JP3772388B2 - 光触媒体、白熱電球、放電ランプおよび照明器具 - Google Patents

光触媒体、白熱電球、放電ランプおよび照明器具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒作用をを備えた光触媒体,白熱電球,放電ランプおよび照明器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
放電によって紫外線を放射する水銀などを封有する放電ランプの外周面(外表面)に、光触媒作用を有する物質(たとえば TiO2 …酸化チタン)から成る光触媒膜を一体的に設けた放電ランプが知られている(特開平1-169866号公報)。この種の放電ランプは、放電ランプ内部から放出される紫外線を受けると、バルブの外周面に設けた光触媒膜の表面が活性化して酸化力を有するようになり、付着もしくは接触した有機物を酸化・分解し、脱臭などの作用を呈する。つまり、前記放電ランプを設置した雰囲気では、その周囲の脱臭もしくは消臭、雰囲気中の有機成分の分解などが行われる。
【0003】
その他、光触媒作用を有する物質は、建築材,化学処理用光源,照明器具などへの応用も試みられている(たとえば特開平6-304480号公報,特開平6-278241号公報,特開平7-111104号公報)。
【0004】
ところで、光触媒反応を示す照射光の波長は、光触媒膜を形成する物質のエネルギーバンドギャップに依存する。たとえば TiO2 のエネルギーバンドギャップは 3eVであり、 400nmの光エネルギーに相当する。したがって、この値よりも大きなエネルギーを持つ短波長の光は、 TiO2 に吸収されて光触媒作用を示すと考えられている。そして、光触媒膜を形成する物質によっては、このエネルギーバンドギャップの値が小さくなったりする。また、不純物によってもエネルギーバンドギャップの値は変動するので、光触媒作用は紫外線照射に限定されない。
【0005】
上記光触媒膜は、光触媒作用を有する金属酸化物の微粒子から成る粉体を水もしくはエタノールなどの適当なバインダー成分に分散させて、バルブの外周面に塗布後、焼成して形成している。また、光触媒作用を有する金属のアルコキシド化合物溶液を塗布後、高温焼成して光触媒膜を形成することも知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記説明したように、光触媒作用(光触媒機能)を備えた放電ランプは知られ、また、その応用もいろいろ試みられているが、なお、次のような問題があった。 先ず、光触媒作用を有する金属酸化物の微粒子を、水やエタノールなどのバインダー成分に分散させ、これを塗布焼き付けて形成した光触媒膜は、一般的に、膜の強度が劣り、剥離し易いので耐久性に問題がある。あるいは、チタンアルコレートをゾルゲル法にて基体に塗布して成膜するとき、活性が最大となるアナターゼ型結晶を得るために通常、 500℃以上の加熱を要し、この場合、基体ガラスからNaが膜中に侵食して、結晶性を犯すという問題もある。
【0007】
そこで、光触媒膜の強度を向上させるために、以下のような手法が試みられている。
【0008】
(a) SiO2 粉末をエタノールなどに分散させたものを併用する。しかし、この手段を採った場合は、結果的に光触媒作用を有する金属酸化物が外表面に露出する割合が低減するので、光触媒作用の低下を招来することになる。加えて、光触媒膜を形成するときの加熱温度で、基体を成すたとえばソーダライムガラスなどから析出するNa成分によって、 TiO2 などの結晶性が損なわれ易いので、光触媒作用や光学特性が低下するという問題がある。
【0009】
(b)一定の厚み以上の SiO2 層を下地として介挿する。この手段を採った場合は、基体(たとえばソーダライムガラス)中のNa成分の侵食が抑止され、 TiO2 の結晶との反応などが防止されるため、光学特性(光屈折率)の低下を回避できる。ここで、Naの析出防止効果は、 SiO2 層の厚みとともに増大するが、余り厚くなると耐剥離性の点で問題があって、十分な対応策とはいえない。
【0010】
この点について、さらに詳述すると、本発明者らの調査・検討によると、光触媒膜などの形成工程における加熱,冷却サイクルに伴う微小な亀裂発生や結晶粒大化によって、Na成分の析出防止効果が低下することに起因していることが分かった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するものであって、光触媒作用が良好で、かつ膜強度も強固な光触媒体、白熱電球、放電ランプおよび照明器具の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、膜形成面を有する基体と;前記膜形成面に設けられたTiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分から成る複合系の保護膜と;保護膜面上に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする光触媒体である。
【0014】
請求項の発明は、請求項1記載の光触媒体において、光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2を主体として形成されたことを特徴とする。請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載の光触媒体において、基体がソーダライムガラス製であることを特徴とする。光触媒体は、防臭,防汚,殺菌などの光触媒作用が必要な場所に用いられる各種製品、たとえば窓材,タイルなどの建材、照明器具,換気扇,掃除機などの電気機器家具、車両,衛生用品などであるが、これらに限定されるものでない。
【0015】
光触媒膜を支持する基体としては、その使用態様によって、ガラスやセラミックスなどの非金属無機質系材料,アルミニウムなどの金属系無機質材料,有機質系材料を素材とした成形体が挙げられる。ここで、基体が少なくとも 410nm以下の波長の光透過性を有するものであれば、 410nm以下の波長の紫外線を含む光をが基体を透過して、基体形状や光触媒膜の形状に拘らず所要の防臭,防汚,殺菌などの作用効果が得られるからである。
【0016】
