JP2000205226A - 耐焼付用部材及びその製造方法 - Google Patents

耐焼付用部材及びその製造方法

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JP2000205226A
JP2000205226A JP11010559A JP1055999A JP2000205226A JP 2000205226 A JP2000205226 A JP 2000205226A JP 11010559 A JP11010559 A JP 11010559A JP 1055999 A JP1055999 A JP 1055999A JP 2000205226 A JP2000205226 A JP 2000205226A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた耐焼付性とともに耐汚染性、安全性等に
も優れた部材、特にネジ用部材を提供することを主な目
的とする。 【解決手段】金属有機化合物を含むコーティング組成物
からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で
熱処理することを特徴とする耐焼付用部材の製造方法、
及びその製造方法により得られる耐焼付用部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な耐焼付用部
材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】耐焼付性が要求される部材(以下「耐焼
付用部材」)には、ボルト・ナット等のネジ用部材のよ
うに実質的に潤滑油の存在しない条件下で使用されるも
のと、内燃機関のピストン等のように潤滑油の存在下で
使用されるものとに大別される。とりわけ、ネジ用部材
のように実質的に潤滑油の存在しない条件下で使用され
るものについては、過酷な条件下で使用されるものが多
く、きわめて高い耐焼付性が要求される。
【0003】例えば、水道本管、ガス導管等の土中埋設
管のジョイントに使用されるボルト・ナットは、非常に
高いトルクでの締め付けが何度も繰り返して行われる。
しかも、水密性保持のために使用されるゴム、パッキン
等とともに締め込む必要があることから、締め込み長さ
が長くなる傾向にある。このようなボルト・ナットにあ
っては、特に焼き付き現象が発生しやすい。すなわち、
ボルトとナットの接触面の一部で融着が発生し、最終的
には両部材が部分的に接合・固定化された状態になる。
従って、いったん焼き付き現象が発生すれば効果的な締
め付けが不可能となるばかりでなく、これを緩めること
もできなくなり、最終的にはボルトを切断せざるを得な
くなる。このようなことから、これらネジ用部材の焼き
付き現象は、水道工事、ガス工事等の工事中断の原因に
なり、工期の遅れ、工費の増大等も招く結果となってい
る。
【0004】これに関し、ネジ用部材の耐焼付性を高め
る種々の方法が提案あるいは実用化されている。例え
ば、ボルト・ナットの材質自体を改良する方法、ボルト
・ナットの表面を窒化処理によって表面硬度を高くする
方法等がある。また、ボルト・ナットの表面を湿式コー
トにより被覆する方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法でも、特に繰り返し締め付けに耐えられるだけの
十分な耐焼付性を得ることはできておらず、焼き付き現
象を確実に回避することは困難である。
【0006】また、湿式コートによる方法では、使用時
において、現場の土砂がボルト・ナットに付着しやす
く、締め付け作業の妨げとなることもある。
【0007】さらに、湿式コートされたボルト・ナット
が土中に埋設される場合は、そのコート中の成分が土中
に溶出して土壌汚染・水質汚染を招くおそれがあり、こ
れらも有効に防止する必要がある。
【0008】従って、本発明は、優れた耐焼付性ととも
に耐汚染性、安全性等にも優れた部材、特にネジ用部材
を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来技術の
問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定方法により基
材上に金属質皮膜を形成することにより、上記目的を達
成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至っ
た。
【0010】すなわち、本発明は下記の耐焼付用部材及
びその製造方法に係るものである。
【0011】1.金属有機化合物を含むコーティング組
成物からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以
