるようにして本発明を実施することはもちろん可能である。このことは、アウタパッド320aについても同様である。
【0084】
本実施形態においては、弾性的制御機構340における「基準値」が、ディスクブレーキ310によって車体に0.5〜0.6G程度の減速度が発生するときに前記入力荷重がとることが予想される値に設定されている。したがって、通常ブレーキ操作時には、インナパッド320bの連れ回りが阻止され、それにより、セルフサーボ効果が発生せず、一方、急ブレーキ操作時(正確には、強ブレーキ操作時)には、インナパッド320bの連れ回りが許容され、それにより、セルフサーボ効果が発生する。
【0085】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、弾性的制御機構340が「セルフサーボ効果発生阻止機構」の一例を構成しているのである。
【0086】
次に、パッド加圧機構328について説明する。
ディスクブレーキ310は、図20に示すように、キャリパポデー336を備えている。キャリパボデー336は、図1に示すように、本体部358にそれの車体内側の部分においてブラケット(後述の超音波モータの取付部)360がねじ止めされることによって構成されている。キャリパボデー336は、さらに、図20に示すように、車体の前後方向に延びる一対のアーム361を備えている。一対のアーム361は、図23に示すように、本体部358にねじ止めされるとともに、ブラケット360に2箇所においてねじ止めされている。なお、図23には、キャリパボデー336を図2において左側から見た図が示されており、本体部358および一対のアーム361が実線、ブラケット360が二点鎖線で示されている。
【0087】
なお、本実施形態においては、キャリパボデー336が、上記のように、本体部358とブラケット360と一対のアーム361とが互いに別部品とされてねじ止めされた3分割構造とされているが、一体構造とすることができるのはもちろんである。
【0088】
キャリパボデー336は、図20に示すように、本体部358においてマウンティングブラケット330にパッド移動方向Yに摺動可能に支持されている。各アーム361の先端部には、各々パッド移動方向Yに平行に延びる2本のピン362が取り付けられており、それら2本のピン362はマウンティングブラケット330にパッド移動方向Yに摺動可能に嵌合されている。キャリパボデー336は、本体部358と2本のピン362とにおいてマウンティングブラケット330に摺動可能に支持されているのである。
【0089】
キャリパボデー336の本体部358は、インナパッド320bの背後に位置する押圧部364とアウタパッド320aの背後に位置するリアクション部366とがディスクロータ312を跨ぐ連結部368により互いに連結された構造とされている。
【0090】
図19に示すように、押圧部364には加圧ロッド370がインナパッド320bの背後において摺動可能に嵌合されている。加圧ロッド370はそれの前面においてインナパッド320bの背面に接触させられる。加圧ロッド370の背後には、超音波モータ372が同軸に配置されている。超音波モータ372はブラケット360に取り付けられている。加圧ロッド370と超音波モータ372とは、パッド移動方向Yに平行に配置されるとともに、運動変換機構としてのボールねじ機構374により同軸に連結されている。それら加圧ロッド370と超音波モータ372とボールねじ機構374とに共通の一軸線L3は、図20に示すように、マウンティングブラケット330の設計基準線L1に平行であるが、その設計基準線L1からロータ回転方向Xに所定距離だけオフセットさせられている。
【0091】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ディスクロータ312と加圧ロッド370との間においてインナパッド320bが、ディスクロータ312に連れ回り可能に配置されるとともに、ディスクロータ312と加圧ロッド370とがそのインナパッド320bの斜面334を介して係合させられている。したがって、インナパッド320bがディスクロータ312に連れて回れば、そのインナパッド320bがくさびとして機能し、そのインナパッド320bとディスクロータ312との間に発生した摩擦力がディスクロータ312と加圧ロッド370とを互いに離間させる向きの軸力に変換される。それにより、一対の摩擦パッド320とディスクロータ312との間の押圧力が増加し、その結果、インナパッド320bとディスクロータ312との間の摩擦力が増加する。すなわち、インナパッド320bがディスクロータ312に連れて回れば、インナパッド320bにセルフサーボ効果が発生するのである。
【0092】
超音波モータ(以下、単に「モータ」という。)372は、進行波式である。このモータ372は、原理および駆動方法がよく知られたものであるため、簡単に説明する。
【0093】
このモータ372は、ステータに超音波振動を与えて表面波を生じさせるとともに、ステータとロータとの間に働く摩擦力によってロータを回転させる。モータ372は、図19に示すように、ハウジング380にステータ382とロータ384とが同軸に配置された構造とされている。
【0094】
ステータ382は、共に円環板状を成す弾性体390と圧電体392とが重ね合わせられて接着された構造とされている。圧電体392は、それの片側において、図24に示すように、各々、交互に分極方向が異なる複数(図の例では、9つ)のセグメント電極から成る電極群392aと392bとの2組が形成されており、それら電極群392a,392bは互いに位相が90°異なるように配置されている。それら電極群392aと392bとの間に存在する2つの領域の一方には、後述の周波数追尾のための電極392cが配置されている。また、圧電体392の反対側の面において、図7に示すように、電極群392aと392bとの各々については、それに属する複数のセグメント電極が一つにまとめられて共通電極92dと392eとされている。
【0095】
ロータ384は押圧接触機構394によってステータ382に押し付けられ、両者の間に必要な摩擦力が得られるようになっている。ロータ384のうちステータ382と接触する部分には摩擦材料が接着されている。これにより、ステータ382に発生した進行波振動がロータ384に伝達されてロータ384が回転させられる。その押圧接触機構394により、圧電体392に電圧が印加されない非通電状態(OFF状態)でもステータ382とロータ384との間には一定の摩擦力が生じている。この摩擦力に基づいてモータ372に発生するトルクが静止保持トルクである。押圧接触機構394は、本実施形態においては、皿ばね396を主体とする形式とされているが、コイルばねを主体とする形式とすることができるのはもちろんである。
【0096】
また、モータ372は、ロータ384の回転位置を検出する回転位置センサとしてエンコーダ398を備えている。
【0097】
前記ボールねじ機構374は、おねじ部材(スクリューシャフト)400とめねじ部材(スクリューナット)402とが複数個のボール(図示しない)を介して螺合された構造とされている。おねじ部材400は回転不能かつ軸方向移動可能、めねじ部材402は回転可能かつ軸方向移動不能に前記ハウジング380に取り付けられている。具体的には、おねじ部材400は、スプライン嵌合部404によってハウジング380に回転不能に取り付けられている。これに対して、めねじ部材402は、ラジアル軸受410とスラスト軸受412とにより回転可能にハウジング380に取り付けられるとともに、ストッパ414により軸方向移動不能にハウジング380に取り付けられている。このめねじ部材402にロータ384と押圧接触機構394とが相対回転不能に取り付けられている。したがって、ロータ384が正回転してめねじ部材402も正回転すれば、おねじ部材400が前進して(図において右方に移動して)加圧ロッド370が摩擦パッド320がディスクロータ312に接近する向きに移動する。逆に、ロータ384が逆回転してめねじ部材402も逆回転すれば、おねじ部材400が後退して(図において左方に移動して)加圧ロッド370が摩擦パッド320がディスクロータ312に接近する向きに移動することが許容される。
【0098】
おねじ部材400の先端部には荷重センサ420が同軸に取り付けられており、おねじ部材400はその荷重センサ420を介して加圧ロッド370に背後から係合する。したがって、荷重センサ420からの出力信号に基づき、モータ372によりインナパッド320bが加圧される際の加圧力が検出可能となる。
【0099】
図26には、本ブレーキ装置の電気的構成がブロック図で示されている。本ブレーキ装置は、主ブレーキコントローラ430を備えている。主ブレーキコントローラ430は、主ブレーキ操作時に、モータ372によるインナパッド320bの加圧力(以下、単に「加圧力」という)を制御してディスクブレーキ310を制御するものであり、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されている。
【0100】
主ブレーキコントローラ430の入力側には、コンピュータを主体とする加圧力指令値コントローラ432が接続されている。加圧力指令値コントローラ432には、運転操作情報センサ434と車両状態センサ436と車輪状態センサ438とが接続されている。
【0101】
運転操作情報センサ434は、ステアリングホイールの操舵角,ブレーキ操作部材の操作状態量(操作力や操作ストローク),アクセル操作部材の操作状態量(操作力や操作ストローク)等、運転操作に関する情報を検出する。本ブレーキ装置は、運転者によって踏み込まれるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル(図示しない)と、そのブレーキペダルの踏み込みに応じてブレーキ操作力を発生させるブレーキ操作装置(図示しない)とを備えており、運転操作情報センサ434は、少なくとも、ブレーキ操作力をブレーキ操作状態量として検出するブレーキ操作力センサを含むものとされている。車両状態センサ436は、車速,車体横加速度,車体前後加速度,車体ヨーレート,車体スリップ角等、車両の状態に関する情報を検出する。車輪状態センサ438は、車輪速,車輪加速度,車輪スリップ率等、車輪の状態に関する情報を検出する。
【0102】
加圧力指令値コントローラ432は、それらセンサ434,436,438の出力信号に基づき、制動力配分制御,アンチロック制御,トラクション制御,車両安定性制御およびブレーキアシスト制御を行う。
【0103】
「制動力配分制御」は、主ブレーキ操作時に、車輪制動力の前後配分が適正となり、ブレーキ操作力に応じた高さの減速度が車体に、前輪より先行して後輪がロックすることがないように発生するように各輪のディスクブレーキ310の加圧力を制御することをいう。ブレーキ操作力は、運転操作情報センサ434(例えば、ブレーキ踏力センサ等)により検出される。「アンチロック制御」は、車両制動中に各輪にロック傾向が生じた場合に、そのロック傾向が過大とならないように各輪のディスクブレーキ310の加圧力を制御することをいう。各輪のロック傾向は、少なくとも車輪状態センサ438(例えば、車輪速センサ)の出力信号に基づいて検出される。「トラクション制御」は、車両駆動時に各駆動車輪にスピン傾向が生じた場合に、そのスピン傾向が過大とならないように各駆動車輪のディスクブレーキ310の加圧力を制御することをいう。各駆動車輪のスピン傾向も、少なくとも車輪状態センサ438(例えば、車輪速センサ)の出力信号に基づいて検出される。「車両安定性制御」は、車両のアンダステア傾向またはオーバステア傾向が生じた場合に、それら傾向が過大とならないようにディスクブレーキ310の加圧力の左右輪間における差を制御することをいう。車両のアンダステア傾向およびオーバステア傾向は車両状態センサ436により検出される。「ブレーキアシスト制御」は、急ブレーキ操作時に、ブレーキ操作力の不足分に対応する車輪制動力の不足が補われるように各輪のディスクブレーキ310の加圧力を制御することをいう。急ブレーキ操作は、運転操作情報センサ434としての、ブレーキ操作部材の操作位置を検出するブレーキ操作位置センサにより検出されたブレーキ操作位置の時間的変化量が、通常ブレーキ操作時には超えない基準値を超えたときに、検出される。
【0104】
主ブレーキコントローラ430の入力側には、さらに、ブレーキスイッチ440とイグニションスイッチ442とが接続されている。
【0105】
ブレーキスイッチ440は、ブレーキペダルの踏み込みをブレーキ操作として検出するセンサの一例であり、ブレーキ操作の検出時にはON、非検出時にはOFFとなる。イグニションスイッチ442は、エンジンの始動を検出するセンサの一例であり、エンジン始動の検出時にはON、非検出時にはOFFとなる。
【0106】
主ブレーキコントローラ430の入力側には、さらに、前記荷重センサ420とエンコーダ398も接続されている。
【0107】
本ブレーキ装置は、さらに、駐車ブレーキコントローラ450を備えている。この駐車ブレーキコントローラ450は、駐車ブレーキ操作時に、ディスクブレーキ310を作動させて車両を停止状態に保持するためのコントローラであり、主ブレーキコントローラ430と同様に、コンピュータを主体として構成されている。この駐車ブレーキコントローラ450の入力側には、駐車ブレーキスイッチ452が接続されている。この駐車ブレーキスイッチ452は、駐車ブレーキ操作を検出する駐車ブレーキ操作センサの一例として、駐車ブレーキ操作の検出時にはON、非検出時にはOFFとなる。
【0108】
主ブレーキコントローラ430の出力側と駐車ブレーキコントローラ450の出力側には、モータ駆動回路454が接続されている。このモータ駆動回路454は、各輪のディスクブレーキ310のモータ372に対応して設けられており、各モータ駆動回路454に、各モータ372と、4輪のディスクブレーキ310のモータ372に共通の直流電源456とが接続されている。
【0109】
図27には、モータ駆動回路454の構造が機能ブロック図で示されている。モータ駆動回路454は、駆動信号発生部458と、電力供給部460と、周波数追尾部462とを備えている。
【0110】
駆動信号発生部458は、主ブレーキコントローラ430の出力側と駐車ブレーキコントローラ450の出力側とに接続され、それらコントローラ430,450から供給されるモータ指令信号に基づき、電力供給部460に供給すべき駆動信号を発生させる。駆動信号は、可変の駆動周波数を有するとともに、電極群392aと392bとの間において位相が90度異なる高周波2相交流信号である。電力供給部460は、駆動信号発生部458と直流電源456とに接続され、駆動信号発生部458から供給された駆動信号に基づき、直流電源456から電力を電極群392aと392bとに供給する。
【0111】
モータ372は、圧電体392の共振点またはその近傍(以下、単に「共振点近傍」という)で駆動されることがモータ372の駆動効率を向上させるために望ましいが、圧電体392の共振周波数は圧電体392の温度,モータ372の負荷等によって変動する。周波数追尾部462は、そのような共振周波数の変動に追尾して駆動周波数を変化させるために設けられているのであり、周波数追尾部462は、電極392cが圧電効果によりステータ382の振動振幅に応じた電圧を発生させるという事実を利用し、電極392cの出力信号に基づき、ステータ382の振動状態を監視しつつ駆動周波数を適正化するための信号を駆動信号発生部458に供給する。
【0112】
図28には、主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンがフローチャートで表されている。
【0113】
本ルーチンを概略的に説明すれば、本ルーチンは主ブレーキ操作時にパッド加圧制御を行う。このパッド加圧制御においては、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* と等しくなるようにモータ372が制御される。
【0114】
加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より小さい場合には、モータ372に正回転指令信号(モータ372を「第1の通電状態」にするための信号)が出力されてモータ372が正回転させられ、それにより、加圧力実際値FS が増加させられる。
