JP3772236B2 - 耐焼付用部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な耐焼付用部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐焼付性が要求される部材(以下「耐焼付用部材」)には、ボルト・ナット等のネジ用部材のように実質的に潤滑油の存在しない条件下で使用されるものと、内燃機関のピストン等のように潤滑油の存在下で使用されるものとに大別される。とりわけ、ネジ用部材のように実質的に潤滑油の存在しない条件下で使用されるものについては、過酷な条件下で使用されるものが多く、きわめて高い耐焼付性が要求される。
【0003】
例えば、水道本管、ガス導管等の土中埋設管のジョイントに使用されるボルト・ナットは、非常に高いトルクでの締め付けが何度も繰り返して行われる。しかも、水密性保持のために使用されるゴム、パッキン等とともに締め込む必要があることから、締め込み長さが長くなる傾向にある。このようなボルト・ナットにあっては、特に焼き付き現象が発生しやすい。すなわち、ボルトとナットの接触面の一部で融着が発生し、最終的には両部材が部分的に接合・固定化された状態になる。従って、いったん焼き付き現象が発生すれば効果的な締め付けが不可能となるばかりでなく、これを緩めることもできなくなり、最終的にはボルトを切断せざるを得なくなる。このようなことから、これらネジ用部材の焼き付き現象は、水道工事、ガス工事等の工事中断の原因になり、工期の遅れ、工費の増大等も招く結果となっている。
【0004】
これに関し、ネジ用部材の耐焼付性を高める種々の方法が提案あるいは実用化されている。例えば、ボルト・ナットの材質自体を改良する方法、ボルト・ナットの表面を窒化処理によって表面硬度を高くする方法等がある。また、ボルト・ナットの表面を湿式コートにより被覆する方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法でも、特に繰り返し締め付けに耐えられるだけの十分な耐焼付性を得ることはできておらず、焼き付き現象を確実に回避することは困難である。
【0006】
また、湿式コートによる方法では、使用時において、現場の土砂がボルト・ナットに付着しやすく、締め付け作業の妨げとなることもある。
【0007】
さらに、湿式コートされたボルト・ナットが土中に埋設される場合は、そのコート中の成分が土中に溶出して土壌汚染・水質汚染を招くおそれがあり、これらも有効に防止する必要がある。
【0008】
従って、本発明は、優れた耐焼付性とともに耐汚染性、安全性等にも優れた部材、特にネジ用部材を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定方法により基材上に金属質皮膜を形成することにより、上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の耐焼付用部材及びその製造方法に係るものである。
【0011】
1.金属有機化合物を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で熱処理することを特徴とする耐焼付用部材の製造方法。
【0012】
2.上記の製造方法により得られる耐焼付用部材。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の耐焼付用部材の製造方法は、金属有機化合物を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で熱処理することを特徴とする。すなわち、本発明では、金属有機化合物の熱分解による皮膜(以下「金属質皮膜」という)を基材上に形成するものである。
【0014】
1 コーティング組成物
(1)金属有機化合物
金属有機化合物としては、比較的低温(400℃以下)で熱分解して金属質皮膜を形成するものであれば特に限定されないが、本発明では特にカルボン酸塩、メルカプチド化合物及びアミン化合物の少なくとも1種が好ましい。また、本発明では、キレート化合物の少なくとも1種も好ましく用いることができる。
【0015】
カルボン酸塩としては、例えばヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、デカン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、オレイン酸塩等の脂肪族カルボン酸塩、安息香酸塩等の炭素環式カルボン酸塩等が挙げられる。メルカプチド化合物としては、例えば金メルカプチド化合物等が挙げられる。キレート化合物としては、例えば金属アセチルアセトネート等が挙げられる。
【0016】
本発明では、これら金属有機化合物の中でもカルボン酸塩が特に好ましく、このうち炭素数6〜18のカルボン酸の塩(特に脂肪族モノカルボン酸塩)が最も好ましい。カルボン酸塩を用いることにより、より耐焼付性に優れた金属質皮膜を有効に形成させることができる。特に上記炭素数のカルボン酸塩は、ネジ用部材としてより効果的である。