下で熱処理することを特徴とする耐焼付用部材の製造方
法。
【0012】2.上記の製造方法により得られる耐焼付
用部材。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の耐焼付用部材の製造方法
は、金属有機化合物を含むコーティング組成物からなる
塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で熱処理す
ることを特徴とする。すなわち、本発明では、金属有機
化合物の熱分解による皮膜(以下「金属質皮膜」とい
う)を基材上に形成するものである。
【0014】1 コーティング組成物 (1)金属有機化合物 金属有機化合物としては、比較的低温(400℃以下)
で熱分解して金属質皮膜を形成するものであれば特に限
定されないが、本発明では特にカルボン酸塩、メルカプ
チド化合物及びアミン化合物の少なくとも1種が好まし
い。また、本発明では、キレート化合物の少なくとも1
種も好ましく用いることができる。
【0015】カルボン酸塩としては、例えばヘキサン酸
塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、デカン
酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸
塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、オレイ
ン酸塩等の脂肪族カルボン酸塩、安息香酸塩等の炭素環
式カルボン酸塩等が挙げられる。メルカプチド化合物と
しては、例えば金メルカプチド化合物等が挙げられる。
キレート化合物としては、例えば金属アセチルアセトネ
ート等が挙げられる。
【0016】本発明では、これら金属有機化合物の中で
もカルボン酸塩が特に好ましく、このうち炭素数6〜1
8のカルボン酸の塩(特に脂肪族モノカルボン酸塩)が
最も好ましい。カルボン酸塩を用いることにより、より
耐焼付性に優れた金属質皮膜を有効に形成させることが
できる。特に上記炭素数のカルボン酸塩は、ネジ用部材
としてより効果的である。
【0017】金属有機化合物は1種又は2種以上で用い
ることができ、所望の金属成分の種類等に応じて適宜使
用することができる。金属成分としては、最終製品の用
途等に応じて適宜選べば良く、例えばAu、Ag、P
t、Rh、Cu、Ru、In、Sn、Ni、Cr、Zn
等の中から所望の金属質皮膜に応じて1種又は2種以上
を適宜採用すれば良い。特に、ネジ用部材として用いる
場合は、例えばAg、Cu等が好ましい。
【0018】例えば、銀を金属成分とする場合は、金属
有機化合物としてミリスチン酸銀、2−エチルヘキサン
酸銀、安息香酸銀、デカン酸銀等の銀塩を用いれば良
い。また、例えば、銅を金属成分とする場合は、ヘキサ
ン酸銅、パルミチン酸銅等の銅塩を使用できる。スズを
金属成分とする場合は、2−エチルヘキサン酸スズ等の
スズ塩を用いることができる。鉛を金属成分とする場合
は、ナフテン酸鉛等の鉛塩を用いることができる。その
他にも、金属成分の種類に応じて、メルカプチド化合
物、アミン化合物、あるいはキレート化合物を適宜採用
すれば良い。
【0019】また、本発明では、これら金属有機化合物
を2種以上併用する場合には、当該2種類以上の金属成
分からなる合金皮膜を形成することも可能である。例え
ば、ステアリン酸銀とナフテン酸鉛を併用することによ
って銀−鉛合金からなる合金皮膜を形成することができ
る。
【0020】また、本発明では、金属有機化合物を予め
熱処理することにより金属含有量を高めた熱処理物を用
いることもできる。これにより、金属成分の分散性をさ
らに高めることができ、組成的に均一な金属質皮膜をよ
り確実に得ることができる。熱処理物の金属含有量は、
金属有機化合物の種類等によって適宜変更できるが、通
常40重量%以上、特に60重量%以上とすることが好
ましい。
【0021】(2)無機フィラー 本発明では、必要に応じて無機フィラーをコーティング
組成物中に配合することもできる。特に、本発明の耐焼
付用部材をネジ用部材として用いる場合は、無機フィラ
ーを配合することが好ましい。
【0022】無機フィラーとしては、上記の金属質皮膜
を基材上に形成できる限り特に限定されず、最終製品の
用途、用いる金属成分、基材の材質等に応じて適宜選択
すれば良い。例えば、Al23、MgO、TiO2、Z
rO2、ThO2、Fe23、SiO2、Cr23、Ce
2等の酸化物、SiC、B4C、Cr32、TaC、W
C、ZrC2、TiC等の炭化物、BN(hBN、cB
N等を含む)等の窒化物、Cr32等のホウ化物、炭素
(ダイヤモンド、グラファイト等を含む)のほか、カオ
リナイト、マイカ、タルク、ガラス等の無機材料を用い
