JP3772250B2 - 場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法及び除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、地盤安定液(以下、単に安定液という。)を使用するアースドリル工法などにより地盤を削孔して場所打ちコンクリート杭を施工する場合に、削孔により発生する堀屑やスライム(以下、まとめてスライムという。)を除去処理する技術の分野に属し、特には杭孔の軸中間部に形成される拡径部に沈降したスライムを除去処理する方法及び除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
場所打ちコンクリート杭の施工に際し、削孔した杭孔の先端(杭底部)にスライムが沈降していると、コンクリート打設時にスライムがコンクリートと混ざってコンクリートの強度を低下させたり、杭の先端支持力が損なわれるおそれがある。そのため従来一般にスライムの除去処理が念入りに行われている。
【0003】
場所打ちコンクリート杭の施工におけるスライム処理は、
(1)削孔完了後に、底浚い用バケットを使用し、底浚いとして行う「第一次スライム処理」と、
(2)鉄筋篭を挿入した後、コンクリート打設の前にトレミー管や水中ポンプ、エアーリフトなどを使用してスライムを孔外へ吸引除去する「第二次スライム処理」とを行うことが多い。特開昭50−100806号、特公昭55−7495号、特開平1−190820号、特公平4−80167号、特公平6−13769号公報などにそれぞれ第二次スライム処理の方法及び装置が開示されている。
【0007】
従来、杭の支持性能を増大させる目的で、軸中間に拡径部(図1及び図2のY部を参照)を有する場所打ちコンクリート杭を施工することも行われている。軸中間に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭は、拡径部と地盤との支圧効果で杭の支持性能を高められる。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
削孔により発生し安定液中に浮遊するスライムは、杭先端に沈降するばかりでなく、軸中間の拡径部にも沈降する。したがって、軸中間の拡径部に沈降したスライムも除去しないと、杭としての支持力及び品質を十分に確保できない。しかし、軸中間の拡径部に沈降したスライムの除去は、第二次スライム処理の一環として鉄筋篭を挿入した後コンクリート打設の前に行うことになるので、既往技術では鉄筋篭の存在が邪魔になって(干渉して)不可能に近いのが実情である。
【0009】
本発明の目的は、鉄筋篭の存在が何等支障にならず、むしろ鉄筋篭の存在を積極的に利用して、軸中間の拡径部に沈降したスライムを、第二次スライム処理の一環としてきれいに除去する、場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法及び除去装置を提供し、健全な杭の施工に寄与することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明に係る場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法は、
杭孔を掘削し、第一次のスライム処理を行い、鉄筋篭の建て込みを行うに際して、同鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置の鉄筋へ、垂直面内で旋回自在なガイド管を備えた取り付け具を取り付け、前記鉄筋篭の内径部をほぼ水平な配置で昇降自在なドーナツ管をワイヤーで吊り支持させ、前記ドーナツ管の周方向に回転可能なスイベル型の継手で放射状配置に複数接続した噴射管を前記ガイド管へ抜き差し可能に通し、前記ドーナツ管に地上のポンプから安定液を供給するホースを連結してなるスライム除去装置を予め設置しておき、
前記鉄筋篭の建て込み後、杭底部の第二次スライム処理の前に、前記ワイヤーを操作してドーナツ管を昇降させることにより前記噴射管を軸中間の拡径部へ進入させ、前記ポンプから安定液を供給し噴射管から安定液を噴射させて拡径部に溜まったスライムを噴き落とすこと、
その後に杭底部の第二次スライム処理を行うこと、
前記杭底部の第二次スライム処理を終了後に、ワイヤーを引き上げて取り付け具を除くスライム除去装置を地上に回収することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明に係る場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去装置は、