【0017】
金属有機化合物は1種又は2種以上で用いることができ、所望の金属成分の種類等に応じて適宜使用することができる。金属成分としては、最終製品の用途等に応じて適宜選べば良く、例えばAu、Ag、Pt、Rh、Cu、Ru、In、Sn、Ni、Cr、Zn等の中から所望の金属質皮膜に応じて1種又は2種以上を適宜採用すれば良い。特に、ネジ用部材として用いる場合は、例えばAg、Cu等が好ましい。
【0018】
例えば、銀を金属成分とする場合は、金属有機化合物としてミリスチン酸銀、2−エチルヘキサン酸銀、安息香酸銀、デカン酸銀等の銀塩を用いれば良い。また、例えば、銅を金属成分とする場合は、ヘキサン酸銅、パルミチン酸銅等の銅塩を使用できる。スズを金属成分とする場合は、2−エチルヘキサン酸スズ等のスズ塩を用いることができる。鉛を金属成分とする場合は、ナフテン酸鉛等の鉛塩を用いることができる。その他にも、金属成分の種類に応じて、メルカプチド化合物、アミン化合物、あるいはキレート化合物を適宜採用すれば良い。
【0019】
また、本発明では、これら金属有機化合物を2種以上併用する場合には、当該2種類以上の金属成分からなる合金皮膜を形成することも可能である。例えば、ステアリン酸銀とナフテン酸鉛を併用することによって銀−鉛合金からなる合金皮膜を形成することができる。
【0020】
また、本発明では、金属有機化合物を予め熱処理することにより金属含有量を高めた熱処理物を用いることもできる。これにより、金属成分の分散性をさらに高めることができ、組成的に均一な金属質皮膜をより確実に得ることができる。熱処理物の金属含有量は、金属有機化合物の種類等によって適宜変更できるが、通常40重量%以上、特に60重量%以上とすることが好ましい。
【0021】
(2)無機フィラー
本発明では、必要に応じて無機フィラーをコーティング組成物中に配合することもできる。特に、本発明の耐焼付用部材をネジ用部材として用いる場合は、無機フィラーを配合することが好ましい。
【0022】
無機フィラーとしては、上記の金属質皮膜を基材上に形成できる限り特に限定されず、最終製品の用途、用いる金属成分、基材の材質等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、Al2O3、MgO、TiO2、ZrO2、ThO2、Fe2O3、SiO2、Cr2O3、CeO2等の酸化物、SiC、B4C、Cr3C2、TaC、WC、ZrC2、TiC等の炭化物、BN(hBN、cBN等を含む)等の窒化物、Cr3B2等のホウ化物、炭素(ダイヤモンド、グラファイト等を含む)のほか、カオリナイト、マイカ、タルク、ガラス等の無機材料を用いることができる。これらは単独又は2種以上で用いることができる。特に、ネジ用部材として用いる場合は、Al2O3、BN、マイカ、タルク及びカオリナイトの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0023】
また、これら無機フィラーの平均粒径は、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良く、通常は1〜50μm程度、好ましくは1〜10μmとすれば良い。これら粉末の粒子形状は、特に限定されず、球状、繊維状、扁平状、不定形等のいずれであっても良い。
【0024】
無機フィラーと金属有機化合物の配合割合は、金属有機化合物100重量部に対して、無機フィラー1〜50重量部程度、好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜10重量部とすれば良い。無機フィラーの配合量が多すぎる場合は、所定の金属質皮膜が形成されないことがある。
【0025】
(3)その他の成分
上記コーティング組成物では、これら無機フィラー及び金属有機化合物のほか、必要に応じて溶媒、界面活性剤、密着剤等を適宜配合することができる。
【0026】
溶媒としては、無機フィラー・金属有機化合物を均一に分散できる限り特に制限されない。例えば、ベンゼン、n−ヘキサン、トルエン等の炭化水素類のほか、テレピン油、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のテルペン類、ケロシン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール等のほか、各種の高沸点溶媒等も適宜用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。溶媒の使用量は、金属有機化合物100重量部に対して、通常10〜200重量部程度とすれば良い。
【0027】
界面活性剤としては、用いる無機フィラー、金属有機化合物、溶媒等の種類に応じて適宜決定すれば良い。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル等の非イオン性界面活性剤、アルキルイミダゾール等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、金属有機化合物100重量部に対して、通常1〜20重量部程度とすれば良い。
