JP3772382B2 - 高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法 - Google Patents

高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法に関し、より詳しくは、明瞭な降伏棚を有して耐震性に優れるとともに曲げ性能にも優れた高強度低降伏比鉄筋用鋼材を生産性高く製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の高層化が進む今日、建築資材として従来よりも高い強度を有する高強度鉄筋に対する要望が大きい。しかし、鉄筋を高強度化すると降伏比(降伏強度/引張強度)が高くなり、耐震性能を含めた鉄筋の性能が低下することが知られている。
【0003】
巨大地震により大きな揺れが生じ、建物にかかる強度が降伏強度を超えた場合でも降伏比が低く降伏伸びの大きい鉄筋を用いておれば、塑性変形を起こして地震のエネルギーを吸収できるので、建物全体の倒壊を防ぐことが可能である。そのため、地震活動期に入ったといわれる現今、特に降伏強度が685MPa以上、降伏比が0.8以下、降伏伸びが1.4%以上で、且つ優れた曲げ性能を有して耐震性能に優れる高強度低降伏比鉄筋が求められている。なお「降伏伸び」とは、引張試験の経過中、試験片平行部が降伏し始めた時から、ほぼ一定の応力状態で歪が増加し、次に滑らかに応力が増加し始めるまでの標点間の長さの変化の標点距離に対する百分率である。又、上記のほぼ一定の応力状態で歪が増加する領域を「降伏棚」という。
【0004】
こうした高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法として、例えば特開平4−56727号公報には、VとTiを多量に添加した鋼を用いて圧延終了温度を900℃以下とする技術が提案されている。しかしながら、このような高価な元素を多量に添加する場合のコストアップは膨大である。更に、降伏比はその実施例からも明らかなように0.8を超えており、所望の高強度低降伏比鉄筋用鋼材を確実に製造できるものではない。
【0005】
特開昭62−86125号公報には、熱間仕上げ圧延に際して表層部のみに制御冷却を行い、次いで自己焼戻しさせて表層部が焼戻しマルテンサイト、内部がフェライト・パーライト組織又はベイナイト、あるいはこれらの混合組織からなる鋼材を製造する方法が提案されている。しかし、この強制冷却−自己焼戻しを用いた技術には、曲げ試験時に表層の焼戻しマルテンサイト層から割れが生じるという問題があった。
【0006】
特開平2−213415号公報には、特定の化学組成を有する鋼片を用いて圧延終了後に鋼材の表面を冷却し、次いで復熱させて、表層部に微細なフェライトと粒状炭化物(又は)層状炭化物を生成させるか、更にその後再度急冷して、表層部を内部より軟質とする高強度・高靭性棒鋼の製造方法が開示されている。しかし、この技術を用いた場合に得られる降伏強度は、その実施例からも明らかなように高々63kgf/mm2 (618MPa)である。したがって、前記公報に提案された技術を用いても、所望の高強度低降伏比鉄筋用鋼材が確実に得られるものではない。
【0007】
一方、本発明者らも特開平6−136441号公報及び特開平6−228635号公報で「高強度低降伏比鉄筋用棒鋼の製造方法」及び「高強度低降伏比鉄筋用鋼の製造方法」を提案した。このうち特開平6−136441号公報で提案した方法によれば高強度低降伏比鉄筋用棒鋼は得られるものの、表層部が焼戻しマルテンサイト組織であるためマルテンサイトへの変態時に変態歪に基づく曲がりが発生し、これを矯正しなければならないという問題があった。又、特開平6−228635号公報で提案した方法は、細径の高強度低降伏比鉄筋用棒鋼に対して有効ではあるが、太径、特に呼び名D51のような超太径の鉄筋用棒鋼に対しては、必ずしも所望の特性が得られるというものではなかった。更に、前記の提案による方法では、圧延仕上げ温度を低く管理するために圧延速度を下げなければならず、生産性が低くなってコストの上昇をきたすという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記現状に鑑みなされたもので、その目的は明瞭な降伏棚を発現して1.4%以上の降伏伸びを有し、降伏強度が685MPa以上であって、且つ降伏比が0.8以下である曲げ性能に優れた高強度低降伏比鉄筋用鋼材を、高い生産性の下に製造する方法を提供することにある。特に、上記特性を満足させることで耐震性能を大幅にアップし、先の兵庫県南部地震のような巨大地震が起こっても鉄筋自体が塑性変形を起こして地震のエネルギーを吸収し、建物全体の倒壊を防ぐことに寄与できるような、曲げ性能に優れた高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法を提供することを最大の目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために種々検討を重ねた結果、下記の知見を得た。
【0010】