鉄筋篭の内径部をほぼ水平な配置で昇降自在にワイヤーで吊り支持されるドーナツ管と、
前記ドーナツ管の周方向に回転可能なスイベル型の継手で放射状配置に複数接続された噴射管と、
前記噴射管を抜き差し可能に通すガイド管を垂直面内で旋回自在に備え、鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置の鉄筋へ取り付けられる取り付け具と、
前記ドーナツ管に地上のポンプから安定液を供給するように連結したホースとから成り、杭孔へ設置する鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置に予め取り付けられることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施形態及び実施例】
請求項1記載の発明に係る場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法は、図1以下に実施形態を示した、請求項2記載の発明に係るスライム除去装置により実施される。
【0016】
先ず、図1A〜Iは、軸中間に拡径部Yを有する場所打ちコンクリート杭の施工手順と、スライム除去の段階とを順に概念的に示している。
【0017】
図1Aは杭孔1の掘削を行った後の底浚いによる第一次スライム処理の段階を示す。図1B、C、Dは鉄筋篭2の挿入工程を示し、併せて同鉄筋篭2に本発明に係るスライム除去装置3が付設されている状況を示している。符号10は吊り具を示す。図1E、Fはスライム除去装置3の稼働状況を示し、図1Gはトレミー管15を挿入して第二次スライム処理を行う段階を示している。符号7は安定液供給用ポンプを示す。図1Hは本発明のスライム除去装置3を地上へ回収する状況を示し、図1Iはトレミー管15を使用してコンクリート4の打設を行う状況を示している。
【0018】
請求項1記載の発明に係る場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法は、杭孔1の掘削を完成した後に、第一次のスライム処理を行い、次いで鉄筋篭2の建て込みを行うに際して、同鉄筋篭2における軸中間の拡径部Yと対応する高さ位置にスライム除去装置3を予め設置することに始まる。前記鉄筋篭2の建て込み後、杭孔底部の第二次スライム処理の時(但し、時期については少なくとも第二次スライム処理の前、または同時期)に、前記スライム除去装置3により拡径部Yに溜まったスライムを噴き落とし、杭孔底部の第二次スライム処理を行うことを特徴とする。
【0019】
杭孔1に建て込まれた鉄筋篭2の存在に邪魔されることなくスライム除去装置3を効率的に働かせる工夫として、スライム除去装置3は、図2〜図5に第一の実施形態を示したように構成して、使用される。
【0020】
即ち、杭孔1における軸中間の前記拡径部Yに向かって進入可能な安定液噴射管5と、同噴射管5に接続した安定液供給ホース6及び同ホース6が地上において接続された安定液供給用ポンプ7などを含む安定液の加圧供給手段と、前記安定液噴射管5を地上からの操作で前記拡径部Yに向かって進入させ又は退避させる操作手段とでスライム除去装置3が構成され、これを前記鉄筋篭2において杭孔1の軸中間に形成された拡径部Yと対応する高さ位置へ付設して使用される。
【0021】
スライム除去装置3の構成について更に詳しく説明する。スライム除去装置3は、杭孔底部の第二次スライム処理を終了後に地上に回収することを前提として、鉄筋篭2の内径部の周方向にほぼ水平な配置で、環状のドーナツ管8が鉄筋篭2に沿って上下動が可能に配置される。前記の操作手段であるワイヤー9の下端が前記ドーナツ管8に連結され、このワイヤー9を介してドーナツ管8は地上の吊り具10によって吊り支持されている。前述の安定液供給ホース6はドーナツ管8に接続されている。
【0022】
前記安定液噴射管5は、前記環状のドーナツ管8の周方向をほぼ等分した位置毎に放射状の配置で複数設けられ、その基端部がドーナツ管8と接続されている(図4)。したがって、安定液供給ホース6を通じて地上の安定液供給用ポンプ7から加圧供給される安定液は、各個の安定液噴射管5…へ等分に供給される。
【0023】
前記安定液噴射管5とドーナツ管8との接続部は、回転可能なスイベル型の継手11で接続されている(図4)。また、各安定液噴射管5…はそれぞれ、図5のように、鉄筋篭2へ取り付け具14で直接取り付けた、水平軸12aにより垂直面内で旋回自在なガイド管12の中へ抜き差し可能に通されている。