なお、光触媒膜の膜厚と吸着物質が分解される作用について、本発明者らが検討した結果、次のような傾向が確認された。すなわち、石英ガラス板の一主面に、厚さを変えて TiO2 系の光触媒膜を形成し、この光触媒膜面にそれぞれ一定濃度のタバコの煙を暴露し、ヤニを付着させ、波長約 550nmの透過率を測定して、光触媒作用を評価したところ、膜厚0.01〜 0.3μm で、より良好な光触媒作用を呈することを確認した。ここで、膜厚が厚くなると紫外線によって励起・生成される光触媒膜の正孔は、膜形成面付近だけに限られ、ヤニなどの吸着面まで正孔が拡散されずに、膜内部での再結合率が増加して分解力が低下すると推定される。一方、膜厚0.01μm 未満では、光触媒膜内の金属酸化物の結晶が均一に形成されず、十分な光触媒作用を呈する程活性化されないためと推定される。
【0017】
さらに、 TiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分から成る複合系の保護膜、たとえば、 SiO2 および TiO2 を主体とした保護膜(下地層)を、ソーダライムガラス面との間に介挿させた場合は、相互の作用による緻密な膜の形成と、ソーダライムガラス中のNa成分の光触媒膜側への析出防止(抑制)とが相俟って、光触媒作用の低下や光透過率の低減,屈折率の低下なども効果的に防止される。 この点について、さらに検討を進めた結果、上記光触媒作用を有する金属酸化物の連続層の光触媒膜に対し、前記TiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分からなる複合系の下地層(保護膜)を介挿することによって、光触媒膜の薄膜化および高活性化が容易になることを確認した。また、光触媒膜の薄膜化などに伴って、干渉色を回避しながら透過率も向上,改善されることを確認した。
【0018】
ここで、TiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分からなる複合系としては、たとえ TiO2 −Al2 O 3 系, TiO2 −ZrO2 系, TiO2 −ZnO 系, SiO2 −Al2 O 3 SiO2 −ZnO 系, TiO2 − SiO2 −Al2 O 3 TiO2 − SiO2 −ZnO 系などが挙げられる。なお、 SiO2 もしくは TiO2 の少なくともいずれか一方の成分 60重量%程度以上占めていればよい。
【0019】
請求項4の発明は、少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な光透過性を有するバルブと;バルブ内に封装された発光フィラメントと;バルブ内の発光フィラメントの両端にそれぞれ一端が接続されるとともに他端がバルブ外に気密に導出された電気導入手段と;バルブ外周面に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする白熱電球である。
【0020】
請求項5の発明は、少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な光透過性を有するバルブと;バルブ内に封装された発光フィラメントと;バルブ内の発光フィラメントの両端にそれぞれ一端が接続されるとともに他端がバルブ外に気密に導出された電気導入手段と;バルブ外周面に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする白熱電球である。
【0021】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5記載の白熱電球において、光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2 を主体として形成されていることを特徴とする。請求項7の発明は、内部に放電媒体が封入され、かつ少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な透光性気密容器と;透光性気密容器内に放電を生起させる電極手段と;透光性気密容器の外周面に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする放電ランプである。
【0022】
請求項8の発明は、内部に放電媒体が封入され、かつ少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な透光性気密容器と;透光性気密容器内に放電を生起させる電極手段と;透光性気密容器の外周面に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする放電ランプである。
【0023】
請求項9の発明は、請求項7または請求項8記載の放電ランプにおいて、光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2 を主体として形成されていることを特徴とする。 請求項10の発明は、請求項7ないし請求項9いずれか一記載の放電ランプにおいて、透光性気密容器内壁面に蛍光体層が設けられていることを特徴とする。
【0024】
ここで、電極手段とは、熱陰極,冷陰極など透光性気密容器内に封装されるもの以外に、励起コイルや外部電極などのいわゆる無電極形のものを含む。
【0025】
請求項11の発明は、請求項4ないし請求項6記載の白熱電球および請求項7ないし請求項 10 記載の放電ランプのうちいずれか一記載の光源と;光源を装着する器具本体とを具備していることを特徴とする照明器具である。
【0026】