▲1▼降伏棚を有し、且つ降伏伸びが1.4%以上ある鋼材を用いた鉄筋の耐震性は極めて優れる。
【0011】
▲2▼大きな降伏棚を発現して降伏伸びを大きくし、曲げ特性も良好とするには鉄筋用鋼材の組織、なかでも表面近傍の組織を制御すれば良い。
【0012】
▲3▼上記の表面近傍の組織制御のためには中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間で水冷して鋼材の表面を500〜700℃の温度域に急冷すれば良い。
【0013】
▲4▼上記▲3▼の処理に続いて圧延仕上げ温度を750〜1050℃の範囲に制御し、その後600〜400℃の温度域の温度まで3℃/sを超え10℃/sまでの冷却速度で冷却すれば効果が大きい。
【0014】
▲5▼上記の▲3▼の処理を行えば、容易に圧延仕上げ温度を制御できるので圧延速度を下げる必要がない。このため高い生産性が得られる。
【0015】
▲6▼兵庫県南部地震クラスの巨大地震の発生時にも鉄筋自体が塑性変形を起こして地震のエネルギーを吸収し、建物全体の倒壊を防ぐためには、少なくとも鉄筋には降伏強度が685MPa以上、降伏比が0.8以下、降伏伸びが1.4%以上の特性が必要である。
【0016】
▲7▼鋼の化学組成を調整し、熱間圧延と冷却の条件を制御すれば、呼び名D19以上の太径、なかでもD51のような超太径の鉄筋用鋼材に対しても、降伏強度685MPa以上、降伏比0.8以下、降伏伸び1.4%以上を付与できる。
【0017】
上記知見に基づく本発明は、下記に示した高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法を要旨とする。
【0018】
「圧延工程が粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延の各工程からなる高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法であって、重量%で、C:0.15〜0.50%、Si:0.15〜1.50%、Mn:0.30〜2.50%、Cr:0.02〜2.00%、V:0.01〜0.40%、Nb:0.005〜0.40%、N:0.003〜0.02%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、Mo:0〜0.50%、Al:0.08%以下、残部はFe及び不可避不純物からなる組成の鋼材を、1050〜1250℃の温度域に加熱して粗圧延を行い、次いで中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間で水冷して鋼材の表面を500〜700℃の温度域に急冷することを1〜5回繰り返しながら圧延し、更に、圧延仕上げ温度を750〜1050℃の範囲に、仕上げ圧延速度を6.4−0.0014・d2 m/s以上に制御して圧延を終了し、その後600〜400℃の温度域の温度まで3℃/sを超え10℃/sまでの冷却速度で加速冷却することを特徴とする高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法。但し、dは鉄筋用鋼材のmm単位の公称直径である。」
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の各要件について詳しく説明する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味する。
【0020】
(A)鋼材の化学組成
C:
Cは、強度を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.15%未満では所望の高強度が得られない。一方、0.50%を超えるとパーライト分率(面積率)の増加が起こり、そのため逆にフェライトの面積率が低くなって靭性と曲げ特性の劣化をきたすこととなる。したがって、Cの含有量を0.15〜0.50%とした。なお、Cの好ましい含有量は0.20〜0.50%である。
【0021】
Si:
Siは、鋼の脱酸の安定化及び強度の向上を図る作用がある。しかし、その含有量が、0.15%未満では所望の効果が得られず、1.50%を超えると靭性の低下を招くようになる。したがって、Siの含有量を0.15〜1.50%とした。
【0022】
Mn:
Mnは強度を向上させる作用を有する。しかし、その含有量が0.30%未満では所望の効果が得られず、2.50%を超えると焼入れ性が著しく高くなって所望の組織と機械的性質が得られなくなる。したがって、Mnの含有量を0.30〜2.50%とした。
【0023】
Cr:
Crは、Mn同様に強度を高める作用がある。更に、パーライトコロニーを細かくして延性を向上させる効果も有する。しかし、その含有量が0.02%未満では所望の効果が得られない。一方、2.00%を超えて含有させると、焼入れ性が著しく上昇して所望の組織と機械的性質が得られなくなる。したがって、Crの含有量を0.02〜2.00%とした。
【0024】
V:
Vは、オーステナイト相からフェライト相への変態の際に、その窒化物や炭窒化物がフェライト相に分散析出してフェライトを強化する。又、結晶粒の微細化を促進して降伏棚を発現させ、低い降伏比を維持しつつ強度を向上させる作用を有する。しかし、その含有量が0.01%未満では所望の効果が得られず、0.40%を超えて含有させても強度向上効果は飽和し、製造コストを上昇させるだけである。したがって、Vの含有量を0.01〜0.40%とした。
【0025】
Nb:
Nbは、その窒化物や炭窒化物が、オーステナイト結晶粒の粗大化を抑えるとともに析出強化に寄与する極めて重要な元素である。しかし、その含有量が0.005%未満では添加効果に乏しく、一方、0.40%を超えて含有させても強度向上効果は飽和し、製造コストを上昇させるだけである。このため、Nbの含有量を0.005〜0.40%とした。なお、Nbの好ましい含有量は、0.01〜0.10%である。
【0026】
N:
Nは、Nb及びVとフェライト中で窒化物や炭窒化物を形成し、強度を高めるとともに結晶粒を微細化して鋼を強靭化する作用がある。しかし、その含有量が0.003%未満では所望の効果が得られず、0.02%を超えると却って靭性の低下をもたらすようになる。したがって、Nの含有量を0.003〜0.02%とした。なお、Nの好ましい含有量は、0.005〜0.02%である。
【0027】
Cu:
Cuは添加しなくても良い。添加すれば強度を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Cuは0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.50%を超えると前記効果が飽和する。更に熱間加工性の劣化をも招くし、コストアップにもつながる。したがって、Cu含有量を0〜0.50%とした。
【0028】
Ni:
Niは添加しなくても良い。添加すれば強度を高める作用がある。前記効果を確実に得るには、Niは0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.50%を超えると前記効果が飽和し、コストアップにつながるばかりである。したがって、Ni含有量を0〜0.50%とした。
【0029】
Mo:
Moは添加しなくても良い。添加すれば強度を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.50%を超えると前記効果が飽和し、コストアップにつながるばかりである。したがって、Mo含有量を0〜0.50%とした。
【0030】
Al:
Alは、強化に有効なNbとVの窒化物や炭窒化物の形成を阻害して強度の低下をもたらし、特にその含有量が0.08%を超えると、強度の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量の上限を0.08%とした。
【0031】
(B)熱間圧延
(B−1)加熱
本発明においては、VとNbの析出硬化を利用して高強度化を達成する。このためには、VとNbを圧延前の加熱時にオーステナイト中へ充分に固溶させておかなければならない。そこで、前記の化学組成を有する鋼を1050℃以上に加熱する。一方、1250℃を超えて加熱すると、オーステナイト粒の粗大化が著しく所望の機械的性質が得られない。更に、圧延素材の表面酸化が著しくなって圧延時に表面割れを生ずることがある。したがって、本発明においては、加熱を1050〜1250℃の温度域に限定した。
【0032】
(B−2)中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間水冷
熱間連続圧延工程は、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延の3工程からなるが、このうち中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間において水冷を行い、鋼材の表面を500〜700℃の温度域に急冷することを1〜5回繰り返しながら圧延することが重要である。
【0033】
パス間水冷の1つの目的は圧延温度を強制的に下げることにあり、これによって仕上げ圧延温度の制御が容易になるため、圧延速度を下げることなく未再結晶域圧延を行うことができ、組織の微細化が可能となる。更に、圧延速度を下げる必要がないことは、高い生産性の下での製品製造につながる。
【0034】
パス間水冷のもう1つの目的は、中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間で水冷して鋼材の表面をAr1点を下回る700℃以下に急冷してオーステナイトからフェライトとパーライトに変態させる処理と、鋼材内部の保有熱により復熱させてフェライト・パーライトからオーステナイトへ逆変態させる処理を繰り返すことにより、最終的な鋼材の組織を微細なフェライト・パーライト組織にすることである。前記の処理によって鋼材の表面を微細なフェライト・パーライト組織にすることで、鋼材の降伏伸びを大きくし、曲げ特性も良好とすることが可能となる。
【0035】