ることができる。これらは単独又は2種以上で用いるこ
とができる。特に、ネジ用部材として用いる場合は、A
23、BN、マイカ、タルク及びカオリナイトの少な
くとも1種を用いることが好ましい。
【0023】また、これら無機フィラーの平均粒径は、
最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良く、通常は
1〜50μm程度、好ましくは1〜10μmとすれば良
い。これら粉末の粒子形状は、特に限定されず、球状、
繊維状、扁平状、不定形等のいずれであっても良い。
【0024】無機フィラーと金属有機化合物の配合割合
は、金属有機化合物100重量部に対して、無機フィラ
ー1〜50重量部程度、好ましくは3〜20重量部、よ
り好ましくは5〜10重量部とすれば良い。無機フィラ
ーの配合量が多すぎる場合は、所定の金属質皮膜が形成
されないことがある。
【0025】(3)その他の成分 上記コーティング組成物では、これら無機フィラー及び
金属有機化合物のほか、必要に応じて溶媒、界面活性
剤、密着剤等を適宜配合することができる。
【0026】溶媒としては、無機フィラー・金属有機化
合物を均一に分散できる限り特に制限されない。例え
ば、ベンゼン、n−ヘキサン、トルエン等の炭化水素類
のほか、テレピン油、ターピネオール、ジヒドロターピ
ネオール等のテルペン類、ケロシン、流動パラフィン、
ポリエチレングリコール等のほか、各種の高沸点溶媒等
も適宜用いることができる。これらは1種又は2種以上
で用いることができる。溶媒の使用量は、金属有機化合
物100重量部に対して、通常10〜200重量部程度
とすれば良い。
【0027】界面活性剤としては、用いる無機フィラ
ー、金属有機化合物、溶媒等の種類に応じて適宜決定す
れば良い。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレ
イルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイル
エステル等の非イオン性界面活性剤、アルキルイミダゾ
ール等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活
性剤の使用量は、金属有機化合物100重量部に対し
て、通常1〜20重量部程度とすれば良い。
【0028】密着剤としては、本発明の金属質皮膜と基
材との密着性を維持又は向上できるものであれば特に制
限されないが、好ましくはロジン酸塩のほか、セルロー
ス、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセル
ロース等のセルロース類が使用できる。密着剤の使用量
は、金属有機化合物100重量部に対して、通常5〜6
0重量部程度とすれば良い。
【0029】2 基材 本発明で用いる基材は、上記所定の金属質皮膜が形成で
きる限り特に限定されず、金属・合金、セラミックス、
プラスチック等又はこれらの複合材料のいずれにも適用
できる。これらの基材自体は、公知のもの又は市販品を
用いることができる。本発明では、特に、鉄、鉄系合
金、チタン、チタン系合金、アルミニウム及びアルミニ
ウム系合金の少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】殊に、ネジ用部材として用いる場合は、基
材として鉄又は鉄系合金を用いることが好ましい。鉄系
合金としては、例えばステンレス鋼、ニッケルクロム
鋼、クロムモリブデン鋼等を好適に使用することができ
る。従って、ネジ用部材の場合は、例えばステンレス鋼
製のボルト又はナットを基材としてそのまま用いること
ができる。
【0031】3 耐焼付用部材の製造 本発明の製造方法は、前記のように、金属有機化合物を
含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形成
し、次いで400℃以下で熱処理することを特徴とす
る。
【0032】本発明の製造方法では、まず、これら各成
分を含むコーティング組成物からなる塗膜を基材上に形
成する。塗膜の形成方法は、特に限定されず、スピンコ
ート、ブラシ、スプレー、シルクスクリーン印刷、ディ
ッピング、ロール等の公知の塗装方法により塗布して塗
膜を形成すれば良い。塗膜の厚さは、最終的に形成され
る金属質皮膜の厚さに応じて適宜設定すれば良い。
【0033】また、上記塗膜は、少なくとも耐焼付性が
要求される部分に形成すれば良い。従って、例えばネジ
用部材にあっては、上記コーティング組成物からなる塗
膜を少なくともネジ山表面上の一部又は全部に形成すれ
ば良い。
【0034】本発明の製造方法では、基材上にコーティ
ング組成物による塗膜を形成した後、必要に応じて乾燥
を行うこともできる。乾燥温度は、塗膜の性状等に応じ