請求項12の発明は、光源と;光源に対して配設され少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な透光性カバーと;光源からの光が到達する透光性カバーの少なくとも一部に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする照明器具である。請求項13の発明は、光源と;光源に対して配設された反射体と;反体の少なくとも一部に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする照明器具である。請求項14の発明は、光源と;光源に対して配設され少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な透光性カバーと;光源からの光が到達する透光性カバーの少なくとも一部に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする照明器具である。請求項 15 の発明は、光源と;光源に対して配設された反射体と;反射体の少なくとも一部に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜とを具備していることを特徴とする照明器具である。なお、複合系の保護膜(下地層)の組成比は、たとえば SiO 2 TiO 2 系の場合、重量比で 90 10 70 30 程度が好ましく、また、 SiO 2 もしくは TiO 2 の少なくともいずれか一方の成分が 60 重量%程度以上占めていればよい。
【0027】
請求項16の発明は、請求項11ないし請求項15いずれか一記載の照明器具において、光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2 を主体として形成されたことを特徴とする。
【0028】
前記透光性カバーとは、器具前面の開口部に装着された板状のガラスカバー,セード,グローブなどを指し、制光体として機能するものを含んでもよい。反射体は、たとえば反射鏡やレンズなど例示されるが、これらに限定されるものでない。また、光触媒膜が設けられている透光性カバー面や反射体面は、光源に対する対向面および反対面(反対向面)のいずれかの少なくとも一部であればよい。ここで、対向面とは、一般的に光源側の面であり、紫外線が透過する石英ガラス,ソーダライムガラス,ホウケイ酸ガラスなどの材質製の場合は、光源側と反対の面でもよいことを意味する。
【0029】
本発明において、基体と光触媒膜との間に介挿する保護膜は、たとえばエタノール:エチルセロソルブとを85:15の割合で混合した混合溶媒中に TiO2 :SiO2 を 5: 5の微粒子混合体、もしくは TiO2 :Al2 O 3 を 8: 2の微粒子混合体を分散させた懸濁液に、たとえば基体をディッピングした後、 100℃程度の温度で乾燥することによって形成できる。また、チタンアルコレートおよびジルコンアルコレートの 1: 1混合溶液に、たとえば基体をディッピングした後、 100℃程度の温度で乾燥することによっても形成できる。
【0030】
本発明に係る光触媒膜は、上記のように、光触媒作用を有する金属酸化物を主体としたもの、特には、光触媒作用を有するアナターゼ形 TiO2 を主体(たとえば重量 50%以上をアナターゼ形が占めている)としたものが好ましい。ここで、光触媒作用を有する金属酸化物としては、前記 TiO2 の外、たとえばWO3 ,LaRhO3 , FeTiO3 ,Fe2 O3 ,CdFe2 O 4 ,SrTiO 3 ,CdSe,GaAs, GaP, RuO2 などの微粒子、もしくは2種以上の微粒子混合系が挙げられる。
【0031】
光触媒膜は、次のようにして容易に形成できる。たとえばテトライソプロピルチタネートモノマーもしくはテトライソプロピルチタネートポリマーなどのアルコキシチタネート系化合物の溶液を基体面に塗布焼付けることによって、所要の光触媒体を形成できる。
【0032】
また、たとえばチタンのアルコキシド溶液に平均粒径 5〜10nm程度のアナターゼ型結晶の TiO2 微粒子を懸濁・分散液を基体面に塗布し、焼成によってチタンアルコキシド成分から平均粒径 5nm未満の TiO2 を結晶化させることなどによっても形成できる。この場合、チタンアルコキシド成分で形成される光学系膜と同程度の硬度、強度と、平均粒径 5〜70nmの TiO2 微粒子のみで形成される光触媒膜と同程度の光触媒作用を備えた光触媒体を形成できる。
【0033】
さらに、アナターゼ形 TiO2 を主体とする光触媒膜を形成する場合は、たとえばテトライソプロピルチタネートモノマーを、グリセリンおよびアセチルアセトンでキレート化した後、酢酸エチル−エタノール系混合溶媒に加えて調整したアルコキジ系溶液を保護膜上に塗布し、 700℃程度の温度で数時間焼成処理することにより、アナターゼ形結晶の TiO2 微粒子を主体とした光触媒膜を形成できる。 なお、前記結晶性 TiO2 などを分散させる金属酸化物相は、一部もしくはすべてが非晶質性あるいは多孔質性であってもよい。ここで金属酸化物は、アナターゼ型結晶を主成分としたものが望ましく、また、 TiO2 などの超微粒子(平均粒径 5nm未満程度)、および結晶性 TiO2 微粒子(平均粒径 5〜70nm程度)の混合組成比は、特に限定されないが、一般的に質量比で 1: 4〜 4: 1程度がよい。 請求項1ないし請求項の発明では、基体面にTiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分から成る複合系の保護膜を介して光触媒膜が設けられた構成を採っている。このため、保護膜は緻密な膜・組織を成し高い強度を有する。また、ガラスなどの基体からNa成分が光触媒膜に析出する現象も容易に抑制されるので、光学的な特性の低減・劣化も回避される。つまり、全体的に馴染みがよく、すぐれた耐久性を呈するだけでなく、光触媒作用の向上なども図られる。
【0034】
請求項の発明では、光触媒作用を有する膜が、結晶性の TiO2 微粒子などと、光触媒作用を有する金属酸化物超微粒子の混合系膜としたことにより、すぐれた光触媒作用を呈する一方、基体に対する接着強度(耐剥離性)も良好で脱離・損傷なども回避され、硬度の高さと相俟って長期間に亘って安定した光触媒機能を有する。
【0035】
請求項4ないし請求項6の発明では、一般的な光源などの使用において、前記のようなすぐれた耐久性および良好な光触媒作用などを呈するだけでなく、屈折率の相違に起因する乱反射なども回避され、光学的特性も損なわれないので、高品質な白熱電球として機能しながらその周辺部の清浄化なども行うことができる。 請求項7ないし請求項10の発明では、前記すぐれた光触媒作用などを有する放電ランプであるため、照明用光源としての使用で、消臭,殺菌(減菌)なども併せて行うことができる。また、光源などとしての使用において、前記のようなすぐれた耐久性および良好な光触媒作用などを呈するだけでなく、屈折率の相違に起因する乱反射なども回避され、光学的特性も損なわれないので、高品質な放電ランプとして機能しながら、その周辺部の清浄化なども行うことができる。