【0115】
ただし、モータ372に正回転指令信号を出力したにもかかわらず、加圧力実際値FS が増加しなくなった場合、すなわち、加圧力実際値FS の今回値FS (N) の前回値FS (N-1) からの増加量が、第1基準増加量としての0以下となった場合に、モータ372にOFF指令信号(モータ372を「非通電状態」にするための信号)が出力されてモータ372がOFFにされ、それにより、モータ372に静止保持トルクが発生させられる。その結果、インナパッド320bからの反力に抗してモータ372,めねじ部材402,おねじ部材400および加圧ロッド370がロックさせられ、前記くさび効果によって加圧力実際値FS が増加させられる。
【0116】
また、そのようにモータ372がOFFにされた後、加圧力実際値FS が増加し続けた場合、すなわち、加圧力実際値FS の今回値FS (N) の前回値FS (N-1) からの増加量が、第2基準増加量としての0より大きくなった場合には、モータ372がOFFにし続けられるが、そうでない場合には、モータ372に正回転指令信号が出力される。
【0117】
これに対して、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より大きい場合には、モータ372に逆回転指令信号(モータ372を「第2の通電状態」にするための信号)が出力されてモータ372が逆回転させられ、それにより、加圧力実際値FS が減少させられる。
【0118】
また、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* と等しい場合には、モータ372にOFF指令信号が出力されてモータ372がOFFにされる。
【0119】
さらに、このパッド加圧制御においては、主ブレーキ操作が解除された場合には、その後、加圧ロッド停止位置制御(退避位置制御)が行われる。この加圧ロッド停止位置制御の概略および詳細については後述する。
【0120】
次に、ブレーキ制御ルーチンの内容を図28を参照して具体的に説明する。なお、本ルーチンは4輪について順にかつ、イグニションスイッチ442のON・OFFを問わず繰り返し実行されるが、説明を簡単にするために、以下、ブレーキ制御ルーチンが同じ車輪について制御周期Tで繰り返し実行されると仮定して説明する。
【0121】
本ルーチンの各回の実行時にはまず、S11において、イグニションスイッチ442(図において「IG/SW」で表す)からイグニションスイッチ信号が入力され、その信号に基づいてイグニションスイッチ442がONであるか否かが判定される。ONでなければ、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了し、ONであれば、判定がYESとなり、S12に移行する。
【0122】
このS12においては、初期設定が行われる。具体的には、当該車輪に対応する後述の加圧ロッド停止位置フラグが0とされる。続いて、S13において、主ブレーキコントローラ430と、ブレーキアクチュエータとしての、当該車輪に対応するモータ372と、当該車輪に対応するモータ駆動回路454とに対してプライマリチェックが行われ、故障診断が行われる。その後、S14において、ブレーキスイッチ440(図において「ブレーキSW」で表す)からブレーキスイッチ信号が入力され、その信号に基づいてブレーキスイッチ440がOFFであるか否かが判定される。ONであれば、判定がNOとなり、S15において、パッド加圧制御が行われる。続いて、S16において、加圧ロッド停止位置フラグが0とされ、その後、S14に戻る。したがって、ブレーキスイッチ440がONである限り、S14〜S16の実行が繰り返されることになる。
【0123】
S15の詳細がパッド加圧制御ルーチンとして図29にフローチャートで表されている。以下、このパッド加圧制御ルーチンを説明するが、前記S14〜S16の実行が繰り返されるためにこのパッド加圧制御ルーチンも繰り返し実行されると仮定して説明する。
【0124】
まず、S101において、駐車ブレーキコントローラ450(図において「PKBコントローラ」で表す)に対して、駐車ブレーキ解除指令信号(図において「PKB解除指令信号」で表す)が出力される。これにより、当該車輪に対応するディスクブレーキ310による駐車ブレーキ作用が解除されるが、この解除については後に詳述する。次に、S102において、加圧力指令値コントローラ432から、当該車輪に対応する加圧力指令値信号finが入力され、その信号finに基づき、当該車輪に対応する加圧力指令値F* が取得される。続いて、S103において、加圧力指令値F* が0以上かつ加圧力最大値fmax (既知の固定値)以下であるか否かが判定される。加圧力指令値F* に異常がないか否かが判定されるのであり、0以上かつ加圧力最大値fmax 以下でなければ、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了し、0以上かつ加圧力最大値fmax 以下であれば、判定がYESとなり、S104に移行する。
【0125】
このS104においては、当該車輪に対応する荷重センサ420からの荷重信号fに基づき、当該車輪に対応するディスクブレーキ310において加圧ロッド370がインナパッド320bを実際に加圧する加圧力実際値FS (N) (ここに、(N) は加圧力実際値FS が今回検出された値であることを表す。)が加圧力指令値F* より小さいか否かが判定される。実際には、例えば、加圧力実際値FS (N) が、加圧力指令値F* と一定微小値Δとの和より小さいか否かが判定される。
【0126】
以下、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さい場合と、大きい場合と、ほぼ等しい場合とについて順に説明する。
【0127】
(1) 加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さい場合
この場合には、S105の判定がYESとなり、S106において、モータ372に正回転指令信号が出力されているか否かが判定される。
【0128】
図30には、荷重センサ420により加圧力実際値FS が検出される時期tと、モータ372にモータ指令信号が出力される時期t′との関係がグラフで表されている。モータ372へ今回出力すべきモータ指令信号は、加圧力実際値FS (N) に基づいて決定されるため、例えば、今回のモータ指令信号はモータ372に、加圧力実際値FS の今回値検出時期t(N) から少し遅れた時期t′(N) に出力され、次回のモータ指令信号はモータ372に、加圧力実際値FS の次回値検出時期t(N+1) から少し遅れた時期t′(N+1) に出力されることになる。したがって、加圧力実際値FS の今回値検出時期t(N) から次回値検出時期t(N+1) までを今回の制御サイクル(制御周期がT)として定義すれば、その今回の制御サイクルの当初には、モータ372に前回と同じモータ指令信号が出力され、やがて、今回のモータ指令信号が出力されることになる。よって、このS106においては、結局、モータ372についての前回のモータ指令信号が正回転指令信号であるか否かが判定されることになる。
【0129】
モータ372に正回転指令信号が出力されてはいないと仮定すれば、S106の判定がNOとなり、S107において、モータ372がOFFであるか否かが判定される。モータ372に正回転指令信号が出力されていない場合には、モータ372に逆回転指令信号が出力されている場合と、モータ372がOFFである場合とがあり、このS107においては、後者の場合に該当するか否かが判定されるのである。モータ372がOFFであると仮定すれば、判定がYESとなり、S108において、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) より大きいか否かが判定される。加圧力実際値FS が増加中であるか否かが判定されるのである。なお、本ルーチンの今回の実行が初回のものである場合には、加圧力実際値FS (1) が加圧力実際値FS (0) より大きいか否かが判定されることになるが、加圧力実際値FS (0) は0としてROMに記憶されている。
【0130】
加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) より大きくはない場合には、S108の判定がNOとなり、S109において、モータ372に正回転指令信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0131】
再び本ルーチンが実行され、S106において、モータ372に正回転指令信号が出力されているか否かが判定されれば、今回は正回転指令信号が出力されているため、判定がYESとなる。この場合、S110において、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) 以下であるか否かが判定される。モータ372が駆動限界に達しないうちは、モータ372に正回転指令信号が出力し続けられることに追従してモータ372が正回転させられて加圧力実際値FS が増加するが、モータ372が駆動限界に達した後には、モータ372に正回転指令信号が出力し続けられるにもかかわらずモータ372が正回転せずに逆回転させられてしまい、そのため、加圧力実際値FS が増加しない。このような事情に基づき、このS110においては、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) 以下であるか否かによってモータ372が駆動限界に達したか否かが判定されるのである。加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) 以下ではない場合には、判定がNOとなり、S109において、再度、モータ372に正回転指令信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0132】
その後、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) 以下とならないうちは、S110の判定がNOとなり、S109において、今回もモータ372に正回転指令信号が出力される。ディスクブレーキ310にセルフサーボ効果が発生し、モータ372が駆動限界を超えたため、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) 以下となった後には、S110の判定がYESとなり、S111において、モータ372がOFFにされる。モータ372が静止させられてモータ372に静止保持トルクが発生させられ、モータ372はその静止保持トルクによって摩擦パッド320からの反力に対抗することになる。
【0133】
したがって、図30に示す一制御例においては、モータ372が駆動限界に達したため、加圧力実際値FS がそれの今回値検出時期t(N) において前回値検出時期t(N-1) におけるより増加しなくなれば、モータ指令信号の今回出力タイミングt′(N) において、モータ372がOFFにされる。その結果、モータ372に静止保持トルクが発生し、その静止保持トルクによって加圧力実際値FS が増加させられる。
【0134】
再度、本ルーチンが実行されれば、現在、モータ372はOFFであるから、S106の判定はNO、S107の判定はYESとなり、S108に移行する。モータ372の静止保持トルクによってセルフサーボ効果が増加したため、加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) より大きくなった場合には、S108の判定がYESとなり、S112において、今回も、モータ372がOFFにされる。
【0135】
したがって、図30に示す一制御例においては、加圧力実際値FS がそれの次回値検出時期t(N+1) において今回値検出時期t(N) におけるより増加しているため、次回出力時期t′(N+1) においても、モータ372がOFFにされる。
【0136】
これに対して、セルフサーボ効果が低下したために、モータ372が静止保持トルクを出力する状態にあるにもかかわらず加圧力実際値FS (N) が加圧力実際値FS (N-1) より大きくならなかった場合には、S108の判定がNOとなり、S109において、モータ372に正回転指令信号が出力され、それにより、加圧力実際値FS の増加が図られる。なお、モータ372の静止中にセルフサーボ効果が低下する理由には、例えば、モータ372が静止させられているのに対して摩擦パッド320がディスクロータ312に向かって前進させられたことなどが原因となって加圧ロッド370の先端面とインナパッド320bの背面との間に隙間が発生するという理由が考えられる。
【0137】
なお、モータ372に逆回転指令信号が出力中にS105の判定がYESとなる場合もあり、この場合には、S106の判定はNO、S107の判定もNOとなり、S113において、モータ372が一旦OFFにされ、その後、モータ372に正回転指令信号が出力される。
【0138】
図31には、図30とは異なり、主ブレーキ操作が開始されてから加圧力実際値FS が増加して加圧力指令値F* に到達するまでに加圧力実際値FS が変化する様子の一例がグラフで表されている。
【0139】
時期t0 において、主ブレーキ操作が開始され、加圧力指令値F* が決定される。それに応じてモータ372が作動させられ、加圧力実際値FS が増加する。ただし、時期t0 から時期t1 までの間は、インナパッド320bの連れ回りが弾性的制御機構340により阻止され、ディスクブレーキ310にセルフサーボ効果が発生しない。
【0140】
その後、モータ372が正回転させられて加圧力実際値FS が増加した結果、時期t1 において、インナッド320bの摩擦力が弾性的制御機構340に打ち勝ち、インナパッド320bがディスクロータ312に連れて回り、ディスクブレーキ310にセルフサーボ効果が発生する。グラフの勾配が急になっていることがそのことを表している。
【0141】
やがて、モータ372が駆動限界に到達したため、時期t2 において、加圧力実際値FS が増加しなくなる。その結果、時期t3 において、モータ372がOFFにされ、モータ372の静止保持トルクにより、再度、加圧力実際値FS が増加し始める。そして、時期t4 において、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* に到達し、以後、後述のように、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* に保持されるようにモータ372が制御される。
【0142】
(2) 加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きい場合
この場合には、S105の判定がNOとなり、S114において、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* と等しいか否かが判定される。実際には、例えば、加圧力実際値FS (N) が、加圧力指令値F* から一定微小値Δを引いた値以上であり、かつ、加圧力指令値F* に一定微小値Δを加えた値以下であるか否かが判定される。今回は、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きいと仮定されているから、このS114の判定はNOとなり、S115に移行する。このS115においては、モータ372に逆回転指令信号が出力されているか、または、モータ372がOFFであるか否かが判定される。モータ372に逆回転指令信号が出力されているか、または、モータ372がOFFであると仮定すれば、判定がYESとなり、S116において、モータ372に逆回転指令信号が出力され、それにより、加圧力実際値FS が減少させられる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0143】
これに対して、モータ372に正回転指令信号が出力されていると仮定すれば、S115の判定がNOとなり、S117において、モータ372を一旦OFFした後に、逆回転指令信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0144】