て適宜設定すれば良い。例えば、風乾又は自然放置して
も良く、あるいは150℃以下(好ましくは100〜1
50℃)で加熱乾燥しても良い。乾燥後、必要に応じて
さらに上記組成物による塗膜を積層することもできる。
【0035】次いで、熱処理を行う。熱処理により、塗
膜中の金属有機化合物を熱分解させて金属質皮膜を形成
する。熱処理温度は、用いる金属有機化合物の熱分解開
始温度以上であれば良く、通常は400℃以下、特に3
00℃以下の範囲内で設定することができる。また、熱
処理時間は、熱処理温度等に応じて所定の金属質皮膜が
形成できるように適宜設定すれば良い。
【0036】このように、本発明では、比較的低温で金
属質皮膜を形成することができるので、基材を変質させ
ることなくその本来の特性を十分に活かすことが可能で
ある。例えば、ネジ用部材として基材をステンレス鋼製
ボルト又はナットを用いる場合は、熱処理温度を400
℃以下という比較的低温に抑えることによってその本来
の特性である優れた耐食性、機械的特性等を維持するこ
とができる。
【0037】熱処理雰囲気は、用いる金属有機化合物の
種類等によって適宜変更すれば良く、必要に応じて酸化
性雰囲気、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気又はこれら
を組み合わせることができる。例えば、最初に酸化性雰
囲気で熱処理した後、還元性雰囲気で熱処理することも
できる。
【0038】熱処理した後は、常法に従って放冷又は急
冷すれば良い。なお、本発明では、その効果を損なわな
い範囲で金属有機化合物の一部が熱処理後において金属
質皮膜中に残留していても良い。
【0039】4 本発明の耐焼付用部材 本発明の耐焼付用部材は、好ましくは上記の製造方法に
よっても製造することができる。この部材は、耐焼付性
が要求される用途に幅広く使用することができるが、特
にネジ用部材として好適に用いることができる。
【0040】ネジ用部材としては、例えばボルト・ナッ
トのようにネジ山を有するネジ用部材において、ボルト
及びナットの少なくとも一方のネジ山表面の一部又は全
部に金属質皮膜を形成することにより優れた耐焼付性を
発揮することができる。
【0041】金属質皮膜の厚さは、基材の種類、要求さ
れる特性等に応じて適宜決定すれば良い。例えば、ネジ
用部材として用いる場合は、通常20μm以下、好まし
くは1〜10μmの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0042】ボルトの形状も特に限定されず、例えば六
角ボルト、六角穴付きボルト、ターンバックル、止めネ
ジ、植込みボルト等の各種ボルトに適用できる。また、
ナットの形状も特に限定されず、例えば六角ナット、四
角ナット、袋ナット等の各種ナットに適用できる。ボル
ト・ナット以外にも、例えばワッシャー、タッピンネ
ジ、ピン等の部材としても有用である。このように、本
発明のネジ用部材は、水道本管、ガス導管、下水道管等
の土中埋設管等のジョイントに好適に用いることができ
る。
【0043】
【発明の効果】本発明の耐焼付用部材は、金属有機化合
物を含むコーティング組成物の熱分解による金属質皮膜
が基材上に形成されているので、優れた耐焼付性を発揮
することができる。特に、実質的に潤滑剤が存在しない
条件下で用いられる用途において優れた耐焼付性を発揮
することができる。従って、例えば本発明の耐焼付用部
材をネジ用部材として用いる場合には、締め付けを繰り
返し実施しても容易に焼き付き現象が発生しない。
【0044】また、湿式コートによる従来品とは異な
り、耐汚染性に優れており、土砂、ほこり等が部材に付
着しにくく、その結果として取扱い性、作業性等におい
ても優れた効果を発揮することができる。
【0045】さらに、本発明の耐焼付用部材では、金属
質皮膜といういわば乾式コートを採用しているため、金
属質皮膜自体からの金属成分等の溶出が抑制ないしは防
止されるので、水質汚染、土壌汚染等の環境破壊のおそ
れもなく、安全性に優れている。また製造方法として
も、金属有機化合物を熱分解するだけなので有毒物質の
発生もなく、金属排水等の問題があるメッキ法よりも安
全性に優れている。
【0046】加えて、金属質皮膜が無機フィラーと金属
成分から実質的に構成されていることから、耐熱性、耐
久性等にも優れている。このため、高い安全性が要求さ
れる上水道、高温に晒される屋外、水分の多い土中、耐
熱性が要求される化学プラント・工場、耐久性が必要な
発電所等のあらゆる状況下で幅広く使用することができ
る。
【0047】
【実施例】以下、実施例に基づき、本発明の特徴とする
ところをより詳細に説明する。