【0028】
密着剤としては、本発明の金属質皮膜と基材との密着性を維持又は向上できるものであれば特に制限されないが、好ましくはロジン酸塩のほか、セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類が使用できる。密着剤の使用量は、金属有機化合物100重量部に対して、通常5〜60重量部程度とすれば良い。
【0029】
2 基材
本発明で用いる基材は、上記所定の金属質皮膜が形成できる限り特に限定されず、金属・合金、セラミックス、プラスチック等又はこれらの複合材料のいずれにも適用できる。これらの基材自体は、公知のもの又は市販品を用いることができる。本発明では、特に、鉄、鉄系合金、チタン、チタン系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
殊に、ネジ用部材として用いる場合は、基材として鉄又は鉄系合金を用いることが好ましい。鉄系合金としては、例えばステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデン鋼等を好適に使用することができる。従って、ネジ用部材の場合は、例えばステンレス鋼製のボルト又はナットを基材としてそのまま用いることができる。
【0031】
3 耐焼付用部材の製造
本発明の製造方法は、前記のように、金属有機化合物を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で熱処理することを特徴とする。
【0032】
本発明の製造方法では、まず、これら各成分を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成する。塗膜の形成方法は、特に限定されず、スピンコート、ブラシ、スプレー、シルクスクリーン印刷、ディッピング、ロール等の公知の塗装方法により塗布して塗膜を形成すれば良い。塗膜の厚さは、最終的に形成される金属質皮膜の厚さに応じて適宜設定すれば良い。
【0033】
また、上記塗膜は、少なくとも耐焼付性が要求される部分に形成すれば良い。従って、例えばネジ用部材にあっては、上記コーティング組成物からなる塗膜を少なくともネジ山表面上の一部又は全部に形成すれば良い。
【0034】
本発明の製造方法では、基材上にコーティング組成物による塗膜を形成した後、必要に応じて乾燥を行うこともできる。乾燥温度は、塗膜の性状等に応じて適宜設定すれば良い。例えば、風乾又は自然放置しても良く、あるいは150℃以下(好ましくは100〜150℃)で加熱乾燥しても良い。乾燥後、必要に応じてさらに上記組成物による塗膜を積層することもできる。
【0035】
次いで、熱処理を行う。熱処理により、塗膜中の金属有機化合物を熱分解させて金属質皮膜を形成する。熱処理温度は、用いる金属有機化合物の熱分解開始温度以上であれば良く、通常は400℃以下、特に300℃以下の範囲内で設定することができる。また、熱処理時間は、熱処理温度等に応じて所定の金属質皮膜が形成できるように適宜設定すれば良い。
【0036】
このように、本発明では、比較的低温で金属質皮膜を形成することができるので、基材を変質させることなくその本来の特性を十分に活かすことが可能である。例えば、ネジ用部材として基材をステンレス鋼製ボルト又はナットを用いる場合は、熱処理温度を400℃以下という比較的低温に抑えることによってその本来の特性である優れた耐食性、機械的特性等を維持することができる。
【0037】
熱処理雰囲気は、用いる金属有機化合物の種類等によって適宜変更すれば良く、必要に応じて酸化性雰囲気、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気又はこれらを組み合わせることができる。例えば、最初に酸化性雰囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することもできる。
【0038】
熱処理した後は、常法に従って放冷又は急冷すれば良い。なお、本発明では、その効果を損なわない範囲で金属有機化合物の一部が熱処理後において金属質皮膜中に残留していても良い。
【0039】
4 本発明の耐焼付用部材
本発明の耐焼付用部材は、好ましくは上記の製造方法によっても製造することができる。この部材は、耐焼付性が要求される用途に幅広く使用することができるが、特にネジ用部材として好適に用いることができる。
【0040】
ネジ用部材としては、例えばボルト・ナットのようにネジ山を有するネジ用部材において、ボルト及びナットの少なくとも一方のネジ山表面の一部又は全部に金属質皮膜を形成することにより優れた耐焼付性を発揮することができる。
【0041】
金属質皮膜の厚さは、基材の種類、要求される特性等に応じて適宜決定すれば良い。例えば、ネジ用部材として用いる場合は、通常20μm以下、好ましくは1〜10μmの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0042】