(3) 加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* と等しい場合
この場合、S105の判定はNO、S114の判定はYESとなり、S118において、モータ372がOFFされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0145】
以上、ブレーキスイッチ440がONである場合について説明したが、OFFである場合には、図28のS14の判定がYESとなり、S17において、加圧ロッド停止位置フラグが1であるか否かが判定される。0であると仮定すれば、判定がのNOとなり、S8において、前記加圧ロッド停止位置制御が行われる。その後、S19において、イグニションスイッチ442がOFFであるか否かが判定される。ONであれば、判定がNOとなり、S14に戻る。したがって、ブレーキスイッチ440がOFFであり、かつ、イグニションスイッチ442がONであり、かつ、加圧ロッド停止位置フラグが0である限り、S14およびS17〜S19の実行が繰り返されることになる。
【0146】
S18の詳細が加圧ロッド停止位置制御ルーチンとして図32にフローチャートで表されている。以下、この加圧ロッド停止位置圧制御ルーチンを説明するが、前記S14およびS17〜S19の実行が繰り返されるために加圧ロッド停止位置圧制御ルーチンが繰り返し実行されると仮定して説明する。
【0147】
まず、概略的に説明する。
パッド加圧制御は、ディスクブレーキ310の非作用状態において、加圧ロッド370を常に同じ初期位置に退避させて停止させる態様で実施することは可能である。しかし、一対の摩擦パッド320a,320b(以下、単に「摩擦パッド320」と総称する)の摩耗にもかかわらず加圧ロッド370を常に同じ初期位置に退避させたのでは、摩擦パッド320の摩耗量の増加につれて初期位置にある加圧ロッド370の先端面とインナパッド320bの背面との隙間が拡大し、ディスクブレーキ310が非作用状態から作用状態に移行する際に、加圧ロッド370が無駄なストロークをさせられることとなる。そこで、本実施形態においては、パッド加圧制御が、インナパッド320bの背面の位置の変化に追従して加圧ロッド370の退避位置を変化させる態様で実行される。
【0148】
具体的には、まず、主ブレーキ操作が解除された後直ちに、加圧ロッド370が初期位置から前進させられ、それにより加圧ロッド370がインナパッド320bを加圧し始めた時期が検出され、その時期における加圧ロッド370の軸方向位置が検出される。ここに、加圧ロッド370がインナパッド320bを加圧し始めた時期は、荷重センサ420による検出値がその荷重センサ420により検出可能な最小値またはそれより少し大きい値に一致した時期として検出される。また、加圧ロッド370の軸方向位置は、モータ372の回転位置として検出される。また、加圧ロッド370がインナパッド320bを加圧し始めた時期は、インナパッド320bの摩耗のみならずアウタパッド320aの摩耗をも反映する。次に、加圧ロッド370をインナパッド320bの背面の位置から一定距離だけ後退させるために、モータ372が一定角度ΔΘだけ逆回転させられ、その結果、加圧ロッド370がインナパッド320bの実際の位置から一定距離だけ後退した位置に退避させられて停止させられる。
【0149】
次に具体的に説明する。
まず、図32のS201において、加圧力指令値コントローラ432から加圧力指令値信号が入力される。加圧力指令値コントローラ432は、ブレーキスイッチ440がOFFである場合には、荷重センサ420により検出可能な最小値を表す加圧力指令値信号fm を当該主ブレーキコントローラ430に出力するように設計されている。したがって、このS201においては、その加圧力指令値信号fm に基づいて加圧力指令値F* が取得される。
【0150】
次に、S202において、荷重センサ420からの荷重信号fに基づいて加圧力実際値FS が取得され、その後、S203において、その加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より小さいか否かが判定される。加圧ロッド370がインナパッド320bを加圧していない状態にあるか否かが判定されるのである。実際には、例えば、加圧力実際値FS 、加圧力指令値F* と一定微小値Δとの和より小さいか否かが判定される。加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より小さい場合には、判定がYESとなり、S204において、モータ372に正回転指令信号が出力され、それにより、インナパッド320bが前進させられる。その後、S202に戻る。
【0151】
これに対して、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より小さくはない場合は、S203の判定がNOとなり、S205において、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* と等しいか否かが判定される。加圧ロッド370がインナパッド320bを加圧し始めた時期であるか否かが判定されるのである。加圧力実際値FS が加圧力指令値F* より大きいと仮定すれば、判定がNOとなり、S206において、モータ372に正回転指令信号が出力中であるか否かが判定される。正回転指令信号が出力中である場合には、判定がYESとなり、S207において、モータ372が一旦OFFされた後、モータ372に逆回転指令信号が出力される。その後、S202に戻る。これに対して、正回転指令信号が出力中ではない場合には、S206の判定がNOとなり、S208において、モータ372に逆回転指令信号が出力される。いずれの場合にも、加圧ロッド370が後退させられてそれの行き過ぎが是正されるのである。その後、S202に戻る。
【0152】
これに対して、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* と等しい場合には、S205の判定がYESとなり、S209において、モータ372がOFFされる。その後、S210において、エンコーダ398からモータ回転位置信号θが入力され、その信号に基づき、モータ372のロータ384の回転位置Θが取得される。続いて、S211において、その回転位置Θを基準にして、モータ372が一定角度ΔΘだけ逆回転するようにモータ372に逆回転指令信号を出力する。ここに、一定角度ΔΘは、摩擦パッド320がディスクロータ312により引きずられることを防止するために、それら摩擦パッド320とディスクロータ312との間に確保することが必要な距離に対応するものとして設定され、また、摩擦パッド320の偏摩耗を考慮して設定することが望ましい。このS211の実行により、加圧ロッド370がインナパッド320bの実際位置から一定距離離間した位置に停止させられることになる。その後、S212において、加圧ロッド停止位置フラグが1とされる。すなわち、この加圧ロッド停止位置フラグは、0で加圧ロッド370が正規の停止位置には位置しないことを示し、1で正規の停止位置に位置することを示すフラグなのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0153】
この加圧ロッド停止位置制御ルーチンの一回の実行が終了すれば、図28のS9において、イグニションスイッチ442がOFFであるか否かが判定される。ONであれば、判定がNOとなり、S14に戻る。ブレーキスイッチ440がOFFであれば、S14の判定がYESとなり、S17に移行するが、今回は、加圧ロッド停止位置フラグが1であるため、S17の判定がYESとなり、S18がスキップされてS19が実行される。S14,S17およびS19の実行が繰り返されるうちにイグニションスイッチ442がOFFになれば、S19の判定がYESとなり、本ブレーキ制御の一連の実行が終了する。
【0154】
図33には、駐車ブレーキコントローラ450のROMに記憶されている駐車ブレーキ制御ルーチンがフローチャートで表されている。
【0155】
本ルーチンも、イグニションスイッチ442のON・OFFを問わず、繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、S301において、駐車ブレーキスイッチ452(図において「PKB/SW」で表す)がONであるか否かが判定される。ONであれば、判定がYESとなり、S302において、モータ372に正回転指令信号が出力され、それにより、モータ372のロータ384が一定角度ΘPKB 正回転させられ、加圧ロッド370が初期位置から前進させられて加圧力実際値FS が駐車に必要な値に増加させられる。その後、S303において、モータ372がOFFにされ、それにより、モータ372の静止保持トルクによってディスクブレーキ310が駐車ブレーキ作用状態に維持され、車両が停止状態に維持される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0156】
これに対して、駐車ブレーキスイッチ452がOFFである場合には、S301の判定がNOとなり、S304において、主ブレーキコントローラ430から駐車ブレーキ解除指令信号が入力されたか否かが判定される。入力されていない場合には、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了するが、入力された場合には、判定がYESとなり、S305に移行する。このS305においては、モータ372に逆回転指令信号が出力され、それにより、モータ372が一定角度ΘPKB 逆回転させられて加圧ロッド370が初期位置に復帰させられる。続いて、S303において、モータ372がOFFにされ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0157】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、主ブレーキコントローラ430,加圧力指令値コントローラ432,運転操作情報センサ434,車両状態センサ436,車輪状態センサ438,ブレーキスイッチ440,イグニションスイッチ442,荷重センサ420,駐車ブレーキコントローラ450,駐車ブレーキスイッチ452,モータ駆動回路454およびエンコーダ398が「モータ制御装置」の一例を構成しているのである。また、超音波モータ372と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうち図29のS106〜S112を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成し、また、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうちS106〜S112を実行する部分とが互いに共同して「静止保持トルク発生手段」の一例および「増加量不足時制御手段」の一例をそれぞれ構成しているのである。また、荷重センサ420が「加圧力関連量センサ」の一例および「加圧力センサ」の一例をそれぞれ構成しているのである。
【0158】
次に、第10実施形態を説明する。本実施形態は、先の第9実施形態と共通する要素が多く、異なるのはパッド加圧制御ルーチンについてのみであり、しかも、そのルーチンについても共通するステップが多く、異なるのは一部のステップのみであるため、その一部のステップのみを詳細に説明し、他のステップおよび要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0159】
第9実施形態においては、図29に示すように、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さく、かつ、モータ372がOFFである場合には、S105の判定はYES、S106の判定はNO、S107の判定はYESとなり、S108に移行し、加圧力実際値FS の今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より増加したか否かによって、S109とS112とに分岐させられる。加圧力実際値FS の今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より増加しなかった場合には、モータ372をOFFにし続けることが適当ではないと判定され、S108の判定がNOとなり、S109において、モータ372に正回転指令信号が出力される。これに対して、加圧力実際値FS の今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より増加した場合には、モータ372にOFFにし続けることが適当であると判定され、S108の判定がYESとなり、S112において、モータ372がOFFにし続けられるのである。
【0160】
これに対して、本実施形態においては、図34に示すように、S108およびS112が省略されるとともに、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さく、かつ、モータ372がOFFであるために、S105の判定はYES、S106の判定はNO、S107の判定はYESとなった場合には、加圧力実際値FS の今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より増加したか否かを問わず、直ちにS109に移行するようになっている。S107のYES判定後に必ずS109においてモータ372をOFF指令信号出力状態から正回転指令信号出力状態に移行するようにしても、その移行が適切でなかったために、加圧力実際値FS の次回値FS (N+1) が今回値FS (N) より増加しなかった場合には、本ルーチンの次回の実行時において、S106の判定はYES、S110の判定もYESとなり、S111において、モータ372がOFFにされ、状態移行の不適切さはその直後に是正される。
【0161】
したがって、本実施形態によれば、パッド加圧制御ルーチンの設計を容易に簡単化し得るという効果が得られる。
【0162】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、超音波モータ372と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうち図34のS106,S107,S109,S110およびS111を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成し、また、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうちS106,S107,S109,S110およびS111を実行する部分とが互いに共同して「静止保持トルク発生手段」の一例および「増加量不足時制御手段」の一例をそれぞれ構成しているのである。
【0163】
次に、第11実施形態を説明する。ただし、本実施形態も、先の第9実施形態と共通する要素が多く、異なるのはパッド加圧制御ルーチンについてのみであり、しかも、そのルーチンについても共通するステップがあるため、パッド加圧制御ルーチンについてのみ詳細に説明するとともに、そのルーチンのうち第9実施形態におけると共通するステップについては同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0164】
図35には、パッド加圧制御ルーチンがフローチャートで表されている。
このパッド加圧制御ルーチンにおいては、概略的に説明すれば、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* と等しい場合を除き、モータ372が駆動限界に達したか否かを問わず、本ルーチンの一回の実行サイクルである制御サイクルにおいて、モータ372がONにされた後にOFFにされる。それにより、一回の制御サイクルにおいて、加圧ロッド370は前進または後退した後に停止させられるのである。したがって、第9実施形態におけるとは異なり、モータ372を逆転させる毎にモータ372にOFFにすることが不要となり、本ルーチンの設計を容易に簡単化し得る。
【0165】