【0036】
請求項11の発明では、前記のようなすぐれた耐久性および良好な光触媒作用などを呈するだけでなく、屈折率の相違に起因する乱反射なども回避され、光学的特性も損なわれない高品質な光源を備えたことにより、照明用光源として機能しながら、その周辺部の清浄化なども行うことができる。
【0037】
請求項12ないし請求項16の発明では、前記のようなすぐれた耐久性および良好な光触媒作用などを呈するだけでなく、屈折率の相違に起因する乱反射なども回避され、光学的特性も損なわれない包囲体(制光体を含む)を備えたことにより、照明器具として機能しながら、その周辺部の清浄化なども行うことができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下図1〜図11を参照して実施形態を説明する。
【0039】
実施形態1
図1は、光触媒体の構成例を断面的に示したもので、1は基体(たとえばガラス板…波長 410nm以下の光を透過する)、2は SiO2 および TiO2 の混合体である保護膜(下地層)、3はチタンアルコレートをベースとして形成された光触媒膜である。
【0040】
次に、保護膜2および光触媒膜3の形成方法を説明する。
【0041】
先ず、エタノールおよびエチルセロソルブの混合溶媒に、 SiO2 微粉末および TiO2 微粉末の 9: 1混合体を分散させて懸濁液を調製した。この懸濁液を、予め用意しておいた厚さ 1mmのソーダライムガラス片(30×30mm)1に浸漬・塗布し、 100℃× 0.5時間乾燥して厚さ 0.1μm 程度の SiO2 − TiO2 複合系の保護膜2を形成した。
【0042】
一方、テトライソプロピルチタネートモノマーをグリセリンおよびアセチルアセトンでキレート化したもの、ガラス質形成剤( P2 O5 )を、酢酸エチル−エタノール系混合溶媒に加えて溶液化した混合溶液を、ガラス片1の保護膜2を設けた面に塗布した後、 500℃×10時間焼成処理を施して、アナターゼ結晶型の TiO2 微粒子および TiO2 相を主体とする膜厚 0.2〜 0.3μm の光触媒膜3を作成する。
【0043】
また、比較のため、前記平均粒径 7nm,比表面積300m2 /g のアナターゼ結晶型の TiO2 微粒子を分散・懸濁させた懸濁液(比較例1)、テトライソプロピルチタネートモノマーのキレート化物を、ガラス質形成剤( P2 O5 )とともに酢酸エチル−エタノール系混合溶媒に加えて溶液化した溶液(比較例2)を、それぞれ実施形態の場合と同様の条件でソーダライムガラス片に、塗布・焼成して光触媒体を作成した。
【0044】
これらの光触媒膜面におけるタバコのヤニの吸着力(剥がれ易さ)%、紫外線放電ランプからの紫外線照射(波長 365nm,0.16mW/cm2 )によるヤニの分解力%、ヤニの分解率(分解/吸着)%および光触媒膜の硬さをそれぞれ評価した結果を表1に示す。なお、吸着力および分解力は、透過率の変化で行って実施形態の場合を基準値として評価し、また硬さは鉛筆硬度で行った。
Figure 0003772388
上記特性例の評価から分かるように、本発明の光触媒体は、タバコのヤニによる外界汚染に対してすぐれた清浄化機能を呈するだけでなく、他の有機物、たとえばトイレの臭気の解消などにも有効であった。
【0045】
このように本実施形態の光触媒体の場合は、 TiO2 微粒子の塗布,焼き付けで形成した焼結型の光触媒膜(比較例1相当)と少なくとも同程度の光触媒作用を有する一方、チタンアルコキシドの熱分解で生成・形成した光学系型の光触媒膜(比較例2相当)と同程度の硬度を保持しており、耐久性などすぐれた光触媒膜として機能する。
【0046】
さらに、本実施形態の光触媒膜3は、ディップ方式など簡単な成膜手段により、短時間で所要の膜厚に形成することができる。これは、アルコレート懸濁液が結晶性微粒子3aの周囲を覆いながら、基板1上の保護膜2表面に拡散していくためである。このように、結晶性微粒子を核として、アルコレート溶液のみを塗布する場合に比べて、1回の塗布工程で膜厚の光触媒膜3を形成することができる。またさらに、光触媒膜3の膜厚が厚くなると、結晶性微粒子は、支持基板1からの不純物の影響を一層受けにくくなる。
【0047】
なお、上記光触媒膜3の形成に当たって、テトライソプロピルチタネートモノマーをグリセリンおよびアセチルアセトンでキレート化したもの、ガラス質形成剤( P2 O5 )を、酢酸エチル−エタノール系混合溶媒に加えて溶液化した後、この混合溶液中に、平均粒径 7nm,比表面積300m2 /g のアナターゼ結晶型の TiO2 超微粒子を分散・懸濁させて調製した懸濁液を用いることもできる。
【0048】
上記実施形態において、 SiO2 − TiO2 系の複合保護膜2の代わりに、 SiO2 −Al2 O 3 系もしくは TiO2 −Al2 O 3 系などの複合保護膜を下地層とした構成を採った場合も同様の作用効果が認められる。
実施形態2
先ず、図2に一部切り欠き断面的に示すハロゲン電球を用意した。図2において、4は石英ガラスから成るバルブ、5は前記バルブ4の圧潰封止部、5a,5bは前記圧潰封止部5に気密に埋設された一対の導入リード線(電気導入手段)、6a,6bは前記導入リード線5a,5bに一端が接続する内導体、7は前記内導体6a,6b間に装架されたタングステンコイルフィラメント、8は前記導入リード線5a,5bに電気的に接続しながら圧潰封止部5に装着された口金である。
【0049】
一方、エタノールおよびエチルセロソルブの混合溶媒に、 SiO2 微粉末および TiO2 微粉末の 9: 1混合体を分散させて懸濁液を調製した。この懸濁液に、ハロゲン電球を浸漬し、所定速度で引上げて塗布後、 100℃× 0.5時間乾燥して厚さ 0.1μm 程度の SiO2 − TiO2 複合系の保護膜9aを形成した。
【0050】
他方、テトライソプロピルチタネートを有機溶媒に溶解させ、テトライソプロピルチタネート含有量 2〜10質量%、粘度約2.0 cps の溶液を調製した。次に、前記保護膜9a付のハロゲン電球を、前記チタンアルコレート系溶液を塗布,乾燥後、空気中,約 700℃で 5分間焼成して、前記保護膜9aの外表(外周)面に、厚さ 0.2μm 程度の TiO2 膜(光触媒膜)9bを形成した。