ボルトの形状も特に限定されず、例えば六角ボルト、六角穴付きボルト、ターンバックル、止めネジ、植込みボルト等の各種ボルトに適用できる。また、ナットの形状も特に限定されず、例えば六角ナット、四角ナット、袋ナット等の各種ナットに適用できる。ボルト・ナット以外にも、例えばワッシャー、タッピンネジ、ピン等の部材としても有用である。このように、本発明のネジ用部材は、水道本管、ガス導管、下水道管等の土中埋設管等のジョイントに好適に用いることができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の耐焼付用部材は、金属有機化合物を含むコーティング組成物の熱分解による金属質皮膜が基材上に形成されているので、優れた耐焼付性を発揮することができる。特に、実質的に潤滑剤が存在しない条件下で用いられる用途において優れた耐焼付性を発揮することができる。従って、例えば本発明の耐焼付用部材をネジ用部材として用いる場合には、締め付けを繰り返し実施しても容易に焼き付き現象が発生しない。
【0044】
また、湿式コートによる従来品とは異なり、耐汚染性に優れており、土砂、ほこり等が部材に付着しにくく、その結果として取扱い性、作業性等においても優れた効果を発揮することができる。
【0045】
さらに、本発明の耐焼付用部材では、金属質皮膜といういわば乾式コートを採用しているため、金属質皮膜自体からの金属成分等の溶出が抑制ないしは防止されるので、水質汚染、土壌汚染等の環境破壊のおそれもなく、安全性に優れている。また製造方法としても、金属有機化合物を熱分解するだけなので有毒物質の発生もなく、金属排水等の問題があるメッキ法よりも安全性に優れている。
【0046】
加えて、金属質皮膜が無機フィラーと金属成分から実質的に構成されていることから、耐熱性、耐久性等にも優れている。このため、高い安全性が要求される上水道、高温に晒される屋外、水分の多い土中、耐熱性が要求される化学プラント・工場、耐久性が必要な発電所等のあらゆる状況下で幅広く使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明の特徴とするところをより詳細に説明する。
【0048】
実施例1
金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0049】
金属有機化合物として、ミリスチン酸銀を熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱処理物100重量部を用い、これに無機フィラーとしてマイカ(平均粒径5μm)5重量部、溶媒としてテレピン油50重量部、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤5重量部、及び密着剤としてロジン酸銀50重量部を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物をステンレス鋼(SUS304)製ナット(径20mm)のナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを窒素雰囲気下300℃で熱処理して上記金属有機化合物の熱分解を行い、ネジ用部材を得た。
【0050】
実施例2
金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0051】
金属有機化合物としてミリスチン酸銀200重量部、無機フィラーとしてBN(平均粒径5μm)5重量部、溶媒としてトルエン100重量部、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤5重量部、及び密着剤としてロジン酸銀50重量部を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得た。
【0052】
実施例3
金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0053】
金属有機化合物として、ステアリン酸銀を熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱処理物100重量部を用い、これに無機フィラーとしてタルク(平均粒径5μm)5重量部、溶媒としてテレピン油50重量部、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤5重量部、及び密着剤としてエチルセルロース5重量部を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得た。
【0054】
実施例4
金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0055】
金属有機化合物として、パルミチン酸銀を熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱処理物100重量部に、溶媒としてトルエン50重量部を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得た。