また、本実施形態においては、加圧力実際値FS の増加中には、加圧ロッド370が積極的に前進し、非増加中には、消極的に前進することとなるように、加圧力実際値FS が増加中であるか否かに応じて、モータ372のモータ指令信号のON継続時間が変化させられる。具体的には、加圧力実際値FS の増加中には、図36の(a) にグラフで表されているように、制御周期TのうちのT1 時間は、モータ372に正回転指令信号が出力され、残りの(T−T1 )時間は、モータ372がOFFされる。これに対して、非増加中には、同図の(b) にグラフで表されているように、制御周期TのうちのT2 時間(T1 時間より短い)は、モータ372に正回転指令信号が出力され、残りの(T−T2 )時間は、モータ372がOFFされる。
【0166】
したがって、本実施形態においては、モータ372の駆動時に加圧力実際値FS が増加しなくなった場合には、モータ372がOFFにされる期間の存在により、モータ372の静止保持トルクを利用して加圧ロッド370がロックさせられて加圧力実際値FS が増加させられる。また、モータ372の静止時に加圧力実際値FS が増加しなくなった場合には、モータ372に正回転指令信号が出力される期間の存在により、モータ372の正回転によって加圧ロッド370が前進させられて摩擦パッド320に押圧され、それにより、加圧力実際値FS が増加させられる。
【0167】
次に、本パッド加圧制御ルーチンを具体的に説明する。
本ルーチンも繰り返し実行される。各回の実行時には、図35のS101〜S105が最先の実施形態におけると同様に実行される。加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さいために、S105の判定がYESとなる場合には、S131において、加圧力実際値FS の今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より大きいか否かが判定される。加圧力実際値FS が増加中であるか否かが判定されるのである。増加中であれば、判定がYESとなり、S132において、モータ372に正回転指令信号がT1 時間だけ出力され、その後、S133において、モータ372がOFFとされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0168】
これに対して、加圧力実際値FS が今回値FS (N) が前回値FS (N-1) より大きくない場合には、S131の判定がNOとなり、S134において、モータ372に正回転指令信号がT2 時間だけ出力され、その後、S133において、モータ372がOFFとされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0169】
また、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きい場合には、S105の判定はNO、S114の判定もNOとなり、S135において、モータ372に逆回転指令信号がT3 時間(例えば、前記T1 時間と等しい。)だけ出力され、その後、S133において、モータ372がOFFとされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0170】
また、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* と等しい場合には、S105の判定はNO、S114の判定はYESとなり、S133において、モータ372がOFFとされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0171】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、超音波モータ372と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうち図35のS131〜S134を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成し、また、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうちS131〜S134を実行する部分とが互いに共同して「静止保持トルク発生手段」の一例を構成しているのである。
【0172】
次に、第12実施形態を説明する。ただし、本実施形態も、先の第9実施形態と共通する要素が多く、異なるのはパッド加圧制御ルーチンについてのみであり、しかも、そのルーチンについても共通するステップがあるため、パッド加圧制御ルーチンについてのみ詳細に説明するとともに、そのルーチンのうち第9実施形態におけると共通するステップについては同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0173】
第9実施形態においては、加圧力実際値FS が増加しなくなったときに、モータ372がOFFにされるようになっているが、本実施形態においては、ディスクブレーキ310にセルフサーボ効果が生じたならば、加圧力実際値FS が増加しなくなることを待つことなく、モータ372がOFFにされる。そのため、本実施形態においては、セルフサーボ状態判定ルーチンもROMに記憶されている。セルフサーボ状態判定ルーチンは、加圧力実際値FS の時間的変化勾配がセルフサーボ効果の発生時において不発生時におけるより急になるという現象に着目してセルフサーボ効果の発生の有無を判定するものである。
【0174】
図37には、本実施形態におけるパッド加圧制御ルーチンがフローチャートで表されている。本ルーチンも繰り返し実行され、各回の実行時には、S101〜S105が最第9実施形態におけると同様に実行される。
【0175】
加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きいために、S105の判定がYESとなる場合には、S151において、セルフサーボ状態判定が行われる。
【0176】
このS151においては、図38にフローチャートで表されているセルフサーボ状態判定ルーチンが実行される。
【0177】
このセルフサーボ状態判定ルーチンにおいてはまず、S401において、加圧力実際値FS (N) が加圧力基準値fc より大きいか否かが判定される。ここに、加圧力基準値fC は、弾性的制御機構340の前記初期荷重に対応する値であり、ディスクブレーキ310においてセルフサーボ効果が発生し始めるときの加圧力実際値FS を意味する。加圧力実際値FS (N) が加圧力基準値fc より大きくはない場合には、判定がNOとなり、S402において、0でセルフサーボ効果が不発生であることを示し、1で発生していることを示すセルフサーボフラグが0とされる。以上で、本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0178】
これに対して、加圧力実際値FS (N) が加圧力基準値fc より大きい場合には、S401の判定がYESとなり、S403において、モータ372に正回転指令信号が出力中であるか否かが判定される。出力中でなければ、判定がNOとなり、S402に移行し、出力中であれば、S404に移行する。このS404においては、加圧力実際値FS の今回値FS (N) の前回値FS (N-1) からの変化量ΔFS が演算される。続いて、S405において、演算された変化量ΔFS が変化量基準値ΔfS より大きいか否かが判定される。ここに、変化量基準値ΔfS は、セルフサーボ効果が発生していない状態において、モータ372を正回転させて加圧ロッド370を前進させる際に加圧力実際値FS が一回の制御サイクル当たりに増加する量と等しくされている。そして、変化量ΔFS が変化量基準値ΔfS より大きい場合には、判定がYESとなり、S406において、セルフサーボフラグが1とされ、これに対して、変化量ΔFS が変化量基準値ΔfS より大きくはない場合には、判定がNOとなり、S402において、セルフサーボフラグが0とされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0179】
なお付言すれば、セルフサーボ状態判定は、加圧力実際値FS が加圧力基準値fC を超えたことと、変化量ΔFS が変化量基準値ΔfS より大きくなったこととのいずれかのみを検出し、その検出時にセルフサーボ効果が発生していると判定するものとすることは可能であるが、本実施形態においては、その判定の確度を向上させるため、加圧力実際値FS が加圧力基準値fC を超えたことと、変化量ΔFS が変化量基準値ΔfS より大きくなったこととの双方が同時に検出されたときに、セルフサーボ効果が発生していると判定するものとされている。
【0180】
セルフサーボ状態判定ルーチンの一回の実行が終了すれば、その後、図37のS152において、セルフサーボフラグが1であるか否かが判定される。0であれば、判定がNOとなり、S153において、モータ372に正回転指令信号が出力されているか、またはモータ372がOFFにされているか否かが判定される。モータ372がOFFにされていると仮定すれば、判定がYESとなり、S154において、モータ372に正回転指令信号が出力される。以上でこのパッド加圧制御ルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、モータ372に逆回転指令信号が出力されていると仮定すれば、S153の判定がNOとなり、S155において、モータ372が一旦OFFにされた後に正回転指令信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0181】
以上、セルフサーボ効果が発生していない場合について説明したが、発生している場合には、セルフサーボフラグが1であるから、S152の判定がYESとなり、S156において、モータ372がOFFにされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。なお、本ルーチンには、第9実施形態におけるとは異なり、図29におけるS106,S107およびS113に相当するステップが設けられていないが、これは、図38のセルフサーボ状態判定ルーチンにおいて、モータ372に正回転指令信号が出力中に限ってセルフサーボフラグが1とされるようになっていて、本ルーチンにおいて、S152の判定がYESとなるときには、モータ372に正回転指令信号が出力中であることが明らかであり、モータ指令信号の現在状態を判定することが不要であるとともに、モータ372に逆回転指令信号が出力中であることはないからである。
【0182】
以上、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きい場合について説明したが、小さい場合および等しい場合は、第9実施形態におけると同様であるため、説明を省略する。
【0183】
ここで、パッド加圧制御中に加圧力実際値FS が変化する様子の一例を図39のグラフに基づいて説明する。
【0184】
この例は、図31に示す例と同様に、主ブレーキ操作中のある時期t10においてブレーキ操作が開始され、加圧力指令値F* が増加し、その結果、加圧力指令値F* が加圧力実際値FS を上回った場合において、その後に加圧力実際値FS が増加して加圧力指令値F* に到達した例である。
【0185】
時期t10においては、インナパッド320bがディスクロータ312に連れて回ることが弾性的制御機構340により阻止され、セルフサーボ効果が発生していない。その後、モータ372が正回転させられて加圧力実際値FS が増加した結果、時期t11において、インナパッド320bの摩擦力が弾性的制御機構340の弾性力に打ち勝ち、インナパッド320bがディスクロータ312に連れて回り、セルフサーボ効果が発生し始める。
【0186】
セルフサーボ効果が発生し始めると、モータ372が実際に駆動限界に達したか否かを問わず、モータ372がOFFにされ、その結果、モータ372の静止保持トルクと前記くさび効果との共同により、加圧力実際値FS が増加し続ける。そして、時期t12において、加圧力実際値FS が加圧力指令値F* に到達し、以後、加圧力指令値F* に保持されるようにモータ372が制御される。
【0187】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、超音波モータ372と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうち図37のS151(図38のセルフサーボ状態判定ルーチン)〜S156を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成し、また、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうちS151〜S156を実行する部分とが互いに共同して「静止保持トルク発生手段」の一例および「サーボ開始時制御手段」の一例をそれぞれ構成しているのである。また、主ブレーキコントローラ430のうち図38のセルフサーボ状態判定ルーチンを実行する部分が「セルフサーボ状態判定手段」の一例を構成しているのである。
【0188】
第9〜第12実施形態においては、超音波モータの加圧力実際値を増加させることが必要である場合に超音波モータがOFFにされてそれに静止保持トルクが発生させられるようになっているが、超音波モータのOFF時に加圧力指令値F* を低下させることが必要になったため、超音波モータをOFFからON(逆回転のため)に切り換えても超音波モータが素早く起動できない可能性がある。したがって、そのような起動遅れの防止を優先させたい場合には、超音波モータの加圧力実際値を増加させることが必要となっても超音波モータをONし続けて静止状態をとらないようにすることが望ましい。
【0189】
次に、第13実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第12実施形態と共通する要素が多く、異なるのはパッド加圧制御ルーチンについてのみであり、しかも、そのルーチンについても共通するステップがあるため、パッド加圧制御ルーチンについてのみ詳細に説明するとともに、そのルーチンのうち先の実施形態におけると共通するステップについては同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0190】
セルフサーボ効果の発生状態において、モータ372の駆動限界前にモータ372を正回転させるか、またはモータ372の駆動限界後にモータ372をOFFにすれば、加圧力実際値FS が増加するが、そのときの増加勾配は比較的急である。そのため、加圧力実際値FS の加圧力指令値F* からの不足量ΔFが少ない場合には、モータ372をOFFにすることによって加圧力実際値FS が急増して加圧力指令値F* をやや大きく超えてしまう可能性がある。
【0191】
また、セルフサーボ効果の発生状態において、モータ372を逆回転させれば、加圧力実際値FS が減少するが、そのときの減少勾配は、増加時におけると同様に、比較的急である。そのため、加圧力実際値FS の加圧力指令値F* からの過剰量ΔF′が少ない場合には、モータ372を逆回転させることによって加圧力実際値FS が急減して加圧力指令値F* をやや大きく下回ってしまう可能性がある。
【0192】
セルフサーボ効果の不発生状態においては、インナパッド320bとディスクロータ312との押圧状態でモータ372をOFFにすれば、加圧力実際値FS が保持される。これに対して、セルフサーボ効果の発生状態においては、モータ372をOFFにしても、セルフサーボ効果によって加圧力実際値FS が増加してしまう。このように、セルフサーボ効果の発生状態においては、加圧力実際値FS を保持するために特別な対策を講じることが必要となる。
【0193】
そこで、本実施形態においては、セルフサーボ効果の発生状態において、加圧力実際値FS を増加させることが必要である場合と、減少させることが必要である場合と、保持することが必要である場合とについてそれぞれ、加圧力実際値FS の変化勾配を制御する増加制御手段と減少制御手段と保持制御手段とが設けられている。
【0194】