【0051】
このようにして、石英バルブ4の外表(外周)面に SiO2 − TiO2 複合系の保護膜9aを介して設けた厚さ 0.2μm 程度の TiO2 膜9bは、前記ハロゲン電球内で生じ、石英バルブ4壁を透過して外表(外周)面に到達した紫外線の約70%を透過しており、この紫外線や光の透過によって、前記 TiO2 膜9bは光触媒として活性な機能・作用を呈することが確認された。すなわち、有機ガスとしてアセトアルテヒド濃度(1300 ppm)の雰囲気下で、ハロゲンラ電球を点灯し、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、実施形態1の場合と同様にすぐれた光触媒作用が認められた。
【0052】
また、このハロゲン電球は、 TiO2 膜(光触媒膜)9bが光学膜を成しており、良好な帯電防止性を有しているため、雰囲気中の細かい塵埃などの付着も回避され、表面が清浄さを維持していた。すなわち、石英バルブ4の外表(外周)面と TiO2 膜(光触媒膜)9bとの間に SiO2 − TiO2 系の保護膜9aを介在させたことにより、光触媒活性,膜強度および高い透過率(干渉色のない)を兼備した光触媒膜を有するハロゲン電球として機能することを確認した。
【0053】
上記光触媒膜の形成に当たって、前記テトライソプロピルチタネート溶液に、平均粒径 5nmの TiO2 超微粉末(特にアナターゼを主成分としたものが好ましい)を添加・懸濁液化したものを用いることもできる。
【0054】
なお、この実施形態において、 SiO2 − TiO2 系の複合保護膜9aの代わりに、 SiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系、あるいは TiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系の複合保護膜を下地層とした構成を採った場合も同様の作用効果が認められる。
【0055】
実施形態3
図3に断面的に示す管形ハロゲン電球を用意した。図3において、10は石英ガラスから成る管形バルブ、11は前記管形バルブ10の圧潰封止部、 12a, 12bは圧潰封止部11に気密に埋設された一対の導入リード線(電気導入手段)、13は導入リード線 12a, 12b間に装架されたフィラメントである。ここで、フィラメント13は発光部 13aおよび非発光部 13bで構成され、サポーター 13cによって管形バルブ10内壁面に非接触に支持されている。また、14は接点 14aを有するベース部で、圧潰封止部11に気密に埋設されたモリブデン箔 12a′, 12b′を介して、導入リード線 12a, 12bに電気的に接続されている。
【0056】
一方、前記実施形態2の場合と同一組成の SiO2 微粉末および TiO2 微粉末の 1: 1混合体を分散させて懸濁液、およびテトライソプロピルチタネート系溶液をそれぞれ用意した。次いで、実施形態2の場合と同様の条件で、前記石英バルブ10の外表(外周)面に、保護膜( SiO2 − TiO2 系膜)を厚さ0.25μm 程度,光触媒膜( TiO2 膜)を厚さ0.25μm 程度順次形成し、耐剥離性などがすぐれた光触媒系膜14を具備させた。
【0057】
このようにして、石英バルブ10の外表(外周)面に設けた光触媒系膜14は、ハロゲン電球内で生じ、石英バルブ10壁を透過して外表(外周)面に到達した紫外線の約70%を透過しており、この紫外線や光の透過によって、 TiO2 膜は光触媒として活性な機能・作用を呈することが確認された。すなわち、有機ガスとしてアセトアルテヒド濃度(1300 ppm)の雰囲気下で、ハロゲン電球を点灯し、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、前記実施形態1の場合と同様に、すぐれた光触媒作用が認められた。
【0058】
上記構成の管形ハロゲン電球15を、両端側に電気的な接続装着部を備えたリフレクター16に組み込み、図4に断面的に示すような、複写機用の読取り光源部17を作成した。そして、この複写機用の読取り光源部17を、図5に要部構成の概略を断面的に示すごとく、複写機の原稿読取り部に装着し、複写機としての機能評価を行った。図5において、18は露光用ユニットで、前記読取り光源部17、原稿台ガラス19, 反射鏡20など構成されている。また、21は前記反射鏡20で反射導光される光を集光する指定レンズユニット、22は指定レンズユニット21からの光を受ける受光器、23は指定レンズユニット21および受光器22を内装する暗室である。 この複写機について、繰り返し所要の複写操作を行ったところ、前記露光ユニット18の管形ハロゲン電球15表面は、清浄さが保持されており、信頼性の高い露光光源として機能することが確認された。これは、露光ユニット18部における雰囲気に浮遊する汚染などの原因となる有機物が、管形ハロゲン電球16表面の光触媒膜15に接触することによって、容易に酸化・分解して除去されるためである。 この実施形態では、管形ハロゲン電球15を露光ユニット18の光源として組み込んだ複写機について説明したが、トナー像を記録紙などに転写した後、定着用ユニットの熱定着光源として組み込んでも、同様の作用・効果が認められる。
【0059】
また、この実施形態において、 SiO2 − TiO2 系の複合保護膜9aの代わりに、 SiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系、あるいは TiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系の複合保護膜を下地層とした構成を採った場合も同様の作用効果が認められる。
【0060】
なお、本発明はこの実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採り得る。たとえば、上記では白熱電球として、一般的なハロゲン電球、事務機用などの管形ハロゲンランプを例示したが、車輛前照灯用のハロゲン電球、照明装置などであってもよい。
【0061】