【0048】実施例1 金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0049】金属有機化合物として、ミリスチン酸銀を
熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱
処理物100重量部を用い、これに無機フィラーとして
マイカ(平均粒径5μm)5重量部、溶媒としてテレピ
ン油50重量部、界面活性剤としてカチオン性界面活性
剤5重量部、及び密着剤としてロジン酸銀50重量部を
配合して均一に混合してコーティング組成物を調製し
た。このコーティング組成物をステンレス鋼(SUS3
04)製ナット(径20mm)のナット内面のネジ山表
面上の全体にブラシによりコートした。このナットを窒
素雰囲気下300℃で熱処理して上記金属有機化合物の
熱分解を行い、ネジ用部材を得た。
【0050】実施例2 金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0051】金属有機化合物としてミリスチン酸銀20
0重量部、無機フィラーとしてBN(平均粒径5μm)
5重量部、溶媒としてトルエン100重量部、界面活性
剤としてカチオン性界面活性剤5重量部、及び密着剤と
してロジン酸銀50重量部を配合して均一に混合してコ
ーティング組成物を調製した。このコーティング組成物
を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内面のネジ山表
面上の全体にブラシによりコートした。このナットを実
施例1と同様に熱処理することによりネジ用部材を得
た。
【0052】実施例3 金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0053】金属有機化合物として、ステアリン酸銀を
熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱
処理物100重量部を用い、これに無機フィラーとして
タルク(平均粒径5μm)5重量部、溶媒としてテレピ
ン油50重量部、界面活性剤としてカチオン性界面活性
剤5重量部、及び密着剤としてエチルセルロース5重量
部を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製
した。このコーティング組成物を実施例1と同じステン
レス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによ
りコートした。このナットを実施例1と同様に熱処理す
ることによりネジ用部材を得た。
【0054】実施例4 金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0055】金属有機化合物として、パルミチン酸銀を
熱処理して銀成分の含有量を80重量%までに高めた熱
処理物100重量部に、溶媒としてトルエン50重量部
を配合して均一に混合してコーティング組成物を調製し
た。このコーティング組成物を実施例1と同じステンレ
ス鋼製ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシにより
コートした。このナットを実施例1と同様に熱処理する
ことによりネジ用部材を得た。
【0056】実施例5 金属質皮膜が形成されたネジ用部材を作製した。
【0057】溶媒としてトルエンの代わりにテレピン油
を配合し、さらに金属有機化合物としてパルミチン酸銀
の代わりにラウリン酸銀を配合したほかは、実施例4と
同様にしてコーティング組成物を調製した。このコーテ
ィング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製ナット内
面のネジ山表面上の全体にブラシによりコートした。こ
のナットを実施例1と同様に熱処理することによりネジ
用部材を得た。
【0058】実施例6 無機フィラーであるマイカを全く使用しないほかは、実
施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。こ
のコーティング組成物を実施例1と同じステンレス鋼製
ナット内面のネジ山表面上の全体にブラシによりコート
した。このナットを実施例1と同様に熱処理することに
よりネジ用部材を得た。
【0059】試験例1 実施例1〜6で得られたネジ用部材を用いてトルク試験
を行った。トルク試験は、本発明の金属質皮膜が形成さ
れていないボルト(材質は上記ナットと同じ)を用い、
20kN・cmのトルクで計6回の繰り返し締め付けを
実施した。その結果を表1〜2及び図1〜6にそれぞれ
示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】比較のため、フッ素系潤滑剤により表面処