パス間水冷した場合の鋼材表面温度が700℃を上回る場合には、オーステナイトからフェライトとパーライトへの変態が充分起こらないので所望の組織が得られない。鋼材表面温度が500℃を下回る場合には、鋼材内部の保有熱による復熱による再加熱が充分でないためフェライト・パーライトからオーステナイトへの逆変態が不十分となって、やはり所望の組織が得られない。更にこの場合は圧延機にかかる負荷が大きなものとなってしまう。したがって、前記のパス間水冷を行う場合に鋼材の表面を急冷する温度は、500〜700℃の温度域としなければならない。
【0036】
前記したパス間水冷を1回以上行うことにより、鋼材表面を微細なフェライト・パーライト組織にすることが可能であるが、6回以上繰り返してもフェライト・パーライト組織を微細化する効果が飽和する。したがって、パス間水冷は1〜5回繰り返すこととした。
【0037】
ところで、パス間水冷する「鋼材表面」は、単に鋼材の表面に留まらず、鋼材表面から半径比で0.1の深さの部位までであっても良い。パス間水冷によって500〜700℃の温度域に急冷される部位が前記深さまでの場合には、所謂「表面部」の組織が微細となって、降伏強度685MPa以上、降伏比0.8以下、降伏伸び1.4%以上という所望の特性を付与することができるためである。これに対して、前記深さが鋼材表面から半径比で0.1の深さを超えると、内部保有熱量が小さくなるため復熱による再加熱が充分起こらなくなって所望の組織が得られなくなるとともに、急冷後の圧延時に変形抵抗が大きくなって圧延機に過度の負荷がかかってしまう。
【0038】
(B−3)圧延仕上げ温度
結晶粒微細化のためには圧延仕上げ温度を低くするほど効果があるが、750℃を下回ると圧延機に対する負荷が過大となることに加えて鋼材に表面割れが生じるようになる。一方、1050℃を超えると結晶粒が粗大化して所望の微細な組織が得られなくなる。このため、圧延仕上げ温度を750〜1050℃の範囲とした。なお、この圧延仕上げ温度は、被圧延鋼材自身の復熱及び圧延時の加工発熱によって確保できる。
【0039】
(B−4)仕上げ圧延速度
本発明者らの詳細な調査によると、通常の方法で丸鋼及び異形棒鋼を圧延した場合の仕上げ圧延速度の下限値(v)は、dを鋼材のmm単位の公称直径とした時、v=6.4−0.0014d2 m/sとなる。本発明においては、パス間水冷するので仕上げ圧延温度の制御は容易である。そこで、通常の圧延の場合の仕上げ圧延速度の下限値を少なくとも維持して、高い生産性を確保するため、本発明では仕上げ圧延速度を前記vの値以上に規定する。
【0040】
(C)圧延後の加速冷却
熱間圧延終了後は、フェライト変態を抑制して圧延後に放冷した場合よりも一層微細なフェライト・パーライト組織とするために、直ちに冷却速度を制御して400〜600℃の温度域の温度まで加速冷却することが必要である。この加速冷却の冷却速度が3℃/s以下の場合には、所望の微細なフェライト・パーライト組織が得られない。一方、10℃/sを超える場合にはベイナイトやマルテンサイトといった所謂「低温変態組織」となってしまって、所望の機械的性質を得ることができない。したがって、加速冷却の冷却速度は3℃/sを超え10℃/sまでとしなければならない。
【0041】
加速冷却を終了する温度が600℃を超える場合には、たとえ3℃/sを超え10℃/sまでの冷却速度で加速冷却しても所望の組織とならない。そのため、所望の機械的性質が得られない。一方、加速冷却する温度が400℃を下回れば、鋼材の内部まで焼きの入った組織となって、やはり所望の機械的性質が得られなくなる場合がある。したがって、3℃/sを超え10℃/sまでの冷却速度で加速冷却する温度を、600〜400℃の温度域の温度とした。この加速冷却の後は放冷すれば良い。なお、ここでいう冷却速度とは鋼材表面における冷却速度のことである。
【0042】
上記の(A)に示した化学組成を有する鋼材に、上記の(B)及び(C)に示した条件によって制御圧延・加速冷却を行うことにより、降伏強度685MPa以上、降伏比0.8以下で、降伏棚を発現して1.4%以上の降伏伸びを有する高強度低降伏比鉄筋用鋼材を製造することができる。
【0043】
ところで、高強度低降伏比鉄筋用鋼材に所望の機械的性質を安定して付与するためには、鋼材の組織(フェライト・パーライト組織)におけるフェライトの粒径と面積率を制御することが好ましい。すなわち、鋼材に所望の強度、伸び及び曲げ特性を安定して付与するためには、鋼材の組織をフェライト・パーライト組織、それもフェライトの最大粒径が30μm以下で、且つ平均粒径が20μm以下で、更に前記サイズのフェライトの面積率が35〜65%であるフェライト・パーライト組織とすれば良い。
【0044】
鋼材が前記した所定の化学組成を有し、その組織が最大粒径30μm以下で平均粒径が20μm以下のフェライトを面積率で35〜65%有するフェライト・パーライト組織である場合に、鋼材は大きな降伏棚を発現して1.4%以上の降伏伸びが極めて安定して得られるようになり、高強度で曲げ特性も良好となるからである。
【0045】
又、鉄筋用鋼材の強度上昇及び太径化によって、その破断伸びは低下する傾向にある。一般に、破断伸びは前記した降伏伸びや曲げ特性と相関を有する。更に、破断伸びが小さいと歪エネルギーの吸収が小さいため、地震などによって過大な歪エネルギーが加わると破断を生じ易くなる。このため、耐震性の観点からは、破断伸びも大きければ大きいほど良い。したがって、鉄筋としての用途を考えた場合、破断伸びとして、従来のJISSD345〜SD490と同等の破断伸びを確保することが好ましい。