実施形態4
この実施形態は3波長発光形の直管形蛍光ランプの場合であり、図6 (a)は直管形蛍光ランプの斜視図、図6 (b)は一部を拡大した断面図、図7は直管形蛍光ランプを用いた照明器具の概略構成を示す側面図である。
【0062】
蛍光ランプ本体は、 JIS規格でFL40SSと表示される定格電力37 Wの蛍光ランプであり、24は直管形を成す透光性気密容器としての発光管であって、この発光管24は、バルブ外径が28mm、管長1198mm程度の大きさをなし、 300nm以上の紫外線を透過するガラス、たとえばソーダライムガラスにて形成されている。そして, この発光管24の両端部はステム25,25により封止されており、これらステム25,25にはリード線26,26が気密に貫通されている。また、前記リード線26,26には、タングステンワイヤなどにより2重コイルに形成された電極手段としてのフィラメント電極27,27が取付けられており、図示しないエミッタが塗布されている。 さらに、前記発光管24の外周面(外表面)には全面に亘り光触媒系膜28が形成されている。ここで、光触媒系膜28は、 SiO2 − TiO2 複合系の保護膜 28aと、たとえば平均粒径 5〜 7nmのアナターゼ型結晶 TiO2 微粒子および平均粒径 5nm未満の TiO2 超微粒子の混合系 28bで形成されている(超微粒子相に結晶性微粒子が分散した状態)。つまり、前記実施形態1の場合と同様の条件で調製した2種の溶液・懸濁液に、前記蛍光ランプを順次浸漬して外周面(外表面)に SiO2 − TiO2 複合系の保護膜 28aを塗布、形成後、チタンアルコレート系溶液を塗布、乾燥( 150℃で約 5分間保持)させることによって、耐剥離性が良好な平均 0.2μm 厚み光触媒系膜28を発光管24の外表面に形成する。
【0063】
また、この実施形態では、水銀から放出された紫外線により励起されて可視光に変換する蛍光体層29を、たとえば3波長発光形蛍光体、および水銀から放出された紫外線により励起されて 300nm〜 400nmの紫外線を発する蛍光体の混合体で構成した。ここで、3波長発光形蛍光体はしては、たとえば 610nm付近にピーク波長を有する赤系蛍光体として Y2 O 3 :Eu、 540nm付近にピーク波長を有する緑系蛍光体として(La,Ce,Tb)PO4 、 450nm付近にピーク波長を有する青系蛍光体としてBaMg2 Al16O 27:Euが用いられている。
【0064】
紫外線発光蛍光体としては、ユーロピウム付活アルカリ土類金属硼酸塩、鉛付活アルカリ土類珪酸塩、ユーロピウム付活アルカリ土類金属リン酸塩、セリウム付活希土類リン酸塩、またはユーロピウム付活アルカリ土類金属ホウ酸塩にハロゲンが添加された蛍光体の少なくとも1種類以上が用いられている。ユーロピウム付活アルカリ土類金属硼酸塩としては、たとえば 368nmにピーク波長をもつSr B4 O7 :Eu2+が有効であり、鉛付活アルカリ土類珪酸塩としては 370nmにピーク波長をもつ(Ba,Sr,Mg)3 Si2 O7 :Pb2+や 350nmにピーク波長をもつBaSi2 O5 :Pb2+などが好適である。
【0065】
さらに、前記発光管24内には所定量の水銀とアルゴンガスなどの不活性ガスが封入されており、また、発光管24の端部には口金ピン30を突設させた口金31が被着されている。そして、前記口金ピン30は前記リード線26,26を介してフィラメント電極(放電電極)27,27に接続されている。
【0066】
前記構成の蛍光ランプ32を、たとえば図7に示すような照明器具本体に取り付けて照明器具を構成することができる。すなわち、図7において33は天井直付け形照明器具の本体であり、この照明器具本体33の長手方向両端にはランプソケット34,34が相互に対向して配置されている。これらソケット34,34間に、前記蛍光ランプ32を、その口金31,31の口金ピン30を係合させて取り付けられ、照明器具を構成している。なお、照明器具本体33には、蛍光ランプ32を点灯させるための安定器35を含む点灯回路が収容されており、前記蛍光ランプ32は安定器35を介して点灯される。
【0067】
次に、前記構成の蛍光ランプおよび照明器具の作用を説明する。
【0068】
蛍光ランプ32を点灯すると電極27,27間のアーク放電により水銀蒸気が水銀特有の 185nmおよび 254nmの紫外線を放出し、この紫外線は蛍光体層29を励起する。この場合、蛍光体層29は3波長発光形蛍光体および 300nm〜 400nmの紫外線を発する蛍光体を混合体で形成されている。したがって、3波長発光形蛍光体が3波長域にピーク波長を有する可視光を発するとともに、紫外線発光蛍光体が 300nm〜 400nmの紫外線を発する。そして、3波長発光形蛍光体によって発せられた可視光は発光管24の壁および SiO2 − TiO2 系の保護膜 28aを透過し、 TiO2 の混合膜 28bを透過して外部に放出され、所定の可視光量が得られので、所定の明るさに照らすことができる。
【0069】
一方、紫外線発光蛍光体が 300nm〜 400nmの紫外線を発するので、この紫外線は発光管24の壁をおよび SiO2 − TiO2 系の保護膜 28aを透過し、 TiO2 を主成分とする光触媒膜 28bに達する。このため TiO2 は紫外線を吸収し、光触媒作用で TiO2 の内部に電子とホールを生させるとともに、このホールを移動させて表面において電子移動反応を起こし、このホールがほぼバンドギャップ(3.0 eV)分のエネルギーだけ電子を引き抜く力、すなわち酸化力をもち、表面に付着した物質を酸化させる。したがって、環境を汚染している臭気,有機物などを、より効率的に酸化・分解するように機能した。すなわち、この蛍光ランプにおいては、光触媒活性,膜強度および高い透過率(干渉色のない)を兼ね備えた光触媒膜を有する光源として機能することを確認した。
【0070】
たとえば、臭気(アセトアルデヒド濃度1300 ppm)を有する密閉型の雰囲気下で、前記照明装置を点灯して、点灯時間とアセトアルデヒド濃度の変化を測定したところ、 1時間後 300 ppm,24時間後 5 ppm程度とすぐれた触媒機能を呈することが確認された。
【0071】