【0024】
従って、前記操作手段であるワイヤー9により吊った前記ドーナツ管8を地上操作として上下方向へ移動させると、前記の各安定液噴射管5は、前記ガイド管12に半拘束の状態で、前記水平軸12aを中心として垂直面内を上下方向に旋回動作し、図3及び図5中の符号(イ)のように杭孔1中へ鉄筋篭2と共に挿入可能な収納姿勢と、及び同図中の符号(ロ)のように杭孔の軸中間の拡径部Yの孔壁近傍の位置まで進入する展開姿勢とに変化する。
【0025】
よって、安定液噴射管5の先端が拡径部Yの孔壁近傍の位置まで進入する展開姿勢(図3の実線5(ロ))を保持して、前記安定液の加圧供給手段を働かせ、安定液噴射管5に安定液を加圧供給すると、各噴射管5…より安定液が図3及び図4中に例示した噴流17の態様に噴射され、軸中間の拡径部Yの底部に沈降したスライム13を噴き落とし除去することができる。
【0026】
軸中間の拡径部Yに対するスライム除去の作業終了後に、前記のワイヤー9及び吊り具10を通じてドーナツ管8を引き上げると、各安定液供給管5はそれぞれガイド管12からズルズルと引き抜かれつつ上昇して、遂には図1Hのように地上に回収され、転用することができる。
【0027】
第二次スライム除去を行った後に、コンクリート打設を進めることは、上述した通りである。
【0029】
【本発明が奏する効果】
請求項1に記載した発明に係る場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法は、請求項2に記載した発明に係るスライム除去装置を使用することにより、鉄筋篭の存在が何等支障にならず、むしろ鉄筋篭の存在を積極的に利用して、軸中間の拡径部分に沈降したスライムを、第二次スライム処理の一環としてきれいに除去することができる。よって健全な場所打ちコンクリート杭の施工に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 A〜Iは本発明に係る場所打ちコンクリート杭の施工手順と、軸中間の拡径部に対するスライム除去処理の段階とを工程順に概念的に示した説明図である。
【図2】 スライム除去装置の稼働状況を示した立面図である。
【図3】 スライム除去装置の稼働状況を更に詳しく拡大して示した断面図である。
【図4】 安定液噴射管によるスライム除去の状況を示した平面図である。
【図5】 安定液噴射管の収納姿勢と展開姿勢の動作説明図である。
Claims (2)
- 杭孔を掘削し、第一次のスライム処理を行い、鉄筋篭の建て込みを行うに際して、同鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置の鉄筋へ、垂直面内で旋回自在なガイド管を備えた取り付け具を取り付け、前記鉄筋篭の内径部をほぼ水平な配置で昇降自在なドーナツ管をワイヤーで吊り支持させ、前記ドーナツ管の周方向に回転可能なスイベル型の継手で放射状配置に複数接続した噴射管を前記ガイド管へ抜き差し可能に通し、前記ドーナツ管に地上のポンプから安定液を供給するホースを連結してなるスライム除去装置を予め設置しておき、
前記鉄筋篭の建て込み後、杭底部の第二次スライム処理の前に、前記ワイヤーを操作してドーナツ管を昇降させることにより前記噴射管を軸中間の拡径部へ進入させ、前記ポンプから安定液を供給し噴射管から安定液を噴射させて拡径部に溜まったスライムを噴き落とすこと、
その後に杭底部の第二次スライム処理を行うこと、
前記杭底部の第二次スライム処理を終了後に、ワイヤーを引き上げて取り付け具を除くスライム除去装置を地上に回収することを特徴とする、場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去方法。 - 鉄筋篭の内径部をほぼ水平な配置で昇降自在にワイヤーで吊り支持されるドーナツ管と、
前記ドーナツ管の周方向に回転可能なスイベル型の継手で放射状配置に複数接続された噴射管と、
前記噴射管を抜き差し可能に通すガイド管を垂直面内で旋回自在に備え、鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置の鉄筋へ取り付けられる取り付け具と、
前記ドーナツ管に地上のポンプから安定液を供給するように連結されたホースとから成り、杭孔へ設置する鉄筋篭における軸中間の拡径部と対応する高さ位置に予め取り付けられることを特徴とする、場所打ちコンクリート杭の軸中間の拡径部に対するスライム除去装置。
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