ところで、前述のように、モータ駆動回路454においては、モータ372に供給される駆動信号の駆動周波数がステータ382の共振周波数の変動に追尾させられるが、本実施形態においては、その周波数追尾が次のようにして行われる。
【0195】
すなわち、周波数追尾部462と駆動信号発生部458とが互いに共同して、モータ372の駆動時に、駆動周波数を適正周波数(ステータ382の共振周波数またはその近傍値)の予想値より所定値だけ高い値から減少させて適正周波数の実際値を検出する検出工程を何回も繰り返すのである。
【0196】
1回目の検出工程においては、まず、駆動周波数が、モータ372が始動しない程度に高い値にされ、次に、図40にグラフで表されているように、駆動周波数が適正周波数の予想値(1回目の検出工程においては、適正周波数の予想値が初期値として予め設定されている。)に向かって設定速度で減少させられる。その減少中、モータ372の駆動トルクが始動トルクを超えれば、モータ372が始動する。また、駆動周波数の減少中、電極392cの出力信号に基づき、ステータ382の振動状態が基準状態(例えば、共振状態)に達したか否かが判定され、達したと判定されれば、駆動周波数の減少が中止させられるとともに、駆動周波数のそのときの値が適正周波数の次回の予想値とされる。
【0197】
2回目の検出工程においては、まず、駆動周波数が最新の予想値より所定値だけ高い値に増加させられる。次に、1回目の検出工程におけると同様に、駆動周波数がその予想値に向かって設定速度で減少させられ、その減少中、電極392cの出力信号に基づき、ステータ382の振動状態が基準状態に達したか否かが判定され、達したと判定されれば、駆動周波数の減少が中止させられるとともに、駆動周波数のそのときの値が適正周波数の次回の予想値とされる。
【0198】
以後、同様な検出工程がモータ372がOFFにされるまで繰り返される。その結果、モータ372の駆動中、ステータ382の温度,モータ372の負荷等の変動に応じて適正周波数が変動すれば、駆動周波数が適正周波数の変化に追尾させられ、モータ372が常に高い効率で駆動されることになる。
【0199】
モータ372には、一般に、駆動周波数がステータ382の共振周波数より高い領域においては、駆動周波数が減少するにつれてモータ372の駆動トルクが増加するという特性がある。したがって、上記1回目の検出工程の当初には、モータ372がONにされるにもかかわらず、モータ372の駆動トルクが小さく、モータ372が回転させられない。また、1回目の検出工程において、駆動周波数を減少させる速度を通常より遅くすれば、駆動トルクの増加速度も減少し、よって、駆動トルクが小さい期間が長くなる。図40には、1回目の検出工程における駆動周波数の減少速度(以下、「最初周波数減少速度」という)が速い場合がグラフ▲1▼で示され、遅い場合がグラフ▲2▼で示されており、また、最初周波数減少速度が速い場合においてモータ372が始動する時期がt1 で示され、最初周波数減少速度が遅い場合においてモータ372が始動する時期がt2 で示されている。
【0200】
したがって、加圧力実際値FS を急な勾配で減少させることが必要である場合には、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を通常速度V0 とすればよい。一方、加圧力実際値FS を緩やかな勾配で減少させることが必要である場合には、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を通常速度V0 より遅い第1速度V1 とすればよい。
【0201】
また、加圧力実際値FS を急な勾配で増加させることが必要である場合には、セルフサーボ状態においては、モータ372をOFFし続ければよい。一方、加圧力実際値FS を緩やかな勾配で増加させることが必要である場合に、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を通常速度V0 としたのでは、加圧力実際値FS が減少してしまう。したがって、加圧力実際値FS を緩やかな勾配で増加させることが必要である場合には、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を通常速度V0 より遅い第2速度V2 とすればよい。この第2速度V2 は、上記第1速度V1 と等しい値としたり、異なる値とすることができる。
【0202】
また、加圧力実際値FS を保持することが必要である場合には、セルフサーボ状態においては、モータ372をOFFし続けたのでは、加圧力実際値FS が増加してしまう。また、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を通常速度V0 としたのでは、加圧力実際値FS が減少してしまう。また、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を第2速度V2 としたのでは、加圧力実際値FS がやや減少してしまう。したがって、加圧力実際値FS を保持することが必要である場合には、モータ372を逆回転させるとともに最初周波数減少速度を第2速度V2 より遅い第3速度V3 とすればよい。
【0203】
以上の知見に基づき、本実施形態においては、ブレーキ制御ルーチンが設計されており、図41には、そのうちのパッド加圧制御ルーチンがフローチャートで表され、図42においては、そのパッド加圧制御ルーチンのうちの減少制御ルーチンがフローチャートで表されている。なお、増加制御および保持制御は、パッド制御ルーチンにより実行される。
【0204】
パッド加圧制御ルーチンは繰り返し実行され、各回の実行時には、S101〜S105が第12実施形態(図37)におけると同様に実行される。
【0205】
加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さい場合には、S105の判定がYESとなり、S151において、図38のセルフサーボ状態判定ルーチンが実行される。続いて、S152において、セルフサーボフラグが1であるか否かが判定される。0である場合には、判定がNOとなり、S153〜S155が先の実施形態におけると同様に実行される。なお、モータ372がOFFにあってS153の判定がYESとなったためにS154が実行される場合には、前記最初周波数減少速度が通常速度V0 とされ、また、モータ372に逆回転指令信号が出力中であってS153の判定がNOとなったためにS155が実行される場合にも、最初周波数減少速度が通常速度V0 とされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0206】
これに対して、セルフサーボフラグが1である場合には、S152の判定がYESとなり、S157において、加圧力実際値FS (N) の加圧力指令値F* から不足量ΔFが演算される。続いて、S158において、演算された不足量ΔFが勾配判定基準値fa より大きいか否かが判定される。不足量ΔFが勾配判定基準値fa より大きい場合には、判定がYESとなり、S156において、モータ372がOFFにされる。それにより、加圧力実際値FS が急な勾配で増加させられる。これに対して、不足量ΔFが勾配判定基準値fa より大きくはない場合には、S158の判定がNOとなり、S159において、モータ372がOFFされた後にモータ372に逆回転指令信号が出力されるが、その際、最初周波数減少速度が第2速度V2 とされる。それにより、加圧力実際値FS が緩やかな勾配で増加させられる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0207】
以上、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きい場合について説明したが、小さい場合には、S105の判定はNO、S114の判定もNOとなり、S160において、図42の減少制御ルーチンが実行される。
【0208】
この減少制御ルーチンにおいてはまず、S501において、前記セルフサーボ状態判定ルーチンが実行され、次に、S502において、セルフサーボフラグが1であるか否かが判定される。0であれば、判定がNOとなり、S503において、モータ372に逆回転指令信号が出力中であるか、またはモータ372がOFFにされているか否かが判定される。モータ372に逆回転指令信号が出力中であるか、またはモータ372がOFFにされている場合には、判定がYESとなり、S504において、モータ372に逆回転指令信号が出力される。なお、モータ372がOFFにある状態で逆回転指令信号が出力される場合には、最初周波数減少速度が通常速度V0 とされる。これに対して、モータ372に正回転指令信号が出力中である場合には、S503の判定がNOとなり、S505において、モータ372がOFFされた後にモータ372に逆回転指令信号が出力される。この場合にも、最初周波数減少速度が通常速度V0 とされる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0209】
これに対して、セルフサーボ効果が発生している場合には、セルフサーボフラグが1であるから、S502の判定がYESとなり、S506において、加圧力実際値FS (N) の加圧力指令値F* からの過剰量ΔF′が演算される。続いて、S507において、演算された過剰量ΔF′が勾配判定基準値fg より大きいか否かが判定される。過剰量ΔF′が勾配判定基準値fg より大きい場合には、判定がYESとなり、S503〜S505において、最初周波数減少速度が通常速度V0 とされ、それにより、加圧力実際値FS が急な勾配で減少させられる。これに対して、過剰量ΔF′が勾配判定基準値fg より大きくはない場合には、S507の判定がNOとなり、S508において、モータ372がOFFであるか否かが判定される。OFFであれば、判定がYESとなり、S509において、モータ372に逆回転指令信号が出力されるとともに最初周波数減少速度が第1速度V1 とされ、それにより、加圧力実際値FS が緩やかな勾配で減少させられる。これに対して、モータ372がOFFでなければ、S508の判定がNOとなり、S510において、モータ372をOFFした後にモータ372に逆回転指令信号を出力し、この際、最初周波数減少速度を第1速度V1 とする。それにより、加圧力実際値FS が緩やかな勾配で減少させられる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0210】
以上、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値FS より小さい場合と大きい場合とについて説明したが、等しい場合には、図41のS105の判定はNO、S114の判定はYESとなり、S161において、前記セルフサーボ状態判定ルーチンが実行され、続いて、S162において、セルフサーボフラグが1であるか否かが判定される。0であれば、判定がNOとなり、S163において、モータ372がOFFされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0211】
これに対して、セルフサーボフラグが1である場合には、S162の判定がYESとなり、S164において、モータ372がOFFであるか否かが判定される。OFFであれば、判定がYESとなり、S165において、モータ372に逆回転指令信号が出力されるとともに最初周波数減少速度が第3速度V3 とされる。これに対して、モータ372がOFFでない場合には、S164の判定がNOとなり、S166において、モータ372がOFFされた後にモータ372に逆回転指令信号が出力され、この際、最初周波数減少速度が第3速度V3 とされる。いずれの場合にも、加圧力実際値FS が保持されるのであり、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0212】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、超音波モータ372と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ430のうち図41のS151(図38のセルフサーボ状態判定ルーチン)〜S159を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成しているのである。また、主ブレーキコントローラ430のうち図38のセルフサーボ状態判定ルーチンを実行する部分が「セルフサーボ状態判定手段」の一例を構成しているのである。
【0213】
なお付言すれば、以上説明した実施形態においては、「超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったときに、超音波モータの駆動が限界に到達したと判定する技術」、および「超音波モータの第1の通電状態において加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えるという条件を含む少なくとも一つの条件が同時に成立したときに、セルフサーボ機構の作動が開始されたと判定する技術」が、超音波モータの加圧力実際値を増加させることが必要であるか否かを判定するために採用されているが、それら技術は他の目的のために採用することも可能である。
【0214】
次に、第14実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第12実施形態と共通する要素が多いため、異なる要素のみを詳細に説明し、共通する要素は同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0215】
図43には、本実施形態である4輪車両用ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキ(以下、単に「ディスクブレーキ」という)470が示されている。このディスクブレーキ470は、第12実施形態におけるディスクブレーキ310とは、(a) 超音波モータ372に代えてDCモータ472が使用されている点と、(b) そのDCモータ472と運動変換機構としてのボールねじ機構374との間にウォームギヤ474がトルク伝達機構として設けられている点とで異なっている。他の点については共通するため、第12実施形態におけると同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0216】
キャリパボデー336には、インナパッド320b(図において左側)の背後において、駆動装置476が設けられている。駆動装置476は、ハウジング478を備えており、そのハウジング478においてキャリパボデー336に固定的に取り付けられている。そのハウジング478に、ボールねじ機構374の前記めねじ部材402(運動変換機構の回転部材)が前記ラジアル軸受410とスラスト軸受412とを介して支持されている。めねじ部材402は、回転は許容されるがストッパ414により軸方向移動は制限された状態で支持されている。また、そのハウジング478には、DCモータ472とウォームギヤ474とが収容されている。
【0217】
ウォームギヤ474は、よく知られているように、ウォームホイール480とウォーム482とがかみ合って回転する構造とされている。ウォームホイール480の軸線とウォーム482の軸線とは直角に立体交差させられている。ウォームホイール480はめねじ部材402に同軸かつ相対回転不能に取り付けられており、一方、ウォーム482は、ハウジング478に回転は許容されるが軸方向移動は制限された状態で支持されている。ウォーム482は、それのラジアル荷重とスラスト荷重とが図示しないラジアル軸受とスラスト軸受とによって受けられるようになっている。このウォーム482にDCモータ472の回転軸が同軸かつ相対回転不能に取り付けられている。それらウォーム482およびDCモータ472の軸線は図において紙面に直角な方向に延びている。
【0218】
したがって、このディスクブレーキ470においては、DCモータ472が正回転指令信号に応じて正回転させられ、それにより、ウォーム482が正回転させられれば、ウォームホイール480が正回転させられ、それにより、めねじ部材402が正回転させられる。めねじ部材402が正回転させられれば、おねじ部材400(運動変換機構の移動部材)が前進させられ、それにより、加圧ロッド370が前進させられる。加圧ロッド370が前進させられれば、一対の摩擦パッド320a,320bがディスクロータ312に両側から押圧される。