上記のように、光触媒膜 28bは、表面に付着した物質を効率よく酸化・分解させることができため、たとえばメチルメルカプタン、硫化水素などの硫黄化合物、アンモニアなどの含窒素化合物、アルデヒド類などの分解が促され、臭気物質の分解による消臭作用も容易に奏する。また、同じく強い酸化作用により、細菌を含む雑菌の殺菌作用、汚れなどの浄化、たとえば煙草のヤニを分解するなどの作用も容易に生じる。
【0072】
また、上記実施形態において、 SiO2 − TiO2 系の複合保護膜 27aの代わりに、 SiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系、あるいは TiO2 −Al2 O 3 (もしくは ZrO2 )系の複合保護膜を下地層とした構成を採った場合も同様の作用効果が認められる。
【0073】
なお、本発明はこの実施形態の構造に制約されるものではない。たとえば、上記実施例では可視光を発する蛍光体として3波長発光形蛍光体を用いたが、本発明はこれに限らず、ハロリン酸カルシウム蛍光体や、その他蛍光ランプに使用されている通常の蛍光体であってもよい。また、蛍光ランプは図8に斜視的にしめすように、直管形蛍光ランプ、環形蛍光ランプ、U字型、W字型に限らず、H字、鞍形などのような屈曲形蛍光ランプなどであってもよい。
【0074】
実施形態5
図9は、紫外線を放出する光源、たとえば高圧水銀蒸気放電灯に制光体(もしくは包囲体)を組み合わせた照明器具の概略構成を示す断面図である。図9において、36は電源側に一端が接続する外部リード部37およびソケット部38などを装着した器具本体である。また、39は前記器具本体36のソケット部38に装着された高圧ナトリウムランプ、40は高圧ナトリウムランプ39に沿って配置内装された反射板であり、この反射板40は前記器具本体36に取り付けられた支持枠41によって支持・固定されている。さらに、42は前記器具本体36と組み合わせられて透光性カバーを形成する紫外線透過性のグローブ、たとえばソーダライムガラス製のグローブであり、この外表面に光触媒系膜43が設けられている。ここで、前記光触媒系膜43は、実施形態1の場合と同一組成の、 SiO2 粉末− TiO2 粉末系の懸濁液と、テトライソプロピルチタネート系溶液とを、前記ソーダライムガラス製グローブ42の側外表面に、実施形態1の場合と同様の条件で順次塗布,乾燥、空気中での焼成などを施して、厚さ 0.3μm 程度の膜厚に形成されている。
【0075】
このように構成された照明器具は、高圧ナトリウムランプ39の点灯で、高圧ナトリウムランプ39から放出された紫外線がソーダライムガラス製グローブ42を透過し、外表(外周)面に到達して前記光触媒系膜43は、光触媒として活性な機能・作用を呈することが確認された。すなわち、有機ガスとしてアセトアルテヒド濃度(1300 ppm)の雰囲気下で、照明器具を点灯し、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、すぐれた光触媒作用が認められた。換言すると、光触媒活性,膜強度および高い透過率(干渉色のない)を兼ね備えた光触媒作用を有する照明器具として機能することを確認した。ここで、透光性カバーが平板状であってもよい。
【0076】
なお、この実施形態においては、ソーダライムガラス製グローブ42からのNa析出が低減され、光触媒作用が向上することが確認された。
【0077】
また、図10に透視的に示すごとく、反射膜44付きのレフランプのバルブ45の頂面に、前記手法に準じて光触媒系膜(保護膜−光触媒膜)46を形成して、照明器具に装着して点灯評価を行ったところ、光触媒活性,膜強度および高い透過率を兼備した光触媒系膜を有するレフランプとして機能することを確認した。なお、図10において、47は E型口金、48はフィラメントをそれぞれ示す。
【0078】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項3の発明によれば、光触媒系膜の薄膜化および良好な透過性化を図りながら、一方では、光触媒膜の活性および硬度が高く、かつ支持基体に対する密着力もしくは接着力も高くて、長期間に亘って所要の光触媒作用を呈する清浄化用の光触媒膜が提供される。
【0079】
請求項4ないし6の発明によれば、白熱電球が光学的特性の良好な光源として機能しながら、一方では、点灯・使用雰囲気中の有機成分などを、加熱冷却サイクルを含めて長期間に亘って、安定的かつ容易に酸化・分解除去し得るので、殺菌もしくは減菌、臭気の除去(脱臭)などが要望される居住空間、たとえば病院用光源として有効な光源の提供が可能である。
【0080】
請求項7ないし10の発明によれば、放電ランプが光学的特性の良好な光源として機能しながら、一方では、点灯・使用雰囲気中の有機成分などを、加熱冷却サイクルを含めて長期間に亘って安定的、かつ容易に酸化・分解除去し得るので、殺菌もしくは減菌、臭気の除去(脱臭)などが要望される居住空間、たとえば病院用光源として有効な光源の提供が可能である。
【0081】
請求項11の発明によれば、一般照明用として機能しながら、前記請求項ないし10の発明で見られるような作用・効果を呈するので、その実用性がさらに助長される。
【0082】
請求項12ないし16の発明によれば、照明器具に装着した光源が紫外線放射源として有効に機能する一方、点灯・使用雰囲気中の有機成分などを、加熱冷却サイクルを含めて長期間に亘って安定的、かつ容易に酸化・分解除去し得るので、殺菌もしくは減菌、臭気の除去(脱臭)などが要望される居住空間、たとえば病院用光源として有効な照明器具の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒体の一実施形態を示す要部断面図。
【図2】本発明の白熱電球の一実施形態の構造を示す一部切り欠き断面図。
【図3】本発明の管型白熱電球の一実施形態の構造を示す断面図。
【図4】本発明に係る照明器具の一実施形態の構造を示す断面図。
【図5】本発明に係る照明器具の応用例である複写機の要部構造を示す断面図。
【図6】 (a)は本発明の蛍光ランプの一実施形態の構造を示す一部切り欠き断面図、 (b)は一部拡大断面図。
【図7】本発明に係る照明器具の他の実施形態の構造を示す側面図。
【図8】 (a), (b), (c)は本発明の蛍光ランプの他の変形形態の構造を示す斜視図。