【0046】
【実施例】
表1〜4に示す化学組成の鋼を通常の方法によって溶製した。表1〜4において、鋼A〜Sは本発明の対象鋼(以下、「本発明鋼」という)、鋼a〜lは成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較鋼である。
【0047】
【表1】
Figure 0003772382
【0048】
【表2】
Figure 0003772382
【0049】
【表3】
Figure 0003772382
【0050】
【表4】
Figure 0003772382
【0051】
次いで、これらの鋼を通常の方法によって鋼片となし、表5〜10に示す条件で圧延と冷却を行い、JIS G 3112に規定される呼び名D32とD51の鉄筋用棒鋼を製造した。なお、表5〜10におけるパス間水冷において、回数が1回の場合は仕上げ圧延列で、2〜5回の場合は中間圧延列と仕上げ圧延列でパス間水冷を行った。又、圧延終了後の加速冷却は500℃まで行い、以後は放冷した。
【0052】
【表5】
Figure 0003772382
【0053】
【表6】
Figure 0003772382
【0054】
【表7】
Figure 0003772382
【0055】
【表8】
Figure 0003772382
【0056】
【表9】
Figure 0003772382
【0057】
【表10】
Figure 0003772382
【0058】
こうして得られた棒鋼について実体引張試験と実体曲げ試験を行った。又、組織観察用試験片を切り出して組織観察を行った。
【0059】
試験結果を表11〜16に示す。組織は、D32の場合は表面から8mmの部位を、又、D51の場合は表面から12mmの部位を、それぞれ光学顕微鏡で観察して判定したものである。上記の表におけるF はフェライト、P はパーライト、B はベイナイトをそれぞれ意味する。引張試験における降伏伸びは応力−歪曲線から求めた。曲げ特性は、D32の場合は曲げ半径30mmで、D51の場合は曲げ半径50mmで、それぞれ90度曲げた後の割れ発生の有無で評価した。表において○は割れ発生無し、×は割れ発生有りを意味する。
【0060】
表11〜16の結果から、本発明で規定する化学組成を有し、且つ本発明で規定する条件で「熱間圧延−冷却」の処理を施された鋼材にあっては、仕上げ圧延速度を大きくしても、又、呼び名D51のような超太径であっても、所定の降伏強度、降伏伸び及び降伏比が得られ、更に曲げ特性も優れていることが明らかである。
【0061】
【表11】
Figure 0003772382
【0062】
【表12】
Figure 0003772382
【0063】
【表13】
Figure 0003772382
【0064】
【表14】
Figure 0003772382
【0065】
【表15】
Figure 0003772382
【0066】
【表16】
Figure 0003772382
【0067】
【発明の効果】
本発明の高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法によれば、比較的容易に低コストで、降伏強度685MPa以上、降伏比0.8以下、降伏伸び1.4%以上の機械的性質を有する高強度低降伏比鉄筋用鋼材を製造することが可能で、超高層ビルの鉄筋コンクリート用として使用される場合にも安全性の高い耐震性能に優れた構造用鉄筋を提供することができる。

Claims (1)

  1. 圧延工程が粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延の各工程からなる高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法であって、重量%で、C:0.15〜0.50%、Si:0.15〜1.50%、Mn:0.30〜2.50%、Cr:0.02〜2.00%、V:0.01〜0.40%、Nb:0.005〜0.40%、N:0.003〜0.02%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、Mo:0〜0.50%、Al:0.08%以下、残部はFe及び不可避不純物からなる組成の鋼材を、1050〜1250℃の温度域に加熱して粗圧延を行い、次いで中間圧延及び/又は仕上げ圧延のパス間で水冷して鋼材の表面を500〜700℃の温度域に急冷することを1〜5回繰り返しながら圧延し、更に、圧延仕上げ温度を750〜1050℃の範囲に、仕上げ圧延速度を6.4−0.0014・d2 m/s以上に制御して圧延を終了し、その後600〜400℃の温度域の温度まで3℃/sを超え10℃/sまでの冷却速度で加速冷却することを特徴とする高強度低降伏比鉄筋用鋼材の製造方法。但し、dは鉄筋用鋼材のmm単位の公称直径である。
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