【0219】
本実施形態においては、ウォームギヤ474の逆効率が0となるように設計されている。すなわち、DCモータ472の回転トルクはめねじ部材402に伝達されるが、めねじ部材402の回転トルクはすべてウォームギヤ474で受けてDCモータ472には伝達されないように設計されているのである。したがって、このディスクブレーキ470にセルフサーボ効果が発生した結果、インナパッド320bからの反力により、めねじ部材402の回転トルクがDCモータ472の駆動トルクを超えようとしても、ウォームホイール480もウォーム482もDCモータ472も逆回転せずに、同位置に保持される。その結果、インナパッド320bからの反力に抗して加圧ロッド370がロックさせられ、よって、DCモータ472の駆動トルクの割りに大きなセルフサーボ効果を享受し得る。
【0220】
ディスクブレーキ470にセルフサーボ効果が発生する間、ウォームギヤ474によってインナパッド320bの加圧力実際値を保持することが可能である。また、DCモータ472を回転制限状態でONにし続けることは、主ブレーキ操作中にDCモータ472が発熱する可能性があるとともに、DCモータ472により電力が無駄に消費されることとなる。そこで、本実施形態においては、主ブレーキ操作中のうちのセルフサーボ状態においては、DCモータ472がOFFにされるようになっている。なお、DCモータ472は、駐車ブレーキの作用状態においてもOFFにされるようになっている。
【0221】
図44には、本ブレーキ装置の電気的構成が示されている。本実施形態においては、主ブレーキコントローラ484がモータ駆動回路454を介してDCモータ472に接続されている。この主ブレーキコントローラ484は、基本的には、第12実施形態におけると同様であるが、第12実施形態におけるとは異なるパッド加圧制御ルーチンをコンピュータにより記憶して実行し、それにより、インナパッド320bの加圧制御を行う。
【0222】
図45には、そのパッド加圧制御ルーチンがフローチャートで表されている。以下、本ルーチンを説明するが、第12実施形態におけるルーチン(図37)と共通するステップについては同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0223】
加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より小さい場合には、S105の判定がYESとなり、S151において、セルフサーボ状態判定が行われる。この判定は、第12実施形態におけると同様に、図38に示すセルフサーボ状態判定ルーチンにより行われる。今回は、セルフサーボ状態にないと仮定すれば、S152の判定がNOとなり、S171において、DCモータ472に正回転指令信号が出力される。これに対して、今回は、セルフサーボ状態にあると仮定すれば、S152の判定がYESとなり、S172において、DCモータ472にOFF指令信号が出力される。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0224】
これに対して、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* より大きい場合には、S105の判定はNO、S114の判定もNOとなり、S173において、DCモータ472に逆回転指令信号が出力される。また、加圧力実際値FS (N) が加圧力指令値F* と等しい場合には、S105の判定はNO、S114の判定はYESとなり、S174において、DCモータ472にOFF指令信号が出力される。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0225】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ウォームギヤ474と、荷重センサ420と、主ブレーキコントローラ484のうち図45のS151(図38のセルフサーボ状態判定ルーチン),S152,S171およびS172を実行する部分とが互いに共同して「増加量不足防止機構」の一例を構成しているのである。また、主ブレーキコントローラ484のうち図38のセルフサーボ状態判定ルーチンを実行する部分が「セルフサーボ状態判定手段」の一例を構成しているのである。
【0226】
なお付言すれば、本実施形態においては、ディスクブレーキ470がセルフサーボ状態にあるか否かを判定し、セルフサーボ状態においてはDCモータ472をOFFにすることにより、DCモータ472の発熱が防止され、さらに、無駄な電力の消費も防止されるようになっているが、そのようにすることは本発明を実施する上において不可欠なことではなく、セルフサーボ状態においてDCモータ472をONにし続けるようにしてパッド加圧制御を行うことは可能である。
【0227】
さらに付言すれば、本実施形態においては、インナパッド320bからの反力がDCモータ472の駆動トルクに勝ろうとしたときにその反力のDCモータ472への伝達がウォームギヤ474によって阻止されるようになっているが、例えば、ウォームギヤ474を設ける代わりに、運動変換機構としてのねじ機構においてそれの逆効率を実質的に0とすることにより目的を達成することも可能である。
【0228】
次に、第15実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第9実施形態と共通する要素が多く、異なるのは弾性的制御機構のみについてであるから、弾性的制御機構については詳細に説明し、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0229】
第9実施形態においては、弾性的制御機構340(図20)の弾性係数、すなわち、弾性力(インナパッド320bから弾性的制御機構340への入力荷重に等しい)を弾性変形量(インナパッド320bの連れ回り量に等しい)で割り算した値が、非常に小さく設定されていた。その結果、図47に破線グラフで示すように、弾性力がセット荷重を超えないうちは弾性変形量が0に保たれてインナパッド320bの連れ回りが阻止される一方、セット荷重を超えた後には、弾性変形量が急に増加してインナパッド320bの連れ回り量も急に増加するようになっていた。
【0230】
ところで、セルフサーボ効果を利用する場合には、加圧力実際値の増加勾配が過大になり易い。この増加勾配の過大化を防止するためには、例えば、弾性的制御機構340の弾性力を大きな値に設定する対策が考えられる。しかし、弾性的制御機構340は、弾性力を一つの値しか有しないため、弾性力を大きな値に設定したのでは、加圧力実際値の増加勾配の過大化が抑制される効果は得られる反面、セルフサーボ効果の発生開始が困難となってしまう。弾性力が大きいと、インナパッド320bの連れ回り開始が困難となるからである。一方、弾性力を小さな値に設定したのでは、セルフサーボ効果の発生開始は容易となる効果は得られる反面、加圧力実際値の増加勾配が過大化する傾向が生じる。
【0231】
そこで、本実施形態においては、弾性的制御機構500が、弾性力が弾性変形量の増加に対して増加する特性を有するように設計されている。その特性には、弾性力が弾性変形量の増加に対して非線型で増加する非線型特性を有するものを選ぶことができる。非線形特性の二つの例が図47に実線グラフ▲1▼と▲2▼で示されている。実線グラフ▲1▼は、弾性係数が2段階で、弾性変形量が小さい領域では小さな値、大きい領域では大きな値となるように変化する第1の非線型特性を示しており、一方、実線グラフ▲2▼は、弾性係数が連続的に、弾性変形量が増加するにつれて増加する第2の非線型特性を示している。また、上記特性には、弾性力が弾性変形量の増加に対して線型で増加する線型特性を有するものを選ぶこともできる。その一例が同図に二点鎖線グラフ▲3▼で示されており、そのグラフは右上がりの直線とされている。
【0232】
図46には、弾性的制御機構500が示されている。この弾性的制御機構500は、弾性的制御機構340と同様に、(a) U字形状を成して一対のアーム501a,501bを有するU字状ばね502(第1弾性部材)と、(b) そのU字状ばね502の弾性変形量を変化させることによってU字状ばね502の初期荷重を調節する調節機構504とを含む構造とされている。調節機構504は、パッド連れ回り方向Zにほぼ平行に延びてU字状ばね502の一対のアーム501a,501bを互いに接近可能かつ離間不能に連結する長さ調節ボルト506を含み、U字状ばね502の弾性変形量を変化させることによってU字状ばね502の初期荷重を調節する。
【0233】
弾性的制御機構500は、さらに、コイルスプリング508(第2弾性部材)を備えている。コイルスプリング508は、長さ調節ボルト506にほぼ同軸に貫通させられている。コイルスプリング508の長さは、一対のアーム501a,501bの内面との間にクリアランスδが残るように設定されている。したがって、インナパッド320bからU字状ばね502のアーム501b(インナパッド320bに近い可動側)に力Rが付与されると、その力Rが小さく、連れ回り量も小さいうちは、U字状ばね502のみが弾性変形するのに対して、力Rが大きくなり、連れ回り量も大きくなると、U字状ばね502のみならずコイルスプリング508も弾性変形することになる。その結果、この弾性的制御機構500によれば、図47において実線グラフ▲1▼で示す第1の非線型特性が実現されることになる。
【0234】
本実施形態には種々の変形を加えることができる。例えば、図48に示すように、コイルスプリング508をその位置において複数枚の皿ばね512に代えるという変更を加えることができる。また、図49に示すように、コイルスプリング508を板ばね516に代えるという変更を加えることもできる。板ばね516は、一端部が、U字状ばね502のアーム501b(可動側)に位置固定に取り付けられる一方、他端部が、アーム501bとの間にインナパッド320bの側においてクリアランスδが存在するようにされる。
【0235】
なお、図48に示す変形例は、図46におけると同様に、弾性変形量の増加につれて、1つの弾性部材を弾性変形させる状態から、互いに並列な2つの弾性部材を同時に弾性変形させる状態に移行させることにより、弾性係数を弾性変形量に応じて増加させる方式を採用する。これに対して、図49に示す変形例は、弾性変形量の増加につれて、互いに直列な2つの弾性部材を同時に弾性変形させる状態から、1つの弾性部材のみを弾性変形させる状態に移行させることにより、弾性係数を弾性変形量に応じて増加させる方式を採用している。
【0236】
また、弾性的制御機構500は、コイルスプリング508または皿ばね512の組立体の外周に円筒状のゴムを追加的に配置したり、コイルスプリング508または皿ばね512の組立体とU字状ばね502との隙間にゴムを追加的に配置したり、コイルスプリング508の各巻線間の隙間または皿ばね512間の隙間にゴムを追加的に配置することでき、このようにすれば、図47において実線グラフ▲2▼で示す第2の非線型特性の実現が可能となる。なお、コイルスプリング508の各巻線間の隙間は、もともと存在する隙間をそのまま利用するか、またはもともと存在する隙間を積極的に拡大して利用することができる。また、皿ばね512間にはもともと隙間が存在しないのが普通であるから、ゴムを挿入するためには、皿ばね512間に隙間を積極的に設けることが必要となる。
【0237】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、弾性的制御機構500が「弾性部材」の一例を構成するとともに「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0238】
次に、第16実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第3実施形態と共通する要素が多く、異なるのはディスクブレーキのみについてであり、しかも、ディスクブレーキの一部についてのみであるから、ディスクブレーキのその一部のみについて詳細に説明し、他の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0239】
第3実施形態においては、図10に示すように、ディスクブレーキ150においてインナパッド14bがくさびとして機能させられ、それにより、インナパッド14bにセルフサーボ効果が発生させられる。これに対して、本実施形態においては、図50に示すように、ディスクブレーキ520においてアウタパッド14aがくさびとして機能させられ、それにより、アウタパッド14aにセルフサーボ効果が発生させられる。
【0240】
具体的には、インナパッド14bは、ディスクロータ11との連れ回りが積極的に許容される状態ではマウンティングブラケット152に支持されていない。また、インナパッド14bについては、摩擦材18も裏板20も板厚が均一とされている。また、加圧ロッド216および超音波モータ212がそれらの軸線がディスクロータ11の摩擦面12に直角となる姿勢でディスクブレーキ520に配置されている。
【0241】
これに対して、アウタパッド14aは、ディスクロータ11との連れ回りが積極的に許容される状態でマウンティングブラケット152に支持されている。また、アウタパッド14aについては、摩擦材18の板厚が均一とされる一方、裏板20の板厚が連れ回り方向Yにおいてそれの開始側から終了側に向かって漸減するようになっている。裏板20の裏面に、ディスクロータ11の摩擦面12に対する斜面524が形成されているのである。また、アウタパッド14aの連れ回りを制御するために、第3実施形態におけると同様に、弾性部材184,移動部材186およびストッパ190が設けられている。キャリパホデー202のリアクション部206には、アウタパッド14aの裏板20をそれの斜面524においてディスクロータ11に連れ回り可能に支持する支持面526が形成されている。この支持面526も、ディスクロータ11の摩擦面12に対して傾斜させられている。この支持面526とアウタパッド14aとの間には、それら間の摩擦を低減させる手段として、スラストベアリング528が設けられている。スラストベアリング528は、複数個の転動体としてのボールが一円周に沿って転動可能に保持された構造を有している。
【0242】
本実施形態には種々の変形を加えることができる。例えば、図51に示すように、インナパッド14bにも斜面530を設けるという変形を加えることができる。ただし、インナパッド14bはくさびとして機能しない。
【0243】
次に、第17実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第16実施形態と共通する要素が多く、異なるのはセルフサーボ効果発生阻止機構のみについてであるから、その機構のみについて詳細に説明し、他の要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0244】
ところで、従来のディスクブレーキにおいては一般に、マウンティングブラケットが、(a) アウタパッドをディスクロータの回転方向における両側から挟む一対の部分と、(b) アウタパッドをそれの背後において跨いでそれら一対の部分を互いに連結するブリッジ部とを含むように構成される。それら一対の部分およびブリッジ部を図20において説明すれば、一対の部分は符号538a,538bで示され、ブリッジ部は符号540で示されている。
【0245】
これに対して、本実施形態においては、図52および図53に示すように、ブリッジ部540が省略される一方、ブリッジ部540が設けられるべき位置に弾性部材542が設けられている。弾性部材542は、概して棒状を成し、一端部543aと他端部543bとを備えている。他端部543bは、アウタパッド14aのディスクロータ回転方向Xにおける両端部544a,544bのうち車体前進時にアウタパッド14aがディスクロータ312に連れ回る側に位置する連れ回り側端部544bに連携させられている。一方、一端部543aは、一対の部分538a,538bのうち連れ回り側端部544bから遠い部分538aに連携させられている。