理された従来品(比較1)、市販の化成皮膜品(比較
2)及び無処理品(比較3)について、同様のトルク試
験を行ったところ、比較1及び比較2については、締め
付け3回目でカジリが発生し、4回目以降は締め付けす
ることも緩めることも不可能となった。比較1及び比較
2の締め付け3回目までの結果を表3及び図7〜8にそ
れぞれ示す。また、比較3は、2回目以降は締め付けす
ることも緩めることも不可能となった。比較3の締め付
け1回目までの結果を表3及び図9にそれぞれ示す。
【0063】
【表3】
【0064】これらの結果からも明らかなように、比較
1及び比較2では、締め付け2回目以降で既に軸力が低
下していることから焼き付きが生じていることがわか
る。また、無処理品である比較3は、1回しか締め付け
することができなかった。
【0065】これに対し、各実施例に示すネジ用部材で
は、6回の繰り返し締め付けによってもほとんど軸力が
低下しておらず、優れた耐焼付性を発揮していることが
わかる。
【0066】試験例2 実施例1で得られたネジ用部材について溶出試験を実施
した。試験は、「日本水道協会JWWA K 139−
1992 水道用ダクタイル鋳鉄管−合成樹脂塗料」の
溶出試験に従った。その結果を表4に示す。なお、試料
水の接水面積は510cm2/リットルとした。
【0067】
【表4】
【0068】表4の結果からも明らかなように、いずれ
の項目も品質規定をクリヤーしており、安全性において
も優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図2】実施例2のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図3】実施例3のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図4】実施例4のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図5】実施例5のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図6】実施例6のネジ用部材におけるトルク試験の結
果を示すグラフである。
【図7】比較1のネジ用部材におけるトルク試験の結果
を示すグラフである。
【図8】比較2のネジ用部材におけるトルク試験の結果
を示すグラフである。
【図9】比較3のネジ用部材におけるトルク試験の結果
を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 豊田 正喜 大阪府大阪市港区波除6丁目3番1号 株 式会社巴製作所内 Fターム(参考) 4D075 CA18 DA11 DB02 DB07 DC16 EA02 EA05 EC01 EC08 EC54 4J038 AA011 HA216 HA526 HA536 HA546 JA43 JC02 JC38 PA19 PB06 PC02

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属有機化合物を含むコーティング組成物
    からなる塗膜を基材上に形成し、次いで400℃以下で
    熱処理することを特徴とする耐焼付用部材の製造方法。
  2. 【請求項2】金属有機化合物が、カルボン酸塩の少なく
    とも1種である請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】カルボン酸塩が、炭素数6〜18のカルボ
    ン酸の塩である請求項2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】コーティング組成物中にさらに無機フィラ
    ーが含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法。
  5. 【請求項5】無機フィラーが、Al23、BN、マイ
    カ、タルク及びカオリナイトの少なくとも1種である請
    求項4記載の製造方法。
  6. 【請求項6】金属有機化合物100重量部に対して、無
    機フィラー1〜50重量部を含有する請求項4又は5に
    記載の製造方法。
  7. 【請求項7】基材が鉄、鉄系合金、チタン、チタン系合
    金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の少なくとも
    1種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法
    により得られる耐焼付用部材。
  9. 【請求項9】請求項8記載のネジ用部材。
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