【0056】
実施例5
金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0057】
溶媒としてトルエンの代わりにテレピン油を配合し、さらに金属有機化合物としてパルミチン酸銀の代わりにラウリン酸銀を配合したほかは、実施例4と同様にしてコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得た。
【0058】
実施例6
無機フィラーであるマイカを全く使用しないほかは、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得た。
【0059】
試験例1
実施例1〜6で得られたネジ用部材を用いてトルク試験を行った。トルク試験は、本発明の金属質皮膜が形成されていないボルト(材質は上記ナットと同じ)を用い、20kN・cmのトルクで計6回の繰り返し締め付けを実施した。その結果を表1〜2及び図1〜6にそれぞれ示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
比較のため、フッ素系潤滑剤により表面処理された従来品(比較1)、市販の化成皮膜品(比較2)及び無処理品(比較3)について、同様のトルク試験を行ったところ、比較1及び比較2については、締め付け3回目でカジリが発生し、4回目以降は締め付けすることも緩めることも不可能となった。比較1及び比較2の締め付け3回目までの結果を表3及び図7〜8にそれぞれ示す。また、比較3は、2回目以降は締め付けすることも緩めることも不可能となった。比較3の締め付け1回目までの結果を表3及び図9にそれぞれ示す。
【0063】
【表3】
【0064】
これらの結果からも明らかなように、比較1及び比較2では、締め付け2回目以降で既に軸力が低下していることから焼き付きが生じていることがわかる。また、無処理品である比較3は、1回しか締め付けすることができなかった。
【0065】
これに対し、各実施例に示すネジ用部材では、6回の繰り返し締め付けによってもほとんど軸力が低下しておらず、優れた耐焼付性を発揮していることがわかる。
【0066】
試験例2
実施例1で得られたネジ用部材について溶出試験を実施した。試験は、「日本水道協会JWWA K 139−1992 水道用ダクタイル鋳鉄管−合成樹脂塗料」の溶出試験に従った。その結果を表4に示す。なお、試料水の接水面積は510cm2/リットルとした。
【0067】
【表4】
【0068】
表4の結果からも明らかなように、いずれの項目も品質規定をクリヤーしており、安全性においても優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図4】実施例4のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図5】実施例5のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図6】実施例6のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図7】比較1のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図8】比較2のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
【図9】比較3のネジ用部材におけるトルク試験の結果を示すグラフである。
Claims (8)
- 金属有機化合物としてカルボン酸塩の少なくとも1種を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で熱処理することを特徴とする耐焼付用部材の製造方法により得られる、実質的に潤滑剤が存在しない存在下で用いられる耐焼付用部材であって、前記カルボン酸塩が炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸塩である耐焼付用部材。
- コーティング組成物中にさらに無機フィラーが含まれる請求項1に記載の耐焼付用部材。
- 無機フィラーが、Al2O3、BN、マイカ、タルク及びカオリナイトの少なくとも1種である請求項2記載の耐焼付用部材。
- 金属有機化合物100重量部に対して、無機フィラー1〜50重量部を含有する請求項2又は3に記載の耐焼付用部材。
- 基材が鉄、鉄系合金、チタン、チタン系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の耐焼付用部材。
- 前記熱処理により、塗膜中の金属有機化合物を熱分解させて金属被膜を形成する請求項1〜5のいずれかに記載の耐焼付用部材。
- 前記金属被膜が乾式コートである請求項6記載の耐焼付用部材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のネジ用部材。
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