【0246】
他端部543bは、アウタパッド14aの連れ回り側端部544bのうち、アウタパッド14aの連れ回り方向を向いた面に係合させられていて、アウタパッド14aから連れ回り方向に作用する力を受ける。その力により弾性部材542が弾性変形し、その弾性部材542の弾性特性が適正化されることにより、アウタパッド14aの連れ回り開始、すなわち、セルフサーボ効果の発生開始が制御される。
【0247】
図54には、他端部543bと連れ回り側端部544bとが拡大して示されている。マウンティングブラケット152の部分538bには、弾性部材542の端部543bの、連れ回り側端部544bへの接近限度を規定するストッパ546が形成されている。このストッパ546により、他端部543bと連れ回り側端部544bとのクリアランスの初期値が安定化させられる。また、他端部543bと部分538bとは、サポート548を介して接触させられ、それにより、アウタパッド14aの連れ回り時に、他端部543bと部分538bとの直接の接触が回避されるようになっている。
【0248】
弾性部材542の弾性特性は、第15実施形態におけるように、非線型特性とされており、そのため、弾性部材542の端部543bには、図52に示すように、切欠き550が設けられている。アウタパッド14aから端部543bへの入力荷重が小さく、切欠き550内における隙間が消滅しないうちは、弾性部材542の最小断面係数が小さくなって弾性係数が小さくなり、これに対して、アウタパッド14aから端部543bへの入力荷重が大きくなり、切欠き550内における隙間が消滅した後には、弾性部材542の最小断面係数が大きくなって弾性係数が大きくなる。すなわち、本実施形態においては、弾性部材542に切欠き550を設け、その切欠き55内の隙間が存在する状態と、隙間が消滅した状態とで、弾性部材542の最小断面係数が異なることを利用して、弾性部材542の非線型特性が実現されるようになっているのである。
【0249】
なお、図54に示すように、弾性部材542の他端部543bとマウンティングブラケット152の部分538bとの間には、アウタパッド14aの連れ回りの進行につれて減少する隙間が存在するが、この隙間内にゴム製の第2の弾性部材552を装填することが可能である。このようにすれば、弾性部材542および第2の弾性部材552とが互いに共同して「弾性部材」の一例を構成することになるとともに、その一例の「弾性部材」の弾性特性が、弾性係数が連続的に変化する非線型特性を示すものとなる。
【0250】
弾性部材542の一端部543aは、図52に示すように、マウンティングブラケット152の部分538aにボルト554で固定されている。ただし、ボルト554で固定することは不可欠ではなく、一端部543aと部分538aとの第1方向における相対移動を、例えば、突起と溝とを互いに嵌合させる第1の構造で阻止するとともに、第1方向と交差する第2方向における相対移動を、ピンと穴とを互いに嵌合させる第2の構造で阻止することができる。図55には、それら第1および第2の構造を構成する一例が記載されている。この例においては、一端部543aに突起556を設ける一方、部分538aに溝558を設け、それにより、第1の構造が構成されている。また、それら一端部543aと部分538aとの双方に穴560,562を同軸に設ける一方、それら穴560,562にピン564を嵌合させ、それにより、第2の構造が構成されている。
【0251】
なお、本実施形態においては、マウンティングブラケット152においてブリッジ部540が省略されているが、省略しないとともに、ブリッジ部540に近接し、かつ、平行に弾性部材542を配置することが可能である。また、ピン564に代えてボルトを用いてもよい。
【0252】
また、本実施形態においては、図52に示すように、切欠き550が弾性部材542に、他端部543bと中央部566とが互いに直角に接続される部分において、弾性部材542の中心から外側に向かって延びるように形成されていたが、切欠き568を、図56に示すように、他端部543bにおいて、弾性部材542の中心からディスクロータ11に向かって延びるように形成することができる。また、図57に示すように、第2の弾性部材570を、他端部543bに、アウタパッド14aの連れ回り量が小さいうちは、アウタパッド14aからの力が弾性部材542には作用するが第2の弾性部材570には作用しないように設ける一方、アウタパッド14aの連れ回り量が大きくなると、アウタパッド14aからの力が弾性部材542のみならず第2の弾性部材570にも作用するように取り付けることもできる。
【0253】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、弾性部材542が「弾性部材」の一例を構成するとともに「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0254】
次に、第18実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の第16実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0255】
第16実施形態においては、図50に示すように、アウタパッド14aの裏板20の裏面に斜面524が形成され、その斜面524が一平面で構成され、その結果、裏板20の裏面の、ディスクロータ11の摩擦面12に対する傾斜角が、アウタパッド14aの連れ回り方向Yにおいて変化しないようにされていた。これに対して、本実施形態においては、図58に示すように、斜面572が、それの傾斜角が連れ回り方向Yにおいて変化するように形成されている。なお、リアクション部206のうち裏板20の斜面572を支持する支持面574は、斜面572に球面状の突起で接触するようになっている。これにより、斜面572の傾斜角を変化させる目的が確実に達成される。
【0256】
図59には、アウタパッド14aが取り出されて拡大して示されている。斜面572は、傾斜角が0ではない第1部分斜面576と、その第1部分斜面576より傾斜角が大きい第2部分斜面578とがそれらの順に、連れ回り方向Yとは逆向きに並んで形成されている。アウタパッド14aがディスクロータ11に連れ回りにつれて、支持面574が、第1部分斜面576と第2部分斜面578とにそれらの順に接触するようになっているのである。それら部分斜面576,578はいずれも一平面で構成されている。
【0257】
したがって、本実施形態においては、アウタパッド14aにセルフサーボ効果が発生する前には、支持面574が第1部分斜面576と接触しており、それの傾斜角が小さいため、アウタパッド14aは容易に連れ回り可能となっている。そのため、セルフサーボ効果の発生が容易に開始される。また、セルフサーボ効果の発生後には、支持面574が第2部分斜面578と接触し、十分なセルフサーボ効果が得られることになる。
【0258】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、斜面572が「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0259】
次に、第19〜21実施形態を説明する。ただし、それら実施形態は、先の第18実施形態とアウタパッド14aの斜面形状のみが異なるため、その斜面形状のみについて詳細に説明し、他の要素については説明を省略する。
【0260】
第19実施形態においては、図60に示すように、斜面580が、凹の曲面形状とされている。例えば、連れ回り方向Yに沿った一平面で切断した場合に、外形線が一円弧となる曲面形状とされている。したがって、本実施形態においては、セルフサーボ効果の発生前には、支持面574が斜面580のうち傾斜角が小さい第1部分で接触し、セルフサーボ効果の発生後には、斜面580のうち第1部分より傾斜角が大きい第2部分で接触する。したがって、図59に示すアウタパッド14aと同等な効果が得られる。すなわち、斜面580が「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0261】
第20実施形態においては、図61に示すように、斜面582が、傾斜角が小さい第1部分斜面584と、その第1部分斜面584におけるより傾斜角が大きい第2部分斜面586と、その第2部分斜面586におけるより傾斜角が小さい第3部分斜面588とがそれらの順に、連れ回り方向Yとは逆向きに並んで形成されている。いずれの斜面584,586,588も一平面で構成されている。したがって、本実施形態においては、セルフサーボ効果の発生前には、支持面574が第1部分斜面548と接触する。第1部分斜面548は傾斜角が小さいため、セルフサーボ効果の発生が容易に開始される。セルフサーボ効果の発生後にはまず、支持面574が第2部分斜面586と接触する。第2部分斜面586は第1部分斜面584より傾斜角が大きいため、十分なセルフサーボ効果が発生する。セルフサーボ効果の増加勾配が過大になろうとすると、支持面574が第3部分斜面588と接触する。第3部分斜面588は第2部分斜面586より傾斜角が小さいため、セルフサーボ効果の増加勾配が過大になることが防止される。すなわち、斜面582が「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0262】
第21実施形態においては、図62に示すように、斜面590が、凹の曲面形状の第1部分斜面592と、凸の曲面形状の第2部分斜面594とがそれらの順に、連れ回り方向Yとは逆向きに並んで形成されている。したがって、本実施形態においては、セルフサーボ効果の発生前には、支持面574が第1部分斜面592のうち傾斜角が小さい第1部分と接触する。そのため、セルフサーボ効果の発生が容易に開始される。セルフサーボ効果の発生後にはまず、支持面574が第1部分斜面592のうち傾斜角が第1部分より大きい第2部分と接触する。そのため、十分なセルフサーボ効果が発生する。セルフサーボ効果が過大になろうとすると、支持面574が第2部分斜面594と接触する。第2部分斜面594は第1部分斜面592より傾斜角が小さいため、セルフサーボ効果の増加勾配が過大になることが防止される。すなわち、斜面590が「勾配制御機構」の一例を構成しているのである。
【0263】
次に、第22実施形態を説明する。ただし、先の第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0264】
第1実施形態においては、超音波モータ72の駆動力が一対のレバー30,30により倍力されて一対の摩擦パッド14,14に伝達され、それにより、レバーによる倍力なしで超音波モータ72の駆動力により一対の摩擦パッド14,14にディスクロータ11に押圧する場合に比較して大きな車輪制動力が発生する。そして、この効果はセルフサーボ効果を発生させないでも享受できる。
【0265】
このような観点から本実施形態はなされたものであり、図63に示すように、一対のレバー600,600が、固定部材602に、ディスクロータ11の回転軸線と立体交差する各軸線に沿って延びる各ピン604により回動可能に連結されており、各レバー600は、それのレバー比に応じて超音波モータ72の駆動力を倍力して各摩擦パッド14に背後から作用させる。固定部材602は、このように各レバー600を回動可能に支持するレバー支持部材として機能し、さらに、一対の摩擦パッド14,14をディスクロータ11を挟んで互いに対向する方向に摺動可能に支持するパッド支持部材としても、各摩擦パッド14の摩擦力を受ける受け部材としても機能するようになっている。
【0266】
超音波モータ72は、第1実施形態におけると同様に、踏力センサ102の信号と制動力センサ110の信号とに基づき、コントローラ100によりフィードバック制御され、それにより、車輪の制動力が操作力に応じて制御される。
【0267】
したがって、本実施形態によれば、超音波モータ72の駆動力がレバー600を主体とする簡単な構造によって倍力されて摩擦パッド14に伝達されるため、ディスクブレーキの構造を複雑にすることなく、超音波モータ72の駆動力の割に大きな車輪制動力が発生するという効果が得られる。
【0268】
次に、第23実施形態を説明する。
本実施形態は、図64に示すように、第22実施形態に、第4実施形態における冷却装置232が追加されたものである。それら第4および第22実施形態におけると共通する要素については同一の符号が使用されている。したがって、本実施形態によれば、超音波モータ72の駆動力がレバー600により倍力されて摩擦パッド14に伝達されるディスクブレーキを備えた電動式ブレーキ装置において、超音波モータ72が積極的に冷却されることにより、超音波モータ72の熱に対する作動安定性が向上するという効果が得られる。
【0269】
なお付言すれば、以上説明したすべての実施形態においては、モータを駆動源とするディスクブレーキが常用ブレーキとして使用されるようになっているが、例えば、駐車ブレーキとしても使用したり、駐車ブレーキとしてのみ使用する形態で本発明を実施することができる。
【0270】
さらに付言すれば、以上明細書に記載の技術のうちセルフサーボ効果の欠点を解消する技術は、ディスクブレーキが電動式であるか機械式であるかを問わず、採用可能である。
【0271】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図2】図1におけるAA断面図である。
【図3】図1においてBで示す部分を拡大して示す平面断面図と、その部分を拡大して示す側面図である。
【図4】図1におけるコントローラにより実行されるブレーキ制御の内容を概念的に示すブロック線図である。
【図5】図1におけるコントローラの構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図1におけるコントローラのコンピュータにより実行されるブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態における踏力fと前輪制動力Ff と後輪制動力Fr との関係の一例を示すグラフである。
【図8】第1実施形態におけるディスクブレーキの一変形例のうち図1においてBで示す部分に相当する部分を拡大して示す平面断面図と、その部分を拡大して示す側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態である電動式ブレーキ装置のモータ駆動式ディスクブレーキのうちの要部を取り出して概念的に示す平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す部分断面平面図である。
【図11】図10においてアウタパッド14aを通過する一平面に関する断面図である。
【図12】図10においてインナパッド14bを通過する一平面に関する断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図14】図13における冷却装置232を取り出して拡大して示す斜視図である。
【図15】本発明の第5実施形態である電動式ブレーキ装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図16】本発明の第6実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図17】本発明の第7実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図18】本発明の第8実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図19】本発明の第9実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す側面断面図である。
【図20】図19におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図21】図20における弾性的制御機構340を取り出し拡大して示す平面図である。
【図22】図21における弾性的制御機構340の一変形例を示す平面図である。
【図23】上記モータ駆動式ディスクブレーキを示す正面図である。
【図24】図19における圧電体392の表面における電極配置を示す平面図である。