【図9】本発明に係る照明器具のさらに他の実施形態の概略構造を示す断面図。
【図10】本発明に係る白熱電球の他の実施形態の構造を示す透視図。
【符号の説明】
1……基体
2,9a, 28a……保護膜(下地槽)
3,9b……光触媒膜
4,10,24,45……透光性気密容器(発光管,ガラスバルブ)
9,14,28,43,46……光触媒系膜(保護膜−光触媒膜)
33……照明器具本体
39……光源
41……反射板
42……透光性カバー

Claims (16)

  1. 膜形成面を有する基体と;
    前記膜形成面に設けられたTiO 2 Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分、 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO とからなる複合成分または TiO 2 SiO 2 Al 2 O 3 もしくは ZnO からなる複合成分から成る複合系の保護膜と;
    保護膜面上に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする光触媒体。
  2. 光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2を主体として形成されたことを特徴とする請求項記載の光触媒体。
  3. 基体がソーダライムガラス製であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光触媒体。
  4. 少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な光透過性を有するバルブと;
    バルブ内に封装された発光フィラメントと;
    バルブ内の発光フィラメントの両端にそれぞれ一端が接続されるとともに他端がバルブ外に気密に導出された電気導入手段と;
    バルブ外周面に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする白熱電球。
  5. 少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な光透過性を有するバルブと;
    バルブ内に封装された発光フィラメントと;
    バルブ内の発光フィラメントの両端にそれぞれ一端が接続されるとともに他端がバルブ外に気密に導出された電気導入手段と;
    バルブ外周面に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする白熱電球。
  6. 光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2を主体として形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載の白熱電球。
  7. 内部に放電媒体が封入され、かつ少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な透光性気密容器と;
    透光性気密容器内に放電を生起させる電極手段と;
    透光性気密容器の外周面に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする放電ランプ。
  8. 内部に放電媒体が封入され、かつ少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な透光性気密容器と;
    透光性気密容器内に放電を生起させる電極手段と;
    透光性気密容器の外周面に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする放電ランプ。
  9. 光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2 を主体として形成されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載の放電ランプ。
  10. 透光性気密容器内壁面に蛍光体層が設けられていることを特徴とする請求項7ないし請求項9いずれか一記載の放電ランプ。
  11. 請求項4ないし請求項6記載の白熱電球および請求項7ないし請求項 10 記載の放電ランプのうちいずれか一記載の光源と;
    光源を装着する器具本体と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
  12. 光源と;
    光源に対して配設され少なくとも 410nm以下の波長の光が透過可能な透光性カバーと;
    光源からの光が到達する透光性カバーの少なくとも一部に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
  13. 光源と;
    光源に対して配設された反射体と;
    体の少なくとも一部に設けられたTiO 2 および SiO 2 のうち少なくとも一種と Al 2 O 3 ZrO 2 および ZnO からなる群のうち一種とからなる複合成分から成る複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
  14. 光源と;
    光源に対して配設され少なくとも 410nm 以下の波長の光が透過可能な透光性カバーと;
    光源からの光が到達する透光性カバーの少なくとも一部に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
  15. 光源と;
    光源に対して配設された反射体と;
    反射体の少なくとも一部に設けられた TiO 2 SiO 2 系からなる複合系の保護膜と;
    保護膜面に設けられた光触媒作用を有する金属酸化物を主体とした光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
  16. 光触媒膜が光触媒作用を有する TiO2 を主体として形成されたことを特徴とする請求項11ないし請求項15いずれか一記載の照明器具。
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