【図25】その圧電体392の裏面における電極配置を示す平面図である。
【図26】上記電動式ブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図27】図26におけるモータ駆動回路454の詳細とそのモータ駆動回路454と直流電源242と超音波モータ372との接続関係とを示すブロック図である。
【図28】図26における主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図29】図28におけるS15の詳細をパッド加圧制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図30】上記ブレーキ制御ルーチンによる一制御例を示すグラフである。
【図31】上記ブレーキ制御ルーチンによる別の制御例を示すグラフである。
【図32】図28におけるS18の詳細を加圧ロッド停止位置制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図33】図26における駐車ブレーキコントローラ450のコンピュータのROMに記憶されている駐車ブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図34】本発明の第10実施形態である電動式ブレーキ装置における主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンのうちのパッド加圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図35】本発明の第11実施形態である電動式ブレーキ装置における主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンのうちのパッド加圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図36】そのパッド加圧制御ルーチンにより出力されるモータ指令信号を示すタイムチャートである。
【図37】本発明の第12実施形態である電動式ブレーキ装置における主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンのうちのパッド加圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図38】図37におけるS151の詳細をセルフサーボ状態判定ルーチンとして示すフローチャートである。
【図39】上記パッド加圧制御ルーチンによる一制御例を示すグラフである。
【図40】本発明の第13実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動回路の周波数追尾部によって超音波モータの駆動周波数が変化させられる様子を示すグラフである。
【図41】その電動式ブレーキ装置における主ブレーキコントローラ430のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンのうちのパッド加圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図42】図41におけるS160の詳細を減少制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図43】本発明の第14実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す側面断面図である。
【図44】その電動式ブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図45】図44における主ブレーキコントローラ484のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ制御ルーチンのうちのパッド加圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図46】本発明の第15実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキの弾性的制御機構を示す平面図である。
【図47】その弾性的制御機構の弾性特性を示すグラフである。
【図48】その弾性的制御機構の一変形例を示す平面図である。
【図49】その弾性的制御機構の別の変形例を示す平面図である。
【図50】本発明の第16実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す部分断面平面図である。
【図51】第16実施形態の一変形例を示す部分断面平面図である。
【図52】本発明の第17実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す平面図である。
【図53】そのモータ駆動式ディスクブレーキを示す正面図である。
【図54】図53における端部544b周辺を拡大して示す部分断面正面図である。
【図55】図52における一端部543aと部分538aとの取付け構造の一変形例を説明するための平面図である。
【図56】図52における弾性部材542の一変形例を示す平面図である。
【図57】図52における弾性部材542の別の変形例を示す平面図である。
【図58】本発明の第18実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキを示す部分断面正面図である。
【図59】図58におけるアウタパッド14aを取り出して拡大して示す側面図である。
【図60】本発明の第19実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキのアウタパッドを取り出して拡大して示す側面図である。
【図61】本発明の第20実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキのアウタパッドを取り出して拡大して示す側面図である。
【図62】本発明の第21実施形態である電動式ブレーキ装置におけるモータ駆動式ディスクブレーキのアウタパッドを取り出して拡大して示す側面図である。
【図63】本発明の第22実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す部分断面平面図である。
【図64】本発明の第23実施形態である電動式ブレーキ装置を示す系統図であるとともに、それのモータ駆動式ディスクブレーキを示す部分断面平面図である。
【符号の説明】
10,150,230,310,470,520 モータ駆動式ディスクブレーキ
11,312 ディスクロータ
12,314 摩擦面
14 摩擦パッド
14a,320a アウタパッド
14b,320b インナパッド
30 レバー
26 固定部材
72,212,372 超音波モータ
100 コントローラ
142 斜面
144 斜面
184 スプリング
190 ストッパ
216,370 加圧ロッド
222 ボール
224 スラストベアリング
326 パッド支持機構
327 セルフサーボ機構
328 パッド加圧機構
340,500,510 弾性的制御機構
430 主ブレーキコントローラ
472 DCモータ
542 弾性部材
552,570 第2の弾性部材
572,580,582,590 斜面

Claims (19)

  1. モータを駆動源として車輪を制動するモータ駆動式ディスクブレーキであって、(a) 摩擦面を備えて車輪と共に回転するディスクロータと、(b)そのディスクロータに前記摩擦面において接触させられてディスクロータの回転を抑制する摩擦パッドと、(c)その摩擦パッドを少なくとも前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持するパッド支持機構と、(d)モータおよび加圧部材を備え、モータの駆動力により加圧部材を介して前記摩擦パッドを前記ディスクロータに向かって加圧するパッド加圧機構と、(e)前記ディスクロータと前記摩擦パッドとの間に発生する摩擦力によりその摩擦力を増加させるセルフサーボ機構とを有するモータ駆動式ディスクブレーキと、
    前記モータを制御するモータ制御装置と
    前記車輪と路面との間に発生する制動力が予め定められた第1設定値より小さい状態で、前記セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の発生を阻止するセルフサーボ効果発生阻止機構と
    を含むことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
  2. 前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させる構造を有し、前記セルフサーボ効果発生阻止機構が、前記摩擦力による前記摩擦パッドの連れ回りを阻止する機構を含む請求項1に記載の電動式ブレーキ装置。
  3. 前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ることを利用してセルフサーボ効果を発生させるとともにその連れ回り量に応じた大きさでセルフサーボ効果を発生させる構造を有するものであり、前記セルフサーボ効果発生阻止機構が、弾性力により前記摩擦パッドの連れ回りを阻止する弾性部材であって、弾性力が弾性変形量の増加に対して非線型で増加する状態で使用されるものを含む請求項1または2に記載の電動式ブレーキ装置。
  4. 前記弾性部材が、前記弾性変形量の増加に対する前記弾性力の増加率が弾性変形量が大きい場合において小さい場合におけるより大きい状態で使用される請求項3に記載の電動式ブレーキ装置。
  5. さらに、前記モータの駆動力の変化に対する前記セルフサーボ効果の変化勾配を機械的に制御する勾配制御機構を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  6. 前記パッド支持機構が、固定部材を含み、かつ、その固定部材が、前記摩擦パッドを前記ディスクロータの回転方向における両側から挟む一対の部分を含み、前記弾性部材が、一端部が、前記摩擦パッドの前記ディスクロータの回転方向における両端部のうち車体前進時に摩擦パッドがディスクロータに連れ回る側に位置する連れ回り側端部に連携させられる一方、他端部が、前記一対の部分のうち前記連れ回り側端部から遠いものに連携させられるものである請求項ないし5のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  7. さらに、前記車輪と路面との間に発生する制動力が予め定められた第2設定値を超えようとする状態で、前記セルフサーボ機構によるセルフサーボ効果の増加を阻止するセルフサーボ効果増加阻止機構を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  8. さらに、前記モータの温度上昇を抑制する温度上昇抑制手段を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  9. 前記温度上昇抑制手段が、前記モータから前記摩擦パッドに力が伝達される力伝達系に設けられ、摩擦パッドと前記ディスクロータとの間に発生する摩擦熱が前記力伝達系を経てモータに伝達されることを抑制する伝熱抑制部材を含む請求項8に記載の電動式ブレーキ装置。
  10. 前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドが前記ディスクロータに連れ回ること許容するとともに、その連れ回り状態において摩擦パッドをディスクロータと前記加圧部材との間においてくさびとして機能させることにより、セルフサーボ効果を発生させるくさび型である請求項1ないし9のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  11. さらに、前記摩擦パッドと前記加圧部材との間の摩擦を低減させる摩擦低減手段を含む請求項10に記載の電動式ブレーキ装置。
  12. 前記摩擦パッドの前記加圧部材との接触面が、前記摩擦パッドの連れ回り方向において前記摩擦面に対して傾斜させられるとともにその傾斜角が摩擦パッドの連れ回り方向において変化する斜面を含み、前記セルフサーボ機構がその斜面を含む請求項10または11に記載の電動式ブレーキ装置。
  13. 前記摩擦パッドが、前記ディスクロータを両側から挟んで一対設けられ、それら一対の摩擦パッドの一方である第1摩擦パッドは、前記ディスクロータに連れ回り可能なものであり、他方である第2摩擦パッドは連れ回り不能なものであり、前記パッド加圧機構が、前記ディスクロータを跨いで前記一対の摩擦パッドに係合するとともに前記摩擦面と交差する方向に移動可能なキャリパボデーであって、前記第2摩擦パッドをディスクロータに押圧するための押圧部と、前記第1摩擦パッドに係合するリアクション部とが形成されているキャリパボデーと、(b) 前記押圧部に前記摩擦面と交差する方向に移動可能に支持された加圧ロッドであって、前記モータの駆動力により作動させられるものとを含み、前記加圧部材が、前記第1摩擦パッドについては前記キャリパボデー、前記第2摩擦パッドについては前記加圧ロッドである請求項3,4,10ないし12のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  14. 前記モータが、非通電状態では静止し、第1の通電状態では正回転し、第2の通電状態では逆回転するものであり、前記パッド加圧機構が、前記モータの正回転により前記加圧部材に前記摩擦パッドを前記ディスクロータに向かって加圧させるものであり、前記モータ制御装置が、前記モータを、前記摩擦パッドの加圧力の実際値が指令値と等しくなるように制御するものであり、当該電動式ブレーキ装置が、さらに、前記セルフサーボ機構の作用状態において前記加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、前記摩擦パッドからの反力に抗して前記加圧部材をロックさせることにより、加圧力実際値の増加量が不足することを防止する増加量不足防止機構を含む請求項1ないし13のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。
  15. 前記モータが超音波モータとされるとともに、前記モータ制御装置が、前記セルフサーボ機構の作用状態において前記加圧力実際値を増加させることが必要である場合に、前記超音波モータを非通電状態としてその超音波モータに静止保持トルクを発生させ、その発生させられた静止保持トルクによって前記加圧部材のロックを行う静止保持トルク発生手段を含むものとされることにより、前記増加量不足防止機構が構成されている請求項14に記載の電動式ブレーキ装置。
  16. 前記静止保持トルク発生手段が、前記第1の通電状態において前記加圧力実際値の増加量が第1基準増加量を下回ったことに応じて、前記超音波モータを非通電状態にする増加量不足時制御手段を含む請求項15に記載の電動式ブレーキ装置。
  17. 前記静止保持トルク発生手段が、前記セルフサーボ機構の作用開始に応じて、前記超音波モータを非通電状態にするサーボ開始時制御手段を含む請求項15に記載の電動式ブレーキ装置。
  18. 前記サーボ開始時制御手段が、(a) 前記加圧力実際値に関連する量を検出する加圧力関連量センサと、(b) その加圧力関連量センサの出力信号に基づき、前記第1の通電状態において前記加圧力実際値の増加量が第3基準増加量を超えるという条件を含む少なくとも一つの条件が同時に成立した場合に、前記セルフサーボ機構の作用が開始されたと判定するセルフサーボ状態判定手段とを含む請求項17に記載の電動式ブレーキ装置。
  19. 前記パッド加圧機構が、前記モータの駆動力により前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧する第1押圧力を発生させる第1押圧装置を含み、前記セルフサーボ機構が、前記摩擦力により前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧する第2押圧力を発生させる第2押圧装置を含む請求項1ないし18のいずれか1つに記載の電動式ブレーキ装置。
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